(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる車両の制動制御装置の一実施形態であるブレーキ制御ユニットを搭載したハイブリッド車両を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両には、2モータ方式のハイブリッドシステム10と、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力(液圧制動力)を付与する液圧制動装置30とが設けられている。
ハイブリッドシステム10は、ガソリンなどの燃料の供給によって運転されるエンジン11を備えている。このエンジン11のクランク軸11aには、遊星歯車機構などを有する動力伝達機構12を介して、第1のモータ13及び第2のモータ14が連結されている。そして、動力伝達機構12は、エンジン11からの動力を第1のモータ13及び駆動輪である前輪FR,FL側に分割して伝達するとともに、第2のモータ14からの動力を前輪FR,FL側に伝達するようになっている。
第1のモータ13は、動力伝達機構12を介して伝達された動力によって発電する。そして、第1のモータ13で発電された電力は、インバータ15を介してバッテリ16に供給されて蓄電される。
第2のモータ14は、運転者がアクセルペダル21を操作する場合には、即ちアクセル操作を行う場合には、駆動源として機能する。このとき、第2のモータ14には、インバータ15を介してバッテリ16から電力が供給される。すると、第2のモータ14で発生した動力は、動力伝達機構12及びディファレンシャル17を介して前輪FR,FLに伝達される。
一方、運転者がブレーキ操作部材としてのブレーキペダル22を操作する場合、即ちブレーキ操作を行う場合、第2のモータ14には前輪FR,FLの回転に伴う動力がディファレンシャル17及び動力伝達機構12を介して伝達される。すなわち、車両の減速時において第2のモータ14は発電機として機能し、この第2のモータ14で発電された電力は、インバータ15を介してバッテリ16に供給されて蓄電される。このとき、第2のモータ14は、前輪FR,FLに対して第2のモータ14での発電量に応じた回生制動力を付与する。したがって、本実施形態では、第2のモータ14が、回生制動装置として機能する。
次に、液圧制動装置30について説明する。
液圧制動装置30は、ブレーキペダル22が連結される液圧発生装置31と、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を自動調整可能なブレーキアクチュエータ50とを備えている。液圧発生装置31には、ブースタ32、マスタシリンダ33及びリザーバ34が設けられている。
図2(a)(b)に示すように、本実施形態のマスタシリンダ33には、有底筒状をなすハウジング40が設けられている。このハウジング40内には、ハウジング40の筒状部40aの延びる方向(図2では左右方向)に沿って摺動可能な2つのピストン41,42が収容されている。そして、ハウジング40の底部40bと第1のピストン41との間に形成された第1の液圧室43内には、第1のピストン41を底部40bから離れる方向(以下、「非制動方向」ともいう。)に付勢する第1のスプリング45が設けられている。また、第1のピストン41と第2のピストン42との間に形成された第2の液圧室44内には、第2のピストン42を非制動方向に付勢する第2のスプリング46が設けられている。
ハウジング40の筒状部40aには、第1の液圧室43とリザーバ34とを連通させる第1のポート47aと、第2の液圧室44とリザーバ34とを連通させる第2のポート47bとが形成されている。これら各ポート47a,47bは、図2(a)に示すように、運転者がブレーキ操作を行っていない場合には、各ピストン41,42が初期位置に位置するため、リザーバ34と液圧室43,44とを連通させる。そして、この状態から運転者がブレーキ操作を行うと、各ピストン41,42は、ブースタ32を介して伝達されたブレーキ操作力に応じた分だけ底部40bに近づく方向(以下、「制動方向」ともいう。)に摺動する。伝達されるブレーキ操作力が小さい場合には、ポート47a,47bを介したリザーバ34と液圧室43,44との連通状態が維持されるため、液圧室43,44内のブレーキ液圧(以下、「MC圧」ともいう。)が増圧されない。
そして、運転者によるブレーキ操作によって各ピストン41,42が制動方向に更に摺動すると、各ピストン41,42が図2(b)に示す非連通位置に達し、同図2(b)に示すように、各ポート47a,47bの開口が各ピストン41,42によって同時に閉塞される。すなわち、液圧室43,44とリザーバ34とが非連通状態となる。この状態で各ピストン41,42が制動方向に更に摺動すると、各液圧室43,44内のMC圧は、非連通位置から制動方向への各ピストン41,42の移動量に応じて増圧される。
本実施形態では、初期位置(図2(a)に示す位置)から非連通位置(図2(b)に示す位置)までの距離が無効移動量に相当し、初期位置から非連通位置までピストン41,42を摺動させるのに要するブレーキ操作量が無効操作量に相当する。すなわち、ブレーキ操作量が無効操作量以下である場合には、ピストン41,42の初期位置からの移動量(以下、単に「ピストン41,42の移動量」ともいう。)が無効移動量以下となるため、液圧室43,44、即ちマスタシリンダ33内のMC圧が増圧されない。その一方で、ブレーキ操作量が無効操作量を超えた場合には、ピストン41,42の移動量が無効移動量を超えるため、ブレーキ操作量と無効操作量との差分(以下、「有効操作量」ともいう。)に応じた分だけマスタシリンダ33内のMC圧が増圧される。なお、本実施形態において「無効移動量」は、回生制動装置である第2のモータ14が駆動輪である前輪FR,FLに対して付与可能な回生制動力の最大値に基づき設定されている。
また、ブースタ32内のブースタ圧が一定である場合には、無効移動量と無効操作量との間には一定の対応関係がある。しかし、ブースタ圧が変化すると、運転者によるブレーキ操作量が一定であってもピストン41,42に伝達されるブレーキ操作力が変わる。そのため、無効操作量を、ブースタ32内のブースタ圧が低圧である場合ほど大きい値となるように補正してもよい。
図3に示すように、ブレーキアクチュエータ50には、2系統の液圧回路511,512が設けられている。第1の液圧回路511には、右前輪FR用のホイールシリンダ65a及び左後輪RL用のホイールシリンダ65dが接続されている。また、第2の液圧回路512には、左前輪FL用のホイールシリンダ及び右後輪RR用のホイールシリンダが接続されている。そして、運転者によるブレーキ操作量が無効操作量を超えてマスタシリンダ33内のMC圧が増圧されると、このマスタシリンダ33からは、液圧回路511,512を介してホイールシリンダに向けてブレーキ液が供給される。すると、ホイールシリンダ内のホイールシリンダ圧(以下、「WC圧」ともいう。)が増圧され、車輪FR,FL,RR,RLにはWC圧に応じた制動力が付与される。
第1の液圧回路511には、マスタシリンダ33とホイールシリンダ65a,65dとを接続する経路に設けられる電磁式のリニア電磁弁である差圧弁52が設けられている。そして、第1の液圧回路511において差圧弁52よりもホイールシリンダ65a,65d側には、右前輪FR用の経路53a及び左後輪RL用の経路53dが設けられている。こうした経路53a,53dには、ホイールシリンダ65a,65d内のWC圧の増圧を規制する際に作動する常開型の電磁弁である増圧弁54a,54dと、WC圧を減圧させる際に作動する常閉型の電磁弁である減圧弁55a,55dとが設けられている。
