JP5896933B2 - 溶接部の補修方法 - Google Patents

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Description

本発明は、配管を構成する管体どうしの溶接部の補修方法に関するものである。
発電プラント等におけるボイラの配管においては、内部を高温の流体が流れるため、長期間の運転による負荷によって、溶接部が劣化することがある。
このため、配管を点検する際に、溶接部について、劣化の発生の有無を組織検査や超音波検査等によって検査し、その結果に応じ、劣化部分の補修を行っている。
このような劣化部分を有した溶接部の補修方法として、例えば特許文献1には、図5に示すように、溶接部1だけでなく、その両側の母材2,3との境界部4,5を含む領域を除去し、その領域に補修溶接を施す構成が開示されている。
特開2011−194458号公報
しかしながら、図5に示したように、補修溶接を施すことによって形成された補修溶接金属部6は、溶接部1が連続する方向(母材2,3の突き合わせ方向に直交する方向)における一端側6aと他端側6bにおいて、溶接部1との境界部7,8が、溶接部1が連続する方向に対して直交することになる。
溶接部1が、配管を構成する所定長の管体9,9どうしを溶接した部分においては、溶接部1は、管体9の周方向に連続したものとなる。すると、管体9内を流れる流体による内圧によって、管体9および溶接部1は径方向外周側に膨張する方向の力が作用する。これにより、溶接部1においては、管体9の周方向に沿った応力(フープ応力)が発生する。すると、この応力に対し、溶接部1と補修溶接金属部6との境界部7,8が直交して位置することとなり、クリープ強度の低下につながる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、クリープ強度を向上させることのできる溶接部の補修方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の溶接部の補修方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、管体の端部どうしが溶接金属で前記管体の周方向に溶接された溶接部の補修方法であって、前記溶接金属と前記管体の境界部を含む領域を除去する工程と、除去された前記領域に補修溶接を施す工程と、を備え、前記領域は、前記周方向の一端側と他端側が、それぞれ前記周方向に直交する面に対し傾斜して形成されていることを特徴とする。
このようにして補修溶接がなされた溶接部において、補修溶接によって形成された補修溶接金属部は、管体の周方向の一端側と他端側において溶接部の溶接金属と接する部分が周方向に直交する面に対して傾斜する。すると、管体内を流れる流体の温度や圧力によって管体が膨張する方向の力を受けたときに、溶接部が周方向に延びるような応力を受けても、その応力によって補修溶接金属部と溶接部の溶接金属との境界部分でクリープ破壊しにくくなる。
ここで、前記の領域の一端側と他端側の傾斜角度は、25°以上であるのが好ましい。
また、前記領域は、前記溶接金属と、該溶接金属の両側の前記管体との境界部を含むようにするのが好ましい。
本発明は、前記管体が、該管体内を流れる流体による内圧で膨張する方向の力を受けるものである場合に特に有効である。
本発明によれば、周方向に連続する溶接部を補修溶接した場合に、補修溶接した部分と溶接部との境界部分におけるクリープ強度を向上させることができる。
本発明の溶接部の補修方法の流れを示す図である。 本発明の溶接部の補修方法により補修した部分を示す外観図および断面図である。 本発明の溶接部の補修方法により補修した補修溶接部と溶接金属部との境界部分の傾斜角度と、溶接部に周方向の応力が作用したときの境界部分に作用する応力の大きさとの関係を示す図である。 応力とクリープ破断時間との関係を示す図である。 従来の溶接部の補修方法により補修した部分を示す外観図である。
以下に、本発明に係る溶接部の補修方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、発電プラント等のボイラ用の配管10の一部を示すものである。この配管10は、高温・高圧の流体が内部を流れ、所定長の管体11を長手方向に複数接合することによって構成されている。
図1(a)に示すように、管体11,11どうしの接合部(溶接部)Jは、その端部11a,11aがそれぞれ所定の開先形状として突き合わせられ、周方向に沿って、アーク溶接、MIG(Metal Inert Gas)溶接、摩擦撹拌接合等の接合法により接合されている。これにより、管体11,11どうしの接合部には、周方向に連続する環状の溶接金属部(溶接金属)12が形成されている。配管10が連続する方向において、この溶接金属部12とその両側の管体11との境界部に、溶接時の熱によって形成される熱影響部が形成されている。
