JP5899036B2 - エフェドリン(塩)含有粒子及び固形製剤 - Google Patents
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ところで、エフェドリン(塩)は、酸性成分であるため、塩基性成分である制酸剤等と共に配合されると、含有量の低下を生じる。
こうした問題に対し、例えば、エフェドリン(塩)等の酸性薬物を含む粒子と、制酸剤を含む粒子とを別々に造粒・被覆し混合した粒状医薬品が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明によれば、酸性薬物と制酸剤とが直接接触しないようにすることで、酸性薬物の含有量の低下を防止している。
また、例えば、エフェドリン(塩)と、安息香酸又はそのアルカリ金属塩とを配合した固形製剤が提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2の発明によれば、安息香酸を配合することで、アルカリ領域でのエフェドリン(塩)の安定化を図っている。
特許文献2の発明では、エフェドリン(塩)の含有量の低下を十分に抑制できない。
そこで、制酸剤の存在下においても、エフェドリン(塩)の含有量の低下を容易に抑制できるエフェドリン(塩)含有粒子を目的とする。
前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が1以下であるのが好ましい。
本発明の固形製剤は、エフェドリン(塩)含有粒子を含有する医薬固形製剤である。
固形製剤の剤形としては、例えば、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤等が挙げられる。
本発明のエフェドリン(塩)含有粒子は、(A)成分:エフェドリン及び/又はその塩と、(B)成分:制酸剤と、(C)成分:カルメロース、クロスカルメロース及びこれらの塩から選択される1種以上とを含有するものである。
エフェドリン(塩)含有粒子の集合体(以下、エフェドリン(塩)含有粒子群ということがある)の平均粒子径は、特に限定されず、例えば、50〜600μmが好ましい。上記下限値未満では、エフェドリン(塩)含有粒子が粉立ちしやすく、取り扱いが煩雑になる。上記上限値超では、エフェドリン(塩)含有粒子の溶解性が損なわれるおそれがある。
「平均粒子径」は、レーザー式散乱回折法粒度分布測定装置(BECKMAN COULTER社製)を用いて測定される累積質量の50%粒子径である。
カプセル剤であれば、カプセル中の製剤におけるエフェドリン(塩)含有粒子の含有量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。上記下限値未満では、服用量が多くなりすぎて、利便性の面で好ましくない。
また、錠剤や丸剤であれば、固形製剤中のエフェドリン(塩)含有粒子の含有量は、10〜95質量%が好ましく、30〜95質量%がより好ましい。上記下限値未満では、服用量が多くなりすぎて、利便性の面で好ましくない。上記上限値超では、他の成分(例えば、結合剤等)の含有量が少なくなりすぎて、錠剤や丸剤を製造しにくいおそれがある。
(A)成分は、気管支拡張作用、鎮咳作用剤等を有していることから、風邪薬や咳止め薬等の有効成分として医薬品に用いられる。
(A)成分としては、エフェドリン、エフェドリン塩酸塩、(+)プソイドエフェドリン、(−)プソイドエフェドリン、(+)プソイドエフェドリン塩酸塩、(+)プソイドエフェドリン硫酸塩、(−)プソイドエフェドリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリン塩酸塩、l−メチルエフェドリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリンサッカリン塩、フェニルプロパノールアミン等が挙げられ、中でも、エフェドリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリン塩酸塩、l−メチルエフェドリン塩酸塩が好ましい。これらの(A)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
(B)成分は、制酸剤である。(B)成分としては、例えば、第十五改正日本薬局方(広川書店)又は医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集、株式会社薬事日報社)に収載のものが用いられる。(B)成分としては、例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロサルタイト、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムが挙げられ、中でも、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムが好ましく、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムゲルがより好ましい。
