特許文献1では、白インクにカラーインクを重ねた時のにじみを防ぐため、白インクによる印刷処理の終了時点から、一定の待ち時間の後にカラーインクによる印刷処理を開始することが開示されている。この場合、2回の印刷処理間の待ち時間は一定であるが、ある画素に白インクが吐出された後、同じ画素にカラーインクが吐出されるまでの時間は、印刷対象の画像のサイズに応じて変動してしまう。その結果、サイズが小さい画像では、同じ画素にカラーインクが吐出される時点で白インクが乾いていないためにカラーインクはにじむ一方で、サイズが大きい画像では、白インクが完全に乾いているためにカラーインクはにじまない、というように、印刷後の画像の品質が不均一となってしまう。
本発明は、複数回の処理で一つの画像を印刷する場合に、安定した品質の画像を得ることができる印刷装置および印刷制御プログラム、ならびに、複数回の処理で一つの画像を印刷する場合に、安定した品質の画像を得ることができる印刷データを作成する印刷データ作成装置および印刷データ作成プログラムを提供することを目的とする。
本発明の第一態様に係る印刷装置は、複数種類の液滴を夫々吐出可能な複数の印刷ヘッドと、前記複数の印刷ヘッドを支持するキャリッジを印刷媒体の保持体に対して相対的に移動させることが可能な移動手段と、印刷データに基づき、前記移動手段に前記キャリッジを前記保持体に対して相対的に移動させながら、前記複数の印刷ヘッドの各々に前記液滴を吐出させる印刷処理を実行する印刷制御手段と、複数の画素で構成される一つの画像を前記印刷媒体に印刷するための、前記複数の印刷ヘッドに夫々対応する複数種類の印刷データを取得する印刷データ取得手段と、前記複数種類の印刷データに従って、対応する前記複数の印刷ヘッドを順に用いて行われる複数回の前記印刷処理について、先の印刷処理開始時点から次の印刷処理開始時点までの待ち時間を示すデータを取得する待ち時間取得手段とを備えている。そして、前記印刷制御手段は、前記印刷データ取得手段によって取得された前記複数種類の印刷データのうち、一つの印刷データに基づいて一回の前記印刷処理を開始した時点からの経過時間が、前記待ち時間取得手段によって取得された前記データが示す前記待ち時間以上となった場合、前記複数種類の印刷データのうち次の印刷データに基づいて次の回の前記印刷処理を開始する。
前記印刷装置によれば、一つの画像を印刷するための複数種類の印刷データに従って、順に複数回の印刷処理が行われる場合、先の印刷処理の開始時点からの経過時間が取得された待ち時間以上となった場合に、次の印刷処理が開始される。よって、複数種類の印刷データのうち一つに基づいてある画素に液滴が吐出された後、次の印刷データに基づいて同じ画素に液滴が吐出されるまでの時間は、画像のサイズにかかわらず常に待ち時間と等しくなるので一定である。従って、画像のサイズにかかわらず、複数回の印刷処理の結果、安定した品質の画像を得ることができる。
前記印刷装置において、前記複数の印刷ヘッドは、白インクを吐出可能な第一ヘッドと、カラーインクを吐出可能な第二ヘッドとを含み、前記複数種類の印刷データは、前記第一ヘッドから前記白インクを吐出させるための第一データと、前記第二ヘッドから前記カラーインクを吐出させるための第二データとを含み、前記待ち時間は、前記第一ヘッドを用いた前記印刷処理の開始時点から前記第二ヘッドを用いた前記印刷処理の開始時点までの時間であってもよい。そして、前記印刷制御手段は、前記第一データに基づいて前記第一ヘッドを用いた前記白インクによる前記印刷処理を開始した時点からの前記経過時間が前記待ち時間以上となった場合、前記第二データに基づいて前記第二ヘッドを用いた前記カラーインクによる前記印刷処理を開始してもよい。
白インクの後にカラーインクでの印刷が行われる場合、白インクの乾き具合はカラーインクの発色に大きく影響する。よって、白インクによる印刷処理を開始した時点からの経過時間が待ち時間以上となった場合にカラーインクによる印刷処理を開始することで、白インクの後にカラーインクでの印刷を行う印刷装置でも、画像のサイズにかかわらず安定した品質の画像を得ることができる。
前記印刷装置において、前記待ち時間は、ユーザによって指定された任意の時間、または予め設定された所定時間以上の時間であってもよい。待ち時間が任意の時間である場合、ユーザは所望の画像品質に応じて、例えば、にじみのある画像を得たい場合は待ち時間を短くし、にじみのない画像を得たい場合は待ち時間を長くすればよい。この場合でも、画像のサイズにかかわらず、常に好みの品質の画像を得ることができる。また、待ち時間が所定時間以上の時間の場合、例えばにじみのない画像を得るために必要な時間を実験で特定し、予め所定時間として設定しておくことで、常ににじみのない安定した品質の画像を得ることができる。
前記印刷装置において、前記待ち時間取得手段は、前記印刷装置に接続された外部機器から送信された前記待ち時間を示す前記データを取得してもよい。この場合、外部機器で設定され、印刷装置に送信された待ち時間に基づき処理を行うことができる。
前記印刷装置は、前記待ち時間を指定する待ち時間指定手段を更に備えてもよい。そして、前記待ち時間取得手段は、前記待ち時間指定手段によって指定された前記待ち時間を示す前記データを取得してもよい。この場合、ユーザは、印刷装置の指定手段から、所望の画像品質に応じた待ち時間を指定できる。
前記印刷装置は、前記経過時間が前記待ち時間以上となった場合に前記印刷制御手段が前記次の印刷処理を開始するタイミングとして、前記経過時間が前記待ち時間以上となった時点である第一タイミング、および前記経過時間が前記待ち時間以上となった後、開始指示が受け付けられた時点である第二タイミングのいずれか一方を指定するデータを取得する開始タイミング取得手段を更に備えてもよい。そして、前記印刷制御手段は、前記開始タイミング取得手段によって前記第一タイミングを指定する前記データが取得された場合、前記経過時間が前記待ち時間以上となった時点で前記次の印刷処理を開始し、前記第二タイミングを指定する前記データが取得された場合、前記開始指示が受け付けられた時点で前記次の印刷処理を開始してもよい。
