JP5904253B2 - 化粧シート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、家具、建具等の建材の表面装飾材料等として有用な化粧シートに関する。
従来から表面に印刷を施した化粧シートを板材等の基材にラミネートして化粧板や化粧部材等としたものが、内装材、建具、家具等に使用されている。これらの化粧シートに意匠性を付与する方法として、化粧シートの表面にトップコートを施し、エンボスロールを用いて、凹凸模様を付すことが行われるが、該意匠性の付与に際し、艶を制御することは重要である。内装材、建具、家具等に使用される化粧シートの艶は、低い方が、しっとりとした落ち着き感がでることから、一般に好まれる傾向にある。一方、艶が高いと、プラスチック感が強くなるため、耐水性が求められる部分や汚れを防止したい部分に用いられるものを除いては、敬遠される傾向にある。
化粧シートの艶を決定する要因としては、化粧シート表面のトップコートに用いるインキ自体の艶、エンボス加工する際の加工温度、エンボスロール表面の艶などが挙げられる。
化粧シート表面のトップコートに用いるインキの艶に関しては、インキ組成物にマット剤(艶消剤)を含有させることで、低艶化が達成される。また、エンボス加工時の加工温度については、一般的に、エンボスロールに接する直前の化粧シートの表面温度が高いほど、エンボスロールの艶が転写されやすく、またライン速度が遅いほど、エンボスロールと化粧シートの接触時間が長くなるために、エンボスロールの艶が転写されやすい。したがって、エンボスロールの艶の制御が重要となるが、エンボスロールの艶を落とす方法として、一般にメッキ処理やブラスト処理が挙げられる。
しかしながら、サンドブラスト処理によってエンボスロールの表面に凹凸形状を付与し、艶を低減した化粧シートであっても、化粧シートに対して入射する光を反射角方向から視認した場合、鏡面反射が発生して化粧シートが光って白濁してしまい、印刷されている模様や、エンボス加工による質感が見えなくなり、化粧シートとして違和感を生じるといった問題があった。
一方、化粧硝子用の分野においては、集光意匠フィルムの裏面に硬化性樹脂からなるレンズ層を形成したものが知られているが、このフィルムは光透過性のものであって、化粧シートとは利用分野や層構成が全く異なる(特許文献1参照)。
特開平7−32799号公報
本発明の目的は、上記問題点を解決した化粧シート、すなわち、光沢が低減され、かつ、いかなる角度からも模様及び質感を認識し得る角度依存性のない化粧シートを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、化粧シートの最表面の少なくとも一部にレンズ形状を形成することで、光源からの光を拡散反射させ、光沢を低減し、かつ、いかなる角度からも模様及び質感を認識できる化粧シートが得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
本発明は、
1.基材上に、少なくとも印刷層を有する化粧シートであって、該化粧シートは最表面の少なくとも一部にレンズ状凹凸模様を形成してなり、前記レンズ状凹凸模様の各レンズ形状は、底部が互いに線で接している化粧シート、
2.基材上に、少なくとも、印刷層と、透明樹脂層とを順に有する化粧シートであって、該化粧シートの該透明樹脂層側の最表面の少なくとも一部に前記レンズ状凹凸模様を形成してなる上記1に記載の化粧シート、
3.前記透明樹脂層側の最表面にエンボス模様を有し、該エンボス模様の凹部、凸部及び斜面部分の少なくともいずれかに前記レンズ状凹凸模様を形成してなる上記2に記載の化粧シート、
4.前記透明樹脂層上に、さらに表面保護層を有し、かつ、前記レンズ状凹凸模様を、最表層である該表面保護層の表面の少なくとも一部に形成してなる上記2又は3に記載の化粧シート、
5.前記レンズ形状が最表面全体の面積の70〜97%を覆ってなる上記1〜4のいずれかに記載の化粧シート、
6.前記レンズ状凹凸模様の各レンズ形状の直径が150μm以下である上記1〜5のいずれかに記載の化粧シート、
7.前記レンズ状凹凸模様の各レンズ形状の高さが5〜100μmである上記1〜6のいずれかに記載の化粧シート、
8.前記レンズ状凹凸模様の各レンズ形状を円充填状に配列してなる上記1〜7のいずれかに記載の化粧シート、及び
9.基材上に、少なくとも印刷層を有する化粧シートの最表面の少なくとも一部に、凹部がレンズ形状である凹凸模様を有するエンボス版を用いて、凸部がレンズ形状である凹凸模様を転写することにより、各レンズ形状の底部が互いに線で接するように凹凸模様を形成する化粧シートの製造方法、
を提供する。
本発明によれば、光沢が低減され、かつ、いかなる角度からも模様及び質感を認識し得る角度依存性のない化粧シートを提供することができる。
本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。 本発明の化粧シートの断面の別の態様を示す模式図である。 本発明の化粧シートの最表面の拡大断面を示す模式図である。
1:化粧シート
2:基材
3:印刷層
3a:着色層
3b:絵柄層
4:接着層
5:透明樹脂層
6:表面保護層
7:プライマー層
