JP5892773B2 - 発泡コンクリート用アンカー - Google Patents

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Description

本発明は、建材として使用される発泡コンクリートに打ち込み可能な発泡コンクリート用アンカーに関する。
従来、発泡コンクリートで形成された建屋に配管等を固定するために、発泡コンクリート用アンカーが用いられる。この発泡コンクリート用アンカーは、建屋の壁材などに予め空けられた穴に打ち込むことで、配管用のステイなどを固定するものである。
従来の発泡コンクリート用アンカーとしては、例えば、発泡コンクリート用アンカーを左右に分割構造で構成し、建屋の穴に打ち込んだ発泡コンクリート用アンカーにピンを挿入することで左右に拡開させるものがある。この拡開される部分には食い込み歯が設けられており、この食い込み歯が穴の内周面に食い込むことで、発泡コンクリート用アンカーが固定されるようになる。この発泡コンクリート用アンカーは、材料として軟鋼或いはステンレス鋼が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
また、建屋の穴に打ち込まれた発泡コンクリート用アンカー内にボルトを螺合させることで、発泡コンクリート用アンカー内部に設けられた抜け止め爪が拡開して穴の内周面に食い込むようにしたものもある。この発泡コンクリート用アンカーは、その本体部は金属材料で構成され、抜け止め爪は拡開し易い樹脂材料が使用されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、発泡コンクリート用アンカーを板金加工によって筒状に構成したものもある。このアンカーの周面には、板金の曲げ加工で一体に形成された抜け止め爪が設けられており、ボルトを螺合させることで抜け止め爪を発泡コンクリートに向けて拡開させるものである(例えば、特許文献3参照)。
また、発泡コンクリート用アンカーを樹脂材料で形成したものもある。この発泡コンクリート用アンカーは、先端部に食い込み歯を形成すると共にこの先端部を分割構造にしている。この先端部は、ボルトを螺合させることで拡開するようになっている(例えば、特許文献4、5参照)。
特開昭62−148740号公報 特開昭63−186017号公報 特開昭62−093412号公報 特開平09−071934号公報 実公昭43−001975号公報
しかしながら、上述した発泡コンクリート用アンカーは、それぞれに以下の課題を有している。
(1) 発泡コンクリート用アンカーの本体または食い込み歯(抜け止め爪)を金属で形成した場合、ボルトまたはピンでこれらを拡開させてしまうと、建屋の穴からアンカーを取り除くのが困難になる。より詳細には、アンカー本体または爪が塑性変形して食い込んでしまうと、穴の周囲の発泡コンクリート自体を壊して発泡コンクリート用アンカーを回収しなければならない。
(2) 発泡コンクリート用アンカーの本体または食い込み歯を樹脂で形成した場合、ボルトまたはピンを取り外すことによって樹脂材料が元の形状に戻るため、建屋の穴からの回収作業は容易に行える。しかしながら、樹脂材料では発泡コンクリートへの食い込み力が小さく、発泡コンクリート用アンカーとして大きな引き抜き荷重を許容することができない。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、大きな引き抜き荷重を許容することができ、かつ、取付穴から容易に回収することができる発泡コンクリート用アンカーを提供することにある。
上述課題を解決するため、本発明は、発泡コンクリートに予め空けられた取付穴に挿入され、ボルトまたはピンが挿入されることで前記発泡コンクリートに固定される発泡コンクリート用アンカーであって、長手方向に延びる分割面に沿って全部または一部が分割可能な樹脂製の本体部を備え、この本体部には、外側面に複数の食い込み歯を有する食い込み部と、この食い込み部よりも基端部側に位置する可撓部とを有し、ボルトまたはピンが挿入されることによって前記可撓部が撓んで前記食い込み部が拡開されるようになっており、前記食い込み部には、前記本体部の分割面側に取り付けられ、かつ前記食い込み部の長手方向に延びる金属製のクロウが取り付けられており、前記クロウには先端部側の端部が折り曲げられた返し部が設けられ、前記本体部に取り付けられた状態で、前記返し部が前記本体部の外面から表出している。
さらに、前記返し部に、発泡コンクリートに食い込ませるための食い込み爪が形成されていてもよい。
