JP5888545B2 - ゴルフクラブ用シャフト及びゴルフ用シャフトの製造方法 - Google Patents

ゴルフクラブ用シャフト及びゴルフ用シャフトの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維強化樹脂製のゴルフクラブ用シャフトおよびその製造方法に関する。
従来より、繊維強化樹脂製のゴルフクラブ用シャフトにおいて、外観の意匠性向上のために金属メッキを施したり、金属繊維、金属箔を表層に配置したりすることが知られている(特許文献1)。また、意匠性のみならず、シャフトの機械的強度の向上を目的として、炭素繊維強化樹脂層の一層に有孔金属箔が積層されたゴルフクラブ用シャフトが知られている(特許文献2)。
以上のごとく、従来から繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトに金属箔を使用することがしられているが、金属箔を使用する多くの目的は意匠性や機械的強度の向上であり、飛距離や方向性の向上には繋がっていなかった。
実開昭50−88050号公報 特開平6−198808号公報 繊維強化樹脂製のゴルフクラブ用シャフトのある一層に金属箔を積層する場合、金属箔と繊維強化樹脂との接着力を向上させるため、パンチング等による有孔金属箔を用いることが知られているが、パンチングによる有孔金属箔の調整では、孔の形状の組み合わせや最小孔径の制限等により、孔部分の面積が制限される。そのため、繊維強化樹脂層と金属箔間の十分な接着強度得ることが出来なかったり、金属箔の金属部分の面積が増えることで、重量増となったりする問題がある。また、パンチングによる孔加工では、孔の端部が粗面化されたり、金属箔の表面から微小に突出した部分が生じたりするため、金属箔の表面平滑性が損なわれる。そのため、繊維強化樹脂層と金属箔との間に微小な空気の層を含んでしまうことでボイドの原因となったり、繊維強化樹脂層と金属箔の接着力が低下したりするなど、機械的特性の低下や繊維強化樹脂層と金属箔との層間で剥離し易くなるなどの問題があった。
本発明は、繊維強化樹脂層と金属箔の接着力を向上しながら、高い飛距離性能と方向性を兼ね備えたゴルフクラブ用シャフトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、以下の発明により上記課題が解決出来ることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
[1] 炭素繊維強化樹脂を積層してなるゴルフクラブ用シャフトであって、炭素繊維強化樹脂と共に少なくとも1層の金属シートが積層されており、前記金属シートはケミカルエッチング処理による空孔形成されたメッシュ状金属シートであり、ゴルフシャフトの細径端部から700mm〜890mmに亘る部分に前記金属シートが積層されていることを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
[2] 積層された炭素繊維強化樹脂の繊維の方向が、シャフトの長手軸方向に対して、+45°と−45°に配向されたバイアス層を有しており、金属シートがこのバイアス層よりも内側に積層されていることを特徴とする上記[1]に記載のゴルフクラブ用シャフト。
[3] キックポイントが45%以上であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のゴルフクラブ用シャフト。
[4] 炭素繊維強化樹脂と共に金属シートが積層されたゴルフクラブ用シャフトの製造方法であって、
繊維目付けが10g/m〜40g/mのガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維織布プリプレグと、ケミカルエッチング処理による空孔形成されたメッシュ状金属シートを貼り付けて複合プリプレグ1を得、
次いで、バイアス層を形成する炭素繊維に熱硬化性樹脂を予め含浸した炭素繊維プリプレグと、前記複合プリプレグ1を張り合わせて複合プリプレグ2を得、
得られた複合プリプレグ2をマンドレルに巻きつける工程を有する
ゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
本発明により、繊維強化樹脂層と金属箔の接着力を向上しながら、高い飛距離性能と方向性を兼ね備えたゴルフクラブ用シャフトを提供することが出来る。
本発明のシャフトの一実施形態例を示す図である。 実施例で使用するマンドレルおよびプレプレグを示す図である。 比較例で使用するマンドレルおよびプレプレグを示す図である。 ケミカルエッチング処理された金属シートの図柄パターンを示す図である。
<ゴルフクラブ用シャフト>