8:裏面プライマー層
9:エンボス模様
10:レンズ状凹凸模様
[化粧シート1]
本発明の化粧シート1は、基材2上に、少なくとも、印刷層3と、透明樹脂層5とを順に有し、該透明樹脂層側の最表面の少なくとも一部にレンズ状凹凸模様10を形成してなることを特徴とする。
本発明の化粧シートの典型的な構造を、図1〜3を用いて説明する。図1及び2は本発明の化粧シート1の断面を示す模式図であり、図3はその拡大断面を示す模式図である。図1に示す例は、基材2上に印刷層3、接着層4及び透明樹脂層5がこの順に積層されたものであり、最表層である透明樹脂層5の表面にレンズ状凹凸模様10が形成されている。図2に示す例は、基材2上に印刷層3、接着層4、透明樹脂層5、プライマー層7及び表面保護層6がこの順に積層されたものであり、最表層である表面保護層6の表面にレンズ状凹凸模様10が形成されている。また、図1及び2においては、基材2の裏面に裏面プライマー層8が設けられている。図3は、化粧シート1の最表面を示し、エンボス模様9の内部及び外部に亘ってレンズ状凹凸模様10が形成されている。
《基材2》
基材2には、例えば、紙、不織布、熱可塑性樹脂シート又はこれらの複合材料などが使用される。
紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙などが挙げられ、不織布としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、ガラスなどの繊維からなる不織布が挙げられる。紙又は不織布の坪量は、通常20〜100g/m程度とすればよい。また、紙又は不織布は、樹脂含浸させたものでもよく、意匠性の向上を目的として、着色されたものであってもよい。
熱可塑性樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられ、なかでもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(高密度、中密度、あるいは低密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、あるいはシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、上記したような結晶質ポリオレフィン樹脂からなるハードセグメントとエチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アタクチックポリプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、水素添加スチレン−ブタジエンゴムなどのエラストマーからなるソフトセグメントを混合して得られるものが挙げられる。ハードセグメントとソフトセグメントとの混合比は、〔ソフトセグメント/ハードセグメント〕=5/95〜40/60(質量比)程度である。必要に応じて、エラストマー成分は、硫黄、過酸化水素などの公知の架橋剤によって架橋する。また、熱可塑性樹脂シートは、意匠性の向上を目的として、着色されたものを用いてもよい。
基材の層構成としては、上記したような紙、不織布、熱可塑性樹脂シートなどを単層又は2層以上に積層したものが挙げられる。これらのなかでも、熱可塑性樹脂シートが好ましく、ポリオレフィン系樹脂シートがより好ましく、特に着色又は未着色の、ポリエチレン又はポリプロピレン製シートが好ましい。
また、基材2として、上述の材料からなるシート等2種以上を接着剤、熱融着等の公知の手段により、複合、積層した基材等も用いることができる。
なお、基材2が紙等の場合に、インキや塗液の浸透性を有することがある。その場合には該浸透性がその後の印刷や塗工に支障を生じさせることがあるため、基材2上に、予め公知のシーラー層を形成しておいてもよい。また、後述するように、印刷層3としてベタ印刷を行い、シーラー層を兼用させることもできる。
基材シートの厚み(積層体の場合は合計した厚み)は、限定されないが、一般的には25〜500μm程度とすればよく、エンボス加工によりエンボス模様9を施す場合には、80〜500μmが好ましく、80〜300μmがより好ましく、80〜200μmがさらに好ましい。
《印刷層3》
印刷層3は、本発明の化粧シートに装飾性を付与するために好ましく設けられるものである。
印刷層3は、通常、着色層3a及び絵柄層3bからなり、いずれか一方又は両方の層を有していてもよい。図1及び2に示す例では、着色層3a及び絵柄層3bの両者を含むものである。
着色層3aは、隠蔽層、あるいは全面ベタ層とも称されるものであり、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。基材2の色を活かす場合や、基材2自身が適切に着色されている場合には着色層3aの形成を行う必要はない。また、上述のように着色層3aにシーラー層の機能を持たせることもできる。
着色層3aの形成に用いられるインキには、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などから選ばれる任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
