以下、本発明の圧接装置、積層シートの製造方法および積層シートを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の積層シートの実施形態を示す断面図、図2は、本発明の圧接装置の第1実施形態を示す側面図である。
<積層シート>
まず、本発明の積層シートの実施形態について説明する。なお、積層シートを所定の寸法に切断すると、プリプレグが得られる。
なお、以下の説明では、図1(以下の各図において同様)中の上側を「上」、下側を「下」として説明する。また、図1(以下の各図において同様)は、厚さ方向(図中の上下方向)に大きく誇張して示してある。
図1に示す積層シート1は、その全体形状が帯状をなし、薄板状(平板状)の繊維基材2と、繊維基材2の一方の面(上面)側に位置し、第1の樹脂組成物(樹脂組成物)で構成される第1の樹脂層(樹脂層)3と、繊維基材2の他方の面(下面)側に位置し、第2の樹脂組成物(樹脂組成物)で構成される第2の樹脂層(樹脂層)4とを有する。なお、この積層シート1は、所定の寸法に切断されて使用される。
繊維基材2は、積層シート1の機械的強度を向上する機能を有する。
この繊維基材2としては、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙繊維基材等の有機繊維基材等の繊維基材等が挙げられる。
これらの中でも、繊維基材2は、ガラス繊維基材であるのが好ましい。かかるガラス繊維基材を用いることにより、積層シート1の機械的強度をより向上することができる。また、積層シート1の熱膨張係数を小さくすることもできるという効果もある。
このようなガラス繊維基材を構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でも、ガラスは、Sガラス、または、Tガラスであるのが好ましい。これにより、ガラス繊維基材の熱膨張係数を比較的小さくすることができ、このため、積層シート1をその熱膨張係数ができる限り小さいものとすることができる。
繊維基材2の平均厚さは、特に限定されないが、100μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのがより好ましく、10〜30μm程度であるのがさらに好ましい。かかる厚さの繊維基材2を用いることにより、積層シート1の機械的強度を確保しつつ、その薄型化を図ることができる。さらには、積層シート1の加工性・寸法安定性を向上することもできる。
この繊維基材2の一方の面側には、第1の樹脂層3が設けられ、また、他方の面側には、第2の樹脂層4が設けられている。また、第1の樹脂層3は、第1の樹脂組成物で構成され、一方、第2の樹脂層4は、本実施形態では、前記第1の樹脂組成物と異なる組成の第2の樹脂組成物で構成されている。
かかる構成により、各樹脂層に要求される特性に応じて、樹脂組成物の組成を適宜設定することができるようになる。
なお、第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物とは、互いに組成が同一であってもよいことは、言うまでもない。
本実施形態では、第1の樹脂層3上に配線部(導体パターン)が形成されるために、第1の樹脂組成物は、金属との密着性に優れるような組成に設定されている。また、積層シート1から得られたプリプレグの第2の樹脂層4に積層シート1から得られた他のプリプレグの配線部や他の繊維基材を確実に埋め込むために、第2の樹脂組成物は、第2の樹脂層4が第1の樹脂層3より可撓性(柔軟性)が高くなるような組成に設定されている。このような各樹脂組成物については、後に詳述する。
図1に示すように、本実施形態では、繊維基材2の厚さ方向の一部に第1の樹脂組成物(第1の樹脂層3)が含浸され(以下この部分を「第1の含浸部31」と言う)、繊維基材2の第1の樹脂組成物が含浸されていない残り部分に、第2の樹脂組成物(第2の樹脂層4)が含浸されている(以下この部分を「第2の含浸部41」と言う)。これにより、第1の樹脂層3の一部である第1の含浸部31と第2の樹脂層4の一部である第2の含浸部41とが繊維基材2内に位置する。そして、繊維基材2内において、第1の含浸部31(第1の樹脂層3の下面)と第2の含浸部41(第2の樹脂層4の上面)とが接触している。換言すれば、第1の樹脂組成物が、繊維基材2の上面側から、繊維基材2に含浸され、第2の樹脂組成物が、繊維基材2の下面側から、繊維基材2に含浸され、これらの樹脂組成物で繊維基材2内の空隙が充填されている。
かかる構成により、繊維基材2を第1の樹脂層3および第2の樹脂層4で保護することができる。その結果、積層シート1に外部からの衝撃が加わった場合でも、繊維基材2自体が破壊するのを防止することができ、繊維基材2による積層シート1の機械的強度を向上する効果を確実に発揮させることができる。
また、繊維基材2内部における第1の含浸部31と第2の含浸部41との界面20を微視的に見た場合、この界面20は、凹凸をなすのが好ましい(図1中の拡大詳細図参照)。また、この界面20は、第1の含浸部31(第1の樹脂層3)と第2の樹脂層4とが互いに溶融し混ざりあっていてもよい。これにより、各樹脂層の繊維基材2に対するアンカー効果のみならず、樹脂層同士の密着性が高まり、各樹脂層が繊維基材2から剥離するのをより確実に防止することができる。これにより、プリプレグの耐久性の向上を図ることができる。さらには、プリプレグを基板10(図5参照)にした際に吸湿耐熱性の向上を図ることができる。
かかる凹凸をなす界面20は、例えば、まず、第1の樹脂組成物のワニスを、繊維基材2の一方の面側に供給、含浸して、第1の樹脂層3を一旦形成する。その後、第2の樹脂組成物のワニスを、繊維基材2の他方の面側に供給、含浸して、第2の樹脂層4を形成することにより、確実に得ることができる。なお、各樹脂組成物の含浸の程度、すなわち、各含浸部の厚さは、例えば、含浸温度および含浸時間を適宜調整することにより所望の大きさに設定することができる。また、これらの樹脂層を形成する順序は、逆であってもよいことは言うまでもない。また、第1の樹脂層3または第2の樹脂層4のうちの少なくとも一方に、微小の無機フィラーや溶剤を適宜含ませることで、前記界面20の凹凸の形成、または、前記第1の含浸部31と第2の樹脂層4とが溶融して混ざり合う状態にすることができる。
また、先に形成する樹脂層のワニスを繊維基材2に供給する際には、ワニスを供給するのと反対側の面から吸引操作を行うようにしてもよい。これにより、当該樹脂層を構成する樹脂組成物が繊維基材2に確実に含浸し、その繊維基材2内に形成される界面20を荒らす、すなわち、凹凸が形成されたもの(粗面のもの)とすることができる。なお、当該樹脂組成物の含浸の程度は、例えば、吸引時間や吸引力を適宜調整することにより所望の大きさに設定することができる。また、繊維基材2に振動を与えつつ、ワニスを供給するようにしてもよい。
前述したように、第2の樹脂層4の可撓性は、第1の樹脂層3よりも高くなっている。このような大小関係を得る場合、第1の含浸部31の平均厚さta1[μm]が、第2の含浸部41の平均厚さtb1[μm]より大きく(ta1>tb1)設定するのが好ましい。これは、次のような理由による。
第2の樹脂層4の可撓性を、第1の樹脂層3より高く設定した場合、第2の樹脂層4の熱膨張率は、第1の樹脂層3より大きくなる傾向がある。このため、「ta1>tb1」とは反対の大小関係である「ta1<tb1」とすると、積層シート1が加熱されたとき、繊維基材2の内部では、第2の含浸部41が第1の含浸部31より大きく変形して、繊維基材2の部分で反りが生じるおそれがある。この繊維基材2の部分での反りは、積層シート1全体に大きく影響を与え、積層シート1自体が反ってしまうおそれがある。
