以下、本発明を実施するための第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明に係る印刷データ作成装置として、公知の布帛印刷用のインクジェットプリンタ1(図1、図2参照)に接続し、インクジェットプリンタ1で印刷を行うための印刷データを作成する、公知のパーソナルコンピュータ200(図3参照)を例に挙げて説明する。
まず、インクジェットプリンタ1について説明する。図1は、インクジェットプリンタ1の全体的な構成を示した斜視図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、左右方向を長手方向とする略直方体形状の筐体2を有し、その底面の略中央に前後方向に向かう二本のレール3が列設されている。二本のレール3の上部では、各レール3に沿って筐体2の前後方向に移動可能な平板状のプラテン支持台(図示外)を支えており、プラテン支持台の上部に取り換え可能なプラテン5が固定されている。
プラテン5は、平面視、筐体2の前後方向を長手方向とする略長方形状の板体であり、その上面に、例えばTシャツなどの布帛からなる被記録媒体を水平に載置するためのものである。また、プラテン5とプラテン支持台との間の略中間の位置にて支柱に固定されたトレー4は、ユーザがTシャツ等をプラテン5に載置する際に、Tシャツのそで等を受けて筐体2の底面には落ちないように保護するためのものである。また、プラテン支持台を移動させるためにレール3が設けられたプラテン駆動機構6の後端部には、プラテン支持台をレール3に沿って筐体2の前後方向に移動させるための動力を供給するプラテン駆動モータ7が設けられている。
筐体2の前後方向の略中央で、かつ、プラテン5の上方の位置にて、筐体2の両側面間には、インクジェットヘッド21を搭載したキャリッジ20の移動を案内するためのガイドレール9が架設されている。このガイドレール9の左端付近に設けられたキャリッジモータ24と、右端付近に設けられたプーリー25との間に架設されているキャリッジベルト26は、ガイドレール9よりも下方の位置にて筐体2の左右にわたって配置されている。キャリッジベルト26はキャリッジ20の背面に固定されており、キャリッジモータ24の駆動によって、キャリッジ20がガイドレール9に沿って筐体2の左右方向に往復移動される。
本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1では、シアンインク,マゼンタインク,イエローインク,ブラックインクに加え、ホワイトインクが画像印刷に用いられる。そこで、インクジェットプリンタ1の左側面には、各インクを収容したインクカートリッジを着可能に収容するための5つのインクカートリッジ収容部30がそれぞれ設けられており、各インクカートリッジ収納部30には、それぞれブラックインク,シアンインク,マゼンタインク,イエローインク,ホワイトインクが収容されている。
各インクカートリッジ収容部30には、それぞれインク供給用チューブ10a〜10eが連結されており、ガイド部材40及びチューブ支持部材60を経由して、各色のインクジェットヘッド21に接続されている。なお、インク供給用チューブ10a〜10eは、キャリッジ20の移動等に対応して屈曲や捩れが生じるような柔軟性を有するチューブである。ガイド部材40は、キャリッジ20の背後で5本のインク供給用チューブ10a〜10eを支持するものである。チューブ支持部材60は、キャリッジ20の上端で本のインク供給用チューブ10a〜10eを支持するものである。
キャリッジ20には、5つのインクジェットヘッド21が搭載されている。各インクジェットヘッド21は、各インクを噴射するための噴射チャンネル(図示外)を例えば128個ずつそれぞれ備えており、各噴射チャンネルには各々個別に駆動される圧電アクチュエータ(図示外)が設けられている。そして、各噴射チャンネルに対応してインクジェットヘッド21の底面に孔設された微細な噴射ノズル(図示外)から下向きに、インクの液滴が噴射されるように制御されている。よって、各インクカートリッジ収容部30に収容されているインクが、インク供給用チューブ10a〜10eによってインクジェットヘッド21に供給され、噴射ノズルから噴射される。
キャリッジ20がガイドレール9の右端に移動した位置には、各インクジェットヘッド21のノズル面に対して密着・離脱が可能な吸引キャップ23を有するパージユニット22が設けられている。パージユニット22には吸引ポンプ(図示外)が設けられており、各吸引キャップ23がインクジェットヘッド21に密着しているときに、吸引キャップ23を介してインクの吸引を行うことが可能となっている。また、印刷が行われないときには吸引キャップ23でインクジェットヘッド21のノズル面が覆われ、インクの乾燥が防止されている。
筐体2の右側手前の位置には、インクジェットプリンタ1の操作を行うための操作パネル28が設けられている。この操作パネル28には、ディスプレイ175、印刷ボタン182、中止ボタン183及びプラテン送りボタン188等が設けられている。プラテン送りボタン188が押下されるとプラテン5が被記録媒体であるTシャツ等の布帛をセット又は取り外し可能な位置にプラテン5が移動する。印刷ボタン182が押下されると、パーソナルコンピュータ200から受信した印刷データの印刷が開始される。印刷中に中止ボタン183が押下されると、印刷が中止される。
次に、インクジェットプリンタ1の電気的構成について説明する。図2は、インクジェットプリンタ1の電気的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、インクジェットプリンタ1の制御を司るCPU110が設けられており、CPU110には、バス190を介し、CPU110が実行するインクジェットプリンタ1の動作を制御するための制御プログラム等を記憶したROM120と、データを一時的に記憶するRAM130とが接続されている。
CPU110には、バス190を介して、インク噴射を行うインクジェットヘッド21の各噴射チャンネルに設けられた圧電アクチュエータ(図示外)を駆動させるためのヘッド駆動部140と、インクジェットヘッド21を搭載したキャリッジ20を駆動するためのキャリッジモータ24、印刷時に被印刷対象の布帛であるTシャツを保持するプラテン5を送り出すタイミングや速度を調整するプラテンローラ(図示外)を駆動するためのプラテン駆動モータ7をそれぞれ制御して駆動させるためのモータ駆動部150と、パーソナルコンピュータ200を含めた外部機器にUSBケーブル(図示外)で接続して通信が行えるようにするためのUSBインタフェース160とが接続されている。
