以下では、図2に示す構成の負荷制御システムを想定して説明する。この負荷制御システムは、事務所ビルあるいは商業ビルで用いることを想定しているが、病院、ホテル、集合住宅などの建物において使用することを妨げるものではない。すなわち、多数個の負荷機器の動作を集中して管理する負荷制御システムであればよく、以下に説明する技術の適用範囲は実施形態の構成および用途に限定されない。
負荷制御システムは、図2に示すように、伝送制御装置としての制御ユニット10を用いて構築される下位ネットワークと、コントローラ41と管理サーバ42と管理端末50とが含まれる上位ネットワークとを備える。負荷制御システムは、上位ネットワークと下位ネットワークとを備える階層化されたネットワークを構築している。
制御ユニット10とコントローラ41とは通信線L4を介して互いに通信する。上位ネットワークと下位ネットワークとは、制御ユニット10とコントローラ41とを通して相互に情報の伝送を行う。1台のコントローラ41が通信可能である制御ユニット10の台数には制限があり、1台のコントローラ41は、たとえば最大で8台の制御ユニット10との通信が可能になっている。
まず、下位ネットワークの構成の概要を説明する。図示例では、負荷機器21が照明器具である場合を想定しているが、管理対象である負荷機器21が多数存在していれば、以下に説明する技術の要部を適用可能である。たとえば、負荷機器21は空調装置や換気扇でもよい。ただし、以下の説明は、負荷機器21が照明器具である場合について説明しているので、照明器具に符号「21」を付して説明する。
照明器具21の点灯状態は、所定の事象を検出する監視装置30での監視情報の変化を契機として変化する。照明器具21の点灯状態は、点灯および消灯のみであってもよいが、調光可能な照明器具21であれば調光レベルを含み、調色可能な照明器具21であれば発光色を含む。
監視装置30は、人の操作を検出する壁スイッチ31、照明器具21が照明する空間における人の存否を検出する人感センサ32、照明器具21が照明する空間の明るさを検出する明るさセンサ33を想定する。これらの監視装置30は、通信線L1を介して制御ユニット10と接続され、監視装置30が検出した監視情報を制御ユニット10に伝送するために通信機能を備えている。
つまり、壁スイッチ31、人感センサ32、明るさセンサ33は、所定の事象を検出するためのスイッチないしセンサと、検出した事象の内容を制御ユニット10に通知する通信機能を備える。壁スイッチ31は人による操作の有無という事象を検出し、人感センサ32は人の存否という事象を検出し、明るさセンサ33は照度が設定範囲か否かという事象を検出する。これらの事象は、いずれも制御対象である照明器具21の点灯状態を変化させるための契機となる事象である。
監視装置30は、照明器具21の点灯状態を変化させるための契機となる事象を検出する構成であれば、上述した例以外の構成であってもよい。たとえば、煙センサや炎センサのように防災用のセンサ、個人を認証する認証装置、カメラを用いて人の存在位置や人数を計測するセンサなども、監視装置30として用いることが可能である。
照明器具21は、通信線L3を介して伝送アダプタ20に接続され、伝送アダプタ20は、通信線L2を介して制御ユニット10に接続されている。伝送アダプタ20は、照明器具21との間でDALI(Digital Addressable Lighting Interface)規格に準拠する通信を行う。ただし、負荷機器21が照明器具ではない場合、伝送アダプタ20が省略されるか、伝送アダプタ20と負荷との間の通信に他の規格が用いられる。1台の伝送アダプタ20は複数系統(ここでは、最大4系統)の通信線L3が接続可能であり、通信線L3の系統ごとに点灯状態を個別に制御可能な照明器具21が複数台(ここでは、最大16台)ずつ接続可能になっている。ここに、個別に制御可能な照明器具21の台数は、個別に制御可能な照明器具21の回路数を意味する。したがって、1回路に複数台の照明器具21が含まれている場合でも1台の照明器具21という。
照明器具21の点灯状態は、伝送アダプタ20を通して制御ユニット10から指示を受けることにより制御される。制御ユニット10は、伝送アダプタ20を中継に用いて、制御対象の照明器具21を特定する識別情報と、制御対象の照明器具21に指示する点灯状態とを含む情報を伝送することにより、制御対象の照明器具21の点灯状態を指示する。
