JP5892644B2 - 車両のバッテリ装置 - Google Patents
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Description
以上の不具合に着目した対策として、車両衝突時などにバッテリ電力を遮断する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該特許文献1に開示された技術では、車両衝突時にバッテリ電力を手動及び自動で遮断可能としている。即ち、運転席や車両外部にマニュアルカットスイッチを設けると共に、衝突検知センサに連動して作動する自動カットスイッチを設け、何れのスイッチが作動したときでもバッテリ電力を遮断するように構成されている。
車両外部のマニュアルカットスイッチは、主に事故処理にあたる救急隊員による操作を想定して設けられ、救急隊員は車種毎のマニュアルカットスイッチの設置位置が事前に知らされ、事故現場への到着直後にマニュアルカットスイッチを操作することで安全確保を図っている。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車両衝突時のマニュアルカットスイッチへの衝撃入力による破損を未然に防止でき、スイッチ操作によりバッテリ電力を確実に遮断することができる車両のバッテリ装置を提供することにある。
従って、車両衝突時の衝撃が側面カバーを含むクラッシャブルゾーンを破損させることで緩和されるため、非クラッシャブルゾーン内に配設されたカットスイッチの破損が防止される。そして、車両衝突に伴って変形したカバー部材によりカットスイッチが押圧操作されることから、カットスイッチに対する手動操作を待つことなく、側突事故が発生した時点で速やかにバッテリ電力を遮断することができる。しかも、バッテリユニットを支持する支持構造体を車外側に突出させるだけで、非クラッシャブルゾーンを適切な領域として形成することができる。
従って、衝撃が過剰な場合、支持構造体が大きく変形する以前により強度が低いシャシフレームが捩れ始めることから、支持構造体が他車から逃げる方向に位置変位する。よって、それ以上の側面カバーの変形が抑制され、カットスイッチの破損を未然に防止することができる。
図1は本発明のバッテリ装置が搭載されたトラックを左側方より見た正面図、図2は同じくバッテリ装置を左側方より見た部分拡大図、図3は同じくバッテリ装置を後方より見た図2のIII−III線断面図である。
トラックのシャシフレーム1は、車両の前後方向に延設された左右一対のサイドメンバ2(左側のみ図示)、及びこれらのサイドメンバ2を前後方向の複数箇所で相互に連結する図示しない複数のクロスメンバからなる所謂ラダーフレームとして構成されている。
モータを運転するための電気系統はバッテリ装置3として集約され、本実施形態では、車両の左側部に相当する左サイドメンバ2の外側面にバッテリ装置3が配設されている。全体としてバッテリ装置3は、左サイドメンバ2に対して固定された取付ブラケット4、取付ブラケット4の下部に連続して設けられたバッテリマウント5(支持構造体)、バッテリマウント5上に載置・固定されてバッテリユニットを収容するバッテリボックス6、及びインバータなどの電気系統から構成されている。
図示はしないが、取付ブラケット4及びバッテリマウント5は多数の枠材をプレス成型して製作され、格子状をなす一つの強固な構造体として機能するようになっている。このような構成により取付ブラケット4及びバッテリマウント5は十分な強度を有し、他車の側突により左側方から受けた衝撃に対しても大きく変形することなく十分に耐え得る。
図2に示すように、バッテリマウント5の上面は車両前側が高く後側が低くなるように段差5aが形成され、前側の高い面を上段載置面5b、後側の低い面を下段載置面5cとしている。バッテリマウント5上には上記バッテリボックス6が配設され、バッテリボックス6の下面はバッテリマウント5の下面と対応するように段差状に形成されている。これによりバッテリボックス6はバッテリマウント5上に安定して載置されると共に、その右側面を取付ブラケット4に対して密着させ、これらのバッテリマウント5及び取付ブラケット4に対して図示しないボルトで固定されている。
