JP2011194458A - 補修溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】突合せ溶接部に補修溶接を施す際に、新たにクリープボイド又は結晶粒の粗大化が発生しやすい領域が形成されることを回避して、補修後において、突合せ溶接部の寿命を確実に延ばすことができる補修溶接方法を提供する。
【解決手段】第一母材13aと第二母材13bを突合せ溶接した溶接部Wの補修方法であって、溶接部Wのうち、第一母材13aとの境界部B1a及び第二母材13bとの境界部B1bの両者を含むと共に第一母材13a及び第二母材13bの表面から厚み方向に深さを有する領域を、その領域の底面20Bが表面に沿うように除去する工程と、その領域に補修溶接(20)する工程と、を有する。
【選択図】図3
【解決手段】第一母材13aと第二母材13bを突合せ溶接した溶接部Wの補修方法であって、溶接部Wのうち、第一母材13aとの境界部B1a及び第二母材13bとの境界部B1bの両者を含むと共に第一母材13a及び第二母材13bの表面から厚み方向に深さを有する領域を、その領域の底面20Bが表面に沿うように除去する工程と、その領域に補修溶接(20)する工程と、を有する。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えば、火力・原子力発電プラントや化学プラント等におけるボイラの高温配管における溶接部の補修溶接方法に関する。
近年、例えば、火力・原子力発電プラントや化学プラント等におけるボイラの高温配管においては、運転時間が長時間に及ぶに従い設備の劣化、頻繁な起動停止や急速な負荷変動による熱疲労などを十分に考慮した保守管理が重要になってきている。
例えば、高温耐圧金属が用いられる大口径肉厚配管では、溶接部における劣化を早期に発見するため、定期的に組織検査、超音波検査などの非破壊検査が行われ、その結果に基づいて、欠陥部分の補修を行っている。
その補修技術としては、欠陥部分を両側もしくは片側から切除し、その切除した部分に肉盛溶接を施す方法が採られている。
その補修技術としては、欠陥部分を両側もしくは片側から切除し、その切除した部分に肉盛溶接を施す方法が採られている。
大口径肉厚配管としては、高クロム鋼(high chrominum steel)が使用されている。そして、長期の使用により高温耐圧溶接部においてはクリープボイド又は結晶粒の粗大化が生じる。このクリープボイド等の損傷は、強度低下による破断などの要因になるおそれがある。
このクリープ損傷が肉厚配管の溶接部に生じた場合には、配管であることからクリープ損傷部分を厚さ方向にわたって全て除去することが困難となる。
このクリープ損傷が肉厚配管の溶接部に生じた場合には、配管であることからクリープ損傷部分を厚さ方向にわたって全て除去することが困難となる。
そこで、前述した補修方法により、特にクリープボイド又は結晶粒の粗大化が多く発生する溶接熱影響部(HAZ部)を表面側から所定の条件に適合するように部分的に取り除き、再溶接(補修溶接)をする技術が提案されている(特許文献1参照)。
従来の補修方法(特許文献1等)を用いた場合には、クリープボイド等の損傷が取り除かれるので、配管の溶接の延命を図ることができる。
ところが、発明者らは、突合せ溶接部に補修溶接を施した部材に対して、クリープ試験(JISZ2271)を行った結果、補修溶接を施したことで新たにクリープボイド又は結晶粒の粗大化が発生しやすい領域が発生することを確認した。
具体的には、図6に示すように、突合せ溶接部Wのうち、補修溶接部120との境界(第二境界部B2)近傍に、新たにクリープボイド又は結晶粒の粗大化が発生しやすいことを確認した。