また、第1の液圧回路511には、ホイールシリンダ65a,65dから減圧弁55a,55dを介して流出したブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ56と、ポンプ用モータ57の回転に基づき作動するポンプ58とが接続されている。リザーバ56は、吸入用流路59を介してポンプ58に接続されるとともに、マスタ側流路60を介して差圧弁52よりもマスタシリンダ33側に接続されている。また、ポンプ58は、供給用流路61を介して増圧弁54a,54dと差圧弁52との間の接続部位62に接続されている。そして、ポンプ58は、ポンプ用モータ57が回転する場合に、リザーバ56及びマスタシリンダ33側から吸入用流路59及びマスタ側流路60を介してブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路61内に吐出する。
なお、第2の液圧回路512の構成については、第1の液圧回路511の構成と略同等であるため、その詳細な説明を割愛するものとする。
次に、ハイブリッド車両に搭載される制御装置70について説明する。
図1に示すように、制御装置70には、アクセル操作量を検出するためのアクセル開度センサSE1、ブレーキ操作量を検出するための操作量検出部としてのブレーキ操作量センサSE2、及び車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3が電気的に接続されている。また、制御装置70には、マスタシリンダ33内のMC圧を検出するためのマスタ圧検出部としてのMC圧検出センサSE4、及びブレーキ操作が行われているか否かを検知するためのブレーキスイッチSW1が電気的に接続されている。そして、制御装置70は、各センサSE1〜SE4、スイッチSW1からの検出信号に基づき車両制御を統括的に行う。
こうした制御装置70は、パワーマネージメントコンピュータ71と、エンジン11を制御するエンジン制御ユニット72と、第1及び第2の各モータ13,14を制御するモータ制御ユニット73と、液圧制動装置30を制御する制動制御装置としてのブレーキ制御ユニット74とを備えている。
パワーマネージメントコンピュータ71は、運転者がアクセル操作を行う場合、車両の走行状態に基づき、エンジン11に要求する要求動力及び第2のモータ14に要求する要求動力を算出する。そして、パワーマネージメントコンピュータ71は、算出した要求動力に基づいた制御指令をエンジン制御ユニット72及びモータ制御ユニット73に個別に送信する。
また、パワーマネージメントコンピュータ71は、その時点でのバッテリ16の蓄電量及び前輪FR,FLの車輪速度などに基づき、その時点で前輪FR,FLに付与可能な回生制動力を算出する。そして、パワーマネージメントコンピュータ71は、算出したその時点の回生制動力をブレーキ制御ユニット74に送信する。
こうしたパワーマネージメントコンピュータ71は、運転者によるブレーキ操作に伴う車両減速時には、ブレーキ制御ユニット74によって算出された要求回生制動力に関する情報を受信する。すると、パワーマネージメントコンピュータ71は、受信した情報をモータ制御ユニット73に送信する。
モータ制御ユニット73は、運転者によるブレーキ操作に伴う車両減速時には、パワーマネージメントコンピュータ71から要求回生制動力に関する情報を受信する。そして、モータ制御ユニット73は、受信した情報に基づいた要求回生制動力と同等の回生制動力が前輪FR,FLに付与されるように第2のモータ14に発電させる。
ブレーキ制御ユニット74は、運転者がブレーキ操作を行う場合、ブレーキ操作量センサSE2からの検出信号に基づきブレーキ操作量を取得し、運転者が要求する車両に対する要求制動力をブレーキ操作量に基づき取得する。そして、ブレーキ制御ユニット74は、取得した車両に対する要求制動力とその時点で前輪FR,FLにできる回生制動力などに基づき要求回生制動力を算出し、該要求回生制動力に関する情報をパワーマネージメントコンピュータ71に送信する。
このとき、ブレーキ制御ユニット74は、車両に対する要求制動力を回生制動力だけで賄うことができると判断した場合、ブレーキアクチュエータ50を作動させない。すなわち、ブレーキ制御ユニット74は、液圧制動装置30から各車輪FR,FL,RR,RLに対して液圧制動力を付与させない。一方、ブレーキ制御ユニット74は、車両に対する要求制動力が回生制動力だけで賄うことができない場合、各車輪FR,FL,RR,RLに対して液圧制動力を付与させる。このように回生制動力と液圧制動力とを管理することにより、回生エネルギーの回収効率が高くなる。
次に、運転者によるブレーキ操作によって車両を停止させる際の一例について、図4に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、前提として、運転者によるブレーキ操作量が無効操作量を超える前に、要求制動力を回生制動力だけで賄うことができなくなるものとする。
図4(a)(b)に示すように、第1のタイミングt11でブレーキ操作が開始されると、車両の減速が開始される。このとき、ブレーキ操作量は、「0(零)」の状態から徐々に多くなる。そのため、ブレーキ操作量が少ない段階では、ブレーキ操作量に応じた要求制動力を回生制動力BPmgだけで賄うことができる。その後、ブレーキ操作量が多くなって第2のタイミングt12になると、要求制動力も大きくなるため、要求制動力を回生制動力BPmgだけでは賄えなくなる。しかし、第2のタイミングt12では、運転者によるブレーキ操作量が未だ無効操作量以下であるため、マスタシリンダ33内のMC圧は増圧されない。
そのため、第2のタイミングt12では、差圧弁52及びポンプ58の作動によって、差圧弁52よりもマスタシリンダ33側の第1のブレーキ液圧であるMC圧と、差圧弁52よりもホイールシリンダ側の第2のブレーキ液圧であるWC圧との間に差圧を発生させる。このときに発生させる差圧は、要求制動力から回生制動力BPmgを減算した制動力差に応じた差圧となっている。その結果、第2のタイミングt12から、ブレーキ操作量が無効操作量に達する第3のタイミングt13までの間では、差圧弁52及びポンプ58の作動に基づいた液圧制動力BPpが、ブレーキ操作量の増大に伴って大きくなる。
そして、第3のタイミングt13を経過すると、ブレーキ操作量が無効操作量を超えるため、マスタシリンダ33内のMC圧は、有効操作量に応じて増圧されるようになる。すると、各ホイールシリンダのWC圧は、MC圧の増圧に応じた分だけ増圧される。すなわち、第3のタイミングt13以降においては、MC圧の増圧に基づいた液圧制動力BPmcも車両に付与されるようになる。なお、このようにMC圧が増圧されるようになると、MC圧とWC圧との差圧を第3のタイミングt13直前の差圧で保持するように差圧弁52及びポンプ58が作動するようになる。
その後、車両の車体速度VSが低速になると、前輪FR,FLの回転速度が遅くなり、第4のタイミングt14以降では回生制動力BPmgが急激に小さくなる。すると、回生制動力BPmgの減少分を補うように、MC圧とWC圧との間に生じる差圧をさらに大きくすべく差圧弁52及びポンプ58が作動するようになる。そして、車両が停止する第6のタイミングt16よりも前の第5のタイミングt15で、回生制動力BPmgがほぼ「0(零)」となる。その結果、第5のタイミングt15以降では、液圧制動力BPp,BPmcのみが車両に付与されるようになる。
ところで、第2のモータ14が前輪FR,FLに回生制動力を付与できなくなったときには、マスタシリンダ33内のMC圧に応じた液圧制動力BPmcと要求制動力との制動力差を補うようにブレーキアクチュエータ50が作動することになる。そのため、ブレーキアクチュエータ50の作動によって生じる液圧制動力BPpを適切に調整するためには、MC圧を正確に把握する必要がある。そこで、本実施形態では、MC圧の検出に用いられるMC圧検出センサSE4に異常が発生しているか否かの判定処理が行われる。