操作パネル28(図1)には、ディスプレイ175,電源ランプ172,データランプ173,エラーランプ174が設けられており、これらの表示処理を行う表示制御部170がバス190を介してCPU110にと接続されている。また、操作パネル28には、印刷ボタン182,中止ボタン183,プラテン送りボタン188(図1参照)に加え、メニューボタン184,左矢印ボタン185,右矢印ボタン186,確定ボタン187が設けられており、これらの入力の検知を行う入力検知部180が、バス190を介してCPU110に接続されている。
ディスプレイ175には、パーソナルコンピュータ200から受信中であったり、受信後印刷待機中であったり、印刷中であったり、印刷が完了したりした、印刷データのデータ名やサイズ等の情報が表示される。また、各種設定を行うためのメニュー画面(図示外)が表示されたり、エラー発生時にはエラーの内容が表示されたりする。また、メニューボタン184が押下されるとディスプレイ175にメニュー画面が表示され、左矢印ボタン185及び右矢印ボタン186はディスプレイ175に表示されているカーソルを各々左右に移動させる。また、確定ボタン187が押下されると、カーソルが選択している項目に確定される。
インクジェットプリンタ1のROM120には、インクジェットプリンタ1の動作を制御するための制御プログラムや、印刷処理を実行するための印刷実行プログラムなどを記憶したプログラム記憶エリアと、プログラムの実行に必要な設定や初期値、データ等の情報を記憶したプログラム関係情報記憶エリア等が設けられている。
インクジェットプリンタ1のRAM130には、パーソナルコンピュータ200から受信した印刷データを記憶する受信印刷データ記憶エリアと、印刷ボタン182の押下により印刷が実行されている印刷データを記憶する印刷中データ記憶エリアと、各種設定情報が記憶される設定情報記憶エリア等が設けられている。
次に、パーソナルコンピュータ200について説明する。図3は、パーソナルコンピュータ200の電気的構成を示すブロック図である。図4は、パーソナルコンピュータ200のRAM230の模式図である。図5は、パーソナルコンピュータ200のハードディスクドライブ(以下、HDDとよぶ)250の模式図である。パーソナルコンピュータ200は、例えばUSB等の規格に基づく通信ケーブルによってインクジェットプリンタ1に接続している。そして、パーソナルコンピュータ200では、ユーザが各種アプリケーションを用いて作成した画像データに基づいて印刷データが作成され、この印刷データがインクジェットプリンタ1へ送信されるが、詳細は後述する。
図3に示すように、パーソナルコンピュータ200には、その制御を司るCPU210が設けられている。CPU210には、バス290を介し、CPU210が実行するBIOS等のプログラムを記憶したROM220と、データを一時的に記憶するRAM230と、データの記憶媒体であるCD−ROM241を挿入し、データの読み込みを行うCD−ROMドライブ240と、データの記憶装置であるHDD250とが接続されている。
CPU210には、バス290を介して、インクジェットプリンタ1を含めた外部機器との通信を行うためのUSBインタフェース260と、ユーザに操作画面を表示するためのモニタ271の画面表示処理を行う表示制御部270と、ユーザが操作の入力を行うキーボード281やマウス282が接続され、それらの入力の検知を行う入力検知部280とが接続されている。なお、パーソナルコンピュータ200には、図示外のフロッピー(登録商標)ディスクドライブ、音声等の入出力部、各種インタフェースなども設けられている。
CD−ROM241には、本発明に係る印刷データ作成プログラムが組み込まれたプリンタドライバや、このプログラムの実行時に使用される設定やデータ等が記憶されており、導入時には、CD−ROM241からHDD250に設けられたプログラム記憶エリア251(図5参照)やプログラム関係情報記憶エリア252(図5参照)に記憶されるようになっている。なお、パーソナルコンピュータ200のプリンタドライバ(印刷データ作成プログラム)及びその使用データ等の取得方法はCD−ROM241によるものに限らず、フレキシブルディスクやMOといった他の記録媒体であってもよく、また、パーソナルコンピュータ200をネットワークに接続させ、ネットワーク上の他の端末から取得してもよい。
図4に示すように、RAM230には、印刷データを作成する元になる入力画像データ(図6,7に示す画像データ310や白画像データ311)を一時的に記憶する入力画像データ記憶エリア231、入力画像データから変換された変換CMYKWデータ340(図6,7参照)を記憶する変換CMYKWデータ記憶エリア232、変換CMYKWデータ340から作成された印刷データ350(図6,7参照)を記憶する印刷データ記憶エリア233、その他のプログラムの実行中の一時的なデータを記憶するその他の実行時情報記憶エリア234等が設けられている。
図5に示すように、HDD250には、プリンタドライバ(印刷データ作成プログラム)を始めとするパーソナルコンピュータ200で実行される各種のプログラムを記憶するプログラム記憶エリア251、プログラムの実行に必要な設定や初期値、データ等の情報を記憶したプログラム関係情報記憶エリア252、入力画像データの色情報を色インクレベル(CMYK値)に変換するための色変換テーブル410(図6,7参照)を記憶する色変換テーブル記憶エリア253、入力画像データの色情報を白インクレベル(W値)に変換するための変換するための白変換テーブル420(図6参照)を記憶する白変換テーブル記憶エリア254、入力画像データの白濃度を白インクレベル(W値)に変換するための白濃度レベル変換テーブル430(図7参照)を記憶する白濃度レベル変換テーブル記憶エリア255、複数の画像データ310を記憶する画像データ記憶エリア256、複数の白画像データ311を記憶する白画像データ記憶エリア257等が設けられている。なお、色変換テーブル記憶エリア253,白変換テーブル記憶エリア254,白濃度レベル変換テーブル記憶エリア255には、インクジェットプリンタ1で印刷される被記録媒体の色や素材などに対応して、各々複数の色変換テーブル410,白変換テーブル420,白濃度レベル変換テーブル430が記憶されている。