具体的には、図6に示すように、突合せ溶接部Wのうち、補修溶接部120との境界(第二境界部B2)近傍に、新たにクリープボイド又は結晶粒の粗大化が発生しやすいことを確認した。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、突合せ溶接部に補修溶接を施す際に、新たにクリープボイド又は結晶粒の粗大化が発生しやすい領域が形成されることを回避して、補修後において、突合せ溶接部の寿命を確実に延ばすことができる補修溶接方法を提供することを目的とする。
本発明に係る補修溶接方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係る補修溶接方法は、第一母材と第二母材を突合せ溶接した溶接部の補修方法であって、前記溶接部のうち、前記第一母材との境界部及び前記第二母材との境界部の両者を含むと共に前記第一母材及び第二母材の表面から厚み方向に深さを有する領域を、当該領域の底面が前記表面に沿うように除去する工程と、前記領域に補修溶接する工程と、を有することを特徴とする。
本発明に係る補修溶接方法は、第一母材と第二母材を突合せ溶接した溶接部の補修方法であって、前記溶接部のうち、前記第一母材との境界部及び前記第二母材との境界部の両者を含むと共に前記第一母材及び第二母材の表面から厚み方向に深さを有する領域を、当該領域の底面が前記表面に沿うように除去する工程と、前記領域に補修溶接する工程と、を有することを特徴とする。
また、前記境界部は、突合せ溶接による熱影響部を含むことを特徴とする。
また、前記深さは、前記溶接部又は前記境界部に発生した損傷よりも深いことを特徴とする。
また、水蒸気を発生させる蒸気ボイラに接続する蒸気配管の溶接部の補修溶接方法として、上述の補修方法を用いることを特徴とする。
また、前記蒸気配管は、前記蒸気ボイラの過熱器又は再熱器に接続する蒸気配管であることを特徴とする
本発明によれば、突合せ溶接部に補修溶接を施した場合であっても、新たにクリープボイド又は結晶粒の粗大化が発生しやすい領域が形成されることが回避できるので、補修後において、突合せ溶接部の寿命を確実に延ばすことができる。
また、上記補修溶接法を、水蒸気を発生させる蒸気ボイラに接続される蒸気配管の溶接部の補修溶接に適用したので、蒸気ボイラの強度を長期的に保障することができる。
また、上記補修溶接法を、水蒸気を発生させる蒸気ボイラに接続される蒸気配管の溶接部の補修溶接に適用したので、蒸気ボイラの強度を長期的に保障することができる。
以下、本発明の実施形態に係る補修溶接方法ついて、図面を参照して説明する。
(発電プラント及び蒸気ボイラ)
図1に示す発電プラントの配管系統図において、発電プラント1は、燃料を燃焼させることにより過熱蒸気を発生させる蒸気ボイラ2と、この蒸気ボイラ2で発生した過熱蒸気が後述する配管を介して供給される蒸気タービン3と、蒸気タービン3により駆動される発電機4とから構成されている。
(発電プラント及び蒸気ボイラ)
図1に示す発電プラントの配管系統図において、発電プラント1は、燃料を燃焼させることにより過熱蒸気を発生させる蒸気ボイラ2と、この蒸気ボイラ2で発生した過熱蒸気が後述する配管を介して供給される蒸気タービン3と、蒸気タービン3により駆動される発電機4とから構成されている。
蒸気ボイラ2は、例えば、石炭等の燃料を燃焼させることで、水を加熱して蒸気を発生させる熱交換器の一種であり、一次過熱蒸気を発生させる過熱器10と後述する高圧タービンT1から導入された蒸気を再過熱して二次過熱蒸気を発生させる再熱器12とを備えている。
蒸気タービン3は、過熱器10で発生した一次過熱蒸気によって駆動される一次タービンとしての高圧タービンT1と、再熱器12で再加熱された二次過熱蒸気によって駆動される二次タービンとしての中圧タービンT2と、中圧タービンT2からの排気によって駆動される低圧タービンT3とを備えている。