本発明のゴルフクラブ用シャフト(以下、シャフトと略す。)の一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例のシャフトの積層構成を示す。本実施形態例のシャフトは、最も内側の層がガラス繊維織布層11で、その外側にガラス繊維織布層11と同サイズの金属シート層12を有し、次いでバイアス層とストレート層とを有している。すなわち、同心円状に、ガラス繊維織布層11、金属シート層12、バイアス層21、第1のストレート層31、第2のストレート層32、第3のストレート層33、第4のストレート層34を内側から順に有する。
また、本実施形態例では、バイアス層21の表面の細径端の部分には、補強層41、補強層42を有し、さらに、ストレート層34の表面には、仕上げ研磨後に所定の外径を確保できるようにするための外径調整層43を有する。
ガラス繊維織布層11の繊維目付けは、10g/m〜40g/mが好ましく、20g/m〜30g/mが取り扱い性も良く、重量の増加も最小限に抑えることが出来るのでより好ましい。ガラス繊維の目付けが小さすぎると、織布の形態保持が難しく、巻きつけが難しくなったり、皺になったりするため好ましくない。また、ガラス繊維の目付けが大きすぎると、厚くなり過ぎてシャフト表面の凹凸が大きくなったり、重量が重くなったりするため好ましくない。なお、ガラス繊維織布層の目付けは、ガラス繊維織物自体の目付けを調整することによりコントロールすることができる。
また、ガラス繊維織布層11は、金属シート層12とシャフト本体の接着力を向上させるために用いるのが好ましい。そのためには、金属シート層12と同じ大きさか、金属シート層12より大きい方が好ましい。ただし、ガラス繊維織布層11が金属シート層12より大き過ぎると重量が大きくなってしまうため、金属シート層12の各辺より20mmを超えない範囲で大きいことが好ましい。
本実施形態例における金属シート層12は、シャフトの細径端から700mm〜890mmの長さに亘って形成されている。この範囲において、シャフトはスイング中にねじれ、曲げ、圧縮の力が加わり複合的な応力が掛かるが、この範囲に金属シート層12を配置することで、シャフトの余分なねじりを抑制することが可能となる。この範囲を超える長さで配置しても特に問題はないが、重量が重くなってしまうため好ましくない。
また、この金属シート層12はケミカルエッチングにより連続又は非連続の空孔(又は模様)が形成されたメッシュ状金属シートの層である。その製造方法には、様々な方法が知られているが、代表的な方法としては、マスキング剤を箔にコート又は転写(ドライフィルムの場合)し、現像後洗浄して流しだされ、箔の素地が見えた非露光部をエッチング剤で腐食して穿孔することで任意の形状に加工する方法が挙げられる。材料によっては露光部を洗い出す手法も知られているが、今回の発明においてエッチング方法はこだわらない。
本発明で用いるケミカルエッチング処理された金属シートとしては、種々のパターンのものが挙げられるが、例えば図4のような空孔(又は模様)が形成されたものが挙げられる。
ケミカルエッチングとは、一般に科学的には、プリント基板やEMIシールドシート、フォトスケール等に使用される精密加工手法である。シートの材料の金属としては、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀など純金属だけでなく、ステンレス系材料のような合金系の材料も使用することが出来るが、エッチング処理時の薬液管理と加工後の材料表面の非酸化性の点でステンレス系材料が好適に使用される。
本発明において、ケミカルエッチング処理された金属シート層が少なくとも1層積層させていればよく、複数層積層されていてもよい。多層になるとシャフトが重くなってしまうため、好ましくは1層若しくは2層であり、軽量化の観点からより好ましくは1層である。
上記の例では、シャフトの内部から順番にはガラス繊維織布層、ケミカルエッチング処理された金属シートの順番に積層されているが、これは1例であって、ガラス繊維織布層はなくてもよく、金属シート層が最も内層であってもよい。また、ガラス繊維織布層と金属シート層よりも内層側に炭素繊維樹脂層が存在してもよい。
バイアス層21は、炭素繊維強化樹脂製の層であり、シャフトの長手軸方向に対して+α°の配向角度で配向した炭素繊維と、シャフトの長手軸方向に対して−α°の配向角度で配向した炭素繊維とを含有する。ここで、α°は、20°〜70°、好ましくは30°〜60°である。通常、正の配向角度および負の配向角度の絶対値は同一である。
α°が小さすぎると、シャフト10の曲げ剛性が高くなるものの、ねじり剛性が小さくなり過ぎる。また、α°が大きすぎると、シャフト10の潰し剛性が高くなるものの、ねじり剛性が小さくなり過ぎてしまう。
