JP5903250B2 - 徐放性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、医薬品、化粧品、農薬などの活性成分をほぼ一定濃度で放出する徐放性組成物に関する。
経口投与される錠剤などの固形製剤の徐放化は、薬物の少なくとも一部を水に不溶な高分子物質でコーティングして製剤化し、製剤からの薬物の放出を遅らせることを原理としている。このため錠剤はコーティングした薬物を含んだ造粒物に滑沢剤を混合し、圧縮成形して製造される。
これに対し、直接打錠法によって徐放性錠剤を製造する方法が特表平8−504214号に開示されている。この方法は、コンニャクグルコマンナン単独またはコンニャクグルコマンナンとキサンタンガムの混合物を賦形剤として使用し、これに薬物を添加し、粉体のまま直接打錠により錠剤に圧縮成形する方法である。
使用するグルコマンナンは、透明化グルコマンナン、極低温粉砕グルコマンナンおよび可塑化グルコマンナンである。
脱イオン水(pH=7)中での溶出試験の結果を見ると、溶解液中の薬物の累積溶出率が6時間後最低14%から最高74%である。殆んどの薬物は小腸から吸収されるので、通常約6時間といわれる食物の小腸通過時間内に放出の終らない薬物は消化管を通過して体外へ排出され、利用されない。
特表平8−504214号公報
上記先行技術の欠点である、小腸通過時間内に薬物のかなりの部分が製剤から放出されない原因は、使用したグルコマンナンの水に対する膨潤(溶解)速度にあると考えられる。そこで本出願人によって開発された方法によって製造された、これまでに最も速い水に対する膨潤速度を示す速溶性グルコマンナンを使用し、上記欠点を克服することに成功した。
従って本発明は、賦形成分の少なくとも一部として平均粒子径50μm以下の微粒子グルコマンナンと混合した薬物を含み、投与時グルコマンナンが吸水して薬物を含有するマトリックスゲルを形成することを特徴とする徐放性組成物を提供する。
実施例1の溶出試験を示すグラフである。図中グルコマンナン50およびグルコマンナン100の曲線はそれぞれ組成物1および組成物2の経時的溶出率を示す。 実施例2の溶出試験を示すグラフである。図中グルコマンナン50−1およびグルコマンナン100−1の曲線はそれぞれ図1に示したグルコマンナン50およびグルコマンナン100の経時的溶出率であり、グルコマンナン50−2およびグルコマンナン100−2がそれぞれ組成物3および組成物4の経時的溶出率を示す。
詳細な説明
本発明の徐放性組成物は、典型的には経口投与される錠剤、顆粒剤、カプセル剤などの医薬品の固形製剤であるが、ゲルやペーストの形で投与される外用医薬品や、医薬部外品、化粧品、農薬などからの有効成分の持続性放出にも適用可能である。
本発明では、組成物の賦形成分の少なくとも一部として平均粒子径50μm以下の速溶性微粒子グルコマンナンを使用する。この微粒子グルコマンナンは、本出願人の特許第4446126号に開示された方法によって製造することができる。概略するとこの方法は、こんにゃく精粉を70%以上の含水エタノールに浸漬した状態で高速攪拌機を使って湿式粉砕し、固液分離後乾燥することよりなる。このものはこれまで知られたグルコマンナンのうち最も平均粒子径が小さく、一般に50μm以下、例えば25μmである。平均粒子径が小さいほど比表面積が大きくなり、水に対する膨潤(溶解)速度も速くなるから、投与時吸水して薬物を含む含水ゲルを形成し、このゲルが崩壊して薬物の放出が終るまでの時間が小腸通過時間(約6時間といわれる)に匹敵するように制御できる。
もし速溶性グルコマンナン単独では薬物の放出時間が6時間より有意に長い場合は、マンニトール、乳糖、結晶セルロース、デンプン、デキストリン等の糖アルコールおよび炭水化物、グァーガムなどの多糖類ガムを加えて放出時間を調節すればよい。