蒸気ボイラ2における過熱器10の出口側は、第1の蒸気配管6により高圧タービンT1の一端側と連通接続されており、高圧タービンT1の他端側は、第2の蒸気配管7により蒸気ボイラ2の再熱器12入口側と連通接続されている。これにより、過熱器10から供給される一次過熱蒸気は、高圧タービンT1の一端側に導入されると共に高圧タービンT1の他端側から排気される過熱蒸気は再熱器12に導入されて再過熱されるようになっている。
また、再熱器12の出口側は、第3の蒸気配管8により中圧タービンT2の一端側に連通接続されており、中圧タービンT2の他端側は、第4の蒸気配管9により低圧タービンT3と連通接続されている。
夫々のタービンT1,T2及びT3の回転軸は、これと同軸上にある発電機4の回転軸と連結され、この回転軸が各タービンT1,T2及びT3によって回転駆動されて発電される。
上記発電プラント1における蒸気ボイラ2の過熱器10や再熱器12に接続される蒸気配管6,8等には、高クロム鋼からなる鋼管が使用される。
なお、高クロム鋼は、約9〜12wt%のクロムを含むフェライト系耐熱鋼であって、高クロム耐熱鋼とも呼ばれている。例えば、約1〜2wt%のMo(モリブデン)を含み、クリープ強度を向上させるために微量のV(酸化ニオブ)やNb(ニオブ)等が添加されている。
特に、耐用温度は約600〜650℃以下で、発電用ボイラ、タービン、原子炉等に用いられている。
特に、耐用温度は約600〜650℃以下で、発電用ボイラ、タービン、原子炉等に用いられている。
次に発電プラント1の作動に付き説明する。
蒸気ボイラ2に導入された水は、過熱器10によって過熱されて一次過熱蒸気となる。この一次過熱蒸気は、第1の蒸気配管6を送気して高圧タービンT1の一端側に導入されて高圧タービンT1を作動させる。高圧タービンT1の他端側から排気された過熱蒸気は、第2の蒸気配管7を送気して再熱器12に導入されて約600〜650℃以下の二次過熱蒸気となる。
蒸気ボイラ2に導入された水は、過熱器10によって過熱されて一次過熱蒸気となる。この一次過熱蒸気は、第1の蒸気配管6を送気して高圧タービンT1の一端側に導入されて高圧タービンT1を作動させる。高圧タービンT1の他端側から排気された過熱蒸気は、第2の蒸気配管7を送気して再熱器12に導入されて約600〜650℃以下の二次過熱蒸気となる。
再熱器12の出口側から排気されて中圧タービンT2の一端側に導入された二次過熱蒸気は、中圧タービンT2を作動させた後、第4の蒸気配管9を介して低圧タービンT3へ導入され、この低圧タービンT3を作動させる。
このようにして、蒸気タービン3を構成する高圧タービンT1、中圧タービンT2及び低圧タービンT3が作動して発電機4を駆動することで電力が発生する。
このようにして、蒸気タービン3を構成する高圧タービンT1、中圧タービンT2及び低圧タービンT3が作動して発電機4を駆動することで電力が発生する。
(蒸気配管)
次に、発電プラント1で使用される蒸気配管6,8等に付き、図2を参照して説明する。
図2には、突合せ溶接した曲がり蒸気配管Eの断面図が示されている。曲がり蒸気配管E(エルボ)は、高クロム鋼からなる複数の鋼管を繋ぎ合わせて構成したものであって、その繋ぎ合わせ部分(複数個所)には、突合せ溶接した溶接部Wが形成されている。
次に、発電プラント1で使用される蒸気配管6,8等に付き、図2を参照して説明する。
図2には、突合せ溶接した曲がり蒸気配管Eの断面図が示されている。曲がり蒸気配管E(エルボ)は、高クロム鋼からなる複数の鋼管を繋ぎ合わせて構成したものであって、その繋ぎ合わせ部分(複数個所)には、突合せ溶接した溶接部Wが形成されている。
(補修溶接法)
次に、本発明の第一実施形態に係る補修溶接方法に付き図3を参照して説明する。
図3は、図2のA部を拡大した部分拡大図(模式図)である。図3において、溶接部Wは、上部が蒸気配管Eの外周面を示し下部が内周面(配管内部側面)を示している。
