JP5905200B2 - 化粧用ブラシを製造する方法 - Google Patents

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本発明は、芯線材の捩じり合わせ部からブリストルが芯線材の軸方向及び半径方向にランダムに延出する化粧用ブラシ及びその製造方法に関する。
この種の化粧用ブラシは、一対の芯線材に多数のブリストルを挟み捻ることで、芯線材の捻り合わせ部から、ブリストルが放射状に延出して芯線材軸方向に螺旋状に分布する、全体が略円柱形状に形成されたブラシ部を備えている(図9a及び図9b)。そして、係るブラシ部の側面を使ってマスカラ等の液体化粧料の塗布を行う。
特許文献1では、前述のブラシ部を熱可塑性のブリストルを用いて形成した後、化粧用ブラシを軸心回りに一方向に回転させつつ、ブラシ部の先端側にヒータを接近させ、その放熱面をブリストルの先端に押圧接触させて、ブリストルを主として芯線材軸方向に湾曲した状態に熱変形(弾性変形)させる熱処理加工が開示されている。これにより、ブリストルの延出方向が芯線材軸方向にランダムな形態(連続する螺旋形状が軸方向に乱されて、本来ブリストルが植設されていない領域にブリストルが分散し、芯線材軸方向にばらけた形態)となったブラシ部を備えた化粧用ブラシが形成される。係る熱処理加工が施された化粧用ブラシは、ブリストルが芯線材軸方向の隙間を埋めるように均一に分散したことで、芯線材軸方向に液溜め空間が形成されて、液体化粧料の保持量に優れた化粧料ブラシとなっている(図10a)。
特開平06−91851号公報(第5欄第10〜27行目、図3〜図5)
しかし、特許文献1では、化粧用ブラシを任意の一方向に回転させて熱変形させるため、図10bに示すように、芯線材半径方向には回転方向に倣って方向性(くせ)がつき、ブリストルが寝てしまう(ブリストルが軸心回りに渦を巻いた形態となる)という問題があった。ブリストルが寝たブラシ部の側面を使って液体化粧料を睫毛に塗布しようとすると、ブリストルを睫毛間に差し込みにくく、ブリストルが睫毛に引っ掛からずに抜けてしまうため、液体化粧料が睫毛にうまくのり移らなかった(塗布しにくかった)。即ち、液体化粧料の保持量を増やすためにブリストルを芯線材軸方向にランダムにしようとするほど、ブリストルが芯線材半径方向に寝て化粧用ブラシの使い勝手が悪くなるという矛盾が生じていた。
そこで発明者は、化粧用ブラシを一方向へ回転させたのち逆方向に回転させて、芯線材半径方向にブリストルを起こせば、再びブリストルが放射状に分散して睫毛間に差し込みにくいという問題が解消するし、逆回転によりブリストルに芯線材半径方向に複雑に湾曲したくせがつけば、芯線材軸方向だけでなく半径方向にも液溜め空間が生まれて液体保持量がさらに増大するとともに、芯線材半径方向に形成された湾曲部分が睫毛によく引っ掛かかるのではないかと考えた。
そして、実際に逆回転を施す熱処理加工で試作したところ、前記ブリストルの延出方向が、芯線材軸方向によりランダムになるとともに芯線材半径方向にS字状に略放射状に拡散することが確認できたことで、この度の特許出願に至ったものである。
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、ブリストルが芯線材の軸方向及び半径方向にランダムに延出する形状で、液体化粧料の保持量が大で睫毛にからみやすいブラシ部を備えた化粧用ブラシ及びその製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明に係る化粧用ブラシは、捩られた二条の芯線材に挾持された熱可塑性ブリストルが螺旋状に植設された化粧用ブラシにおいて、前記ブリストルが前記ブラシを軸心回りに回転させつつブリストル先端にヒータを押し付けることで主として芯線材軸方向及びブラシ回転方向への曲げを受けるとともに、湾曲状態のまま冷却固化されて芯線材による挾持部からの延出方向が芯線材軸方向にランダムとされた化粧用ブラシであって、前記芯線材から延出するブリストルが、ブラシ回転方向一方向の曲げを受けたのち逆方向の曲げを受けることで芯線材半径方向にS字に湾曲して延出する形態となるように構成された
