JP5902912B2 - ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブ - Google Patents

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Description

本発明は、耐久性を確保しつつ打球フィーリングを向上させたゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブに関する。
近年、ソール部やクラウン部等に繊維強化樹脂からなる樹脂部材を用いて重心位置や慣性モーメント等を改善したゴルフクラブヘッドが知られている。しかしながら、このような樹脂部材を用いたゴルフクラブヘッドは、繊維強化樹脂の剛性が金属部分に比して小さいため、打球時に振動周波数が小さくなり、ひいては打球音が低くなる他、打球音の残響も短くなり、打球フィーリングの良いものではなかった。
そこで、この問題点を解決するため、樹脂部材の中空部側の内面に、該樹脂部材よりも剛性の大きい補強部材を接着材によって固着し、打球フィーリングを向上させたゴルフクラブヘッドが提案されている(下記特許文献1参照)。
しかしながら、上記ゴルフクラブヘッドは、補強部材が接着材で固着されていたため、打球時の衝撃によって該補強部材が剥離し易く、耐久性について問題があった。
特開2005−287528号公報
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、クラウン部の一部を繊維強化樹脂からなる樹脂部材で形成し、かつ該樹脂部材を、この樹脂部材内に埋設される板状部と、該板状部から中空部側に突出するリブとを一体に具えた補強部材で補強することを基本として、打球フィーリングと耐久性とを向上させたゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブを提供することを主たる目的としている。
本発明のうち、請求項1記載の発明は、内部に中空部が設けられたゴルフクラブへッドであって、ヘッド上面をなすクラウン部の少なくとも一部が、繊維強化樹脂からなる樹脂部材で形成され、前記樹脂部材には、該樹脂部材を補強する補強部材が固着され、前記補強部材は、前記樹脂部材内に埋設されかつ該樹脂部材の面内方向にのびる板状部と、該板状部から前記中空部側に突出するリブとを一体に具えることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、前記補強部材を形成する材料は、前記樹脂部材を形成する前記繊維強化樹脂よりも剛性が大きい請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項3記載の発明は、前記補強部材は、フェース・バックフェース方向にのびる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項4記載の発明は、前記補強部材は、トウ・ヒール方向にのびる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項5記載の発明は、前記補強部材は、長手方向と直角な断面が略T字状をなす請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項6記載の発明は、前記補強部材は、少なくとも一部が金属材料からなる請求項1乃至5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項7記載の発明は、前記補強部材は、少なくとも一部が繊維強化樹脂からなる請求項1乃至6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項8記載の発明は、前記リブは、貫通孔が設けられる請求項1乃至7のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項9記載の発明は、前記樹脂部材は、マトリックス樹脂と、該マトリックス樹脂を補強する補強繊維とを含み、該補強繊維は、前記板状部の外側に配された外側補強部と、前記板状部の内側に配された内側補強部とを有する請求項1乃至8のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
また請求項10記載の発明は、ゴルフクラブシャフトと、請求項1乃至9のいずれかに記載されたゴルフクラブヘッドとを含むことを特徴とするゴルフクラブである。
本発明のゴルフクラブヘッドは、ヘッド上面をなすクラウン部の少なくとも一部が、繊維強化樹脂からなる樹脂部材で形成された中空構造であり、前記樹脂部材には、該樹脂部材を補強する補強部材が固着され、前記補強部材は、前記樹脂部材内に埋設されかつ該樹脂部材の面内方向にのびる板状部と、該板状部から前記中空部側に突出するリブとを一体に具える。このような補強部材は、板状部が樹脂部材との剥離を抑制させる。また、板状部から突出するリブが樹脂部材の剛性を高め、耐久性を向上させる他、打球時の振動周波数を大きくして打球音を高める。また、中空部側に突出するリブは、中空部内で片持ち状となって振動することで、打球音の残響を長く維持するのに役立つ。従って、本発明のゴルフクラブヘッドは、打球フィーリングと耐久性とが向上する。