なお、図3(a),(b)では、説明の都合上、各部材の寸法を適宜変更している。
次に、本発明の第一実施形態に係る補修溶接方法に付き図3を参照して説明する。
図3は、図2のA部を拡大した部分拡大図(模式図)である。図3において、溶接部Wは、上部が蒸気配管Eの外周面を示し下部が内周面(配管内部側面)を示している。
なお、図3(a),(b)では、説明の都合上、各部材の寸法を適宜変更している。
溶接部Wは、高クロム鋼からなる鋼管、すなわち、第一母材13aと第二母材13bの端部を突合せ溶接した部分である。
溶接部Wと第一母材13aの間には、第一境界部B1aが形成される。同様に、溶接部Wと第二母材13bの間には、第一境界部B1bが形成される。
溶接部Wと第一母材13aの間には、第一境界部B1aが形成される。同様に、溶接部Wと第二母材13bの間には、第一境界部B1bが形成される。
第一境界部B1aと第一境界部B1bには、溶接熱影響部16a,16bが含まれている。これら溶接熱影響部16a,16bは、第一境界部B1aと第一境界部B1bの外側に沿うように第一母材13aと第二母材13bに形成される。
本実施形態に係る補修溶接方法では、先ず超音波探傷などの非破壊検査により曲がり蒸気配管Eの外周面側から溶接部Wを検査する。
これにより、図3(a)に示すように、例えば、第一境界部B1bの近傍にクリープボイド又は結晶粒の粗大化などの損傷Cが探査される。
これにより、図3(a)に示すように、例えば、第一境界部B1bの近傍にクリープボイド又は結晶粒の粗大化などの損傷Cが探査される。
そこで、溶接部Wの一部、すなわち、クリープボイド又は結晶粒の粗大化などの損傷Cが存在する部位を除去する(図3(b)参照)。
具体的には、発見された損傷Cを完全に除去するために、板厚方向(厚みTの方向)において、損傷Cよりも深い領域(深さD)を表面側から除去する。この際、第一母材13aとの第一境界部B1a及び第二母材13bとの第一境界部B1bの両方を含む領域を除去する。
更に、除去される領域の底面20Bが、第一母材13a及び第二母材13bの表面(裏面)に沿うように除去(形成)する。なお、表面(裏面)に沿うようにとは、第一母材13a及び第二母材13bの表面(裏面)に倣って円弧状にとの意味を含む。
具体的には、発見された損傷Cを完全に除去するために、板厚方向(厚みTの方向)において、損傷Cよりも深い領域(深さD)を表面側から除去する。この際、第一母材13aとの第一境界部B1a及び第二母材13bとの第一境界部B1bの両方を含む領域を除去する。
更に、除去される領域の底面20Bが、第一母材13a及び第二母材13bの表面(裏面)に沿うように除去(形成)する。なお、表面(裏面)に沿うようにとは、第一母材13a及び第二母材13bの表面(裏面)に倣って円弧状にとの意味を含む。
次いで、図3(b)に示すように、除去された領域に新たな溶接金属を補修して、補修溶接部20を形成する。
なお、新たな溶接金属、すなわち補修溶接部20は、溶接部Wと同一材料である。また、補修溶接部20の形成方法(溶接方法)としては、アーク溶接、MIG溶接などの従来の溶接方法を用いる。
なお、新たな溶接金属、すなわち補修溶接部20は、溶接部Wと同一材料である。また、補修溶接部20の形成方法(溶接方法)としては、アーク溶接、MIG溶接などの従来の溶接方法を用いる。
(補修溶接部のクリープ試験)
ここで、上述した補修溶接方法を採用した根拠について説明する。
具体的には、補修溶接部のクリープ試験に付き、図4(a)〜(c)を参照して説明する。
このクリープ試験(JISZ2271)は、図6に示す溶接部Wに対して行ったものある。
ここで、上述した補修溶接方法を採用した根拠について説明する。
具体的には、補修溶接部のクリープ試験に付き、図4(a)〜(c)を参照して説明する。