次に、MC圧検出センサSE4に異常が発生しているか否かを判定するためにブレーキ制御ユニット74が実行するMC圧異常判定処理ルーチンについて、図5及び図6に示すフローチャートを参照して説明する。
このMC圧異常判定処理ルーチンは、予め設定された所定周期毎に実行される処理ルーチンである。このMC圧異常判定処理ルーチンにおいて、ブレーキ制御ユニット74は、ブレーキスイッチSW1からの検出信号に基づきブレーキ操作中であるか否かを判定する(ステップS11)。ブレーキ操作中ではない場合(ステップS11:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、判定フラグFLGをオフにセットし(ステップS12)、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。なお、判定フラグFLGは、今回のブレーキ操作時に基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseが既に設定されているときにオンにセットされるフラグである。
一方、ブレーキ操作中である場合(ステップS11:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも一つの車輪の車輪速度に基づいた車体速度VSを取得する(ステップS13)。そして、ブレーキ制御ユニット74は、車両が停止しているか否かを判定する(ステップS14)。例えば、ブレーキ制御ユニット74は、ステップS13で取得した車体速度VSが、停車しているか否かの判定基準として設定された車体速度判定値以下になったか否かを判定する。そのため、車両が停止していると判定されても、車両は実際には未だ停止していないこともあり得る。
車両が停止していないと判定した場合(ステップS14:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を前述したステップS12に移行する。一方、車両が停止していると判定した場合(ステップS14:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量に相当する吐出量相当値としてポンプ用モータ57に対する指示電流値Ipを取得する(ステップS15)。なお、この指示電流値Ipが大きいほどポンプ用モータ57の回転速度が速くなり、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が多くなる。この点で、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、吐出量取得部として機能する。
そして、ブレーキ制御ユニット74は、取得した指示電流値Ipが予め設定された規定電流値Ipth以下であるか否かを判定する(ステップS16)。この規定電流値Ipthは、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が多いか否かの判定基準である規定量に相当する値である。本実施形態の規定電流値Ipthは、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が「0(零)」と判断できるような値に設定されている。
指示電流値Ipが規定電流値Ipthよりも大きい場合(ステップS16:NO)、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が規定量よりも多い、即ち吐出量が「0(零)」ではないと判断できるため、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を前述したステップS12に移行する。一方、指示電流値Ipが規定電流値Ipth以下である場合(ステップS16:YES)、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が規定量以下である、即ち吐出量が「0(零)」であると判断できるため、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を次のステップS17に移行する。
ステップS17において、ブレーキ制御ユニット74は、ポンプ用モータ57に対する指示電流値Ipと、差圧弁52に対する指示電流値とに基づき、MC圧とWC圧との差圧推定値Psubを取得する。なお、差圧推定値Psubは、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が一定である場合には差圧弁52に対する指示電流値が大きいほど大きい値となり、差圧弁52に対する指示電流値が一定である場合にはポンプ58からのブレーキ液の吐出量が多いほど大きい値となる。この点で、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、差圧取得部としても機能する。
そして、ブレーキ制御ユニット74は、取得した差圧推定値Psubが予め設定された規定液圧Psubth以上であるか否かを判定する(ステップS18)。この規定液圧Psubthは、WC圧が高圧であるか否かの判断基準として予め設定された値である。差圧推定値Psubが規定液圧Psubth未満である場合(ステップS18:NO)、WC圧が高圧ではないと判断され、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を前述したステップS12に移行する。
一方、差圧推定値Psubが規定液圧Psubth以上である場合(ステップS18:YES)、WC圧が高圧であると判断できるため、ブレーキ制御ユニット74は、ブレーキ操作量センサSE2からの検出信号に基づき検出された運転者によるブレーキ操作量Pbpを取得する(ステップS19)。そして、ブレーキ制御ユニット74は、取得したブレーキ操作量Pbpが上記無効操作量KPbpを超えているか否かを判定する(ステップS20)。ブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbp以下である場合(ステップS20:NO)、運転者によるブレーキ操作でMC圧が未だ増圧されていないと判断され、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
一方、ブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超えている場合(ステップS20:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧検出センサSE4からの検出信号に基づき検出されたMC圧Pmcを取得する(ステップS21)。続いて、ブレーキ制御ユニット74は、判定フラグFLGがオフであるか否かを判定する(ステップS22)。判定フラグFLGがオフである場合(ステップS22:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を次のステップS23に移行する。
ステップS23において、ブレーキ制御ユニット74は、ステップS19で取得したブレーキ操作量Pbpを基準操作量Pbp_baseとし、ステップS21で取得したMC圧Pmcを基準液圧Pmc_baseとする。この点で、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、基準設定部としても機能する。そして、ブレーキ制御ユニット74は、判定フラグFLGをオンにセットし(ステップS24)、判定タイマThに「0(零)」をセットする(ステップS25)。その後、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