(作用)ブリストルが、芯線材軸方向への曲げを受けてランダム(連続する螺旋形状が芯線材軸方向に乱されて、本来ブリストルが植設されていない領域にブリストルが分散し、芯線材軸方向にブリストルがばらけた形態)に芯線材軸方向の隙間を埋めるように確実に均一に分散するとともに、ブラシ回転方向一方向の曲げを受けたのち逆方向の曲げを受けて芯線材半径方向にS字状に略放射状に拡散する形態となったことで、芯線材軸方向の液溜め空間に加えて、芯線材半径方向のS字状の湾曲部分も液溜め空間となり、芯線材軸方向に加えて芯線材半径方向にも液体化粧料が保持されるので、液体化粧料の保持量がさらに増大する。
また、芯線材半径方向に湾曲が形成されたことで、液体化粧料を塗布する際に湾曲部分が睫毛によく引っ掛かかり、前記液溜め空間にたっぷりと保持された液体化粧料を睫毛に塗布しやすい(のせやすい)。
さらに、ブリストルが芯線材半径方向にS字状となって略放射状に延出する形態となるので、液体化粧料を塗布する際にブリストルが睫毛間に差し込みにくいという問題が解消される。
本発明に係る化粧用ブラシの製造方法においては、熱可塑性ブリストルを二条の芯線材で挟むとともに、芯線材を捩り、前記ブリストルが螺旋状に植設されたブラシを形成する植設工程と、前記ブラシを軸心回りに回転させつつ、ブリストル先端にヒータを押圧接触させてブリストルを主として芯線材軸方向及びブラシ回転方向に湾曲した状態に熱変形させる熱処理工程と、ヒータをブラシから離間してブリストルを湾曲状態のまま冷却固化する冷却工程を備えた化粧用ブラシの製造方法において、前記熱処理工程に、ブラシを一方向に回転させてブリストルを弾性変形域内で熱変形させる第1の熱処理工程と、ブラシを逆方向に回転させてブリストルを弾性変形域内で熱変形させる第2の熱処理工程を設けた。
(作用)化粧用ブラシの熱処理工程において、ブラシを軸心回りに任意の一方向に回転させた後逆方向に回転させることで、芯線材軸方向及びブラシ回転方向への曲げを受けて、ブリストルの延出方向が芯線材半径方向,芯線材軸方向に以下の形態となる。
芯線材半径方向には、一方向への回転により渦状に寝てしまったブリストルが逆回転により起こされて、芯線材半径方向に複雑に湾曲したくせがつき、その状態で冷却固化されることで、多少弾性により復元するものの、ブリストルが、直線的ではなくS字状に湾曲して延出する形態となる。芯線材軸方向には、二方向の回転時間分ブリストルが芯線材軸方向への曲げを受けて熱変形(弾性変形)することに加えて、S字状に湾曲したブリストルが芯線材軸方向に分散する形態となるので、芯線材軸方向に確実に均一にランダムとなる。
上記方法において、前記ヒータを前記ブラシをはさんで対向一対に設け、該ヒータが同時に連携する形で前記ブラシに接近離反するようにした。
(作用)特許文献1の熱処理加工では、ブラシ部の一領域(特許文献1では下方領域)にのみヒータが押圧接触される構成であったため、ブリストルが熱変形に至るまでに時間を要した。仮にヒータの温度を高く設定すれば長時間接触させなくとも熱変形するが、ブリストルが縮れた形状に塑性変形してしまうという不具合が生じた。そこで、ヒータを前記ブラシ部をはさんで対向一対に設ける構成とすれば、ブラシ部との接触面積が倍となってヒータ接触時間が短縮して作業効率が上がるとともに、温度設定を変えなくてよいため塑性変形に至ることなく熱変形させることができる。
上記方法において、前記ヒータを、前記ブラシの先端側又は基端部側のいずれか一方の領域にのみ押圧接触させるようにした。
(作用)前記熱処理加工をブラシ部全体に施すと、液体化粧料の保持量が大ゆえに睫毛のボリュームアップに適した化粧用ブラシとなる。一方、熱処理加工していない従来公知の化粧用ブラシは、連続する螺旋形状が芯線材軸方向に等ピッチに配列した形状であるため芯線材軸方向に隙間が空いており、この隙間に液体化粧料は保持されない。しかし、係る隙間を利用して睫毛を梳かすと余剰な液体化粧料が除去されるので、液体化粧料を睫毛延出方向に均一に塗布する(薄づきに伸ばす)のに適している。よって、ブラシ部の先端側又は基端部側のいずれか一方の領域にのみ熱処理加工を施すことで、1本の化粧用ブラシで2種類の使用感が得られる化粧用ブラシを製造できる。
