JP2006119014A - ガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法 - Google Patents

ガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 感応層における剥離やクラックの発生を抑制すると共に、酸化性ガスの還元性ガスに対するガス選択性能に優れるガスセンサ素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 ガスセンサ素子1は、結晶密度の異なる2つの層(基板側感応層44、触媒側感応層45)を有する感応層41を備える。基板側感応層44は、触媒側感応層45に比べて高密度の結晶で構成されることから、密着性に優れるため、感応体側絶縁層34(基板2)との剥離が生じがたく、また、基板側感応層44自体の強度も高まるためクラックや膜ハガレなどの破損が生じがたい。また、触媒側感応層45は、基板側感応層44に比べて低密度の結晶で構成されており、酸化性ガスのガス選択性に優れた特性を有する。ガスセンサ素子1によれば、感応層41における剥離やクラックの発生を抑制すると共に、酸化性ガスの還元性ガスに対するガス選択性能に優れた特性を有する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、感応層の抵抗値変化に応じて酸化性ガスを検出するガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法に関する。
従来より、絶縁層(絶縁基板など)の表面に形成された感応体を備えて、感応体の抵抗値変化によってNOxなどの酸化性ガスのガス検知を行うガスセンサ素子が知られている(特許文献1参照)。
感応体は、絶縁層の表面に形成される金属酸化物半導体(酸化スズなど)からなる感応層と、感応層の表面の少なくとも一部に形成される貴金属(金など)からなる触媒層と、を有して構成されている。そして、ガスセンサ素子は、感応層の表層における電子の授受による抵抗値の変化によって酸化性ガスのガス検知を行う。
また、絶縁層と感応層との間に電極層を備えるガスセンサ素子においては、電極層の表面に凹凸を設けて、感応層と電極層とを密着させることで、電極層と感応層との界面での剥離を防止して、接触不良を抑制する構成が開示されている(特許文献2参照)。
さらに、薄膜として形成される感応層のクラックの抑制や、感応層と絶縁層との密着性向上のためには、絶縁層である絶縁基板を加熱して感応層(薄膜)を成膜する手法(基板加熱成膜)が有効であることが開示されている(非特許文献1参照)。つまり、感応層の成膜にあたり、絶縁基板を加熱することで絶縁基板の表面が清浄な状態となり、絶縁基板への感応層の付着が向上する。また、絶縁基板を加熱することは感応層(薄膜)を加熱することでもあり、この加熱により感応層の内部応力が緩和されることで、感応層でのクラックの発生を抑制できる。
国際公開第2004/048957号パンフレット(請求項1) 特開平9−033470号公報(請求項1) 「薄膜作製プロセスにおける成膜条件の最適化」、技術情報協会、p50−51
しかし、上述した特許文献1のガスセンサ素子においては、接触不良や剥離、クラックの発生を抑制することができるものの、酸化性ガスに対するガス選択性能が低下する虞がある。
つまり、基板加熱成膜手法により加熱して成膜した感応層は、剥離、クラックや膜ハガレを防止できるものの、加熱せずに成膜した感応膜に比べて、結晶密度が高くなることによりHC,CO,H2 等の還元性ガスに対する検出感度が良くなる傾向があり、検出対象ガスである酸化性ガス以外のガスまでをも検出するという特性が生じやすい。このように、検出対象ガス以外のガスを検出しやすい特性を有するガスセンサ素子は、酸化性ガスと還元性ガスとが併存する環境下において酸化性ガスに特化したガス濃度変化を正確に検出することができず、ガス選択性能が低下することになる。
なお、酸化性ガスに対するガス選択性能の向上を図るためには、例えば、加熱することなく常温環境下において感応層(薄膜)を成膜して、感応層の結晶密度を低密度とする手法がある。しかし、このようにして形成される低密度の感応層は、膜ハガレやクラックなどが発生しやすいという問題がある。
このため、従来のガスセンサ素子は、感応層における剥離やクラックの発生を抑制することと、酸化性ガスに対するガス選択性能の低下を抑制することを両立することは困難であった。
なお、特許文献2の段落番号[0005]には、ガスセンサ素子のガス選択性の向上を目的として、複数の電極層を設けることが記載されているが、感応層の特性に関しては記載されていない。
そこで、本発明はこうした問題に鑑みなされたものであり、感応層における剥離やクラックの発生を抑制すると共に、酸化性ガスの還元性ガスに対するガス選択性能に優れるガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、絶縁基板上に積層された金属酸化物半導体からなる感応層と、感応層の少なくとも一部が露出した状態で感応層に付着した貴金属からなる触媒部と、を備え、感応層の抵抗値変化に応じて酸化性ガスを検出するガスセンサ素子であって、感応層は、絶縁基板側に位置する金属酸化物半導体からなる基板側感応層と、基板側感応層に積層されると共に触媒部に接する金属酸化物半導体からなる触媒側感応層と、を備えており、基板側感応層は、触媒側感応層よりも高密度の結晶からなる金属酸化物半導体で構成され、触媒部は金を主体に形成されること、を特徴とするガスセンサ素子である。
このガスセンサ素子は、結晶密度の異なる2つの層(基板側感応層、触媒側感応層)を有する感応層を備えることに特徴がある。
つまり、基板側感応層は、触媒側感応層に比べて高密度の結晶で構成されることから、絶縁基板との密着性に優れるため絶縁基板との剥離が生じがたく、また、基板側感応層自体の強度も高まるためクラックや膜ハガレなどの破損が生じがたい特性を有している。
また、触媒側感応層は、基板側感応層に比べて低密度の結晶で構成されており、酸化性ガスにおけるガス選択性に優れた特性を有する。
