前掲の特許文献3に開示される技術は、支柱に対する係止部材の係止および解除の際に、管保持部と係止部材との連結状態が同じ状態のまま操作させるものであることから、係止部材による係止および解除は係止突起の弾性変形によるものとなっていた。そのため、複数回の係止と解除を繰り返すことにより脆弱化が進行することとなり、管の支持力が低下するという問題点があった。また、係止状態を強固にするためには、弾性変更する係止突起の弾性力を大きくしなければならず、その反動により、係止を解除するためには大きい力を付与させなければならないという問題点を新たに招来することとなっていた。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、管保持部の係止および解除を比較的弱い力で操作できるとともに、容易な高さ調整を可能にする管支持装置を提供することである。
そこで、本発明は、ベース上に立設された少なくとも二本の支柱と、この支柱の表面に刻設された雄ねじ部と、前記各支柱の適宜位置で係止されるスライダと、二つのスライダに跨がって支持される管保持部とを備える管支持装置であって、前記スライダは、前記支柱の軸線に沿って移動可能なスライダ本体と、このスライダ本体に回動自在に設けられ、該スライダ本体との間で前記支柱を挟むことができる押圧部材とを備え、前記スライダ本体は、前記支柱の挿通を許容する挿通孔と、前記支柱表面に摺接する摺接部とを備え、前記押圧部材は、前記支柱の雄ねじ部に係合する係合部と、この係合部を前記雄ねじ部に係合させた状態で前記スライダ本体に掛止する掛止部とを備えることを特徴とするものである。
上記構成によれば、二つのスライダに跨がって支持される管保持部は、スライダが支柱に係止される位置に応じて高さが調整されることとなる。そして、スライダを支柱に係止する際には、押圧部材に設けられた係合部を支柱の雄ねじ部に係合させることによることとなり、位置調整のためにスライダを支柱に沿って移動させる場合には、当該係合部による係合を解除すればよいものである。係合部による支柱の雄ねじ部との係合を解除した状態は、支柱がスライダ本体の挿通孔に挿通され、支柱の表面は、挿通孔の内部表面および摺接部の表面にそれぞれ摺接されることとなるが、これらの表面には雄ねじ部に係合する構成はないことから、支柱に沿って円滑に移動することが可能となる。また、押圧部材の係合部が支柱の雄ねじ部に係合した状態において、掛止部をスライダ本体に掛止させることにより、上記係合状態を継続的に維持させることができる。これにより、スライダは、適宜位置において係止状態を維持することができ、当該スライダによって支持される管保持部を所定高さに維持させることが可能となる。なお、スライダの係止状態を解除する場合は、押圧部材の掛止部をスライダ本体から離脱させればよく、スライダの係止の後に位置を再度調整することも可能となる。
本発明は、上記構成において、前記管保持部を、全体が円環帯状の一部を開口してなる形状に形成するとともに、前記スライダに連結される半円環状の下半部と、この下半部に連続して上向きに延出して所定間隔を有する開口部を構成する延出部とを備えた管保持部とし、さらに、少なくとも前記延出部を、開口部の間隔が保持すべき管を挿通できる大きさに拡大するように弾性変形可能な材質で構成してもよい。
上記構成によれば、延出部の先端が対向するように配置されて開口部を形成するとともに、この開口部から保持すべき管を挿通させることにより、管保持部の円環状内部において保持されることとなる。このとき、管の下半分は、下半部によって保持されることとなり、管およびその内部を流れる流体の重量も専ら下半部を介してスライダによって支持させることができる。また、管が開口部を挿通した後に延出部が復元することにより、管の上半分についても延出部によって保持されることから、管が管保持部から離脱することを防止できる。
本発明は、上記構成において、前記管保持部の延出部先端に、該管保持部によって形成される円環の外方に向かって折曲してなる案内片を備えた構成とし、その案内片が、適宜面積を有するとともに側縁部に切欠部を備えるように構成してもよい。
上記構成によれば、対向する延出部の両端によって形成される開口部から円環の外方に所定面積を有する案内片が存在することから、保持すべき管を管保持部内に挿通させる際、この案内片によって当該管を挿通方向に案内することができる。また、この案内片の存在により、保持すべき管が管保持部に挿通される際、延出部先端の間隔を拡大させる方向に、その弾性変形の方向を案内することとなり、当該管を管保持部内へ(挿通される方向へ)押圧することによって、開口部を容易に拡大させることができる。さらに、この案内片の側縁部には切欠部を有していることから、管を管保持部内に挿通した後(保持させた状態)において、対向する案内片(対向する延出部の先端付近)の間に、例えば結束線のような補助部材を懸架することができる。この補助部材の懸架によって、管の保持状態を一層確実にすることができる。すなわち、延出部の弾性変形(開口部の拡大)を制限することによって、開口部からの離脱を防止することができる。
また、本発明は、上記構成において、前記スライダ本体の摺接部を、母線方向に適宜長さを有する半円筒状の平滑な内部表面により形成された摺接部とすることができる。
上記構成により、押圧部材の係合部によって支柱に係合されていない状態において、支柱の表面には、挿通孔の内面および摺接部のみが当接することとなるため、支柱の雄ねじ部にスライダが引っ掛かることがなく、当該支柱の長手方向に沿ってスライダを容易に移動(摺動)させることができる。なお、半円筒状の母線方向について、適宜長さとは、少なくとも支柱の雄ねじ部に構成されるねじの1ピッチ以上の長さであることが好ましい。また、挿通孔は丸穴とし、内部表面は平滑な面で構成されることが好ましく、さらに、スライダの移動(摺動)の際には、押圧部材を回動させて係合部が支柱表面に接しない状態であることが好ましい。