また、前記クロウには、前記本体部の長手方向に沿って延在し、前記ボルトまたはピンを先端部側に案内する誘導溝が形成されていてもよい。
さらにまた、前記クロウには、基端部側の端部が折り曲げられた第2の返し部が設けられ、前記本体部には、前記第2の返し部が折り曲げられた方向に開口するクロウ用係合穴が形成されていてもよい。
一方、前記本体部には、前記可撓部よりも基端部側に固定部が設けられ、前記固定部に前記ボルトが螺合する金属製のナットが取り付けられるようにすることもできる。
また、前記本体部は2つの半割部材を組み付けて構成されており、前記ナットには、2つの前記半割部材に向かってそれぞれ突出し、2つの前記半割部材を固定する少なくとも2つの突部が設けられていてもよい。
さらに、2つの前記半割部材に係合穴をそれぞれ設けるとともに、前記突部に係合爪を設け、前記係合穴に前記係合爪をそれぞれ係合させて固定するようにしてもよい。
本発明に係る発泡コンクリート用アンカーによれば、長手方向に延びる分割面に沿って全部または一部が分割可能な樹脂製の本体部を備え、この本体部には、外側面に複数の食い込み歯を有する食い込み部と、この食い込み部よりも基端部側に位置する可撓部とを有し、ボルトまたはピンが挿入されることによって前記可撓部が撓んで前記食い込み部が拡開されるようになっており、前記食い込み部には、前記本体部の分割面側に取り付けられ、かつ前記食い込み部の長手方向に延びる金属製のクロウが取り付けられているので、クロウの剛性によって食い込み部が湾曲する(撓む)のを防止することができる。そのため、食い込み部を樹脂のみで構成する場合と比較して、より強固に食い込み歯を取付穴の内周面に食い込ませることができる。その結果、大きな引き抜き荷重を許容することができる発泡コンクリート用アンカーを提供できるようになる。
また、樹脂で構成された可撓部で撓ませて食い込み部を拡開させることによって、十分な撓みを得ることができる。また、ボルトまたはピンを取り外したときには、可撓部の弾性によって拡開状態が元に復帰するようになるため、取付穴から発泡コンクリート用アンカーを引き抜き易くなる。その結果、周囲の発泡コンクリートを壊すことなく、発泡コンクリート用アンカーを容易に回収することができるようになる。
さらに、金属を塑性変形させるものと比較して、ボルトのねじ込みトルクを小さくすることができるので、作業員の取付作業性が向上する。
本発明の実施の形態に係る発泡コンクリート用アンカーを発泡コンクリートに挿入する前の状態を示す分解斜視図である。 (A)は図1の状態から発泡コンクリート用アンカーを打ち込んだ状態を示す斜視図、(B)は発泡コンクリートアンカーにボルトを挿入した状態を示す斜視図である。 発泡コンクリート用アンカーを用いて配管を固定している状態を示す断面図である。 発泡コンクリート用アンカーを前方斜め上側から見た斜視図である。 図4に示す発泡コンクリート用アンカーの分解斜視図である。 図5のナットを単体で示す拡大斜視図である。 図5の左右のクロウを示す拡大斜視図である。 発泡コンクリート用アンカーの正面図である。 図8の左側面図である。 図8の平面図である。 図8のA−A断面図である。 図10のD−D断面図である。 図8のB−B断面図である。 図8のC−C断面図である。 図10の状態にボルトを締結した状態を示すアンカーボルトの平面図である。 図11の状態にボルトを締結した状態を示すアンカーボルトの断面図である。 引き抜き変位量[mm]と引き抜き荷重[kgf]との関係を示す実験データである。
以下、本発明の実施の形態に係る発泡コンクリート用アンカーについて、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る発泡コンクリート用アンカーを発泡コンクリートに挿入する(打ち込む)前の状態を示す斜視図である。また、図2(A)は、図1の状態から発泡コンクリート用アンカーを打ち込んだ後の状態、図2(B)は発泡コンクリート用アンカーの内部にボルトを挿入した状態を示す斜視図である。さらに、図3は、発泡コンクリート用アンカーを用いて配管3を固定している状態を示す断面図である。
建材として使用される発泡コンクリート1には、例えば配管などを固定するためのアンカー部材10が取り付けられる。このアンカー部材10は、図1に示すように、発泡コンクリート用アンカー30(以下、単にアンカー30という)と、このアンカー30に締結するボルト20とで構成されている。
