JP4060415B2 - 板状ファスナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、石膏ボード壁等に部材や器具をビスで取り付けるために用いる板状ファスナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
石膏ボードを用い、裏面側に手が入らないような条件で構築されている壁に部材や器具を取り付ける従来の手段は、ドリルを用いて壁に孔を穿設し、この孔にプラグを差し込み、該プラグを内部で拡張させて引っ掛かり部を作り、このプラグに螺入するビスで壁に部材や器具を取り付ける構造が採用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、石膏ボードは材質的に脆く、上記従来の手段のように、壁の孔内でプラグを拡張させてアンカーとする方法は、強い耐引き抜き力が出ないと共に、締結感も弱く、ビスを強く締めると共回りが発生し、抜け出るという問題がある。
【0004】
そこで、この発明の課題は、耐引張り強度に優れ、ガッチリとした締結感が得られると共に、共回りの発生がなく、部材や器具を壁に対して強固に固定化できる板状ファスナーを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、先端が尖った打ち込み部と、この打ち込み部の後端に打ち込み端部を残した状態で該打ち込み部の途中から一面側に角度をもって連なる延長部とを、折り曲げ可能な一枚の薄板材で連成し、前記打ち込み部にビスの螺合孔と、延長部にビスの挿入孔を各々設けた板状ファスナーにおいて、前記打ち込み部の形成部分と延長部の形成部分を折り曲げ可能な一枚の薄板材で連成し、この薄板材における打ち込み部形成部分の後端部に該当する中央位置にコ字状の切れ目を入れ、薄板材の該切れ目を挟む両側の部分を屈曲させることにより、打ち込み部と延長部を角度をもって形成し、前記打ち込み部は、切れ目で囲まれた部分が残って後方に延び、その後端が打ち込み端部となる構成を採用したものである。
【0006】
請求項2の発明は、先端が尖った打ち込み部の形成部分と延長部の形成部分を折り曲げ可能な一枚の薄板材で同一平面のフラットな状態に連成し、この薄板材の途中に施した切れ目の部分から前を打ち込み部、後ろを延長部とし、前記打ち込み部は、切れ目で残った部分が後方に延び、その後方に延びる部分の後端を一面側に屈曲させた屈曲部とし、前記打ち込み部にビスの螺合孔と、延長部にビスの挿入孔を各々設けた構成を採用したものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、上記薄板材の途中にコ字状の切れ目を施し、このコ字状の切れ目で囲まれた部分が打ち込み部の後方に延びる部分になっている構成を採用したものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、上記薄板材の途中で両側の位置にL字状の切れ目を施し、このL字状の切れ目における内側部分が打ち込み部の後方に延びる部分になっている構成を採用したものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかの発明において、打ち込み部に設けたビスの螺合孔が薄板材の長さ方向に長い長孔に形成され、その長孔の内周壁に複数の突起を有する構成を採用したものである。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れかの発明において、打ち込み部に設けたビスの螺合孔が独立した複数の孔によって形成されている構成を採用したものである。
【0011】
ここで、請求項1の板状ファスナーは、打ち込み部を石膏ボード壁に対して斜めに打ち込み、打ち込み部の後端が壁の表面にまで進入すると、延長部を打ち込み部の前後方向に沿って延長状となるよう伸ばし、延長部の後端を打撃して打ち込みを続ける。
【0012】
