JP5900427B2 - 成形限界測定方法および装置 - Google Patents
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Description
FEMによる成形時の割れ判定に関し、室温成形時の成形解析で割れ判定をする際は、一般に成形限界線図(Forming Limit Diagram:略号FLD。以下、「FLD」とも記す)が使われている。
FLDは、横軸を最小主歪み、縦軸を最大主歪みとした直交座標図中に、プレス成形試験で測定した、成形中の割れ発生時における試験材の最小主歪みと最大主歪みのデータから、両者の関係曲線として成形限界線を描いた線図であり、この成形限界線より下側の領域が、割れの生じない成形条件範囲であると判定される。
中島法とは、球頭パンチにより張出し成形を行い、試験材の成形限界を評価する方法である。中島法では試験材の板幅を変更することにより、単軸引張りから等2軸引張りまでの歪み比の成型限界を求めることができる。
マルシニアック法とは、円筒パンチを用いて張出し成形を行い、パンチ底で試験材を破断させて、成形限界を評価する方法である。マルシニアック法では、駆動板と呼ばれる穴を開けた板を工具と試験材との間にいれて成形することで、パンチ底で試験材を無摩擦の状態にすることができる。
温熱間成形でも、通常の室温成形と同じようにFEMによる成形解析で、成形時の割れ判定が可能である事が望ましく、この場合にもFLDを基準とする事が望ましい。
従来、温熱間成形で成形限界線を測定(詳しくは、上述のように成形試験で測定したデータから推定)する場合、所定の温度まで昇温させた金型を用いて、中島法により測定するか、または、駆動板を用いたマルシニアック法による測定が行われている。
すなわち、中島法では、金型を所定の温度に昇温・保持する必要があり、装置が複雑且つ高価になる。また、試験材を金型と同じ温度まで昇温するため、試験時間が長くかかる。さらに、試験材と金型が高温になった状態では、金型と試験材間の摩擦係数が極めて大きく且つ不安定となる為、試験材そのものの変形限界が的確に測定できない。
すなわち、試験材における駆動板部位(駆動板は金型と接触している)と接触した部分は、相対的に温度低下が大きく強度が増すため、その部分の変形が金型の形状により抑制される。そのため、試験材がパンチ底で破断する以前に、パンチの肩付近で破断するという問題がある。このことから、試験材の破断限界が不明となり、成形限界線の測定が困難である。また、マルシニアック法では、試験ごとに駆動板を製作する必要があり、コストが大きくなる。さらに、試験材と駆動板を重ねて金型に装着するため、手動でセットする場合には作業員の危険が伴う。
前記試験材を加熱する試験材加熱工程を有し、
前記プレス成形は、加熱した試験材に、金型と接触して低温になる部分と、金型と非接触で高温の部分が隣り合って存在し、両者の境界付近の高温部分で、前記試験材にネッキングまたはクラックが発生するようにプレス成形を行うことを特徴とするものである。
プレス成形装置と、温度測定手段と、ネッキングまたはクラック発生確認手段とを有し、
前記プレス成形装置は、前記試験材の周縁部を挟持するダイ及びホルダーと、前記試験材の中央部に配置されたパンチとを備え、該パンチは複数種類の径のものに取り換え可能になっていることを特徴とするものである。
ここで歪み比とは、ある条件のプレス成形における最大主歪みと最小主歪みの比である。歪み比毎にネッキングまたはクラッキングが発生する限界(成形限界)が異なる。
従って、加熱した試験材についてのネッキングまたはクラック発生時における最大主歪みと最小主歪みを測定するには、低温部分と高温部分の境界付近の高温部分を観察すればよい。
本発明の一実施の形態に係る成形限界測定方法は、試験材を加熱する試験材加熱工程を有し、プレス成形は、加熱した試験材に、金型と接触して低温になる部分と、金型と非接触で高温の部分が隣り合って存在し、両者の境界付近の高温部分で、試験材にネッキングまたはクラックが発生するように行うことを特徴としている。