その一方で、判定フラグFLGがオンである場合(ステップS22:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、判定タイマThを「1」だけインクリメントする(ステップS26)。そして、ブレーキ制御ユニット74は、更新した判定タイマThが予め設定された判定タイマ基準値Thth未満であるか否かを判定する(ステップS27)。
判定タイマThが判定タイマ基準値Thth以上である場合(ステップS27:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、判定処理を行うことなく、その処理を前述したステップS12に移行する。すなわち、本実施形態では、判定タイマThが、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを取得してからの経過時間に相当し、判定タイマ基準値Ththが、判定時間に相当する。一方、判定タイマThが判定タイマ基準値Thth未満である場合(ステップS27:YES)、ステップS19で取得したブレーキ操作量Pbpを比較操作量Pbp_comとし、ステップS21で取得したMC圧Pmcを比較液圧Pmc_comとする(ステップS28)。この点で、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、比較設定部としても機能する。
続いて、ブレーキ制御ユニット74は、取得した比較操作量Pbp_comがステップS23で取得した基準操作量Pbp_baseと異なっているか否かを判定する(ステップS29)。すなわち、ステップS29では、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comを取得した時点のマスタシリンダ33のピストン41,42の移動量である第2の移動量が、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを取得した際のピストン41,42の移動量である第1の移動量と異なっているか否かが判定される。
比較操作量Pbp_comが基準操作量Pbp_baseと一致している場合(ステップS29:NO)、基準操作量Pbp_baseを取得してからブレーキ操作量が変わっていないと判断され、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。一方、比較操作量Pbp_comが基準操作量Pbp_baseと異なる場合(ステップS29:YES)、ブレーキ操作量が無効操作量を超えた範囲で変わったと判断され、ブレーキ制御ユニット74は、操作量差Pbp_sub及び液圧差Pmc_subを演算する(ステップS30)。具体的には、ブレーキ制御ユニット74は、比較操作量Pbp_comから基準操作量Pbp_baseを減算して操作量差Pbp_subを求め、比較液圧Pmc_comから基準液圧Pmc_baseを減算して液圧差Pmc_subを求める。
そして、ブレーキ制御ユニット74は、取得した操作量差Pbp_subに応じた推定液圧差Pmc_estを設定する(ステップS31)。運転者によるブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超えている場合、MC圧Pmcと有効操作量との間には一定の対応関係がある。言い換えると、MC圧検出センサSE4が正常である場合においては、運転者によるブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超えていると、操作量差Pbp_subと液圧差Pmc_subとの間には一定の対応関係があるはずである。すなわち、推定液圧差Pmc_estは、操作量差Pbp_subが大きい場合ほど大きい値となる。
続いて、ブレーキ制御ユニット74は、設定した推定液圧差Pmc_estに予め設定されたゲインG(例えば、0.9)を掛け合わせて判定値を求め、ステップS30で演算した液圧差Pmc_subが判定値未満であるか否かを判定する(ステップS32)。すなわち、ステップS32では、操作量差Pbp_sub及び液圧差Pmc_subの関係に基づき、MC圧検出センサSE4に異常が発生しているか否かを判定する判定処理が行われる。したがって、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、MC圧検出センサSE4に異常が発生しているか否かを判定する判定部としても機能する。なお、本実施形態のゲインGは、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを取得してからの経過時間が判定時間を超えるまでのブースタ圧の減圧度合の推定値などに基づいて設定されている。
液圧差Pmc_subが判定値(=Pmc_est×G)以上である場合(ステップS32:NO)、MC圧検出センサSE4が正常である、即ち操作量差Pbp_subと液圧差Pmc_subとの間に一定の対応関係があると判断され、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。一方、液圧差Pmc_subが判定値未満である場合(ステップS32:YES)、MC圧検出センサSE4に異常が発生している、即ち操作量差Pbp_subと液圧差Pmc_subとの間に一定の対応関係がないと判断され、ブレーキ制御ユニット74は、異常判定を行う(ステップS33)。その後、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
なお、異常判定が行われた場合、ブレーキ制御ユニット74は、運転者によるブレーキ操作が行われた際でも、MC圧検出センサSE4からの検出信号を用いないでブレーキ制御を行う。
次に、本実施形態のハイブリッド車両の動作について図7に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、前提として、バッテリ16の蓄電量が十分にあるなどの理由によってブレーキ操作が開始されても前輪FR,FLには回生制動力BPmgが付与されないものとする。また、車両が停止した時点でマスタシリンダ33内のMC圧Pmcとホイールシリンダ内のWC圧Pwcとの差圧が十分に大きくなっており、WC圧Pwcは高圧であるものとする。
図7(a)(b)に示すように、車両走行中の第1のタイミングt21でブレーキ操作が開始されると、車両が減速し始める。すると、図7(c)に示すように、第1のタイミングt21の経過時点でポンプ用モータ57が駆動し始める。その結果、図7(e)(f)に示すように、マスタシリンダ33内のMC圧Pmcは増圧されないにも拘わらず、車輪FR,FL,RR,RLのホイールシリンダ内のWC圧Pwcが増圧し始める。すなわち、車両には、ブレーキアクチュエータ50の作動に基づいた液圧制動力BPpが付与されている。
そして、第2のタイミングt22が経過すると、図7(d)に示すように、運転者によるブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超える。すると、図7(d)(f)に示すように、マスタシリンダ33内のMC圧Pmcは、ブレーキ操作量Pbpから無効操作量KPbpを差し引いた有効操作量PbpEの増大に応じた増圧される。その後、第3のタイミングt23が経過すると、ブレーキ操作量Pbpが一定となり、MC圧Pmcは、第3のタイミングt23の直前の液圧が保持されるようになる。