打ち込み部が壁を完全に貫通すると、打ち込み部と延長部は屈曲形状に戻り、全体を手前に引くと打ち込み部は背の背面に引っ掛って密着し、この状態で延長部を壁の表面に沿って折り曲げ、挿入孔から螺合孔に向けてビスをねじ込めば、壁面に部材や器具を締結することができる。
【0013】
また、請求項2から4の板状ファスナーは、石膏ボード壁に対して斜めに打ち込み、打ち込み部の全長が壁を貫通すると全体を引き戻し、これにより切れ目後端の屈曲部分が戻り止めとなり、打ち込み部は壁の背面に密着し、この後請求項1と同様、延長部の折り曲げとビスのねじ込みを行う。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0015】
図1乃至図4に示す第1の実施形態において、板状ファスナー1は、折り曲げが可能な一枚の金属薄板材を素材に用い、先端が尖った打ち込み部2と、この打ち込み部2の後端に打ち込み端部3を残した状態で該打ち込み部2の途中から一面側に角度をもって連なる延長部4とを連成し、打ち込み部2の幅方向中央位置にビス5の螺合孔6と、延長部4の幅方向中央位置にビス5の挿入孔7を設けた構造になっている。
【0016】
上記打ち込み部2は、ビス5を螺締する座金の役目をし、尖った先端8の両側が後方に傾斜し、この傾斜部分に複数の尖鋭刃9が並べて設けられ、ビス5の螺合孔6は、ビス5に形成したねじの谷径が適合する直径のものを、前後方向に複数個、順次ラップするようなピッチで一列に並べて設けることにより、長孔の内周壁に複数の突起を設けた形状に形成されている。
【0017】
前記延長部4は、打ち込み部2の途中で両側の連成部10、10を介して該打ち込み部2と連なる帯板状に形成され、両側の連成部10、10を弧状に屈曲させることにより、打ち込み部2に対して一面側へ適当な角度をもって連なっている。
【0018】
この延長部4に設けたビス挿入孔7は、ビス5のねじにおける山径が通過可能な直径とし、また、延長部4の後端には、下面側へ直角に屈曲する折り曲げ片11を設け、打ち込みに便利なようにしてもよく、この場合、延長部4の後端を折り取れるよう、延長部4の後端側に折り取り用の透孔12とスリット13を設けるようにする。
【0019】
上記打ち込み部2と延長部4を一枚の金属薄板材から連成するには、打ち込み部2の形成部分と延長部の形成部分を一体に有する大きさ及び形状の薄板材を用意し、この薄板材の打ち込み部2を形成する部分の後端部に該当する中央位置に平面コ字状の切れ目14を入れ、この切れ目14を挟む両側の部分を連成部10、10とし、打ち込み部2に対して延長部4を連成部10、10の部分で屈曲させて角度をもたせている。
【0020】
打ち込み部2は、切れ目14で囲まれた部分がフラットのままで残って後方に延び、その後端部が打ち込み端部3になる。
【0021】
第1の実施形態の板状ファスナーは上記のような構成であり、図2乃至図4を用いてその使用方法を説明する。
【0022】
背面側に手の入らない条件にある石膏ボードの壁15の表面に対し、図2(A)の如く打ち込み部2を傾斜状に臨ませ、該打ち込み部2をハンマーによる打ち込み端部3の打撃によって傾斜状に打ち込み、打ち込みの進行と共に打ち込み部2が形成した通過孔16内に連成部10、10が進入することにより、図2(B)の如く、屈曲していた延長部4が打ち込み部2の前後方向に直線の延長状となり、この後は延長部4の後端を打撃して打ち込みを続ける。
【0023】
打ち込み部2が壁15を完全に貫通すると、打ち込みをやめ、図2(C)の如く、薄板材の復元弾性により、打ち込み部2と延長部4は元の角度をもった状態に戻り、次に、図3(D)の如く、延長部4を手前に引き戻すと、打ち込み部2は壁15の背面に密着し、壁15に対して板状ファスナー1は抜け止め状になる。
【0024】
この後、延長部4の後端を図3(E)に示すように、透孔12とスリット13の部分で折り取り、次に、図3(F)の如く、延長部4の壁15から突出する部分を折り曲げて壁15の表面に重ねる。これによって板状ファスナー1は、打ち込み部2と延長部4で壁15を背面側と表面側から挟んだコ字状となる。