これらの組立方法としては、発泡コンクリート1の所定の位置に予め取付穴2を形成し(図1参照)、この取付穴2にアンカー30を挿入する(図2(A)参照)。そして、例えば、配管取付用のステイ4を発泡コンクリート1に取り付けるために、このアンカー30の内部にボルト20を挿入して螺合させる(図2(B)参照)。このボルト20を挿入することにより、アンカー30の食い込み歯37(詳細は後述する)が取付穴2の内周面に食い込んでアンカー30が固定される。さらには、固定されたアンカー30にボルト20が螺合することで、ボルト20がアンカー30に強固に締結されることになる。これにより、ボルト20は発泡コンクリート1に強固に取り付けられるようになる。
このような発泡コンクリート用アンカー30は、図3に示すように、例えば、発泡コンクリート1の壁面に沿って取り付けられる配管3を、配管ステイ4を用いて取り付ける場合に使用される。より具体的には、配管ステイ4の両端の取付部4a、4aを、予め打ち込まれた発泡コンクリート用アンカー30と挿入するボルト20とで挟み込んで固定するものである。
なお、上述した取付穴2は、発泡コンクリート1の壁材の厚み方向に貫通していない、非貫通穴である。非貫通穴にすることで、工事時間の短縮や取付作業の軽減を図ることができる。また、もちろん、貫通穴であっても取り付けることができる。
図4は、アンカー30を前方斜め上側から見た斜視図である。また、図5は、図4に示すアンカー30の分解斜視図である。また、図6は、図5のナット40を単体で示す拡大斜視図、図7は、図5の左右のクロウ50、50を示す拡大斜視図である。
なお、以下の説明使用する左右の方向は、図5におけるボルト受け面39側から見た方向をいうものとする。また、基端部とは、アンカー30のボルト受け面39側をいい、先端部とは、基端部から延在する先端側をいうものとする。
アンカー30は、図4に示すように、各構成部品を組み立てた状態で、長手方向の両端が開口する円筒形状をなしている。このアンカー30の基端部30a側には、このアンカー30を挿入した状態で、発泡コンクリート1の外側に表出するボルト受け面39が設けられている。このボルト受け面39には、アンカー30の長手方向に延在し、アンカー30の先端部まで連通するボルト挿通穴28が設けられている。また、アンカー30の先端部30b側には、発泡コンクリート1に食い込んで抜けないようにするための食い込み歯37などが設けられている。
また、アンカー30は、図5に示すように、長手方向の左右に分割可能な2つの半割部材31、31を組み合わせて円筒構造に構成される樹脂製の本体部70と、この本体部70の基端部30a側に取り付けられる金属製のナット40と、この本体部70の先端部30b側に取り付けられる金属製の2つのクロウ50、50とを備えている。
このアンカー30に挿入されるボルト20は、図5に示すように、十字溝加工が施された頭部23と、この頭部23から先端に向けて延びる雄ねじ部21と、この雄ねじ部21よりもさらに先端側に位置する押し込み部22とで構成されている。この押し込み部22の先端部22aは、先細りした形状に形成されている。
図5に示す本体部70の左右の半割部材31、31には、2つの部品として同じ部材が使用されている。より詳細には、左側の半割部品31を、上下を逆にして右側に配置することで、左右で同じ部材が使用できるようにしている。これにより、アンカー30の部品の種類を削減することができる。
また、本体部70の基端部30a側および中央部には、図5に示すように、半割面71(半割部材31、31が互いに接する面))から他方の半割部材31の半割面71に向かって突出する2つの位置決め用ボス32、32がそれぞれ形成されている。また、半割面71には、位置決め用ボス32、32と対応する位置に、2つの位置決め用穴33、33がそれぞれ形成されている。これらは、左右の半割部材31、31を組み付ける際に、左側の位置決め用ボス32、32を右側の位置決め用穴33、33にそれぞれ嵌め込む(同様に、右側の位置決め用ボス32、32を左側の位置決め用穴33、33にそれぞれ嵌め込む)ことで、本体部70の組み立て形状(円筒形状)が定まるようになっている。
ナット40には、図5および図6に示すように、略直方体形状の4辺から外側に向かって突出する4つの突部41が形成されている。この突部41は、アンカー30の長手方向に亘って連続して設けられている。この突部41の形状は、図6に示すように、突出する先端側に頂部41aを有する三角形状に形成されている。また、突部41は、この頂部41aから左右に傾斜する傾斜面41b(図6および図14参照)を有し、この傾斜面41bの終端には、三角形状の他の2つの角部が形成されている。この角部は、本体部31のナット用係合穴34(詳細は後述する。図13参照)に係合する係合爪43として機能する。このように、ナット用係合穴34に突部41が4方向でそれぞれ係合することによって、ボルト20を螺合させるときにナット40が本体部70に対して空転(回転)しないようになる。