通信線L1における通信は、時分割多重伝送によるポーリング方式を基本にし、監視装置30が所定の事象を検出したときに監視装置30から制御ユニット10に割込信号を送信する構成を採用している。つまり、制御ユニット10は、常時は、個々の監視装置30に循環的にアクセスして監視装置30からの要求を順番に処理するが、いずれかの監視装置30から割込信号を受信すると、当該監視装置30が検出した事象に対する応答を割込処理で優先的に行う。このような処理は、割込ポーリング方式と呼ばれ、単純なポーリング方式と比べて事象の検出に対する応答性が高くなる。
制御ユニット10と監視装置30との間の通信線L1は2線式であり、通信線L1を伝送される信号は、極性が交番するベースバンド信号を用いる。監視装置30は、通信線L1を伝送される信号を整流することにより、動作のための電力を得る。また、通信線L1を伝送される信号の1フレームは、各監視装置30を特定するアドレスデータおよび制御データを含む送信帯、監視装置30からの要求を返送する返信帯、フレームの開始位置を示すスタートパルスなどを含む。送信帯に伝送されるアドレスデータ、制御データ、スタートパルスは、通信線L1の線間電圧を変化させる電圧信号が用いられ、返信帯に伝送される信号は、通信線L1の線間のインピーダンスを変化させて電流変化により伝送される電流信号が用いられる。制御データは、照明器具21のオンオフ、調光レベルを含む。
制御ユニット10と伝送アダプタ20との間の信号伝送に用いる通信線L2は、通信専用であってもよいが、ここでは照明器具21に電力を供給する電力線を通信用に兼用している。通信線L2は、配電線を通信線としても用い、電力線搬送通信の技術を用いて制御ユニット10と伝送アダプタ20との間の通信を行っている。なお、上述した構成からわかるように、図2に示す負荷制御システムにおいて、制御ユニット10は、個々の照明器具21の動作を決める制御データを伝送する。
上位ネットワークを構築するコントローラ41と管理サーバ42と管理端末50とは通信線L5を介して情報を伝送する。コントローラ41に接続された通信線L4と通信線L5とは、汎用の規格が用いられる。ここでは、通信線L4および通信線L5を用いる通信の規格は、可変長のパケットを全二重で伝送可能とし、伝送速度が100Mbps程度であるEthernet(登録商標)を想定している。
コントローラ41は、制御ユニット10と通信することにより、監視装置30が検出した事象に対応した照明器具21の点灯状態の指示内容を取得する機能を有する。また、コントローラ41は、照明器具21の点灯状態の指示内容を集約した後、制御ユニット10に振り分けて通知する機能も有している。コントローラ41の機能は後述する。
管理サーバ42は、サーバコンピュータであって、照明器具21の点灯状態をタイムスケジュールに従って変化させるスケジュール制御を行い、アナンシエータとして照明器具21の動作状態を監視し故障やランプの球切れのような保全監視を行う。また、管理サーバ42は、後述する管理端末50と組み合わせることによって、負荷機器21を手動で制御する機能も備える。
照明器具21のスケジュール制御を行う場合、制御の対象とする照明器具21、制御の対象である照明器具21の点灯状態、当該制御の開始日時および終了日時の組が、タイムスケジュールとして管理サーバ42に登録される。管理サーバ42は、現在日時を計時する内蔵時計(リアルタイムクロック)を備える。管理サーバ42は、タイムスケジュールとして登録された開始時刻が内蔵時計で計時されている現在日時に一致すると登録された制御を開始し、タイムスケジュールとして登録された終了時刻が現在日時に一致すると制御を終了する。
管理端末50は、個々の照明器具21の点灯状態、故障や球切れのような保全監視の情報を表示するモニタ装置51と、モニタ装置51に表示する内容を選択するための操作部52とを備えている。ここでは、管理端末50が適宜のプログラムを実行する汎用のコンピュータで実現されている場合を想定しているが、管理端末50は、いわゆるタブレット端末で実現されていてもよい。管理端末50は、モニタ装置51に表示する内容を管理サーバ42から取得し、管理サーバ42を通して操作部52の操作内容を照明器具21の点灯状態に反映させる。そのため、管理端末50は、管理サーバ42から提供されるサービスを閲覧するブラウザ機能を有する。