本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッドの基準状態の全体斜視図である。 図1の平面図である。 図1の底面図である。 図2のA−A断面図である。 図1の分解斜視図である。 (a)は、補強部材の長手方向と直角な断面図、(b)は、補強部材の部分斜視図である。 (a)、(b)は、他の実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図である。 (a)乃至(c)は、他の実施形態の補強部材の斜視図である。 他の実施形態のゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。 (a)乃至(c)は、本実施形態の補強部材と樹脂部材との製造方法を示す断面図である。 (a)乃至(d)は、他の実施形態の補強部材と樹脂部材との製造方法を示す断面図である。 比較例のゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1乃至5には、本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」又は「クラブヘッド」ということがある。)1の基準状態が示される。ここで、ヘッド1の基準状態とは、シャフト軸中心線CLを任意の垂直面VP内に配しかつ規定のライ角で傾けるとともにフェース2AのスイートスポットSSをロフト角βに保持(フェース角は零にセットされる)して水平面HPに接地させた状態とする。特に言及されていない場合、クラブヘッド1は、この基準状態にあるものとする。なお、ロフト角は0度よりも大きい角度として与えられる。また、本明細書において、フェース・バックフェース方向とは、図2に示されるように、基準状態における平面視において、ヘッド重心Gからフェース2Aに下ろした法線Nと平行な方向THとする。また、トウ・ヒール方向とは、前記平面視における法線Nと直角な方向TKとする。なお、この法線Nとフェース2Aの交点が前記スイートスポットSSになる。
前記ヘッド1は、ボールを打撃する打撃面をなすフェース2Aを有するフェース部3と、このフェース2Aの上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部4と、前記フェース2Aの下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、前記クラウン部4とソール部5との間を継ぎ前記フェース2Aのトウ側縁2cからバックフェース2Bを通り前記フェース2Aのヒール側縁2dにのびるサイド部6と、前記クラウン部4のヒール側に設けられかつゴルフクラブシャフト(図示しない)の先端が挿入される円筒状のシャフト差込孔7aを有するホーゼル部7とが設けられる。なお、このホーゼル部7のシャフト差込孔7aに、ゴルフクラブシャフトが取り付けられて、ゴルフクラブ(ともに図示省略)が構成される。
前記ヘッド1は、内部に中空部iが設けられた中空構造を具え、好ましくはウッド型として構成される。なお、ウッド型のゴルフクラブヘッドとは、少なくともドライバー(#1)、ブラッシー(#2)、スプーン(#3)、バフィ(#4)及びクリーク(#5)を含み、かつこれらとは番手ないし名称が異なるが、ほぼ類似した形状を持つヘッドをも含む概念である。
特に限定されるものではないが、ヘッド1の体積Vは、好ましくは350cm以上、より好ましくは380cm以上の体積を有するものが望ましい。このような大きい体積は、ヘッド1の慣性モーメントや重心をより深くするのに役立つ。他方、クラブヘッド1の体積が大きすぎても、ヘッド重量の増加、スイングバランスの悪化及びゴルフ規則違反等の問題があるため、好ましくは460cm以下が望ましい。
また、ヘッド1の質量は、小さすぎるとヘッドの運動エネルギーが小さくなり、飛距離の向上が期待できない傾向がある。逆に、質量が大きすぎると、振り切るのが困難となり、打球の方向安定性や飛距離が悪化する傾向がある。このような観点より、ヘッド1の質量は、好ましくは175g以上、より好ましくは180g以上が望ましく、また好ましくは205g以下、より好ましくは210g以下が望ましい。
また、本実施形態のヘッド1は、前側部材1Fと、該前側部材1Fのバックフェース2B側に装着される後側部材1Bとの2つの部材から構成される。
前記前側部材1Fは、前記フェース部3とホーゼル部7とを一体に具える。本実施形態の前側部材1Fは、フェース部3と、ホーゼル部7と、前記フェース部3の周縁部の少なくとも一部(本実施形態では全部)からヘッド後方にのびるフランジ部9とを含んで形成される。これにより、本実施形態の前側部材1Fは、後方が解放された略カップ状をなす。