また、突部41の頂部41aは、図13に示すように、ナット40を本体部70に取り付けた状態で、本体部70の外周面よりも外側に突出しており、この頂部41aが取付穴2の内周面に食い込むようになっている。これにより、ボルト20を螺合させるときにナット40が取付穴2に対しても空転(回転)しないようになる。
また、ナット40の中央には、アンカー30の長手方向に沿って雌ねじ穴42が形成されている。この雌ねじ穴42には、アンカー30にボルト20が挿入された状態で、上述したボルト20の雄ねじ部21が螺合するようになる。
クロウ50、50は、図5および図7に示すように、左右に1つづつ使用されており、同一のものがそれぞれ使用されている。より詳細には、左側(右側)のクロウ50を左右反転させて右側(左側)に配置することができるものである。
このクロウ50、50は、その両端部が略直角に同一方向へ折り曲げられたコ字形状を成している。より詳細には、クロウ50、50は、アンカー30の長手方向に延在するボルト受け部51a、51aと、アンカー30の先端部30b側に形成され、アンカー30の外側に向かって折り曲げられた外側返し部51b、51bと、アンカー30の基端部30a側に形成され、アンカー30の外側に向かって同様に折り曲げられた内側返し部51c、51cとで構成されている。
ボルト受け部51a、51aには、図5および図7に示すように、アンカー30の内側に向けて取り付けられる面に、ボルト誘導溝54、54がそれぞれ形成されている。これらのボルト誘導溝54、54は、その断面が略円弧形状をなしており、アンカー30の長手方向に沿って連続して設けられている。これらのボルト誘導溝54、54には、アンカー30にボルト20が挿入された状態で、上述したボルト20の押し込み部22が接触して、この溝に沿ってボルト20がアンカー30の長手方向の先端部30b側へと案内されるようになる。
外側返し部51b、51bは、図7に示すように、折り曲げられた端部が扇形状を成しており、半割部材31、31の先端部の形状と略同一になるように形成されている。この外側返し部51b、51bの扇形状を挟んだ両端部には、外側返し部51b、51bの幅方向外側に向かって突出する食い込み爪52、52が形成されている。
また、内側返し部51c、51cも同様に、図7に示すように、折り曲げられた端部が扇形状(半割部材31の外周面と略同一な形状)を成しており、この扇形状を挟んだ両端部には、内側返し部51c、51cの幅方向外側に向かって突出する係合爪53、53が形成されている。
図8は発泡コンクリート用アンカーの正面図、図9はその左側面図、図10はその平面図である。さらにまた、図11は、図8のA−A断面図、図12は、図10のD−D断面図、図13は、図8のB−B断面図、図14は、図8のC−C断面図である。
アンカー30は、図8および図10に示すように、長手方向において、機能的に3つの部位(固定部W1、可撓部W2、食い込み部W3)に区分される。固定部W1は、挿入されるボルト20が締結されるための機能を果たす部位である。また、可撓部W2は、挿入されるボルト20によって、本体部70の左右の半割部材31、31の先端部30b側をそれぞれ左右に開かせるために撓む機能を果たす部位である。さらに、食い込み部W3は、左右に開いた先端部30b側を発泡コンクリート1に食い込ませ、強固に固定する機能を果たす部位である。
本体部70の固定部W1の部位には、図8に示すように、アンカー30の長手方向に沿って延在するナット用係合穴34およびナット用係合溝35が形成されている。なお、ナット用係合溝35は、左右の半割部材31、31が組みつけられた状態で、ナット用係合穴34と同じ形状の穴が構成されるようになる(図10参照)。すなわち、左右の半割部材31、31が組み付けられた状態では、4つのナット用係合穴34が周方向に90度の間隔を空けて設けられるようになる。これらの4つのナット用係合穴34には、上述したナット40の突部41が挿入される。
このナット用係合穴34の断面形状は、図13に示すように、アンカー30の内側から外側に向かって段差状に広がっている。この段差部には、ナット用係合穴34に突部41が挿入された状態で、突部41の係合爪43が係合して本体部70とナット40とが固定されるようになる。これにより、固定部W1の部位では、左右の半割部材31、31がナット40によって強固に固定され、左右に開かないようになる。