なお、基板側感応層および触媒側感応層は、それぞれ同一素材で構成されるものに限られず、互いに異なる素材で構成することができるが、少なくとも互いに金属酸化物半導体であることから、それぞれの性質は近似している。そして、同種材料どうし(金属酸化物半導体どうし)の密着強度は、異種材料どうしの密着強度(例えば、絶縁材料と金属酸化物半導体との密着強度)に比べて、高くなる。このため、基板側感応層と触媒側感応層との密着強度は、基板側感応層と絶縁基板との密着強度に比べて高くなる。
これらのことから、このガスセンサ素子は、高密度の結晶からなる基板側感応層を備えることから、感応層(詳細には、基板側感応層)と絶縁基板との密着強度が高く、また、感応層を構成する基板側感応層と触媒側感応層との密着強度が高いことから、剥離やクラックなどの問題が生じがたい性質を有している。また、低密度の触媒側感応層がガス選択性能に優れることから、このガスセンサ素子は、酸化性ガスにおけるガス選択性能の低下を抑制することができる。
さらに、このガスセンサ素子は、触媒部として金(Au)を主体とする触媒部を備えており、金は他の貴金属に比べて低密度の感応層における酸化性ガスのガス検出精度をより向上できることから、この触媒部が触媒側感応層の酸化性ガスのガス検出精度を向上させることができ、酸化性ガスのガス選択性能がさらに向上する。なお、本明細書において「主体」とは、最も含有率の大きい成分を意味する。
よって、本発明のガスセンサ素子によれば、感応層における剥離やクラックの発生を抑制すると共に、酸化性ガスの還元性ガスに対するガス選択性能の低下を抑制することができる。
なお、ガスセンサ素子は、感応層が高温となり活性化することで酸化性ガスを検出することから、ガス検出時には、感応層を加熱して活性化させる発熱体と共に使用される。この発熱体は、ガスセンサ素子とは別体のものとして備えてもよく、あるいは、ガスセンサ素子に一体に備えてもよい。発熱体をガスセンサ素子に一体に備える場合には、感応層と発熱体とを電気的に絶縁した状態で備えることが必要であり、感応層と発熱体とを絶縁層を介して近接した位置に配置することが望ましい。
ところで、基板側感応層および触媒側感応層を備える感応層は、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法とが互いに同一比率(同一寸法)である構成(基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率=1:1となる構成)に限られることはない。そして、上述のガスセンサ素子は、好ましくは、請求項2に記載のように、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が、「1:8」〜「3:2」の範囲内であるとよい。
つまり、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「1:8」以上となるようにして、基板側感応層の厚さ寸法が相対的に小さくなりすぎるのを防止することで、高密度の結晶で構成される基板側感応層による絶縁基板との密着強度の向上という作用効果をより好適に得ることができ、感応層と絶縁基板との剥離を好適に抑制できる。
また、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「3:2」以下となるようにして、触媒側感応層の厚さ寸法が相対的に小さくなりすぎるのを防止することで、低密度の結晶で構成される触媒側感応層によるガス選択性の作用効果をより好適に得ることができ、酸化性ガスのガス選択性の向上を図ることができる。
よって、本発明のガスセンサ素子によれば、感応層における剥離やクラックの発生をより好適に抑制できると共に、酸化性ガスの還元性ガスに対するガス選択性能の低下をより好適に抑制することができる。
次に、上述のガスセンサ素子は、請求項3に記載のように、基板側感応層および触媒側感応層は、それぞれ同一素材で形成されるとよい。
このように同一素材で形成することで、基板側感応層と触媒側感応層との密着強度をさらに高めることができ、クラックや膜ハガレなどがより一層発生し難くなる。
なお、ここでは、同一素材とは、各感応層を構成する元素成分(例えば、Sn、Oなど)が同一であることを意味しており、例えば、SnOxのうちx部分の数値が互いに異なるものどうしは同一素材である。
次に、上述のガスセンサ素子は、請求項4に記載のように、基板側感応層および触媒側感応層は、それぞれ酸化スズを主体に形成されるとよい。
酸化スズ(SnO2 )は、触媒部の主体である金と相俟って、酸化性ガスを精度良く選択して検出する特性を有していることから、酸化スズを主体に形成された基板側感応層および触媒側感応層を備えることで、酸化性ガスを精度良く選択して検出することができる。
したがって、このガスセンサ素子は、酸化性ガスを検出する用途において、優れたガス選択性能を発揮することができる。
次に、上記目的を達成するためになされた請求項5に記載の発明方法は、絶縁基板上に積層された金属酸化物半導体からなる感応層と、感応層の少なくとも一部が露出した状態で感応層に付着した貴金属からなる触媒部と、を備え、感応層の抵抗値変化に応じて酸化性ガスを検出するガスセンサ素子の製造方法であって、感応層の形成工程として、絶縁基板側に位置する金属酸化物半導体からなる基板側感応層を薄膜形成法を用いて形成する基板側感応層形成工程と、基板側感応層に積層されると共に触媒部の付着が予定される金属酸化物半導体からなる触媒側感応層を薄膜形成法を用いて形成する触媒側感応層形成工程と、を有しており、基板側感応層形成工程における絶縁基板の温度は、触媒側感応層形成工程における絶縁基板の温度よりも高温であること、を特徴とするガスセンサ素子の製造方法である。
この発明方法は、感応層の形成工程として、薄膜形成法を用いた基板側感応層形成工程と、同じく薄膜形成法を用いた触媒側感応層形成工程と、を有しており、基板側感応層形成工程における絶縁基板の温度と触媒側感応層形成工程における絶縁基板の温度とが、それぞれ異なる温度であることに特徴がある。