本実施形態のフランジ部9は、クラウン部4の前側部分を構成するクラウン前部9a、ソール部5の前側部分を構成するソール前部9b、サイド部6のトウ側かつ前側部を構成するトウ側前部9c及びサイド部6のヒール側かつ前側部を構成するヒール側前部9dを含み、フェース部3の周縁で環状に連続している。なお、フランジ部9は、必ずしも環状に連続する態様に限定されるものではなく、その一部が切り欠かれていても良い。
また、本実施形態のフランジ部9のバックフェース2B側の端部は、トウ・ヒール方向に直線状にのび、かつ基準状態の平面視においてシャフト軸中心線CLよりもバックフェース2B側に形成されているが、このような態様に限定されるものでもない。
また、図5に良く示されるように、フランジ部9は、例えば、フェース部3に連なりかつ仕上がりヘッド1の外面部分を構成するフランジ本体10と、該フランジ本体10の後方に連なりかつフランジ本体10からヘッド内方にステップ状に段差を有して凹む受け部11とを含む。受け部11は、ある幅を有して前側部材1Fの開口縁に沿ってのびており、本実施形態では、フランジ9の全周に受け部11が形成されている。
このような前側部材1Fは、例えば、ステンレス鋼、マレージング鋼、チタン、チタン合金又はアモルファス合金などを用いて構成され、とりわけ比強度の大きいチタン合金が望ましい。なお前側部材1Fは、2種以上の金属材料を用いて作ることもできる。このような前側部材1Fは、例えば鋳造等で前記各部を当初から一体に形成されても良いし、また鍛造、鋳造、プレス又は圧延等の加工法により2以上のパーツを成形した後、これらを溶接等により一体に接合したものでも良い。
前記後側部材1Bは、例えば、前記基準状態において最も後方に位置するヘッド最後部Bからフェース2A側に小長さでのびており、クラウン部4の後部を形成するクラウン後部12a、ソール部5の後部を形成するソール後部12b及びサイド部6の後部を形成するサイド後部12cを含み、かつ、フェース2A側に開口13を有する前開放のカップ状の殻体として形成される。該開口13は、前側部材1Fの受け部11の外周面に嵌め込まれ、例えば接着剤で固着される。
本実施形態の後側部材1Bは、繊維強化樹脂からなる樹脂部材Pで形成される。前記繊維強化樹脂は、マトリックス樹脂Paと、該マトリックス樹脂Paを補強する補強繊維Pb(図6(a)に示す)とを含む複合材料であって、前側部材1Fの金属材料よりも小さな比重からなる。これにより、本実施形態の後側部材1Bと前側部材1Fとで構成されたヘッド1は、金属材料のみからなるヘッドに比して相対的に比重が小さくなるため、ヘッド体積を大きく設計することができる他、削減された重量を他の適所に配分することにより、ヘッド1の慣性モーメントを増大させ得る。
前記マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等が挙げられるが、強度を確保する観点より、熱硬化性樹脂が好ましく、例えばエポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。また、前記補強繊維には、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維又はチタン繊維等の1ないし2以上を用いることができるが、強度や経済性の観点より炭素繊維が望ましく、とりわけ、PAN系炭素繊維又はピッチ系炭素繊維が望ましい。
そして、本発明では、樹脂部材Pに、該樹脂部材Pを補強する補強部材Rが固着される。
前記補強部材Rは、樹脂部材P内に埋設されかつ該樹脂部材Pの面内方向にのびる板状部14と、該板状部14から前記中空部i側に突出するリブ15とを一体に具える。これにより、板状部14が樹脂部材Pに強固に固着され、補強部材Rと樹脂部材Pとの剥離が抑制される。また、板状部14から突出するリブ15が樹脂部材Pの剛性を高め、耐久性を向上させる他、打球時の振動周波数を大きくして、打球音を高めるのに役立つ。さらに中空部内で露出し、片持ち状となるリブ15は、打球音の残響を長く維持する。従って、本発明のゴルフクラブヘッドは、打球フィーリングと耐久性とを向上させる。なお、補強部材Rと樹脂部材Pとの剥離をさらに抑制するため、板状部14の外側(ヘッド1の外面側)及び内側(中空部i側)に補強繊維Pbからなる外側補強部Pb1と内側補強部Pb2とを配し(図6(a)に示す)、樹脂部材Pの剛性を高めるのが望ましい。
本実施形態の補強部材Rは、フェース・バックフェース方向にのびる。このような補強部材Rは、ヘッド1のフェース・バックフェース方向の剛性をより一層大きくして、ヘッド1の耐久性や打球音をさらに高めるのに役立つ。本実施形態の補強部材Rは、クラウン後部12aからサイド後部12cを通り、ソール後部12bまで図4に示されるように略U字状にのびている。