このクリープ試験(JISZ2271)は、図6に示す溶接部Wに対して行ったものある。
図6に示す溶接部Wは、従来の補修溶接を施したもの、すなわち、損傷Cの近傍領域のみ(溶接部Wと第二母材13bとの第一境界部B1b含む領域)を除去したものである。言い換えれば、第一境界部B1aを残しつつ、第一境界部B1bを含む領域のみを除去する。
そして、除去された領域に、新たな溶接金属を補修して、補修溶接部120を形成している。
なお、溶接部Wのうち、補修溶接部120との境界を第二境界部B2と呼ぶ。
そして、除去された領域に、新たな溶接金属を補修して、補修溶接部120を形成している。
なお、溶接部Wのうち、補修溶接部120との境界を第二境界部B2と呼ぶ。
図4(a)〜(c)は、母材と溶接部の境界部における応力-寿命時間の関係図である。
図4(a)〜(c)において、縦軸は応力(MPa)を示し、横軸は寿命時間(h)を示している(両対数グラフ)。
そして、曲線M1は、母材自体(高クロム鋼)のクリープ強度曲線を示す。曲線B1は、第一境界部B1(第一境界部B1a,B1b)のクリープ強度曲線を示す。曲線B2は、第二境界部B2のクリープ強度曲線を示す。
図4(a)〜(c)において、縦軸は応力(MPa)を示し、横軸は寿命時間(h)を示している(両対数グラフ)。
そして、曲線M1は、母材自体(高クロム鋼)のクリープ強度曲線を示す。曲線B1は、第一境界部B1(第一境界部B1a,B1b)のクリープ強度曲線を示す。曲線B2は、第二境界部B2のクリープ強度曲線を示す。
図4(a)は、675℃におけるクリープ強度を示す図である。
図4(a)に示すように、675℃で4Mpaの引張応力を作用させた場合には、母材自体の寿命時間を1とすると、第一境界部B1の寿命時間は2/3、第二境界部B2の寿命時間は1/4程度である(つまり短寿命)ことが確認できる。
図4(a)に示すように、675℃で4Mpaの引張応力を作用させた場合には、母材自体の寿命時間を1とすると、第一境界部B1の寿命時間は2/3、第二境界部B2の寿命時間は1/4程度である(つまり短寿命)ことが確認できる。
図4(b)は、650℃におけるクリープ強度を示す図である。
図4(b)に示すように、650℃で6Mpaの引張応力を作用させた場合には、母材自体の寿命時間を1とすると、第一境界部B1の寿命時間は1/2、第二境界部B2の寿命時間は1/6程度である(つまり短寿命)ことが確認できる。
図4(b)に示すように、650℃で6Mpaの引張応力を作用させた場合には、母材自体の寿命時間を1とすると、第一境界部B1の寿命時間は1/2、第二境界部B2の寿命時間は1/6程度である(つまり短寿命)ことが確認できる。
図4(c)は、625℃におけるクリープ強度を示す図である。
図4(c)に示すように、625℃で8Mpaの引張応力を作用させた場合には、母材自体の寿命時間を1とすると、第一境界部B1の寿命時間は1/2、第二境界部B2の寿命時間は1/4程度である(つまり短寿命)ことが確認できる。
図4(c)に示すように、625℃で8Mpaの引張応力を作用させた場合には、母材自体の寿命時間を1とすると、第一境界部B1の寿命時間は1/2、第二境界部B2の寿命時間は1/4程度である(つまり短寿命)ことが確認できる。
図4(a)〜(c)から明らかなように、第二境界部B2、すなわち、溶接部Wと補修溶接部120との境界近傍が、最もクリープ強度が低い領域であると認められる。つまり、最初の溶接部(溶接部W)と後から追加した溶接部(補修溶接部120)との境界近傍が最もクリープ強度が低い領域であると認められる。
したがって、図3(b)に戻って説明すると、補修溶接部20を施す際には、最初の溶接部(溶接部W)と後から追加した溶接部(補修溶接部20)との境界が形成されないようにすることが望ましい。