バイアス層21を構成する+α層と−α層は、実質的に半周ずらして貼り合わせることが望ましい。+α層と−α層をずらさずに貼り合わせると、巻き付け端部の凹凸が大きくなり、外観不良や強度が低下する等の問題があるので好ましくない。また、バイアス層21を構成する+α層と−α層の厚さは、0.02mm以上0.20mm以下が好ましく、より好ましくは0.03mm以上、0.15mm以下である。バイアス層が薄すぎると巻き付け回数が多くなり過ぎたり、巻き付ける時に皺になったりすることがあるので好ましくなく、厚すぎると、硬くて巻き付けが困難になるので、好ましくない。
各ストレート層31,32,33,34は、炭素繊維強化樹脂の層であり、シャフトの長手軸方向に対して略平行に配向した炭素繊維を含有する。炭素繊維がシャフトの長手軸方向に略平行に配向していることで、曲げ剛性を高くすることができる。
また、各ストレート層31,32,33,34の厚さは0.06〜0.25mmであることが好ましく、0.08〜0.15mmであることがより好ましい。各ストレート層31,32,33,34の厚さが薄すぎると曲げ剛性を向上することができず、厚すぎるとシャフトが重くなってしまい充分な軽量化ができない。
第1のストレート層21、第2のストレート層22および第3のストレート層23は、シャフト10の長手方向の全体にわたって形成されている。
バイアス層21およびストレート層31,32,33,34を構成する樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硬化後の強度を高くできることから、エポキシ樹脂が好ましい。
バイアス層21およびストレート層31,32,33,34を構成する炭素繊維は比強度および比弾性に優れている。
また、バイアス層21を構成する炭素繊維は、引張弾性率が280〜500GPaの炭素繊維を用いることが好ましい。ここで、引張弾性率はJIS R 7608に準拠して測定された値である。
炭素繊維の引張弾性率が280GPa以上であれば、ねじり剛性をより向上させることができ、500GPa以下であれば、シャフトにした時の衝撃強度を高く保つことができる。
また、バイアス層21における繊維体積含有率は、ねじり剛性をより高くできることから、60%以上が好ましく、65%以上であることがより好ましい。また、バイアス層21における繊維体積含有率は、マトリックス樹脂と補強繊維との密着を十分にするためにはある程度の樹脂量が必要であることから、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
補強層41,42および外径調整層43は、目的の機能を果たすような寸法にされていること以外はストレート層31,32,33,34と同様のもので構成される。
上述したシャフトでは、補強層42に使用する繊維の弾性率や長さによって、キックポイントを調整することが出来る。一般的に、キックポイントが小さいものを先調子、大きいものを元調子と呼ぶが、元調子の方がシャフトのしなり幅を大きく取ることが出来るため飛距離性能が高いが、シャフトをコントロールするのが難しいと言われている。本発明において、金属シート12は、シャフトの太径端側に配置されるため、手元調子のシャフトに適用するとよりその効果を発揮出来る。よって、本発明の金属シートは、どのような調子のシャフトに適用出来るが、キックポイントが44%以上、好ましくは45%以上の元調子のシャフトに配置することがより望ましい。キックポイントが高い本調子のシャフトに適用することで、元調子の飛距離性能を損なうことなく、安定性を付与することが出来る。
<シャフトの製造方法>
次に、上記シャフトの製造方法の一実施形態例について説明するが、本発明は以下の説明に限定されない。例えば、上記の<ゴルフクラブ用シャフト>中に記載のゴルフクラブシャフトを製造する場合は、上記の<ゴルフクラブ用シャフト>中に記載の条件を適宣用いればよい。
本実施形態例のシャフトの製造方法は、図2に示すような、直径が漸次拡径する部分31を有するマンドレル50にプリプレグを巻き付けて、シャフトを得る方法である。
具体的には、まず、図2に示すような、ガラス繊維織布プリプレグ11a、金属シート12aを貼り合わせた複合プリプレグを作製し、その複合プリプレグをバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ21aに貼り合わせた後、マンドレル50に巻き付ける。そして、第1の補強層形成用プリプレグ41a、第2の補強層形成用プリプレグ42a、第1のストレート層形成用プリプレグ31a、第2のストレート層形成用プリプレグ32a、第3のストレート層形成用プリプレグ33a、第4のストレート層形成用プリプレグ43aを内側から順に1枚ずつ巻き付ける。