これに対して、「ta1>tb1」とすれば、上記の不都合が生じるのを解消して、積層シート1に反りが発生するのを防止または抑制することが可能である。
具体的には、繊維基材2の最大厚さをT[μm]としたとき、前記平均厚さta1は、0.7T〜0.95Tであるのが好ましく、0.8T〜0.9Tであるのがより好ましい。平均厚さta1をかかる範囲に設定することにより、各樹脂層が繊維基材2から剥離するのを確実に防止しつつ、積層シート1に反りが発生するのをより確実に防止または抑制することができる。
また、第1の樹脂層3の第1の含浸部31を除く部分(第1の非含浸部32)の平均厚さをta2[μm]とし、第2の樹脂層4の第2の含浸部41を除く部分(第2の非含浸部42)の平均厚さをtb2[μm]としたとき、ta2≦tb2なる関係を満足するのが好ましく、1.5×ta2<tb2なる関係を満足するのがより好ましい。かかる関係を満足することにより、積層シート1の上面側の部分に比較的高い剛性を付与することができるため、当該積層シート1の上面(第1の非含浸部32上)に配線部を高い加工性で形成することができる。一方、第2の樹脂層4は、高い可撓性と十分な厚さを有することができるため、積層シート1から得られたプリプレグの第2の樹脂層4(第2の非含浸部42)に積層シート1から得られた他のプリプレグの配線部や他の繊維基材を埋め込む際、当該埋め込みを確実に行なうことができる、すなわち、積層シート1から得られた他のプリプレグの配線部や他の繊維基材に対する埋め込み性が向上する。
具体的には、平均厚さta2は、2〜15μmであるのが好ましく、3〜10μmであるのがより好ましい。一方、平均厚さtb2は、3〜20μmであるのが好ましく、5〜15μmであるのがより好ましい。
なお、積層シート1は、図1に示す構成では平均厚さta2と平均厚さtb2との大小関係はta2<tb2であるが、これに限定されず、例えば、ta2>tb2であってもよいし、ta2=tb2であってもよい。
さて、上記の特性を有する第1の樹脂層3および第2の樹脂層4をそれぞれ得るために、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物は、次のような組成とするのが好ましい。
第1の樹脂組成物は、例えば、硬化性樹脂を含み、必要に応じて、硬化助剤(例えば硬化剤、硬化促進剤等)および無機充填材のうちの少なくとも1種を含んで構成される。
配線部を構成する金属(支持体)との密着性を向上させるには、金属との密着性に優れる硬化性樹脂を使用する方法、金属との密着性を向上させる硬化助剤(例えば硬化剤、硬化促進剤等)を使用する方法、酸に可溶な無機成分や有機成分を用いる方法、無機充填材と有機充填材とを併用する方法等が挙げられる。
かかる硬化性樹脂には、例えば、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、マレイミド化合物、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シアネート樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硬化性樹脂は、ガラス転移温度が200℃以上になる組合せが好ましい。例えば、スピロ環含有、複素環式、トリメチロール型、ビフェニル型、ナフタレン型、アントラセン型、ノボラック型の2または3官能以上のエポキシ樹脂、シアネート樹脂(シアネート樹脂のプレポリマーを含む)、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂を用いるのが好ましい。
前記硬化性樹脂の中でも、熱硬化性樹脂を用いることにより、さらに、後述する基板10(図5参照)を作製した後において、硬化後の第1の樹脂層3中において架橋密度が増加するので、硬化後の第1の樹脂層3(得られる基板)の耐熱性の向上を図ることができる。
ここで、耐熱性の向上は、上記熱硬化性樹脂の硬化反応後にガラス転移温度が200℃以上になること、硬化後の樹脂組成物の熱分解温度が高くなること、250℃以上での反応残渣などの低分子量が低減することに起因すると考えられる。更に、また、難燃性の向上は、芳香族系の熱硬化性樹脂のためその構造上ベンゼン環の割合が高いため、このベンゼン環が炭化(グラファイト化)し易く、硬化後の第1の樹脂層3中に炭化部分が生じることに起因すると考えられる。
特に、前記熱硬化性樹脂と充填材を併用することにより、プリプレグの熱膨張係数を小さくすること(以下、「低熱膨張化」と言うこともある)ができる。さらに、プリプレグの電気特性(低誘電率、低誘電正接)等の向上を図ることもできる。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、エポキシ樹脂は、ナフタレン型、アリールアルキレン型エポキシ樹脂であるのが好ましい。ナフタレン型、アリールアルキレン型エポキシ樹脂を用いることにより、硬化後の第1の樹脂層3(得られる基板)において、吸湿半田耐熱性(吸湿後の半田耐熱性)および難燃性を向上させることができる。ナフタレン型エポキシとしては、DIC(株)製のHP−4700、HP−4770、HP−4032D、HP−5000、日本化薬(株)製のNC−7300L、新日鐵化学(株)製のESN−375等が挙げられ、アリールアルキレン型エポキシ樹脂としては、日本化薬(株)製のNC−3000、NC−3000L、NC−3000−FH、日本化薬(株)製のNC−7300L、新日鐵化学(株)製のESN−375等が挙げられる。アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に芳香族基とメチレン等のアルキレン基の組合せが一つ以上含むエポキシ樹脂のことをいい、耐熱性、難燃性、および機械的強度が優れる。また、ハロゲンフリーの配線板に対応する上では、実質的にハロゲンを含まないエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
前記シアネート樹脂は、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
前記シアネート樹脂は、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びナフトールアラルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。
また、前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2’−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型等の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等が挙げられる。これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、及び低熱膨張性に優れ、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、及びジシクロペンタジエン型シアネート樹脂が架橋密度の制御、及び耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を併用したり、前記シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記プレポリマーは、通常、前記シアネート樹脂を加熱反応等により、例えば3量化することで得られるものであり、第1の樹脂組成物の成形性、流動性を調整するために好ましく使用されるものである。
前記プレポリマーは、特に限定されないが、例えば、3量化率が20〜50重量%のプレポリマーを用いた場合、良好な成形性、流動性を発現できる。