そして、形成工程での温度が異なる基板側感応層および触媒側感応層は、それぞれ金属酸化物半導体の結晶密度が異なるものとなる。つまり、高温環境下で形成される基板側感応層は、触媒側感応層に比べて高密度の結晶で構成されることから、絶縁基板との密着性に優れるため絶縁基板との剥離が生じがたく、また、基板側感応層自体の強度も高まるためクラックや膜ハガレなどの破損が生じがたい特性を有する。
また、低温環境下で形成される触媒側感応層は、基板側感応層に比べて低密度の結晶で構成されており、酸化性ガスのガス選択性に優れた特性を有する。
なお、基板側感応層および触媒側感応層は、それぞれ同一素材で構成されるものに限られず、互いに異なる素材で構成することができるが、少なくとも互いに金属酸化物半導体であることから、それぞれの性質は近似している。そして、同種材料どうし(金属酸化物半導体どうし)の密着強度は、異種材料どうしの密着強度(例えば、絶縁材料と金属酸化物半導体との密着強度)に比べて、高くなる。このため、基板側感応層と触媒側感応層との密着強度は、基板側感応層と絶縁基板との密着強度に比べて高くなる。
これらのことから、このガスセンサ素子の製造方法によれば、感応層(詳細には、基板側感応層)と絶縁基板との密着強度が高く、また、感応層を構成する基板側感応層と触媒側感応層との密着強度が高いことから、剥離やクラックなどの問題が生じがたい性質を有するガスセンサ素子を製造できる。また、低密度の触媒側感応層が酸化性ガスに対するガス選択性能に優れることから、本製造方法によれば、酸化性ガスの還元性ガスに対するガス選択性能に優れるガスセンサ素子を製造できる。
よって、本発明方法によれば、剥離やクラックなどの問題が生じがたいガスセンサ素子を製造でき、ガスセンサ素子の不良品の発生頻度を低減できるとともに、酸化性ガスに対するガス選択性能に優れたガスセンサ素子を製造することができる。
なお、触媒側感応層に付着させる触媒部としては、酸化性ガスに対するガス選択性能を一層向上させることを目的に、金(Au)を主体に構成することが好ましい。また、基板側感応層および触媒側感応層は薄膜形成法を用いて形成されれば良く、その手法自体は特に限定されないが、気相成長法、より具体的にはスパッタリング法または蒸着法を用いることが均一な膜厚の膜付けを行う上で好ましい。
そして、上述のガスセンサ素子の製造方法においては、例えば、請求項6に記載のように、基板側感応層形成工程における絶縁基板の温度は、200〜400[℃]の範囲内であり、触媒側感応層形成工程における絶縁基板の温度は、0〜100[℃]の範囲内であるとよい。
つまり、基板側感応層形成工程における絶縁基板の温度を200〜400[℃]の範囲内に設定して薄膜形成を実行することで、基板側感応層の結晶密度を高くすることができ、絶縁基板との剥離が生じがたく、クラックや膜ハガレなどの破損が生じがたい薄膜状の基板側感応層を形成することができる。
また、触媒側感応層形成工程における絶縁基板の温度を0〜100[℃]の範囲内に設定して薄膜形成を実行することで、触媒側感応層の結晶密度を低くすることができ、酸化性ガスのガス選択性に優れた薄膜状の触媒側感応層を形成することができる。
よって、このような発明方法によれば、感応層における剥離やクラックの発生を抑制すると共に、酸化性ガスのガス選択性に優れるガスセンサ素子を効率良く製造することができる。
なお、基板側感応層形成工程では、より好適には、絶縁基板の温度を200〜300[℃]に設定するとよい。
つまり、絶縁基板を高温に加熱するに際しては、基板側感応層の部位毎に温度のバラツキが生じることがあり、温度のバラツキが生じると、その温度差に起因して基板側感応層が部位毎にそれぞれ異なる特性を有することとなる。このようなガスセンサ素子は、部位毎に特性が異なるため全体としての特性も不安定となり、ガスセンサ素子毎に個体差による特性の誤差が生じる虞がある。
これに対して、設定温度が低くなるほど温度のバラツキが生じ難くなることから、基板側感応層形成工程における絶縁基板の温度を、結晶密度が高くなる温度範囲のうちの低い温度範囲(200〜300[℃])に設定することで、部位毎の温度のバラツキを小さくでき、ガスセンサ素子ごとの個体差による特性誤差の発生を抑えることができる。
よって、このような発明方法によれば、個体差によるガスセンサ素子の特性誤差の発生を抑制でき、ガスセンサ素子の製造品質を向上できる。
また、触媒側感応層形成工程では、より好適には、絶縁基板の温度を0〜30[℃]に設定するとよい。つまり、形成時における触媒側感応層の温度が低くなるほど結晶密度が低くなり酸化性ガスのガス選択性能が向上することから、絶縁基板の温度を、前述した温度範囲のうちの低い温度範囲(0〜30[℃])に設定することで、酸化性ガスのガス選択性能をより一層向上させることができる。
以下に、本発明の実施形態について、図面と共に説明する。
実施形態として、被測定ガス中から酸化性ガス(特に、二酸化窒素(NO2 ))を検出するガスセンサ素子1について説明する。ガスセンサ素子1は、二酸化窒素の濃度に応じて電気抵抗値が変化する特性を有しており、電気抵抗値の変化に応じて二酸化窒素の濃度変化を検出する。
図1に、ガスセンサ素子1の概略内部構造を表す断面図を示す。
ガスセンサ素子1は、図1に示すように、シリコン基板2(以下、単に「基板2」ともいう。)、絶縁層3、感応体4、発熱体5、一対の電極6を備えて構成されている。
絶縁層3は、基板2の表裏面に形成されており、基板2に積層された酸化ケイ素(SiO2 )で構成される第1絶縁層31と、第1絶縁層31に積層された窒化ケイ素(Si34)で構成される第2絶縁層32とを備えている。また、基板2のうち感応体4が設けられる側に形成される絶縁層3は、第2絶縁層32に積層された酸化ケイ素(SiO2 )で構成される発熱体絶縁層33と、発熱体絶縁層33に積層された窒化ケイ素(Si34)で構成される感応体側絶縁層34と、を備えている。