さらに、本発明は、上記構成において、前記スライダ本体の挿通孔を、前記摺接部に連続する内部表面を有し、該摺接部を形成する半円筒状と同じ内径によって形成されるとともに、その内部表面を平滑にしてなる挿通孔とすることができる。
上記構成により、支柱を挿通孔に挿通した状態においてスライダは移動(摺動)可能となり、このとき、挿通孔の内面と摺接部の表面とがともに支柱の表面に摺接することとなる。そして、これら各面はいずれも平滑であることから、押圧部材の係合部を支柱の雄ねじ部から離れた状態とすることによって、スライダの各部が支柱の雄ねじ部に引っ掛かることなく、当該スライダを支柱の軸線方向に沿って移動(摺動)させることができる。
本発明は、上記構成において、前記押圧部材を、前記スライダ本体に装着される軸部を備える構成とし、前記スライダ本体を、該軸部を回動自在に軸支するための支持手段を備える構成としてもよい。
上記構成によれば、押圧部材はスライダ本体に回動自在に軸支されることが可能となり、押圧部材の軸部をスライダ本体の支持手段によって軸支させることにより、スライダ本体と押圧部材とを一体化することができる。そして、押圧部材の回動の中心は軸部の軸心となり、その軸心はスライダ本体の支持手段によって位置が一定となることから、押圧部材は同じ位置を中心に回動できることとなる。従って、押圧部材の係合部は、スライダ本体の所定の位置において支柱表面に当接することができる。
また、本発明は、上記構成において、前記スライダ本体が、適宜間隔で平行に配置された少なくとも2枚の板状部材と、前記適宜間隔を保持しつつ前記各板状部材を連結する連結部材とからなるスライダ本体であり、前記挿通孔が、前記板状部材の全てに対し一直線上で貫設し、前記支柱を直線的に挿通させる挿通孔であり、前記摺接部が、前記連結部材の片方表面に前記挿通孔の内部表面に連続しつつ該挿通孔の内径と同径の半円筒状内部表面で形成された摺接部であり、前記押圧部材が、前記板状部材の間に配置される本体部分と、該板状部材によって回動自在に軸支される軸部とを備える押圧部材である構成としてもよい。
上記構成によれば、スライダ本体を構成する少なくとも2枚の板状部材には、それぞれ挿通孔が設けられていることから、これらの挿通孔の全てに支柱を挿通することによって、スライダ本体の複数個所が支柱に装着されることとなるから、スライダ本体は、支柱の軸線方向への移動(摺動)のみが自由な状態となる。その結果、スライダ本体が支柱の軸線方向に沿って移動してもその姿勢が変化することがなく、スライダ本体の摺接部には支柱表面が摺接される状態を維持することができることから、支柱のいずれの位置においても、押圧部材の係合部を係合させることによって、同じ状態で係止することが可能となり、その位置における管の保持が可能となる。
本発明は、上記構成において、前記押圧部材の掛止部が、先端に掛止爪を備えるとともに、該押圧部材の自由端から突出する掛止部であり、前記スライダ本体は、前記掛止部の先端付近の挿通を許容するとともに、前記掛止爪の掛止を受ける被掛止部を備える構成であってもよい。
上記構成によれば、押圧部材の係合部による支柱との係合状態を維持させることができ、スライダの係止状態を安定させることができる。すなわち、係止に必要な押圧力が押圧部材に付与されるとき、掛止爪が被掛止部に掛止されるように構成することによって、掛止爪が掛止される状態である限りスライダの係止に必要な押圧力は常に維持されることとなるから、その押圧力を継続的に付与させることができるのである。また、押圧部材の係合部には、支柱の雄ねじ部に係合するためのねじ溝が構成されていることから、このねじ溝の境界には雄ねじ部のねじ山と同じ突起部分が存在することとなり、この突起部分が雄ねじ部のねじ山に当接する場合には、両者の係合が不能または不完全となり得るため、これを回避するために、掛止爪による掛止が可能か否かによって係合状態の良否を判断させてもよい。すなわち、雄ねじ部のねじ山と係合部の突起部分とが当接する場合には、突部同士が接することとなることから、押圧部材を十分に回動させることができず、掛止爪が被掛止部に到達しないように掛止の状態を予め調整すれば、掛止できない場合には、係合状態が不完全であると判断することができるのである。
また、本発明は、上記構成において、前記押圧部材を、配置される両側に位置する板状部材の表面に向かって突設され、軸部を中心に回動するとき該板状部材の表面に摺接する突起部を備える構成としてもよい。
上記構成の場合には、押圧部材の円滑な回動を制限することができ、支柱の軸線方向での位置決め段階(スライダを移動(摺動)している段階)において、押圧部材が不用意に回動して係合部が支柱に係合することを回避できる。また、スライダ本体の板状部材の側に、例えば、上記突起部が係入できる突起部収容孔を設ける場合には、スライダ本体に対する相対的な押圧部材の姿勢を位置決めすることも可能となる。この両者の相対的な姿勢の位置決めは、スライダが支柱を係止する状態とする場合のほか、支柱の軸線方向への移動(摺動)時における所望の回動状態とする場合でもよく、双方ともに位置決めを要する場合には、二つの突起部と、二つの突起部収容孔を設ける構成とすればよい。
本発明によれば、管保持部を支持するスライダは、スライダ本体が単体で支柱に沿って移動可能であり、そのスライダ本体に支持される押圧部材を回動することによって、押圧部材の係合部が支柱の雄ねじ部に係合することができることから、回動部材の操作によって容易に管保持部の高さを調整することができる。従って、このように高さ調整された管保持部によって管を保持すれば、その管は調整された高さに配設されることとなる。また、押圧部材の係合部による支柱との係合は、押圧部材の掛止部によるスライダ本体との掛止によって維持されることから、この掛止部による掛止および解除によって、スライダと支柱との係止および解除が可能となるから、掛止部を容易に弾性変形可能にすることにより、比較的弱い力で係止および解除を操作できることとなる。