これらシアネート樹脂を用いることにより、効果的に耐熱性、及び難燃性を発現させることができる。
前記マレイミド化合物としては、特に限定されないが、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスマレイミド化合物が挙げられる。また、更に他のマレイミド化合物を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
前記マレイミド化合物は、単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるマレイミド化合物を併用したり、前記マレイミド化合物とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
これらマレイミド化合物を用いることにより、耐熱性を向上させることができる。
また、前記硬化性樹脂は、2種以上を併用して用いることもできる。例えば、硬化性樹脂として前記エポキシ樹脂を用いる場合、より難燃性を向上させる上で、前記シアネート樹脂を併用することができ、また、より耐熱性を向上させる上で、前記マレイミド化合物を併用することができる。さらに、硬化性樹脂として、前記シアネート樹脂を用いる場合は、より耐熱性や難燃性などを向上させる上で、前記エポキシ樹脂を併用することができる。
硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、第1の樹脂組成物全体の5〜70質量%であるのが好ましく、10〜50質量%であるのがより好ましい。硬化性樹脂の含有量が前記下限値未満であると、硬化性樹脂の種類等によっては、第1の樹脂組成物のワニスの粘度が低くなりすぎ、プリプレグを形成するのが困難となる場合がある。一方、硬化性樹脂の含有量が前記上限値を超えると、他の成分の量が少なくなり過ぎるため、硬化性樹脂の種類等によっては、プリプレグの機械的強度が低下する場合がある。
その他、以下のように設定することもできる。
硬化性樹脂としてシアネート樹脂を用いエポキシ樹脂を併用する場合、エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、第1の樹脂組成物全体の2〜55質量%であるのが好ましく、3〜45質量%であるのがより好ましい。また、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いシアネート樹脂を併用する場合、シアネート樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の固形分基準で2〜55質量%であることが好ましく、3〜45質量%であることがより好ましく、5〜35質量%であることが特に好ましい。また、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂用いマレイミド化合物を併用する場合、マレイミド化合物の含有量は、樹脂組成物の固形分基準で1〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
また、後述する金属との密着性をさらに向上させる硬化剤または硬化促進剤を併用する場合には、上述の硬化性樹脂以外に、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂等の他の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
上述の硬化助剤(例えば硬化剤、硬化促進剤等)としては、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン化合物類、有機金属塩類、有機酸等が挙げられる。例えば、ジシアンジアミド類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドルキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。
これらの中でも、硬化助剤は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシアルキル基およびシアノアルキル基の中から選ばれる官能基を2個以上有しているイミダゾール化合物であるのが好ましく、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールであるのがより好ましい。
また、第1の樹脂組成物には、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等を組み合わせて用いることができる。
硬化助剤を用いる場合、その含有量は、第1の樹脂組成物全体の0.01〜3重量%であるのが好ましく、0.1〜1重量%であるのがより好ましい。
また、第1の樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。これにより、プリプレグを薄型化(例えば、厚さ35μm以下)にしても、機械的強度に優れる基板10を得ることができる。さらに、基板10の低熱膨張化を向上することもできる。
無機充填材としては、例えば、タルク、アルミナ、ガラス、溶融シリカのようなシリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。また、無機充填材の使用目的に応じて、破砕状、球状のものが適宜選択される。これらの中でも、低熱膨張性に優れる観点からは、無機充填材は、シリカであるのが好ましく、溶融シリカ(特に球状溶融シリカ)であるのがより好ましい。
無機充填材の平均粒径は、0.01〜5.0μmであるのが好ましく、0.2〜2.0μmであるのがより好ましい。なお、この平均粒径は、例えば、粒度分布計(HORIBA製「LA−500」)により測定することができる。
特に、無機充填材としては、平均粒径5.0μm以下の球状溶融シリカが好ましく、平均粒子径0.01〜2.0μm(特に、0.1〜0.5μm)の球状溶融シリカがより好ましい。これにより、第1の樹脂組成物のワニスを繊維基材2内により確実に含浸させることができ、また、形成された第1の樹脂層3(第1の含浸部31)の繊維基材2の内部における面に凹凸をより確実に形成することができる。
また、第1の樹脂層3と配線部との密着性を向上するために、酸に可溶な無機成分や有機成分を用いてもよい。これにより、配線部(導体層)を第1の樹脂層3上にメッキ法で形成した場合に、その配線部の第1の樹脂層3に対する密着性(メッキ密着性)を向上することができる。この酸に可溶な無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物等が挙げられる。また、酸に可溶な有機成分としては、例えば、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等の架橋エラストマーや、ポリビニルアセタール等のゴム成分やゴム粒子を用いることができる。
無機充填材を用いる場合、その含有量は、特に限定されないが、第1の樹脂組成物全体の20〜80重量%であるのが好ましく、30〜70重量%であるのがより好ましい。
また、第1の樹脂層3と配線部との密着性を向上するために、無機充填材と有機充填材とを併用してもよい。この有機充填材としては、例えば、液晶ポリマー、ポリイミド、ゴム粒子、シリコーン粒子、ナイロン粒子、フッ素粒子等の樹脂系充填材が挙げられる。
前記ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