そこで、図3(b)に示すように、損傷Cを完全に除去する際には、溶接部Wと第一母材13aとの第一境界部B1a及び溶接部Wと第二母材13bとの第一境界部B1bの両方を含む領域を除去する。
これにより、溶接部Wと補修溶接部20との境界は、最小限に抑えられる。つまり、溶接部Wと補修溶接部20との境界は、少なくとも、第一境界部B1a及び第二母材13bの厚み方向に沿う方向においては、形成されないことになる。
なお、溶接部Wと補修溶接部20との境界は、全く無くなる訳ではない。第二境界部B2cが、補修溶接部20の底面20Bにほぼ一致して、第一境界部B1a及び第二母材13bの表面(裏面)に沿う方向においてのみ形成される。
なお、溶接部Wと補修溶接部20との境界は、全く無くなる訳ではない。第二境界部B2cが、補修溶接部20の底面20Bにほぼ一致して、第一境界部B1a及び第二母材13bの表面(裏面)に沿う方向においてのみ形成される。
このように、溶接部Wと補修溶接部20との境界が皆無とならないものの、第二境界部B2cの近傍にクリープボイド又は結晶粒の粗大化等の損傷が発生したとしても、クリープ強度の低下は殆どないほど小さい。
なぜなら、損傷が発生する方向(第一境界部B1a及び第二母材13bの表面に沿う方向)と応力の作用方向が一致するからである。
なぜなら、損傷が発生する方向(第一境界部B1a及び第二母材13bの表面に沿う方向)と応力の作用方向が一致するからである。
つまり、図3(a)に示す損傷Cのように、その発生方向と応力の作用方向がほぼ垂直に交差する場合には、力の作用方向と力の作用面(損傷Cの発生面)がほぼ垂直となるので、損傷Cの全体に引張応力が作用して、クリープボイドは亀裂となって発展する。
これに対して、第二境界部B2cの近傍(第一境界部B1a及び第二母材13bの表面に沿う方向)に損傷が発生したとしても、力の作用方向と力の作用面(損傷の発生面)がほぼ平行となるので、損傷の全体に引張応力が作用することはない。したがって、クリープボイドが亀裂となって発展することもない。
これに対して、第二境界部B2cの近傍(第一境界部B1a及び第二母材13bの表面に沿う方向)に損傷が発生したとしても、力の作用方向と力の作用面(損傷の発生面)がほぼ平行となるので、損傷の全体に引張応力が作用することはない。したがって、クリープボイドが亀裂となって発展することもない。
このような理由から、図3(b)に示すように、補修溶接部20(溶接部Wの除去領域)の底面20Bを、第一母材13a及び第二母材13bの表面(裏面)に沿うように形成している。
よって、第一実施形態に係る補修溶接方法によれば、突合せ溶接部Wに補修溶接(補修溶接部20)を施した場合であっても、新たにクリープボイド又は結晶粒の粗大化が発生しやすい領域(クリープボイドが亀裂に進展しやすい領域)が形成されることを回避できるので、補修後において、突合せ溶接部Wの寿命を確実に延ばすことができる。
また、この補修溶接法を、水蒸気を発生させる蒸気ボイラ2に接続される蒸気配管6,8等の溶接部の補修溶接に適用することで、補修溶接部の強度を長期的に保障することができる。
なお、溶接部Wから除去される領域は、必ずしも第一母材13aと第二母材13bの表面に沿う方向に均等な深さでなくても良い。すなわち、クリープボイド又は結晶粒の粗大化等の損傷Cが含まれる第二母材13b側のみを部分的に深く形成しても良い。
なお、前述した実施の形態で示した補修溶接方法は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
上述した実施形態において、溶接部Wの一部を除去する際に、その領域の底面20Bが、第一母材13a及び第二母材13bの表面(裏面)に沿うように除去する場合について説明した(図3(b)参照)が、これに限らない。