また、管保持部の全体が、円環帯状の一部を開口してなる形状に形成される場合には、当該開口部に管を通過させることによって、管を保持させることが可能となるから、管保持部の高さを予め調整した後において、容易に管を管保持部に保持させることができる。これにより管の配設が迅速かつ容易となる。さらに、開口部を延出部によって構成し、その先端に案内片を有する構成の場合には、当該案内片が管の挿通方向を案内し、同時に延出部の弾性変形方向を案内することとなるから、配設すべき管を延出部先端から管保持部内に向かって押圧することにより容易に配管することができる。
そして、延出部が弾性変形可能であるので、管を管保持部によって保持させる状態においては、延出部が管の離脱を防止する機能を発揮することとなる。また、案内片に切欠部を設ける構成の場合には、対向する案内片に線状部材を懸架する際、その線状部材を掛止することができることとなり、さらに管の離脱防止機能を強化させることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の概略を示す斜視図であり、図2はII−II断面図である。これらの図に示すように、本実施形態は、ベース100に鉛直方向に立設された支柱P1,P2に沿って管の高さを調整し得る装置であって、ベース100は、基礎スラブまたは床スラブ等の床下における平面部分の表面に設置できるように所定の面積を有しており、支柱P1,P2は、表面に雄ねじ部を有しており、この支柱P1,P2に沿って昇降可能なスライダ200,300と、このスライダ200,300によって支持される管保持部400とが一体的に構成されている。
ベース100は、スラブ等の表面に当接する領域(基礎領域101)と、支柱P1,P2を立設する領域(支柱装着領域102)とに区分され、支柱装着領域102は、基礎領域101から隆起され、基礎領域101が当接するスラブ等の表面の間に間隙を設けることができるようになっている。この間隙は、ベース100に支柱P1,P2を装着した際の下端の突出を許容するものである。また、ベース100の支柱装着領域102には、支柱P1,P2を挿通させるための貫通孔103,104が穿設され(図2参照)、その貫通孔103,104に連続するように支柱装着領域102の上面にナット105,106が固着されている。このナット105,106に支柱P1,P2の雄ねじ部を螺合することにより、当該支柱P1,P2が軸線を鉛直方向にしつつベース100に装着できるようになっている。
スライダ200,300は同じ構造であり、スライダ本体1と、このスライダ本体1の回動可能に支持される押圧部材2とで構成されている。押圧部材2の一端(基端)が、スライダ本体1の支持手段3,4によって支持されることにより、全体として一体的に構成されるものである。スライダ本体1は、上下二枚の板状部材5,6と、この板状部材5,6を所定間隔で連結する連結部材7とで断面コ字状に形成されており、上記二枚の板状部材5,6の間に形成される間隙に押圧部材2が係入できるようになっている。なお、左右に分かれて対向する二つのスライダ200,300は、全く同一の構造でもよいが、図示のように、押圧部材2が支持手段3,4によって支持される一端(基端)を対称な位置に設けてもよい。この場合には、押圧部材2の回動方向が左右のスライダ200,300が対称な方向となるものであるが、スライダ200,300の構造そのものは同一である。
管保持部400は、上記二つのスライダ200,300の背面側に連続して設けられている。対向する二つのスライダ200,300に連続されることにより、両スライダ200,300に跨がった状態で支持されるものであり、管保持部400の両側に位置するスライダ200,300を、ともに支柱P1,P2に沿って昇降させることにより、管保持部400の高さを調整することができるのである。この管保持部400は、所定の幅寸法を有する帯状に形成され、かつ円環状の一部を開口してなる略C字状に形成されている。すなわち、スライダ200,300との連結部401,402を境に、その下方において半円環状部分を形成する下半部403と、連結部401,012から上方に延出する延出部404,405とを有する構成となっている。なお、下半部403には、スライダ200,300との間にリブ406,407が設けられ、スライダ200,300による支持強度を十分に保持させている。
延出部404,405は、下半部403と同じ曲率の円弧状に形成されるとともに、その先端は、ほぼ同じ高さで相互に対向するように構成されている。この延出部404,405の先端により管保持部400の開口部が形成されているのである。また、この先端には、管保持部400の円環から外向きに延出するように、部分的に折曲されて構成される案内片408,409が設けられている。この案内片408,409は、管保持部400と同様の幅寸法で形成され、その表面は所定の面積を有して開口部の端縁を外向きに案内している。なお、延出部404,405は、弾性変形可能な樹脂製で構成されており、管保持部400によって管を保持させる際には、開口部(延出部404,405の先端)の距離を拡大させながら挿通できるようにしている。管の挿通後は弾性力による復元して管の上部に当接し、管の保持状態を補助するものである。
ここで、スライダ200,300の詳細について説明する。図3および図4は、スライダ200,300と支柱Pとの関係を示す図である。これらの図に示すように、スライダ本体1には、支柱Pが挿通できる挿通孔11,12が設けられており、また、二つの挿通孔11,12の間には支柱Pの表面を摺接する断面半円形の摺接部13が設けられている(図3参照)。さらに、このスライダ本体1には、押圧部材2を回動自在に支持するための支持手段3,4を有しており、この支持手段3,4によって押圧部材の基端部(軸部)21,22を支持することにより、押圧部材2を回動自在に支持しつつ、両部材1,2を一体的に構成できるようにしている(図2参照)。