次いで、第4のストレート層形成用プリプレグ34aの表面の、細径端側の部分に、外径調整層形成用プリプレグ43aを巻き付けて、未硬化の成形品を得る。
次いで、未硬化の成形品を、加熱炉等を用いて加熱し、樹脂成分を硬化させて、シャフトを得る。
上記製造方法で用いるガラス繊維織布プリプレグ11aは、金属シート12aと同じ大きさに裁断され、あらかじめ貼り合わせた状態にする。なお、この貼り合わせられた複合プリプレグは、バイアス層形成用プリプレグ21aの細径端から710mmの位置に貼り付け、バイアス層形成用プリプレグ21aとともにマンドレル50に巻き付ける。これにより加熱成形後に仕上げ作業として細径端部約10mmと太径端部約10mmを切断するので、最終的に得られるシャフトの細径端から700mm(〜890mm)の位置に金属シート12aが配置されることになる。
上記製造方法で用いるバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ21aは、得られるシャフトの軸方向に対して+α°で配向した炭素繊維と、−α°で配向した炭素繊維とを含有するプリプレグである。ここで、α°は、20°〜70°である。
α°が小さすぎたり大きすぎたりすると、得られるシャフト10のねじり剛性が充分高いものとならない。
シャフトの長手軸方向に対する炭素繊維の配向角度を+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)にするためには、マンドレル30の軸方向に対する炭素繊維の配向角度を+α°と−α°(ただし、20°≦α°≦70°)にする。
また、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ21aを構成する+α層と−α層のそれぞれのプリプレグは、厚さ0.20mm以下、好ましくは0.15mm以下である。バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ21aを構成する+α層と−α層のそれぞれのプリプレグの厚さが大きすぎると、得られるシャフトが重くなったり、巻き付けが困難になったりする。
また、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ21aを構成する+α層と−α層の厚さは、得られるシャフトのねじり剛性を充分に向上させるためには、0.02mm以上であることが好ましく、0.03mm以上であることがより好ましい。
ストレート層形成用プリプレグ31a,32a,33a,34aは、得られるシャフトの長手軸方向に対して略平行に配向した炭素繊維を含有する。炭素繊維がシャフトの長手軸方向に略平行に配向していることで、得られるシャフトの曲げ剛性を高くできる。
バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ21aおよびストレート層形成用プリプレグ31a,32a,33a,34aは、炭素繊維が一方向に引き揃えられた一方向プリプレグを、シャフトの形状が形成され、かつ、所定の方向に炭素繊維が配向するように裁断し、必要に応じて複数を組み合わせることにより得られる。例えば、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ21aについては、シャフトの長手軸方向に対して+α°の範囲内の配向角度で配向した炭素繊維を含有するプリプレグと、−α°の範囲内の配向角度で配向した炭素繊維を含有するプリプレグとを組み合わせることで得られる。ここで、α°は、20°〜70°である。
通常、バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ21aおよびストレート層形成用プリプレグ31a,32a,33a,34aは、拡径する部分を有してもシャフトの断面が円形になるようにするために、細径端になる側の幅が狭くなっている。
本発明において、ガラス繊維織布プリプレグと金属シートを貼り合わせる方法、ならびに複合プリプレグ(ガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維織布プリプレグと、メッシュ状金属シートを貼り付けた複合プリプレグ)を作製とバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ(バイアス層を形成する炭素繊維に熱硬化性樹脂を予め含浸した炭素繊維プリプレグ)を貼り合わせる方法としては、例えば、アイロン等の加熱手段で加熱して貼り合わせた後、真空バッグにより圧着させる方法が挙げられる。
上記製造方法では、必要に応じて、樹脂成分硬化後に仕上げ研磨加工を施してもよい。