このような構成のもと、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、パーソナルコンピュータ200から印刷データを受信した後、ユーザがプラテン5へTシャツをセットし、印刷ボタン182を押下する。すると、キャリッジ20の移動経路が記録開始位置となるように、プラテン5がプラテン駆動モータ7の駆動によってレール3に沿って筐体2の後方に移動される。そして、キャリッジ20が筐体2の右方向から左方向へ移動しながら、記録指示に従ってインクジェットヘッド21からインクを吐出して1ラインの記録が行われる。そして、1ライン分プラテン5が筐体2の後方から前方へ移動され、次いで、キャリッジ20が筐体2の左方向から右方向へ移動しながら、記録指示に従ってインクジェットヘッド21からインクを吐出して1ラインの記録が行われる。そして、さらに1ライン分プラテン5が筐体2の後方から前方へ移動される。これらの動作の繰り返しによりTシャツへの印刷が行われ、印刷が終了するとプラテン5がTシャツを取り外し可能な位置まで送り出されるので、操作者は印刷の終了したTシャツを取り外す。
ここで、パーソナルコンピュータ200及びインクジェットプリンタ1における色表現について説明する。パーソナルコンピュータ200のモニタ271等で色を表示する場合には、画像を形成する各画素毎にsRGB形式と呼ばれる形式で色が表現されている。sRGBは、IEC(国際電気標準会議)が定める色空間の国際規格であり、デジタルカメラやプリンタ、モニタなど多くのPC用周辺機器では、このsRGBに則った色調整を行うことで、入力と出力時の色の差異を極力少なくしている。
また、インクジェットプリンタ1等でインクを噴射させて印刷を行う場合には、CMYK値形式と呼ばれる形式で色が表現されている。これは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色の三原色に、K(ブラック)を加えた4色を用いる色の表現方法であり、C値,M値,Y値,K値の4種の数値により色を表現している。この形式で作られた印刷データを印刷するために、インクジェットプリンタ1では、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックの4色のインクが使用され、C値でシアンインクの噴射量が、M値でマゼンタインクの噴射量が、Y値でイエローインクの噴射量が、K値でブラックインクの噴射量が決定される。
さらに、本実施の形態では、被記録媒体であるTシャツ等の下地色が白以外(例えば、黒や青)であっても、その表面に画像データに基づく再現性の優れた高画質の画像を印刷するためにホワイトインクが使用される。なお、ホワイトインクの噴射量はW値で決定されるものとする。すなわち、印刷データはC値,M値,Y値,K値,W値の5種の数値により色が表現され、インクジェットプリンタ1ではシアン,マゼンタ,イエロー,ブラック,ホワイトの5色のインクを用いた画像印刷が実行される。
このように、パーソナルコンピュータ200のモニタ271に表示されている画像データをインクジェットプリンタ1で印刷するためには、sRGB形式などの画像データをCMYKW形式の印刷データに変換する必要がある。本実施の形態では、パーソナルコンピュータ200で印刷データ作成処理(図11)が実行されると、sRGB形式などの画像データに基づいてCMYKW形式の印刷データが作成される。
ここで、本実施形態の印刷データ作成過程で発生する各データについて説明する。図6及び図7は、第1の実施の形態における、印刷データ作成過程のデータ推移図である。図8は、色変換テーブル410のデータ構成図である。図9は、白変換テーブル420のデータ構成図である。図10は、白濃度レベル変換テーブル430のデータ構成図である。なお、本実施形態では、被記録媒体は下地色が「青」のTシャツとする。
本実施形態では印刷データ350を作成する過程において、画像データ310から白インクレベルデータ330を自動で生成する場合と、ユーザがあらかじめ作成した白画像データ311から白インクレベルデータ330を手動で生成する場合とが存在する。以下、前者の手順におけるデータ推移(図6参照)と、後者の手順におけるデータ推移(図7参照)とを分けて説明する。
図6に示すように、画像データ310から白インクレベルデータ330を自動で生成する場合は、印刷データ350を作成するための基になるデータは、RAM230の入力画像データ記憶エリア231に記憶されている画像データ310である。この画像データ310は、ユーザが画像編集用アプリケーションなどを用いて作成し、HDD250の画像データ記憶エリア256に保存した複数の画像データ310のうちで、ユーザがその印刷実行を指示したものである。なお、本実施の形態では、画像データ310はsRGB形式で256階調の画像データである。
そして、画像データ310を構成する各画素のsRGB値が、HDD250の色変換テーブル記憶エリア253に記憶されている色変換テーブル410に基づいてCMYK値に各々変換されて、CMYK形式の色インクレベルデータ320が作成される。図8に示すように、色変換テーブル410は、sRGB形式で256階調の入力データを、CMYK形式で256階調の出力データに変換するためのテーブルであり、各sRGB値に対応するCMYK値が各々定義されている。そして、画像データ310を構成する各画素のsRGB値は、この色変換テーブル410に基づいて各々対応するCMYK値に変換される。なお、色変換テーブル410(図8)は、公知の手法によって、sRGB値とCMYK値の対応を定めるプロファイルを任意に作成すればよい。
また、画像データ310を構成する各画素のsRGB値が、HDD250の白変換テーブル記憶エリア254に記憶されている白変換テーブル420に基づいてW値に各々変換されて、W形式の白インクレベルデータ330が作成される。図9に示すように、白変換テーブル420は、sRGB形式で256階調の入力データを、W形式で256階調の出力データに変換するためのテーブルであり、各sRGB値に対応するW値が各々定義されている。そして、画像データ310を構成する各画素のsRGB値は、この白変換テーブル420に基づいて各々対応するW値に変換される。なお、白変換テーブル420(図9)は、公知の手法によって、sRGB値とW値の対応を定めるプロファイルを任意に作成すればよい。