【0025】
次に、壁15の表面に対して部材17の取り付けを行うには、図4に示すように、延長部4の表面に部材17を重ね、この部材17に挿通したビス5を挿入孔7の部分から壁15にねじ込み、壁15に進入したビス5は打ち込み部2に設けた螺合孔6に螺合し、このビス5の螺締により板状ファスナー1をアンカーとして部材17を壁15に締結することができる。
【0026】
板状ファスナー1は、打ち込み部2と延長部4で壁15を両面から挟み、延長部4に設けた挿入孔7から螺入したビス5を打ち込み部2の螺合孔6に螺合して部材17を締結するので、背面に手が入らないような壁に対して表面側から部材や器具の取り付けが行えると共に、石膏ボードが破壊されるまでの締結強度が得られ、しかも、板状の連成部10、10が壁15を貫通することにより、ビス5の螺締に対して共回りの発生がなく、ガッチリとした締結感が得られる。
【0027】
次に、図5(A)乃至(C)に示す板状ファスナー1の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態の前記第1の実施形態と同一部分については同一符号を付して説明に代える。以降の実施形態も同様である。
【0028】
この第2の実施形態は、基本的には第1の実施形態と同じであるので、構造の相違点のみを説明する。第2の実施形態のファスナー1は、打ち込み部2と延長部4を等しい幅とし、延長部4の幅方向中央部に設けた挿入孔7を、延長部4の長さ方向に沿う長孔に形成すると共に、打ち込み部2に設けた尖鋭刃9を直線状の刃としている。
【0029】
また、打ち込み部2の螺合孔6は、ビスの谷径が適合する独立した孔を複数設けることによって形成されている。この独立した孔の数や配置、形状等は任意に設定すればよく、例えば形状においては、図示の円形以外に、角形、長円、異形孔等が採用でき、このように、螺合孔6を独立した複数の孔とすることにより、ビス5の螺合可能な範囲が広くなり、ビス5による締結作業が円滑に行えるという利点がある。
【0030】
図6(A)乃至(C)に示す第3の実施形態のファスナー1は、一枚の金属薄板材を用い、打ち込み部2と延長部4を同一平面のフラットな状態に連成し、打ち込み部2の後部側で幅方向中央位置に平面コ字状の切れ目14を施し、該切れ目14で囲まれた部分の後端が一面側へ弧状に屈曲して抜け止め用となる屈曲部18になっている。
【0031】
この第3の実施形態では、打ち込み部2の先端両側の傾斜部分がテーパ状の刃先9aとなり、打ち込み部2に設けた螺合孔6は、ビス5の谷径が合致する幅の長孔によって形成されている。
【0032】
図7に示す第4の実施形態は、上記第3の実施形態の変形例であり、打ち込み部2の後端部分の両側にL字状の切れ目14a、14aを入れ、両切れ目14a、14a間の部分を打ち込み部2と延長部4の連成部10とし、両切れ目14a、14aの後端部分を屈曲部18としたもので、使用の方法は第3の実施形態と同じである。
【0033】
第3と第4の実施形態の板状ファスナーは上記のような構成であり、図8(A)の如く、板状ファスナー1を延長部4の後端からの打撃により、石膏ボード壁15に対して傾斜状に打ち込み、打ち込み部2の全長が壁15を貫通すると、図8(B)の如く延長部4を手前に引き戻す。
【0034】
この引き戻し時に屈曲部18が壁15の背面に当接する戻り止となるので、引き戻し力の加わった打ち込み部2は壁15の背面に圧接し、打ち込み部2と延長部4は連成部10の部分で屈曲する。
【0035】
壁15の背面に打ち込み部2が圧接すると、延長部4の壁15から突出する部分を図8(C)の如く、壁15の表面に重なるように折り曲げ、打ち込み部2と延長部4で壁15を挟み込み、この後第1の実施形態と同じように、ビス5を用いて部材17の締結を行う。
【0036】