なお、本発明は、上記実施形態例に限定されない。例えば、バイアス層は1層である必要はなく、2層以上あってもよい。およびストレート層は4層である必要はなく、2層や3層でも良く、5層以上であってもよい。
また、本発明のシャフトでは、補強層41,42および外径調整層43のいずれかまたは全部を有していなくても構わない。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
以下の例にて使用したプリプレグを表1に示す。
(実施例)
細径端部の外径が4.30mmであり、細径端部から950mmの位置までの外径がテーパー度10.00/1000で漸増して細径端部から950mmの位置の外径が13.80mmとなり、細径端部から950mmの位置〜細径端端部から1500mmの位置は13.80mmの一定の外径を有するマンドレル50を用いた。
プリプレグAからなる台形状のガラス繊維織布プリプレグ11a(目付け28g/m)と、ステンレス合金からなるケミカルエッチング処理され、プリプレグ11aと同じサイズに裁断された金属シート12aを貼り合わせた複合プリプレグを得る。なお、これらの長さは190mmで周方向に1回巻回される(以降プライと呼ぶ)ようサイズが調整されている。次いで、この複合プリプレグを、プリプレグBからなる台形状のバイアス層形成用貼り合わせプリプレグ11a(配向角度+45°の強化繊維を含有するプリプレグと配向角度−45°の強化繊維を含有するプリプレグとを貼り合わせて得た1枚のプリプレグ)の細径端から710mmの位置に最小辺が来るようにして貼り合わせた後、マンドレル50の細径端部から30mmの位置〜細径端部から1220mmの位置の範囲に巻き付ける。なお、バイアス層の細径端側は6プライ、太径端側は2.8プライとなるようサイズを調整している。
次に、プリプレグCからなる台形状の第1の補強層形成用プリプレグ41a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)、プリプレグDからなる第2の補強層形成用プリプレグ42a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)をマンドレル50の細径端部から30mmの位置に最小辺が来るようにして巻き付ける。なお、プリプレグ41aの長さは280mm、プリプレグ42aの長さは700mmで、それぞれ1プライとなるようサイズを調整している。
次いで、プリプレグEからなる台形状の第1のストレート層形成用プリプレグ31a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)、プリプレグEからなる台形状の第2のストレート層形成用プリプレグ32a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)、プリプレグEからなる台形状の第3のストレート層形成用プリプレグ33a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)、プリプレグFからなる台形状の第4のストレート層形成用プリプレグ34a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)を順に巻き付けた。
次いで、第4のストレート層形成用プリプレグ34aの表面の細径端側の部分に、プリプレグGからなる外径調整層形成用プリプレグ43a(配向角度0°の強化繊維を含有するプリプレグ)を巻き付けて、未硬化の成形品を得た。
そして、幅20mm、厚さ0.03mmのポリプロピレン製のテープを1.5mm間隔で巻き付けて未硬化の成形品を固定した後、加熱炉を用い、145℃で2時間加熱し、樹脂成分を硬化させた。その後ポリプロピレン製のテープを外し、両端を各10mmカットして全長を1170mmとし、さらに表面の研磨を行ってシャフトを得た。
得られたシャフトについて、振動数(振動数が高い程曲げ剛性が高い)、トルク(シャフト全体の捩れ角。捩れ角度が小さい程、捩り剛性が大きい)、キックポイント(キックポイントが大きいほど手元調子)を以下のように評価した。評価結果を表2に示す。
[振動数]
特開平10−225541号公報に記載されている方法により測定した。
すなわち、藤倉ゴム株式会社製ゴルフクラブタイミングハーモナイザーを用い、シャフトの細径端部にヘッドを模擬した質量196gのおもりを取り付け、シャフトの太径端部から180mmを固定して、シャフトの固有振動数を求めた。
[トルク]
特開平5−337223号公報に記載されているトルク(シャフト全体の捩れ角)の測定方法に従って測定した。
すなわち、細径端部と太径端部とをそれぞれチャックでクランプし、各チャックを介して、シャフトに対して互いに逆方向の捩れトルク(13.9kg・cm)を加えて、捩れ角を測定した。