以上より、請求項1に係る発明によれば、睫毛のボリュームアップを望む使用者にとって使い勝手の良い化粧用ブラシが得られる。
また、逆方向に回転させることで、液体化粧料を多量に保持可能で、睫毛間にブリストルを差し込みやすく、多量の液体化粧料を睫毛に塗布しやすい、睫毛のボリュームアップに適した化粧用ブラシを製造することができる。
請求項に係る発明によれば、弾性変形域内での熱処理加工が実現しやすい。
請求項に係る発明によれば、ボリュームアップ効果に優れた熱処理領域とロング効果やセパレート効果に適した非熱処理領域が並存する、1本で2種類の使用感が得られる化粧用ブラシを製造できる。例えば、睫毛の中央部では睫毛のボリュームアップを図りたいが目尻では睫毛を長く見せたい場合には、睫毛の中央部には熱処理領域のブラシ部を用いて睫毛に液体化粧料をたっぷり塗布して睫毛を太くし、目尻には非熱処理領域のブラシ部を用いて液体化粧料を睫毛延出方向に均一に薄づきに伸ばすことで睫毛が長く見えるようにする、といった使い方ができる。また、睫毛全体にボリューム感を出しつつも扇状に広がった綺麗な睫毛に仕上げたい場合には、まず、熱処理領域のブラシ部を用いて睫毛に液体化粧料をたっぷり塗布してボリューム感を出した後、非熱処理領域のブラシ部を用いて睫毛を梳かすことで綺麗にセパレートした睫毛に仕上げる、といった使い方ができる。即ち、主として睫毛のボリュームアップを望む使用者の多様な要求に応える化粧用ブラシを製造、提供することができる。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の第1の実施例に係る化粧用ブラシをマスカラブラシに適用したもので、図1aは本発明の第1実施例に係る化粧用ブラシの正面図で、図1bは同化粧用ブラシの左側面図で、図1cは同化粧用ブラシの右側面図である。図1において、仮想線は熱処理領域におけるブリストルを現している。図2は同化粧用ブラシの要部であるブラシ部の製造工程を説明する図であって、ブラシ部にヒータを押圧接触させた状態の平面図であって、図2においてヒータは仮想線で示されている。
これらの図において、符号1Aは第1の実施例に係るマスカラブラシを示している。マスカラブラシ1Aは、捩じられた二条の芯線材からなる芯線部2と、芯線部2にブリストル4が挾持されたブラシ部10から構成されている。ブラシ部10の先端側は円錐台形状となるようにトリミングされていて、ブラシ部10全体は砲弾型となっている。そして、後述の熱処理加工を経たことで、ブラシ部10の先端側の略円錐台形状の第1領域は非熱処理領域Q、ブラシ部10基端部側の略円柱形状の第2領域は熱処理領域Pとなって、熱処理加工の有無によりブリストル4の延出形態が異なっている。即ち、第1領域ではブリストル4が芯線材軸方向に螺旋状に連続し、芯線材半径方向には直線的に放射状に延出する形態に、第2領域ではブリストル4が芯線材軸方向にはランダムな形態に隙間を埋めるように均一に分布して、芯線材半径方向にはS字状に湾曲しながら略放射状に拡散して延出する形態になっている(図1a、図1b)。以下、マスカラブラシ1Aの製造方法を詳細に説明する。
まず、熱可塑性のブリストル4を植設する。ブリストル4は、真円中実形状で直径約0.06〜0.15mmの合成樹脂製繊維、例えばナイロン6やナイロン66を用いる。係るブリストル4の中央部を二条の芯線材間に挟み、任意の一方向に捻ることで、芯線材・芯線材の捻り合わせ部から、ブリストル4が芯線材軸方向に連続した螺旋形状で芯線材半径方向に直線的に放射状に分散した形態で植設された、図9a及び図9bに示すような従来公知の形態のブラシ部100が形成される(植設工程)。
次に、植設工程を経て全体が円柱形状に形成されたブラシ部100の先端側をトリミングして、全体を砲弾型に形成する。