また、この基板2のうち感応体4が形成される側とは反対側においては、基板2および絶縁層3を厚さ方向に貫く形態の空間部21が形成されており、ガスセンサ素子1は、ダイヤフラム構造をなしている。
発熱体絶縁層33の内部には発熱体5が形成されており、発熱体5は、発熱体絶縁層33のうち空間部21に近い位置に形成されている。なお、図示は省略しているが、発熱体5には外部からの電力供給を受けるための発熱体用リード部が接続されており、この発熱体用リード部は、外部機器と接続するためのコンタクト部を有している。発熱体5および発熱体用リード部は、Pt層52とTa層51によって構成された2層構造である(図2参照)。
次に、図2に、ガスセンサ素子1のうち感応体4などに相当する部分の概略内部構造を表す断面図を示す。
図2に示すように、一対の電極6は、感応体側絶縁層34の表面のうち発熱体5の近傍に形成されている。なお、図2に示す複数の電極6は、互いに隣接するものどうしが一対の電極として備えられている。また、図示は省略するが、一対の電極6にはそれぞれ電極用リード部が接続され、電極用リード部は、外部機器と接続するための電極用コンタクト部を有している。
また、電極6は、感応体側絶縁層34に積層され且つTiにより構成される下層電極61と、この下層電極61に積層され且つPtにより構成される上層電極62と、を有する。ここで、下層電極61の層厚寸法は、20[nm]であり、上層電極62の層厚寸法は、40[nm]である。
感応体4は、一対の電極6に電気的に接続される状態で感応体側絶縁層34に積層されて形成されている。また、感応体4は、酸化スズ(SnO2 )を主成分とする感応層41(感応層の全質量を100質量%とした場合に酸化スズが99質量%以上)と、金(Au)からなる触媒部42と、を備えて構成されている。また、感応体4の平面形状は、角部がアール形状の四角形である。
感応層41は、感応体側絶縁層34に接する金属酸化物半導体(酸化スズ(SnO2 ))からなる基板側感応層44と、基板側感応層44に積層されると共に触媒部42に接する金属酸化物半導体(酸化スズ(SnO2 ))からなる触媒側感応層45と、を備えている。そして、基板側感応層44は、触媒側感応層45よりも高密度の結晶からなる金属酸化物半導体(酸化スズ(SnO2 ))で構成されている。
また、基板側感応層44の厚さ寸法L1(40[nm])と触媒側感応層45の厚さ寸法L2(160[nm])との比率(L1:L2)は、「1:4」である。
このように構成されたガスセンサ素子1は、電極用リード部に接続される外部機器などにより一対の電極6を介して感応体4の電気抵抗値が検出され、検出された電気抵抗値に基づいて二酸化窒素(NO2 )の濃度変化を検出する用途に用いることができる。
次に、ガスセンサ素子1の製造方法について説明する。
まず、第1工程では、基板2となるシリコンウェハの洗浄工程を実行する。つまり、洗浄液中に基板2となるシリコンウェハを浸し、シリコンウェハ表面の洗浄処理を行う。
第2工程では、第1絶縁層31となる酸化ケイ素膜形成工程を実行する。つまり、シリコンウェハ(基板2)を熱処理炉に入れ、熱酸化処理にて膜厚が100[nm]の酸化ケイ素膜を形成する。
第3工程では、第2絶縁層32となる窒化ケイ素膜形成工程を実行する。つまり、基板2の表裏面に第2絶縁層32(層厚200[nm])となる窒化ケイ素膜を、LP−CVDにてSiH2Cl2,NH3 をソースガスとして形成した。
第4工程では、発熱体絶縁層33のうち下部発熱体絶縁層331となる酸化ケイ素膜形成工程を実行する。つまり、基板2の一方の面に下部発熱体絶縁層331(層厚100[nm])となる酸化ケイ素膜を、プラズマCVDにてTEOS,O2 をソースガスとして形成した。
第5工程では、発熱体5の形成工程を実行する。つまり、下部発熱体絶縁層331の表面にDCスパッタ装置を用いて、Ta層51(層厚20[nm])を形成後、Pt層52(層厚220[nm])を形成する。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウェットエッチング処理でヒータ5(発熱体5)を形成する。
第6工程では、発熱体絶縁層33のうち上部発熱体絶縁層332となる酸化ケイ素膜形成工程を実行する。つまり、下部発熱体絶縁層331の表面に上部発熱体絶縁層332(層厚100[nm])となる酸化ケイ素膜を、プラズマCVDにてTEOS,O2 をソースガスとして形成した。
第7工程では、感応体側絶縁層34となる窒化ケイ素膜形成工程を実行する。つまり、発熱体絶縁層33の表面に感応体側絶縁層34(層厚200[nm])となる窒化ケイ素膜を、LP−CVDにてSiH2Cl2,NH3 をソースガスとして形成した。
第8工程では、発熱体用リード部(ヒータコンタクト部)の形成工程を実行する。つまり、フォトリソグラフィによりパターニングを行い、ドライエッチング法で発熱体絶縁層33(窒化ケイ素膜)と感応体側絶縁層34(酸化ケイ素膜)のエッチングを行い、図示しない発熱体用リード部(ヒータコンタクト部)を形成する。
第9工程では、1対の電極6の形成工程を実行する。つまり、DCスパッタ装置を用いて、感応体側絶縁層34に対して下層電極61としてのTi層(層厚20[nm])を形成した後、上層電極62としてのPt層(層厚40[nm])を形成する。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウェットエッチング処理を行うことで、電極6を形成する。なお、このとき、電極6とともに、電極用リード部および電極用コンタクト部を形成する。
第10工程では、電極用コンタクト部および発熱体用コンタクト部に接続されるコンタクトパッド(ボンディングパット)の形成工程を実行する。つまり、感応体側絶縁層34のうち電極6が形成された面に対して、DCスパッタ装置を用いて、Au層(層厚400[nm])を形成する。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウェットエッチング処理を行うことで、電極用コンタクト部および発熱体用コンタクト部に接続されるコンタクトパッド(ボンディングパット)を形成する。