本体部70の可撓部W2の部位には、図8に示すように、放線方向外側に向かって突出する4つの突条部38が形成されている。この突条部38は、アンカー30の長手方向に延在しており、先端部30b側に向かうに従い突出長さが短くなるように緩やかに傾斜している。また、この4つの突条部38は、アンカー30の周方向に90度の間隔を空けて配置されている。これらの突条部38は、アンカー30を取付穴2に挿入した状態で、取付穴2の内周面に食い込むようになる。これにより、アンカー30がより強固に固定されると共に、ボルト20を螺合させるときにアンカー30が取付穴2に対して空転(回転)しないようになる。
この可撓部W2の部位では、上述した固定部W1とは異なり、左右の半割部材31、31が互いに固定されていない。そのため、この可撓部W2では、半割部材31、31を左右に開こうとする力が作用した場合、この半割部材31、31の樹脂の弾性によってそれぞれが撓んで左右に開くようになる。
また、この可撓部W2の部位には、図8、図10、および図14に示すように、本体部70の外周面に複数の肉盗み部29が形成されている。この肉盗み部29は、本体部31の軽量化を図るとともに、この可撓部W2が左右に撓みやすくするために形成されている。
本体部70の食い込み部W3の部位には、図8および図10に示すように、スリット状の溝であるクロウ用係合穴36が形成されている。このクロウ用係合穴36には、クロウ50、50が半割面71、71側からクロウ50、50の内側返し部51c、51cが挿入される(図10〜図12参照)。このとき、内側返し部51c、51cの係合爪53、53は、このクロウ用係合穴36の縁部と係合するようになる。また、内側返し部51c、51cの扇形状の外周は、クロウ用係合穴36の外縁部であって半割部材31の外周面から外側に突出しないようになっている。これにより、クロウ50、50が半割部材31、31にそれぞれ取り付けられることになる。
また、クロウ50、50の外側返し部51b、51bは、図8、図10〜図12に示すように、クロウ50、50を半割部材31に取り付けた状態で、半割部材31、31の先端部30bより外側に位置するようになる。この外側折り返し部51b、51bの扇形状は、詳細は後述する食い込み歯37の円弧形状とほぼ一致しており、食い込み歯37と同じ機能(取付穴2の内周面に食い込む機能)を果たすようになる。特に、クロウ50、50は金属製であり、より強固に食い込むようになる。
また、このクロウ50、50は、半割部材31、31にそれぞれ取り付けられることで、食い込み部W3が湾曲しないようにする機能を果たしている。より詳細には、半割部材31、31は、クロウ50、50の剛性によって撓まずに直線状態を維持するようになる。
さらに、本体部70の食い込み部W3の部位には、図8および図10に示すように、半割部材31、31の外周面に複数の食い込み歯37が形成されている。この食い込み歯37は、アンカー30の周方向に亘って連続して形成されている。また、この食い込み歯37は、アンカー30の長手方向に間隔を空けて複数(図8、図10〜図12では7個)配置されている。
この食い込み歯37の形状は、図8、図10〜図12に示すように、アンカー30の先端部30b方向に向かって緩やかに傾斜しており、アンカー30を取付穴2に挿入しやすいようになっている。一方、基端部30a側の形状は、長手方向に対してほぼ垂直に切り立っており、アンカー30が取付穴2から抜け難いようになっている。また、この食い込み歯37は、アンカー30にボルト20を挿通させた状態で、本体部31、31が左右に開いて発泡コンクリート1に食い込むようになる(詳細は後述する)。これにより、アンカー30が発泡コンクリート1の取付穴2から抜けないようになる。
なお、食い込み歯37の歯数は、アンカー30の耐用荷重や取付場所に合わせて任意に決定することができる。例えば、より大きな引き抜き強度が要求される場合には、アンカー30の長さを長くして、その長さに合わせて7個以上の歯を形成してもよい。逆に、引き抜き強度がそれほど要求されない場合には、アンカー30の長さを短くして、歯数を7個以下にすることもできる。
図15は、図10の状態にボルト20を締結した状態を示すアンカーボルト10の平面図である。また、図16は、図11の状態にボルト20を締結した状態を示すアンカーボルト10の断面図であり、図15の断面図である。
アンカー30の挿通穴28から挿入したボルト20は、ボルト20の雄ねじ部21とナット40の雌ねじ穴42とが螺合しながら先端部30b側へと進んでゆく。そして、ボルト20の先端部22aが食い込み部W3に到達すると、クロウ50、50のボルト誘導溝54、54と当接しながらクロウ50、50を左右に拡開させてゆく。この拡開動作は、可撓部W2が撓むことにより行われる。