ユーザは、先の印刷処理の開始時点と次の印刷処理開始時点との間の待ち時間を、通常よりも長くしたい場合がある。次の印刷処理の開始タイミングを第一タイミングと第二タイミングとで指定可能とすることで、ユーザのより広範なニーズに対応できる。
本発明の第二態様の印刷制御プログラムは、印刷データに従って、複数種類の液滴を夫々吐出可能な複数の印刷ヘッドを支持するキャリッジを印刷媒体の保持体に対して相対的に移動させながら、前記複数の印刷ヘッドの各々に前記液滴を吐出させる印刷処理を実行する印刷装置において実行される。前記印刷制御プログラムは、複数の画素で構成される一つの画像を前記印刷媒体に印刷するための、前記複数の印刷ヘッドに夫々対応する複数種類の印刷データを取得するステップと、取得された前記複数種類の印刷データに従って夫々順に行われる複数回の前記印刷処理について、先の印刷処理開始時点から次の印刷処理開始時点までの待ち時間を示すデータを取得するステップと、前記複数種類の印刷データのうち一つの印刷データに従って、前記キャリッジを前記保持体に対して相対的に移動させながら、前記複数の印刷ヘッドのうち前記一つの印刷データに対応する印刷ヘッドを用いて一回の前記印刷処理を実行するステップと、前記印刷処理を開始した時点からの経過時間が、取得された前記データが示す前記待ち時間以上となったか否かを判断するステップとを前記印刷装置のコンピュータに実行させる指示を含み、前記印刷処理を実行するステップでは、前記経過時間が前記待ち時間以上となったと判断される度に、前記複数種類の印刷データのうち他の印刷データに従って次の回の前記印刷処理が実行される。
前記印刷制御プログラムが印刷装置において実行されると、印刷装置では、一つの画像を印刷するための複数種類の印刷データに従って順に複数回の印刷処理が行われる場合、先の印刷処理の開始時点からの経過時間が取得された待ち時間以上となった場合に、次の印刷処理が開始される。よって、複数種類の印刷データのうち一つに基づいてある画素に液滴が吐出された後、次の印刷データに基づいて同じ画素に液滴が吐出されるまでの時間は、画像のサイズがかかわらず常に待ち時間と等しくなるので一定である。従って、画像のサイズにかかわらず、複数回の印刷処理の結果、安定した品質の画像を得ることができる。
本発明の第三態様に係る印刷データ作成装置は、複数種類の液滴を夫々吐出可能な複数の印刷ヘッドを支持するキャリッジを印刷媒体の保持体に対して相対的に移動させながら、前記複数の印刷ヘッドの各々に前記液滴を吐出させる印刷処理を実行する印刷装置で使用される印刷データを作成する。前記印刷データ作成装置は、前記印刷媒体に印刷される画像を構成する複数の画素の各々の階調値を示すデータである階調データを取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段によって取得された前記階調データに基づいて、前記複数の画素の各々に対する前記複数の印刷ヘッドからの前記液滴の1回当たりの吐出量を夫々に示す複数種類の印刷データを作成する印刷データ作成手段と、前記複数種類の印刷データに従って夫々順に行われる複数回の前記印刷処理について、先の印刷処理開始時点から次の印刷処理開始時点までの待ち時間の指定を受け付ける待ち時間受付手段と、前記印刷データ作成手段によって作成された前記印刷データと前記待ち時間受付手段によって受け付けられた前記待ち時間を示すデータとを、前記印刷装置に送信するデータ送信手段とを備えている。
前記印刷データ作成装置によれば、印刷装置に対して、印刷装置において順に複数回の印刷処理を行うための複数種類の印刷データとともに、先の印刷処理の開始時点から次の印刷処理の開始時点までの待ち時間を示すデータが送信される。従って、印刷装置では、これらのデータに基づいて複数回の印刷処理が行われる場合、先の印刷処理の開始時点からの経過時間が待ち時間以上となった場合に、次の印刷処理が開始される。よって、複数種類の印刷データのうち一つに基づいてある画素に液滴が吐出された後、次の印刷データに基づいて同じ画素に液滴が吐出されるまでの時間は、画像のサイズがかかわらず常に待ち時間と等しくなるので一定である。従って、画像のサイズにかかわらず、複数回の印刷処理の結果、安定した品質の画像を印刷装置に印刷させることができる。
前記複数の印刷ヘッドは、白インクを吐出可能な第一ヘッドと、カラーインクを吐出可能な第二ヘッドとを含み、前記複数種類の印刷データは、前記第一ヘッドから前記白インクを吐出させるための第一データと、前記第二ヘッドから前記カラーインクを吐出させるための第二データとを含み、前記待ち時間は、前記第一ヘッドを用いた前記印刷処理の開始時点から前記第二ヘッドを用いた前記印刷処理の開始時点までの時間であってもよい。この場合、白インクによる印刷処理を開始した時点からの経過時間が待ち時間以上となった場合にカラーインクによる印刷処理を開始させることで、白インクの後にカラーインクでの印刷を行う印刷装置においても、画像のサイズにかかわらず安定した品質の画像を印刷させることができる。
前記印刷データ作成装置は、前記印刷処理を開始した時点からの経過時間が前記待ち時間以上となった場合に前記次の印刷処理を開始するタイミングとして、前記経過時間が前記待ち時間以上となった時点である第一タイミング、および前記経過時間が前記待ち時間以上となった後、開始指示が受け付けられた時点である第二タイミングのいずれか一方の指定を受け付ける開始タイミング受付手段を更に備えてもよい。そして、前記データ送信手段は、前記印刷データと前記待ち時間を示す前記データと共に、前記開始タイミング受付手段によって受け付けられた前記第一タイミングおよび前記第二タイミングのいずれか一方を示すデータを前記印刷装置に送信してもよい。
ユーザは、先の印刷処理の開始時点と次の印刷処理開始時点との間の待ち時間を、通常よりも長くしたい場合がある。次の印刷処理の開始タイミングを第一タイミングと第二タイミングとで指定可能とすることで、ユーザのより広範なニーズに対応できる。