[キックポイント]
特開平10−225541号公報に記載されている方法により求めた。
すなわち、株式会社フォーティーン製キックポイントゲージFG−105RMを用いて決定したキックポイント位置(細径端からの長さ)をシャフト全長に対する比率で表した。
[ゴルフクラブヘッド、およびグリップの取り付け]
実施例のゴルフクラブ用シャフトに、市販のチタン製ドライバー用ゴルフクラブヘッド(体積420cm、質量204g、ロフト角9.5°)をアクリル樹脂接着剤で細径端に取り付けた。さらに、シャフト太径端を75mmカットし、市販のゴム製グリップを両面テープにて取り付け、実施例のゴルフクラブを作製した。
[打球の評価]
実施例のゴルフクラブを株式会社ミヤマエ製試打ロボット「ROVO IV」に装着し実打試験を実施した。Interactive Sports Game社製「TrackMan」にて飛距離計測などの測定を実施したところ、平均クラブスピードが44.3m/sで、平均飛距離(キャリー+ラン)が262.0yrd、スピン軸が0.6°(ストレート)、左右のバラツキが+0.5yrd(右サイド)を示し、飛距離と方向性に優れていた。
(比較例)
図3に示すように、ガラス繊維織布プリプレグと金属シートを用いないこと以外は実施例と同様にしてシャフトを得た。得られたシャフトについて、実施例と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。
実施例と同様に得られたシャフトを用いてゴルフクラブを作製し、打球の評価を実施した。Interactive Sports Game社製「TrackMan」にて飛距離計測などの測定を実施したところ、平均クラブスピードが44.3m/sで、平均飛距離(キャリー+ラン)が258.8yrd、スピン軸が6.6°(ややスライス)、左右のバラツキが+4.4yrd(右サイド)を示し、方向性に難があるとともに飛距離の低下も確認された。
11 ガラス繊維織布層
11a ガラス繊維織布プリプレグ
12 金属シート層
12a 金属シート
21 バイアス層
21a バイアス層形成用貼り合わせプリプレグ
31 第1のストレート層
31a 第1のストレート層形成用プリプレグ
32 第2のストレート層
32a 第2のストレート層形成用プリプレグ
33 第3のストレート層
33a 第3のストレート層形成用プリプレグ
34 第4のストレート層
34a 第4のストレート層形成用プリプレグ
41 第1の補強層
41a 第1の補強層形成用プリプレグ
42 第2の補強層
42a 第2の補強層形成用プリプレグ
43 外径調整層
43a 外径調整層形成用プリプレグ
50 マンドレル
51 空孔

Claims (4)

  1. 炭素繊維強化樹脂を積層してなるゴルフクラブ用シ ャフトであって、炭素繊維強化樹脂と共に少なくとも1層の金属シートが積層されており、前記金属シートはケミカルエッチング処理による空孔形成されたメッシュ状金属シートであり、ゴルフシャフトの細径端部から700mm〜890mmに亘る部分に前記金属シートが積層されていることを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
  2. 積層された炭素繊維強化樹脂の繊維の方向が、シャフトの長手方向に対して、+45°と−45°に配向されたバイアス層を有しており、金属シートがこのバイアス層よりも内側に積層されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフト。
  3. キックポイントが44%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のゴルフクラブ用シャフト。
  4. 炭素繊維強化樹脂と共に金属シートが積層されたゴルフクラブ用シャフトの製造方法であって、繊維目付けが10g/m〜40g/mのガラス繊維織布に熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維織布プリプレグと、ケミカルエッチング処理による空孔形成されたメッシュ状金属シートを貼り付けて複合プリプレグ1を得、
    次いで、バイアス層を形成する炭素繊維に熱硬化性樹脂を予め含浸した炭素繊維プリプレグと、前期複合プリプレグ1を張り合わせて複合プリプレグ2を得、得られた複合プリプレグ2をマンドレルに巻きつける工程を有するゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
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