(C)成分は、カルメロース、クロスカルメロース及びこれらの塩から選択される1種以上である。エフェドリン(塩)含有粒子は、(C)成分を含有することで、(A)成分の含有量の低下が抑制されたものとなる。
本発明のエフェドリン(塩)含有粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)〜(C)成分以外の任意成分(以下、粒子任意成分ということがある)を含有してもよい。粒子任意成分としては、(A)成分及び(B)成分を除く薬効成分(任意薬効成分)や、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、芳香剤、香料、矯味剤(甘味料)、色素、安定化剤等が挙げられる。
任意薬効成分としては、例えば、解熱鎮痛消炎剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、鎮咳去痰剤等が挙げられる。解熱鎮痛消炎剤としては、イブプロフェン、アセトアミノフェン、フェナセチン、メフェナム酸、ジクロフェナク、アスピリン、エテンザミド、サリチルアミド、サリチル酸、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェンブフェン、メピリゾール、インドメタシン、ロキソプロフェン等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、シプロヘプタジン塩酸塩水和物、ジフェンヒドラミン、クレマスチンフマル酸塩、アゼラスチン塩酸塩、オキサトミド、メキタジン、エピナスチン塩酸塩、エバスチン、セチリジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、オロパタジン塩酸塩、ロラタジン等が挙げられる。
鎮咳去痰剤としては、コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン等が挙げられる。
これらの任意薬効成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
セルロース類の粉体としては、例えば、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。
糖類の粉体としては、キシロース等の単糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、異性化乳糖等の二糖又はオリゴ糖、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が挙げられる。
デンプン類の粉体としては、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、バレイショデンプン(ポテトスターチ)、コムギデンプン、コメデンプン等のデンプン;ヒドロキシプロピルスターチ、部分α化デンプン等のデンプン誘導体等が挙げられる。
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、デキストリン、デンプン、アルファー化デンプン等が挙げられる。
これらの賦形剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。これらの崩壊剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
エフェドリン(塩)含有粒子の製造方法としては、流動層造粒、攪拌造粒等、従来公知の造粒方法が挙げられる。
流動層造粒としては、例えば、以下の方法が挙げられる。(A)〜(C)成分及び必要に応じて粒子任意成分を混合して粉体混合物を得る。得られた粉体混合物を流動層造粒機に投入し、流動層造粒機内に60〜100℃の空気を送り込んで粉体混合物を流動させる。粉体混合物を流動させつつ、流動層造粒機内に結合液を噴霧して造粒して造粒粒子を得る(造粒工程)。
結合液としては、上述した結合剤の水分散液が挙げられる。
結合液中の結合剤の含有量は、結合剤の種類等を勘案して適宜決定され、例えば、1〜20質量%とされる。
結合液の量は、結合剤の種類や含有量等を勘案して適宜決定される。
さらに、得られたエフェドリン(塩)含有粒子群を篩分けしてもよい。
固形製剤は、剤形に応じて、エフェドリン(塩)含有粒子以外の任意成分(以下、特に製剤任意成分ということがある)を含有してもよい。
製剤任意成分としては、粒子任意成分と同様のものが挙げられる。
固形製剤の製造方法には、剤形に応じた公知の方法が用いられる。
例えば、エフェドリン(塩)含有粒子群をそのまま散剤としてもよいし、エフェドリン(塩)含有粒子群と粉体の製剤任意成分とを粉体混合して散剤としてもよい。
また、例えば、エフェドリン(塩)含有粒子及び必要に応じて製剤任意成分をカプセルに封入してカプセル剤としてもよい。
あるいは、エフェドリン(塩)含有粒子及び必要に応じて製剤任意成分とを混合し、この混合物を打錠機で成形して錠剤としてもよいし、製丸機によって成形して丸剤としてもよい。