図3に示すように、前後方向の全ての領域においてバッテリマウント5の左側面はバッテリボックス6の左側面よりも寸法Lwだけ左側方に向けて突出している。換言すれば、左側方から見ると、バッテリボックス6の左側面はバッテリマウント5の左側面よりも寸法Lwだけ奥まった位置にある。
ところで、車両衝突などによりバッテリボックス6自体或いはその電気系統が破損すると、ショートによる二次的な損害が発生する場合がある。そこで、本実施形態のトラックには衝突時などにバッテリ電力を遮断する機能が備えられている。
車両衝突時などのバッテリ電力の遮断は、運転席に設けられた車室内カットスイッチ(図示なし)、車両外部に設けられた車室外カットスイッチ12、衝突時に自動的に作動する自動カットスイッチ(図示なし)の何れかにより実行される。車室内カットスイッチ及び車室外カットスイッチ12は共に手動操作によりバッテリ電力を遮断するカットスイッチであり、設置位置が相違するだけで機能は共通する。自動カットスイッチは車両の前突や側突を検出する衝突検知センサが接続され、衝突検知センサによる衝突検出に基づき自動的に作動してバッテリ電力を遮断する。
[発明が解決しようとする課題]でも述べたように、車室外カットスイッチ12は主に事故処理にあたる救急隊員による手動操作を想定しているため、救急隊員が容易に発見及び操作可能な位置に配設する必要がある。必然的に車室外カットスイッチ12は車両衝突時の衝撃を直接受け易くなり、破損により操作不能となる可能性がある。このような不具合を鑑みて、本実施形態のバッテリ装置3では車室外カットスイッチ12の破損防止の対策を講じており、以下、その詳細を説明する。
本実施形態の車室外カットスイッチ12は車両の左側部、即ちバッテリ装置3の第2収容空間S2内に配設されている。車室外カットスイッチ12は左右方向に延びる円筒状をなし、その基端(右端)がバッテリボックス6の左側面に固定されている。車室外カットスイッチ12の左右長さは上記寸法Lwよりも短く、このため車室外カットスイッチ12の先端(左端)は側面カバー11の右側面から離間している。
車室外カットスイッチ12はバッテリマウント5の段差5aの近接位置に配設されている。詳しくは車室外カットスイッチ12は、バッテリマウント5の段差5aよりも若干後方且つバッテリマウント5の上段載置面5bよりも若干下方に配設されている。従って、車室外カットスイッチ12の前側及び下側の近接位置で、バッテリマウント5が左側方に向けて突出していることになる。
図3,4に示すように、側面カバー11には車室外カットスイッチ12と対応する箇所に操作窓11aが貫設されている。操作窓11aは車両前後方向に延びる長孔状に形成され、その前部及び後部は半円状をなしている。操作窓11aの前部は車室外カットスイッチ12の操作ボタン12aに対して同心円で対応し、半円状をなす前部の直径d(操作窓11aの上下幅でもある)は操作ボタン12aの直径Dよりも若干小さく設定されている。このため左側方より見たときに操作窓11aを介して操作ボタン12aの先端を視認して押圧操作可能であると共に、操作窓11aの前部周囲の略半円状をなす領域が操作ボタン12aの先端とオーバーラップしている。図示はしないが、側面カバー11の外側面には車室外カットスイッチ12の存在を示す表示がなされ、救急隊員などが発見し易いように配慮されている。
また、車室外カットスイッチ12の操作ボタン12aの基端には、図5中にハッチングで示すように環状の表示部12bが設けられている。表示部12bは操作ボタン12aの突出位置では車室外カットスイッチ12の外周に露出しており、操作ボタン12aの没入位置への切換に伴って操作ボタン12aにより隠蔽される。操作窓11aが車室外カットスイッチ12の位置から後方に向けて延設されているため、図中に矢印で示す斜め後方から操作窓11aを覗き込むことにより、表示部12bの露出・隠蔽、ひいては操作ボタン12aの切換状態を判別し得るようになっている。
