JP5895266B2 - 鍛造物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、鍛造物及びその製造方法に関し、より詳細には、熱間鍛造により成形される鍛造物であって、切削加工やドリル孔空加工等のような機械加工が施される際の被削性に優れた鍛造物に関する。
自動車や建設機械等のギアやシャフト(例えば、自動車のカウンターギアシャフト、メインシャフト、インプットシャフト、アウトプットシャフト等)等の高強度及び/又は高信頼性が要求される鋼製部品は、原料鋼を熱間鍛造して該鋼製部品の形状に近い形状を有する鍛造物とした後、該鍛造物に切削加工やドリル孔空加工等のような機械加工を施すことで最終的な該鋼製部品として使用に供される。かかる鍛造物への機械加工において、機械加工に要するコスト削減が望まれており、これを実現するために機械加工される鍛造物の硬度が低く切削が容易な被削性に優れた鍛造物が求められる。
また、自動車や建設機械等のギアやシャフト等のような鋼製部品は、表面が硬く高摩耗性であると共に中心部は粘りのある高耐衝撃性であることが好ましいことから、熱間鍛造により成形される鍛造物は機械加工を施すまでは柔らかく、最終的な鋼製部品となった際には表面が硬いことが要求される。このために原料鋼として低炭素鋼(肌焼鋼)を用いて熱間鍛造した鍛造物に切削等の機械加工を施した後、その表面から炭素を侵入拡散(浸炭)させて焼入れすることで表面を硬化させる処理(肌焼)を行うことが知られている。
低炭素鋼(肌焼鋼)を用いて熱間鍛造した鍛造物は、熱間鍛造後に鍛造物を放冷することで粗大なベイナイトを含んだ硬質組織が生成することで、硬質組織による被削性の悪化や粗大組織による浸炭及び焼入れ時の歪の発生といった問題を生じ得る。そのため、熱間鍛造後の鍛造物に焼準を施し、軟質で微細な(フェライト+パーライト)組織に整えることによって、被削性を改善し、その後の浸炭及び焼入れ時の歪発生を防止している。
しかしながら、近年、製造コスト低減や省エネルギーの観点から、焼準の省略が検討されており、熱間鍛造の後に焼準を施さなくとも被削性に優れる鍛造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、「熱間鍛造の後に焼準を施さなくとも、切削加工における被削性に優れ、浸炭熱処理での歪の発生が少ない鍛造方法を提供する」(特許文献1の段落番号0006)ためになされた「肌焼鋼用構造用合金鋼の熱間鍛造素材を、下記(1)〜(5)の工程で処理することにより、50%以上のフェライト分率で結晶粒度番号が5番以上の細粒の(フェライト+パーライト)組織を得ることを特徴とする熱間鍛造品の製造方法。(1)鋼材を1100〜1200℃に加熱する工程、(2)加熱された鍛造素材を熱間鍛造し、その最終加工における温度を900〜1100℃の範囲で、鍛錬比を1.5以上で鍛造する工程、(3)熱間鍛造された高温の鍛造品を(フェライト+パーライト)変態の開始直前の650〜750℃まで強制空冷する工程、(4)(フェライト+パーライト)変態の開始直前の温度まで強制空冷された鍛造品の焼入性倍率(Di値)が95以下になるよう、合金元素量に応じて、加熱温度と最終加熱温度を設定し熱間鍛造する工程、但し、Di値=(炭素鋼のDi)×fSi×fMn×fNi×fCr×fMo 炭素鋼のDiは図4のγ粒度から求め、各合金元素の焼入倍数(fSi、fMn、fNi、fCr、fMo)は表6より読み取り求める。(5)Di値が95以下に調整された鍛造品を引き続いて冷却する際、700〜600℃の(フェライト+パーライト)変態域を5〜20℃/分の冷却速度で徐冷する工程。」(特許文献1の請求項1)を開示している。かかる特許文献1開示の熱間鍛造品の製造方法によれば「熱間鍛造、強制空冷および徐冷の工程だけで、切削加工において良好な被削性が得られ、かつ浸炭、熱処理時において歪の発生が小さい、肌焼鋼(構造用合金鋼)の熱間鍛造品が製造できる。よって、従来、鍛造後に施していた、焼準が省略できるので、製造コストを大きく低減することができる。また、この方法は、熱間鍛造の後に連続して強制空冷および徐冷を行うので、生産性が高い。さらに、徐冷においては、鍛造品の保有熱と徐冷ラインの保温だけで賄うので、熱エネルギー投入が不要の省エネ処理である。」(特許文献1の段落番号0008)という効果を奏する。
特開2012−125838号公報(例えば、要約、発明の詳細な説明中の段落番号0001〜0008、第7図等)
特許文献1開示の熱間鍛造品の製造方法においては、上述のような効果があるが、その一方で鍛造工程における鍛錬比が1.5以上であることや焼入性倍率(Di値)が95以下であることを要するため種々な熱間鍛造へ適用する際に制限される問題があった。
そこで、本発明では、熱間鍛造の後に焼準を施すことなく被削性に優れる鍛造物を製造可能な、様々な熱間鍛造へ広範に適用することができる鍛造物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の鍛造物の製造方法(以下、「本製造方法」という)は、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%の鋼材である原料鋼を熱間鍛造し、オーステナイト結晶粒の粒度番号が3番以上の粒径である中間体を形成する鍛造ステップと、鍛造ステップにて得られた中間体を660℃〜720℃の範囲に属する高温保持温度T3にて保持し中間体のフェライト分率を30%以上とする高温保持ステップと、高温保持ステップの後、T3(℃)からT5(℃)(但しT3−T5=10℃〜60℃)までを30℃/分以下の冷却速度で中間体を冷却する高温保持後冷却ステップと、を含んでなる、鍛造物の製造方法である。