次に、図2に示すように、砲弾型に整えたブラシ部100に熱処理加工を施す。符号W(ワーク)は、これから加工しようとするブラシ部100を備えたマスカラブラシである。ワークWの基端部が駆動モータに接続された回転機構24の先端部に設けられたチャック26によりクランプされている。回転機構24は左右いずれの方向にも回転可能であるとともに、上下に昇降可能となっている。チャック26で保持されたワークWの下方には、左右対向一対にプレート状のヒータ32・32が設置されており、ワークWが下降するとヒータ放熱面32a・32aでブラシ部100全体を左右から押圧可能となっている。ヒータ放熱面32aはブリストル4が熱変形(弾性変形)可能な温度付近、好ましくは、融点約220℃のナイロン、融点約260度のナイロン66に対して、100℃〜150℃に設定されている。100℃以下では弾性変形させてもすぐ元の形状に復元してしまい、150℃以上では弾性変形を超えて塑性変形してしまうからである。左右一対のヒータ32・32は、例えばエアシリンダーや逆ねじを設けたボール軸等の機構を用いて左右一対のヒータ32が同時に連携する形でワークWに対して接近離反されるようになっている。
熱処理加工では、第1の工程として、まず、チャック26で保持されたワークWが回転機構24とともにヒータ32・32間に降下する。次に、ヒータ32・32が同時に連携する形で接近し、ブラシ部100全体を押圧する。詳しくは、ヒータ放熱面32a・32aは、芯線部2に接触しないもののブリストル4の先端側は全て接触するような形態で押圧され、ブリストル4(の先端側)と大きく接触している。ここで、ブラシ部100の先端側の第1領域はトリミングによりブリストル4の長さが他の領域(ブラシ部10基端部側の第2領域)よりも短いため、第1領域のブリストル4はヒータ放熱面32aと大きく接触せず、ヒータ32・32からの熱が伝達しにくく熱変形しにくい。特に、第1領域の先端側にはヒータ32・32からの熱は伝達していない。次に、回転機構24が駆動されてワークWが右方向に回転される。このとき、主としてブラシ部100の第2領域のブリストル4は、芯線材軸方向に大きく曲げられる。即ち、ブリストル4は、芯線材軸方向にランダムな形態に湾曲した状態に熱変形(弾性変形)される。しかし、芯線材半径方向には、一方向への回転ゆえに回転方向に倣って方向性がつき、ブリストル4が寝てしまい、ブリストル4が軸芯回りに右渦を巻いた形態にくせがついたブラシ部100aとなっている(図10a、図10b)。こののち、一旦ヒータ32・32は連携してワークWから離反する。
そして、回転機構24の右方向への回転が収束するとすぐに、引き続き第2の工程として、再びヒータ32・32が連携して前述の押圧状態までワークWに接近する。すると、今度は回転機構24を介してワークWが左方向、即ち逆方向に回転され、第1の工程と同程度の時間回転される。こののち、再びヒータ32・32が連携してワークWから離反され、チャック26で保持されたワークWが回転機構24とともに上昇し、ヒータ32・32間から取り除かれる。
これにより、主としてブラシ部100aの第2領域のブリストル4は、一旦芯線材半径方向に右渦形状に寝ていたブリストル4が起こされて、芯線材半径方向に複雑に湾曲したくせがついた状態で略放射状に延出する形態となる。なお、第2の工程においても、ブラシ部100aの第1領域にはヒータ32・32からの熱は伝達しにくく、特に先端側には熱は伝達していない。
次に、熱処理加工直後のワークWを冷却する。係る冷却工程は、自然冷却でも良いが、自然冷却のみでは大きく熱変形したブリストル4は弾性により元の位置に多少復元する。そこで、ワークWを回転させながらコールダー等の冷却装置で熱処理加工直後に瞬間的に強制冷却することで、ブリストル4の変形を長く保持することができる。以上により、マスカラブラシ1A(図1a、図1b、図1c)が完成する。
マスカラブラシ1Aのブラシ部10の第2領域では、芯線材軸方向には、両回転分の時間ブリストル4が芯線材軸方向への曲げを受けて熱変形(弾性変形)することに加えて、S字状に湾曲したブリストル4が芯線材軸方向に分散される形態となるので、ブリストル4は芯線材軸方向の隙間を埋めるように確実に均一な形態に(特許文献1のブラシ部100aよりも複雑に)ランダムとなっている。