第11工程では、空間部21(ダイヤフラム)の形成工程を実行する。つまり、基板2のうち感応体4が形成される側とは反対側に形成された第2絶縁層32の表面に対して、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、マスクとなる絶縁膜をドライエッチングし、第1絶縁層31などが形成された基板2をTMAH溶液中に浸し、シリコンの異方性エッチングを行い、空間部21(ダイヤフラム)を形成する。
第12工程では、感応体4の形成工程を実行する。つまり、次のような工程を実行することで、感応体側絶縁層34の表面に感応体4を形成した。
まず、ターゲットとしてSnO2 を準備し、RFスパッタ装置を用いて、発熱体5および空間部21と対応する位置に、基板側感応層44となる酸化スズ層(高密度のSnO2 柱状結晶層、層厚40[nm])を2[nm/分]の速度にて形成する。このとき、第1絶縁層31などが形成された基板2を240[℃]に加熱した状態で、基板側感応層44を形成(スパッタリング)する。
その後、基板側感応層44が形成された基板2の温度が25[℃]まで低下するのを待ち、基板2の温度が25[℃]の状態において、ターゲットとしてSnO2 を用いつつRFスパッタ装置を用いて、基板側感応層44の表面に触媒側感応層45となる酸化スズ層(低密度のSnO2 柱状結晶層、層厚160[nm])を2[nm/分]の速度にて形成する。
その後、RFスパッタ装置を用いて、触媒側感応層45が形成された基板2を加熱しながら、触媒部42としての金(Au)を厚さ48[nm]相当で、触媒側感応層45の表面に添加する。このとき、触媒部42は、触媒側感応層45の表面を完全に覆う状態で形成されるのではなく、粒子状の触媒材料(本実施形態では金(Au))が点在する状態で触媒側感応層45の表面に付着される。
なお、図7に、ガスセンサ素子1のうち感応層41の断面STEM像を示すと共に、図8に、ガスセンサ素子1のうち触媒部42の平面SEM画像を示す。図7から、感応層41は、結晶密度が異なる2つの層(基板側感応層44,触媒側感応層45)で構成されることが判る。また、図8から、触媒部42は、感応層41の表面に点在する状態で形成されていることが判る。
以上により、基板側感応層44、触媒側感応層45、触媒部42を有する感応体4が形成される。
第13工程では、基板2の切断工程を実行する。つまり、感応体4が形成された基板2を、ダイシングソーを用いて切断することで、ガスセンサ素子1が完成する。
そして、ガスセンサ素子1は、Auワイヤを介して測定治具(外部機器)と接続可能な状態で、ガスセンサに備えられる。
次に、結晶密度の異なる2つの層を有する感応層41を備える本実施形態のガスセンサ素子1を用いて、ガス応答感度、ガス感度、耐久性などを評価した評価結果について説明する。
なお、比較例として、基板2の温度を240[℃]に設定してスパッタリングした結晶密度の高い単層の感応層(膜厚200[nm])を備えるガスセンサ素子(高密度単層ガスセンサ素子)、および基板2の温度を25[℃]に設定してスパッタリングした結晶密度の低い単層の感応層(膜厚200[nm])を備えるガスセンサ素子(低密度単層ガスセンサ素子)についても、評価を実施した。
まず、ガス応答感度およびガス感度の評価方法について説明する。
なお、ガス応答感度の評価は、検出対象ガス(二酸化窒素)の濃度変化に対するセンサ応答時間を評価するために実行し、また、ガス感度は、還元性ガスの影響を受けることなく検出対象ガスである酸化性ガス(二酸化窒素)を選択的に検出できるか否かのガス選択性能を評価するために実行した。
本評価に用いたガスセンサ評価装置101の概略構成図を、図3に示す。
ガスセンサ評価装置101は、ガスセンサ配置部を有する測定管103と、測定管103に試料ガスを供給するメインガス管105と、メインガス管105を流れるベースガスに対して添加ガスを添加する添加ガス管107と、測定管103から排出される排気ガスの経路となる排気管109と、排気管109から排出される排気ガスを屋外に排出する排気ダクト111と、測定管103から排気ダクト111へのバイパス経路を形成するバイパスチューブ管113と、を備えている。
なお、メインガス管105のうち添加ガス管107との接続位置から測定管103との接続位置までの寸法は、100[mm]であり、測定管103の長さ寸法は250[mm]である。また、測定管103は、内径寸法が16[mm]であり、長さ寸法は250[mm]である。さらに、バイパスチューブ管113は、測定管103の内部圧力が過度に上昇するのを防止するために備えられている。
そして、ガス応答感度の評価時に測定管103に供給する試料ガスは、ベースガス(O2 :20.9%、N2 :bal(残量)、相対湿度40%)に対して、検知対象ガスとしての添加ガス(二酸化窒素(NO2 ))を1ppm添加したガスである。
また、ガス感度の評価時に測定管103に供給する試料ガスは、ベースガス(O2 :20.9%、N2 :bal(残量)、相対湿度40%)に対して、妨害ガスとしての添加ガス(水素(H2 ))を15ppm添加したガスである。
なお、ガス応答感度の評価時およびガス感度の評価時のそれぞれにおいて、試料ガス温度は常温(25[℃])に設定し、ガスセンサ素子のヒータ温度は200[℃]に設定した。
そして、ガス応答感度の評価においては、基準抵抗値Rga(ベースガスを流したときの素子抵抗値)と、検知ガス添加後抵抗値Rgn5(NO2 ガス1ppm添加時から5秒後の素子抵抗値)とを検出し、ガス応答感度を「Rgn5/Rga」と定義して、ガス応答感度を評価した。なお、ガス応答感度「Rgn5/Rga」は、その値が大きいほどガス検出速度が速いことを示すことから、その値が大きいほどガス応答感度が高く(良く)、その値が小さいほどガス応答感度が低い(悪い)と評価できる。
また、ガス感度の評価においては、基準抵抗値Rga(ベースガスを流したときの素子抵抗値)と、妨害ガス添加後抵抗値Rgh180(H2 ガス15ppm添加時から180秒後の素子抵抗値)とを検出し、ガス感度を「Rgh180/Rga」と定義して、ガスセンサ素子のガス感度を評価した。