本製造方法は、次の(1)〜(4)の態様を含む。
(1)高温保持後冷却ステップに引き続き、低温保持温度T5(℃)にて中間体を保持する低温保持ステップを含んでなる、本製造方法。
(2)T5(℃)=630℃〜660℃である、本製造方法。
(3)鍛造ステップにおける熱間鍛造の開始温度T1が1180℃〜1220℃である、本製造方法。
(4)鍛造ステップにおける熱間鍛造の終了温度T2が950℃〜1100℃である、本製造方法。
本発明は、鍛造物(以下、「本鍛造物」という。)を提供する。
本鍛造物は、第1本鍛造物と第2本鍛造物とを含む。
第1本鍛造物は、本製造方法により得られうる鍛造物である。
第2本鍛造物は、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%であって、フェライト分率が50%以上であると共にフェライトの平均粒径が27μm以上である、鍛造物である。
本鍛造物(第1本鍛造物及び第2本鍛造物)は、次の(I)及び(II)の態様を含む。
(I)100μm以上の粒径のパーライト粒が存しない、本鍛造物。
(II)表面硬さがHB170以下である、本鍛造物。
本製造方法によって原料鋼を熱間鍛造し熱処理して鍛造品(2段保持物)を製造した際の鋼材の温度変化を示すグラフである。 連続熱処理炉を模式的に示す断面図である。 比較例(1段保持物)を製造した際の鋼材の温度変化を示すグラフである。 比較例(焼準物、焼鈍物)を製造した際の鋼材の温度変化を示すグラフである。 実験条件及び結果を示す表である。 実験番号1により得られた鍛造物の顕微鏡写真である。 実験番号2により得られた鍛造物の顕微鏡写真である。 実験番号3により得られた鍛造物の顕微鏡写真である。 実験番号4により得られた鍛造物の顕微鏡写真である。 実験番号5により得られた鍛造物の顕微鏡写真である。 実験番号6により得られた鍛造物の顕微鏡写真である。
本発明者らは、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%の鋼材である原料鋼を熱間鍛造した中間体を、所定の温度範囲に属する温度T3にて保持した後、T3(℃)からT5(℃)(但しT3−T5=10℃〜60℃)までを30℃/分以下の冷却速度で冷却することによって得られる鍛造物は、鍛造物中のフェライト割合が高く(鍛造物が柔らかくなる)、鍛造物中のフェライトの粒径が大きく(鍛造物の削り性が向上する)、そして鍛造物中のパーライトの粒径を細かくする(後の浸炭熱処理での歪が生じにくい)ことによって、被削性が良く、後の浸炭熱処理において歪み発生が少ない鍛造物を得ることができることを見出した。
即ち、本製造方法は、前述の如く、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%の鋼材である原料鋼を熱間鍛造し、オーステナイト結晶粒の粒度番号が3番以上の粒径である中間体を形成する鍛造ステップと、鍛造ステップにて得られた中間体を660℃〜720℃の範囲に属する高温保持温度T3にて保持し中間体のフェライト分率を30%以上とする高温保持ステップと、高温保持ステップの後、T3(℃)からT5(℃)(但しT3−T5=10℃〜60℃)までを30℃/分以下の冷却速度で中間体を冷却する高温保持後冷却ステップと、を含んでなる、鍛造物の製造方法である。
本製造方法は、鍛造ステップと高温保持ステップと高温保持後冷却ステップとを含んでなる。
鍛造ステップは、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%の鋼材である原料鋼を熱間鍛造し、オーステナイト結晶粒の粒度番号が3番以上の粒径である中間体を形成する。
原料鋼は、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%の鋼材であり、好ましくは肌焼鋼と呼ばれる鋼材であり、その肌焼鋼としてはSCr415H、SCr420H、SCN415H、SCM420H、SCM822Hを例示することができる。この原料鋼中の炭素量があまり少ないと鍛造物中のフェライト分率が高くなりすぎ(鍛造物の硬さが非常に低くなってしまう)、逆に、原料鋼中の炭素量があまり多すぎると鍛造物中のフェライト分率が低くなりすぎる(鍛造物が硬くなる)ので、これらを両立する範囲として炭素量0.12重量%〜0.25重量%の原料鋼を用いる。