ところで、照明器具21の制御種別には、照明器具21ごとに1台ずつ点灯状態を指定する「個別制御」と、複数台の照明器具21の点灯状態をまとめて指定する「グループ制御」および「パターン制御」とがある。グループ制御は、まとめて制御される複数台の照明器具21について同じ点灯状態を指定する制御であり、パターン制御は、一斉に制御される複数台の照明器具21について個々に点灯状態を指定する制御である。すなわち、グループ制御を行う場合は、1種類の点灯状態と当該点灯状態とする複数台の照明器具21とが指定される。
管理サーバ42が管理するタイムスケジュールにおいて、制御の対象とする照明器具21が、グループ制御あるいはパターン制御である場合には、一斉に制御される複数台の照明器具21の集合に対して付与された名称が用いられる。ここでは、グループ制御の対象になる複数台の照明器具21を指定する名称を「グループ名」と呼び、パターン制御の対象になる複数台の照明器具21を指定する名称を「パターン名」と呼ぶ。グループ名で指定される複数台の照明器具21は、別途に点灯状態を指定してタイムスケジュールを登録する必要がある。一方、パターン名で指定される複数台の照明器具21は、点灯状態がすでに指定されているから、タイムスケジュールにはパターン名のみを登録すればよい。
上述したコントローラ41と管理サーバ42との機能は、物理的には1台のコンピュータで構成されていてもよい。したがって、図1に示す構成例では、コントローラ41と管理サーバ42とを一体化した上位装置40を構成し、コントローラ41として機能する第1処理部43と、管理サーバ42として機能する第2処理部44とを上位装置40に設けている。
本実施形態は、上位ネットワークと下位ネットワークとを備えているから、グループ制御およびパターン制御の対象である複数台の照明器具21を、1つの下位ネットワークの範囲内で指定する場合と、複数の下位ネットワークに跨る範囲で指定する場合とがある。
前者の場合、グループ名やパターン名に対応付けられる照明器具21は、1台の制御ユニット10の管理下であるから、グループ名やパターン名と一群の照明器具21との対応付けは、制御ユニット10が行う。後者の場合、グループ名やパターン名に対応付けられる照明器具21が複数台の制御ユニット10で管理されるから、グループ名やパターン名と一群の照明器具21との対応付けは、コントローラ41(つまり、第1処理部43)が行う。
ここで、コントローラ41は複数の制御ユニット10が管理する照明器具21に跨る範囲でグループ制御やパターン制御が可能であるから、管理サーバ42(つまり、第2処理部44)は、1個以上のグループ名の集合や1個以上のパターン名の集合を扱うことが可能である。以下では、グループ名の集合の名称を「コントローラグループ名」と呼び、パターン名の集合の名称を「コントローラパターン名」と呼ぶ。
いま、コントローラグループ名をCGrj、コントローラパターン名をCPtk、グループ名をGrm、パターン名をPtnで表す。ただし、j,k,m,nは自然数である。この符号を用いると、たとえば、CGr1=(Gr1,Gr2,Gr4)、CGr2=(Gr4,Gr5,Gr6)のように、1個以上のグループ名で表される照明器具21の集合を、1つのコントローラグループ名CGrjで表すことが可能になる。また、たとえば、CPt1=(Pt1,Pt3)、CPt3=(Pt2,Pt4,Pt5)のように、1個以上のパターン名で表される照明器具21の集合を、1つのコントローラパターン名CPtkで表すことが可能になる。
コントローラグループ名とグループ名との対応関係、およびコントローラパターン名とパターン名との対応関係は、コントローラ41に登録される。コントローラ41は、コントローラグループ名をグループ名の集合に展開し、コントローラパターン名をパターン名の集合に展開する。ここに、個別の照明器具21とグループ名やパターン名は、制御ユニット10において対応付けられている。
一方、照明器具21の点灯状態は、管理サーバ42が管理するタイムスケジュールだけではなく、上述のように、監視装置30が検出した監視情報によっても変化する。下位ネットワークの範囲内での照明器具21に対する点灯状態の指示は、実際には、制御ユニット10が行うから、制御ユニット10は個々の照明器具21に対して点灯状態を指示しなければならない。一方、複数台の制御ユニット10に跨る制御を行う場合、個々の制御ユニット10だけでは、他の制御ユニット10と連携して照明器具21を制御することはできない。
