JP5904409B2 - 靭性に優れた金型用鋼材の製造方法 - Google Patents
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Description
上述の通り、本発明の目的は、SUS420J2や、特許文献1〜3等で提案される成分組成の金型用鋼材の靭性を向上するものである。そして、この金型用鋼材が、通常の方法に従って、該成分組成のマルテンサイト系ステンレス鋼素材を熱間加工し、引き続いて焼鈍して製造されることも、上述の通りである。以下、素材の成分組成(つまり、金型用鋼材の成分組成)について説明する(以下、「質量%」の表記は、単に「%」と記す)。
Cは、焼入れ性を高め、さらには、50HRC以上の十分な焼入れ焼戻し硬さを得るために必要な元素である。ただし、多すぎると、焼入れ後に焼割れが発生しやすくなる。よって、本発明では、0.3〜0.5%とする。好ましくは、0.33%以上および/または0.45%以下である。
Crは、焼入れ性を高め、高い焼入れ焼戻し硬さを得るために必要な元素である。さらに、Crは、金型用鋼材の耐食性を高める重要な元素である。ただし、多すぎると、熱伝導率が著しく低下する。熱伝導率が高いと、金型として使用時の加熱・冷却の熱サイクルに要する時間を短縮でき、好適である。よって、本発明では、12.0〜16.0%とする。好ましくは、12.5%以上および/または15.0%以下である。
C:0.3〜0.5%(好ましくは、0.33%以上および/または0.45%以下)
Si:1.0%以下(好ましくは、0.2%以上および/または0.7%以下)
Mn:1.0%以下(好ましくは、0.2%以上および/または0.7%以下)
P:0.05%以下(好ましくは、0.03%以下)
S:0.01%以下(好ましくは、0.005%以下)
Ni:無添加〜1.0%(好ましくは、0.5%以下)
Cr:12.0〜16.0%(好ましくは、12.5%以上および/または15.0%以下)
MoおよびWの1種または2種:(Mo+1/2W)の式で0〜1.5%(好ましくは、0.1%以上および/または1.0%以下)
Fe:実質的に残部(例えば、残部Feおよび不可避的不純物を含む)
Mnは、焼入れ性を高め、フェライトの生成を抑制する効果を有するが、多すぎると基地の粘さを極端に上げるため、被切削性を低下させる元素である。
Pは、多すぎると熱間加工性や靭性を低下させる元素である。
Sは、多すぎると熱間加工性や耐食性を低下させ、さらには、靭性の異方性を助長する元素である。
Niは、焼入れ性を高め、耐食性も向上させる効果を有するが、多すぎると熱伝導率を低下させる元素である。
MoおよびWは、焼戻し時の硬さを高める効果を有するが、多すぎると焼入れ時に基地に固溶しきれず、逆に、焼戻し硬さを低下させる。
本発明に係るステンレス鋼素材を熱間加工する際は、その加工性の向上と、炭化物の固溶による成分均質化のために、該素材を、通常、オーステナイト単相域の温度に加熱してから熱間加工する。そして、組織中の炭化物の微細化を目的とする本発明にとって、この熱間加工が終了した時の組織中の結晶粒は微細であることが有効である。つまり、後述する冷却過程以降において、該組織中のオーステナイト結晶粒界は炭化物の析出サイトとなるから、冷却前の結晶粒を微細にしておくことで、この析出サイトは増加して、焼鈍後の炭化物を微細にすることができる。
加工率(%)=[(熱間加工前のステンレス鋼素材の厚み−熱間加工後のステンレス鋼素材の厚み)/熱間加工前のステンレス鋼素材の厚み]×100
上記の熱間加工を終えた素材は、そのまま放置すれば、加工終了温度から降温していく。このとき、素材は、加工後の冷却過程で炭化物が析出する温度域を通過するため、特にオーステナイト結晶粒界上に、微細な炭化物が析出しやすい。また、実際の操業においては、改めての加熱工程を省略して効率化するために、この冷却途中の素材は、すかさず焼鈍炉へ挿入されていた。したがって、従来、上記の微細な炭化物が析出した熱間加工後の素材は、具体的には300〜500℃付近の、十分な冷却をされないままの状態で、再び焼鈍温度に加熱され、長時間の焼鈍環境に曝されていた。そして、この温度履歴によって、上記の微細な炭化物は、金型用鋼の靭性を低下させるほどの粗大な炭化物へと成長していたことを、本発明者は突きとめた。
焼鈍状態で機械加工を行う場合、熱間加工後の焼鈍は硬さを低下させて加工性を向上させる効果を有する。また、後工程で発生する割れや曲がりを抑制する効果を有する。さらに、上記の成分組成でなるステンレス鋼においては、組織中にCr炭化物を均一に析出させることで発現する「結晶粒界のピン止め効果」により、後の焼入れ時で結晶粒の粗大化を抑制でき、靭性の低下を抑制できる効果も有する。これらの効果、特にピン止め効果を十分に得るためには、焼鈍温度は600℃以上が好ましい。ただし、焼鈍温度が高すぎると、上記のCr炭化物の析出が困難となるため、1000℃以下が好ましい。より好ましくは、650℃以上および/または950℃以下である。焼鈍は、例えば室温以下までの冷却を挟んで、2回以上を繰り返してもよい。
本発明の製造するステンレス鋼の場合、上記の焼鈍時において、Cr炭化物を均一に析出させることが好ましい。よって、出発素材である鋼塊は、成分偏析が極力低減されていることが好ましい。また、該ステンレス鋼を、特にプラスチック成型用の金型等に使用するときは、鋼材の磨き性に悪影響を及ぼすAl2O3等の非金属介在物は極力低減することが好ましい。以上のことから、熱間加工に供する鋼素材は、エレクトロスラグ再溶解法や真空アーク再溶解法等の、消耗電極式再溶解法によって得ることが好ましい。
焼鈍後の金型用鋼材は、適宜、求められる硬さ、例えば25〜45HRCの硬さに焼入れ焼戻ししたプリハードン状態で提供できることは、上記の通りである。そして、機械加工時の被切削性(工具寿命)を重視するのであれば、25〜35HRC程度に焼入れ焼戻しすることが好ましい。また、機械加工後には、再度の焼入れ焼戻しを行わないのであれば、使用硬さも念頭に入れた35〜45HRC程度に焼入れ焼戻しすることが好ましい。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.3〜0.5%、Cr:12.0〜16.0%を含む成分組成のマルテンサイト系のステンレス鋼素材を熱間加工し、引き続いて前記熱間加工した前記ステンレス鋼素材を焼鈍する金型用鋼材の製造方法であって、
前記熱間加工は、[(熱間加工前のステンレス鋼素材の厚み−熱間加工後のステンレス鋼素材の厚み)/熱間加工前のステンレス鋼素材の厚み]×100の式で算出される加工率が55%以上であり、かつ、
前記熱間加工後のステンレス鋼素材をMs点以下の温度まで冷却してから、引き続いて焼鈍温度に加熱して前記焼鈍することを特徴とする靭性に優れた金型用鋼材の製造方法。 - 前記焼鈍温度は、600℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の靭性に優れた金型用鋼材の製造方法。
- 前記焼鈍温度は、1000℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の靭性に優れた金型用鋼材の製造方法。
- 前記ステンレス鋼素材は、再溶解法によって得られたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の靭性に優れた金型用鋼材の製造方法。
- 前記焼鈍した後に、焼入れ焼戻しして、プリハードン状態の金型用鋼材とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の靭性に優れた金型用鋼材の製造方法。
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