かかる原料鋼を用い、中間体に含まれるオーステナイト結晶粒の粒度番号が3番以上の粒径となるように熱間鍛造して中間体を形成する。ここにいうオーステナイト結晶粒の粒度番号とは「JIS G 0551」の鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に基づいた値をいう。中間体中のオーステナイト結晶粒の粒度は、小さくする(粒度番号が増加)には鍛造ステップにおける熱間鍛造の開始温度T1を低くすればよく(熱間鍛造開始温度T1を低くすることで、熱間鍛造温度及び熱間鍛造終了温度T2も連動して低くなる)、大きくする(粒度番号が減少)には鍛造ステップにおける熱間鍛造の開始温度T1を高くすればよい。中間体に含まれるオーステナイト結晶粒の粒度番号が3番以上とすることで、中間体の焼入性を低下させ高温保持ステップにてフェライト粒が析出しやすくなるが(鍛造物中のフェライト割合の増加)、あまりオーステナイト結晶粒を小さくしようとすると、変形抵抗が増し、鍛造成形が困難になるので、一般的にはオーステナイト結晶粒の粒度番号は5番以下としてもよい。なお、鍛造ステップで形成される中間体中のオーステナイト結晶粒度の求め方は、中間体を急速冷却し、高温時のオーステナイトをマルテンサイト化させることによって、オーステナイト粒をそのままマルテンサイト粒として室温まで受け継がせる。そして、マルテンサイト粒界を腐食液(ピクリン酸水溶液+表面活性剤)で優先腐食した後、マルテンサイト粒界を顕微鏡観察することによって行うことができる。
高温保持ステップは、鍛造ステップにて得られた中間体を660℃〜720℃の範囲に属する高温保持温度T3にて保持し中間体のフェライト分率を30%以上とする。
なお、鍛造ステップにおいて鍛造が完了する中間体の温度T2(℃)は温度T3(℃)よりも高温であるが、T2からT3への中間体の冷却は、最終的な鍛造物の組織に与える影響が小さいので放冷や強制空冷等のように自由に行うことができる。
中間体を保持する高温保持温度T3は、高いほど鍛造物中のフェライト割合を増加させ、フェライトの粒径を大きくでき、生成するパーライトの粒径を細かくでき好ましいが、反面、(フェライトとパーライトとの混合物)への変態速度が小さくなるので中間体中の所望フェライト分率を得るための時間を長く要する。この逆に、高温保持温度T3は、低いほど鍛造物中のフェライト割合が減少し、フェライトの粒径が小さくなり、生成するパーライトの粒径が大きくなり好ましくないが(フェライト析出だけでなくパーライト変態の割合が増加して起こるようになり、フェライトの成長や増加が妨げられる。従って、多数のフェライトが分散した好ましい前組織が得がたくなる。)、反面、(フェライトとパーライトとの混合物)への変態速度が大きくなるので変態に要する時間が短くなる。これら両方を両立するよう高温保持温度T3を定めるようにすればよく、下限としては、好ましくは660℃以上、より好ましくは670℃以上とされ、上限としては、好ましくは720℃以下、より好ましくは700℃以下とされてもよい(好ましくは660℃〜720℃、より好ましくは670℃〜700℃)。高温保持ステップにおける中間体の温度変動は高温保持温度T3における高温保持ステップの上述のような効果を減殺するという問題を生じうるのでできる限り一定温度とされることが好ましい(例えば、高温保持ステップにおける中間体の最高温度と最低温度との差が好ましくは30℃以内であり、より好ましくは20℃以内である。)。高温保持ステップにおける保持時間(高温保持時間)t3は、あまり短いと(フェライトとパーライトとの混合物)への変態が不十分で所望のフェライト分率を得ることができないという問題があり、あまり長いと不必要に工程に時間を要し効率が低下するという問題があるので、これらを両立するようt3を定めるようにしてもよく、通常、下限としては、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上、上限としては、好ましくは30分以下である(好ましくは10分〜30分、より好ましくは20分〜30分)。
なお、中間体のフェライト分率の測定は、高温保持温度T3に保持された中間体を急速冷却することによって、変態途中のフェライト(パーライト)+オーステナイト組織を室温で得ることができる(オーステナイトは急速冷却でマルテンサイトに変態するが、高温時のフェライトとパーライトは急速冷却で変化しない。)。急速冷却した組織を室温にて3〜5%硝酸アルコールで腐食し顕微鏡観察すれば、高温時のフェライトとパーライトを観察することができる。この顕微鏡観察において、互いに直交する縦横10本づつの格子線(縦の格子線同士の間隔は10mmであり、横の格子線同士の間隔は10mmである。縦横の格子線同士の交点である格子点は100個存在する。)を用い、組織の任意断面の顕微鏡写真に該格子線(90mm×90mm)を重ね合わせた際に該格子線が該顕微鏡写真に含まれる程度に該顕微鏡写真を拡大(通常、倍率としては200〜400倍程度)し、該拡大した顕微鏡写真に該格子線を重ね合わせる。この格子点100個のうちフェライト組織が存する格子点の数(n個)を数える。そして、フェライト分率pf(%)=(n個/100個)×100(%)=n(%)として算出する。
このように高温保持ステップにて中間体中のフェライト分率を30%以上とすることで、フェライト分率の高い前組織(フェライトとオーステナイトとの混合物)を準備でき、a)最終の鍛造物中のフェライト割合を増加させ、b)中間体において粗粒オーステナイトをフェライトが分断することによって、その後、分断されたオーステナイトから生成するパーライトを細かくでき(耐歪性向上)、そしてc)鍛造物中のフェライトの粒径を大きくできる(削り性向上)。なお、高温保持ステップにて得られる中間体中のフェライト分率は30%以上であることを要するが、後述の高温保持後冷却ステップにより得られる鍛造物組織での良好なフェライト分布や十分な量のフェライト分率を得ることからは、高温保持ステップにて得られる中間体中のフェライト分率は40%以上であることがより好ましい。