加えて、本発明によれば、(C)成分を(A)成分及び(B)成分と併有させるという簡便な方法で、容易に(A)成分の含有量の低下を抑制できる。
<(A)成分>
dl−メチルエフェドリン塩酸塩:日本薬局方 dl−メチルエフェドリン塩酸塩(末)、アルプス薬品工業株式会社製。
<(B)成分>
乾燥水酸化アルミニウムゲル:日本薬局方 乾燥水酸化アルミニウムゲル(S−100)、協和化学工業株式会社製。
<(C)成分>
カルメロース:カルメロース(NS−300)、ニチリン化学工業株式会社製。
結晶セルロース:日本薬局方 結晶セルロース(セオラスPH−302)、旭化成ケミカルズ株式会社製。
D−マンニトール:PEARLITOL 50C、ロケットジャパン株式会社製。
乳糖水和物:乳糖水和物 200M、DMV社製。
ヒドロキシプロピルセルロース:HPC−L、日本曹達株式会社製。
軽質無水ケイ酸:日本薬局方 サイリシア350、有限会社ワイ・ケイ・エフ製。
デキストロメトルファン:アルプス薬品工業株式会社製。
無水カフェイン:白鳥製薬株式会社製。
ジヒドロコデインリン酸塩:第一三共プロファーマ株式会社製。
ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製。
<安定性:(A)成分の含有量の低下の抑制>
エフェドリン量(配合量換算)が20mgとなるように、各例の試料を量り取り、50mLの溶媒(アセトニトリル/リン酸(=1:1)溶液(pH1.8))に溶解して試料液とした。この試料液について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法(カラム:Inertsil ODS−SP、4.6mm×25cm、移動相(アセトニトリル:リン酸(=1:1)溶液(pH1.8)に1−オクタンスルホン酸ナトリウムを2.9g/Lとなるように溶解したもの))によって、(A)成分の含有量を測定した。この結果から、下記(1)式により、(A)成分の残存率(エフェドリン残存率)を求めた。このエフェドリン残存率を下記評価基準に従い、各例の安定性を評価した。エフェドリン残存率が高いほど、(A)成分の含有量の低下が良好に抑制されているといえる。
○:エフェドリン残存率が95質量%以上。
×:エフェドリン残存率が95質量%未満。
表1の組成に従い、ヒドロキシプロピルセルロース以外の各成分を混合して粉体混合物とした。得られた粉体混合物を流動層造粒機マルチプレックスMP−01(株式会社パウレック製)に投入し、吸気温度80℃、排気温度32〜45℃で、粉体混合物を流動させた。流動中の粉体混合物に、6質量%濃度のヒドロキシルプロピルセルロース水溶液を噴霧し、造粒して造粒粒子を得た。この際、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液の噴霧量を、ヒドロキシプロピルセルロースの固形分量が表1中の量となるようにした。造粒粒子を流動層造粒機中、吸気温度80℃で、排気温度55℃となるまで乾燥し、各例のエフェドリン(塩)含有粒子群を得た。得られたエフェドリン(塩)含有粒子群を篩分けして、粒子径50〜600μmとした。
得られたエフェドリン(塩)含有粒子群を試料として、エフェドリン残存率を測定し、その結果を表1に示す。
一方、(C)成分を含有しない比較例1−1〜1−2のエフェドリン残存率は、いずれも87質量%であった。
表2の組成に従った以外は、実施例1と同様にして、エフェドリン(塩)含有粒子群を製造した。表2に示す組成に従い、得られたエフェドリン(塩)含有粒子群と結晶セルロースとを混合し、これを目開き500μmの篩で篩過した後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムと混合して打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒をロータリー式打錠機(臼杵:二段R杵、φ9.0mm、12本立て。回転盤の回転数:30rpm。)により打錠して、質量402mg、φ9.0mmの錠剤を得た。なお、錠剤の硬度が6kNとなるよう、打錠圧を調整した。
得られた錠剤を粉砕して試料とし、エフェドリン残存率を測定し、その結果を表2に示す。
一方、(C)成分を含有しない比較例2−1〜2−2のエフェドリン残存率は、いずれも87質量%であった。
Claims (5)
- (A)成分:エフェドリン及び/又はその塩と、(B)成分:制酸剤と、(C)成分:カルメロースとを含有するエフェドリン(塩)含有粒子。
- エフェドリン(塩)含有粒子群の平均粒子径が50〜600μmである請求項1に記載のエフェドリン(塩)含有粒子。
- 前記(B)成分/前記(C)成分で表される質量比が1以下である請求項1又は2に記載のエフェドリン(塩)含有粒子。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のエフェドリン(塩)含有粒子を含有する固形製剤。
- 散剤、錠剤、丸剤又はカプセル剤である請求項4に記載の固形製剤。
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