そして、第4のタイミングt24で車両が停止すると、図7(c)に示すように、ポンプ用モータ57に対する指示電流値Ipが減少され、第5のタイミングt25で指示電流値Ipが「0(零)」となる。すると、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が規定量(本実施形態では0(零))以下であり、且つホイールシリンダ内のWC圧Pwcが規定液圧Psubth以上であるため、第5のタイミングt25で取得されたブレーキ操作量Pbp及びMC圧Pmcが、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseとされる。なお、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを取得した時点のマスタシリンダ33のピストン41,42の移動量が、第1の移動量に相当する。すなわち、運転者によるブレーキ操作量Pbpから、ピストン41,42の移動量の推定が可能である。
そして、第5のタイミングt25からの経過時間が判定時間を超える第8のタイミングt28までの間では、取得されたブレーキ操作量Pbp及びMC圧Pmcが比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comとされる。そして、基準操作量Pbp_base、比較操作量Pbp_com、基準液圧Pmc_base及び比較液圧Pmc_comに基づいた判定処理が行われる。
すなわち、第6のタイミングt26では、ブレーキ操作量Pbpが第5のタイミングt25でのブレーキ操作量Pbp(即ち、基準操作量Pbp_base)から変わっていないため、判定処理が行われない。その後、ブレーキ操作量Pbpが増えた第7のタイミングt27では、ブレーキ操作量Pbpが第5のタイミングt25でのブレーキ操作量Pbp(即ち、基準操作量Pbp_base)から変わっているため、判定処理が行われる。具体的には、第7のタイミングt27で取得された取得されたブレーキ操作量Pbp及びMC圧Pmcが比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comとされる。
このとき、比較操作量Pbp_comと基準操作量Pbp_baseとの操作量差Pbp_subに対して、比較液圧Pmc_comと基準液圧Pmc_baseとの液圧差Pmc_subが小さすぎる場合、制御装置70では、その時点のMC圧Pmcに応じた適切な検出信号がMC圧検出センサSE4から入力されていないと判断される。すなわち、MC圧検出センサSE4に異常が発生していると判定され、異常判定が行われる。なお、このように判定処理が行われた時点のマスタシリンダ33のピストン41,42の移動量が、第2の移動量に相当する。
以上説明したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)運転者によるブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超え、マスタシリンダ33内のMC圧が増圧されるようになってから、基準操作量Pbp_base、比較操作量Pbp_com、基準液圧Pmc_base及び比較液圧Pmc_comが取得される。そして、基準操作量Pbp_baseと比較操作量Pbp_comとの操作量差Pbp_subに対して、基準液圧Pmc_baseと比較液圧Pmc_comとの液圧差Pmc_subが小さすぎると、MC圧検出センサSE4に異常が発生していると判定される。したがって、無効操作量KPbpが設定されたマスタシリンダ33を液圧制動装置30が備えているとしても、MC圧検出センサSE4に異常が発生しているか否かを判定することができるようになる。
(2)ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が規定量を超えている場合には、マスタシリンダ33のピストン41,42の移動量が無効移動量を超えるようなブレーキ操作を運転者が行っても、マスタシリンダ33内の多くのブレーキ液がポンプ58に吸引されるため、MC圧Pmcが増圧されにくい。そこで、本実施形態では、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が規定量(=0(零))以下である場合に基準操作量Pbp_base、比較操作量Pbp_com、基準液圧Pmc_base及び比較液圧Pmc_comが取得される。これにより、運転者によるブレーキ操作量Pbpの変化によってMC圧Pmcが変化しやすい状況下で設定された基準操作量Pbp_base、比較操作量Pbp_com、基準液圧Pmc_base及び比較液圧Pmc_comに基づき、判定処理が行われるようになる。その結果、判定処理の判定精度を向上させることができるようになる。
(3)ブレーキ操作量Pbpの変化量が同等である場合においては、ホイールシリンダのWC圧Pwcが高圧である場合ほど、マスタシリンダ33から差圧弁52を介してホイールシリンダ側にブレーキ液が流動しにくくなっており、MC圧Pmcが増圧されやすい。そのため、本実施形態では、差圧推定値Psubが規定液圧Psubth以上である場合に、基準操作量Pbp_base、比較操作量Pbp_com、基準液圧Pmc_base及び比較液圧Pmc_comが取得される。これにより、運転者によるブレーキ操作量Pbpの変化によってMC圧Pmcが変化しやすい状況下で設定された基準操作量Pbp_base、比較操作量Pbp_com、基準液圧Pmc_base及び比較液圧Pmc_comに基づき、判定処理が行われるようになる。その結果、判定処理の判定精度を向上させることができるようになる。
(4)ハイブリッド車両にあっては、車両の停止時にはエンジン11の運転を停止させることがある。また、ブースタ32として、エンジン11の吸気負圧を利用したブースタ圧を発生させるブースタが採用されている場合には、ブースタ圧の変化によってマスタシリンダ33のピストン41,42に伝達されるブレーキ操作力が変わる。すなわち、車両の停止時においてエンジン11の運転が停止している場合には、ブレーキ操作量Pbpが一定であったとしても、時間経過に伴うブースタ圧の減圧によってブレーキ操作力が小さくなり、マスタシリンダ33内のMC圧Pmcが減圧されるおそれがある。この場合、ブースタ圧が高圧であった時点で設定された基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseと、ブースタ圧が低圧になってから設定された比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comとを用いて判定処理を行っても、その判定精度が高いとは言い難い。
そこで、本実施形態では、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを経過してからの経過時間が判定時間を超えた場合には、この基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを用いた判定処理の実行が禁止される。そのため、MC圧検出センサSE4が正常であるにも拘わらず、このMC圧検出センサSE4に異常が発生していると誤判定される可能性を低くすることができるようになる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8及び図9に従って説明する。なお、第2の実施形態は、ブレーキ操作量センサSE2に異常が発生しているか否かを判定する判定処理を行う点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとする。
ブレーキ操作量センサSE2に異常が発生しているか否かを判定するためにブレーキ制御ユニット74が実行する操作量異常判定処理ルーチンについて、図8及び図9に示すフローチャートを参照して説明する。
この操作量異常判定処理ルーチンは、予め設定された所定周期毎に実行される処理ルーチンであって、ステップS11〜S19までの各処理は、上記MC圧異常判定処理ルーチンのステップS11〜S19までの各処理と同一処理である。こうした操作量異常判定処理ルーチンにおいて、ブレーキ制御ユニット74は、ステップS19にてブレーキ操作量Pbpを取得すると、その処理を次のステップS201に移行する。