高温保持後冷却ステップは、高温保持ステップの後、T3(℃)からT5(℃)(但しT3−T5=10℃〜60℃)までを30℃/分以下の冷却速度で中間体を冷却し鍛造物とする。
高温保持ステップによりフェライト分率を30%以上とされた中間体は、高温保持温度T3(℃)から温度T5(℃)までの温度域を30℃/分以下の冷却速度にて冷却される。高温保持温度T3(℃)からT5(℃)までの温度域においては、高温保持ステップにおいて中間体に形成されたフェライト粒子を成長させるので、この温度域における冷却速度があまり大きすぎると過冷却状態となりフェライトの粒成長が不十分となることから(この場合、得られる最終の鍛造物はフェライトの割合が低下したりフェライトの粒子が小さくなる)該冷却速度は30℃/分以下とされ、該冷却速度があまり小さいと冷却に要する時間が長くなりすぎるので、通常、3℃/分以上の冷却速度とされる。
なお、高温保持後冷却ステップにおける冷却速度は高温保持温度T3(℃)からT5(℃)まで一定である必要は必ずしもなく、上述の冷却速度の範囲内において増減してもよい。
そして(T3−T5)(℃)が小さすぎるとフェライトを生じる変態の速度が小さく、逆に大きすぎると過冷却状態となりフェライトの粒成長が不十分となる(この場合、得られる最終の鍛造物はフェライトの割合が低下したりフェライトの粒が小さくなる)。これらを両立する(T3ーT5)の範囲として、下限として、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、上限として、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下である。
かかる本製造方法により得られる鍛造物は、鍛造物中のフェライト割合が高く(鍛造物が柔らかくなる)、鍛造物中のフェライトの粒径が大きく(鍛造物の削り性が向上する)、そして鍛造物中のパーライトの粒径が細かい(後の浸炭熱処理での歪が生じにくい)ので、後の浸炭熱処理において歪み発生が少なく被削性が良い。
本製造方法においては、高温保持後冷却ステップに引き続き、低温保持温度T5(℃)にて中間体を保持する低温保持ステップを含んでなるものであってもよい。
高温保持後冷却ステップによりT5(℃)まで冷却された中間体をT5(℃)にて保持する低温保持ステップを設けることにより、低温のT5(℃)で中間体を保持することで(フェライト+パーライト)組織への変態の速度を大きくすることができると共に(該変態の早期完結。低温保持時間t5と高温保持時間t3との合計時間を短く(例えば60分以内)することができ、本製造方法を効率的に実施することができる。)、中間体におけるフェライト分率の高い前組織(フェライトとオーステナイトとの混合物)を受け継いだフェライト分率の高い整粒の(フェライト+パーライト)組織を有する鍛造物を得ることができる。低温保持ステップにおける中間体の温度変動は低温保持温度T5における低温保持ステップの上述のような効果を減殺するという問題を生じうるのでできる限り一定温度とされることが好ましい(例えば低温保持ステップにおける中間体の最高温度と最低温度との差が好ましくは30℃以内であり、より好ましくは20℃以内である。)。
低温保持ステップにおける保持時間(低温保持時間)t5は、あまり短いと上述の低温保持ステップによる効果が十分奏されないし、あまり長くても不必要に工程に時間を要し効率が低下するという問題があるので、これらを両立するようt5を定めるようにしてもよく、通常、下限としては好ましくは10分以上(それにより変態が完了)、上限としては好ましくは30分以下(変態完了後の余分な保持は不要)である。
本製造方法においては、T5(℃)=630℃〜660℃であってもよい。
T5は、あまり高いと(フェライト+パーライト)組織への変態の速度が低下し変態完了までの時間が長くなり、逆に、T5があまり低いとパーライトへの変態が増加しフェライト分率の高い前組織(フェライトとオーステナイトとの混合物)が壊れる(フェライト分率の高い整粒の(フェライト+パーライト)組織を得ることが難しくなる)ので、これらを両立する630℃〜660℃の範囲とされることが好ましい。
本製造方法においては、鍛造ステップにおける熱間鍛造の開始温度T1が1180℃〜1220℃であってもよい。
鍛造ステップにおける熱間鍛造の開始温度T1を1180℃〜1220℃とすることで、従来の熱間鍛造の開始温度よりも60℃程度低くなり、これにより鍛造開始前の加熱による初期オーステナイト結晶粒の粗大化(粒成長)を防止すると共に、鍛造温度及び鍛造終了温度T2を低下させることで中間体のオーステナイト結晶粒の粒度を3番以上の細粒とできる。
本製造方法においては、鍛造ステップにおける熱間鍛造の終了温度T2が950℃〜1100℃であってもよい。
鍛造ステップにおける熱間鍛造の終了温度T2を950℃〜1100℃とすることで、1100℃以下で粒成長を抑制し中間体のオーステナイト結晶粒の粒度を確実に3番以上の細粒とできる。このT2があまり高いと中間体のオーステナイト結晶粒を細粒とできないという問題があり、あまり低いと鍛造成形が困難になるという問題があるので、これらを両立するT2の範囲として、下限として、好ましくは950℃以上、より好ましくは1000℃以上、上限として、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1050℃以下である(好ましくは950〜1100℃、より好ましくは1000〜1050℃)。