このとき、ナット40をアンカー30の周方向へ回転させる力が作用するが、ナット40の4つの突部41が本体部70の4つのナット用係合穴34にそれぞれ係合しているので、ナット40が回転しないようになっている。
また、ナット40と同様に、クロウ50、50をアンカー30の周方向へ回転させる力が作用するが、内側返し部51c、51cが本体部70のクロウ用係合穴36と係合しているので、クロウ50、50が回転しないようになる。
また、クロウ50、50をアンカー30の先端部30bへ押し出す力も作用するが、同様に、クロウ用係合穴36と係合しているので、クロウ50、50が先端部30b側へ押し出されることがない。
食い込み部W3が拡開されると、食い込み歯37およびクロウ50、50の外側返し部51b、51bは、取付穴2(図1参照)の内周面に食い込むようになる。このとき、食い込み部W3の食い込み歯37は、クロウ50、50の剛性によって撓まないので、より強固に内周面に食い込むようになる。
また、クロウ50,50の外側返し部51b、51bは金属製であるため、より強固に内周面に食い込むようになる。また、外側返し部51b、51bの食い込み爪52,52がさらに内周面に強固に食い込むようになる。
このように食い込んだ状態が、図15および図16の状態である。
図15および図16の状態からボルト20を抜く場合には、上述したものと逆の動作をたどることになる。このとき、拡開していた食い込み部W3は、可撓部W2の弾性によって拡開していない状態にまで復帰することになる。そのため、アンカー30を取付穴2から引き抜くことによって、容易に回収することができる。
次に、本発明の実施の形態に係るアンカー30の引き抜き荷重の実験データについて説明する。図17は、引き抜き変位量[mm]と引き抜き荷重[kgf]との関係を示す実験データである。このデータは、アンカー30にボルト20を締結して、食い込み部W3を取付穴2の内周面に食い込ませた状態で、アンカー30を10mm/minの速度で引き抜いたときの引き抜き加重と引き抜き変位量を測定したものである。
図17において、符号80は、本発明の発泡コンクリート用アンカー30のデータを示す。また、符号81は、資料1(市販品、鋼製)のデータ、符号82は、資料2(市販品、樹脂製)のデータ、符号83は、資料3(市販品、樹脂製)のデータ、符号84は、資料4(市販品、通常のタッピングボルト)のデータを示す。
図17のグラフから分かるように、本発明の発泡コンクリート用アンカー30は、他の市販品のアンカーと比較して、約2倍の引き抜き荷重を許容できることが分かった。また、破断までの引き抜き変位量についても、本発明の発泡コンクリート用アンカー30は、他の市販品のアンカーと比較して、約2倍の長さとなることが判明した(図17のグラフでは、22mm位までのデータしか記載していないが、符号80のデータは、約40mmのところまで延びている)。
これらの結果から、本発明の発泡コンクリート用アンカー30は、金属のみ或いは樹脂のみで構成した他のアンカーと比較して、引き抜き荷重および引き抜き変位量を約2倍に高めることができる。
本発明の実施の形態に係る発泡コンクリート用アンカーによれば、長手方向に延びる分割面71に沿って分割可能な樹脂製の本体部70を備え、この本体部70には、外側面に複数の食い込み歯37、37、…を有する食い込み部W3と、この食い込み部W3よりも基端部30a側に位置する可撓部W2とを有し、ボルト20が挿入されることによって可撓部W2が撓んで食い込み部W3が拡開されるようになっており、食い込み部W3には、本体部70の分割面71側に取り付けられ、かつ食い込み部W3の長手方向に延びる金属製のクロウ50、50が取り付けられているので、クロウ50、50の剛性によって食い込み部W3が湾曲する(撓む)のを防止することができる。そのため、食い込み部W3を樹脂のみで構成する場合と比較して、より強固に食い込み歯37を取付穴2の内周面に食い込ませることができる。その結果、クロウ50、50が金属製であるメリットを生かして、大きな引き抜き荷重を許容することができるアンカー30を提供できるようになる。
また、樹脂で構成された可撓部W2で撓ませて食い込み部W3を拡開させることによって、十分な撓みを得ることができる。また、ボルト20を取り外したときには、可撓部W2の弾性によって拡開状態が元に復帰するようになるため、取付穴2からアンカー30を引き抜き易くなる。その結果、周囲の発泡コンクリート1を壊すことなく、アンカー30を容易に回収することができるようになる。