なお、第1と第2の実施形態において、打ち込み部2と延長部4に角度をもたせるために設ける切れ目は、第4の実施形態で示したように、打ち込み部の両側にL字状の切れ目を設け、両切れ目間の連成部を弧状に屈曲させる構造を採用してもよいと共に、各実施形態の刃先や螺合孔、挿入孔等の形状や構造は相互に置換することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、この発明によると、石膏ボード壁を打ち込み部と延長部でコ字状に挟み込むので、ビスによる部材や器具の締結時の引張り強度は、石膏ボードが破壊されるまでの最大となり、脆い石膏ボードに対して部材や器具を強固に固定化することができる。
【0038】
また、薄板材が石膏ボード壁を貫通するので、ビスの螺締時における共回りの発生がなく、背面側の打ち込み部に対してビスを締結するので、ガッチリとした締結感が得られ、しかも、ハンマーとドライバーを用いて簡単に施行でき、作業性に優れていると共に、一枚の薄板材から打抜き形成できるので、コスト的にも安価である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は板状ファスナーの第1の実施形態を示す斜視図、(B)は同側面図、(C)は平面図
【図2】(A)乃至(C)は板状ファスナーの打ち込み工程の前半を順番に示す断面図
【図3】(D)乃至(F)は上記打ち込み工程の後半を順番に示す断面図
【図4】(A)は打ち込み状態を示す正面図、(B)は部材の取り付け状態を示す横断面図
【図5】(A)は板状ファスナーの第2の実施形態を示す斜視図、(B)は同側面図、(C)は同平面図
【図6】(A)は板状ファスナーの第3の実施形態を示す斜視図、(B)は同平面図、(C)は同側面図
【図7】(A)は板状ファスナーの第4の実施形態を示す斜視図、(B)は同平面図、(C)は側面図
【図8】(A)乃至(C)は第4の実施形態の打ち込み工程を順番に示す断面図
【符号の説明】
1 板状ファスナー
2 打ち込み部
3 打ち込み端部
4 延長部
5 ビス
6 螺合孔
7 挿入孔
8 先端
9 尖鋭刃
10 連成部
15 壁
17 部材
Claims (6)
- 先端が尖った打ち込み部と、この打ち込み部の後端に打ち込み端部を残した状態で該打ち込み部の途中から一面側に角度をもって連なる延長部とを、折り曲げ可能な一枚の薄板材で連成し、前記打ち込み部にビスの螺合孔と、延長部にビスの挿入孔を各々設けた板状ファスナーにおいて、
前記打ち込み部の形成部分と延長部の形成部分を折り曲げ可能な一枚の薄板材で連成し、この薄板材における打ち込み部形成部分の後端部に該当する中央位置にコ字状の切れ目を入れ、薄板材の該切れ目を挟む両側の部分を屈曲させることにより、打ち込み部と延長部を角度をもって形成し、前記打ち込み部は、切れ目で囲まれた部分が残って後方に延び、その後端が打ち込み端部となる板状ファスナー。 - 先端が尖った打ち込み部の形成部分と延長部の形成部分を折り曲げ可能な一枚の薄板材で同一平面のフラットな状態に連成し、この薄板材の途中に施した切れ目の部分から前を打ち込み部、後ろを延長部とし、前記打ち込み部は、切れ目で残った部分が後方に延び、その後方に延びる部分の後端を一面側に屈曲させた屈曲部とし、前記打ち込み部にビスの螺合孔と、延長部にビスの挿入孔を各々設けた板状ファスナー。
- 上記薄板材の途中にコ字状の切れ目を施し、このコ字状の切れ目で囲まれた部分が打ち込み部の後方に延びる部分になっている請求項2に記載の板状ファスナー。
- 上記薄板材の途中で両側の位置にL字状の切れ目を施し、このL字状の切れ目における内側部分が打ち込み部の後方に延びる部分になっている請求項2に記載の板状ファスナー。
- 打ち込み部に設けたビスの螺合孔が薄板材の長さ方向に長い長孔に形成され、その長孔の内周壁に複数の突起を有する請求項1乃至4の何れかに記載の板状ファスナー。
- 打ち込み部に設けたビスの螺合孔が独立した複数の孔によって形成されている請求項1乃至4の何れかに記載の板状ファスナー。
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