JP5884110B2 - 歪抵抗素子およびそれを用いた歪検出装置 - Google Patents
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Description
このCr-Si-C系複合薄膜としては、クロム(Cr)が80重量%、ケイ素(Si)が5重量%、炭素(C)が15重量%の割合からなり、その膜厚が15nm〜150nmの範囲のものが使用されている。特に、Cr-Si-C系複合薄膜の膜厚を15nmまで薄くした歪抵抗素子は、高いゲージ感度と小さな抵抗温度係数を有し、温度安定性に優れたものとなっている。
すなわち、本発明は、(1)絶縁性基板と、前記絶縁性基板の表面に形成されたクロム、ケイ素および炭素からなる薄膜抵抗部と、前記薄膜抵抗部に設けられた電極部と、を備えた歪抵抗素子において、前記薄膜抵抗部は、クロムが70〜90重量%、ケイ素が5〜25重量%、炭素が5〜25重量%の割合からなり、当該薄膜抵抗部の膜厚が7.5nm以下であって、少なくとも25〜250℃の全ての温度領域でN型の電気伝導機構を有していることを特徴とする歪抵抗素子としたものである。
上記したように、前記薄膜抵抗部の膜厚を7.5nm以下とし、少なくとも25〜250℃の全ての温度領域で電気伝導機構をP型(ホール伝導)からN型(電子伝導)に遷移させることで、従来のものよりも優れたゲージ感度および抵抗温度係数を有するとともに、温度安定性が優れた歪抵抗素子を実現することができる。
なお、上記した作用効果は、クロム、ケイ素および炭素からなる3元系の複合薄膜が、膜厚が15nm未満の極薄膜領域でも比較的均一に成膜可能な点に負うところが大きく、他の組成では実現が難しいのが現状である。ここで、成膜の安定性、実用上の観点から薄膜抵抗部の膜厚は7.5nm以上とすることが好ましい。
図1に示すように、本願発明に係る歪抵抗素子1は、絶縁性基板2と、薄膜抵抗部3と、一対の電極部4a、4bと、保護層5とを備える。
具体的には、図2(A)に示すように、スパッタリング法によって、例えば幅3.0mm×長さ5.0mm×厚み0.5mmのステンレス基板2aの表面に、例えば膜厚が6μmの酸化シリコン膜(SiO2)の絶縁層2bを形成する。そして、高周波(RF)スパッタリング法によって、絶縁層2bの上面に薄膜抵抗部3を形成する。絶縁層2bである酸化シリコン膜は、ここでは単層構造であるが、多層構造であってもよい。
また、この時のスパッタリング条件として、スパッタリング温度は350℃、プロセス圧力は4×10−1Pa、スパッタリング時間は薄膜抵抗部3の膜厚が15nm未満になるように設定される。
こうして、組成の割合がCr-Si-Cターゲットと同じ、クロムが80重量%、ケイ素が5重量%、炭素が15重量%の割合の薄膜抵抗部3が、絶縁性基板2の表面に形成される。
具体的には、スピンコータによって、図2(B)に示すように、薄膜抵抗部3の上にCrからなるレジスト膜6を塗布し、フォトリソグラフィによって、当該レジスト膜6を露光して、図2(C)に示すように、レジストマスク(Crマスク)を形成する。そして、エッチング液を用いたウェットエッチングによって、図2(D)に示すように、薄膜抵抗部3を所定のパターン(例えば、図3に示すような黒塗りしたパターン)に形成し、薄膜抵抗部3上に残っているレジスト膜6を除去する。ここでは、エッチング液として、硝酸セリウム(IV)アンモニウム水溶液((NH4)2[Ce(NO3)6]水溶液)が使用される。
こうして、薄膜抵抗部3が、所定のパターン形状に加工される。
具体的には、図2(E)に示すように、絶縁膜2bおよび薄膜抵抗部3の一部分が開口するように、絶縁性基板2の表面をステンレス製のメタルマスク7で被覆した後、CrおよびNi(ニッケル)のスパッタリング法によって、当該開口した部分に、例えば、膜厚が150〜700nmのCr膜、および膜厚が3μmのNi膜を成膜して、一対の電極部4a、4bを形成する。このCr膜によって、薄膜抵抗部3およびNi膜との密着性が向上する。そして、この電極部4a、4bに対して電極リード線(図示略)を接続するとともに、メタルマスク7を取り外す。
こうして、一対の電極部4a、4bが薄膜抵抗部3に設けられる。
具体的には、スパッタリング法によって、図2(F)に示すように、電極部4a、4bの電極リード線接続部分を除く部分および薄膜抵抗部3を被覆する保護層5を形成する。保護層5は、例えばシリコン酸窒化膜(SiON)からなる。なお、この時のスパッタリング温度は250℃とした。
なお、保護層5は、マスクを用いて形成されてもよいし、絶縁性基板2の表面領域全体にわたって形成された後に所定の形状に加工形成されてもよい。
具体的には、アニール処理時の雰囲気ガスとの反応による薄膜抵抗部3の組成変化を防止するために、ArガスあるいはN2ガス等の不活性ガス雰囲気中において、300℃以上の温度で所定時間、より好ましくは350℃の温度で12時間、アニール処理を行う。この熱処理によって、ステンレス基板2aと絶縁膜2bの密着性、および、絶縁膜2bと薄膜抵抗部3の密着性(絶縁性基板2と薄膜抵抗部3の密着性)が向上する。
こうして、より安定的な歪抵抗素子1が製造される。