コントローラ41は、複数の制御ユニット10に管理されている照明器具21をまとめて取り扱うことと、個々の制御ユニット10が管理下の照明器具21に指示を与えることとを両立させる機能を有している。コントローラ41は、管理サーバ42がタイムスケジュールに従って送出した制御対象の情報を取得する機能と、監視装置30が検出した監視情報に対応する制御対象の情報を取得する機能とを備える。
管理サーバ42は、上述したように、タイムスケジュールにおける制御の対象を、グループ名やパターン名、あるいはコントローラグループ名として登録している。したがって、コントローラ41は、それぞれの制御ユニット10に通知すべきグループ名やパターン名を取得する。
上述したように、コントローラ41は、制御ユニット10と管理サーバ42とから取得した情報を用いることにより、すべての制御ユニット10に対して、制御の対象となる照明器具21を含んでいるか否かを知ることができる。そのため、コントローラ41は、制御ユニット10と管理サーバ42とから取得した制御の対象の情報を用いて、制御ユニット10ごとに制御の対象を仕分ける機能を有する。コントローラ41は、制御ユニット10ごとに仕分けた制御の対象を、それぞれの制御ユニット10に送信する。このように、複数の装置から取得した情報を仕分け、送り先である制御ユニット10ごとにまとめて送る処理を、以下では「まとめ送り処理」という。
「まとめ送り処理」の対象となる情報は、実質的に同時とみなされる程度の比較的短い時間である受付時間内にコントローラ41が取得する情報である。たとえば、タイムスケジュールによる照明器具21の制御情報と、監視装置30による照明器具21の制御情報とが受付時間内に入力され、かつ送り先が同じ制御ユニット10である制御情報が含まれている場合、まとめ送り処理がなされる。
ここで、コントローラ41が受け取った制御情報にコントローラグループ名が含まれている場合、コントローラ41は、コントローラグループ名を個々の制御ユニット10に対応付けられたグループ名に展開する。また、コントローラ41が受け取った制御情報にコントローラパターン名が含まれている場合、コントローラ41は、コントローラパターン名を個々の制御ユニット10に対応付けられたパターン名に展開する。コントローラグループ名やコントローラパターン名を展開した後には、コントローラ41が扱う制御情報は、個別制御、グループ制御、パターン制御のいずれかになるから、コントローラ41は、制御情報を送り先の制御ユニット10ごとにまとめ、制御ユニット10ごとに制御情報をまとめて送信する。コントローラ41から制御ユニット10へは、コントローラ41が制御情報を受け取った時間順で制御情報がシリアル伝送により伝送される。
コントローラ41から1個のパケットで制御ユニット10に伝送されるペイロードの容量には制限があるから、まとめ送り処理によって伝送される情報の情報量が多い場合は、複数のパケットに分割して伝送される。この場合、制御ユニット10は、まとめ送り処理によって複数回に分割されて受け取った情報を、一連のまとまった情報として扱うことが必要になる。
以下では、図2に示した構成の一部を簡略化した図1の構成を用いて説明する。図1(a)に示す構成は、図2に示した構成についてコントローラ41と管理サーバ42との機能をまとめて上位装置40として記載している。コントローラ41の機能は第1処理部43で実現され、管理サーバ42におけるタイムスケジュールの管理のようなトランザクションの管理は第2処理部44で実現される。制御ユニット10、第1処理部43、第2処理部44は、いずれもマイコンのようにプログラムに従って動作するデバイスをハードウェア要素として備える。ここでは、制御ユニット10、第1処理部43、第2処理部44をそれぞれ構成する主要なハードウェア要素としてRISCプロセッサを想定している。上位装置40には、実際は、複数台の制御ユニット10が接続されるが、図1(a)では制御ユニット10を1台だけ記載している。