押圧部材2は、上記基端部(軸部)21,22を中心に回動する部材であって、前記スライダ本体1の支持手段3,4によって支持されることにより、その回動の中心は、支持手段3,4が設けられているスライダ本体1の片方の端部付近となっている。従って、当該基端部(軸部)21,22を中心とする回動は、一方向へ回転するときは、他端(自由端)23をスライダ本体1に接近させることとなり(図2(b)参照)、反対方向へ回転するときは、他端(自由端)23をスライダ本体1から離すこととなる(図2(a)参照)。
本実施形態では、押圧部材2が基端部(軸部)21,22を中心に他端(自由端)23をスライダ本体1に接近させるとき、当該スライダ本体1と押圧部材2との間で支柱PPを挟むことができるように構成されている。すなわち、押圧部材2が支柱Pと当接する部分は、支柱Pの外形に合わせた樋状とし、その表面にねじ溝FSを形成した係合部24が設けられており、支柱Pに当接する際には、当該係合部24のねじ溝FSが支柱Pの雄ねじ部MSに係合するように構成されているのである。従って、スライダ本体1と押圧部材2とで支柱Pを挟む際には、スライダ本体1の側は、支柱Pの表面が摺接部13に摺接し、押圧部材2の側は、支柱Pの表面に係合部24が係合するようになっているのである。
さらに、押圧部材2の自由端23には、掛止部25が設けられ、この掛止部25がスライダ本体1を掛止することによって、上記押圧部材2による押圧の状態(雄ねじ部MSとねじ溝FSとの係合状態)を維持させることができるようになっている。掛止部25によるスライダ本体1への掛止は、掛止部25の一部をスライダ本体1のいずれかの部分に引っ掛ければよいのであるが、掛止状態を確実にするために、本実施形態では、掛止部25の先端付近に爪状の掛止頭部26を設け、他方、スライダ本体1には係入孔14を設けている。そして、掛止部25がこの係入孔14を挿通するとき、掛止頭部26によってスライダ1を掛止できるように構成している。
ここで、スライダ200,300を構成する両部材1,2の詳細をさらに説明する。図3において示されているように、スライダ本体1の全体は、二枚の板状部材5,6と、この両部材5,6を連結する連結部材7とで構成されている。板状部材5,6は、平面視において略長方形状に形成されており、これらの板状部材5,6が連結部材7によって適宜間隔を有して配置され、当該適宜間隔は前記押圧部材2を収納できる程度に設けられている。また、板状部材5,6の前記略長方形表面には、それぞれ縦横方向に延出する二種類のリブ51,52,61,62が幅方向に適宜寸法で設けられ、各板状部材5,6の曲げ方向に対する強度を向上させている。
板状部材5,6のほぼ中央には、それぞれ前述した挿通孔11,12が設けられており、両挿通孔11,12は一直線上となるように、各板状部材5,6に貫設されている。適宜間隔を有する二枚の板状部材5,6に挿通孔11,12が設けられることにより、この両者11,12に対し同時に挿通される支柱Pを、離れた二点で支持することができ、スライダ本体1が支柱Pの軸線方向に沿って同じ姿勢を維持しつつ移動できるようにしている。また、この挿通孔11,12の周辺には、前記リブ51,52,61,62と同様に幅方向に適宜寸法の円形リブ53,63が設けられ、ちょうど挿通孔11,12が円形リブ53,63の中央に設けられる状態となっている。この円形リブ53,63が設けられることにより、挿通孔11,12の内周縁部の強度を向上させることができるとともに、挿通孔11,12の内部に所定面積の壁面を形成することができる。そして、この所定面積の内部壁面が、支柱Pの表面と適宜長さで摺接することができることとなり、前記摺接部13とともに、支柱Pの表面に沿った摺動を可能にしている。
図5(a)は、スライダ本体1の二枚の板状部材5,6の中間位置における断面を示す図である。この図に示すように、連結部材7は、板状部材5,6の全面を連結するものではなく、挿通孔11,12のほぼ中心を境界として、片方(背面側(図中上側))の範囲(これを連結領域71と称する)においてのみ連結するものである。このように、連結領域71においてのみ連結部材7を設けることにより、挿通孔11,12が設けられる一直線上の中心線に沿って、かつ、同径の半円筒状を連結部材7の一部に形成することによって、当該半円筒状部分の表面が摺接部13として構成されることとなる。また、連結部材7が設けられていない範囲(これを開放領域72と称する)は、スライダ本体1の他方(表面側(図中下側))に形成されることとなり、当該開放領域72の範囲内に収まる大きさ・形状により押圧部材2を構成することによって、係止状態において、押圧部材2をスライダ本体1の内部(開放領域72)に収納させることが可能となる。
さらに、連結部材7は、連結領域71において、板状部材5,6が形成する略長方形の片方短辺側に、部分的に連結されていない部分を設け、当該部分に押圧部材2の基端部(軸部)21,22を支持するための支持手段3,4を形成可能にしている(図3参照)。詳細には、図5(a)に示されているように、支持手段4が、板状部材6の一部を半円状に切り欠いた切欠部41と、この切欠部41に向かって突出する二つの突片42,43とで構成されているのである。二つの突片42,43の先端は、前記切欠部41が形成する半円の延長線により仮想円を形成したときの円周端縁に到達するように構成されており、当該仮想円は、押圧部材2の一方の軸部22の外周円と同径にしている。