前記の含水エタノールに浸漬したこんにゃく精粉を湿式粉砕し、乾燥して製造された速溶性グルコマンナンを使用することの他の有益な効果は、不純物が殆んど除去されていることである。原料のこんにゃく精粉は、こんにゃく芋と呼ばれるサトイモ科の植物の塊茎をスライスし、乾燥、粉砕した後風力選別によりデンプン、繊維質などの不純物を除去して得られる。しかしながらこんにゃく精粉にはトリメチルアミンや亜硫酸塩などの多くの不純物が残留し、特異な刺激臭を有する。本出願人が開発した前述した方法によって製造した速溶性グルコマンナンはこれらの不純物が殆んど取り除かれており、同時にグルコマンナン含量も高くなっている。
薬物は徐放化に適した薬物であれば特定の薬物に制限されず、前述したように、外用医薬品や、医薬品部外品、化粧品、農薬の有効成分であってもよい。
剤形は、薬物と速溶性グルコマンナンとの混合粉末を充填したカプセル剤か、またはこの混合粉末にステアリンマグネシウムやショ糖脂肪酸エステルなどの滑沢剤を混合して直接打錠して得られる錠剤が典型的である。
以下に薬物として水溶性ビタミンBを用いた実施例により本発明を例証する。実施例の「グルコマンナン50」としては、出願人会社から「レオレックスONE」の商品名で提供される平均粒子径約25μmのグルコマンナンを使用し、「グルコマンナン100」としては、商品名「レオレックスRS」として提供される平均粒子径約100μmのグルコマンナンを使用した。
こんにゃく製粉および実施例で使用したグルコマンナンの粒度分布を以下に示す。
こんにゃく精粉
>30メッシュ 0%
>42メッシュ 6.3%
>60メッシュ 39.17%
>80メッシュ 38.43%
>100メッシュ 7%
<100メッシュ 9.1%

グルコマンナン100
>100メッシュ 0%
>120メッシュ 11.8%
>140メッシュ 14.8%
>170メッシュ 27.9%
>200メッシュ 18.6%
<200メッシュ 26.9%

グルコマンナン50
>200メッシュ 0%
<200メッシュ 100%
実施例1
モデルとして水溶性ビタミンBとデキストリンとグルコマンナンの混合物をカプセルに充填し、ビタミンBの溶出試験を行った。
1.材料
コントロール:ビタミンB0.1g+デキストリン20g
組成物1:対照+グルコマンナン50 10g
組成物2:対照+グルコマンナン100 10g
コントロールおよび各組成物を日本薬局方0号カプセルに均一に充填する。
2.試験方法
37℃の水浴中で、500mlビーカーに蒸留水400mlを入れ、マグネチックスターラーで攪拌(回転数約500rpm)しながら検体4カプセルを投入し、1分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、60分、90分、120分、150分、180分、240分、300分および360分経過後、約10mlを褐色びんにサンプリングする。次にサンプル中の水溶性ビタミンBの吸光度を波長450nmにおいて分光光度計を用いて測定し、検量線(Y=0.3308x+0.00007)を用いてビタミンBの溶出量に換算し、溶出率(%)を算出する。
3.結果
試験の結果を図1のグラフに示す。見られるように、グルコマンナン100を含む組成物1の溶出曲線はコントロールと殆んど差はなく、約15分までに大部分が溶出し、徐放効果がないことを示している。これに対しグルコマンナン50を含む組成物2の溶出率は経過時間に比例して増加する徐放効果を示している。
実施例2
水溶性ビタミンBとグルコマンナンのみの組成物について実施例1と同様な溶出試験を行った。
1.材料
コントロール:実施例1に同じ。
組成物3:ビタミンB0.1g+グルコマンナン50 10g