ところで、上記のように車室外カットスイッチ12は車両の左側部に配設されていることから、他車に左方から衝突された側突時に破損する可能性がある。主に車両の美観や防水・防塵などを目的とした側面カバー11の強度は低いため、左方からの側突では側面カバー11が比較的容易に変形して第2収容空間S2を右側方に向けて狭め、それに伴って車室外カットスイッチ12が破損する可能性が高まる。しかしながら、本実施形態では、強固な構造体であるバッテリマウント5の左側面により車両側突に伴う車室外カットスイッチ12の破損が防止されると共に、この側突時の側面カバー11の変形を利用して車室外カットスイッチ12が自動的に押圧操作される。
即ち、他車の側突により破損しながら衝撃を吸収する領域であるクラッシャブルゾーンCZ1、及び破損を免れる領域である非クラッシャブルゾーンCZ2は、バッテリマウント5の左側面の左右位置に大きく依存する。具体的には図3に示すように、バッテリマウント5の左側面よりも若干右方位置を境界として、左方(車外側)をクラッシャブルゾーンCZ1と見なし、左方(車内側)を非クラッシャブルゾーンCZ2と見なすことができる。特に、バッテリマウント5が車室外カットスイッチ12の前側及び下側の近接位置で左側方に向けて突出していることから、車室外カットスイッチ12の周辺では、クラッシャブルゾーンCZ1と非クラッシャブルゾーンCZ2とが一層明確に区画されている。
そして、他車の側突を受けたときの側面カバー11は、第2収容空間S2を狭めながらクラッシャブルゾーンCZ1の右端まで変形する。側面カバー11の操作窓11aの前部周囲が車室外カットスイッチ12の操作ボタン12aの先端とオーバーラップし、且つ操作ボタン12aの先端部分がクラッシャブルゾーンCZ1内に進入しているため、変形に伴って側面カバー11は突出位置の操作ボタン12aの先端に当接して右方に向けて押圧操作する。側突による衝撃は側面カバー11を変形させクラッシャブルゾーンCZ1内の機器を破損させることで緩和されるため、多くの側突では側面カバー11による操作ボタン12aの押圧操作が緩やかに行われる。クラッシャブルゾーンCZ1の右端位置で側面カバー11は変形を終えて操作ボタン12aに対する押圧操作を中止し、この時点で操作ボタン12aが没入位置に切り換えられてバッテリ電力が遮断される。
従って、左方からの側突時であっても車室外カットスイッチ12への直接的な衝撃入力による破損を未然に防止でき、しかも、側突に伴って変形した側面カバー11により操作ボタン12aを押圧操作して、車室外カットスイッチ12を自動的に作動させることができる。このため事故現場への救急隊員の到着を待つことなく、側突事故が発生した時点で速やかにバッテリ電力を遮断でき、ショートによる二次的な破損を確実に防止することができる。
なお、側突時には第2収容空間S2内のモータ冷却用のラジエータなどの機器、特にクラッシャブルゾーンCZ1内に配設された機器が破損することになるが、これらの機器は電気系統とは直接的に関係ないため、ショートによる二次的な破損の要因にはならない。
しかし、衝撃が不足して側面カバー11により操作ボタン12aが押圧操作されない場合であっても、非クラッシャブルゾーンCZ2に位置する車室外カットスイッチ12は破損を脱がれて正常な機能を維持している。このため、変形した側面カバー11の操作窓11aを介して救急隊員が操作ボタン12aを手動で押圧操作可能であり、自動的な押圧操作時に比較すればタイミング的に若干遅れるものの確実にバッテリ電力を遮断することができる。
また、元々バッテリマウント5は、バッテリボックス6の載置・固定、及び内部への機器の収容のために強固な構造体として製作された既存の部材である。そして、本実施形態では、バッテリマウント5の左側面をバッテリボックス6よりも左方に突出させるだけで、第2収容空間S2内に非クラッシャブルゾーンCZ2を適切な領域、具体的には車室外カットスイッチ12の破損防止及び操作ボタン12aの自動的な押圧操作を実現可能な適切な領域として形成できる。よって、バッテリ装置3の全体的な構成を大幅に変更することなく実施できるという利点もある。