上位装置40は、上述したように、制御ユニット10に伝送する情報を制御ユニット10ごとにまとめて送信する「まとめ送り処理」を行う。すなわち、第1処理部43は、コントローラグループ名をグループ名に展開し、コントローラパターン名をパターン名に展開した後、送信先の制御ユニット10ごとにグループ名およびパターン名を仕分け、送信先の制御ユニット10にそれぞれ送信する。
制御ユニット10は、コントローラグループ名をグループ名に展開し、コントローラパターン名をパターン名に展開するために、たとえば、図3に示すようなメンバーリスト12を備える。図示するメンバーリスト12において、各行は、コントローラグループ名(CGr1,CGr2,…,CGr2048)を表し、各列は、制御ユニット10と各制御ユニット10が管理するグループ名との組合せを表している。たとえば、「1−2」は、1番の制御ユニット10のグループ名Gr2を表し、「8−256」は8番の制御ユニット10のグループ名Gr256を表している。
また、メンバーリスト12において、行と列とが交差する区画(マス目)に記入された数値が「0」である場合はメンバー外を意味し、数値が「1」である場合はメンバーを意味する。図示例であれば、グローバルグループ名CGr2は、「1−2」「1−256」はメンバーであるが、「1−1」「8−1」はメンバー外になる。
このようなメンバーリスト12を用いることによって、コントローラグループ名の制御対象としてのグループ名がビット列で表されることになる。また、コントローラグループ名に対応したビット列から、制御ユニット10に応じた位置のビット列を切り出すことによって、制御ユニット10ごとに伝送するビット列を抽出することができる。このような構成のメンバーリスト12を用いることによって、コントローラグループ名を制御ユニット10ごとのグループ名に簡単に展開することができる。コントローラパターン名についても、同様のメンバーリスト12を構成しておけば、制御ユニット10ごとのパターン名に容易に展開することができる。
上位装置40は、上述したまとめ送り処理を行って、制御ユニット10ごとに制御要求をまとめて伝送する。すなわち、上位装置40は、制御ユニット10に伝送する制御要求が発生するとすぐに制御ユニット10に伝送するのではなく、所定の受付時間内に第1処理部43に入力された制御要求を、制御ユニット10ごとに仕分けたバッファに一時的に保存する。したがって、1台の制御ユニット10に伝送する制御要求が受付時間内に複数発生した場合でも、バッファに保存された複数個の制御要求を、図4に示すように、パケットとしてまとめて制御ユニット10に伝送することが可能になる。
図4に示すパケットは、待ち行列として保持された複数の制御要求(制御A、制御B、…制御E)を直列に連結し、送信元(上位装置40)のアドレスSAと送信先(制御ユニット10)のアドレスDAとを含むヘッダを先頭に付加してある。コントローラグループ名を展開した場合のグループ名を制御ユニット10に伝送する場合、制御要求は、制御対象としてのグループ名を表すビット列と、当該グループ名で表される照明器具21の集合に指示する点灯状態とで表される。
言い換えると、制御要求は、制御対象を指定する「対象指定情報」と、制御対象に指示する「制御情報」との組合せになる。そのため、図4に示したパケットは、より具体的には、図1(b)の形式になる。図1(b)における「ヘッダ」は図4のアドレスSA,DAに相当し、「制御情報」と「対象指定情報」との組合せは図4の「制御A」などに相当する。なお、図1(b)に示すパケットの末尾には、エラー検出用のチェックビット「CRC」を付加している。
いま、コントローラグループCGr1,CGr3について点灯状態として「オン」が指示され、コントローラグループCGr2について点灯状態として「オフ」が指示されたとする。この場合、第1処理部43は、まずメンバーリスト12からCGr1,CGr2,CGr3にそれぞれ対応するビット列を抽出し、制御ユニット10ごとのビット列に切り分ける。次に、第1処理部43は、切り分けたビット列を対象指定情報とし、それぞれのビット列に「オン」または「オフ」の制御情報を結合し、送信元の上位装置40のアドレスと送信先の制御ユニット10のアドレスとをヘッダとしたパケットを生成する。生成されたパケットは、それぞれの制御ユニット10に伝送され、制御ユニット10においてグループ名がさらに展開されて照明器具21の制御に用いられる。