芯線材半径方向には、右方向への回転により右渦状に寝てしまったブリストル4が左回転により起こされるとともに、複雑に湾曲したくせがついた状態で冷却固化されることで、多少弾性により復元するものの、ブリストル4は芯線材半径方向に直線的ではなく湾曲したゆるやかなS字状に略放射状に延出する形態となっている(図1c,以下、熱処理加工の影響を受けてブリストル4が熱変形した領域を熱処理領域Pとする)。
なお、特許文献1の熱処理加工では、ワークWの一領域にのみヒータが押圧接触される構成であったため、ブリストルが熱変形に至るまでに時間を要した。ヒータの温度を高くすれば長時間接触させなくとも熱変形するが、ブリストルが塑性変形して縮れてしまうという不具合が生じた。本実施例では、ヒータ32・32がワークWをはさんで対向一対に設けられた構成となっているので、ワークWとの接触面積が2倍となってヒータ押圧時間が短縮して作業効率が向上するとともに、温度設定を変えなくてよいため、弾性変形域内での加工が実現しやすいものとなっている。
一方、ブラシ部10の第1領域では、第1領域基端部では第2領域と同様熱処理領域Pとなっているが、先端側に向かうにつれて熱変形しておらず、従来公知のブラシ部100と同様の形状となっている。即ち、第1領域のブリストル4は、芯線材軸方向には連続する螺旋形状が等ピッチに配列した形状で、芯線材半径方向には直線的に放射状に延出する従来公知のブラシ部の形態のままとなっている(図1b,以下、係る熱処理の影響を受けていない領域を非熱処理領域Qとする)。
これにより、マスカラブラシ1Aは、熱処理領域Pであるブラシ部10の第2領域は、ブリストル4が芯線材半径方向にS字状となって略放射状に分散しているので、マスカラ液を塗布する際にブリストル4を睫毛の間に差し込みやすい。図10bに示すように、特許文献1のブラシ部、即ち第1の工程のみ施したブラシ部100aのままでは、ブリストル4が寝ているため、ブラシ部100aの側面を使ってマスカラ液を睫毛に塗布しようとすると、ブリストル4を睫毛間に差し込みにくく、その結果ブリストルが睫毛に引っ掛からずに抜けてしまうためマスカラ液が睫毛にうまくのり移らず(塗布しにくく)、使い勝手が悪かった。
また、芯線材半径方向にブリストル4がS字状に拡散したことで、湾曲部分が液溜め空間F(図1c)となり、芯線材軸方向に加えて半径方向にもマスカラ液が保持されるので、マスカラ液の保持量が従来のブラシ部100、100aよりもさらに増大する。
また、芯線材半径方向にゆるやかなS字状の湾曲(ゆるやかな二段曲げ)が形成されたことで、マスカラ液を塗布する際に二段曲げ部分が睫毛によく引っ掛かかり、液溜め空間Fにたっぷりと保持されたマスカラ液を睫毛に塗布しやすい(のせやすい)ため、ブラシ部10の主として第2領域は睫毛のボリュームアップに非常に効果的である。
そして、非熱処理領域Qであるブラシ部10の第1領域は、ブリストル4の螺旋列・螺旋列の間、即ち芯線材軸方向に隙間が空いており、この隙間にはマスカラ液が保持されない。しかし、係る隙間を利用して睫毛を梳かすことで余剰なマスカラ液が除去されて、マスカラ液を睫毛延出方向に均一に塗布する(薄づきに伸ばす)のに適している。よって、ブラシ部10の主として第1領域(特に先端部側)は睫毛のロング効果、セパレート効果を望む場合に用いるのに適している。
よって、マスカラブラシ1Aは、例えば、睫毛の中央部では睫毛のボリュームアップを図りたいが目尻では睫毛を長く見せたい場合には、睫毛の中央部には主としてブラシ部10の第2領域(熱処理領域P)を用いて睫毛に液体化粧料をたっぷり塗布して睫毛を太くし、目尻には主としてブラシ部10の第1領域(非熱処理領域Q,特に先端側)を用いてマスカラ液を睫毛延出方向に均一に薄づきに伸ばすことで睫毛が長く見えるようにする、といった使い方ができる。また、睫毛全体にボリューム感を出しつつも扇状に広がった綺麗な睫毛に仕上げたい場合には、まず、ブラシ部10の第2領域(熱処理領域P)を用いて睫毛にマスカラ液をたっぷりのせてボリューム感を出した後、ブラシ部10の第1領域(非熱処理領域Q)を用いて睫毛を梳かすことで綺麗にセパレートした睫毛に仕上げる、といった使い方ができる。このため、マスカラブラシ1Aは睫毛のボリュームアップを重視する使用者にとって使い勝手が良い。