このように、色変換テーブル410及び白変換テーブル420によって、画像データ310を構成する各画素のsRGB値がそれぞれCMYKW値に変換される。そして、色インクレベルデータ320と白インクレベルデータ330とにより構成された、256階調でCMYKW形式の変換CMYKWデータ340が、RAM230の変換CMYKWデータ記憶エリア232に記憶される。さらに、変換CMYKWデータ340について疑似階調処理が行われて、CMYKW形式で2階調の印刷データ350が作成され、RAM230の印刷データ記憶エリア233に記憶される。最後に、印刷データ350がインクジェットプリンタ1に送信されて、被記録媒体であるTシャツ等への画像印刷に用いられることになる。
図7に示すように、ユーザがあらかじめ作成した白画像データ311から白インクレベルデータ330を手動で生成する場合は、印刷データ350を作成するための基になるデータは、RAM230の入力画像データ記憶エリア231に記憶されている画像データ310及び白画像データ311である。この白画像データ311は、ユーザが画像編集用アプリケーションなどを用いて作成し、HDD250の白画像データ記憶エリア257に保存した複数の白画像データ311のうちで、ユーザがその印刷実行を指示したものである。
なお、白画像データ311は、印刷画像(画像データ310に基づく画像)の白濃度を、ユーザが視覚的に把握できるRGB形式の256階調で示したビットマップ(BMP)画像データである。この白画像データ311は、ユーザがあらかじめ印刷対象の画像データ310に対応して任意に作成・編集しておく。そして、ユーザが被記録媒体に画像印刷を行いたい場合には、入力画像データとして当該印刷画像に対応する一組の画像データ310及び白画像データ311を指定する。
そして、画像データ310を構成する各画素のsRGB値が、図6と同様に、色変換テーブル410(図8)に基づいてCMYK値に各々変換されて、CMYK形式の色インクレベルデータ320が作成される。一方、白画像データ311を構成する各画素の白濃度が、HDD250の白濃度レベル変換テーブル記憶エリア255に記憶されている白濃度レベル変換テーブル430に基づいて白インクレベル(W値)に各々変換されて、W形式の白インクレベルデータ330が作成される。図10に示すように、白濃度レベル変換テーブル430は、256階調の濃度値を示す入力データを、256階調の白インクレベルを示す出力データに変換するための一次元のテーブルであり、各濃度値に対応するW値が各々定義されている。そして、白画像データ311を構成する各画素の白濃度は、この白濃度レベル変換テーブル430に基づいて各々対応するW値に変換される。
なお、白濃度レベル変換テーブル430(図10)は、以下のキャリブレーションによってあらかじめ作成したものである。すなわち、被記録媒体(ここでは、下地色が「青」のTシャツ)に、「0」から「255」までを9ステップに分割した白インクレベルで白インクによるサンプリング印刷を行って、その9ステップの白印刷結果を測色する。次に、サンプリング印刷から測色された9ステップの濃度値を「0」から「255」に正規化する。すなわち、白インクレベル「0」であれば濃度値「0」、白インクレベル「255」であれば濃度値「255」となるように、低い白インクレベルを低い濃度値に対応付けて(逆にいえば、高い白インクレベルを高い濃度値に対応付けて)、9ステップの白インクレベル及び9ステップの濃度値を反転して正規化する。これにより、濃度値は白濃度として扱うことができる。さらに、「0」から「255」までの9ステップで正規化された入力白インクレベル(X軸)及び出力白濃度(Y軸)のXYグラフを、Y=Xとなるように反転する。このX軸とY軸を反転したグラフは、入力白濃度(X軸)及び出力白インクレベル(Y軸)のXYグラフとなる。そして、この反転XYグラフに基づいて、「0」から「255」までの9ステップの線形補間を行うことで、白濃度と白インクレベルとの対応を「0」から「255」までの連続した値で定義した一次元テーブルを作成することができる。
また、白画像データ311を構成する各画素の白濃度は、各画素のRGB値から以下の数式で求められる輝度値で特定することができる。
白濃度=0.6×R+0.3×G+0.1×B
そして、上記数式で求められた白濃度に対応する白インクレベル(W値)を、白濃度レベル変換テーブル430(図10)から求めれば、各画素の白濃度を白インクレベル(W値)に変換することができる。このデータ変換によって、白画像データ311でユーザが視覚的に把握している白濃度を、被記録媒体上に正確に表現することができる白インクの吐出量(白インクレベル)が求められて、白画像データ311の各画素を適切なW値に各々変換することができる。
このように、色変換テーブル410及び白濃度レベル変換テーブル430によって、画像データ310及び白画像データ311を構成する各画素がそれぞれCMYKW値に変換される。そして、図6と同様に、色インクレベルデータ320と白インクレベルデータ330とで構成された変換CMYKWデータ340に疑似階調処理が行われて、2階調の印刷データ350がインクジェットプリンタ1に送信される。
以下では、上記のデータ変換を実現するための、パーソナルコンピュータ200で行われる印刷データ作成処理について説明する。図11は、第1の実施の形態における、印刷データ作成処理のフローチャートである。図12は、白画像入力用印刷設定画面600の一具体例を示す図である。本実施の形態では、ユーザが所望の画像データ310の印刷実行を指示するとプリンタドライバが起動される。そして、プリンタドライバに含まれる印刷データ作成プログラムに基づいて、CPU210により印刷データ作成処理(図11)が実行される。
図11に示すように、本実施形態の印刷データ作成処理では、ユーザが所望の画像データ310の印刷実行を指示すると、白画像入力用印刷設定画面600がモニタ271に表示される(S1)。
図12に示すように、白画像入力用印刷設定画面600は、ユーザが白画像データ311の入力の有無や、その印刷態様などを任意に設定するためのダイアログである。白画像入力用印刷設定画面600には、白画像データ311の入力を指示するための白画像データ入力指示部601と、白画像データ311の画像形式を選択するための画像形式選択部602と、白画像データ311の解像度やサイズを指定するためのサイズ・解像度指定部603と、白画像データ311のファイル読出位置を指定するためのファイルパス指定部604と、白画像データ311の印刷位置に対するオフセットを指定するためのオフセット指定部605と、白画像入力用印刷設定画面600での設定内容を確定するための印刷開始ボタン606と、白画像入力用印刷設定画面600での設定内容をキャンセルして印刷データ作成処理(図11)を終了させるためのキャンセルボタン607とを備えている。