なお、ガス感度「Rgh180/Rga」の値が1に近いほど妨害ガスに対する検出感度が低くなるため、ガスセンサ素子としては、ガス感度「Rgh180/Rga」の値が1に近いほど、妨害ガスの影響が小さくガス選択性に優れた特性を有すると評価できる。反対に、ガス感度「Rgh180/Rga」の値が1から離れるほど妨害ガスに対する検出感度が高くなるため、ガスセンサ素子としては、ガス感度「Rgh180/Rga」の値が1から離れるほど、妨害ガスの影響を大きく受けて、ガス選択性に劣る特性を有すると評価できる。
そして、ガス応答感度「Rgn5/Rga」の測定結果を図4(a)に示し、ガス感度「Rgh180/Rga」の測定結果を図4(b)に示す。なお、図4では、本実施形態のガスセンサ素子1を「密な層+疎な層」として、比較例のうち高密度単層ガスセンサ素子を「密な層のみ」として、比較例のうち低密度単層ガスセンサ素子を「疎な層のみ」として、それぞれの測定結果を表す。なお、各素子ともに、4個ずつ準備し、それぞれについて測定を行った。
図4(a)に示す測定結果によれば、本発明のガスセンサ素子1、比較例の高密度単層ガスセンサ素子、比較例の低密度単層ガスセンサ素子との間において、ガス応答感度「Rgn5/Rga」の平均値はほぼ等しく、ガス応答感度に関しては有意差はないと評価できる。
図4(b)に示す測定結果によれば、本発明のガスセンサ素子1および比較例の低密度単層ガスセンサ素子は、ガス感度「Rgh180/Rga」の値が1に近いことから、妨害ガスに対する検出感度が低く、妨害ガスの影響を受け難い特性を有すると評価できる。これに対して、比較例の高密度単層ガスセンサ素子は、ガス感度「Rgh180/Rga」の値が1から離れており、妨害ガスに対する検出感度が高く、妨害ガスの影響を受けやすい特性を有していると評価できる。
この評価結果によれば、本発明を適用したガスセンサ素子1は、高密度単層ガスセンサ素子に比べて、ガス感度に優れた特性を有することが判る。
次に、ガスセンサ素子の耐久性の評価方法について説明する。
耐久性の評価は、ガスセンサ素子のヒータ(発熱体5)の温度を通常使用温度(200[℃])よりも100[℃]高い温度(300[℃])に設定することにより、耐久加速試験としての評価を行った。なお、発熱体5の温度制御は、発熱体5の電気抵抗値が温度300[℃]における電気抵抗値となるように電流値および電圧値を制御することにより行った。
また、評価方法としては、加熱から300時間経過後の感応層の状態(クラックなどの発生状態)を光学顕微鏡により倍率500倍で観察する方法と、上記した時間経過に伴うガス応答感度「Rgn5/Rga」の変化を検出する方法と、を採用した。
そして、300時間後の感応層の状態については、本発明のガスセンサ素子1および比較例の高密度単層ガスセンサ素子はクラックが発生していないのに対して、比較例の低密度単層ガスセンサ素子はクラックが発生していた。
このことから、本発明を適用したガスセンサ素子1は、低密度単層ガスセンサ素子に比べて、クラックが発生しがたく、耐久性に優れた特性を有することが判る。
また、時間経過に対するガス応答感度の変化については、図5にガス応答感度「Rgn5/Rga」の検出結果を示す。なお、ガス応答感度「Rgn5/Rga」が1.38以上となるガスセンサ素子であれば実用上使用可能であることから、劣化判断基準値を1.38として、ガス応答感度に関する耐久性の評価を行った。
図5によれば、通電時間が約300時間以下であれば、いずれのガスセンサ素子も、ガス応答感度「Rgn5/Rga」が劣化判断基準値を上回っており、実用上使用可能であることが判る。しかし、通電時間が約300時間を超えると、比較例の低密度単層ガスセンサ素子は、ガス応答感度「Rgn5/Rga」が劣化判断基準値を下回るため実用上使用できないのに対して、本発明のガスセンサ素子1および比較例の高密度単層ガスセンサ素子は、ガス応答感度「Rgn5/Rga」が劣化判断基準値を上回るため、実用上使用可能であることが判る。
このことから、本発明を適用したガスセンサ素子1は、低密度単層ガスセンサ素子に比べて、時間経過に伴うガス応答感度が低下しがたく、耐久性に優れた特性を有すると評価できる。
また、低密度単層ガスセンサは、感応層と絶縁層(絶縁基板)との密着強度が低く、製造直後においても感応層に膜ハガレなどが生じる場合があることから、耐久性に劣るという問題がある。なお、膜ハガレについては、例えば、光学顕微鏡により倍率100倍で観察することにより発見することができる。
上述の評価項目ごとに評価結果を示すと共に、これらの評価結果に基づき総合評価をまとめた結果を、[表1]に示す。
[表1]に示すように、本発明を適用したガスセンサ素子1は、高密度単層ガスセンサ素子および低密度単層ガスセンサ素子に比べて、耐クラック性、通電耐久性、ガス選択性能、耐膜ハガレ性の全ての項目に関して、良好な結果を得られることがわかる。このことから、ガスセンサ素子1は、感応層41における剥離やクラックの発生を抑制することと、還元性ガス(妨害ガス)に対する酸化性ガス(二酸化窒素)のガス選択性能の低下を抑制することを両立でき、総合評価において優れた特性を有することが判る。
なお、本実施形態のガスセンサ素子1においては、絶縁層3および基板2が、特許請求の範囲における絶縁基板に相当している。
以上説明したように、本実施形態のガスセンサ素子1は、結晶密度の異なる2つの層(基板側感応層44、触媒側感応層45)を有する感応層41を備えることに特徴がある。
つまり、基板側感応層44は、触媒側感応層45に比べて高密度の結晶で構成されることから、感応体側絶縁層34が形成された基板2との密着性に優れるため感応体側絶縁層34(基板2)との剥離が生じがたく、また、基板側感応層44自体の強度も高まるためクラックや膜ハガレなどの破損が生じがたい特性を有している。
また、触媒側感応層45は、基板側感応層44に比べて低密度の結晶で構成されており、上述した評価結果から判るように、酸化性ガスのガス選択性に優れた特性を有する。