図6(a)、(b)に良く示されるように、補強部材Rは、長手方向と直角な断面が、略T字状に形成されるのが望ましい。このような補強部材Rは、樹脂部材Pの面外方向の応力をも高め、さらにヘッド1の耐久性を向上させるのに役立つ。なお、本実施形態の補強部材Rでは、板状部14が、「T字」の横片部分を、リブ15が、縦片部分を構成する。
補強部材Rを形成する材料は、樹脂部材Pを形成する繊維強化樹脂よりも剛性が大きいのが望ましい。これにより、樹脂部材Pの剛性をより効果的に高めることができ、打球時の振動周波数を一層大きくする他、耐久性を向上するのに役立つ。なお、本発明において、補強部材Rを形成する材料が樹脂部材Pを形成する繊維強化樹脂よりも剛性が大きいとは、例えば、補強部材Rを形成する材料の方が、樹脂部材Pを形成する繊維強化樹脂よりも、曲げ弾性率が高い場合や、引張弾性率が高い場合が挙げられる。
打球時の振動周波数を大きくするために、補強部材Rは、金属材料で形成されるのが望ましい。この補強部材Rの金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、マレージング鋼、チタン、チタン合金又はアモルファス合金などが好適に用いられる。
また、補強部材Rは、樹脂又は繊維強化樹脂で形成されても良い。このような補強部材Rは、ヘッド1の質量増加をさらに抑制でき、ヘッド体積や慣性モーメントを効果的に高め得るのに役立つ。このような繊維強化樹脂は、マトリックス樹脂として、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等が挙げられるが、強度を確保する観点より、熱硬化性樹脂が好ましく、例えばエポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。また、補強繊維には、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維又はチタン繊維等の1ないし2以上を用いることができるが、強度や経済性の観点より炭素繊維が望ましく、とりわけ、PAN系炭素繊維又はピッチ系炭素繊維が望ましい。このような繊維強化樹脂で形成された補強部材Rでも、樹脂部材Pの剛性を大きくできるため、金属材料で形成された補強部材Rと同様、耐久性や打球音を高め得る。とりわけ補強部材Rの板状部14が、繊維強化樹脂で形成されると、樹脂部材Pとの固着性が大きくなり、耐久性がさらに高められる。
なお、補強部材Rを繊維強化樹脂で形成する場合は、この補強部材Rを形成する繊維強化樹脂と樹脂部材Pを形成する繊維強化樹脂とが同じであってもよい。このように同じ材料で形成した場合であっても、補強部材Rはリブ15によって樹脂部材Pの剛性を向上させることができる。また、上述のように、補強部材Rを形成する材料の剛性を、樹脂部材Pを形成する繊維強化樹脂の剛性よりも大きくしてもよい。この場合、例えば、樹脂部材Pのマトリックス樹脂をエポキシ系樹脂、補強繊維をPAN系炭素繊維とし、補強部材Rのマトリックス樹脂をアクリル系樹脂、補強繊維をピッチ系炭素繊維(高弾性率)としてもよい。また、樹脂部材P及び補強部材Rのマトリックス樹脂を同じ樹脂とし、補強繊維の弾性率を樹脂部材Pよりも補強部材Rの方が高くなるようにしてもよい。
板状部14が埋設される近傍の樹脂部材Pの強度と、板状部14の強度とをバランス良く確保するため、該板状部14の厚さD1は、好ましくは0.3〜2.0mmが望ましい。同様の観点より、板状部14の幅Wは、1.0〜10.0mmが望ましい。
また、リブ15の厚さD2及び高さHが大き過ぎると樹脂部材Pの強度が低下し、耐久性が悪化するおそれがあり、逆に小さ過ぎると、振動周波数の向上効果が発揮されず、打球フィーリングを高めることができないおそれがある。このため、前記厚さD2は、好ましくは0.5〜2.0mmが望ましく、前記高さHは、1.0〜10.0mmが望ましい。なお、樹脂部材Pの厚さD3は、0.5〜3.0mmが望ましく、厚さは均一でなくともよい。
補強部材Rは、打球フィーリングを向上させるため、少なくとも、後側部材1B(樹脂部材P)のクラウン後部12aに設けられるのが望ましく、より好ましくは、クラウン後部12aからサイド後部12cを通り、ソール後部12bまで連続して設けられるのが望ましい。具体的には、補強部材Rの配設長さL(図4に示す)は、150mm以上、より好ましくは170mm以上配されるのが望ましい。
補強部材Rは、基準状態の平面視において、重心G上に配されるのが望ましい。このようなヘッド1は、打球時の振動を大きく緩和し、さらに耐久性や打球フィーリングを高めるのに役立つ。
図7(a)に示されるように、補強部材Rは、トウ・ヒール方向にのびるものでも良い。このようなヘッド1は、樹脂部材Pの剛性を高め、耐久性や打球フィーリングを向上するのに役立つとともに、リブ15の高さHや厚さD2を変化させることによって、ヘッド重心Gの位置を最適化できる。また、図7(b)に示されるように、樹脂部材Pには、補強部材Rが複数本(本例では、2本)設けられるものでも良い。これにより、一層振動周波数が高められる。