この着色層3aの厚さは、通常1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
図1及び2に示される絵柄層3bは、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。絵柄層3bに用いる絵柄インキとしては、着色層3aに用いるインキと同様のものを用いることができる。
絵柄層3bが、2種類以上の異なる印刷線数を組み合わせて印刷されたものである場合、これを最表層に形成されているレンズ状凹凸模様10を通して見ることで、印刷層3の立体的表現が可能になる。具体的には、木目柄であれば、晩材部分を175線/inで印刷し、早材部分を200線/inで印刷して絵柄層3bを形成して本発明の化粧シート1を製造する。このようにすることで、早材より晩材が浮き出たうづくり感を表現することができる。
《透明樹脂層5》
透明樹脂層5は、透明性のものであれば限定されず、無色透明、着色透明、半透明などの透明性を有する樹脂からなる層である。
透明樹脂層5としては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたものを好適に使用することができる。具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどを挙げることができる。これらのなかでも、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
透明樹脂層5は、上記したように透明であれば着色されていてもよい。この場合、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、公知又は市販の顔料又は染料を適宜使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合いなどに応じて適宜設定すればよい。
さらに、透明樹脂層5には、耐候性改善剤として紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)を含有させることが好ましい。UVA及びHALSの種類としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
透明樹脂層5における紫外線吸収剤の含有量は、通常0.1〜1質量%の範囲であり、好ましくは0.3〜0.8質量%の範囲である。0.1質量%以上であると本発明の化粧シートに十分な耐候性を付与することができ、1質量%以下であると、ブリードアウトすることがない。
また、透明樹脂層5における光安定剤の含有量は、通常0.05〜0.8質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲である。0.05質量%以上であると本発明の化粧シートに十分な耐候性を付与することができ、0.8質量%以下であると、ブリードアウトすることがない。
また、透明樹脂層5には、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)などの各種の添加剤が含まれていてもよい。
難燃剤は、耐燃性を付与するために添加される。例えば、塩化パラフィン、トリクレジルホスフェート、塩素化油、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモプロピルホスフェート、トリ(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、酸化アンチモン、含水アルミナ、ホウ酸バリウム等を好適に用いることができる。
酸化防止剤は、酸化分解を抑制ないしは防止するために添加される。例えば、アルキルフェノール類、アミン類、キノン類等が好適である。
透明樹脂層5の形成方法としては、例えば予め形成されたシート又はフィルムを隣接する層に積層する方法、透明樹脂層5を形成し得る樹脂組成物を溶融押出することにより隣接する層上に塗工する方法、隣接する層と一緒にラミネートする方法などのいずれも採用することができる。本発明では、特に溶融押出により透明樹脂層5を形成することが好ましく、とりわけ、ポリオレフィン系樹脂を溶融押出によって塗工して形成することが望ましい。具体的には、印刷層3上に予め接着層4を形成し、当該接着層4上にポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを溶融押出して塗工することにより透明樹脂層5を好適に形成することができる。溶融押出の方法は、例えばTダイなどを用いる公知の方法に従って実施すればよい。
透明樹脂層5の厚みは、最終製品の用途、使用方法などにより適宜設定できるが、一般的には50〜250μm、特に20〜200μm程度とすることが好ましい。
また、透明樹脂層5の表面及び/又は裏面には、隣接する層との接着性を高めるために、必要に応じて酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
《表面保護層6》
本発明の化粧シートは、前記透明樹脂層5上に、さらに表面保護層6を有していてもよい。