なお、基板側感応層44および触媒側感応層45は、それぞれ金属酸化物半導体(酸化スズ(SnO2 ))であることからそれぞれの性質は近似しており、異種材料どうしの密着強度(例えば、絶縁材料と金属酸化物半導体との密着強度)に比べて、密着強度が高くなる。とりわけ、基板側感応層44および触媒側感応層45は、それぞれ同一素材(酸化スズ(SnO2 ))の金属酸化物半導体であることから、異種の金属酸化物半導体どうしの密着強度に比べて、密着強度が高くなる。
これらのことから、ガスセンサ素子1は、感応層41(詳細には、基板側感応層44)と感応体側絶縁層34(基板2)との密着強度が高く、また、感応層41を構成する基板側感応層44と触媒側感応層45との密着強度が高いことから、剥離やクラックなどの問題が生じがたい性質を有している。このことは、上述した耐久性の評価結果からも判る。
また、上述したガス感度の評価結果からも判るように、低密度の触媒側感応層45が酸化性ガスのガス選択性能に優れることから、ガスセンサ素子1は、ガス選択性能の低下を抑制することができる。
さらに、このガスセンサ素子1は、触媒層として金(Au)からなる触媒部42を備えており、金は他の貴金属に比べて低密度の感応層41におけるガス検出精度をより向上できることから、この触媒部42が触媒側感応層45のガス検出精度を向上させることができ、酸化性ガスのガス選択性能がさらに向上する。
さらに、本実施形態では、ガスセンサ素子の製造工程において、感応層41の形成工程として、基板側感応層44の形成工程と触媒側感応層45の形成工程とを実行しており、基板側感応層44の形成工程における絶縁層3を含めた基板2の温度と触媒側感応層45の形成工程における絶縁層3を含めた基板2の温度とを異なる温度に設定している。
そして、形成工程での基板2の温度が異なる条件下で形成された基板側感応層44および触媒側感応層45は、それぞれ金属酸化物半導体(酸化スズ(SnO2 ))の結晶密度が異なるものとなる。つまり、高温環境下で形成される基板側感応層44は、触媒側感応層45に比べて高密度の結晶で構成されることから、感応体側絶縁層34(基板2)との密着性に優れるため感応体側絶縁層34(基板2)との剥離が生じがたく、また、基板側感応層44自体の強度も高まるためクラックや膜ハガレなどの破損が生じがたい特性を有する。
また、低温環境下で形成される触媒側感応層45は、基板側感応層44に比べて低密度の結晶で構成されることから、上述した評価結果からも判るとおり、ガスセンサ素子1は、ガス選択性に優れた特性を有する。
これらのことから、本実施形態におけるガスセンサ素子1の製造方法によれば、感応層41(詳細には、基板側感応層44)と感応体側絶縁層34(基板2)との密着強度が高く、また、感応層41を構成する基板側感応層44と触媒側感応層45との密着強度が高いことから、剥離やクラックなどの問題が生じがたい性質を有するガスセンサ素子を製造できる。また、低密度の触媒側感応層45が還元性ガスに対する酸化性ガスのガス選択性能に優れることから、本製造方法によれば、ガス選択性能の低下を抑制できるガスセンサ素子1を製造できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、種々の態様をとることができる。
例えば、感応層を構成する基板側感応層と触媒側感応層との厚さ寸法の比率(L1:L2)は、「1:4」に限られることはなく、その他の比率であっても良い。そして、基板側感応層と触媒側感応層との厚さ寸法の比率(L1:L2)は、「1:8」〜「3:2」の範囲内に設定することが望ましい。
つまり、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「1:8」以上となるように基板側感応層を形成することで、高密度の結晶で構成される基板側感応層による絶縁基板との密着強度をより好適に向上させることができる。このように基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が設定されたガスセンサ素子は、感応層と絶縁基板との剥離をより好適に抑制でき、剥離に対する強度に優れた特性を有する。
また、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「3:2」以下となるように触媒側感応層を形成することで、低密度の結晶で構成される触媒側感応層による酸化性ガスのガス選択性の作用効果をより好適に得ることができる。
ここで、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「1:4」となるガスセンサ素子と、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「3:2」となるガスセンサ素子とについて、耐久加速評価試験としての評価を行った際の評価結果について説明する。
なお、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「1:4」となるガスセンサ素子は、上述したガスセンサ素子1である。また、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「3:2」となるガスセンサ素子は、上述したガスセンサ素子1に比べて、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率は異なるものの、それ以外の構成は、同様の構成である。
図6に、上記した時間経過に対するガス応答感度「Rgn5/Rga」の検出結果を示す。なお、ガス応答感度「Rgn5/Rga」が1.38以上となるガスセンサ素子であれば実用上使用可能であることから、劣化判断基準値を1.38として、ガス応答感度に関する耐久性の評価を行った。
図6によれば、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「1:4」となるガスセンサ素子と、「3:2」となるガスセンサ素子とは、いずれも、通電時間が300時間を経過した後であっても、ガス応答感度「Rgn5/Rga」が劣化判断基準値を上回るため、実用上使用可能であることが判る。