上述のように、上位装置40が、複数の制御要求を可変長のパケットにまとめてから制御ユニット10に伝送するから、制御要求ごとに個別のパケットで伝送する場合と比べて、通信線L4におけるトラフィックの総量を低減させることが可能になる。しかも、上位装置40は、照明器具21を個別に指定した情報を制御ユニット10に伝送するのではなく、グループ名あるいはパターン名を制御ユニット10に伝送するから、個々の照明器具21ごとの情報を伝送するよりもペイロードの容量を低減できる。
制御ユニット10は、上位装置40から受け取ったパケットを照明器具21ごとの制御内容に展開して再構成し、通信線L2を通して伝送アダプタ20に伝送するための解析処理部11を備える。解析処理部11は、上位装置40から受け取った制御データを一時的に保存する受信バッファを備え、受信バッファに格納された制御要求を用いて伝送アダプタ20に送信するデータを再構成する機能を有する。
制御ユニット10は、監視装置30の識別情報に制御対象となる照明器具21の識別情報を対応付けた関係テーブル(図示せず)を備えている。関係テーブルにおける監視装置30の識別情報は、制御種別が、個別制御、グループ制御、パターン制御のいずれであるかに応じて異なる。グループ制御の場合はグループ名が用いられ、パターン制御の場合はパターン名が用いられる。グループ名やパターン名が識別情報に用いられる場合、制御対象となる照明器具21の識別情報は複数個になる。個別制御の場合は、監視装置30の識別情報と照明器具21の識別情報とは一対一に対応付けられる。
解析処理部11は、上位装置40から受け取ったグループ名あるいはパターン名を関係テーブルに照合することによって、個々の照明器具21ごとに指示する制御内容に展開する。また、監視装置30における監視状態の変化が検出されている場合も照明器具21に対する制御内容が発生する。これらの制御内容は、個々の照明器具21ごとに指示するオンオフや調光レベルの内容である。ただし、上位装置40から複数のグループ名や複数のパターン名を受け取った場合、あるいは上位装置40からの制御要求に加えて監視装置30の監視状態の変化が検出された場合には、1台の照明器具21に対する制御内容が競合する場合がある。
そのため、解析処理部11は、照明器具21ごとに制御内容を一対一に対応付けるように制御要求を整理する「重ね合わせ処理」を行う。具体的には、照明器具21に一対一に対応付けたスロットを備える状態バッファを解析処理部11に設けておき、解析処理部11が展開した制御内容に応じて状態バッファの各スロットの内容を更新する。言い換えると、状態バッファは、照明器具21の識別情報ごとに制御内容を書き込むスロットを備え、それぞれのスロットの制御内容は上書きされる。このような処理を行って、最終的に状態バッファの各スロットに残った制御内容を照明器具21に指示すれば、照明器具21ごとに制御内容を一対一に対応付けることができる。
ところで、上位装置40から制御ユニット10に伝送されるパケットは、上述したように、「制御情報」と「対象指定情報」とを含んでいる。解析処理部11は、上位装置40から受け取ったパケットの「制御情報」ごとに「対象指定情報」に含まれるグループ名あるいはパターン名を制御対象である個別の照明器具21の識別内容に展開する。グループ名の場合は「制御情報」が制御内容になり、パターン名の場合は展開することにより制御内容が定まる。
以下、解析処理部11の処理を具体例を挙げて説明する。まず、上位装置40から受け取るパケットに含まれる制御情報が「ON」または「OFF」である場合について説明する。「ON」は照明器具21を点灯させることを意味し、「OFF」は照明器具21を消灯させることを意味する。上位装置40から受け取ったパケットに含まれる内容を状態バッファに反映させる際に、状態バッファには、照明器具21のそれまでの制御内容が設定されているから、解析処理部11は、前の制御内容を新たな制御内容によって更新する。
解析処理部11は、状態バッファに書き込まれた制御内容を更新する際に、パケットの制御情報が「ON」である場合、状態バッファの前の制御内容とパケットを展開した内容との論理和を演算し、演算した結果を状態バッファに書き込む。また、解析処理部11は、パケットの制御情報が「OFF」である場合、状態バッファの前の制御内容とパケットを展開した内容の否定との論理積を演算し、その結果を状態バッファに書き込む。パケットを展開した内容については後述する。