表面保護層6は、印刷層3などの基材2と表面保護層6との間に設けられる層を保護するために設けられる層であり、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して得られる層である。電離放射線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線などの電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂とその他必要に応じて添加される成分とからなる組成物である。
(電離放射線硬化性樹脂)
表面保護層6に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知の化合物を適宜使用すればよい。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、代表的には分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジアクリレートのほか、エチレンオキシド変性、プロピレンオキシド変性、プロピオン酸変性、カプロラクトン変性などの変性された多官能(メタ)アクリレートなども挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
これらのなかでも、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが、接着性の観点から好ましい。より具体的には、1分子中に2個のラジカル重合性不飽和基を有する重量平均分子量1000〜4000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)30〜80質量%、及び1分子中に3個〜15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)20〜70質量%からなる混合物を電離放射線硬化性樹脂として用いることが好ましい。
この重量平均分子量1000〜4000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、ジイソシアネートと、1分子中に水酸基を2個以上有する重量平均分子量が500〜2000の多価アルコールと、末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート化合物と、が結合してなる、重量平均分子量が1000〜4000、好ましくは1000〜3000のオリゴマーである。
上記ジイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式又は芳香族のイソシアネートであり、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
重量平均分子量が500〜2000の多価アルコールとしては、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどがある。上記ポリエステルポリオールとしては、(イ)芳香族又はスピロ環骨格を有するジオール化合物と、ラクトン化合物又はその誘導体又はエポキシ化合物との付加反応生成物、(ロ)多塩基酸とアルキレングリコールとの縮合生成物、及び(ハ)環状エステル化合物から誘導される開環ポリエステル化合物があり、これらを単独又は2種以上を混合して使用することができる。上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどがある。上記(ロ)の多塩基酸としてアジピン酸を用い、アルキレングリコールと縮合生成物として得られる重量平均分子量500〜2000の、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが、各種物性が良好であることから好ましく用いられる。
末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートは、アクリル酸又はメタクリル酸もしくはこれらの誘導体のエステル化合物であって、末端に水酸基を有するものである。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレートなどの重合性不飽和基を1個有する(メタ)アクリル酸エステル化合物、あるいはその他の1分子中に重合性不飽和基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物などが例示される。
上記したウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)とともに用いられる脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)は、1分子中に3個〜15個の(メタ)アクリロイル基などのラジカル重合性不飽和基を有するものであり、脂肪族ジイソシアネート、多官能ポリオール、末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られる、多官能(3〜15官能)ウレタンアクリレートである。