すなわち、切欠部41と二つの突片42,43が、軸部22の外周縁に摺接することにより、当該軸部22を回動自在に支持するようになっているのである。また、突片42,43は、切欠部41の両端側遠方から仮想円の中心に向かって延出しており、突片42,43の先端に向かって徐々に接近するように設けられている。従って、押圧部材2の軸部22を二つの突片42,43の間に進入させることにより、突片42,43は徐々に先端の距離を大きくしながら軸部22を通過させ、その軸部22が切欠部41に当接するとき、突片42,43の先端が復元して、軸部22の離脱を制限できるようになっている。
このように、切欠部41と突片42,43とで軸部22を支持した状態を図5(b)に示す。この図に示すように、支持された軸部22は、当該位置において切欠部41および突片42,43の先端に摺接しつつ回動可能になっており、この軸部22の回動により、押圧部材2の全体が回動可能な状態でスライダ本体1に装着されるのである。なお、図5(a)では、一方の支持手段4のみが示され、図5(b)では、その支持手段4によって一方の軸部22が支持される状態のみが示されているが、他方の支持手段3も同様の構成であり、これに支持される他方の軸部21も同様に回動可能に支持されるものである。
また、図5(a)および(b)に示されているように、連結部材7は、連結領域71のうち、支持手段3,4が形成されない側において、その肉厚(前後方向(図中上下方向)の厚さ寸法)を薄くした部分が設けられている(この部分を被掛止部73と称する)。この被掛止部73には、連結部材7を部分的に貫通してなる係入孔14が設けられている。この係入孔14は、ちょうど押圧部材2の掛止部25が挿通できる大きさで設けられ、被掛止部73の背面側(図中上面側)には、この係入孔14の周辺の一部を切欠いて係入凹部15が形成されている。この係入凹部15は、押圧部材2の先端(掛止頭部26)が係入孔14を超えて被掛止部73の背面側に到達するとき、掛止頭部26に設けられる掛止突起27が係入できるように設けられているのである。
掛止突起27が係入凹部15に係入した状態を図5(c)に示す。この図に示すように、掛止部25に設けられる掛止頭部26が係入孔14を通過することによって、掛止部25の掛止頭部26が被掛止部73の背面側を引っ掛ける状態となり、さらに、係入凹部15に掛止突起27が係入することにより、掛止状態が容易に解けないようにしているのである。
なお、本実施形態では、押圧部材2の掛止部25が挿通できるように連結部材7に係入孔14を設けているが、掛止頭部26による連結部材7との掛止が可能であれば、掛止部25を挿通させる係入孔14を設ける必要はない。すなわち、本実施形態では、二枚の板状部材5,6を連結する連結部材7のほかに、係入孔14の近傍に両板状部材5,6を連結する共通のリブ8が形成されていることから(図3および図5参照)、掛止頭部26を連結部材7の背面側まで到達させるために、係入孔14を挿通させることとしたが、この共通リブ8を設けない構成とした場合は、連結部材7の側部を通って背面側に到達させることも可能である。
次に、押圧部材2の構成について詳述する。図3および図4において示されているように、押圧部材2の本体部分20は、略直方体状であり、長手方向の片方先端側20aを基端としてスライダ本体1との連結側とし、他方の先端側20bを自由端23としている。基端側20aには、前述のようにスライダ本体1の支持手段によって支持されるための軸部21,22が、本体部分20のうち、上面部20cおよび下面部20dから、それぞれ上下方向に突出するように設けられている。この軸部21,22の中心は、本体部分20のうち、スライダ本体1の連結部材7と当接する平面部(これを当接側壁面部20eと称する)に沿った位置に設定され、軸部21,22を軸として押圧部材2が回動するとき、当該当接側壁面部20eが、その軸回りに回転するように設けられている。
また、押圧部材2の本体部分20の当接側壁面部20eには、上下方向に母線を有する半円筒状に切欠かれ、その切欠き表面にねじ溝が刻設された係合部24が設けられている。この係合部24は、当接側壁面部20eがスライダ本体1の連結部材7に当接したとき、スライダ本体1の摺接部13とともに略円筒状の空間を形成できるようになっている。また、上記係合部24に設けられるねじ溝FSは、支柱Pの表面の雄ねじ部MSに係合するように、当該雄ねじ部MSと同じピッチで形成されている。
押圧部材2の本体部分20の他端側20b(自由端23)には、本体部分20の長手方向から直交方向に突出する掛止部25が設けられている。この掛止部25は、スライダ本体1の連結部材7の背面側に到達する程度の突出長を有して設けられ、その先端部分に掛止頭部26と、さらに掛止頭部26の一部に掛止突起27を備えている。従って、掛止頭部26に設けられた掛止突起27がスライダ本体1の連結部材7の背面側に設けられた係入凹部15(図3(b)参照)に係入することによって、押圧部材2の自由端23を確実に掛止することができようになっている。
ここで、本実施形態の押圧部材2は、全体としてプラスチック等の合成樹脂で構成しており、掛止部25は、掛止の際に弾性変形可能としている。すなわち、掛止部25をスライダ本体1の係入孔14に挿通させる際、掛止頭部26のうち係入孔14の内部表面に対向する一部が、当該係入孔14の内側表面に接触して、掛止部25を広げるように(外向きに押し出すように)弾性変形させることとなる。そして、掛止頭部26がこの係入孔14を超える位置まで進行するとき、掛止部25が弾性力により復元し、掛止頭部26が被掛止部73の背面側に当接することとなり、掛止突起27が係入凹部15に係入することができるようにしているのである。