次に、図3は、本発明の第2の実施例に係るマスカラブラシ1Bを示し、図3aは第2実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図で、図3bは同化粧用ブラシの右側面図である。
マスカラブラシ1Bは、第1実施例と同様の植設工程を経たのち、トリミング加工を施さず全体が円柱形状のブラシ部100のまま、第1実施例と同様の熱処理加工(第1及び第2の工程)及び冷却工程を施したのち、ブラシ部10の上側面部に平面カットを施したものである。即ち、マスカラブラシ1Bは、ブラシ部10の下側面側は熱処理加工の影響を受けて熱処理領域Pとなっている。しかし、ブラシ部10の上側面側は、熱処理加工の影響を受けたブリストル4の先端側が切り落とされたため、熱処理加工の影響を受けていないブリストル4の基端部側が顕れ、非熱処理領域Qが形成された構成になっている。
よって、マスカラブラシ1Bは、第1実施例と同様に、睫毛の中央部では睫毛のボリュームアップを図りたいが目尻では睫毛を長く見せたい場合には、睫毛の中央部には主としてブラシ部10の熱処理領域P、目尻には主としてブラシ部10の非熱処理領域Qを用いるといった使い方ができる。また、睫毛全体にボリューム感を出しつつも扇状に広がった綺麗な睫毛に仕上げたい場合には、ブラシ部10の熱処理領域Pを用いて睫毛にマスカラ液をたっぷりのせ、ブラシ部10の非熱処理領域Qを用いて睫毛をセパレートさせるといった使い方ができる。
なお、マスカラブラシ1Bの非熱処理領域Pはブリストル4の長さが短いため、細部(目尻、目頭、下睫毛)へマスカラ液を適量塗布して睫毛を仕上げる際にも使い勝手が良い。
次に、図4は、本発明の第3の実施例に係るマスカラブラシ1Cを示し、図4aは第3実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図で、図4bは同化粧用ブラシの右側面図である。
マスカラブラシ1Cは、第2実施例と同様、全体円柱形状のブラシ部100に熱処理加工及び冷却工程を施したのち、ブラシ部10の半径方向等間隔4箇所に「U」字状の溝が軸方向に形成されるようVカットを施したものである。即ち、マスカラブラシ1Cは、ブラシ部10の軸方向凸部が熱処理加工の影響を受けて熱処理領域Pとなっており、ブラシ部10の軸方向凹部が熱処理加工の影響を受けたブリストル4の先端側が切り落とされて非熱処理領域Qとなる構成になっている。
マスカラブラシ1Cは、軸方向凹部にマスカラ液が保持される上に、熱処理領域Pである軸方向凸部にもマスカラ液が保持されるため、睫毛の中央部にも目尻にも、睫毛全体にボリューム感を出したい場合に使い勝手が良い。
次に、図5及び図6は、本発明の第4の実施例に係るマスカラブラシ1Dを示し、図5は第4実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図で、図6は同化粧用ブラシの要部であるブラシ部の製造工程を説明する図であって、ブラシ部にヒータを押圧接触させた状態の平面図である。図6において、ヒータは仮想線で示されている。
マスカラブラシ1Dは、第1実施例と同様の熱処理加工(第1及び第2の工程)を、ワークWを軸方向に二分したうちの基端部側領域にのみ施したものであり、他の構成は第1実施例と同様である。
即ち、マスカラブラシ1Dでは、ブラシ部10の基端部側半分の領域は熱処理加工の影響を受けて熱処理領域Pとなっており、先端部側半分の領域は熱処理加工が全く施されていない非熱処理領域Qという構成となっているため、両領域の棲み分けが第1実施例よりも明確であり、非熱処理領域Qがブラシ部10の軸方向半分に亘って広く設けられている。
