JP5912223B2 - 低分子ムチンの製造方法 - Google Patents
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Description
また近年では、その天然保湿因子としての機能を利用して皮膚や髪の健康を増進し、老化を遅延させるアンチエイジング化粧料や衛生用品さらには食品などの素材としても使用されるなどその用途は拡大してきている。
さらに、前述の濾液にはムチンの低分子画分が回収されるため、ペプシン阻害活性や抗潰瘍活性が低下ないしは消失してしまう可能性も小さくなかった。
そしてこのことは皮膚や髪のpHに合わせて弱酸性に調製されることの多い化粧水、シャンプー等の化粧料や衛生用品を透明性状に調製したい場合は適切なムチン素材とは言い難い。
このように集積したクラゲ類を、食品あるいは肥料として利用する方法も提案されているが、それ以外には有効な活用法が存在していないため、環境保全を目的とした処理に関して企業や自治体に大きな経済負担が生じ、その処理コストを得るためには微量でも高価な有価物を取り出し、残渣の処分を推進するコストを回収することが望ましいのであるが、その有効な解決策は得られていない。
クラゲ類はこのような豊富な存在量を持つ海洋資源として地球上に存在していることから、集積した廃棄物を利用するばかりでなく、積極的な捕獲による利用の途も考慮していく必要があり、近時は、その成分分析から、例えば、非特許文献1に示すように、スルメイカ類の成熟した雌の内臓にみられる抱卵腺などとともにヒトムチンの代用物質として有用なムチン型糖タンパク質としての研究が始められている。
さらには、本発明方法によって得られた低分子ムチンは、同様な方法によって得られた低分子ヒアルロン酸、低分子コラーゲンなどを所定の混合比で混ぜることにより従来よりもはるかに優れた保湿組成物として調製できるので新規なアンチエイジング化粧料を得ることも可能となるものである。
さらに、本発明方法は、本来は用途の少ないクラゲ類および/またはクラゲ類由来抽出物などをムチン原料とするので安価で効率的であり、クラゲ類の養殖又は港湾や漁業で発生する廃棄物クラゲの利用などを通じて簡便に良質な低分子ムチンを供給することができるなど種々の優れた効果を奏するものである。
ここでクラゲ類とは、刺胞動物門に属する生物をいい、代表的なものとして、ミズクラゲ(ミズクラゲ科)、アカクラゲ(オキクラゲ科)、オワンクラゲ(オワンクラゲ科)、エチゼンクラゲ(エチゼンクラゲ科)、アンドンクラゲ(アンドンクラゲ科)、ビゼンクラゲ(ビゼンクラゲ科)、ハブクラゲ(熱帯アンドンクラゲ科)などが挙げられる。さらに本発明に係る低分子ムチンを製造するために使用するクラゲ類としては、ヒトや動物に対する安全性が確認されているクラゲであることが好ましく、例えば、すでに食用に供されているミズクラゲ、ビゼンクラゲ、エチゼンクラゲなどである。
クラゲ類はあらゆる状態のものを使用することができ、例えば、生のクラゲ、冷凍クラゲ、乾燥クラゲ、塩蔵クラゲなどを使用することができる。
なお、冷凍クラゲの場合は、はじめに解凍・水洗して使用する。生のクラゲ又は乾燥クラゲの場合にも、同様に水洗を行い、必要に応じて遠心分離して粘度のある固形物と液体成分を分離して使用するのが好ましい。
なお、このようなムチン原料(クラゲ類および/またはクラゲ類由来抽出物)10の分子量は凡そ200万程度であるが、効率を勘案するとこれより低い分子量のものを使用するのが好ましいことは言うまでもない。
なお、本実施の形態においては、ムチン原料10としてクラゲ類および/またはクラゲ類由来抽出物を使用したが、同様のムチン型糖タンパク質、例えば、スルメイカ類の成熟した雌の内臓にみられる抱卵腺(内臓)などに代替することもできる。
この場合、ムチン原料10と浄化水14との混合比はムチン原料1に対して99程度にするのが好ましく、またミネラル12の添加量はムチン原料10と浄化水14の総量に対して1重量%〜10重量%の範囲に設定するのが好適である。
なお、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどのイオン性固体(塩)も使用することもできるが、これらの炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどを単独で使用すると固化や沈殿が生じてしまうことがあるため、これらと前記イオン化ミネラルとを混合した混合物として使用すればイオン化ミネラルの作用により固形化や沈殿を阻止することができるので、前述のイオン化ミネラルと同様に問題なく使用することができる。