なお、本実施形態の軸部21,22の根元部分(押圧部材2の本体部分20との境界)には、軸部21,22よりも大きい径の基部21a,22aが設けられている。この基部21a,22aは、押圧部材2の本体部分20のうちの当接側壁面部20eから半円板状に突出して設けられており、その片面は、本体部分20の上面部20cおよび下面部20dの表面に、それぞれ一致させて設けられている。つまり、本体部分20の上面部20cおよび下面部20dの表面が基部21a,22aの片面まで延長する状態としているのである。このような基部21a,22aを設けることにより、本体部分20の上面部20cまたは上側の基部21aの上部表面のいずれかが、上側の板状部材5または上側の支持手段3の対向面に当接し、また、本体部分20の下面部20dまたは下側の基部22aの下部表面のいずれかが、下側の板状部材6または下側の支持手段の対向面に当接することとなる。従って、押圧部材2が軸部21,22を中心に回動するとき、本体部分20の長手方向の向きが変化する場合であっても、軸部21,22の根元部分の全周においてスライダ本体1と当接できる平面を確保することができる。これにより、軸部21,22を中心とする回動時における面接触部分が摺動することから、当該回動を円滑にすることができるようになっている。
スライダ200,300は上記のような構成であるから、スライダ200,300を支柱Pに沿って移動させる場合の使用態様は次のとおりとなる。すなわち、予め、スライダ本体1の挿通孔11,12に支柱Pを挿通させ、これら挿通孔11,12の内面およびスライダ本体1の摺接部13を、当該支柱Pの表面に摺接させる状態としておき、押圧部材2の本体部分20の当接側壁面部20eをスライダ本体1の連結部材7に当接しない状態としておく。この状態においては、スライダ本体1は、支柱Pを係止することなく、その軸線に沿って摺動自在となる。そこで、上記の状態を維持しつつ所定の位置までスライダ200,300を移動し、所定位置において、押圧部材2を回動させて支柱Pに係止するのである。
このとき、押圧部材2の本体部分20のうち、当接側壁面20eがスライダ本体1の連結部材7に当接するように、軸部21,22を中心に回動させるのである。そして、当接側壁面20eが連結部材7に当接するとき、当該当接側壁面20eに形成されている係合部24が、支柱Pのうちの摺接部13に当接していない部分(摺接部13によって摺接されている反対側表面)に当接し、そのねじ溝FSを支柱Pの雄ねじ部MSに係合させるのである。このねじ溝FSと雄ねじ部MSとの係合により、スライダ200,300は全体として支柱Pの軸線方向に対する移動が制限されることとなり、当該支柱Pにスライダ200,300を係止することができるのである。
さらに、上記にように係止した状態(すなわち、係合部24を支柱Pの雄ねじ部MSに係合させた状態)において、押圧部材2の自由端23を十分に押圧することにより、当該自由端23に設けられている掛止部25の先端とともに掛止頭部26が、スライダ本体1の連結部材7の背面側に押し出されることとなり、掛止頭部26によって連結部材7を掛止させるのである。この掛止により、スライダ200,300の係止状態を維持することができる。
なお、上記のように掛止部25による掛止が可能な状態は、十分に押圧部材2が支柱Pを押圧していることを意味するものである。すなわち、係合部24に形成されるねじ溝FSには、その周辺にねじ山部分(一つのねじ溝とこれに隣接するねじ溝との境界において盛り上がっている部分)が存在するため、このねじ山部分が支柱Pの雄ねじ部MSに当接する場合(つまり係合が不十分な場合)には、係合部24のねじ山部分の高さ相当の隙間が、スライダ本体1と押圧部材2との間に存在することとなる。この隙間によって掛止頭部26は係入孔14を超えることができない状態となる(つまり掛止できない状態となる)のである。従って、係合状態が良好であるか否かを掛止可能であるか否かによって判断することも可能である。
また、上記のようなスライダ200,300の係止状態を解除する場合は、掛止頭部26による掛止を解くことにより、押圧部材2は回動が可能となり、この回動により、押圧部材2の係合部24による支柱Pの係合を解除すればよい。このときの掛止頭部26の掛止解除は、掛止部25を強制的に弾性変形させればよく、掛止頭部26が連結部材7の背面側から離れる方向へ掛止部25の先端を指先等で押せばよいものである。なお、掛止状態においては、係入突起27が係入凹部15に係入された状態であるが、掛止頭部26を連結部材7の背面側から離れるように掛止部25を変形させることにより、この掛止突起27は係入凹部15から脱することができるものである。
次に、本実施形態の使用態様を説明する。使用に際しては、予め、保持すべき管が配管される位置にベース100およびこれに立設された状態の少なくとも二本も支柱P1,P2を配置する。他方、スライダ200,300および管保持部400が一体化された部分については、上記二本の支柱P1,P2と同じ間隔で挿通孔11,12が形成されている二つのスライダ本体1を有する両スライダ200,300と、保持すべき管の外径と同程度の曲率を有する管保持部400とで構成されたものを用意する。スライダ200,300のスライダ本体1には押圧部材2を回動可能に支持させておく。
そして、各スライダ200,300のスライダ本体1の挿通孔11,12に二つの支柱P1,P2を挿通させることにより、当該支柱P1,P2に沿ってスライダ200,300が移動可能となり、その適宜位置において押圧部材2により支柱P1,P2に係止するのである。このときの係止の方法は、前述したように押圧部材2を回動させることによるものである。このように両スライダ200,300を支柱P1,P2に係止した状態を図6に示す。
この図に示すように、スライダ200,300が所定位置において支柱P1,P2に係止するとき、管保持部400は適宜高さとなるように調整されている。この状態で、保持すべき管PPを管保持部400の開口部(延出部404,405の間隙)から押し入れることによって、管PPを管保持部400によって保持させることができるのである。