よって、マスカラブラシ1Dは、第1実施例と同様に、睫毛の中央部では睫毛のボリュームアップを図りたいが目尻では睫毛を長く見せたい場合には、睫毛の中央部には主としてブラシ部10の熱処理領域P、目尻には主としてブラシ部10の非熱処理領域Qを用いるといった使い方ができるし、睫毛全体にボリューム感を出しつつも扇状に広がった綺麗な睫毛に仕上げたい場合には、ブラシ部10の熱処理領域Pを用いて睫毛にマスカラ液をたっぷりのせ、ブラシ部10の非熱処理領域Qを用いて睫毛をセパレートさせるといった使い方ができる。
そして、マスカラブラシ1Dは非熱処理領域Qが広く設けられたことから、ボリュームアップ効果に加えてロング効果やセパレート効果も重視する使用者にとって使い勝手が良い。
次に、図7は、本発明の第5の実施例に係るマスカラブラシ1Eを示し、図7aは本発明の第5実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図で、図7bは同化粧用ブラシの左側面図で、図7cは同化粧用ブラシの右側面図である。
マスカラブラシ1Eは、第4実施例と同様ワークWの基端部側半分の領域にのみ熱処理加工を施し、その後に第2実施例と同様ブラシ部10の上側面部に平面カットを施したものである。
即ち、マスカラブラシ1Eでは、ブラシ部10の先端部側半分の領域及び基端部側半分の領域の上側面部は熱処理の影響を受けていない非熱処理領域Qとなっており、基端部側領域の下側面部のみが熱処理加工の影響を受けた熱処理領域Pという構成となっている。このため、両領域の棲み分けが明確であるとともに、非熱処理領域Qが第4実施例及び第2実施例よりも広く設けられている。
よって、マスカラブラシ1Eも、第1実施例と同様に、睫毛の中央部では睫毛のボリュームアップを図りたいが目尻では睫毛を長く見せたい場合には、睫毛の中央部には主としてブラシ部10の熱処理領域P、目尻には主としてブラシ部10の非熱処理領域Qいった使い方ができるし、睫毛全体にボリューム感を出しつつも扇状に広がった綺麗な睫毛に仕上げたい場合には、ブラシ部10の熱処理領域Pを用いて睫毛にマスカラ液をたっぷりのせ、ブラシ部10の非熱処理領域Qを用いて睫毛をセパレートさせるといった使い方ができる。
そして、マスカラブラシ1Eは非熱処理領域Qが広く設けられたことから、ボリュームアップ効果に加えてロング効果やセパレート効果をさらに重視する使用者にとって使い勝手が非常に良く、第2実施例と同様細部の仕上げに用いやすい。
次に、図8は、本発明の第6の実施例に係るマスカラブラシ1Fを示し、図8aは本発明の第6実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図で、図8bは同化粧用ブラシの左側面図で、図8cは同化粧用ブラシの右側面図である。
マスカラブラシ1Fは、第5実施例と同様ワークWの基端部側半分の領域にのみ熱処理加工を施し、その後に第3実施例と同様ブラシ部10の半径方向等間隔4箇所に軸方向にVカットを施したものである。
即ち、マスカラブラシ1Fでは、ブラシ部10の軸方向二分割のうち先端部側半分の領域及び基端部側半分の領域の軸方向凹部は熱処理の影響を受けていない非熱処理領域Qとなっており、基端部側半分の領域の軸方向凸部のみが熱処理加工の影響を受けた熱処理領域Pという構成となっている。このため、両領域の棲み分けが明確であるとともに、非熱処理領域Qが第4実施例及び第3実施例よりも広く設けられている。
マスカラブラシ1Fは、第1実施例と同様に、睫毛の中央部では睫毛のボリュームアップを図りたいが目尻では睫毛を長く見せたい場合には、睫毛の中央部には主としてブラシ部10の熱処理領域P、目尻には主としてブラシ部10の非熱処理領域Qを用いるといった使い方ができるし、睫毛全体にボリューム感を出しつつも扇状に広がった綺麗な睫毛に仕上げたい場合には、ブラシ部10の熱処理領域Pを用いて睫毛にマスカラ液をたっぷりのせ、ブラシ部10の非熱処理領域Qを用いて睫毛をセパレートさせるといった使い方ができる。
そして、マスカラブラシ1Eは熱処理領域Pにおけるマスカラ液保持量が第3実施例と同様豊富であることから、ボリュームアップ効果に非常に適しているとともに、非熱処理領域Qが広く設けられたことから、ボリュームアップ効果に加えてロング効果やセパレート効果を重視する使用者にとって非常に使い勝手が良い。