このような成形限界測定方法を実施するためのプレス成形装置1について、図1に基づいて説明する。
プレス成形装置1は、試験材3の周縁部を挟持するダイ5及びホルダー7と、試験材3の中央部に配置された円筒パンチ9とを備え、円筒パンチ9は複数種類の径のものに取り換え可能になっている。
ダイ5及びホルダー7は、試験材3を挟持したまま上下動可能になっており、試験材3を円筒パンチ9に押し付けることで成形を行う。
ダイ5及びホルダー7には、試験材3の周縁部の挟持を強固にするためのドロービード11が設けられており、試験材3がプレス成形中に中央に向かって流入しないようになっている。
この点について図2に基づいて詳細に説明する。図2は、プレス成形中におけるパンチ肩部9a(図1の丸で囲んだ部分)の拡大図である。
一方、試験材3における円筒パンチ9に直接接触しない部分は、多少空冷されるが、接触する部分と比較して高温が保たれる部分(高温部分)である。
また、パンチ肩部9a付近であれば観察も容易である。
この点、プレス成形装置1は、円筒パンチ9を複数種類の径のものに取り換え可能になっており、円筒パンチ9の径を変更すれば、成形限界に達した部分の歪み比が変わるようにプレス成形を行うことができる。
この点について以下に詳細に説明する。
図3に示すように、円筒パンチ9で張り出し成形を行うと、周方向歪みが最小主歪みとなり、半径方向歪みが最大主歪みとなる。
円筒パンチ9の直径が小さい図3の場合には、最小主歪み(周方向歪み)と最大主歪み(半径方向歪み)の比が1に近くなり、円筒パンチ9の直径が大きい図4の場合には、最小主歪み(周方向歪み)と最大主歪み(半径方向歪み)の比が0に近くなる。
測定には例えば熱電対19を用いる。熱電対19は、図5に示すように、試験材3の低温部分と高温部分の境界になると考えられる部分に、円筒パンチ9の半径方向に沿って一列に装着する。
なお、試験温度は、加熱温度を変えるか、または、加熱後にプレス成形を開始するまでの時間を変えることにより設定する。
ネッキングやクラックの発生部分の最大主歪みと最小主歪みは、室温のプレス成形と同様にスクライブドサークルを用いて測定することができる。また、試験材3にグリッドを印刷しておき、CCDカメラなどを用いて光学的に歪みを求めることも可能である。
本例では、スクライブドサークルを用いて測定する方法とした。試験材3には、予めネッキングやクラックが発生する箇所にスクライブドサークルをマーキングしておく。
パンチは、従来方法のように加熱する必要はなく、試験開始時のパンチは室温である。
ダイ5とホルダー7で挟持したまま下動させて、試験材3をパンチに押し付けて成形する。
成形中はCCDカメラを用いて、ネッキングまたはクラックの発生を確認する。ネッキングやクラックが発生したらプレス成形を終了し、最小主歪みと最大主歪みを測定する。
そして、上記のようなプレス成形を、成形限界に達した部分の歪み比が変わるようにパンチの径を変更して複数行い、その度、ネッキングまたはクラック発生時の最小主歪みと最大主歪みを測定する。
これらの測定結果に基づけば変形限界線を作成することができる。
いずれにせよ、成形限界は温度に依存するため、いずれの歪み比においても、同じ温度で成形限界値を測定することが好ましいが、ネッキングまたはクラックが発生した時の温度を採用する場合、工具の形状の違いや使用した材料の表面性状や板厚の違いによって、同じ温度で試験することは実際には困難である。
上記のような多少のバラツキを許容して作成された成形限界線を用いても実用上は特に問題はないが、より正確な温度における成形限界値を求めたい場合には、他の値から推定してもよい。
例えば、一つの歪み比について温度を変更して複数の成形限界値を測定し、所定温度における成形限界値を複数の成形限界値に基づいて推定する。この方法の具体例を図6に基づいて説明する。