いま、状態バッファの制御内容が図6(a)に示す状態である場合を考える。図6(a)において、それぞれのマス目は個々の照明器具21に対応したスロットを表し、マス目に「1」が書き込まれているときには点灯、マス目に「0」が書き込まれているときには消灯を表す。
ここで、上位装置40から受け取ったパケットの内容を制御情報ごとに展開することにより、図6(b)に示す内容が得られたとする。すなわち、パケットを展開した内容は図6(b)のような形式で表される。図6(b)では左端のマス目に記入した「ON」が制御情報を表し、残りのマス目は状態バッファにおける各スロットの位置に対応した制御の可否を表す。制御の可否は、マス目に「1」が書き込まれているときには制御を行うこと(アクティブ)を表し、「0」が書き込まれているときには制御を行わないこと(非アクティブ)を表す。つまり、制御情報が「ON」であれば、「1」は「ON」を表し、「0」は「OFF」を表す。逆に、制御情報が「OFF」であれば、「1」は「OFF」を表し、「0」は「ON」を表す。
したがって、解析処理部11は、状態バッファが図6(a)の状態であるときに、図6(b)に示す内容を新たに受け取ると、図6(a)の各マス目と図6(b)の各マス目とのビット値の論理和を求め、状態バッファの内容を図6(c)のようにする。要するに、すでに点灯している照明器具21は点灯状態を維持し、消灯していて新たに制御の対象になった照明器具21のみを点灯させる。
一方、上位装置40から受け取った制御情報が「OFF」であるときには、点灯していて新たに制御の対象になった照明器具21のみを消灯させる。つまり、状態バッファでは、ビット値が「1」である場合に照明器具21がオンであることを示しているから、制御情報が「OFF」である場合、ビット値が「0」である照明器具21の動作を維持しなければならない。
そこで、解析処理部11は、状態バッファが図7(a)に示す状態(図6(a)と同状態)であるときに、図7(b)に示す内容を新たに受け取ると、図7(a)の各マス目と図7(b)の各マス目の否定とのビット値の論理積を求める。論理積の結果は、状態バッファに書き込まれれ、結果的に、状態バッファの内容は図7(c)のようになる。要するに、図7(b)の制御情報が「OFF」であるから、図7(b)の各ビット値を反転させ、図7(a)の各ビット値との論理積が、状態バッファの新たな内容として書き込まれる。
上述した例では、制御情報として「ON」と「OFF」との場合について説明したが、制御情報は調光率であってもよい。上位装置40から受け取るパケットに含まれる制御情報が調光率である場合、制御情報で調光率が指定され、対象指定情報で制御対象となる照明器具21が指定される。たとえば、調光率を30%とする場合、制御情報が「30」になり、対象指定情報を展開した制御の可否は、オンやオフの場合と同様にアクティブと非アクティブとを表すビット列になる。ここに、調光率の値もビット列で表される。
解析処理部11は、制御の可否が「1」であれば制御情報で指定した調光率を用い、制御の可否が「0」であれば状態バッファの該当するスロットに書き込まれている調光率をそのまま用いる。要するに、解析処理部11は、制御の可否が「0」である照明器具21は状態バッファの調光率を維持し、制御の可否が「1」である照明器具21については制御情報で指示された調光率を適用する。言い換えると、解析処理部11は、状態バッファに存在する調光率のビット列と制御の可否のビット値を反転させた値との論理積と、制御情報で指示された調光率のビット列と制御の可否のビット値との論理積との論理和で、状態バッファの内容を更新する。
たとえば、状態バッファが図8(a)に示す状態であるときに、一部の照明器具21の調光率を30%に変化させようとする場合、図8(b)に示すように、調光率を変化させる照明器具21に対応したマス目のビット値を「1」にする。解析処理部11は、状態バッファが図8(a)の状態であるときに、図8(b)の内容が指示されると、図8(b)においてビット値が「1」である照明器具21のみの調光率を30%にし、ビット値が「0」の照明器具21の調光率は変化させずに維持する。つまり、状態バッファの各スロットは、図8(c)のようになる。