ステップS201において、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧検出センサSE4からの検出信号に基づき検出されたMC圧Pmcを取得する。続いて、ブレーキ制御ユニット74は、取得したMC圧Pmcが予め設定された有効操作量判定液圧KPmcを超えているか否かを判定する(ステップS211)。この有効操作量判定液圧KPmcは、ブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超えたか否かを、MC圧Pmcを用いて判断するための判定値である。MC圧Pmcが有効操作量判定液圧KPmc以下である場合(ステップS211:NO)、ブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbp以下であると判断され、ブレーキ制御ユニット74は、操作量異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
一方、MC圧Pmcが有効操作量判定液圧KPmcを超えている場合(ステップS211:YES)、ブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超えていると判断され、ブレーキ制御ユニット74は、判定フラグFLGがオフであるか否かを判定する(ステップS22)。判定フラグFLGがオフである場合(ステップS22:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、ステップS23〜S25の各処理を順次行い、操作量異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
その一方で、判定フラグFLGがオンである場合(ステップS22:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、ステップS26〜S28の各処理を行う。続いて、ブレーキ制御ユニット74は、ステップS28で取得した比較液圧Pmc_comがステップS23で取得した基準液圧Pmc_baseと異なっているか否かを判定する(ステップS291)。すなわち、ステップS291では、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comを取得した時点におけるマスタシリンダ33のピストン41,42の移動量である第2の移動量が、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを取得した際のピストン41,42の移動量である第1の移動量と異なっているか否かが判定される。
比較液圧Pmc_comが基準液圧Pmc_baseと一致している場合(ステップS291:NO)、基準液圧Pmc_baseを取得してからブレーキ操作量が変わっていないと判断され、ブレーキ制御ユニット74は、操作量異常判定処理ルーチンを一旦終了する。一方、比較液圧Pmc_comが基準液圧Pmc_baseと異なる場合(ステップS291:YES)、ブレーキ操作量が無効操作量を超えた範囲で変わったと判断され、ブレーキ制御ユニット74は、操作量差Pbp_sub及び液圧差Pmc_subを演算する(ステップS30)。
そして、ブレーキ制御ユニット74は、取得した液圧差Pmc_subに応じた推定操作量Pbp_estを設定する(ステップS311)。運転者によるブレーキ操作によってMC圧Pmcが増圧されている場合、MC圧Pmcと有効操作量との間には一定の対応関係がある。言い換えると、ブレーキ操作量センサSE2が正常である場合においては、運転者によるブレーキ操作によってMC圧Pmcが増圧されるようになると、操作量差Pbp_subと液圧差Pmc_subとの間には一定の対応関係があるはずである。すなわち、推定操作量Pbp_estは、液圧差Pmc_subが大きい場合ほど大きい値となる。
続いて、ブレーキ制御ユニット74は、設定した推定操作量Pbp_estにゲインGを掛け合わせて判定値を求め、ステップS30で演算した操作量差Pbp_subが判定値未満であるか否かを判定する(ステップS321)。すなわち、ステップS321では、操作量差Pbp_sub及び液圧差Pmc_subの関係に基づき、ブレーキ操作量センサSE2に異常が発生しているか否かを判定する判定処理が行われる。この点で、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、ブレーキ操作量センサSE2に異常が発生しているか否かを判定する判定部としても機能する。
操作量差Pbp_subが判定値(=Pbp_est×G)以上である場合(ステップS321:NO)、ブレーキ操作量センサSE2が正常である、即ち操作量差Pbp_subと液圧差Pmc_subとの間に一定の対応関係があると判断され、ブレーキ制御ユニット74は、操作量異常判定処理ルーチンを一旦終了する。一方、操作量差Pbp_subが判定値未満である場合(ステップS321:YES)、ブレーキ操作量センサSE2に異常が発生している、即ち操作量差Pbp_subと液圧差Pmc_subとの間に一定の対応関係がないと判断され、ブレーキ制御ユニット74は、異常判定を行う(ステップS331)。その後、ブレーキ制御ユニット74は、操作量異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
次に、本実施形態の判定処理が実行される際の車両の動作について説明する。
車両が停止した後にポンプ58の動作が完全に停止すると、その時点で取得されたブレーキ操作量Pbp及びMC圧Pmcが、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseとされる。なお、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを取得した時点におけるマスタシリンダ33のピストン41,42の移動量が、第1の移動量に相当する。すなわち、マスタシリンダ33内のMC圧Pmcに基づき、ピストン41,42の無効移動量を超えてからの移動量の推定が可能である。
そして、運転者が制動力を増大させるべくブレーキ操作を行うと、マスタシリンダ33のピストン41,42が制動方向にさらに移動する。すると、MC圧Pmcが増圧される。そして、こうしたタイミングで取得されたブレーキ操作量Pbp及びMC圧Pmcが、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comとされる。なお、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comを取得した時点のピストン41,42の移動量が、第2の移動量に相当する。
すると、基準操作量Pbp_base、比較操作量Pbp_com、基準液圧Pmc_base及び比較液圧Pmc_comに基づいた判定処理が行われる。このとき、比較液圧Pmc_comと基準液圧Pmc_baseとの液圧差Pmc_subに対して、比較操作量Pbp_comと基準操作量Pbp_baseとの操作量差Pbp_subが小さすぎる場合、制御装置70では、その時点のブレーキ操作量Pbpに応じた適切な検出信号がブレーキ操作量センサSE2から入力されていないと判断される。すなわち、ブレーキ操作量センサSE2に異常が発生していると判定され、異常判定が行われる。