また、クロウ50、50には先端部30b側の端部が折り曲げられた外側返し部51b、51bが設けられ、本体部70に取り付けられた状態で、外側返し部51b、51bが本体部70の外面から表出しているので、この外側返し部51b、51bが食い込み歯37と同じように取付穴2の内周面に食い込むようになる。特に、この外側返し部51b、51bは金属製であるため、より強固に内周面に食い込むようになる。そのため、樹脂製の食い込み歯37のみを内周面に食い込ませる場合と比較して、アンカー30をより強固に取り付けることができる。
さらに、外側返し部51b、51bに、発泡コンクリート1に食い込ませるための食い込み爪52、52が形成されているので、この食い込み爪52、52がさらに取付穴2の内周面に深く食い込むようになる。そのため、アンカー30をさらに強固に取り付けることができる。
また、クロウ50、50には、本体部70の長手方向に沿って延在し、ボルト20を先端部30b側に案内するボルト誘導溝54、54が形成されているので、挿入されるボルト20の押し込み部22がこのボルト誘導溝54、54と接触しながら長手方向に進むようになる。また、この押し込み部22がボルト誘導溝54,54と接触しながら、このボルト誘導溝54、54からずれることなくクロウ50、50を左右へ押し開く(拡開する)ようになる。さらには、ボルト20の取り外しの場合にも同様に、押し込み部22がボルト誘導溝54、54と接触しながら引き出されるようになる。そのため、ボルト20の挿入・引き出し動作、および食い込み部W3の拡開・復帰動作がスムーズに行われるようになる。
さらに、クロウ50、50には、基端部30a側の端部が折り曲げられた内側返し部51c、51cが設けられ、本体部70には、内側返し部51c、51cが折り曲げられた方向であって、長手方向と略直交する方向に開口するクロウ用係合穴36が形成されているので、ボルト20を挿入する際に、クロウ50、50に作用する長手方向への力を、この内側返し部51c、51cで受けることができる。特に、内側返し部51c、51cの折り曲げ方向は、アンカー30の長手方向と一致しない方向であり、略直交する方向であるため、上述した長手方向への力によって、クロウ50、50が長手方向にずれることがなくなる。
一方、本体部70には、可撓部W2よりも基端部30a側に固定部W1が設けられ、固定部W1にボルト20の雄ねじ部21が螺合する金属製のナット40が取り付けられているので、ボルト20の雄ねじ部21を金属製のナット40で受けることができる。そのため、樹脂製のナット40と比較して、締結強度を高めることができる。
また、金属製のナット40を使用することで、電動工具などで大きなトルクで締め付けることができる。また、大きなトルクで締め付けた際のねじ部の破損を防止することができる。
また、アンカー30は、クロウ50、50およびナット40以外の部位をすべて樹脂材料で形成しているので、安価に製造でき、かつアンカー30全体を軽量化することができる。
また、本体部70は2つの半割部材31、31を組み付けて構成されており、ナット40には、2つの半割部材31、31に向かってそれぞれ突出し、2つの半割部材31、31を固定する少なくとも2つの突部41、41が設けられているので、固定部W1において、2つの半割部材31、31同士をナット40の突部41で連結することにより、2つの半割部材31、31が固定部W1で拡開しないように固定することができる。
さらに、2つの半割部材31、31にナット用係合穴34をそれぞれ設けるとともに、突部41に係合爪43を設け、ナット用係合穴34に係合爪34をそれぞれ係合させて固定しているので、半割部材31、31同士をさらに強固に連結することができる。特に、ボルト20を大きなトルクで締結した場合であっても、半割部材31、31とナット40との間で空転しないようにすることができる。
以上、本発明の実施の形態に係る発泡コンクリート用アンカーについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、本体部70を2つの半割部材31、31で構成しているが、これに限定されるものではない。例えば、可撓部W2および食い込み部W3の部分にだけスリットなどを入れてこれらの部分(一部)だけが分割して拡開可能に形成するもの(他の部位が一体となっているもの)であってもよい。すなわち、樹脂材料のメリットである可撓性を享受する可撓部W2と、金属材料のメリットである剛性を享受する食い込み部W3とが共に拡開可能に構成されていれば、本発明の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、半割部材31、31を用いた半割面71を形成しているが、完全に半割でなくてもよい。すなわち、左右に分割可能であればよく、半分に分割(分離)するものでなくてもよい。