上記脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、上記の水酸基とラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレートなどの重合性不飽和基を1個有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。また、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などの光増感剤を用いることもできる。
(各種添加剤)
電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる表面保護層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えばアルミナ、シリカなどの無機粒子やアクリルなどの樹脂粒子などの耐摩耗性向上剤、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂類がエステル系などの有機溶剤に溶解又は分散して得られるワックスのほか、耐候性改善剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。なお、これらの各種添加剤の電離放射線硬化性樹脂組成物における含有量は、各種添加剤の添加効果を十分に得つつ、本発明の効果を害しない範囲内であり、適宜設定するものである。
(表面保護層6の形成方法)
表面保護層6の形成方法は、好ましくは以下のように行う。電離放射線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
このようにして調製された塗工液を、透明樹脂層5やプライマー層7の表面に、硬化後の厚さが所定の範囲内になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層6の厚さは、通常1〜20μmであり、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
《接着層4》
接着層4は、印刷層3と透明樹脂層5との間などに所望により設けられる層である。
接着層4で使用する接着剤は、公知又は市販の接着剤の中から、印刷層3や透明樹脂層5を構成する成分などに応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂のほか、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、エマルションの状態で使用してもよい。なかでも、耐熱性の観点からウレタン系樹脂接着剤が好ましい。ウレタン系樹脂接着剤は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする2液硬化型ウレタン樹脂が好ましく挙げられる。
接着方法としては、用いる接着剤の種類などに応じて公知の方法に従って実施すればよい。例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を用い、溶融押出(エクストルージョンコート法)で絵柄層3b上に塗工する方法、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂にイソシアネート、アミンなどの架橋剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、アザビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの重合促進剤などを必要により添加した接着剤を塗工し、ドライラミネートする方法を採用することができる。また、本発明においては、熱圧着できる接着剤を使用し、熱圧着によって印刷層3と透明樹脂層5とを積層することもできる。
接着層4の厚さは、使用する接着剤の種類などに応じて異なるが、通常は0.1〜30μm程度とすればよい。
《プライマー層7》
基材2と印刷層3との間、並びに透明樹脂層5の表面及び/又は裏面には、プライマー層7を形成することもできる。プライマー層7を形成するための材料としては、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)などの樹脂類ほか、アルキルチタネート、エチレンイミンなどの化合物も使用することができる。なかでも、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン硝化綿や、2液硬化型のウレタン系樹脂などをバインダー樹脂とすることが好ましい。イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪酸イソシアネート(脂肪族イソシアネート)、ポリオールとしてアクリルポリオールをそれぞれ使用する場合には、より優れた耐候性、密着性などが得られるので好ましい。
プライマー層7の形成は、これらをそのままで又は溶媒に溶解、もしくは分散させた状態で用い、グラビア印刷などの公知の印刷方法、塗布方法などに従ってプライマー層7を形成することができる。
《裏面プライマー層8》
本発明の化粧シート1においては、被着体との接着性を高める目的で、上記プライマー層7と同様の裏面プライマー層8を基材2の裏面(印刷層3などが設けられるのとは反対の面)に設けることができる。