第1本鍛造物は、本製造方法により得られうる鍛造物であり、上述の如く、鍛造物中のフェライト割合が高く(鍛造物が柔らかくなる)、鍛造物中のフェライトの粒径が大きく(鍛造物の削り性が向上する)、そして鍛造物中のパーライトの粒径が細かい(後の浸炭熱処理での歪が生じにくい)ので、後の浸炭熱処理において歪み発生が少なく被削性が良い。
そして、第2本鍛造物は、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%であって、フェライト分率が50%以上であると共にフェライトの平均粒径が27μm以上である、鍛造物である。
このように第2本鍛造物は、その中のフェライト割合がフェライト分率として50%以上と高く(鍛造物が柔らかくなる)、鍛造物中のフェライトの粒径がフェライトの平均粒径として27μm以上と大きい(鍛造物の延性が低く削りやすい(削り性の向上))ので、従来の鍛造物に比し良好な被削性を有する。なお、第2本鍛造物のフェライト分率の上限はとくにないが、通常は60%以下である。そして、フェライトの平均粒径の上限はとくにないが、通常は30μm以下である。また、第2本鍛造物は、上で説明した本製造方法によって製造できる。
また、フェライト分率の測定方法は、組織を室温にて3〜5%硝酸アルコールで腐食したものを顕微鏡観察する。この顕微鏡観察において、互いに直交する縦横10本づつの格子線(縦の格子線同士の間隔は10mmであり、横の格子線同士の間隔は10mmである。縦横の格子線同士の交点である格子点は100個存在する。)を用い、組織の任意断面の顕微鏡写真に該格子線(90mm×90mm)を重ね合わせた際に該格子線が該顕微鏡写真に含まれる程度に該顕微鏡写真を拡大(通常、倍率としては200〜400倍程度)し、該拡大した顕微鏡写真に該格子線を重ね合わせる。この格子点100個のうちフェライト組織が存する格子点の数(n個)を数える。そして、フェライト分率pf(%)=(n個/100個)×100(%)=n(%)として算出する。
フェライトの平均粒径は、上述のようにフェライト分率pf(%)を求めるために用いた倍率100倍の組織断面顕微鏡写真に存する任意の25mm×25mmの領域(625平方ミリメートル)を選択する。選択された領域に存するフェライトの結晶粒の個数mを求め、これによってSf=625平方ミリメートル×pf(%)/100として25mm×25mmの領域中でフェライト組織が占める面積Sf(平方ミリメートル)を求め、(Sf/m)を面積とする円の直径D(即ち、πD/4=(Sf/m))を100倍写真における平均粒径とし、それを倍率100にて除しフェライトの平均粒径df(=D/100)とする。
本鍛造物(第1本鍛造物及び第2本鍛造物)においては、100μm以上の粒径のパーライト粒が存しないものであってもよい。
切削加工やドリル孔空加工等のような機械加工を鍛造物に施した後に浸炭熱処理を行う際、鍛造物中の大きなパーライト粒の存在は歪みの発生原因となり得る。かかる歪みは、100μm以上の粒径のパーライト粒が鍛造物中に存在することで顕著に生じるので、本鍛造物(第1本鍛造物及び第2本鍛造物)に100μm以上の粒径のパーライト粒が存しないことが好ましい。
なお、本鍛造物中に「100μm以上の粒径のパーライト粒が存しない」とは、本鍛造物組織の任意の10の断面(平面断面)の顕微鏡写真(倍率100倍)に存在するパーライト粒のうち最長寸法が100μm以上のパーライト粒が存しないことをいう(該10の断面の写真のいずれの写真にも、最長寸法100μm以上のパーライト粒が観察されないことをいう)。
本鍛造物(第1本鍛造物及び第2本鍛造物)においては、表面硬さがHB170以下であってもよい。
本鍛造物は、切削加工やドリル孔空加工等のような機械加工を施される目的に好適に用いられるため容易に機械加工が行えるよう表面硬さが柔らかい方が好ましい。とりわけ表面硬さがHB170以下であれば、現在の機械加工を円滑に行わしめる。なお、本鍛造物の表面硬さの下限は特にないが、通常、通常HB140以上(SCR420Hを原料鋼とする場合)である。
また、本鍛造物の表面硬さの測定は、「JIS Z 2243」にて規定されるブリネル硬さによる。
直径60mmで長さ312mmの丸棒鋼材(直円柱形状)を熱間鍛造用の原料鋼として用いた。該原料鋼の化学組成は、C:0.22重量%、Si:0.26重量%、Mn:0.79重量%、P:0.020重量%、S:0.015重量%、Cu:0.08重量%、Ni:0.05重量%、Cr:1.14重量%、Fe:残余であった。
図1は、該原料鋼を熱間鍛造し熱処理して鍛造品を製造した際の鋼材の表面の温度変化を示すグラフである。まず、直径60mm×長さ312mmの直円柱形状の原料鋼を加熱し(工程S1)、加熱された原料鋼の表面温度がT1(℃)になった後、熱間鍛造工程S2を行った。詳細には、熱間鍛造工程S2では、まず粗打ち工程にて後の型打ちができる程度の形状に成形し、粗打ち工程にて成形された粗成形品を型打ち工程にて所望形状(具体的には、直径50mm×長さ450mmの直円柱形状)の中間体に成形した。この熱間鍛造工程S2が完了した温度が完了温度T2(℃)であった。型打ち工程にて成形された中間体のバリを除去した後、温度Ta(具体的には、約700℃)まで中間体の表面を空冷した後(工程Sa)、連続熱処理炉に中間体を装入した。