本発明の第四態様に係る印刷データ作成プログラムは、複数種類の液滴を夫々吐出可能な複数の印刷ヘッドを支持するキャリッジを印刷媒体の保持体に対して相対的に移動させながら、前記複数の印刷ヘッドの各々に前記液滴を吐出させる印刷処理を実行する印刷装置で使用される印刷データを作成する印刷データ作成装置で実行される。前記印刷データ作成プログラムは、前記印刷媒体に印刷される画像を構成する複数の画素の各々の階調値を示すデータである階調データを取得するステップと、取得された前記階調データに基づいて、前記複数の画素の各々に対する前記複数の印刷ヘッドからの前記液滴の1回当たりの吐出量を夫々に示す複数種類の印刷データを作成するステップと、前記複数種類の印刷データに従って夫々順に行われる複数回の前記印刷処理について、先の印刷処理開始時点から次の印刷処理開始時点までの待ち時間の指定を受け付けるステップと、作成された前記印刷データと受け付けられた前記待ち時間を示すデータとを、前記印刷装置に送信するステップとを前記印刷データ作成装置のコンピュータに実行させる指示を含む。
前記印刷データ作成プログラムが印刷データ作成装置において実行されると、印刷装置に対して、印刷装置において順に複数回の印刷処理を行うための複数種類の印刷データとともに、先の印刷処理の開始時点から次の印刷処理の開始時点までの待ち時間を示すデータが送信される。従って、印刷装置では、これらのデータに基づいて複数回の印刷処理が行われる場合、先の印刷処理の開始時点からの経過時間が待ち時間以上となった場合に、次の印刷処理が開始される。よって、複数種類の印刷データのうち一つに基づいてある画素に液滴が吐出された後、次の印刷データに基づいて同じ画素に液滴が吐出されるまでの時間は、画像のサイズがかかわらず常に待ち時間と等しくなるので一定である。従って、画像のサイズにかかわらず、複数回の印刷処理の結果、安定した品質の画像を印刷装置に印刷させることができる。
本発明の第五態様に係る印刷装置は、複数種類の液滴を夫々吐出可能な複数の印刷ヘッドと、前記複数の印刷ヘッドを支持するキャリッジを印刷媒体の保持体に対して相対的に移動させることが可能な移動手段と、印刷データに基づき、前記移動手段に前記キャリッジを前記保持体に対して相対的に移動させながら、前記複数の印刷ヘッドの各々に前記液滴を吐出させる印刷処理を実行する印刷制御手段と、複数の画素で構成される一つの画像を前記印刷媒体に印刷するための、前記複数の印刷ヘッドに夫々対応する複数種類の印刷データを取得する印刷データ取得手段と、前記複数種類の印刷データに従って、対応する前記複数の印刷ヘッドを順に用いて行われる複数回の前記印刷処理について、先の印刷処理が終了した後、次の印刷処理の開始指示が受け付けられるまで待機するか否か示すデータを取得する待機指示データ取得手段とを備えている。そして、前記印刷制御手段は、前記待機指示データ取得手段によって取得された前記データが、前記先の印刷処理が終了した後、前記開始指示が受け付けられるまで待機することを示す場合、前記印刷データ取得手段によって取得された前記複数種類の印刷データのうち、一つの印刷データに基づいて一回の前記印刷処理を終了した後、前記開始指示が受け付けられた時点で、前記複数種類の印刷データのうち次の印刷データに基づいて次の回の前記印刷処理を開始することを特徴とする。
前記印刷装置によれば、ユーザは、先の印刷処理の後、都合のよい時点で開始指示をすることで、次の印刷処理を開始させることができる。従って、ユーザは、先の印刷処理から次の印刷処理までの間に、印刷結果の付加価値を高めるため等の所望の作業を行うことができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、印刷装置30および印刷データ作成装置としてのパーソナルコンピュータ(以下、PCという)1を含む印刷システム100について説明する。印刷装置30およびPC1は、通信ケーブルを介して相互に接続されている。印刷装置30は公知の布帛用インクジェットプリンタであり、インクヘッド35(図2参照)によって、印刷媒体である布帛に印刷を行うことができる。PC1は、汎用の情報処理装置である。PC1には、表示機器2であるモニタ2と、入力機器であるキーボード3およびマウス4とが接続されている。PC1は、印刷装置30に印刷を実行させるための印刷データを作成することができる。
図1〜図4を参照して、印刷装置30およびPC1の構成について順に説明する。なお、図1の左下側および右上側は、夫々、印刷装置30の正面側および背面側である。図1の左右方向および上下方向は、夫々、印刷装置30の左右方向および上下方向である。
まず、図1および図2を参照して、印刷装置30の物理的な構成について説明する。図1に示すように、印刷装置30は、矩形箱状の筐体31を有する。筐体31の内部の左右方向略中央下部に、一対のガイドレール37が前後方向に延びている。プラテン支持台38は、ガイドレール37により、ガイドレール37に沿って前後方向(副走査方向)に移動可能に支持されている。プラテン支持台38上面の左右方向略中央には、取り換え可能なプラテン39が固定されている。プラテン39は、平面視略五角形の板体であり、その上面に、例えば、印刷媒体であるTシャツなどの布帛を載置するためのものである。詳細は図示しないが、プラテン39が固定されたプラテン支持台38は、副走査モータ47(図4参照)およびベルトを含む副走査機構によって副走査方向に走査される。
筐体31の前後方向略中央、且つ、プラテン39よりも上方に、一対のガイドレール33が左右方向に延びている。キャリッジ34は、ガイドレール33によって、ガイドレール33に沿って左右方向(主走査方向)に移動可能に支持されている。キャリッジ34には、複数のインクヘッド35(図2参照)が搭載されている。複数のインクヘッド35の配置については、図2を参照して後述する。詳細は図示しないが、インクヘッド35を備えたキャリッジ34は、主走査モータ46(図4参照)およびベルトを含む主走査機構によって主走査方向に走査される。
印刷装置30は、インクヘッド35を主走査方向に走査させながらインクを吐出させることで、主走査方向にドット列(画素列)を形成することができる。印刷装置30は、主走査方向の1回の動作が完了すると、プラテン支持台38を副走査方向に走査することで、キャリッジ34をプラテン39に対して副走査方向に相対的に移動させる。印刷装置30は、その後再び主走査方向にドット列を形成する。印刷装置30は、以上の動作を印刷データに従って繰り返し実行することで、プラテン39上に載置された印刷媒体上に複数のドット列を形成して印刷を行う。