《エンボス模様9》
本発明で用いられる化粧シート1には、意匠性を高める目的でエンボス加工によるエンボス模様9を施すことが好ましい。
エンボス模様9は、化粧シート1が製造過程において何らかの手段によってエンボス可能な温度となっているときに、基材2の印刷層3を設けた側の上面からエンボス版で加熱加圧することにより形成することができる。ここで、エンボス加工は、表面保護層6を設ける前に行っても、後に行ってもよい。エンボス模様9の形成には、周知の枚葉、もしくは輪転式のエンボス機が用いられ、エンボス模様9の形状としては、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝などがある。
エンボス加工によって形成されるエンボス模様9の深さは、プライマー層8や透明樹脂層5に達していてもよいし、基材2まで達していてもよく、所望の意匠に基づき、適宜選択すればよい。エンボス模様9の深さは、化粧シートの厚みにもよるが、通常10〜300μmが好ましく、100〜200μmがより好ましい。エンボス模様9の深さが上記範囲内にあれば、優れた意匠性が得られるので好ましい。
《レンズ状凹凸模様10》
本発明の化粧シート1は、図3に示すように、透明樹脂層5側の最表面の少なくとも一部に微細なレンズ形状からなるレンズ状凹凸模様10が設けられていることを特徴とする。化粧シート1の最表面がエンボス模様9を有する場合には、エンボス模様9の各凹部、凸部及び斜面部分の少なくともいずれかにレンズ状凹凸模様10を形成することができ、好ましくは、エンボス模様9の各凹部、凸部及び斜面部分の全てに形成することができる。
ここで、透明樹脂層5側の最表面とは、例えば、図1に示すように、透明樹脂層5が最表層である場合には透明樹脂層5の表面を示し、図2に示すように、透明樹脂層5上に設けられた表面保護層6が最表層である場合には表面保護層6の表面を示す。
尚、レンズ状凹凸模様10の凹部の深さは、プライマー層7や透明樹脂層5に達していてもよい。
透明樹脂層5側の最表面の少なくとも一部に形成されるレンズ状凹凸模様10は、凸レンズ形状からなるものであっても、凹レンズ形状からなるものであっても、凸レンズ形状及び凹レンズ形状の組み合わせからなるものであってもよいが、エッチング法により製造されたエンボス版を用いてレンズ状凹凸模様10を形成する場合には、エンボス版の表面に円形の非レジスト部を設け、エッチングを行うことで、凹部がレンズ形状である凹凸模様を形成することが可能であるため、これを転写することで設けられる凸部がレンズ形状である凹凸模様を形成することが製造上の観点から好ましい。
最表層に形成されるレンズ状凹凸模様10の大きさは、各レンズ形状の直径が20〜150μmであると好ましく、30〜80μmであるとより好ましい。各レンズ形状10の直径が上記範囲内であると、成形が容易となり、また、エッチングによりエンボス版上に凹部がレンズ形状である凹凸模様を容易に形成することができる。さらに、各レンズ形状の直径が150μm以下であると、レンズ形状による効果が十分に発現し、化粧シートの光沢及び角度依存性を抑えることができる。
各レンズ形状の高さは、本発明の効果及び製造上の観点から、5〜100μmであると好ましく、10〜50μmであるとより好ましい。
レンズ状凹凸模様10は、化粧シート1の最表面全体を覆うように形成して、全体の光沢を低減するように構成されていてもよく、また、化粧シート1に設けられた印刷層3や、エンボス模様9の意匠に応じて、レンズの直径や高さに変化をつけて光沢による意匠を表現してもよい。
例えば、最表面全体を覆うようにレンズ状凹凸模様10を形成する場合には、最表面全体の面積の、好ましくは50%以上、より好ましくは70〜97%、さらに好ましくは85〜95%をレンズ形状が覆うように形成する。その際、レンズ形状同士の間隔(レンズ形状の中心から隣接するレンズ形状の中心までの距離)は、各レンズ形状の直径の80〜150%であると好ましく、90〜130%であるとより好ましく、95〜110%であるとさらに好ましい。尚、各レンズ形状は、その底部が互いに接触しないように設けられていてもよく、点で接するように設けられていてもよく、また、線で接するように設けられていてもよい。
レンズ状凹凸模様10を構成するレンズ形状の配置は特に限定されないが、互いに隣接するように配列することで、より光沢を抑制することができる。具体的には、レンズ形状を、好ましくは実質的に格子状又は円充填状に、より好ましくは円充填状に配列することで、より密にレンズ形状を形成可能となる。
最表面の少なくとも一部にレンズ状凹凸模様10を形成する方法については特に制限はないが、例えば、凹部がレンズ形状である凹凸模様を有するエンボス版を用いて、凸部がレンズ形状である凹凸模様を転写する方法が挙げられ、また、上述のエンボス模様9と共にエンボス加工により形成することもできる。
エンボス加工は、例えば、加熱ドラム上で透明樹脂層5を構成する透明樹脂を加熱軟化させた後、さらに赤外線輻射ヒーターで加熱し、所望の形のレンズ状凹凸模様を設けたエンボス版で加圧、賦形し、冷却固定して形成する。これは、上述のように、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を使用すればよい。