図2は連続熱処理炉11を模式的に示す断面図であり、図示及び理解を容易にするため加熱器(ヒータ)や温度計等の図示を省略している。
連続熱処理炉11は、中間体101を上面に載置し搬送(図2中、矢印D方向)するベルトコンベア13と、ベルトコンベア13の循環駆動される無端状ベルト13bの上面に載置され搬送される中間体101を通過させる内部空間15bを有する炉本体15と、を備えてなる。内部空間15bは、無端状ベルト13bの上面に載置され搬送される中間体101が通過する順番に、第1内部空間15b1、第2内部空間15b2そして第3内部空間15b3を含んでなり、第1内部空間15b1と第2内部空間15b2との間には第1仕切板16aが設置され、第2内部空間15b2と第3内部空間15b3との間には第2仕切板16bが設置され、そして雰囲気を撹拌し温度むらを減少させるために第1内部空間15b1には第1撹拌器18a、第2内部空間15b2には第2撹拌器18b、第3内部空間15b3には第3撹拌器18cが、それぞれ配設されている(第1撹拌器18a、第2撹拌器18b及び第3撹拌器18cいずれも同様の構成を有し、具体的には、雰囲気を撹拌する撹拌翼と、該撹拌翼を回転させるモータと、該モータの回転を制御する制御部と、を含んでなる。)。第1内部空間15b1、第2内部空間15b2及び第3内部空間15b3には、それぞれ温度計と加熱器(いずれも図示せず)が配設されると共に、それらが図示しない温度調節装置に接続されることによって、第1内部空間15b1、第2内部空間15b2及び第3内部空間15b3の温度を独立して自由に調節することができる。また、第1仕切板16a及び第2仕切板16bにより、第1内部空間15b1、第2内部空間15b2及び第3内部空間15b3の温度を一層自由に調節できると共に、第1撹拌器18a、第2撹拌器18b及び第3撹拌器18cにより第1内部空間15b1、第2内部空間15b2及び第3内部空間15b3各々における雰囲気の温度むらを減少させることができる。
温度Taまで表面が空冷された中間体101は、図2に示す通り、無端状ベルト13b上面の始点(図2中、左端)近傍に載置され、終点(図2中、右端)方向に搬送される。
中間体101は、まず温度がT3(℃)に保持された第1内部空間15b1に進入し、第1内部空間15b1を通過している間はT3(℃)のまま時間t3の間保持される(工程S3)。
次いで、中間体101は、第1内部空間15b1から温度T5(℃)に保持された第2内部空間15b2へ移行し、T3(℃)とT5(℃)との温度差によってT5(℃)まで降温される(工程S4)。
略T5(℃)となった中間体101は、第2内部空間15b2を通過している間はT5(℃)のまま時間t5の間保持される(工程S5)。
さらに、中間体101は、第2内部空間15b2から温度T6(℃)に保持された第3内部空間15b3へ移行し、T5(℃)とT6(℃)との温度差によってT6(℃)に向けて降温される(工程S6)。
略T6(℃)となった中間体101は、第3内部空間15b3を通過している間はT6(℃)のまま時間t6の間保持される(工程S7)。
その後、中間体101は、第3内部空間15b3から外部へ搬出され、製品缶の中に投入し室温まで放冷して鍛造物(以下「2段保持物」という)とされた。
このようにT3(℃)、T5(℃)及び無端状ベルト13bの搬送速度を調節することで、高温保持ステップS3の温度T3及び時間t3、移行ステップS4の降下温度(T3−T5)(℃)、そして低温保持ステップS5の温度T5及び時間t5を自由に変化させて中間体101を熱処理することができる。なお、移行ステップS4における冷却速度は、降下温度(T3−T5)(℃)と無端状ベルト13bの搬送速度とを調節することで変化させることができる(具体的には、降下温度が同じであれば、第1内部空間15b1から第2内部空間15b2へ移行する際の搬送速度が大きいほうが冷却速度が大きくなる。)。
そして、比較例として、図3に示す通り、第1内部空間15b1及び第2内部空間15b2の温度をいずれもTc(℃)に設定した例を行った(第3内部空間15b3は温度T6(℃)とした)。原料鋼の加熱(工程S1)、熱間鍛造工程S2、バリ除去、そして空冷工程Saについては上述と同様である。
空冷工程Saにて温度Taまで表面が空冷された中間体101は、いずれも温度がTc(℃)に保持された第1内部空間15b1及び第2内部空間15b2を通過することで、Tc(℃)のまま時間tcの間保持される(工程Sc)。
次いで、中間体101は、第2内部空間15b2から温度T6(℃)に保持された第3内部空間15b3へ移行し、Tc(℃)とT6(℃)との温度差によってT6(℃)に向けて降温される(工程S6)。
略T6(℃)となった中間体101は、第3内部空間15b3を通過している間はT6(℃)のまま時間t6の間保持される(工程S7)。
その後、中間体101は、第3内部空間15b3から外部へ搬出され、製品缶の中に投入し室温まで放冷して鍛造物(比較例:以下「1段保持物」という)とされた。