図5に示すように、除去した領域の底面20Bが平坦となる場合であってもよい。例えば、溶接部Wの一部を除去する際に、フラットエンドミルを用いたい場合には、底面20Bが図5に示す形状となる。この場合においては、底面20Bは、溶接部Wの表面(裏面)に接する接線に対してほぼ平行となるように除去する。特に、溶接部Wの幅方向の中央表面に接する接線に対して平行となるように除去することが好ましい。これにより、上述した実施形態とほぼ同一の効果が得られる。
なぜなら、第一母材13a及び第二母材13bは、蒸気配管6,8であり、その直径は数メートルであるのに対して、溶接部Wの断面幅は数ミリメートル程度である。このため、溶接部Wの一部を除去した領域の底面20Bが、溶接部Wの幅方向の表面(裏面)に接する接線に対してほぼ平行となる場合であれば、第一母材13a及び第二母材13bに作用する力の作用方向と力の作用面(損傷の発生面)もほぼ平行となる。
したがって、図5に示す場合であっても、第二境界部B2cの近傍(第一境界部B1a及び第二母材13bの表面に沿う方向)に損傷が発生したとしても、この損傷の全体に引張応力が作用することはなく、クリープボイドが亀裂となって発展することはない。
図5に示すように、除去した領域の底面20Bが平坦となる場合であってもよい。例えば、溶接部Wの一部を除去する際に、フラットエンドミルを用いたい場合には、底面20Bが図5に示す形状となる。この場合においては、底面20Bは、溶接部Wの表面(裏面)に接する接線に対してほぼ平行となるように除去する。特に、溶接部Wの幅方向の中央表面に接する接線に対して平行となるように除去することが好ましい。これにより、上述した実施形態とほぼ同一の効果が得られる。
なぜなら、第一母材13a及び第二母材13bは、蒸気配管6,8であり、その直径は数メートルであるのに対して、溶接部Wの断面幅は数ミリメートル程度である。このため、溶接部Wの一部を除去した領域の底面20Bが、溶接部Wの幅方向の表面(裏面)に接する接線に対してほぼ平行となる場合であれば、第一母材13a及び第二母材13bに作用する力の作用方向と力の作用面(損傷の発生面)もほぼ平行となる。
したがって、図5に示す場合であっても、第二境界部B2cの近傍(第一境界部B1a及び第二母材13bの表面に沿う方向)に損傷が発生したとしても、この損傷の全体に引張応力が作用することはなく、クリープボイドが亀裂となって発展することはない。
1…発電プラント、 2…蒸気ボイラ、 6,8,E…蒸気配管(溶接部材)、 10…過熱器、 12…再熱器、 13a…第一母材、 13b…第二母材、 20…補修溶接部、 20B…底面、 B1(B1a,B1b)…第一境界部、 B2,B2c…第二境界部、 C…損傷、 D…深さ、 W…溶接部
Claims (5)
- 第一母材と第二母材を突合せ溶接した溶接部の補修方法であって、
前記溶接部のうち、前記第一母材との境界部及び前記第二母材との境界部の両者を含むと共に前記第一母材及び第二母材の表面から厚み方向に深さを有する領域を、当該領域の底面が前記表面に沿うように除去する工程と、
前記領域に補修溶接する工程と、
を有することを特徴とする補修溶接方法。 - 前記境界部は、突合せ溶接による熱影響部を含むことを特徴とする請求項1に記載の補修溶接方法。
- 前記深さは、前記溶接部又は前記境界部に発生した損傷よりも深いことを特徴とする請求項1又は2に記載の補修溶接方法。
- 水蒸気を発生させる蒸気ボイラに接続する蒸気配管の溶接部の補修溶接方法として、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の補修方法を用いることを特徴とする補修溶接方法。
- 前記蒸気配管は、前記蒸気ボイラの過熱器又は再熱器に接続する蒸気配管であることを特徴とする請求項4に記載の補修溶接方法。
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