または、印刷層3上に透明樹脂層5を積層する工程で同時にエンボス加工を行う方法を用いてもよい。
(エンボス版)
エンボス版としては、エンボス板又はエンボスロールを用いることができる。
例えば、エンボスロールの製造方法としては、金属製ロールの表面に、公知の方法を用いて凹凸模様を形成した後、エッチングによりレンズ形状を設ける方法が好ましく用いられる。
金属製ロールとしては、鉄芯の表面の全面に金属基材を設けたものが好ましく用いられる。金属基材としては、通常エンボスロールに用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、亜鉛、銅、真鍮、アルミニウム、鉄、ステンレス、クロム等の金属が挙げられる。中でも、銅がエッチングにおける凹凸模様の形成安定性が優れるなどの理由で好ましい。
金属基材の厚さとしては、エンボス版の凹凸模様最大高低差をカバーできる厚みが必要であり、通常、1000〜1500μmの厚さが必要である。
(エンボス模様の形成方法)
金属製ロールの表面にエンボス模様を形成する方法としては、上述のように、公知の腐食法等、従来の方法を用いることができる。より具体的には、例えば、先ず、所定のエンボス模様(織物柄、木目導管模様等)のパターンをコンピュータ画面上で作成後、前記パターンの画像をエンボス版のシリンダーの円周長でエンドレスになるようエンドレスファイルを作成する。
かかるエンドレスファイルのエンボス模様データを、レジスト感光液を塗布した銅などの金属基材(エンボスシリンダー)上に、市販のレーザー刷版装置を用いて直接出力して焼き付ける。
次いで、シリンダーの現像、腐食、レジスト剥離を行うことにより、金属基材に所望のエンボス模様を付与することができる。なお、金属基材に付与するエンボス模様の表面粗さは限定されず、従来、金属基材(エンボスシリンダー)にエンボス模様を付与する場合と同じでよい。なお、金属基材として、銅基材を用いる場合には、そのモース硬度は3程度(2〜4程度)であることが好ましい。
(レンズ状凹凸模様の形成方法)
本発明の化粧シートの製造に用いられるエンボスロールの製造においては、上述のようにしてシリンダー上にエンボス模様を形成した後、さらにレンズ状凹凸模様を形成する。具体的には、シリンダー上に再度レジスト感光液を塗布し、好ましくは直径10〜180μm、より好ましくは直径15〜80μmの微細円形パターンを、レーザー刷版装置を用いて焼き付ける以外は、上述のエンボス模様の形成方法と同様にして、レンズ状凹凸模様を有するエンボス版を製造することができる。微細円形パターンの直径が上記範囲内であると、エッチングによりレンズ形状の曲面が形成しやすい。
[化粧シートの製造方法]
本発明はまた、基材上に、少なくとも、印刷層と、透明樹脂層とを順に有する積層シートの透明樹脂層側の最表面の少なくとも一部に、凹部がレンズ形状である凹凸模様を有するエンボス版を用いて、凸部がレンズ形状である凹凸模様を転写する化粧シートの製造方法をも提供する。
本発明に係る化粧シートの製造方法における凹部がレンズ形状である凹凸模様を有するエンボス版の製造方法や凸部がレンズ形状である凹凸模様の転写方法は、上述と同様である。
本発明の化粧シートは、扉、扉枠、窓枠等の建具として好適に用いられるが、その他、机、箪笥、戸棚等の家具、床、壁、階段等の建築物内装、キッチン棚板、食器棚等、キッチン回りの部材、廻縁、幅木、手摺、腰壁等の造作部材等にも用いることができる。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
製造例1(エンボスロールAの製造)
シリンダー面長1400mm、円周930mm、表面材質「炭素鋼S25C」の金属製ロールの表面に公知の腐食法により、レーザー刷版装置を用いて木目模様(最大版深200μm)のエンボス模様を付した。該エンボス模様上に、再度レジスト材料を全面に塗布し、上述と同様にして直径40μmの円形が円充填状に形成されている非レジスト部を形成し、版深20μmの腐食を行い、凹レンズ形状を形成した。その後、エンボスロール表面に、艶有り仕様の硬質クロムメッキ(硬栄鍍金工業株式会社製)を施し、厚さ30μmのクロム層を積層し、エンボスロールAを得た。
エンボスロールAの表面を、マイクロスコープ(キーエンス製)を用いて観察し、最表面全体の面積に対する、レンズ形状の底部の円が占める面積の比率を測定したところ、全面積の95%に亘って凹レンズ形状が形成されていた。
製造例2(エンボスロールBの製造)
製造例1と同様にして、金属ロールの表面にエンボス模様を付した。該エンボス模様上に投射材料として、粒径300〜355μmのホワイトアルミナ粒子(#46、株式会社不二製作所社製)を用い、40×10−2MPa(3〜5kgf/cm)の範囲に制御された圧力で、2秒/cmにて均一にブラスト処理を行った。その後、エンボスロール表面に、艶有り仕様の硬質クロムメッキを施し、厚さ30μmのクロム層を積層し、エンボスロールBを得た。
製造例3(エンボスロールCの製造)
製造例1と同様にして、金属ロールの表面にエンボス模様を付した。その後、エンボスロール表面に、艶有り仕様の硬質クロムメッキを施し、厚さ30μmのクロム層を積層し、エンボスロールCを得た。