まず、10mm角のガラス基板上に、膜厚がそれぞれ3nm、5nm、7.5nm、15nmであって、クロムが80重量%、ケイ素が5重量%、炭素が15重量%の割合からなるCr-Si-C系複合薄膜を形成する。そして、その四隅にニッケルおよびインジウム(In)の電極を形成し、四端子法(Van der pauw法)によって、Cr-Si-C系複合薄膜のホール効果を測定した。従来の歪抵抗素子と比較するために、膜厚が30nm、50nm、150nm、300nmであって同様の組成を有するCr-Si-C系複合薄膜についても、同様の測定を行った(以下、比抵抗、ゲージ感度および抵抗温度係数の測定についても同様である)。ここで、このホール効果の測定は、測定装置として東陽テクニカ製ResiTest8300を使用し、25℃(常温)から250℃の温度範囲で、大気雰囲気中で行った。このホール効果の測定結果を図4に示す。なお、図4において、横軸はCr-Si-C系複合薄膜の膜厚を示し、縦軸は温度を示し、P型の薄膜を◇、N型の薄膜を○、PN判別不能な薄膜を×で示した。
ところで、薄膜の抵抗は、一般的にその膜厚を薄くすることで、サイズ効果等により指数的に増加する。しかしながら、膜厚15nm未満のCr-Si-C系複合薄膜では、比抵抗が低下して、実用的な抵抗値を確保できていることがわかる。これも、従来全く知られておらず、本発明者らが得た大きな知見である。
また、この歪抵抗素子では、そのCr-Si-C系複合薄膜の膜厚が15nm未満と非常に薄いため、従来の膜厚の厚いものと比べて、成膜時間やパターニング時間が大幅に短縮され、生産性を向上することができる。さらに、エッチング時間も短縮化されるため、エッチング液によるCr-Si-C系複合薄膜へのダメージが少なくなるとともに、パターニング精度が向上して、再現性を向上することもできる。このため、Cr-Si-C系複合薄膜の薄膜化に伴って、抵抗温度係数TCRのばらつきもさらに少なくなり、従来よりも温度安定性に優れた歪抵抗素子が実現できると考えられる。
図8に示すように、この歪検出装置10は、歪測定対象物である起歪体(図示略)に対して貼着または接合された歪抵抗素子1A、1B(1)と、これらの歪抵抗素子1A、1Bを含んで構成されたホイートストンブリッジ回路と、ホイートストンブリッジ回路に電圧を供給する電源11と、ホイートストンブリッジ回路の出力を増幅する増幅器12とを備える。
調整抵抗ΔRは、歪抵抗素子1A、1Bの抵抗差を調整するためのものであって、例えば500Ω程度の調整幅を有するボリューム式可変抵抗素子からなる。電源11は、例えば5Vの直流電源からなる。増幅器12の一対の入力部のそれぞれは、ホイートストンブリッジ回路の抵抗R1、R2の接続点と、調整抵抗ΔRに接続されている。増幅器12の出力部は外部の演算処理装置(図示略)等に接続されている。
2 絶縁性基板
2a ステンレス基板
2b 絶縁層
3 薄膜抵抗部
4a、4b 電極部
5 保護層
6 レジスト膜
7 メタルマスク
10 歪検出装置
11 電源
12 増幅器
R1、R2 抵抗
ΔR 調整抵抗
Claims (8)
- 絶縁性基板と、前記絶縁性基板の表面に形成されたクロム、ケイ素および炭素からなる薄膜抵抗部と、前記薄膜抵抗部に設けられた電極部と、を備えた歪抵抗素子において、
前記薄膜抵抗部は、クロムが70〜90重量%、ケイ素が5〜25重量%、炭素が5〜25重量%の割合からなり、当該薄膜抵抗部の膜厚が7.5nm以下であって、少なくとも25〜250℃の全ての温度領域でN型の電気伝導機構を有していることを特徴とする歪抵抗素子。 - 前記薄膜抵抗部は、物理蒸着法または化学蒸着法によって前記絶縁性基板上に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の歪抵抗素子。
- 前記薄膜抵抗部は、物理蒸着法または化学蒸着法によって前記絶縁性基板上に形成された後に、さらに不活性ガス雰囲気中において300℃以上の温度でアニール処理されたものであることを特徴とする請求項2に記載の歪抵抗素子。
- 前記絶縁性基板は、その表面に絶縁層が形成されたステンレス基板からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の歪抵抗素子。
- 前記絶縁層は酸化シリコンからなることを特徴とする請求項4に記載の歪抵抗素子。
- 前記絶縁性基板は、セラミック材料または耐熱性高分子材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の歪抵抗素子。
- 前記絶縁性基板の表面に、セラミック材料からなる接合層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の歪抵抗素子。
- 起歪体に対して貼着あるいは接合される請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの歪抵抗素子と、
前記少なくとも1つの歪抵抗素子を含むホイートストンブリッジ回路と、を備えたことを特徴とする歪検出装置。
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