以上より、第1〜6実施例では、睫毛のボリュームアップを望む使用者の多様な要求に応えるマスカラブラシ1A〜1Eを製造及び提供することができる。
なお、第1〜6実施例の熱処理工程において、第1の工程で右回転、第2の工程で左回転としたが、逆であっても良い。
また、第1〜6実施例の熱処理工程において、第2の工程は第1の工程よりも短時間であってもブリストル4を起こすことはできるが、同程度の時間とすることで、より確実に良好にくせがつくため好ましい。
また、第4〜6実施例においては、熱処理加工を施す領域はワークWを軸方向に二分したうちの先端部側領域であってもよい。
(a)本発明の第1実施例に係る化粧用ブラシの正面図。(b)同化粧用ブラシの左側面図。(c)同化粧用ブラシの右側面図。 同化粧用ブラシの要部であるブラシ部の製造工程を説明する図であって、ブラシ部にヒータを押圧接触させた状態の平面図。 (a)第2実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図。(b)同化粧用ブラシの右側面図。 (a)第3実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図。(b)同化粧用ブラシの右側面図。 第4実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図。 同化粧用ブラシの要部であるブラシ部の製造工程を説明する図であって、ブラシ部にヒータを押圧接触させた状態の平面図。 (a)本発明の第5実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図。(b)同化粧用ブラシの左側面図。(c)同化粧用ブラシの右側面図。 (a)本発明の第6実施例に係る化粧用ブラシの簡略正面図。(b)同化粧用ブラシの左側面図。(c)同化粧用ブラシの右側面図。 (a)従来公知の化粧用ブラシの正面図。(b)同ブラシの右側面図。 (a)従来(特許文献1)の化粧用ブラシの正面図。(b)同ブラシの右側面図。
1A 第1実施例に係るマスカラブラシ
1B 第2実施例に係るマスカラブラシ
1C 第3実施例に係るマスカラブラシ
1D 第4実施例に係るマスカラブラシ
1E 第5実施例に係るマスカラブラシ
1F 第6実施例に係るマスカラブラシ
2 芯線部
4 ブリストル
10 熱処理加工後のブラシ部
100 従来公知のブラシ部
100a 従来(特許文献1)のブラシ部
24 回転機構
26 チャック
32 ヒータ
熱処理領域P
非熱処理領域Q
液溜め空間F

Claims (3)

  1. 熱可塑性ブリストルを二条の芯線材で挟むとともに、芯線材を捩り、前記ブリストルが螺旋状に植設されたブラシを形成する植設工程と、前記ブラシを軸心回りに回転させつつ、ブリストル先端にヒータを押圧接触させてブリストルを主として芯線材軸方向及びブラシ回転方向に湾曲した状態に熱変形させる熱処理工程と、ヒータをブラシから離間してブリストルを湾曲状態のまま冷却固化する冷却工程と、を含み、
    前記熱処理工程、ブラシを一方向に回転させてブリストルを弾性変形域内で熱変形させる第1の熱処理工程と、ブラシを逆方向に回転させてブリストルを弾性変形域内で熱変形させる第2の熱処理工程を行って、前記芯線材から延出するブリストルが、ブラシ回転方向一方向の曲げを受けたのち逆方向の曲げを受けることで芯線材半径方向にS字に湾曲して延出した化粧用ブラシを製造する方法
  2. 前記ヒータが前記ブラシをはさんで対向一対に設けられ、該ヒータが同時に連携する形で前記ブラシに接近離反することを特徴とする請求項1に記載の化粧用ブラシを製造する方法
  3. 前記ヒータを、前記ブラシの先端側又は基端部側のいずれか一方の領域にのみ押圧接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧用ブラシを製造する方法
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