以上説明したように、本実施形態では、上記第1の実施形態における効果(2)〜(4)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(5)マスタシリンダ33内に、有効操作量PbpEに応じたMC圧Pmcが発生するようになってから、基準操作量Pbp_base、比較操作量Pbp_com、基準液圧Pmc_base及び比較液圧Pmc_comが設定される。そして、基準液圧Pmc_baseと比較液圧Pmc_comとの液圧差Pmc_subに対して、基準操作量Pbp_baseと比較操作量Pbp_comとの操作量差Pbp_subが小さすぎると、ブレーキ操作量センサSE2に異常が生じていると判定される。したがって、無効操作量KPbpが設定されたマスタシリンダ33を液圧制動装置30が備えているとしても、ブレーキ操作量センサSE2に異常が発生しているか否かを判定することができるようになる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図10〜図12に従って説明する。なお、第3の実施形態は、MC圧異常判定処理ルーチンの内容の一部が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとする。
本実施形態のMC圧異常判定処理ルーチンについて、図10及び図11に示すフローチャートと、図12に示すタイミングチャートとを参照して説明する。
このMC圧異常判定処理ルーチンにおいて、ブレーキ制御ユニット74は、ブレーキ操作中ではない場合(ステップS11:NO)、切替タイマTkを「0(零)」にリセットし(ステップS122)、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。一方、ブレーキ制御ユニット74は、ブレーキ操作中である場合(ステップS11:YES)、車両の車体速度VSを取得し(ステップS13)、車両が停止しているか否かを判定する(ステップS14)。車両が停止していないと判定した場合(ステップS14:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を前述したステップS122に移行する。
一方、車両が停止していると判定した場合(ステップS14:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、切替タイマTkを「1」だけインクリメントする(ステップS14−1)。この切替タイマTkは、車両が停止してからの経過時間に相当する。続いて、ブレーキ制御ユニット74は、ポンプ用モータ57に対する指示電流値Ipを取得し(ステップS15)、この指示電流値Ipが規定電流値Ipth以下であるか否かを判定する(ステップS16)。指示電流値Ipが規定電流値Ipth以下である場合(ステップS16:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧とWC圧との差圧推定値Psubを取得し(ステップS17)、この差圧推定値Psubが規定液圧Psubth以上であるか否かを判定する(ステップS18)。
差圧推定値Psubが規定液圧Psubth以上である場合(ステップS18:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、運転者によるブレーキ操作量Pbpを取得し(ステップS19)、このブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超えているか否かを判定する(ステップS20)。ブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbpを超えている場合(ステップS20:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、その処理を次のステップS21に移行する。
なお、本実施形態において、ブレーキ制御ユニット74は、以下に示す3つの条件のうち少なくとも1つが成立する場合にはMC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
(第1の条件)指示電流値Ipが規定電流値Ipthよりも大きい場合(ステップS16:NO)。
(第2の条件)差圧推定値Psubが規定液圧Psubth未満である場合(ステップS18:NO)。
(第3の条件)ブレーキ操作量Pbpが無効操作量KPbp以下である場合(ステップS20:NO)。
そして、ステップS21においてマスタシリンダ33のMC圧Pmcを取得すると、ブレーキ制御ユニット74は、ステップS14−1で更新した切替タイマTkが予め設定された切替タイマ基準値Tkth未満であるか否かを判定する(ステップS222)。
ここで、運転者は、ブレーキ操作によって車両を停止させる場合には、車両が停止してからブレーキ操作量をさらに多くするようなブレーキ操作(以下、「規定ブレーキ操作」ともいう。)を行うことがある。特に運転の上手な運転者は、車両の停止する前にブレーキ操作量を少なくし、車両の停止後に規定ブレーキ操作を行うことがある。こうしたブレーキ操作によって、車両の停止時に発生する振動(「揺り返し」ともいう。)を抑え、且つその後の不要な車両の移動の抑制が図られる。なお、図12(a)〜(f)のタイミングチャートでは、第3のタイミングt33で規定ブレーキ操作が行われている。
そこで、本実施形態では、車両が停止してからの規定ブレーキ操作が行われるまでの時間を実験やシミュレーションなどによって予め求め、該時間に基づき所定時間KTが設定されている。そして、こうした所定時間KTに基づき切替タイマ基準値Tkthが設定される。すなわち、本実施形態では、切替タイマ基準値Tkthが、所定時間KTに相当する。
図11のフローチャートに戻り、切替タイマTkが切替タイマ基準値Tkth未満である場合(ステップS222:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseが未設定であるか否かを判定する(ステップS22−1)。既に設定済みである場合(ステップS22−1:NO)、ブレーキ制御ユニット74は、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。一方、未だ設定されていない場合(ステップS22−1:YES)、ブレーキ制御ユニット74は、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを設定し(ステップS23)、判定タイマThに「0(零)」をセットし(ステップS25)、その後、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。したがって、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、基準操作量設定部としても機能し、基準液圧設定部としても機能する。
その一方で、切替タイマTkが切替タイマ基準値Tkth以上である場合(ステップS222:NO)、上記の規定ブレーキ操作を運転者が行った可能性があると判断され、ブレーキ制御ユニット74は、判定タイマThを「1」だけインクリメントする(ステップS26)。そして、ブレーキ制御ユニット74は、更新した判定タイマThが判定タイマ基準値Thth以上である場合(ステップS27:NO)、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
一方、ブレーキ制御ユニット74は、判定タイマThが判定タイマ基準値Thth未満である場合(ステップS27:YES)、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comを取得し(ステップS28)、操作量差Pbp_sub及び液圧差Pmc_subを演算する(ステップS30)。したがって、本実施形態では、ブレーキ制御ユニット74が、比較操作量設定部としても機能し、比較液圧設定部としても機能する。続いて、ブレーキ制御ユニット74は、上記ステップS31〜S33の各処理を順次実行し、MC圧異常判定処理ルーチンを一旦終了する。