前記コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のもの等が挙げられる。前記ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物等で構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)等で構成される。
前記コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン(株)製)等が挙げられる。
前記シリコーン粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、及び二次元架橋主体のシリコーンからなるコア部を三次元架橋型主体のシリコーンで被覆したコアシェル構造粒子等が挙げられる。前記シリコーンゴム微粒子としては、KMP−605、KMP−600、KMP−597、KMP−594(信越化学(株)製)、トレフィルE−500、トレフィルE−600(東レ・ダウコーニング(株)製)等の市販品を用いることができる。
さらに、第1の樹脂組成物には、金属との密着性が向上するような成分(樹脂等を含む)を添加してもよい。前記金属との密着性が向上するような成分(樹脂等を含む)としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、カップリング剤等が挙げられる。
前記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、フェノキシ樹脂には、ビフェニル骨格およびビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのが好ましい。これにより、ビフェニル骨格が有する剛直性により、フェノキシ樹脂のガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格の存在により、フェノキシ樹脂の金属との密着性を向上させることができる。その結果、第1の樹脂層3の耐熱性の向上を図ることができるとともに、多層基板を製造する際に、第1の樹脂層3に対する配線部(金属)の密着性を向上させることができる。また、フェノキシ樹脂には、ビスフェノールA骨格およびビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのも好ましい。これにより、多層基板の製造時に、配線部の第1の樹脂層3への密着性をさらに向上させることができる。
前記フェノキシ樹脂の市販品としては、東都化成(株)製FX280およびFX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YX6954、YL6974、YL7482、YL7553、YL6794、YL7213およびYL7290等が挙げられる。フェノキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量が5,000〜70,000であるのが好ましく、10,000〜60,000であるのがより好ましい。
フェノキシ樹脂を用いる場合、その含有量は、特に限定されないが、第1の樹脂組成物全体の1〜40重量%であるのが好ましく、5〜30重量%であるのがより好ましい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂の市販品としては、電気化学工業(株)製電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−Cおよび6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズおよびBMシリーズ等が挙げられる。特に、ガラス転移温度が80℃以上のものが特に好ましい。
前記ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、の市販品としては、東洋紡績(株)社製「バイロマックスHR11NN」及び「HR−16NN」「HR15ET」、日立化成工業(株)製ポリアミドイミド「KS−9300」などが挙げられる。三菱ガス化学(株)社製「ネオプリムC−1210」、新日本理化(株)社製の可溶性ポリイミド「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」、日本GEプラスチックス(株)社製のポリエーテルイミド「ウルテム」、DIC(株)製「V8000」及び「V8002」及び「V8005」:日本化薬(株)製「BPAM155」
前記ポリエーテルスルホン樹脂の市販品としては、公知のものを用いることができ、例えば、住友化学社製のPES4100P、PES4800P、PES5003P、およびPES5200Pなどを挙げることができる。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2、6−ジプロピル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)オキサイド等が挙げられる。市販品としては、例えば、日本G.E.プラスチック社製「ノリルPX9701」(数平均分子量Mn=14,000)、ノリル640−111」(数平均分子量Mn=25,000)、及び旭化成社製「SA202」(数平均分子量Mn=20,000)などがあり、これらを公知の方法で低分子量化して用いることができる。
これらの中でも、末端を官能基で変性した反応性オリゴフェニレンオキサイドが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂との相溶性が向上し、ポリマー間の3次元架橋構造を形成することできるため機械強度に優れる。例えば、特開2006−28111号公報に記載されている2,2′,3,3′,5,5′−ヘキサメチルビフェニル‐4,4′−ジオール−2,6−ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物が挙げられる。
このような反応性オリゴフェニレンオキサイドは、公知の方法により製造することができる。また、市販品を用いることもできる。例えば、OPE−2st 2200(三菱瓦斯化学社製)を好適に使用することができる。
前記反応性オリゴフェニレンオキサイドの重量平均分子量は、2,000〜20,000であることが好ましく、4,000〜15,000であることがより好ましい。反応性オリゴフェニレンオキサイドの重量平均分子量が20,000を超えると、揮発性溶剤に溶解し難くなる。一方、重量平均分子量が2,000未満であると、架橋密度が高くなりすぎるため、硬化物の弾性率や可撓性に悪影響がでる。
また、第1の樹脂組成物は、以上に説明した成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック、アントラキノン類等の着色剤等を挙げることができる。
前記カップリング剤には、例えば、イミダゾール系カップリング剤、チアゾール系カップリング剤、トリアゾール系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤などのカップリング剤が挙げられ、エポキシシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アミノシランカップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上を用いるのが好ましい。
カップリング剤を用いる場合、その含有量は、特に限定されないが、無機充填材100重量部に対して0.05〜3重量部であるのが好ましく、0.1〜2重量部であるのがより好ましい。