組成物4:ビタミンB0.1g+グルコマンナン100 10g
対照および各組成物を日本薬局方第0号カプセルに均一に充填する。
試験方法:実施例1に同じ。
3.結果
実施例1の結果とあわせて、本実施例の結果を図2のグラフに示す。見られるように、組成物がビタミンBとグルコマンナンのみの場合、対応するビタミンBとグルコマンナンとデキストリンの3者混合物に比較して溶出率が低くなる傾向が見られるが、グルコマンナン50の場合は180分まで溶出率が約40%であり、その後360分までの残りの約60%が溶出し、グルコマンナン50は高い溶出遅延効果を有することを示している。これに対しグルコマンナン100にはこれに匹敵する溶出遅延効果は見られない。
実施例3
溶出試験を第16改正日本薬局方の一般試験法「崩壊試験法」に準じて行った。
1.材料
組成物5:グルコマンナン50 5%
ビタミンB 0.4%
結晶セルロース 残部
組成物6:グルコマンナン50 10%
ビタミンB 0.4%
結晶セルロース 残部
コントロール:ビタミンB 0.4%
結晶セルロース 残部
コントロールおよび各組成物300mgを日本薬局方第0号カプセルに均一に充填する。
2.試験法
蒸留水を試験液とし、温度37±2℃に設定して日本薬局方の一般試験法「崩壊試験法」の「即放性製剤」の規定に準じて行った。
3.結果
コントロールは試験開始15分経過後殆んど100%の溶出率を示したが、組成物5および6は360分(6時間)経過後でも溶出率は20〜36%であった。このことは組成物のグルコマンナン50の比率をさらに低くしても小腸通過時間内に放出が終了する徐放性製剤の設計が可能であることを示唆している。
実施例4
グルコマンナン50 5.0%
結晶セルロース 93.6%
ビタミンB 0.4%
ショ糖脂肪酸エステル 1.0%
ショ糖脂肪酸エステルを除いて原料をあらかじめ均一になるまで混合し、最後にショ糖脂肪酸エステルを混合する。得られた粉末混合物を常法により直接打錠し、1錠300mgの徐放性錠剤を得る。
この時打錠圧を変え、硬度の異なる2種類の錠剤を製造し、それぞれについて日本薬局方の一般試験法「崩壊試験法」に従って崩壊時間を測定した。
比較のためグルコマンナン50を含まず、結晶セルロースを98.6%に増量した匹敵する硬度の2種類のコントロール錠剤を製造し、同様に崩壊時間を測定した。結果を次の表1に示す。
Figure 0005903250

Claims (8)

  1. 賦形成分の少なくとも一部として平均粒子径50μm以下の微粒子グルコマンナンと混合した薬物を含み、投与時グルコマンナンが吸水して薬物を含有するマトリックスゲルを形成することを特徴とする徐放性組成物を充填してなるカプセル剤。
  2. 前記微粒子グルコマンナンの平均粒子径が25μmである請求項1のカプセル剤。
  3. 微粒子グルコマンナンが200メッシュふるいを通過しない粒子を含まない請求項1または2のカプセル剤。
  4. 賦形成分として糖アルコール、炭水化物または多糖類ガムをさらに含んでいる請求項1ないし3のカプセル剤。
  5. 賦形成分の少なくとも一部として平均粒子径50μm以下の微粒子グルコマンナンと混合した薬物を含み、投与時グルコマンナンが吸水して薬物を含有するマトリックスゲルを形成することを特徴とする徐放性組成物と滑沢剤との混合粉末を直接圧縮成形してなる錠剤。
  6. 前記微粒子グルコマンナンの平均粒子径が25μmである請求項5の錠剤。
  7. 微粒子グルコマンナンが200メッシュふるいを通過しない粒子を含まない請求項5または6の錠剤。
  8. 賦形成分として糖アルコール、炭水化物または多糖類ガムをさらに含んでいる請求項5ないし7の錠剤。
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