S1で表示された白画像入力用印刷設定画面600から、ユーザはキーボード281やマウス282を用いて、任意の内容を入力指定することができる。そして、白画像データ入力指示部601がチェックされた状態で印刷開始ボタン606が入力されると、RAM230に記憶されている白画像データ入力フラグ(図示外)が「ON」にセットされ、白画像データ入力指示部601がチェックされない状態で印刷開始ボタン606が入力されると、白画像データ入力フラグが「OFF」にセットされる。
次に、印刷対象の画像データ310がセットされる(S3)。S3では、画像データ記憶エリア256に格納された画像データ310のうちで、ユーザにより印刷指示されたものが入力画像データ記憶エリア231に読み込まれる。また、画像データ310や白画像データ311のデータ変換に用いられる各変換テーブルがセットされる(S5)。S5では、ユーザにより指定された被記録媒体の色や素材などに対応して、色変換テーブル記憶エリア253から最適な色変換テーブル410が読み込まれ、白変換テーブル記憶エリア254から最適な白変換テーブル420が読み込まれ、白濃度レベル変換テーブル記憶エリア255から最適な白濃度レベル変換テーブル430が読み込まれる。ここでは、白画像データ入力フラグが「OFF」であれば、被記録媒体である青のTシャツに対応する色変換テーブル410及び白変換テーブル420がセットされ、白画像データ入力フラグが「ON」であれば、被記録媒体である青のTシャツに対応する色変換テーブル410及び白濃度レベル変換テーブル430がセットされる。なお、S5でセットされる各テーブルは、ユーザがキーボード281やマウス282を用いて任意に指定してもよい。
そして、白画像データ311を入力するか否かが判定される(S9)。S9では、先述の白画像データ入力フラグに基づいて、白画像データ311を入力するか否かが判定される。白画像データ入力フラグが「OFF」にセットされている場合は(S9:NO)、白画像データ311を入力せずに次ステップ(S15)に進む。
一方、白画像データ入力フラグが「ON」にセットされている場合は(S9:YES)、印刷対象の白画像データ311がセットされる(S11)。S11では、白画像データ記憶エリア257に格納された白画像データ311のうちで、白画像入力用印刷設定画面600でファイルパス(ファイルパス指定部604)が指定されたものが入力画像データ記憶エリア231に読み込まれる。そして、当該白画像データ311のリサンプリングが行われる(S13)。S13で実行されるリサンプリングは、白画像入力用印刷設定画面600に設定された内容に応じて、その処理が異なる。
詳細には、S13では、サイズ・解像度指定部603において白画像データ311の画像サイズ(図12では横3000×縦200ピクセル)及び画像解像度(図12では600dpi)が指定されていれば、当該画像サイズ及び画像解像度の白画像データ311を被記録媒体に印刷される印刷サイズ及び印刷解像度にリサンプリングする。さらに、オフセット指定部605において白画像データ311のオフセット位置(図12では横2×縦2センチ)が指定されていれば、白画像データ311の印刷位置を当該オフセット位置に基づいて変更する。なお、本実施形態のオフセットとは、画像データ310に基づく印刷画像に対する白画像データ311に基づく印刷画像の位置関係を設定することをいい、ここでは画像データ310の印刷開始位置から右方向へ2センチ,下方向へ縦2センチだけ移動した位置が、白画像データ311の印刷開始位置となる。
S9:NO又はS13の実行後は、S3でセットされた画像データ310を構成する1つ目の画素のsRGB値が読み込まれる(S15)。そして、S5でセットされた色変換テーブル410に基づいて、S15で読み込まれたsRGB値が対応するCMYK値に変換される(S17)。例えば、図8に示す色変換テーブル410の場合、S15でsRGB値(64,192,255)が読み込まれると、S17ではCMYK値(190,21,0,0)が取得されることになる。
そして、再度、白画像データ311を入力するか否かが判定され(S19)、白画像データ入力フラグが「OFF」にセットされている場合は(S19:NO)、S5でセットされた白変換テーブル420に基づいて、S15で読み込まれたsRGB値が対応するW値に変換される(S21)。例えば、図9に示す白変換テーブル420の場合、S15でsRGB値(64,192,255)が読み込まれると、S21ではW値(251)が取得されることになる。なお、S17及びS21で取得されたCMYKW値(190,21,0,0,251)は、変換CMYKWデータ記憶エリア232の該当画素番号欄に記憶される。
一方、白画像データ入力フラグが「ON」にセットされている場合は(S19:YES)、S11でセットされた白画像データ311を構成する1つ目の画素のRGB値が読み込まれる(S23)。そして、S23で読み込まれたRGB値から白濃度が算出される(S25)。S25における白濃度の算出は、前述のように各画素のRGB値から求められる輝度値を、各画素の白濃度として算出可能である。そして、S5でセットされた白濃度レベル変換テーブル430に基づいて、S25で算出された白濃度が対応するW値に変換される(S27)。例えば、図10に示す白濃度レベル変換テーブル430の場合、S25で白濃度(253)が算出されると、S27ではW値(251)が取得されることになる。なお、S17及びS27で取得されたCMYKW値(190,21,0,0,251)は、変換CMYKWデータ記憶エリア232の該当画素番号欄に記憶される。
そして、S3でセットされた画像データ310(及びS11でセットされた白画像データ311)を構成する全ての画素について変換が行われたか否かの判断が行われる(S29)。全ての画素についての変換が行われていない場合は(S29:NO)、S15へ戻る。そして、画像データ310の次画素のsRGB値が読み込まれて、当該次画素のsRGB値がCMYK値に変換される(S15〜S17)。さらに、当該次画素のsRGB値がW値に変換され(S21)、又は白画像データ311の次画素のRGB値がW値に変換される(S23〜S27)。