制御情報がパターン名であるときにも、制御情報が調光率である場合と同様に扱うことが可能である。図9に示す例において、「Ptn」(n=1,2,…)は、それぞれパターン名を示している。調光率と同様に、パターン名はビット列で表される。
パターン名は、状態バッファではなく、上位装置40からのパケットを受信する受信バッファに格納される。受信バッファには、パターン名が上位装置40から受信した順に格納される。ここで、前に受信したパターン名のうちの一部のパターン名を変更する場合、上位装置40は、変更しようとするパターン名の位置(順番)を対象指定情報とし、変更しようとするパターン名を制御情報とするパケットを送信する。
一方、制御ユニット10の解析処理部11は、受信バッファに格納されている1ないし複数個のパターン名を、上位装置40から受け取ったパケットで指示されたパケット名に変更する。ここでの解析処理部11の処理は、調光率を変更する場合の処理と同様であって、制御の可否が「1」であれば制御情報で指定したパターン名を用い、制御の可否が「0」であれば受信バッファの該当する位置に書き込まれているパターン名をそのまま用いる。すなわち、解析処理部11は、制御の可否が「0」であるパターン名は受信バッファのパターン名を維持し、制御の可否が「1」であるパターン名は制御情報で指示されたパターン名に置き換える。言い換えると、解析処理部11は、受信バッファに存在するパターン名のビット列と制御の可否のビット値を反転させた値との論理積と、制御情報で指示されたパターン名のビット列と制御の可否のビット値との論理積との論理和で、受信バッファの内容を更新する。
たとえば、受信バッファが図9(a)の状態であって、一部のパターン名を変更するときには、図9(b)に示すように、変更後のパターン名と変更する位置とを指定する変更の可否の情報とを用いる。図9(b)において、「1」は制御情報として指定したパターン名に置換することを意味し、「0」は制御情報として用いないことを意味する。したがって、図9(a)の状態に、図9(b)を適用すると、図9(a)における左から3番目のパターン名Pt3と、右端のパターン名Pt5とが、図9(b)の左端に示した制御情報であるパターン名Pt1に置換される。その結果、図9(c)のように、パターン名が変更されることになる。
上述したように、状態バッファを更新するための演算処理は、状態バッファの既存のビット値と上位装置40から受け取った対象指定情報のビット値とを、制御情報の内容に応じた演算式で行うビット列の論理演算(論理積、論理和、否定の組合せ)である。したがって、解析処理部11にRISCプロセッサを用いる場合、この演算処理を、1クロックサイクルで行うことが可能である。そのため、処理負荷が小さくなり処理の高速化が可能である。
なお、照明器具21の点灯状態を指示するデータを制御ユニット10から伝送アダプタ20に送信する際に、通信線L2の通信速度(帯域)は、たとえば、図5のように変化する。図示例では、データ量が比較的少ない領域ではデータ量が増大すると通信速度も増大するが、データ量が100バイトを超える程度になると、通信速度の上昇率が低減してほぼ横這いになる。このことから、制御ユニット10から伝送アダプタ20に伝送するデータ量は100バイト程度を越えないことが望ましい。
したがって、制御ユニット10と伝送アダプタ20との間でも、上位装置40から制御ユニット10へのデータの受け渡しと同様に、制御情報と対象指定情報とを組み合わせてデータを伝送すればよい。つまり、個々の照明器具21の識別情報を伝送アダプタ20に送信せずに、照明器具21の点灯状態を指示する制御情報と、制御の対象する照明器具21をビット列におけるビット位置で表した対象指定情報とを組み合わせて伝送アダプタ20に送信する。伝送アダプタ20は、制御ユニット10から受信したデータに含まれる対象指定情報のビット位置によって照明器具21を特定し、該当する照明器具21に対して制御情報で指定された制御内容を指示するのである。
上述の動作により、制御ユニット10から伝送アダプタ20に送信する信号自身のデータ量が低減され、結果的に、照明器具21ごとに制御内容を対応付けた信号を伝送する場合に比較するとデータ量が低減される。言い換えると、情報量を減らすことなくデータ量を減らすことによって、通信線L2のトラフィックの低減が可能になる。また、通信線L2のトラフィックが低減されることにより、通信線L2は、たとえば、30kbps程度の狭い帯域で実現可能になる。