実施例1(化粧シートの製造)
基材として、着色ポリプロピレン系樹脂フィルム(厚み80μm)を用意した。この表面及び裏面にコロナ放電処理を施した後、表面にウレタン系プライマー層を設け、さらに木目柄絵柄層をグラビア印刷により形成した。次いで、前記絵柄層の上に2液硬化型ウレタン樹脂からなる塗液を塗工して接着層(厚み3μm)を形成した。さらに、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体からなるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーをTダイで溶融押し出し塗工することによって、透明樹脂層(厚み60μm)を形成した。透明樹脂層の上に、アクリル−ウレタンブロック重合体(主剤)と、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)とからなる2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層(厚さ2μm)を形成した。
次に、電離放射線硬化性の多官能ウレタンオリゴマー35質量部/2官能ウレタンオリゴマー65質量部に対し、シリカ粒子(平均粒子径:4〜5μm,球状)5質量部及びポリエチレン系ワックス5質量部(融点110〜200℃)を含む電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにて塗膜を形成した後、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、表面保護層(厚さ5μm)を形成した。最後に、表面保護層側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱した後、表面保護層の面から熱圧により製造例1で製造したエンボスロールAを用いてエンボス加工を行い、木目導管溝模様と、凸部がレンズ形状であるレンズ状凹凸模様とを賦形することにより、所定の化粧シートを得た。
この化粧シートについて、グロスメーターを使用し、JIS K 7105に準拠して60°グロス値を測定したところ、1.3〜1.6グロスであり、良好なグロスマット効果が確認された。
比較例1(化粧シートの製造)
実施例1において、エンボスロールAに代えてエンボスロールBを用いた以外は同様にして化粧シートBを得た。この化粧シートBについて、60°グロス値を測定したところ、5.0〜5.5グロスであった。
比較例2(化粧シートの製造)
実施例1において、エンボスロールAに代えてエンボスロールCを用いた以外は同様にして化粧シートBを得た。この化粧シートCについて、60°グロス値を測定したところ、9.0〜11.0グロスであった。
本発明によれば、光沢性の低い化粧シートを提供することができる。本発明の化粧シートは、家具、建具等の建材の表面装飾材料として有効であり、特に鋼板に貼付し、屋外で使用される玄関ドア等の外装材に有効である。

Claims (9)

  1. 基材上に、少なくとも印刷層を有する化粧シートであって、該化粧シートは最表面の少なくとも一部にレンズ状凹凸模様を形成してなり、前記レンズ状凹凸模様の各レンズ形状は、底部が互いに線で接している化粧シート。
  2. 基材上に、少なくとも、印刷層と、透明樹脂層とを順に有する化粧シートであって、該化粧シートの該透明樹脂層側の最表面の少なくとも一部に前記レンズ状凹凸模様を形成してなる請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記透明樹脂層側の最表面にエンボス模様を有し、該エンボス模様の凹部、凸部及び斜面部分の少なくともいずれかに前記レンズ状凹凸模様を形成してなる請求項2に記載の化粧シート。
  4. 基材上に、少なくとも、印刷層と、透明樹脂層とを順に有し、該透明樹脂層上に、さらに表面保護層を有する化粧シートであって、該化粧シートの該表面保護層側の最表面の少なくとも一部に前記レンズ状凹凸模様を形成してなる請求項に記載の化粧シート。
  5. 前記レンズ形状が最表面全体の面積の70〜97%を覆ってなる請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
  6. 前記レンズ状凹凸模様の各レンズ形状の直径が150μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
  7. 前記レンズ状凹凸模様の各レンズ形状の高さが5〜100μmである請求項1〜6のいずれかに記載の化粧シート。
  8. 前記レンズ状凹凸模様の各レンズ形状を円充填状に配列してなる請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シート。
  9. 基材上に、少なくとも印刷層を有する化粧シートの最表面の少なくとも一部に、凹部がレンズ形状である凹凸模様を有するエンボス版を用いて、凸部がレンズ形状である凹凸模様を転写することにより、各レンズ形状の底部が互いに線で接するように凹凸模様を形成する化粧シートの製造方法。
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