さらに、比較例として、図4に示す通り、従来から行われてきた熱処理(焼準、焼鈍)を行った。原料鋼の加熱(工程S1)、熱間鍛造工程S2、バリ除去、そして空冷工程Saについては上述と同様である(なお、ここでの空冷工程Saはより低い温度(後述の工程Sdにおいて製品缶へ投入されることで、投入時に打痕や曲りが生じないようにするため550℃以下の温度。例えば500℃程度)まで行った)。空冷工程Sa後、中間体101は製品缶の中に投入され室温近くまで放冷(工程Sd)された。放冷された中間体101は、再び温度Tf(=930℃)まで加熱され(工程Se)、温度Tf(℃)にて約60分保持された(工程Sf)。工程Sfの後、空冷にて中間体101を冷却(工程Sg)して鍛造物(比較例:以下「焼準物」という)を得た。
また、工程Sfの後、加熱を止めた加熱炉内にて徐冷(工程Sh。温度Tf(℃)から温度Th(=600℃)まで約2時間かけてゆっくり冷却した)し、Th(℃)まで冷却された中間体101は空冷にて冷却(工程Sj)して鍛造物(比較例:以下「焼鈍物」という)を得た。
以上のようにして得られた鍛造物(2段保持物、1段保持物、焼準物及び焼鈍物)それぞれの組織を顕微鏡にて観察すると共に、ブリネル硬さ(HB)を測定した。さらに、顕微鏡観察に基づき、フェライト分率(%)及びフェライト平均粒径(μm)を算出した。具体的には、組織の顕微鏡観察は、所定の硬さ測定位置に存する15×15×15mmの顕微鏡試料を採取(切り出し)し、鍛造品の表面下10mm(表面から深さ10mm)位置のミクロ組織を3%硝酸アルコールで腐食した後に100倍の倍率で光学顕微鏡観察した。さらに、それに基づくフェライト分率(%)算出及びフェライト平均粒径(μm)算出は上述の通り行った。加えて、ブリネル硬さ(HB)の測定は「JIS Z 2243」に従って行った。
得られた結果を図5に示す。なお、ここでは2段保持物及び1段保持物における工程S7のT6(℃)は600℃であり時間t6は9分であった。
図5中、実験番号1及び2は2段保持物の結果を示し、実験番号3及び4は1段保持物の結果を示し、実験番号5は焼準物の結果を示し、そして実験番号6は焼鈍物の結果を示している。実験番号1及び2の2段保持物については、熱間鍛造工程S2の開始温度T1(℃)、熱間鍛造工程S2の完了温度T2(℃)、第1内部空間15b1を通過している間の工程S3中の温度T3(℃)、温度T3に保持される時間t3(分)、工程S4(温度T3から温度T5への冷却)における冷却速度(℃/分)、第2内部空間15b2を通過している間の工程S5中の温度T5(℃)、温度T5に保持される時間t5(分)、熱間鍛造工程S2により得られる中間体におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号(オーステナイト粒度)(番)、工程S3により得られる中間体のフェライト分率(%)、得られた鍛造物(2段保持物)のフェライト分率(%)、得られた鍛造物(2段保持物)のフェライト平均粒径(μm)、得られた鍛造物(2段保持物)のブリネル硬さ(HB)、得られた鍛造物(2段保持物)の組織写真番号(図番)を示している。実験番号3及び4の1段保持物については、熱間鍛造工程S2の開始温度T1(℃)、熱間鍛造工程S2の完了温度T2(℃)、第1内部空間15b1及び第2内部空間15b2を通過している間の工程Sc中の温度Tc(℃)、温度Tcに保持される時間tc(分)、熱間鍛造工程S2により得られる中間体におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号(オーステナイト粒度)(番)、得られた鍛造物(1段保持物)のフェライト分率(%)、得られた鍛造物(1段保持物)のフェライト平均粒径(μm)、得られた鍛造物(1段保持物)のブリネル硬さ(HB)、得られた鍛造物(1段保持物)の組織写真番号(図番)を示している。実験番号5の焼準物については、熱間鍛造工程S2の開始温度T1(℃)、熱間鍛造工程S2の完了温度T2(℃)、処理のための加熱温度Tf(℃)、熱間鍛造工程S2により得られる中間体におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号(オーステナイト粒度)(番)、得られた鍛造物(焼準物)のフェライト分率(%)、得られた鍛造物(焼準物)のフェライト平均粒径(μm)、得られた鍛造物(焼準物)のブリネル硬さ(HB)、得られた鍛造物(焼準物)の組織写真番号(図番)を示している。実験番号6の焼鈍物については、熱間鍛造工程S2の開始温度T1(℃)、熱間鍛造工程S2の完了温度T2(℃)、処理のための加熱温度Tf(℃)、加熱炉内での徐冷下限温度Th(℃)、熱間鍛造工程S2により得られる中間体におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号(オーステナイト粒度)(番)、得られた鍛造物(焼鈍物)のフェライト分率(%)、得られた鍛造物(焼鈍物)のフェライト平均粒径(μm)、得られた鍛造物(焼鈍物)のブリネル硬さ(HB)、得られた鍛造物(焼鈍物)の組織写真番号(図番)を示している。