すなわち、図7に示すように、保持すべき管PPは、断面形状円環状であることから、当該管PPを管保持部400の上方から下降させることにより、その下部端面(円形端縁)の一部は、延出部404,405の先端に設けられた案内片408,409に当接することとなる(図7(a)参照)。このとき、案内片408,409は、延出部404,405の先端から外向きに配置されていることから、管PPの下部端面(円形端縁)の両側を同時に当接させることができる。この案内片408,409による下部端面の当接によって、当該管PPに対して保持位置を案内することができるのである。
そして、さらに管PPを下降させることにより、延出部404,405は弾性変形することにより、両者の間隔を拡大させ、管PPが管保持部400の内側に挿通できるようになる(図7(b)参照)。このとき、案内片408,409が、管PPの下降方向を案内することにより、延出部404,405の変形方向が必然的に案内されることとなるのである。すなわち、管PPを案内片408,409の案内に従って下降させることにより、管PPの下部端面は断面弧状であるため、両案内片408,409に対して同様な横向きの力を作用させることとなり、この案内片408,409に作用する横向きの力によって、延出部404,405が対称に弾性変形することができるのである。
この状態からさらに管PPを下降させることにより、当該管PPの下部端面は、管保持部400の下半部403の内部表面に当接することとなり、延出部404,405は、管PPの上部端面に当接することとなるのである(図7(c)参照)。延出部404,405は、管PPの中心部が通過することによって、拡大方向へ弾性変形する必要がなくなり、そのものの弾性力によって復元することによって、管PPの上部端面に当接することとなるのである。そして、この延出部404,405の復元により、管PPの外周面は管保持部400の開口部(延出部404,405の先端同士の間)を除き、管保持部400によって包囲されることとなり、管PPが管保持部400から離脱することを抑制することができるのである。このようにして保持される管PPは、人為的に持ち上げる(上昇させる)ことによって離脱させることが可能であるため、管PPの撤去や配管のやり直し等の際には、強制的に離脱させ得るようにしている。しかしながら、例えば下水の排水用などのように、通常の用途に使用する程度では、管PPが管保持部400から離脱することがないように、延出部404,405の弾性力が調整されている。
なお、延出部404,405による弾性力のみよって管PPを保持することが不十分である場合には、図8に示すように、線状部材(結束線または輪ゴムなど)500を案内片408,409に懸架してもよい。このような線状部材500の懸架により、管保持部400の開口部(延出部404,405の先端同士の間)を含めて管PPの外周を包囲させることができるのである。なお、このとき、案内片408,409は、延出部404,405の先端から外方に折曲されていることから、当該折曲部に線状部材500を掛止させてもよいが、案内片408,409の側縁部に設けられている切欠部481,482,491,492に線状部材500を係入させつつ懸架することもできる。切欠部481,482,491,492に係入させることにより、懸架した線状部材500の周囲長さを短くすることができることから、線状部材500の離脱を防止できることとなる。
上記のように、配管すべき範囲の全体について、当該配管される管PPの長さ方向の適宜な位置において、好適な高さに管PPを保持することにより、管PPの全体に所望の勾配を設けることができるのである。
本発明の実施形態以上のとおりであるが、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内において種々の態様をとり得るものである。すなわち、管保持部400は、一部を開口してなる円環帯状に構成したもののみについて説明したが、図9に示すように、管保持部400は、円環帯状を下半部403と、上半部410とに分離して構成してもよい。この場合、分離された上半部410は、開口部を有する構成ではなく、弾性変形可能である必要もない。管PPを保持する場合は、上半部410を除いた半円環状の下半部403の内部表面に管PPの下部端面を当接させ、その後、上半部410を管PPの状部端面に当接させつつ、下半部403と一体化させればよいものである。この上半部410は、下半部403と着脱可能に設けられており、ボルトおよびナットによって締着させる場合のほか、下半部403を樹脂製としておき、上半部410を貫通させたネジSS1,SS2によって下半部403を鋲着させてもよい。
また、スライダ200,300の構成については、図10に示すように、押圧部材2の上面部20cから僅かに突出する突起部28を設ける構成としてもよい。この突起部28は、押圧部材2が支柱Pを押圧しない状態(非押圧状態)において、上側の板状部材5に当接しない位置であって、かつ、押圧部材2の当接側壁面部20eが連結部材7に接近するとき、上側の板状部材5の下面部と摺接できる位置に設けられるものである。このような突起部28を設けることにより、押圧部材2による非押圧状態を維持させることが可能となる。すなわち、押圧部材2による非押圧状態においては、当該押圧部材2が軸部21,22を中心に回動が自在であるため、何らかの要因により押圧部材2が回動して、支柱Pの雄ねじ部MSに係合部24が接触する可能性があるところ、上記突起部28が、板状部材5の端縁に当接することにより、ストッパとして機能させることができ、不意に押圧部材2が回動することを防ぐことができるのである。そして、押圧部材2を支柱Pに係止させる状態(係止状態)とする場合には、押圧部材2を強制的に回動することによって、僅かに突出する突起部28は板状部材5の端縁との当接を容易に解除することとなる。このとき、突起部28は板状部材5の下面に摺接することとなり、押圧部材2の回動に対して摩擦抵抗を与えて、その回動速度を緩和させることができる。