この場合、麹菌あるいは麹菌混合物20の分量は、ムチン原料分散液18の10重量%〜30重量%の範囲に設定するのが好ましい。麹菌あるいは麹菌混合物20の分量が10重量%未満になると醗酵に長時間を要するだけでなく充分な発酵を行えなくなり、また30重量%を超えると量が多すぎて経済性が低下することになる。
また、糖質22の分量は麹菌あるいは麹菌混合物20よりも若干多めの分量とし、ミネラル塩24の分量は、糖質22の分量の約30重量%程度を目安とする。
この場合、醗酵ムチン液26に加える有機酸溶液28の分量としては醗酵ムチン液の1倍量〜3倍量に設定するのが好ましく、有機酸溶液28が醗酵ムチン液の1倍量以下だと熟成醗酵に長時間を必要とし、また3倍量を超えるとムチン自体の量が少なくなるため熟成がうまくできず経済性も低下する。
なお、この醗酵ムチン液26の熟成に際しては、適宜の攪拌手段を使用して攪拌するとともにポンプ装置などでゆっくり流動させながら行うのが好ましい。
使用装置;AXIMA−Performance(株式会社島津製作所製)
レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOFMS)
引き出し電圧;20kv
飛行モード;Linear
検出イオン;正イオン
マトリックス;Sinapinic acid(SA)
10mg/ml in0.1%TFA,50%MeCNsolution
サンプル前処理;低分子ムチンを遠心して上澄液9μlを分取し、1%TFAを加え、 0.1%TFA溶液を調製した。このサンプル溶液をZipTipC 18により精製を行い(操作はZipTip添付のプロトコルに従っ た)、精製サンプルを直接MALDIプレートにアプライし、風乾後 にマトリックス溶液を重層し、さらに風乾後、質量分析装置にプレー トを搭載し質量分析を行った。
このように分子量が約650〜2000の低分子ムチンを得られるのは、麹菌あるいは麹菌混合物による発酵作用によって原料ムチンの酸素結合が切られて有機酸中に分散し、さらに切られた酸素結合の末端に2価ミネラルが適宜結合してこの状態がバランスよく保持されるからである。
さらには、本発明方法によって得られた低分子ムチンは、本発明方法と同様な方法によって得られた低分子ヒアルロン酸、低分子コラーゲンなどを所定の混合比で混ぜることにより従来よりもはるかに優れた保湿組成物とすることができるので新規なアンチエイジング化粧料として調製することができるものである。
12・・ミネラル、
14・・浄化水、
16・・容器、
18・・ムチン原料分散液、
20・・麹菌またはこれらの混合物
22・・砂糖などの糖質、
24・・ミネラル塩、
26・・醗酵ムチン液、
28・・有機酸溶液、
30・・醗酵熟成ムチン液
32・・低分子ムチン、
Claims (2)
- ムチン原料と、ミネラルと、浄化水とを容器に投入し、加熱して殺菌することによりムチン原料分散液を調製し、
ムチン原料分散液に対して、酒麹菌、醤油麹菌、および、味噌麹菌から選ばれる1種類の麹菌、または、2種類以上の麹菌の混合物を、ムチン原料分散液の10〜30重量%加えるとともに、糖質、および、ミネラル塩を加えて混合し、35℃〜45℃に保持して醗酵させ、
得られた醗酵ムチン液に、クエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、および、リンゴ酸から選ばれる1種類の有機酸、または、2種類以上の有機酸を溶解させた有機酸溶液を加え、35〜45℃に保持した状態で攪拌し流動させながら熟成させ、
得られた醗酵熟成ムチン液を、加熱あるいは紫外線照射により再び殺菌したのち、この醗酵熟成ムチン液を濾過して濾過液を回収することを特徴とする、低分子ムチンの製造方法。 - ムチン原料に添加するミネラルとして、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを所定の割合で混合した原料を粉砕し、次いで浄化水と麹菌を加えて醗酵熟成することにより原料中に含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラルを解離させたのち濾過して得られた醗酵熟成液からなるイオン化ミネラル液を使用することからなる請求項1に記載の低分子ムチンの製造方法。
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