このように、画像データ310(及び白画像データ311)を構成する全ての画素についてデータ変換が行われるまで、S15〜S29が繰り返し実行される。これにより、変換CMYKWデータ記憶エリア232には、sRGB形式で256階調の画像データ310に基づいて変換された、CMYK形式で256階調の色インクレベルデータ320と、当該画像データ310又はRGB形式で256階調の白画像データ311に基づいて変換された、W形式で256階調の白インクレベルデータ330とが記憶される。そして、色インクレベルデータ320と白インクレベルデータ330とで、CMYKW形式で256階調の変換CMYKWデータ340が構成される。
一方、全ての画素についての変換が行われた場合は(S29:YES)、変換CMYKWデータ記憶エリア232に記憶された変換CMYKWデータ340が、擬似階調処理によってCMYKW形式で2階調の印刷データ350に変換される(S31)。擬似階調処理は、256階調の変換CMYKWデータ340を印刷階調に落として2値化するための処理であり、ここでは誤差拡散法による擬似階調処理が行われるものとする。なお、S31で作成された印刷データ350は、印刷データ記憶エリア233に記憶される。そして、印刷データ記憶エリア233に記憶された印刷データ350がインクジェットプリンタ1へ送信され(S33)、本処理は終了する。
なお、インクジェットプリンタ1では、パーソナルコンピュータ200から送信された印刷データ350を受信すると、その印刷データ350はRAM130の受信印刷データ記憶エリア(図示外)に格納される。そして、ユーザが印刷ボタン182を押下すると、印刷データ350が印刷中データ記憶エリア(図示外)に読み込まれて、この印刷データ350に基づいて被記録媒体であるTシャツ等に画像印刷が実行される。
ここで、本実施の形態では、5つのインクジェットヘッド21は、左から順にシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),K(ブラック),W(ホワイト)に配置されている。そして、画像印刷時には、Tシャツ等に対して左から右にW(ホワイト),K(ブラック)),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の順で片方向印刷が行われる。つまり、他の色インク(CMYK)に先んじて、Tシャツ等に白インク(W)による印刷が実行される。そのため、Tシャツ等に対して色インク(CMYK)で画像を印刷する前に、下地を白インクで隠蔽することができるので、Tシャツ等の下地色が白以外であっても再現性の優れた高画質の画像を印刷することができる。
以上、第1の実施の形態に係るパーソナルコンピュータ200によれば、sRGB値に対応してCMYK値が定義された色変換テーブル410に基づいて、画像データ310の各入力画素をCMYK値に変換した色インクレベルデータ320を作成する。そして、白画像データ311の入力があれば、白濃度に対応して白インクレベルが定義された白濃度レベル変換テーブル430に基づいて、白画像データ311の各入力画素をW値に変換した白インクレベルデータ330を作成する。一方、白画像データ311の入力がなければ、sRGB値に対応してW値が定義された白変換テーブル420に基づいて、画像データ310の各入力画素をW値に変換した白インクレベルデータ330を作成する。そして、色インクレベルデータ320と白インクレベルデータ330とからなる変換CMYKWデータ340に基づいて、インクジェットプリンタ1で色インク(CMYK)及び白インク(W)による印刷に用いられる印刷データ350を作成する。
よって、被記録媒体の影響を受けることがない再現性の優れた高画質の画像を印刷するための印刷データ350を、ユーザが任意に編集及び作成することができる。そして、ユーザは任意に作成及び編集した画像データ310及び白画像データ311を入力すると、白インク及び色インクで印刷するための印刷データ350を作成することができる。また、ユーザは画像データ310のみを入力しても(白画像データ311を入力しなくても)、白インク及び色インクで印刷するための印刷データ350を作成することができる。
また、白濃度レベル変換テーブル430に基づいて白画像データ311の各入力画素をW値に変換できるため、ユーザが視覚的に把握可能な白濃度に基づいて任意に編集可能な白画像データ311から、インクジェットプリンタ1が印刷するための白インクレベルに変換された白インクレベルデータ330を作成することができる。また、白画像データ311はRGB形式の画像データであるため、グレースケール画像を編集及び作成できないアプリケーションを用いても、ユーザは白画像データ311を任意に編集及び作成することができる。また、白画像データ311の各入力画素が有するRGB値から特定される輝度値に基づいて白濃度を求めるため、RGB値のグレー成分以外の色情報を有していても、RGB値の輝度のみに基づいて適切に白濃度を求めることができる。さらに、ユーザは白画像入力用印刷設定画面600から白画像データ311の解像度,サイズ,オフセットなどを指定すれば、その指定された内容に応じて白画像データ311を任意に編集することができる。
次に、本発明を実施するための第2の実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態に係るパーソナルコンピュータ200は、基本的に第2の実施の形態にかかるものと同一であるが、印刷対象の画像データとそのデータ変換方法が異なる。
すなわち、第1の実施の形態では、画像データ310を色変換テーブル410に基づいて変換して色インクレベルデータ320を作成する一方、白インクレベルデータ330については、画像データ310を白変換テーブル420に基づいて変換し、又は白画像データ311を白濃度レベル変換テーブル430に基づいて変換して作成している。一方、本実施の形態では、1つの画像データ312を色変換テーブル410及び白濃度レベル変換テーブル430に基づいて変換して、色インクレベルデータ320及び白インクレベルデータ330を作成する点で異なる。以下、第1の実施の形態と異なる点について説明する。なお、本実施形態では、被記録媒体は下地色が「青」のTシャツとする。