また、本実施の形態では、本体部70を2つの半割部材31、31で構成しているが、2分割に限定されない。例えば、4分割など、分割数を増やして本体部70を構成したとしても、その分割数に合わせてクロウ50、50、…を設けることで、本発明の効果を得ることができる。
さらには、締結可能なボルト20の替わりに、アンカー30に挿入するだけのピンを用いる場合には、本実施の形態の固定部W1は設けずに構成することもできる。
さらにまた、クロウ50、50の外側返し部51b、51bと内側返し部51c、51c、および食い込み爪52、52と係合爪53、53をそれぞれ同一形状にすることで、クロウ50、50の両端の形状を同一にすることもできる。これにより、作業者がクロウ50、50を組み付ける際に、クロウ50、50の長手方向における向きを気にすることなく作業することができるようになる。
1 発泡コンクリート
2 取付穴
3 配管
4 配管ステイ
4a ステイの取付部
10 アンカーボルト
20 ボルト
21 雄ねじ部
22 押し込み部
22a 先端部
28 ボルト挿通穴
29 肉盗み部
30 発泡コンクリート用アンカー(アンカー)
30a 基端部
30b 先端部
31 半割部材
32 位置決め用ボス
33 位置決め用穴
34 ナット用係合穴
35 ナット用係合溝
36 クロウ用係合穴
37 食い込み歯
38 突条部
39 ボルト受け面
40 ナット
41 突部
41a 頂部
41b 傾斜面
42 雌ねじ穴
43 係合爪
50 クロウ
51a ボルト受け部
51b 外側返し部(返し部)
51c 内側返し部(第2の返し部)
52 食い込み爪
53 係合爪
54 ボルト誘導溝
70 本体部
71 半割面(分割面)
80 本発明のアンカーの実験データ
81、82、83、84 市販品のアンカーの実験データ
W1 固定部
W2 可撓部
W3 食い込み部

Claims (7)

  1. 発泡コンクリートに予め空けられた取付穴に挿入され、ボルトまたはピンが挿入されることで前記発泡コンクリートに固定される発泡コンクリート用アンカーであって、
    長手方向に延びる分割面に沿って全部または一部が分割可能な樹脂製の本体部を備え、
    この本体部には、外側面に複数の食い込み歯を有する食い込み部と、この食い込み部よりも基端部側に位置する可撓部とを有し、ボルトまたはピンが挿入されることによって前記可撓部が撓んで前記食い込み部が拡開されるようになっており、
    前記食い込み部には、前記本体部の分割面側に取り付けられ、かつ前記食い込み部の長手方向に延びる金属製のクロウが取り付けられており、
    前記クロウには先端部側の端部が折り曲げられた返し部が設けられ、前記本体部に取り付けられた状態で、前記返し部が前記本体部の外面から表出していることを特徴とする発泡コンクリート用アンカー。
  2. 前記返し部に、発泡コンクリートに食い込ませるための食い込み爪が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡コンクリート用アンカー。
  3. 前記クロウには、前記本体部の長手方向に沿って延在し、前記ボルトまたはピンを先端部側に案内する誘導溝が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発泡コンクリート用アンカー。
  4. 前記クロウには、基端部側の端部が折り曲げられた第2の返し部が設けられ、
    前記本体部には、前記第2の返し部が折り曲げられた方向に開口するクロウ用係合穴が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の発泡コンクリート用アンカー。
  5. 前記本体部には、前記可撓部よりも基端部側に固定部が設けられ、前記固定部に前記ボルトが螺合する金属製のナットが取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の発泡コンクリート用アンカー。
  6. 前記本体部は2つの半割部材を組み付けて構成されており、
    前記ナットには、2つの前記半割部材に向かってそれぞれ突出し、2つの前記半割部材を固定する少なくとも2つの突部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の発泡コンクリート用アンカー。
  7. 2つの前記半割部材に係合穴をそれぞれ設けるとともに、前記突部に係合爪を設け、前記係合穴に前記係合爪をそれぞれ係合させて固定していることを特徴とする請求項6に記載の発泡コンクリート用アンカー。
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