このような配管10において、ボイラの運転を長時間にわたって行っていくと、接合部Jに、クリープボイドや結晶流の粗大化といった劣化が生じることがあるため、定期的に、組織検査や超音波検査等によって検査する。
検査の結果、接合部Jに劣化の発生が認められた場合、以下のようにして補修を行う。
まず、図1(b)、図2に示すように、接合部Jにおいて劣化が発生した部分を除去する。これには、配管10の外周側から、配管10の周方向においては、溶接金属部12において劣化が発生している部分を含み、かつ、配管10の長手方向においては、溶接金属部12とその両側の管体11,11の一部とを含み、配管10の肉厚方向においては、配管10の内周側の一部を残した領域50を除去する。
このとき、この領域50において、配管10の周方向の一端部50aと他端部50bは、管体10の周方向(溶接金属部12が連続する方向)に直交し、かつ配管10の管軸方向、管体11,11どうしの突き合わせ方向に平行な仮想面Fに対し、所定角度θだけ傾斜するよう形成する。つまり、配管10の外周側から見たときに、領域50が、平行四辺形状または台形状となるようにする。
このようにして、配管10の接合部Jにおいて所定の領域50を除去することによって除去凹部15を形成した後、この除去凹部15に、被覆アーク溶接等によって、補修溶接を施す。図1(c)に示すように、この補修溶接により、除去凹部15には補修溶接金属部20が形成される。補修溶接金属部20は、除去凹部15を埋めるように形成される。
ここで、領域50の一端部50aと他端部50bが、管体10の周方向に直交する仮想面Fに対し所定角度θだけ傾斜しているので、補修溶接により形成される補修溶接金属部20は、配管10の周方向における溶接金属部12との境界面20a,20bが、溶接金属部12が連続する方向に直交する仮想面Fに対し、所定角度θだけ傾斜して形成されている。
ここで、境界面20a,20bの傾斜角度θは、25°以上90°未満とするのが好ましく、さらには、40°以上50°未満とするのが特に好ましい。
このように、補修溶接金属部20において、溶接金属部12との境界面20a,20bが、溶接金属部12が連続する方向に直交する仮想面Fに対し、所定角度θだけ傾斜するよう形成した構成においては、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、図2(a)に示すように、配管10内の高温・高圧の流体によって溶接金属部12が径方向外周側に膨張する方向の力が作用し、溶接金属部12に周方向に沿った応力(フープ応力)S1が発生したとする。すると、この応力S1による、補修溶接金属部20の境界面20a,20b(図3参照)に直交する方向の応力S2は、応力S1の分力であり、応力S1よりも小さくなる。
図3は、境界面20a,20bの傾斜角度θと、溶接金属部12の周方向に沿った応力S1に対する境界面20a,20bに直交する方向の応力S2の比との関係を示したものである。
この図3に示すように、傾斜角度θが大きくなるほど、応力S2は小さくなる。例えば、傾斜角度θが25°である場合、応力S1に対し、応力S2は10%以上低減する。
また、図4は、例えば、ボイラ用の配管に多用されているGr.91系鋼の溶接継ぎ手における応力の大きさに対するクリープ破断に至るまでの寿命の関係を示すものである。
この図4に示すように、作用する応力が下がれば、クリープ破断に至るまでの時間(破断時間)が長くなる。
上述したように、溶接金属部12との境界面20a,20bを傾斜させることによって、補修溶接金属部20と溶接金属部12との境界面20a,20bにおけるクリープ強度が高まり、クリープ破断に至るまでの時間も長くなる。
10 配管
11 管体
12 溶接金属部(溶接金属)
15 除去凹部
20 補修溶接金属部
20a,20b 境界面
50 領域
J 接合部(溶接部)

Claims (4)

  1. 管体の端部どうしが溶接金属で前記管体の周方向に溶接された溶接部の補修方法であって、
    前記溶接金属と前記管体の境界部を含む領域を除去する工程と、
    除去された前記領域に補修溶接を施す工程と、を備え、
    前記領域は、前記周方向の一端側と他端側が、それぞれ前記周方向に直交する面に対し傾斜して形成されていることを特徴とする溶接部の補修方法。
  2. 前記領域の一端側と他端側の傾斜角度が25°以上であることを特徴とする請求項1に記載の溶接部の補修方法。
  3. 前記領域は、前記溶接金属と、該溶接金属の両側の前記管体との境界部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部の補修方法。
  4. 前記管体が、該管体内を流れる流体による内圧で膨張する方向の力を受けるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の溶接部の補修方法。
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