なお、本実施形態の印刷装置30は、キャリッジ34を主走査方向に移動させ、且つプラテン39を副走査方向に移動させることで、キャリッジ34をとプラテン39(プラテン39に載置された印刷媒体)に対して相対的に移動させる。しかし、印刷装置30は、キャリッジ34をプラテン39に対して相対的に移動させることが可能であればよく、具体的な移動方法は本実施形態の方法に限定されない。つまり、プラテン39を主走査方向に移動させ且つキャリッジ34を副走査方向に移動させる場合、プラテン39のみを主走査方向および副走査方向に移動させる場合、キャリッジ34のみを主走査方向および副走査方向に移動させる方法が採用可能である。
キャリッジ34の構成について説明する。図2に示すように、本実施形態におけるキャリッジ34には、複数のインクヘッド35が搭載されている。各インクヘッド35の底面には、複数個の微細なノズル36が設けられている。本実施形態では、インクヘッド35の各々に128個のノズル36が設けられているが、図2では、図の簡略化のため、実際の個数よりも少ない数のノズル36が図示されている。詳細は図示しないが、印刷装置30に装着されたインクカートリッジからインクヘッド35に供給されたインクは、吐出チャンネルに設けられた圧電素子の駆動によって、ノズル36から下向きに吐出される。各インクヘッド35における複数のノズル36は、図2では主走査方向に交差する方向(本実施形態では副走査方向)に並べて配置される。
本実施形態では、キャリッジ34には、白インクを吐出する4個の白インクヘッド35Wと、カラーインクを吐出する4個のカラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kとが共に搭載されている。より詳細には、図2に示すように、4個の白インクヘッド35Wが主走査方向に並べて配置されている。さらに、4個の白インクヘッド35Wに対して副走査方向に離間した位置に、4個のカラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kが主走査方向に並べて配置されている。カラーインクヘッド35Cはシアンインクを吐出する。カラーインクヘッド35Mはマゼンタインクを吐出する。カラーインクヘッド35Yはイエローインクを吐出する。カラーインクヘッド35Kは黒インクを吐出する。
本実施形態では、印刷装置30は、これらのインクヘッド35を用いて、白インクおよびカラーインクを用いた印刷を2種類の方法で行うことができる。第一の方法では、印刷装置30は、まず、白インクヘッド35Wから白インクのみを印刷媒体に吐出させて印刷を行い、その後、カラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kからカラーインクのみを既に白インクによる印刷が行われた印刷媒体に吐出させて印刷を行う。つまり、一つの画像について、キャリッジ34をプラテン39に対して2サイクル分走査させて、白インクによる印刷とカラーインクによる印刷を独立した2回の処理で実行する。
第二の方法では、印刷装置30は、一つの画像について、キャリッジ34をプラテン39に対して1サイクル分走査させる間に、白インクとカラーインクを共に印刷媒体に吐出させて印刷を行う。つまり、白インクとカラーインクの両方を用いて同時に印刷を実行するので、印刷処理が行われるのは1回である。なお、以下では、第一の方法による印刷を「白・カラー個別印刷」といい、第二の方法による印刷を「白・カラー同時印刷」という。
なお、本実施形態の印刷装置30は、白インクとカラーインクを夫々吐出可能な少なくとも2個のインクヘッド35を備えていればよく、インクヘッド35の種類や数は、図2に示す例に限られない。例えば、白インクに対応するインクヘッド35の数は、4個でなく1個だけでもよいし、白インクに対応して複数のインクヘッド35がキャリッジ34に搭載される場合、その一部を用いて印刷が実行されてもよい。また、カラーインクについては、黒以外の3色(シアン、マゼンタ、イエロー)に対応する3個のインクヘッド35が設けられてもよいし、シアン、マゼンタ、イエロー、黒のうちいずれか1色に対応する1個が設けられてもよい。シアン、マゼンタ、イエロー、黒以外(例えば、ゴールド、シルバー等)のインクを吐出するインクヘッド35が設けられてもよい。
図3を参照して、印刷装置30の電気的構成について説明する。印刷装置30は、印刷装置30の制御を司るCPU40を備える。CPU40には、ROM41、RAM42、ヘッド駆動部43、モータ駆動部45、表示制御部48、操作処理部50、およびUSB(Universal Serial Bus)インタフェース52が、バス55を介して接続されている。
ROM41には、印刷装置30の動作を制御するための印刷制御プログラム等の各種プログラム、各種初期値等が記憶されている。RAM42には、PC1から受信した印刷データ等の各種データが一時的に記憶される。ヘッド駆動部43は、インクを吐出するインクヘッド35に接続しており、インクヘッド35の各吐出チャンネルに設けられた圧電素子(図示略)を駆動する。モータ駆動部45は、インクヘッド35を主走査方向に移動させる主走査モータ46と、インクヘッド35を副走査方向に移動させる副走査モータ47とを駆動する。
表示制御部48は、CPU40からの指示に応じてディスプレイ49の表示を制御する。操作処理部50は、操作パネル51を介して入力された情報や指示を検知する。なお、図示は省略するが、操作パネル51には、例えば、印刷処理の開始指示を入力するための印刷開始ボタン、印刷処理の中止指示を入力するための印刷中止ボタン、数値を入力するためのテンキー等が含まれる。ユーザは、操作パネル51から各種情報や指示を入力できる。印刷装置30は、USBインタフェース52に接続されるUSBケーブルを介して、PC1等の外部機器に接続することができる。