図8(a)に示されるように、補強部材Rの板状部14及び/又はリブ15には、貫通孔Kが設けられてもよい。このような貫通孔Kは、補強部材Rの質量を削減して、さらにヘッド1の体積や各慣性モーメントを高めることができる。特に、貫通穴Kが板状部14に形成されている場合は、樹脂部材Pとの固着性を向上させる。また、貫通孔Kは、共鳴効果を発揮して、打球音の残響を長くするのに役立つ。なお、リブ15の貫通孔Kが過度に大きくなると、打球フィーリングが低減するおそれがある。このため、貫通孔Kの総面積Sk(貫通孔Kの面積S×貫通孔Kの数n)は、貫通孔Kを設けない場合のリブ15の側面の面積Sdの好ましくは30〜50%が望ましい。
また、上記実施形態では、金属、樹脂又は繊維強化樹脂など、単一の材料で全体が形成された補強部材Rを例示したが、これに限定されるものではなく、補強部材Rが部分的に異なる材料で形成されていてもよい。例えば、図8(b)に示されるように、補強部材Rが、繊維強化樹脂と金属材料とで構成されても良い。この実施形態では、板状部14が、繊維強化樹脂で形成され、リブ15が金属材料で形成される。このような補強部材Rは、金属材料のみで構成された補強部材に比して、ヘッド1の質量を小さくできる他、板状部14と樹脂部材Pとの固着性を高め、両者の剥離を抑制する。さらに、図8(c)に示されるように、補強部材Rは、1つの板状部14にリブ15が複数本(本例では5本)設けられてもよい。このような補強部材Rは、リブ15間において共鳴効果を発揮し、振動周波数がさらに高められ、打球フィーリングが向上する。なお、リブ15の数が多くなると、ヘッド1の質量が過度に大きくなるおそれがある。このため、リブ15は、好ましくは7本以下が望ましい。
また、例えば、図9に示されるように、樹脂部材Pが、クラウン部の一部(1Da)及びソール部の一部(1Db)に分割され、その夫々に、例えばフェース・バックフェース方向にのびる補強部材Ra、Rbが設けられるものでも良い。このようなヘッド1は、剛性が高く確保される。
また、リブ15の厚さD2が、補強部材Rの長さ方向に沿って変化する態様(図示せず)でも良い。即ち、ヘッド1の強度が必要なところでは、リブ15の厚さを大きくして、剛性を高めるとともに、ヘッド1の強度が不要なところでは、リブ15の厚さを小さくして、ヘッド1の質量マージンを確保し、ヘッドの耐久性の向上とヘッド体積や慣性モーメントの大型化とをバランス良く高める。
以上のようなクラブ1の樹脂部材P(後側部材1B)は、補強部材Rが金属材料で形成される場合と、繊維強化樹脂で形成される場合とで製造方法が異なるため、夫々の場合の好適な製造方法を説明する。
<補強部材が金属材料からなる場合>
図10(a)乃至(c)に示されるように、先ず、補強部材Rよりもヘッド1の表面側に配される複数枚(この例では2枚)のプリプレグシート18を積層した積層体を金型Jにセットし、その上部に金属材料からなる補強部材Rが配設される。次に、補強部材Rのリブ15を除いて板状部14の上部を含めてプリプレグシート18をさらに積層した後、これらに所定の温度と圧力とを作用させる。これによりプリプレグを硬化させて、金属材料からなる補強部材R1を含んだ樹脂部材Pが作られる。
<補強部材が繊維強化樹脂からなる場合>
図11(a)乃至(d)に示されるように、先ず、リブ15を形成するスリットSが設けられた金型Jが準備される。次に、このスリットSを除いた金型Jの上面にヘッド1の中空i側に配される複数枚(この例では2枚)のプリプレグシート18を積層した積層体が配される。次に、スリットSの内部に、補強部材Rを構成する補強繊維Uと、マトリックス樹脂Iを挿入し、前記積層体の上面にさらにプリプレグシート18を積層した積層体を配する。次に、所定の温度と圧力とを作用させる。これによりプリプレグを硬化させて、繊維強化樹脂からなる補強部材R2を含んだ樹脂部材Pが作られる。なお、他の製造方法として、補強繊維を含んだ硬化物からなる補強部材R2を前記スリットS内に配置させる方法でも良い。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定させることなく、必要に応じて種々の態様に変更しうる。
本発明の効果を確認するために、図1〜5や図12に基づいたウッド型ゴルフクラブヘッド(ドライバー)が試作され、耐久性及び打球フィーリングについてテストされた。表1に示すパラメータ以外はすべて同一であり、主な共通仕様は次の通りである。
ヘッド体積:460cm3
前側部材:金属材料(チタン合金)
樹脂部材:繊維強化樹脂(マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、補強繊維:PAN系炭素繊維)
補強部材:金属材料(チタン合金)
補強部材:繊維強化樹脂(マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、補強繊維:PAN系炭素繊維)