また、図5には示していないが、実験番号1及び2の2段保持物には100μm以上の粒径のパーライト粒が存しなかったのに対し、実験番号3及び4のいずれにも100μm以上の粒径のパーライト粒が存在していた。また、実験番号5の焼準物と実験番号6の焼鈍物については熱間鍛造工程S2の完了温度T2(℃)では100μm以上の粗大なパーライト粒を確認できたが、図4に示すとおり、従来から行われてきた熱処理(焼準、焼鈍)を行った後では100μm以上のパーライト粒を確認できなかった。
図5の結果及び組織写真(図6〜図11)から、実験番号1及び2の2段保持物は、実験番号3及び4の1段保持物に比し、得られた鍛造物のフェライト分率が50%以上と高い(鍛造物が柔らかく、延性が低いことを意味しており被削性に優れる。)ことに加え、得られた鍛造物のフェライト平均粒径が27μm以上と大きい(パーライトの粒径が一様に細かいため、後の浸炭及び焼入れ熱処理時の歪みが少ない(耐歪性))ことに加え、得られた鍛造物のブリネル硬さが(HB)が小さい(柔らかい)ことが明らかになった。このように鍛造物のフェライト分率が高くフェライト平均粒径が大きく硬さが小さいことは、鍛造物に優れた被削性をもたらし、さらに前述のように2段保持物中には大粒径のパーライト粒が存しないことによって、鍛造物に後で施される浸炭熱処理において歪を生じにくい。このため実験番号1及び2の2段保持物は、後の切削加工やドリル孔空加工等のような機械加工が施される際の被削性がよく、さらに機械加工後の浸炭熱処理において歪み発生が少ないため、機械加工がなされた後に浸炭熱処理が行われるものとして好適に用いることができる。
なお、実験番号5の焼準物や実験番号6の焼鈍物は、得られた鍛造物のフェライト分率が高い(60%以上)が、得られた鍛造物のフェライト平均粒径が小さく、実験番号1及び2の2段保持物の組織とは異なる。
以上説明の通り、実験番号1及び2の2段保持物の製造方法は、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%(ここでは0.22重量%)の鋼材である原料鋼を熱間鍛造し、オーステナイト結晶粒の粒度番号が3番以上(ここでは3.5)の粒径である中間体を形成する鍛造ステップ(工程S2)と、鍛造ステップ(工程S2)にて得られた中間体を660℃〜720℃の範囲に属する高温保持温度T3にて保持し中間体のフェライト分率を30%以上とする高温保持ステップ(工程S3)と、高温保持ステップ(工程S3)の後、T3(℃)からT5(℃)(但しT3−T5=10℃〜60℃)までを30℃/分以下の冷却速度で中間体を冷却する高温保持後冷却ステップ(工程S4)と、を含んでなる、鍛造物の製造方法である。
そして、実験番号1及び2の2段保持物の製造方法は、高温保持後冷却ステップ(工程S4)に引き続き、低温保持温度T5(℃)にて中間体を保持する低温保持ステップ(工程S5)を含んでなる。
ここに実験番号1及び2の2段保持物の製造方法においては、T5(℃)=630℃〜660℃である。
また、実験番号1及び2の2段保持物の製造方法においては、鍛造ステップ(工程S2)における熱間鍛造の開始温度T1が1180℃〜1220℃である。
そして、実験番号1及び2の2段保持物の製造方法においては、鍛造ステップ(工程S2)における熱間鍛造の終了温度T2が950℃〜1100℃である。
実験番号1及び2の2段保持物は、本製造方法により得られうる鍛造物である。
実験番号1及び2の2段保持物は、炭素量が0.12重量%〜0.25重量%であって、フェライト分率が50%以上であると共にフェライトの平均粒径が27μm以上である、鍛造物である。
実験番号1及び2の2段保持物は、100μm以上の粒径のパーライト粒が存しないものである。
さらに、実験番号1及び2の2段保持物は、表面硬さがHB170以下である。
11 連続熱処理炉
13 ベルトコンベア
13b 無端状ベルト
15 炉本体
15b 内部空間
15b1 第1内部空間
15b2 第2内部空間
15b3 第3内部空間
16a 第1仕切板
16b 第2仕切板
18a 第1撹拌器
18b 第2撹拌器
18c 第3撹拌器
101 中間体

Claims (5)

  1. 炭素量が0.12重量%〜0.25重量%の鋼材である原料鋼を熱間鍛造し、オーステナイト結晶粒の粒度番号が3番以上の粒径である中間体を形成する鍛造ステップと、
    鍛造ステップにて得られた中間体を660℃〜720℃の範囲に属する高温保持温度T3にて保持し中間体のフェライト分率を30%以上とする高温保持ステップと、
    高温保持ステップの後、T3(℃)からT5(℃)(但しT3−T5=10℃〜60℃)までを30℃/分以下の冷却速度で中間体を冷却する高温保持後冷却ステップと、
    を含んでなる、鍛造物の製造方法。
  2. 高温保持後冷却ステップに引き続き、低温保持温度T5(℃)にて中間体を保持する低温保持ステップを含んでなる、請求項1に記載の製造方法。
  3. T5(℃)=630℃〜660℃である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 鍛造ステップにおける熱間鍛造の開始温度T1が1180℃〜1220℃である、請求項1乃至3のいずれか1に記載の製造方法。
  5. 鍛造ステップにおける熱間鍛造の終了温度T2が950℃〜1100℃である、請求項1乃至4のいずれか1に記載の製造方法。
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