図4を参照して、PC1の電気的構成について説明する。PC1は、PC1の制御を司るCPU10を備える。CPU10には、ROM11、RAM12、CD−ROMドライブ13、ハードディスクドライブ(以下、HDDという)14、表示制御部16、操作処理部17、およびUSBインタフェース18が、バス19を介して接続されている。
ROM11には、CPU10が実行するBIOS等のプログラムが記憶されている。RAM12はCPU10による演算結果等、各種情報を一時的に記憶する。CD−ROMドライブ13には、記録媒体であるCD−ROM6が挿入可能である。CD−ROM6に記録されているデータは、CD−ROMドライブ13によって読み出される。印刷データを作成するための印刷データ作成プログラム等のプログラムは、例えば、CD−ROM6を介して取得され、HDD14に記憶される。HDD14は不揮発性の記憶装置であり、例えば、各種プログラムおよび各種テーブルを記憶する。表示制御部16は、モニタ2の表示を制御する。操作処理部17は、キーボード3およびマウス4に接続し、入力された情報や指示を検知する。PC1は、USBインタフェース18に接続されるUSBケーブルを介して、印刷装置30等の外部機器に接続することができる。なお、印刷データ作成プログラム等のプログラムは、外部機器から取得されたものがHDD14に記憶されてもよい。
図5を参照して、HDD14に予め記憶されるテーブルの一例であるカラーモード変換テーブル21について説明する。カラーモード変換テーブル21は、sRGB形式の256階調で表現された画像データを、CMYKW形式の256階調で表現される画像データに変換するためのテーブルである。sRGB形式の256階調に対応する階調値(画素値)(以下、sRGB値という)をCMYKW形式の256階調に対応する階調値(以下、CMYKW値という)に変換する方法として、様々な方法が公知であるため、ここでの説明は省略する。カラーモード変換テーブル21には、任意の公知の方法で求められたsRGB値とCMYKW値との対応関係が記憶される。なお、図5のカラー変換モードテーブル21に示すsRGB値やCMYK値は単なる例示であり、他の値であってもよいことはもちろんである。
図6、図8を参照して、本実施形態における印刷データ作成から印刷実行までの処理の流れを説明する。本実施形態では、まずPC1において印刷データが作成され、作成された印刷データが印刷設定に関する設定データとともに印刷装置30に送信される。そして、印刷装置30では、受信した印刷データに従って印刷処理が行われる。以下、PC1で行われる印刷データ作成処理(図6参照)、印刷装置30で行われる印刷制御処理(図8参照)の順に説明する。なお、印刷データ作成処理は、PC1においてキーボード3の操作により印刷データ作成の指示が入力されると開始され、HDD14に記憶された印刷データ作成プログラムに従ってCPU10により実行される。印刷制御処理は、印刷装置30がPC1から印刷データを受信すると開始され、ROM41に記憶された印刷制御プログラムに従ってCPU40により実行される。
図6に示すように、印刷データ作成処理では、まず、印刷対象である画像の画像データ、つまり、印刷データ作成の基となるデータが取得される(S11)。本実施形態では、S11では、sRGB形式で表現された画像データ、つまり各画素がsRGB値で表現された画像データが取得される。続いて、図5に例示するカラーモード変換テーブル21を用いて、各画素のsRGB値がCMYKW値に変換されることで、sRGB形式の画像データがCMYKW形式の画像データに変換される(S12)。
更に、CMYKW形式の画像データから、白インクヘッド35Wの各々から白インクを吐出させる際の1回当たりの吐出量を示す印刷データ(以下、白版データという)と、カラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kの各々からカラーインクを吐出させる際の1回当たりの吐出量を示す印刷データ(以下、カラー版データという)とが作成される(S13)。
具体的には、白版データについては、CMYKW形式の画像データから、全ての画素について、0から255までのいずれかの値で示されているW値のみが抽出された中間データが作成される。そして、中間データのW値(256段階の階調値)が、誤差拡散法を用いて低階調化される。誤差拡散法は、256階調のデータを印刷階調に落とすための公知の方法である。本実施形態では、印刷データは「1:吐出する」「2:吐出しない」の2値で表されるため、W値は2値のデータに低階調化される。しかし、印刷装置30が多値の印刷データを処理できる場合(例えば、大・中・小の液滴を打ち分けられる場合)には、CPU10は、3値以上のデータに低階調化する場合もある。なお、誤差拡散法以外の手法を用いて低階調化を行ってもよい。
続いて、PC1のモニタ2(図4参照)に、例えば図7に示すような印刷設定画面20が表示される(S14)。図7に示す印刷設定画面20には、白・カラー個別印刷指定201ボタン、待ち指定ボタン202、待ち時間入力指定ボタン203、待ち時間入力欄204、および一時停止指定ボタン205が設けられている。
白・カラー個別印刷指定ボタン201は、ユーザが白・カラー同時印刷ではなく白・カラー個別印刷を希望するか否かを指定するためのボタンである。例えば、白・カラー同時印刷は、白インクが乾かないうちにその上にカラーインクが吐出されてしまうので、にじみが発生する可能性があるが、短時間で全体の印刷処理が完了できるので、ユーザが時間的な効率を重視する場合には好ましい。一方、白インクが十分乾いてからカラーインクが吐出された方がにじみは低減されるので、ユーザがにじみのない画像を得たい場合には白・カラー個別印刷の方が好ましい。本実施形態では、このように、ユーザは希望に応じて、白・カラー同時印刷または白・カラー個別印刷を指定することができる。なお、図7は、白・カラー個別印刷が指定された例を示している。
待ち指定ボタン202は、白版データに基づく印刷処理(以下、白版印刷という)の開始時点からカラー版データに基づく印刷処理(以下、カラー版印刷という)の開始時点までの間に所定の待ち時間を設けるか否かを指定するためのボタンである。つまり、白・カラー個別印刷を行うと指定されたが待ち指定ボタンが選択されない場合には、白版印刷が終了すると速やかにカラー版印刷が開始される。一方、待ち指定ボタン202が選択された場合、白版印刷の開始時点からカラー版印刷の開始時点までの間に所定の待ち時間が設けられる。図7は、待ち指定ボタン202が選択された例を示している。