前記難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB100、SPE100、(株)伏見製作所製FP−series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD650、UD653等の水酸化マグネシウム、住友化学(株)製CL310、昭和電工(株)HP−350等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、環境の側面から非ハロゲン系難燃剤が好ましい。
第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物と異なる組成、具体的には、第2の樹脂層4が第1の樹脂層3より可撓性が高くなるような組成に設定されている。
第2の樹脂組成物の構成成分には、第1の樹脂組成物で挙げたものと同様のものを用いることができるが、樹脂や充填材等の種類および含有量、樹脂の分子量(平均繰り返し単位数)等の少なくとも1つを異ならせることにより、第2の樹脂組成物の組成は、第1の樹脂組成物と異なっている。その結果、第2の樹脂層4は、第1の樹脂層3と異なる特性を有している。
この第2の樹脂層4の面方向、すなわち、積層シート1の長手方向(X方向)および幅方向(Y方向)の熱膨張係数は、特に限定されないが、20ppm以下であるのが好ましく、5〜16ppmであるのがより好ましい。第2の樹脂層4の熱膨張係数が前記範囲内であると、積層シート1は、高い接続信頼性を有すことができ、得られる基板は、半導体素子等の実装信頼性に優れたものとなる。
また、積層シート1全体の面方向の熱膨張係数は、特に限定されないが、16ppm以下であるのが好ましく、12ppm以下であるのがより好ましく、5〜10ppmであるのがさらに好ましい。積層シート1の熱膨張係数が前記範囲内であると、得られる基板において、繰り返しの熱衝撃に対する耐クラック性が向上する。
面方向の熱膨張係数は、例えば、TMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて、10℃/分で昇温して評価することができる。
なお、この積層シート1では、第1の樹脂層3の繊維基材2と反対側の面に、例えば、図示しない薄板状(平板状)の支持体等が設けられていてもよい。支持体は、例えば、金属箔(金属層)または樹脂フィルムで構成されている。
金属箔は、例えば、後で配線部(回路)等に加工される部分である。この金属箔を構成する金属材料としては、例えば、銅または銅系合金、アルミニウムまたはアルミニウム系合金、鉄または鉄系合金、ステンレス鋼等が挙げられる。そして、金属箔を構成する金属材料としては、これらの中でも、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また、安価であることから、銅または銅系合金が好ましい。
また、樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。そして、樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、これらの中でも、耐熱性に優れ、安価であることから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、樹脂フィルムは、その樹脂フィルムの第1の樹脂層3側の面に剥離可能な処理が施されたものであることが好ましい。これにより、後で、支持体と第1の樹脂層3とを容易に分離することができる。
支持体の平均厚さは、特に限定されないが、8〜70μm程度であるのが好ましく、12〜40μm程度であるのがより好ましい。
また、この積層シート1では、第2の樹脂層4の繊維基材2と反対側の面に、例えば、図示しない樹脂フィルム等が設けられていてもよい。この場合、積層シート1は、その樹脂フィルムを剥離して使用される。なお、樹脂フィルムとしては、前記支持体の樹脂フィルムとして説明したものと同様のものを用いることができる。
<圧接装置(積層シートの製造方法)の第1実施形態>
次に、本発明の圧接装置の第1実施形態について説明する。
図2に示す圧接装置6は、積層シート1等の各種の積層シートを製造する際に用いられ、連続的に供給されるシート9を加圧する装置である。なお、本実施形態では、圧接装置6が加熱環境下におかれる場合、具体的には、乾燥装置(図示せず)内に設置される場合について説明するが、他の環境下におかれてもよいことは、言うまでもない。
図2(a)に示すように、圧接装置6は、加圧するシート9の一方(下側)の面側に配置された第1のローラ(ロール)611と、シート9の他方(上側)の面側に配置された第2のローラ612と、第1のローラ611に対して第2のローラ612を相対的に移動させる移動手段として、第2のローラ612を図2中の上下方向に移動させるエアシリンダ62とを備えている。
第1のローラ611の軸を回転可能に支持する図示しない1対の軸受けは、ハウジング(図示せず)に固定されている。
一方、第2のローラ612の軸を回転可能に支持する1対の軸受け(図示せず)は、それぞれ、ガイド(図示せず)により、図2中の上下方向のみに移動し得るように、その移動方向が規制された状態で支持されている。また、エアシリンダ62のピストンロッド621の先端部(下端部)には、第2のローラ612の軸の一端側の軸受けに固定されている。
これにより、エアシリンダ62の所定部位に圧縮空気が供給され、ピストンロッド621が収縮する方向に移動すると、第2のローラ612は、図2中の上方(第1のローラ611から離間する方向)に移動する。また、エアシリンダ62の所定部位に圧縮空気が供給され、ピストンロッド621が伸長する方向に移動すると、第2のローラ612は、図2中の下方(第1のローラ611に接近する方向)に移動する。
また、第1のローラ611および第2のローラ612は、それぞれ、例えば、多数の歯車が配置された歯車機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)と連結されている。そして、このモータが作動すると、その動力が歯車機構を介して伝達され、第1のローラ611および第2のローラ612がそれぞれ互いに反対方向に回転することとなる。
なお、本実施形態では、エアシリンダ62により第2のローラ612のみが移動するように構成されているが、これに限らず、第1のローラ611のみが移動するように構成されていてもよく、また、第1のローラ611および第2のローラ612がそれぞれ移動するように構成されていてもよい。
第1のローラ611および第2のローラ612は、それぞれ、外形形状が円柱状をなし、その長手方向の中間部に位置する本体部と、本体部の両端側にそれぞれ位置し、その外径が本体部の外径よりも縮径している軸とで構成されている。
なお、第1のローラ611および第2のローラ612は、それぞれ、中実体のものであってもよく、また、中空体のものであってもよい。また、第1のローラ611の外径と、第2のローラ612の外径とは、同一でもよく、また、異なっていてもよいが、本実施形態では、同一の場合について説明する。
また、第1のローラ611および第2のローラ612の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の各種金属、またはこれらを含む合金が挙げられる。この場合、第1のローラ611および第2のローラ612の外周面には、それぞれ、外周面が摩耗するのを防止する処理が施されていてもよい。この処理としては、例えば、外周面にDLC(Diamond Like Carbon)の被膜を形成する方法が挙げられる。
また、第1のローラ611、第2のローラ612の構成材料としては、例えば、ニトリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料も用いることができる。