よって、基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が「3:2」となるガスセンサ素子は、耐久性に優れていることが判る。
また、感応層を構成する金属酸化物半導体は、上記実施形態のようにSnO2 に限られることはなく、SnOxのうちx部分が2以外の数値となるものであってもよい。また、SnOx以外の金属酸化物半導体であってもよい。
さらに、ガスセンサ素子の製造方法において、基板側感応層44の形成工程における絶縁層3を含む基板2の温度は、240[℃]に限られることはなく、感応層41の強度がクラックなどが生じがたい強度となるような温度に設定すれば良く、200〜400[℃]の範囲内であればよい。また、触媒側感応層45の形成工程における絶縁層3を含む基板2の温度は、25[℃]に限られることはなく、感応層41のガス選択性が良好となるような温度に設定すれば良く、0〜100[℃]の範囲内であればよい。
そして、より好ましくは、基板側感応層44の形成工程における基板2の温度は、200〜300[℃]の範囲に設定すると良く、このように設定温度が低くなるほど、基板側感応層における部位毎の温度のバラツキが生じ難くなる。つまり、基板側感応層44の形成時における基板2の温度を、結晶密度が高くなる温度範囲のうちの低い温度範囲(200〜300[℃])に設定することで、基板側感応層における部位毎の温度のバラツキを小さくできる。この結果、ガスセンサ素子ごとの個体差による特性誤差の発生を抑えることができる。
また、より好ましくは、触媒側感応層45の形成工程における基板2の温度は、0〜30[℃]の範囲に設定すると良く、形成時における触媒側感応層の温度が低くなるほど結晶密度が低くなり酸化性ガスのガス選択性能が向上することから、触媒側感応層45の形成時における基板2の温度を、前述した温度範囲のうちの低い温度範囲(0〜30[℃])に設定することで、ガス選択性能をより一層向上させることができる
さらに、ガスセンサ素子の構成は、空間部21を備えるものに限られることはなく、空間部21を有しない構成であっても良い。
ガスセンサ素子の概略内部構造を表す断面図である。 ガスセンサ素子のうち感応体などに相当する部分の概略内部構造を表す断面図である。 評価に用いたガスセンサ評価装置の概略構成図である。 (a)は、ガス応答感度「Rgn5/Rga」の測定結果であり、(b)は、ガス感度「Rgh180/Rga」の測定結果である。 通電耐久加速試験における時間経過に対するガス応答感度「Rgn5/Rga」の検出結果である。 基板側感応層の厚さ寸法と触媒側感応層の厚さ寸法との比率が異なる2つのガスセンサ素子における時間経過に対するガス応答感度「Rgn5/Rga」の検出結果である。 ガスセンサ素子のうち感応層の断面STEM像である。 ガスセンサ素子のうち触媒層の平面SEM画像である。
符号の説明
1…ガスセンサ素子、2…シリコン基板、3…絶縁層、4…感応体、5…発熱体(ヒータ)、6…電極、21…空間部、31…第1絶縁層、32…第2絶縁層、33…発熱体絶縁層、34…感応体側絶縁層、41…感応層、42…触媒層、44…基板側感応層、45…触媒側感応層、61…下層電極、62…上層電極、331…下部発熱体絶縁層、332…上部発熱体絶縁層。

Claims (6)

  1. 絶縁基板上に積層された金属酸化物半導体からなる感応層と、前記感応層の少なくとも一部が露出した状態で前記感応層に付着した貴金属からなる触媒部と、を備え、前記感応層の抵抗値変化に応じて酸化性ガスを検出するガスセンサ素子であって、
    前記感応層は、前記絶縁基板側に位置する金属酸化物半導体からなる基板側感応層と、前記基板側感応層に積層されると共に前記触媒部に接する金属酸化物半導体からなる触媒側感応層と、を備えており、
    前記基板側感応層は、前記触媒側感応層よりも高密度の結晶からなる金属酸化物半導体で構成され、
    前記触媒部は、金を主体に形成されること、
    を特徴とするガスセンサ素子。
  2. 前記基板側感応層の厚さ寸法と前記触媒側感応層の厚さ寸法との比率が、「1:8」〜「3:2」の範囲内であること、
    を特徴とする請求項1に記載のガスセンサ素子。
  3. 前記基板側感応層および前記触媒側感応層は、それぞれ同一素材で形成されること、
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ素子。
  4. 前記基板側感応層および前記触媒側感応層は、それぞれ酸化スズを主体に形成されること、
    を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のガスセンサ素子。
  5. 絶縁基板上に積層された金属酸化物半導体からなる感応層と、前記感応層の少なくとも一部が露出した状態で前記感応層に付着した貴金属からなる触媒部と、を備え、前記感応層の抵抗値変化に応じて酸化性ガスを検出するガスセンサ素子の製造方法であって、
    前記感応層の形成工程として、前記絶縁基板側に位置する金属酸化物半導体からなる基板側感応層を薄膜形成法を用いて形成する基板側感応層形成工程と、前記基板側感応層に積層されると共に前記触媒部の付着が予定される金属酸化物半導体からなる触媒側感応層を薄膜形成法を用いて形成する触媒側感応層形成工程と、を有しており、
    前記基板側感応層形成工程における前記絶縁基板の温度は、前記触媒側感応層形成工程における前記絶縁基板の温度よりも高温であること、
    を特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
  6. 前記基板側感応層形成工程における前記絶縁基板の温度は、200〜400[℃]の範囲内であり、
    前記触媒側感応層形成工程における前記絶縁基板の温度は、0〜100[℃]の範囲内であること、
    を特徴とする請求項5に記載のガスセンサ素子の製造方法。
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