待ち指定ボタン202が選択された場合、待ち時間入力指定ボタン203の選択が可能となり、待ち時間入力指定ボタン203が選択された場合、待ち時間入力欄204への数値入力が可能となる。本実施形態では、待ち時間入力指定ボタン203が選択され、所定の待ち時間として、ユーザによって待ち時間入力欄204に任意の値が入力された場合はその値が示す時間が採用される。図7は、待ち時間として、ユーザによって「20秒」が入力された例を示している。よって、この場合、所定の待ち時間として、「20秒」が採用されることになる。一方、待ち時間入力指定ボタン203が選択されない場合は、予め定められた時間(以下、規定待ち時間という)が採用される。
ユーザが待ち時間入力欄204から待ち時間を指定する場合、所望の画像品質に応じて、例えば、にじみのある画像を得たい場合は待ち時間を短く指定し、にじみのない画像を得たい場合は待ち時間を長く指定することができる。規定待ち時間については、例えば、にじみのない画像を確実に得られる待ち時間を実験的に求め、それ以上の時間を予めHDD14に記憶しておけばよい。
なお、「印刷開始時点」とは、例えば、主走査モータ46(図3参照)の駆動によりキャリッジ34(図1参照)の動作を開始する時点、副走査モータ47(図3参照)の駆動によりプラテン39(図1参照)の動作を開始する時点、およびインクヘッド35の圧電素子の駆動によりノズルからインクの吐出を開始する時点等のいずれか一つを基準として表される時点をいう。また、白版印刷の開始時点とカラー版印刷の開始時点とは、これらのうちの異なる種類であってもよい。具体的には、白インクの吐出開始時点からカラー版印刷のためのプラテン39の動作開始時点までの間に待ち時間が設けられてもよい。
一時停止指定ボタン205は、前述の待ち時間が経過した場合のカラー版印刷の開始タイミングを指定するためのボタンである。より詳細には、待ち時間が経過した時点でカラー版印刷をすぐに開始するか、その後、ユーザからの開始指示があった時点で開始するかを指定するためのボタンである。例えば、通常は規定待ち時間を用いて白・カラー個別印刷処理を行っているユーザが待ち時間をより長くしたい場合がある。このような場合、ユーザは、一時停止指定ボタン205を選択することで、カラー版印刷を開始するタイミングを、待ち時間経過後、ユーザからの開始指示があった時点と指定して、白版印刷の後、都合のよい時点でカラー版印刷を開始させることができる。なお、図7は、一時停止指定ボタン205が選択されていない例を示している。
印刷設定画面20においてユーザによって指定された印刷設定が受け付けられ、選択されたボタンや入力された値に対応する情報を含む設定データがRAM12に記憶される(S15)。なお、印刷設定画面20で何も指定されていない場合、そのことを示す設定データがRAM12に記憶される。続いて、S13で作成された2種類の印刷データ、つまり、白版データとカラー版データが、設定データと共に、USBケーブルを介してPC1に接続された印刷装置30に送信される(S16)。図6に示す印刷データ作成処理は終了する。
図8に示すように、印刷装置30で開始される印刷制御処理では、まず、PC1から送信された印刷データと設定データが取得され、RAM42に記憶される(S31)。設定データに、白・カラー個別印刷が指定されたことを示す情報が含まれるか否かが判断される(S32)。白・カラー個別印刷が指定されていない場合(S32:NO)、白・カラー同時印刷処理が実行される(S40)。具体的には、CPU40は、白版データとカラー版データに基づき、ヘッド駆動部43とモータ駆動部45を制御して、キャリッジ43をプラテン39に対して相対的に移動させながら、白インクヘッド35Wから白インクを吐出させると共に、カラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kの各々からカラーインクを吐出させる印刷処理を実行する。白・カラー同時印刷処理が終了すると、図8に示す印刷制御処理は終了する。
なお、本実施形態のように白インクヘッド35Wが4個ある場合、各白インクヘッド35Wが白版データに基づき動作すると、W値が1とされた1画素に対して4回白インクが吐出されることになる。このように、同じ画素に対して4回白インクが吐出されてもよいが、4個の白インクヘッド35Wのうち1個を特定し、特定された白インクヘッド35Wのみを使用して1画素に対して1回のみ白インクを吐出させる処理が行われてもよいし、4個の白インクヘッド35Wを順に1個ずつ使用して1画素に対して1回のみ白インクを吐出させる処理が行われてもよい。この点については、白・カラー個別印刷処理でも同様である。
設定データに白・カラー個別印刷が指定されたことを示す情報が含まれている場合(S32:YES)、印刷装置30に内蔵されるタイマ(図示略)が示す現在時刻が白版印刷の開始時刻としてRAM42に記憶され(S33)、白版印刷が実行される(S34)。具体的には、CPU40は、S31で取得された白版データのみに基づいて、ヘッド駆動部43とモータ駆動部45を制御して、キャリッジ43をプラテン39に対して相対的に移動させながら、白インクヘッド35Wから白インクを吐出させる印刷処理を実行する。
白版印刷が終了すると、S31で取得された設定データに、待ち時間を設けると指定されたことを示す情報が含まれているか否かが判断される(S35)。かかる情報が含まれなければ(S35:NO)、処理は速やかにS39に進み、カラー版印刷が実行される(S39)。具体的には、CPU40は、S31で取得されたカラー版データのみに基づいて、ヘッド駆動部43とモータ駆動部45を制御して、キャリッジ43をプラテン39に対して相対的に移動させながら、カラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kの各々からカラーインクを吐出させる印刷処理を実行する。カラー版印刷が終了すると、図8に示す印刷制御処理は終了する。