第1のローラ611と第2のローラ612とは、水平方向に互いに平行に配置されている。また、第1のローラ611と第2のローラ612の外周面同士が互いに接近している。そして、第1のローラ611と第2のローラ612とが回転すると、これらの間、および、第1のローラ611と第2のローラ612とがそれぞれ単独で、図2中の左側から連続的に供給されるシート9に圧接し、そのシート9を加圧する。なお、シート9は、圧接装置6で加圧された後、図2中の右側において、ローラ(図示せず)に巻き取られる。
前記シート9は、積層シート1を製造する際に、圧接装置6の前段で製造された積層シート1の中間体である。このシート9は、液状の樹脂組成物を担持、あるいは、固形または半固形の樹脂組成物(樹脂層)が接合された薄板状の繊維基材を有するもの、本実施形態では、繊維基材2の一方の面に液状の第1の樹脂組成物が塗布され、他方の面に、液状の第2の樹脂組成物が塗布されたものである。なお、第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物とのいずれか一方または両方が、固形または半固形のものであってもよい。
ここで、この圧接装置6では、第1のローラ611の中心軸の方向から見たとき(側面視で)、シート9には、第1のローラ611の外周面の第1のローラ611と第2のローラ612とがシート9を挟み込む箇所(挟持点b)における接線方向と異なる方向に張力がかかっている。すなわち、第2のローラ612の中心軸の方向から見たとき、シート9には、第2のローラ612の外周面の第1のローラ611と第2のローラ612とがシート9を挟み込む箇所(挟持点b)における接線方向と異なる方向に張力がかかっている。
これにより、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面とがシート9を挟んでそのシート9に線接触(線状に圧接)するとともに、第1のローラ611および第2のローラ612の外周面が、それぞれ、シート9に面接触(面状に圧接)する。これによって、シート9を加圧する期間を比較的長くすることができ、シート9を効率良く、確実に加圧することができる。
すなわち、第1のローラ611の外周面は、地点aでシート9に接触(圧接)し、その地点aから挟持点bまでシート9に接触する。一方、第2のローラ612の外周面は、挟持点bでシート9に接触し、その挟持点bから地点cまでシート9に接触する。したがって、挟持点bでは、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面とが、シート9を挟み込み、そのシート9に圧接する。
このように、シート9は、第1のローラ611の外周面に接触してから、第2のローラ612の外周面から離間するまで、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面との少なくとも一方に接触している(連続的に接触している)。これにより、シート9を効率良く、確実に加圧することができる。
また、第1のローラ611の中心軸の方向から見たとき、第1のローラ611の外周面のシート9に接触する範囲に対応する中心角θ1は、30〜45°程度であることが好ましく、30〜35°程度であることがより好ましい。これにより、シート9をあまり曲げることなく、シート9を比較的長い期間、加圧することができる。
また、第2のローラ612の中心軸の方向から見たとき、第2のローラ612の外周面のシート9に接触する範囲に対応する中心角θ2は、30〜45°程度であることが好ましく、30〜35°程度であることがより好ましい。これにより、シート9をあまり曲げることなく、シート9を比較的長い期間、加圧することができる。
なお、中心角θ1と中心角θ2とは、本実施形態では同一であるが、異なっていてもよい。
また、シート9の張力による、第1のローラ611および第2のローラ612からシート9にかかる面圧は、それぞれ、特に限定されず、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物の組成や諸条件に応じて適宜設定されるが、9.8〜980hPa程度であることが好ましく、14.7〜98hPa程度であることがより好ましい。これにより、シート9を必要かつ十分に加圧することができる。
次に、圧接装置6により積層シート1が製造される過程について、図2を参照しつつ説明する。
積層シート1を製造する際は、圧接装置6を図2(a)に示す状態にする。この場合、まずは、図2(b)に示すように、エアシリンダ62により第2のローラ612を上側に移動させ、シート9を第1のローラ611の外周面上に位置させる。この状態では、シート9に所定の大きさの張力がかかっている。そして、図2(a)に示すように、エアシリンダ62により第2のローラ612を下方に移動させる。以上で、圧接装置6の準備が完了する。なお、圧接装置6は、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物をそれぞれ乾燥させる乾燥装置内に設置されている。
図2中の左側から連続的に供給されるシート9は、前述した圧接装置6により加圧される。そして、その加圧と同時に、乾燥装置により、シート9の第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物をそれぞれ乾燥させる。これにより、積層シート1が得られる。
乾燥条件としては、特に限定されず、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物の組成や諸条件に応じて適宜設定されるが、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物中の揮発成分が樹脂に対してそれぞれ1.5wt%以下になるように設定することが好ましく、0.8〜1.0wt%程度になるように設定することがより好ましい。具体的には、乾燥温度は、60〜180℃程度であることが好ましく、80〜150℃程度であることがより好ましい。また、乾燥時間は、2〜10分程度であることが好ましく、2〜5分程度であることがより好ましい。
以上のようにして、容易に、品質に優れた積層シート1を連続的に製造することができる。
なお、本実施形態では、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面とがシート9を挟んでそのシート9に圧接するよう構成されているが、本発明では、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面とでシート9を挟まなくてもよい。
すなわち、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面との間に、シート9の厚み分以上の間隙が設けられ、第1のローラ611および第2のローラ612の外周面が、それぞれ、シート9に面接触してそのシート9を加圧するよう構成されていてもよい。換言すれば、第1のローラ611および第2のローラ612の外周面から、それぞれ、シート9に片面圧を加えるよう構成されていてもよい。これは、後述する第2実施形態および第3実施形態でも同様である。
<圧接装置(積層シートの製造方法)の第2実施形態>
次に、圧接装置の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の圧接装置の第2実施形態を示す側面図である。なお、第2実施形態については、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図3に示すように、第2実施形態の圧接装置6では、さらに、シート9に圧接し、シート9の一方(下側)の面側に配置された第3のローラ613を有している。第1のローラ611の外径と、第2のローラ612の外径と、第3のローラ613の外径とは、同一でもよく、また、異なっていてもよいが、本実施形態では、同一の場合について説明する。なお、第3のローラ613の基本的な構成は、第1のローラ611と同様であるので、その説明は省略する。