すなわち、図12のタイミングチャートに示すように、車両が停止した第1のタイミングt31からの経過時間が所定時間KTに達する第4のタイミングt34よりも前の第2のタイミングt32で、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseが設定される。また、第4のタイミングt34よりも後の第5のタイミングt35で、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comが設定され、判定処理が行われる。
以上説明したように、本実施形態では、上記第1及び第2の各実施形態における効果(2)〜(4)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(6)車両が停止した時点からの経過時間が所定時間KTに達した時点で規定ブレーキ操作を運転者が行っている場合には、その前後でブレーキ操作量Pbpが変わっている。そのため、規定ブレーキ操作が行われる前に、基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseを設定することが可能となる。また、規定ブレーキ操作が行われた後、又は規定ブレーキ操作中に、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comを設定することが可能となる。そして、こうした基準操作量Pbp_base、基準液圧Pmc_base、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comに基づき判定処理が行われる。したがって、無効操作量KPbpが設定されたマスタシリンダ33を液圧制動装置30が備えているとしても、MC圧検出センサSE4に異常が発生しているか否かを判定することができるようになる。
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・ブレーキ操作量センサSE2及びMC圧検出センサSE4の少なくとも一方が正常である場合には、車両の停止中における運転者による規定ブレーキ操作を検知することができる。そこで、第3の実施形態では、車両が停止してから規定ブレーキ操作が行われるまでの時間を実測し、この実測結果に基づき所定時間KTを学習させるようにしてもよい。
・第3の実施形態において、車両が停止してから所定時間KTが経過するまでに取得された複数のブレーキ操作量Pbpの平均値を基準操作量Pbp_baseとし、車両が停止してから所定時間KTが経過するまでに取得された複数のMC圧Pmcの平均値を基準液圧Pmc_baseとしてもよい。
・第3の実施形態において、車両が停止してから所定時間KTが経過するまでの間であれば、基準操作量Pbp_baseを設定するタイミングと、基準液圧Pmc_baseを設定するタイミングとを異ならせてもよい。同様に、車両が停止してからの経過時間が所定時間KTを超えているのであれば、比較操作量Pbp_comを設定するタイミングと、比較液圧Pmc_comを設定するタイミングとを異ならせてもよい。
・車両が停止してから所定時間KTが経過する前に取得された基準操作量Pbp_base及び基準液圧Pmc_baseと、所定時間KTが経過した後に取得された比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comとに基づき、ブレーキ操作量センサSE2に異常が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。
・第1及び第2の各実施形態において、連続して検出された複数のブレーキ操作量Pbpの平均値を基準操作量Pbp_baseとし、連続して検出された複数のMC圧Pmcの平均値を基準液圧Pmc_baseとしてもよい。同様に、連続して検出された複数のブレーキ操作量Pbpの平均値を比較操作量Pbp_comとし、連続して検出された複数のMC圧Pmcの平均値を比較液圧Pmc_comとしてもよい。
・各実施形態において、ステップS17,S18の各処理を省略してもよい。この場合、車両停止時には、ホイールシリンダ内のWC圧が低圧である場合であっても、基準操作量Pbp_base、基準液圧Pmc_base、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comが設定され、判定処理が行われるようになる。これにより、上記各実施形態の場合と比較して、判定処理を行う機会を増やすことができる。
・各実施形態において、規定電流値Ipthは、「0(零)」よりも大きい値に設定してもよい。この場合、車両停止時には、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量が少ない場合には、基準操作量Pbp_base、基準液圧Pmc_base、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comが設定され、判定処理が行われるようになる。これにより、上記各実施形態の場合と比較して、判定処理を行う機会を増やすことができる。
・各実施形態において、ステップS15,S16の各処理を省略してもよい。この場合、車両停止時には、ポンプ58からのブレーキ液の吐出量の多さには関係なく、基準操作量Pbp_base、基準液圧Pmc_base、比較操作量Pbp_com及び比較液圧Pmc_comが設定され、判定処理が行われるようになる。これにより、上記各実施形態の場合と比較して、判定処理を行う機会を増やすことができる。
・各実施形態において、マスタ側流路60を、マスタシリンダ33と差圧弁52との間に接続するのではなく、リザーバ34に接続してもよい。この場合、ポンプ58の作動によって、リザーバ34内のブレーキ液がマスタシリンダ33を介することなくポンプ58に吸引されるようになる。
・回生制動力を付与する車輪は、後輪RR,RLであってもよい。もちろん、全ての車輪FR,FL,RR,RLに回生制動力が付与されるようにしてもよい。
・ハイブリッドシステムは、回生制動力を少なくとも一つの車輪に付与できる構成であれば、モータを一つのみ設けた構成であってもよい。こうしたハイブリッドシステムとしては、クランク軸11aに動力を直接付与できるように配置されたモータを備えたシステムなどが挙げられる。また、ハイブリッドシステムは、車輪FR,FL,RR,RL毎にモータを動力源として設けたシステムであってもよい。
・また、液圧制動装置30及び回生制動装置を備えた車両としては、動力源としてエンジンを有さない電気自動車であってもよい。この場合、動力源であるモータが回生制動装置として機能する。また、電気自動車である場合、ブースタとしては、バキューム式のものではなく、ハイドロリック式のブースタであることが好ましい。
・また、車両は、動力源としてエンジン11のみを備えたものであってもよい。こうした場合、エンジン11のクランク軸11aに駆動連結される補機(例えば、オルタネータ)での発電態様を、ブレーキ操作時と非ブレーキ操作時とで異ならせることが好ましい。こうした構成を採用することにより、非ブレーキ操作時には補機での発電を制限させ、ブレーキ操作時には補機での発電を制限させないようにすることができる。
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記判定部(74、S32、S321)は、前記基準操作量(Pbp_base)及び基準液圧(Pmc_base)を取得してからの経過時間(Th)が予め設定された判定時間(Thth)以上になったときには(S27:NO)、設定済みの前記基準操作量(Pbp_base)及び基準液圧(Pmc_base)を用いた前記各検出部(SE2,SE4)の何れか一方に異常が発生しているか否かの判定を行わない。