板状部の幅W:5.0mm
板状部の厚さD1:0.3mm
リブの高さH:5.0mm
リブの厚さD2:1.0mm
テスト方法は、次の通りである。
<耐久性>
各供試ヘッドにFRP製の同一のシャフト(SRIスポーツ株式会社製のMP−600、フレックスR)を装着し45インチのウッド型ゴルフクラブが試作された。そして、各クラブをミヤマエ社製のスイングロボットに取り付け、フェースの中心かつヘッドスピード54m/sでゴルフボール(SRIスポーツ社製の「XXIO XD(同社の登録商標)」)が繰り返し打撃され、クラブヘッドの音鳴りの有無が調べられた。結果は、打撃数が5000球で音鳴りのないものを◎、4700〜5000球を越えて音鳴りがしたものを○、4400〜4700球で音鳴りがしたものを△、4400〜4100球で音鳴りがしたものを△×、4100球未満で音鳴りがしたものを×として示された。
<打球フィーリング>
上記ウッド型クラブ及びゴルフボールを用いて、ハンディキャップ3〜26の10名のゴルファによる実打試験を行い、打球音の高さ及び打球の残響の長さによる打球フィーリングに関して評価がなされた。結果は、ゴルファ10名の平均で表され、良いものから順に◎、○、△、△×、×で示された。
テストの結果などを表1に示す。
Figure 0005902912
テストの結果、配設長さLが等しい比較例と実施例とを比較すると、実施例のヘッドは、比較例のヘッドに比して打球フィーリングや耐久性が有意に向上していることが確認できた。また、補強部材の大きさを夫々好ましい範囲に変更してテストを行ったが同じような結果が得られた。
1 ゴルフクラブヘッド
4 クラウン部
14 板状部
15 リブ
i 中空部
P 樹脂部材
R 補強部材

Claims (10)

  1. 内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドであって、
    ヘッド上面をなすクラウン部の少なくとも一部が、繊維強化樹脂からなる樹脂部材で形成され、
    前記樹脂部材には、該樹脂部材を補強する補強部材が固着され、
    前記補強部材は、前記樹脂部材内に埋設されかつ該樹脂部材の面内方向にのびる板状部と、該板状部から前記中空部側に突出するリブとを一体に具え、長手方向と直角な断面が略T字状に形成され、
    前記補強部材を形成する材料は、前記樹脂部材を形成する前記繊維強化樹脂よりも剛性が大きく、
    前記板状部は、T字の横片部分を構成し、
    前記リブは、T字の縦片部分を構成することを特徴とするゴルフクラブヘッド。
  2. 前記板状部は、貫通孔が設けられる請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
  3. 前記補強部材は、フェース・バックフェース方向にのびる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
  4. 前記補強部材は、トウ・ヒール方向にのびる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
  5. 前記補強部材は、1本の前記板状部に複数本の前記リブが設けられる請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  6. 前記補強部材は、少なくとも一部が金属材料からなる請求項1乃至5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  7. 前記補強部材は、少なくとも一部が繊維強化樹脂からなる請求項1乃至6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  8. 前記ゴルフクラブヘッドは、前記クラウン部の後部を形成するクラウン後部、ヘッド底面をなすソール部の後部を形成するソール後部、及び、前記クラウン部と前記ソール部との間を継ぐサイド部の後部を形成するサイド後部を含み、
    前記補強部材は、前記クラウン後部から前記サイド後部を通り、前記ソール後部までのびる請求項1乃至7のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  9. 前記樹脂部材は、マトリックス樹脂と、該マトリックス樹脂を補強する補強繊維とを含み、
    該補強繊維は、前記板状部の外側に配された外側補強部と、前記板状部の内側に配された内側補強部とを有する請求項1乃至8のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  10. ゴルフクラブシャフトと、請求項1乃至9のいずれかに記載されたゴルフクラブヘッドとを含むことを特徴とするゴルフクラブ。
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