第1のローラ611と第2のローラ612と第3のローラ613とは、水平方向に互いに平行に配置されている。また、第1のローラ611と第2のローラ612の外周面同士が互いに接近し、第3のローラ613と第2のローラ612の外周面同士が互いに接近している。そして、第1のローラ611と第2のローラ612と第3のローラ613とが回転すると、第1のローラ611と第2のローラ612との間、第3のローラ613と第2のローラ612との間、および、第1のローラ611と第2のローラ612と第3のローラ613とがそれぞれ単独で、図3中の左側から連続的に供給されるシート9に圧接し、そのシート9を加圧する。
ここで、この圧接装置6では、第1のローラ611の中心軸の方向から見たとき、シート9には、第1のローラ611の外周面の第1のローラ611と第2のローラ612とがシート9を挟み込む箇所(挟持点b)における接線方向と異なる方向に張力がかかっている。すなわち、第2のローラ612の中心軸の方向から見たとき、シート9には、第2のローラ612の外周面の第1のローラ611と第2のローラ612とがシート9を挟み込む箇所(挟持点b)における接線方向と異なる方向に張力がかかっている。
同様に、第3のローラ613の中心軸の方向から見たとき、シート9には、第3のローラ613の外周面の第3のローラ613と第2のローラ612とがシート9を挟み込む箇所(挟持点d)における接線方向と異なる方向に張力がかかっている。すなわち、第2のローラ612の中心軸の方向から見たとき、シート9には、第2のローラ612の外周面の第3のローラ613と第2のローラ612とがシート9を挟み込む箇所(挟持点d)における接線方向と異なる方向に張力がかかっている。
これにより、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面とがシート9を挟んでそのシート9に線接触(線状に圧接)し、第3のローラ613の外周面と第2のローラ612の外周面とがシート9を挟んでそのシート9に線接触(線状に圧接)するとともに、第1のローラ611、第2のローラ612および第3のローラ613の外周面が、それぞれ、シート9に面接触(面状に圧接)する。これによって、シート9を加圧する期間を比較的長くすることができ、シート9を効率良く、確実に加圧することができる。
すなわち、第1のローラ611の外周面は、地点aでシート9に接触(圧接)し、その地点aから挟持点bまでシート9に接触する。また、第2のローラ612の外周面は、挟持点bでシート9に接触し、その挟持点bから挟持点dまでシート9に接触する。また、第3のローラ613の外周面は、挟持点dでシート9に接触し、その挟持点dから地点eまでシート9に接触する。したがって、挟持点bでは、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面とが、シート9を挟み込み、そのシート9に圧接し、挟持点dでは、第3のローラ613の外周面と第2のローラ612の外周面とが、シート9を挟み込み、そのシート9に圧接する。
このように、シート9は、第1のローラ611の外周面に接触してから、第3のローラ613の外周面から離間するまで、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面と第3のローラ613外周面とのうちの少なくともいずれか1つに接触している(連続的に接触している)。
これにより、この圧接装置6では、第1のローラ611の外周面と第2のローラ612の外周面と第3のローラ613の外周面とが、シート9に連続的に面接触するので、シート9を効率良く、確実に加圧することができる。
また、第1のローラ611の中心軸の方向から見たとき、第1のローラ611の外周面のシート9に接触する範囲に対応する中心角θ1は、30〜45°程度であることが好ましく、30〜35°程度であることがより好ましい。これにより、シート9をあまり曲げることなく、シート9を比較的長い期間、加圧することができる。
また、第2のローラ612の中心軸の方向から見たとき、第2のローラ612の外周面のシート9に接触する範囲に対応する中心角θ2は、60〜90°程度であることが好ましく、60〜70°程度であることがより好ましい。これにより、シート9をあまり曲げることなく、シート9を比較的長い期間、加圧することができる。
また、第3のローラ613の中心軸の方向から見たとき、第3のローラ613の外周面のシート9に接触する範囲に対応する中心角θ3は、30〜45°程度であることが好ましく、30〜35°程度であることがより好ましい。これにより、シート9をあまり曲げることなく、シート9を比較的長い期間、加圧することができる。
また、θ2/θ1、θ2/θ3は、それぞれ、1.00〜2.00程度であることが好ましく、1.00〜1.27程度であることがより好ましい。これにより、シート9をあまり曲げることなく、シート9を比較的長い期間、加圧することができる。
なお、中心角θ1と中心角θ3とは、本実施形態では同一であるが、異なっていてもよい。また、中心角θ1と中心角θ2とは、本実施形態では異なっている(中心角θ2の方が大きい)が、同一であってもよい。また、中心角θ2と中心角θ3とは、本実施形態では異なっている(中心角θ2の方が大きい)が、同一であってもよい。
また、ローラ611およびローラ613に対してローラ612がシート9に加える圧力(線圧)は、それぞれ、特に限定されず、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物の組成や諸条件に応じて適宜設定されるが、0〜1.0MPa程度であることが好ましく、0〜0.1MPa程度であることがより好ましい。これにより、シート9を必要かつ十分に加圧することができる。
<圧接装置(積層シートの製造方法)の第3実施形態>
次に、圧接装置の第3実施形態について説明する。
図4は、本発明の圧接装置の第3実施形態を示す側面図である。なお、第3実施形態については、前述した第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図4に示すように、第3実施形態の圧接装置6では、さらに、シート9に圧接し、シート9の一方(下側)の面側に配置された第5のローラ615と、シート9の他方(上側)の面側に配置された第4のローラ614と、第2のローラ612および第3のローラ613に対して第4のローラ614を相対的に移動させる移動手段として、第4のローラ614を図4中の上下方向に移動させるエアシリンダ63とを備えている。
第1のローラ611の外径と、第2のローラ612の外径と、第3のローラ613の外径と、第4のローラ614の外径と、第5のローラ615の外径とは、同一でもよく、また、異なっていてもよいが、本実施形態では、同一の場合について説明する。なお、第4のローラ614の基本的な構成は、第2のローラ612と同様であるので、その説明は省略し、また、第5のローラ615の基本的な構成は、第1のローラ611や第3のローラ613と同様であるので、その説明は省略する。また、第3のローラ613と第4のローラ614との関係は、第1のローラ611と第2のローラ612との関係と同様であるので、その説明は省略し、また、第5のローラ615と第4のローラ614との関係は、第3のローラ613と第2のローラ612との関係と同様であるので、その説明は省略する。また、エアシリンダ63の構成は、エアシリンダ62と同様であるので、その説明は省略する。
この圧接装置6では、シート9を比較的長い期間加圧する場合は、図4に示すように、第2のローラ612および第4のローラ614を下方に移動させ、第1のローラ611〜第5のローラ615の外周面をそれぞれシート9に面接触させる。