ここで、本実施形態の印刷データ作成過程で発生する各データについて説明する。図13は、第2の実施の形態における、印刷データ作成過程のデータ推移図である。図13に示すように、印刷データ350を作成するための基になるデータは、RAM230の入力画像データ記憶エリア231に記憶されている画像データ312である。この画像データ312は、ユーザが画像編集用アプリケーションなどを用いて作成し、HDD250の画像データ記憶エリア256に保存した複数の画像データ312のうちで、ユーザがその印刷実行を指示したものである。但し、この画像データ312は、CMYK形式で256階調の画像データであって、CMY値で印刷画像の色濃度を表現する一方、K値で印刷画像の白濃度を表現するように、ユーザが任意に作成及び編集したものである。
そして、画像データ312を構成する各画素のCMY値が対応するRGB値に変換される。このRGB値への変換は、ここではC値,M値,Y値をそのままR値,G値,B値として各々設定するものとする(すなわち、R=C,G=M,B=Y)。そして、第1の実施の形態(図7参照)と同様に、当該RGB値が色変換テーブル410に基づいてCMYK値に各々変換されて、CMYK形式の色インクレベルデータ320が作成される。なお、本実施形態の色変換テーブル410は、RGB値に対応してCMYK値が定義されたプロファイルである。
一方、画像データ312を構成する各画素のK値が対応する白濃度に変換される。この白濃度への変換は、ここではK値をそのまま白濃度として設定するものとする(すなわち、白濃度=K)。そして、第1の実施の形態(図7参照)と同様に、当該白濃度が白濃度レベル変換テーブル430に基づいて白インクレベル(W値)に各々変換されて、W形式の白インクレベルデータ330が作成される。
このように、色変換テーブル410及び白濃度レベル変換テーブル430によって、画像データ312を構成する各画素がそれぞれCMYKW値に変換される。そして、第1の実施の形態(図7参照)と同様に、色インクレベルデータ320と白インクレベルデータ330とで構成された変換CMYKWデータ340に疑似階調処理が行われて、2階調の印刷データ350がインクジェットプリンタ1に送信される。
以下では、上記のデータ変換を実現するための、パーソナルコンピュータ200で行われる印刷データ作成処理について説明する。図14は、第2の実施の形態における、印刷データ作成処理のフローチャートである。本実施の形態では、ユーザが所望の画像データ312の印刷実行を指示するとプリンタドライバが起動される。そして、プリンタドライバに含まれる印刷データ作成プログラムに基づいて、CPU210により印刷データ作成処理(図14)が実行される。
図14に示すように、本実施形態の印刷データ作成処理では、ユーザが所望の画像データ312の印刷実行を指示すると、印刷対象の画像データ312がセットされる(S51)。S51では、画像データ記憶エリア256に格納された画像データ312のうちで、ユーザにより印刷指示されたものが入力画像データ記憶エリア231に読み込まれる。また、画像データ312のデータ変換に用いられる各変換テーブルがセットされる(S53)。S53では、ユーザにより指定された被記録媒体の色や素材などに対応して、色変換テーブル記憶エリア253から最適な色変換テーブル410が読み込まれ、白濃度レベル変換テーブル記憶エリア255から最適な白濃度レベル変換テーブル430が読み込まれる。なお、S53でセットされる各テーブルは、ユーザがキーボード281やマウス282を用いて任意に指定してもよい。
そして、S51でセットされた画像データ312を構成する1つ目の画素のCMYK値が読み込まれる(S55)。S55で読み込まれたCMY値から対応するRGB値が取得され(S57)、S55で読み込まれたK値から対応する白濃度が取得される(S59)。そして、S53でセットされた色変換テーブル410に基づいて、S57で取得されたRGB値が対応するCMYK値に変換され(S61)、S53でセットされた白濃度レベル変換テーブル430に基づいて、S59で取得された白濃度が対応する白インクレベル(W値)に変換される(S63)。なお、S61及びS63で取得されたCMYKW値は、変換CMYKWデータ記憶エリア232の該当画素番号欄に記憶される。
そして、S51でセットされた画像データ312を構成する全ての画素について変換が行われたか否かの判断が行われる(S65)。全ての画素についての変換が行われていない場合は(S65:NO)、S55へ戻る。そして、画像データ312の次画素のCMYK値が読み込まれて、当該次画素のCMYK値がRGB値及び白濃度に変換され、さらにCMYKW値に変換される(S55〜S63)。
このように、画像データ312を構成する全ての画素についてデータ変換が行われるまで、S55〜S65が繰り返し実行される。これにより、変換CMYKWデータ記憶エリア232には、CMYK形式で256階調の画像データ312に基づいて変換された、CMYK形式で256階調の色インクレベルデータ320と、W形式で256階調の白インクレベルデータ330とが記憶される。そして、色インクレベルデータ320と白インクレベルデータ330とで、CMYKW形式で256階調の変換CMYKWデータ340が構成される。
一方、全ての画素についての変換が行われた場合は(S65:YES)、変換CMYKWデータ記憶エリア232に記憶された変換CMYKWデータ340が、擬似階調処理によってCMYKW形式で2階調の印刷データ350に変換される(S67)。なお、S67で作成された印刷データ350は、印刷データ記憶エリア233に記憶される。そして、印刷データ記憶エリア233に記憶された印刷データ350がインクジェットプリンタ1へ送信され(S69)、本処理は終了する。
以上、第2の実施の形態に係るパーソナルコンピュータ200によれば、CMYK形式の画像データ312が入力されると、各入力画素のCMY値をRGB値に変換した後に、色変換テーブル410に基づいて当該RGB値をCMYK値に変換した色インクレベルデータ320を作成する。さらに、各入力画素のK値を白濃度に変換した後に、白濃度レベル変換テーブル430に基づいて当該白濃度をW値に変換した白インクレベルデータ330を作成する。そして、色インクレベルデータ320と白インクレベルデータ330とからなる変換CMYKWデータ340に基づいて、インクジェットプリンタ1で色インク(CMYK)及び白インク(W)による印刷に用いられる印刷データ350を作成する。