図3に基づいて述べたように、バッテリマウント5は左サイドメンバ2から取付ブラケット4を介して吊下されて寸法Lhだけ下方に位置している。他車の側突による衝撃の大半は構造体であるバッテリマウント5に入力され、このとき左サイドメンバ2は、左側方からの衝撃と共に図6に矢印で示す反時計回りのモーメントを受ける。衝撃が過剰な場合、バッテリマウント5及び取付ブラケット4が大きく変形する以前に、より強度が低い左サイドメンバ2が右方への変形を伴って反時計回りに捩れ始める。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、パラレル方式のハイブリッド型トラックのバッテリ装置3に具体化したが、走行用動力源に電力供給するための高電圧のバッテリ装置3を装備する車両であれば、これに限定されるものではない。例えば走行用動力源としてモータを備えた電気自動車に具体化してもよいし、トラック以外のバスや乗用車に具体化してもよい。また、バッテリ装置3の搭載位置も上記実施形態に限ることはなく、車両の構造に応じて任意に変更可能であり、例えば車両の後部に設けてもよい。
また上記実施形態では、車室外カットスイッチ12に表示部12bを設けると共に、その操作ボタン12aの押圧操作によりバッテリ電力を遮断し、操作ボタン12aの回転操作によりバッテリ電力を復帰するように車室外カットスイッチ12を構成したが、これに限ることはない。例えば表示部12bを省略してもよいし、操作ボタン12aを押圧操作する毎にバッテリ電力の遮断と復帰とを交互に繰り返すように構成してもよい。
また上記実施形態では、操作窓11aの周囲の領域を操作ボタン12aの先端とオーバーラップさせることにより、他車の側突時に側面カバー11の変形に伴って操作ボタン12aを押圧操作したが、必ずしも当該機能を奏する必要はない。例えば外部から操作ボタン12aを操作可能なように、オーバーラップさせることなく操作ボタン12aの先端よりも操作窓11aを大きく形成するだけでもよい。この場合には、突出位置の操作ボタン12aの先端をクラッシャブルゾーンCZ1内に進入させる位置設定も不要になるため、車室外カットスイッチ12の全体を非クラッシャブルゾーンCZ2内に配設して破損防止を図ってもよい。
5 バッテリマウント(支持構造体)
6 バッテリボックス
11 側面カバー(カバー部材)
11a 操作窓
12 車室外カットスイッチ
CZ1 クラッシャブルゾーン
CZ2 非クラッシャブルゾーン
Claims (2)
- 走行用モータに電力供給するバッテリユニットを収容したバッテリボックスと、
車両のシャシフレームの車外側に固定されて上記バッテリボックスを支持すると共に、少なくとも一部が上記バッテリボックスよりも車外側に突出形成された支持構造体と、
上記バッテリボックスの車外側に配設されて該バッテリボックスの少なくとも一側面を覆うカバー部材と、を備え、
上記カバー部材と上記バッテリボックスとの間に、車両衝突時に上記カバー部材を変形させながら衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンが形成され、
上記カバー部材と上記バッテリボックスとの間の上記クラッシャブルゾーンよりも車内側に、上記支持構造体の車外側への突出形成部分を上記車両衝突時の衝撃に対抗させることで破損を免れる非クラッシャブルゾーンが形成され、
上記非クラッシャブルゾーン内に、押圧操作により上記バッテリユニットの電力を遮断操作可能で、且つ押圧操作されていないときに先端部分のみが上記クラッシャブルゾーン内に進入するようにカットスイッチが配設され、
上記カバー部材は、上記カットスイッチを操作するための操作窓が貫設され、該操作窓の周囲の少なくとも一部が車外側から見て上記カットスイッチの先端とオーバーラップしていることを特徴とする車両のバッテリ装置。 - 上記支持構造体は、上記車両のシャシフレームよりも高い強度に設定されると共に、該シャシフレームから所定寸法だけ下方に配設されていることを特徴とする請求項1記載の車両のバッテリ装置。
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