図6に示すように、600℃よりも低い温度と600℃よりも高い温度で最大主歪みおよび最小主歪みを測定し、これらの値(図6中白丸参照)から600℃における最大主歪みおよび最小主歪みを内挿によって求める(図6中黒丸参照)。
この例では、温度が400、500、600℃での成形限界線の求め方を示す。その歪み比を実現できる金型(例えば、ある直径の円筒パンチ9と、ある内径を持つダイ5とホルダー7)を用いて、所定温度に加熱した材料をプレス成形し、臨界最大主歪みと臨界最小主歪みを測定する。
プレス成形で通常使用される板厚1〜3mmの金属材料では、空冷時の冷却速度はせいぜい20℃/秒であり、プレス成形開始からネッキングまたはクラック発生までの時間を0.5秒以下とすれば、空冷による温度低下は10℃以下になる。この程度の温度変化が成形限界線に与える影響は、実用上無視できるレベルである。
よって、本発明ではプレス成形時間を0.5秒以下にすることが望ましい。0.5秒以下であれば、測定温度として、プレス成形開始時の温度を採用しても、ネッキングまたはクラックの発生時の温度を採用しても、実用上の成形限界線の差は生じない。ただし、歪み比を変えた試験で、同じタイミングで測定した温度にすべきであることは言うまでもない。
本実施例では、引張強度が980MPaの高張力鋼板について、600℃で成形したときの成形限界線を測定した。
試験材3の板厚は1.6mm、試験材3の外形は直径300mmの円形であった。
本発明の方法を用いた場合の金型は図1に示す形状で、ドロービード11は直径180mmの円形であり、円筒パンチ9の直径は、15mm、45mm、90mm、140mmとした。パンチ肩部9aのRは5mmとした。
クラックは、試験材3の低温部と高温部の境界付近の高温部に発生した。クラックの発生はオペレータが目視で判定し、クラックが発生したところでプレス成形を終了した。プレス成形終了時のクラックが発生した場所の温度は、いずれの条件でも590℃以上であった。
最大主歪みと最小主歪みは、スクライブドサークル法にて測定した。測定は張り出し領域(最小主歪みがプラスの領域)で行った。
3 試験材
5 ダイ
7 ホルダー
9 円筒パンチ
9a パンチ肩部
11 ドロービード
13 境界線
15 ドロービード位置
17 境界線
19 熱電対
21 ネッキングまたはクラック発生確認手段
23 温度測定手段
25 成形限界測定装置
Claims (4)
- 試験材をプレス成形装置に装着し、成形限界に達した部分の歪み比が変わるようにプレス成形を行うことにより歪み比毎の成形限界を求める成形限界測定方法であって、
前記試験材を加熱する試験材加熱工程を有し、
前記プレス成形は、加熱した試験材に、金型と接触して低温になる部分と、金型と非接触で高温の部分が隣り合って存在し、両者の境界付近の高温部分で、前記試験材にネッキングまたはクラックが発生するようにプレス成形を行うことを特徴とする成形限界測定方法。 - プレス成形を行うパンチを変えることによって歪み比を変更することを特徴とする請求項1記載の成形限界測定方法。
- 一つの歪み比について温度を変更して複数の成形限界値を測定し、所定温度における成形限界値を前記複数の成形限界値に基づいて推定することを特徴とする請求項1又は2記載の成形限界測定方法。
- 加熱された試験材をプレス成形装置に装着し、成形限界に達した部分の歪み比が変わるようにプレス成形を行うことにより歪み比毎の成形限界を求める成形限界測定装置であって、
プレス成形装置と、温度測定手段と、ネッキングまたはクラック発生確認手段とを有し、
前記プレス成形装置は、前記試験材の周縁部を挟持するダイ及びホルダーと、前記試験材の中央部に配置されたパンチとを備え、該パンチは複数種類の径のものに取り換え可能になっていることを特徴とする成形限界測定装置。
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