一方、設定データに待ち時間を設けると指定されたことを示す情報が含まれている場合(S35:YES)、白版印刷の開始時刻から待ち時間が経過したか否かが判断される(S36)。具体的には、タイマが示す現在時刻とS33でRAM42に記憶された白版印刷の開始時刻との差が示す経過時間が、S31で取得された設定データに含まれる待ち時間未満であれば、白版印刷の開始時刻から待ち時間が経過していないと判断される(S36:NO)。この場合、CPU40は待機する(S36:NO、S36)。
白版印刷の開始時刻から待ち時間が経過すると(S36:YES)、S31で取得された設定データに、一時停止が指定されたことを示す情報が含まれているか否かが判断される(S37)。かかる情報が含まれなければ(S37:NO)、処理は速やかにS39に進み、前述のようにカラー版印刷が実行される(S39)。つまり、白版印刷の開始時刻から待ち時間が経過した時点でカラー版印刷が開始される。カラー版印刷が終了すると、図8に示す印刷制御処理は終了する。
設定データに一時停止が指定されたことを示す情報が含まれている場合(S37:YES)、カラー版印刷は開始されずに、操作パネル51(図3参照)の印刷開始ボタン(図示略)が押下され、印刷の開始指示が入力されたか否かが判断される(S38)。印刷の開始指示が入力されない間は、CPU40は待機する(S38:NO、S38)。一時停止を指示したユーザは、この間に、所望の作業を行うことができる。例えば、ユーザは、白インクの上に金粉やラメを振りまいて、その後カラー版印刷を行うことで、付加価値のある印刷物を作成することができる。この場合、ユーザは、作業が終了した時点でカラー版印刷の開始を指示することができる。操作処理部50(図3参照)を介して開始指示が入力されたことが検知されると(S38:YES)、前述のようにカラー版印刷が実行される(S39)。カラー版印刷が終了すると、図8に示す印刷制御処理は終了する。なお、CPU40は、S38において、印刷開始指示の入力がないまま所定時間(例えば3分)が経過したと判断した場合、カラー版印刷開始してもよい(S39)。
以上に説明したように、本実施形態のPC1では、sRGB形式の画像データから、各画素に対応する1回当たりの白インクの吐出量およびカラーインクの吐出量を夫々示す2種類の印刷データ(白版データおよびカラー版データ)が作成される。更に、ユーザが、待ち時間やカラー版印刷の開始タイミングを指定した場合には、指定された内容に応じた設定データが、2種類の印刷データと共に、印刷装置30に送信される。印刷装置30では、白・カラー個別印刷が指定されている場合、白インクヘッド35Wを用いた白版印刷の開始時点からの経過時間が設定データに含まれる待ち時間以上となった場合に、カラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kを用いたカラー版印刷が開始される。
白インクの後にカラーインクでの印刷が行われる場合、白インクの乾き具合はカラーインクの発色に大きく影響する。しかし、本実施形態のPC1と印刷装置30によれば、白版データおよびカラー版データのうち、白版データに基づいてある画素に白インクが吐出された後、カラー版データに基づいて同じ画素にカラーインクが吐出されるまでの時間は、画像のサイズがかかわらず常に待ち時間と等しくなるので一定である。従って、画像のサイズにかかわらず、白版印刷とカラー版印刷の2回の印刷処理の結果、安定した品質の画像を得ることができる。また、PC1において待ち時間を設けるか否か、待ち時間の長さ、カラー版印刷の開始タイミングをユーザが指定できるようにしたことで、ユーザの広範なニーズに対応できる。
上記実施形態において、印刷装置30は本発明の「印刷装置」に相当する。白インクヘッド35Wと、カラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kとが本発明の「複数の印刷ヘッド」に相当する。そのうち、白インクヘッド35Wは「第一ヘッド」に相当し、カラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kは「第二ヘッド」に相当する。キャリッジ34は「キャリッジ」に相当し、プラテン39は「保持体」に相当する。主走査モータ46および副走査モータ47は、「移動手段」に相当する。図8のS34とS39で白版印刷とカラー版印刷を実行するCPU40は、「印刷制御手段」に相当する。S31で印刷データと設定データを取得する処理を行うCPU40は、「印刷データ取得手段」、「待ち時間取得手段」、および「開始タイミング取得手段」に相当する。白版データとカラー版データは「複数種類の印刷データ」に相当する。そのうち、白版データは「第一データ」に相当し、カラー版データは「第二データ」に相当する。
PC1は、本発明の「印刷データ作成装置」に相当する。図6のS11で、本発明の「階調データ」に相当するsRGB形式の画像データを取得する処理を行うCPU10は、「データ取得手段」に相当する。S12〜S13で、sRGB形式の画像データから白版データとカラー版データを作成する処理を行うCPU10は、「印刷データ作成手段」に相当する。S15で印刷設定を受け付けるCPU10は、「待ち時間受付手段」および「開始タイミング受付手段」に相当する。S16で2種類の印刷データと設定データを印刷装置30に送信する処理を行うCPU10は、「データ送信手段」に相当する。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、様々な変形が可能であることは言うまでもない。例えば、本発明は、別々のキャリッジに白インク(W)用のインクヘッドとカラーインク(CMYK)用のインクヘッドが搭載され、白・カラー個別印刷のみが可能な印刷装置にも適用可能である。また、上記実施形態は、2種類の印刷データの作成と、待ち時間を設けるか否か、待ち時間の長さ、カラー版印刷の開始タイミング等に関する印刷設定の受付は、いずれもPC1で行われる例である。しかしながら、例えば、PC1で印刷データの作成のみが行われ、印刷装置30で印刷設定が行われてもよい。この場合、例えば、印刷設定として、待ち時間のみが印刷装置30で行われてもよい。つまり、待ち時間を設けるか否かや、カラー版印刷の開始タイミングの指定は行われなくてもよい。