よって、被記録媒体の影響を受けることがない再現性の優れた高画質の画像を印刷するための印刷データ350を、ユーザが任意に編集及び作成することができる。そして、ユーザは任意に作成及び編集した画像データ312を入力すると、白インク及び色インクで印刷するための印刷データ350を作成することができる。特に、画像データ312はCMYK形式の画像データであって、そのK値に基づいて白インクレベルデータ330を作成するとともに、そのCMY値に基づいて色インクレベルデータ320を作成するので、1つの画像データ312を入力するだけで白インク及び色インクで印刷するための印刷データ350を作成することができる。
ところで、上記第1及び第2の実施の形態において、パーソナルコンピュータ200が本発明の「印刷データ作成装置」に相当する。インクジェットプリンタ1が本発明の「印刷装置」に相当する。印刷データ作成プログラムを有するプリンタドライバが、本発明の「印刷データ作成プログラム」に相当する。
また、印刷対象の画像データを指定するためのキーボード281やマウス282が、本発明の「画像データ入力手段」に相当する。印刷データ作成処理において、図11のS15〜S29、図14のS55〜S65を実行するCPU210が、本発明の「色材データ作成手段」に相当する。印刷データ作成処理において、図11のS31、図14のS67を実行するCPU210が、本発明の「印刷データ作成手段」に相当する。またHDD250(白濃度レベル変換テーブル記憶エリア255)が、本発明の「白濃度レベル変換テーブル記憶手段」に相当し、HDD250(白変換テーブル記憶エリア254)が、本発明の「白変換テーブル記憶手段」に相当する。キーボード281やマウス282が、本発明の「サイズ指示手段」、「解像度指示手段」、「オフセット指示手段」に相当する。
また、画像データ310が本発明の「他画像データ」に相当し、画像データ312が本発明の「共通画像データ」に相当する。白インク及び白インクレベル(W値)が本発明の「白色材」及び「白色材レベル」に相当し、白インクレベルデータ330が本発明の「白色材データ」に相当する。一方、色インク及び色インクレベル(CMYK値)が本発明の「他色材」及び「他色材レベル」に相当し、色インクレベルデータ320が本発明の「他色材データ」に相当する。印刷データ350が本発明の「白印刷データ」及び「他印刷データ」に相当する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、上記実施の形態では、「被記録媒体」として青色のTシャツを例示したが、本発明は記録紙やラベルなどの他の被記録媒体でも適用でき、またその下地の色も青に限定されず、白はもちろん、赤や黒などの任意の色に適用することができる。また、「印刷装置」としてインクジェットプリンタ1を例示したが、本発明は他の記録方式の印刷装置であっても適用でき、例えばトナーを用いて印刷するレーザプリンタにも適用することができる。
また、上記実施の形態では、白画像データ311がビットマップ形式のRGB画像である場合を例示したが、白画像データ311の階調やデータ形式などは任意のものを使用すればよい。例えば、白画像データ311を1チャンネルのグレースケール画像としてもよい。また、白濃度レベル変換テーブル430は、白濃度と白インクレベル(W値)の対応を定義していれば、ユーザが任意に作成・編集可能である。
さらに、色変換テーブル410及び白変換テーブル420は、sRGB形式の画像データをCMYKW形式の印刷データに変換するが、このようなデータ形式は任意に変更可能である。例えば、画像データは、CMYK形式やHSV形式などの他の色空間によるデータであってもよい。印刷データは、各プリンタの記録方式に応じてRGB形式やHSV形式などの他の色空間によるデータであってもよい。そして、色変換テーブル410及び白変換テーブル420は、画像データ及び印刷データの変換を可能とするようにデータ形式の対応を定義していればよい。
また、第1の実施の形態では、印刷データ作成処理(図11)の白濃度の算出(S25)において、白画像データ311の各入力画素が有するRGB値から特定される輝度値に基づいて白濃度を求めている。しかし、他の手法によって白画像データ311の各入力画素に対応する白濃度を求めてもよい。例えば、白画像データ311の各入力画素が有するRGB値のグレー成分に基づいて白濃度を求めてもよい。この場合、各入力画素の白濃度は、以下の数式のようにR値,G値,B値の最小値を設定すればよい。かかる手法によれば、各入力画素がRGB値のグレー成分以外の色情報を有していても、当該グレー成分のみに基づいて適切に白濃度を求めることができる。
白濃度=Min(R,G,B)
さらに、白濃度の算出(S25)では、白画像入力用印刷設定画面600で指定された画像形式(画像形式選択部602)に応じて、その算出方法を変えるようにしてもよい。例えば、画像形式選択部602で画像形式「1チャンネルraw」が選択されている場合は(図12参照)、各画素の値をそのまま白濃度とするようにしてもよい。
なお、白画像入力用印刷設定画面600でオフセットが指定された場合(オフセット指定部605)、画像データ310と白画像データ311との位置関係を適切に調整して印刷データ350を作成することができるのであれば、公知の各種手法を用いることができる。例えば、印刷データ350の作成時に、印刷範囲のイメージデータ(RGBW形式)に画像データ310と白画像データ311を配置して、その印刷範囲のイメージデータ(RGBW形式)を元に印刷データ350を作成する等である。
また、第2の実施の形態では、1つの画像データ312から色インクレベルデータ320及び白インクレベルデータ330を作成できるため、白画像データ311を入力するための画面(白画像入力用印刷設定画面600)を表示していない。しかし、ユーザが画像データ312の解像度,サイズ,画像形式などを任意に指定できるようにするために、白画像入力用印刷設定画面600と同様の画面を表示するようにしてもよい。
さらに、画像データ312を構成する各画素のCMYK値を、R=C,G=M,B=Y,白濃度=Kとして変換しているが、データ変換の手法はこれに限定されないことは言うまでもない。例えば、所定値(各インクレベルの最大値など)からC値,M値,Y値,K値を各々減算した値を、それぞれR値,G値,B値,白濃度として求めてもよい(すなわち、R=255−C,G=255−M,B=255−Y,白濃度=255−K)。また、白濃度レベル変換テーブル430を用いずに、変換後の値をそのままW値としてもよい(すなわち、W=K)。