また、シート9を加圧する期間を前記に対して短くする場合は、第2のローラ612と第4のローラ614とのうちの一方のみ下方に移動させ、第1のローラ611、第2のローラ611および第3のローラ613の外周面のみをそれぞれシート9に面接触させるか、または、第3のローラ613、第4のローラ614および第5のローラ615の外周面のみをそれぞれシート9に面接触させる。
このようにして、各ローラの回転速度を変更することなく、シート9を加圧する期間を選択(調整)することができる。
<基板>
次に、本発明の積層シートを用いて製造した基板について、図5を参照しつつ説明する。この図5に示す基板10は、積層体11と、この積層体11の両面に設けられた金属層12とを有している。
積層体11は、第2の樹脂層4同士を内側にして配置された2つのプリプレグ1gと、第2の樹脂層4同士間で挟持された繊維基材13とを備える。なお、プリプレグ1gは、積層シート1を所定の寸法に切断したものである。
繊維基材13には、前述した繊維基材2と同様のものを用いることができる。また、本実施形態では、第2の樹脂層4は、前述したような特性(可撓性)を有するため、繊維基材13の少なくとも一部は、第2の樹脂層4に確実に埋め込まれる(埋設される)。
金属層12は、配線部に加工される部分であり、例えば、銅箔、アルミ箔等の金属箔を積層体11に接合すること、銅、アルミニウムを積層体11の表面にメッキすること等により形成される。また、本実施形態では、第1の樹脂層3は、前述したような特性を有するため、高い密着性で金属層12を保持することができるとともに、高い加工精度で金属層12を配線部に形成することができるようになっている。
金属層12と第1の樹脂層3とのピール強度は、0.5kN/m以上であるのが好ましく、0.6kN/m以上であるのがより好ましい。これにより、金属層12を配線部に加工し、得られる半導体装置100(図6参照)における接続信頼性をより向上させることができる。
このような基板10は、第1の樹脂層3上に金属層12を形成したプリプレグ1gを2つ用意し、これらのプリプレグ1gで繊維基材13を挟持した状態で、例えば、真空プレス、常圧ラミネータおよび真空下で加熱加圧するラミネータを用いて積層する方法が挙げられる。真空プレスは、平板に挟んで通常のホットプレス機等で実施できる。例えば、名機製作所社製の真空プレス、北川精機社製の真空プレス、ミカドテクノス社製の真空プレス等が挙げられる。また、ラミネータ装置としては、ニチゴー・モートン社製のバキュームアップリケーター、名機製作所社製の真空加圧式ラミネータ、日立テクノエンジニアリング社製の真空ロール式ドライコータ等のような市販の真空積層機、またはベルトプレス等を用いて製造することができる。
なお、基板10は、繊維基材13が省略され、2つのプリプレグ1gが第2の樹脂層4同士を直接接合してなる積層体を含むものであってもよく、金属層12が省略されたものであってもよい。
<半導体装置>
次に、本発明の積層シートを用いて製造した半導体装置について、図6を参照しつつ説明する。なお、図6中では、繊維基材2、13を省略して示し、第1の樹脂層3および第2の樹脂層4を一体として示してある。
図6に示す半導体装置100は、多層基板200と、多層基板200の上面に設けられたパッド部300と、多層基板200の下面に設けられた配線部400と、パッド部300にバンプ501を接続することにより、多層基板200上に搭載された半導体素子500とを有している。また、その他、多層基板200の下面には、配線部、パッド部、半田ボール等が設けられていてもよい。
多層基板200は、コア基板として設けられた基板10と、この基板10の上側に設けられた3つのプリプレグ1a、1b、1cと、基板10の下側に設けられた3つのプリプレグ1d、1e、1fとを備えている。プリプレグ1a〜1cをそれぞれ構成する繊維基材2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4の基板10からの配置順番と、プリプレグ1d〜1fをそれぞれ構成する繊維基材2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4の基板10からの配置順番とは、同じとなっている。すなわち、プリプレグ1a〜1cとプリプレグ1d〜1fとは、互いに上下反転したもの同士となっている。
また、多層基板200は、プリプレグ1aとプリプレグ1bとの間に設けられた回路部201aと、プリプレグ1bとプリプレグ1cとの間に設けられた回路部201bと、プリプレグ1dとプリプレグ1eとの間に設けられた回路部201dと、プリプレグ1eとプリプレグ1fとの間に設けられた回路部201eとを有している。
さらに、多層基板200は、各プリプレグ1a〜1fをそれぞれ貫通して設けられ、隣接する回路部同士や、回路部とパッド部とを電気的に接続する導体部202とを備えている。
基板10の各金属層12は、それぞれ、所定のパターンに加工され、当該加工された金属層12同士は、基板10を貫通して設けられた導体部203により電気的に接続されている。
なお、半導体装置100(多層基板200)は、基板10の片面側に、4つ以上のプリプレグを設けるようにしてもよい。さらに、半導体装置100は、前述した積層シートから得られたプリプレグ以外のプリプレグを含んでいてもよい。
以上、本発明の圧接装置、積層シートの製造方法および積層シートを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成や工程(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、前記実施形態では、ローラの数が2つ、3つおよび5つの場合について説明したが、本発明では、ローラの数は、それに限定されず、例えば、4つ、または、6つ以上であってもよい。
また、前記実施形態から判るように、第1のローラおよび第2のローラの中心軸の方向から見たとき、第1のローラおよび第2のローラのシートに接触する範囲に対応する中心角は、それぞれ、30〜90°であることが好ましい。
また、積層シートは、図1に示す構成では繊維基材の両面にそれぞれ樹脂層が接合されたものであるが、これに限定されず、繊維基材の片面にのみ樹脂層が接合されたものであってもよい。このような構成の積層シートも圧接装置で製造することができる。
また、積層シートは、図1に示す構成では繊維基材に第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物がそれぞれ含浸したものであるが、これに限定されず、例えば次のようなものであってもよい。1つ目の例は、繊維基材の厚さ方向に、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物がいずれも含浸していない積層シート。2つ目の例は、繊維基材の厚さ方向全体にわたって第1の樹脂組成物が含浸し、第2の樹脂組成物は含浸していない積層シート。3つ目の例は、繊維基材の厚さ方向全体にわたって第2の樹脂組成物が含浸し、第1の樹脂組成物は含浸していない積層シート。4つ目の例は、繊維基材の厚さ方向の一部に第1の樹脂組成物が含浸し、第2の樹脂組成物は含浸していない積層シート。5つ目の例は、繊維基材の厚さ方向の一部に第2の樹脂組成物が含浸し、第1の樹脂組成物は含浸していない積層シート。以上5つの例の積層シートでも、第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物とは、互いに組成が異なるものでもよく、また、互いに組成が同一のものでもよい。そして、このような構成の積層シートも圧接装置で製造することができる。