以下、図9を参照して、このような変形例に係るPCおよび印刷装置における処理について説明する。変形例におけるPCおよび印刷装置の構成は上記実施形態と同一であるため図示は省略する。また、PCにおける印刷データ作成処理の内容は、図6に示す印刷データ作成処理の一部を変更したのみである。詳細には、変形例の印刷データ作成処理では、上記実施形態と同様、図6のS11〜S13までの処理が行われるが、印刷設定に関するS14〜S15の処理は行われない。そして、S16では、作成された印刷データのみが、印刷装置に送信される。
一方、印刷装置における印刷制御処理では、図9に示すように、まず、PCから送信された印刷データが取得される(S41)。そして、操作パネル51を介してユーザにより入力された待ち時間の情報が受け付けられ、RAM42に記憶される(S42)。なお、ユーザが待ち時間を指定せず、規定待ち時間を使用することを選択した場合、規定待ち時間が受け付けられればよい。本変形例の印刷装置は、白・カラー個別印刷のみが可能なので、その後、白版印刷の開始時刻を記憶し、白版印刷を実行する処理が行われる(S43、S44)。また、本変形例では、待ち時間以外の印刷設定は行われていないので、白版印刷が終了した後、白版印刷の開始時刻からS42で受け付けられた待ち時間が経過すると(S46:YES)、カラー版印刷が実行されて(S49)、印刷制御処理は終了する。なお、S43、S44、S46、S49の処理の内容は、図8のS33、S34、S36、S39と同様である。
本変形例に係る印刷装置でも、白版印刷の開始時点から所定の待ち時間が経過するとカラー版印刷が開始されるので、上記実施形態と同様、画像のサイズにかかわらず、安定した品質の画像を得ることができる。なお、本変形例では、PCでは印刷設定が一切行われないが、例えば、カラー版印刷の開始タイミングの指定等、印刷設定の一部が行われてもよい。また、印刷装置では待ち時間の指定しか行われていないが、実施形態と同様、カラー版印刷の開始タイミングの指定等も印刷装置で行われてもよい。なお、本変形例では、図9のS41でPCから送信された印刷データを取得する処理を行うCPU40が「印刷データ取得手段」に相当し、S42で「待ち時間指定手段」に相当する操作パネル51から入力された待ち時間の情報を受け付けるCPU40が「待ち時間取得手段」に相当する。
本発明は、上記変形例の他にも、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態および上記変形例は、白インクヘッド35Wとカラーインクヘッド35C、35M、35Y、35Kを備えた印刷装置において、白版印刷とカラー版印刷の間に待ち時間が設けられる例である。しかしながら、本発明は、インクに限らず、複数種類の液滴を夫々吐出可能な複数の印刷ヘッドを備え、複数種類の印刷データに従って順に複数の印刷ヘッドで液滴を吐出する印刷処理が可能な印刷装置にも適用可能である。更には、布帛用以外のインクジェットプリンタにも適用可能である。
例えば、布帛に対するインクの定着を向上させるための前処理液を吐出可能な印刷ヘッドと、画像を形成するためのインクを吐出可能な印刷ヘッドを備えた印刷装置に適用できる。この場合、前処理液に対応する印刷データに基づいて前処理液用の印刷ヘッドを用いた印刷処理が開始された時点からの経過時間が所定の待ち時間以上となった場合に、インクに対応する印刷データに基づいてインク用の印刷ヘッドを用いた印刷処理が開始されればよい。
白インクとカラーインクという区別ではなく、イエローインクとその他のカラーインク(シアン、マゼンタ、黒)を区別して同様の処理が行われてもよい。また、印刷データと印刷データに対応する印刷ヘッドは、必ずしも2種類に区別されている必要はなく、例えば、白インク、イエローインク、その他のカラーインクに対応する3種類に区別されていてもよい。この場合、白インクとイエローインクとの間、およびイエローインクとその他のカラーインクの間に、同様の待ち時間が設けられてもよい。この場合、夫々の間に、ユーザの指定または規定待ち時間に基づいて異なる待ち時間が設けられてもよいし、同一の待ち時間が設けられてもよい。
また、例えば、上記実施形態では、図8に示す印刷制御処理において、一時停止が指定された場合、待ち時間が経過した後、開始指示が受け付けられた時点でカラー版印刷が開始される。しかしながら、印刷装置30は、PC1または印刷装置30で入力された、白版印刷の終了後に、カラー版印刷の開始指示が受け付けられるまで待機するか否かを示す設定データを受け付け、待ち時間には関係なく、白版印刷の終了後に、カラー版印刷の開始指示が受け付けられたらカラー版印刷を開始してもよい。つまり、図8に示す印刷制御処理において、S33、S35、S36の処理は行われなくてもよい。この場合も、上記実施形態と同様、ユーザは、カラー版印刷の開始を指示するまでの間に所望の作業を行うことができる。なお、この変形例の処理も、白版印刷とカラー版印刷に限らず、複数種類の印刷データに従って複数回の印刷処理を行う場合に適用可能である。
画像データ等の各種データの形式、階調等を変更できることは言うまでもない。例えば、図6のS11でPC1が取得する画像データの形式は、sRGB形式に限られず、階調も256階調に限られない。同様に、階調データのデータ形式および階調も、CMYKW形式の256階調に限定されることはない。CMYKW以外の色材(例えば、オレンジ等)を用いる場合でも本発明は適用できる。印刷データを多値(3階調以上)とすることも可能である。また、PC1は、sRGB形式の画像データを取得せずに、CMYKW形式の階調データを他の外部機器から直接取得してもよい。
印刷データは必ずしもPC1で作成され、印刷装置30に送信される必要はなく、印刷装置30は他の外部機器から印刷データを取得してもよいし、既に作成され、印刷装置30に記憶されている印刷データを取得してもよい。
PC1と印刷装置30との接続形態は、上記実施形態で例示されたUSBケーブルによる接続に限らず、ネットワークを介した接続等、その他の形態であってもよい。