さらに、図10に示されているように、板状部材5の側には突起部28の係入を許容し、突起部28を収容する突起部収容孔16を設ける構成としてもよい。このような構成の場合、突起部収容孔16は、押圧部材2が十分に回動し、支柱Pに係止できる状態に到達したとき、当該突起部28を収容できる位置に設けることが望ましい。このように構成することによって、押圧部材2を回動すべき範囲が明確となり、押圧部材2による好適な押圧状態の位置決めを可能にするものである。
なお、上記突起部28と突起部収容孔16との位置関係は、押圧部材2による押圧状態の位置決めを可能とするものであるが、非押圧状態における位置決めとして機能させてもよい。すなわち、図10では、非押圧状態における突起部28の位置は、板状部材5の外方としているが、突起部28を常に板状部材5の下面に摺接させる位置に設け、非押圧状態として適当な位置において突起部28を収容できる第二の突起部収容孔を設ける構成とすることも可能である。
また、上記構成のほかに、スライダ200,300について異なる構成とすることができる。すなわち、上記実施形態では、スライダ本体1の構成として、適宜間隔(押圧部材2を収納できる間隔)を有して二枚の板状部材5,6を配置し、その間に押圧部材2が収納される形態のみ示したが、押圧部材2は、スライダ本体1の内部に収納される構成であることに限定するものではなく、また、板状部材5,6で構成された形態に限定されるものでもない。例えば、上記の実施形態では、板状部材5,6にリブ51,52,53,61,62,63を設けることによって、強度や摺接領域を確保するように構成しているが、これに変えて二枚の直方体を使用してもよく、さらに、全体を大きい直方体で構成し、押圧部材2との当接に必要となる部分を切欠いた構成としてもよい。
さらに、板状部材5,6は二枚である形態のみについて説明したが、この板状部材5,6は三枚以上使用してもよい。この場合、各板状部材の間に、それぞれ適宜間隔を有して配置すれば、押圧部材2を複数使用する形態とすることもできおる。さらには、複数の間隙のうち任意の間隙を選択して押圧部材2を装着する形態とすることもできる。
また、ベース100に立設される支柱P1,P2は、予め配置される管PPを所定の高さに支持することができる程度に十分の長さ(高さ)を有するものが使用されるが、管PPの設置現場において高さが不足する場合には、同種の雄ねじ部MSが刻設された延長用の支柱を継ぎ足すように構成してもよい。この場合、図11に示すように、両端に雌ねじが刻設されたジョイントナットJNを使用することができる。すなわち、ジョイントナットJNの一方を、当初より立設される支柱P1,P2の先端に螺合させ、他方を、延長用支柱P11,P22の下端を螺合させるのである。このように、延長用支柱P11,P22を継ぎ足すことにより、同じ軸線上において、さらに上方で管保持部400を支持することが可能となる。
さらに、前記の実施形態では、スライダ200,300を構成するスライダ本体1および押圧部材2について、両者を個別に設け、押圧部材2の軸部21,22をスライダ本体1の支持手段3,4に支持させることによって、当該押圧部材2を回動自在に設けた構成のみを説明したが、これらスライダ本体1と押圧部材2とを一体的に構成してもよい。このような形態としては、図12(a)に示すように、スライダ本体1aの片方壁面30aと押圧部材2aとを薄肉の帯体40aで連結してなる構成とする場合があり得る。このように、薄肉帯体40aで両者を連結することにより、薄肉帯体40aを湾曲させることにより、押圧部材2aをスライダ本体1aの板状部材5a,6aの間に挿入することが可能となる。この場合においては、押圧部材2aによる支柱Pの係合を維持するため、スライダ本体1aの連結部材7aには二つの係入孔14a,14aが設けられ、これらに同時に係入する二つの掛止部25a,25aが押圧部材2aに設けられている。これら二組の係入孔14a,14aおよび掛止部25a,25aは、それぞれ支柱Pまたは係合部24aの両側に一組ずつ配置されることにより、支柱Pに対する係合部24の押圧状態を良好にすることができるものである。
さらに、スライダ本体1と押圧部材2とを一体的に構成する形態としては、図6(b)に示すように、スライダ本体1bの片方壁面30bと押圧部材2bとを板状の支持部材40bで連結する構成もあり得る。この支持部材40bは、二枚の板状部材40ba,40bbが、薄肉境界部40bcで折曲可能に設けられる構成であり、一方の板状部材40baは、スライダ本体1bの片方壁面30bから突出するように設けられ、他方の板状部材40bbは、押圧部材2bから突出するように設けられている。このように構成することにより、薄肉境界部40bcで折曲することによって、スライダ本体1bを構成する板状部材5b,6bの間に押圧部材2bを挿入させることが可能となる。なお、このような構成の場合においても、押圧部材2bによる支柱Pの係合を維持するため、スライダ本体1bの連結部材7bには二つの係入孔14b,14bが設けられ、押圧部材2bには、二つの掛止部25a,25aが、それぞれ支柱Pまたは係合部24bの両側に設けられるものである。
なお、スライダ本体1と押圧部材2とを個別に構成する形態においては、両者のうちのいずれか一方(特に押圧部材2)を交換することが可能であることから、支柱Pの雄ねじ部MSのピッチ等が異なる場合には、押圧部材2の係合部24のねじ溝FSのピッチ等が前記雄ねじ部MSに合致するものに変更でき、適宜係合可能なものを選択することができるという利点を有することとなる。