JP2007064979A - ガスセンサおよびその製造方法 - Google Patents

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伸一 中川
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吉博 中埜
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Takio Kojima
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Abstract

【課題】 金属酸化物半導体表面上における貴金属の分散の度合いが良好で耐熱耐久性に優れるガスセンサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
SnOを主成分とする金属酸化物半導体部の表面上に、貴金属M(例えばPd)から構成される触媒部を分散した状態で添加して形成し、さらに酸化ケイ素を主成分とする絶縁部を形成する。このとき、触媒部が形成される一方絶縁部が形成される前の状態で、金属酸化物半導体部表面をXPSで測定したM/(M+Sn)で示される表面添加率が、取出角45°で60%以上85%以下、かつ、取出角45°における表面添加率から取出角90°における表面添加率を減じた値が1.0%以上となるようにする。すると、貴金属Mは金属酸化物半導体部表面上にて均一に分散されて偏析が生じないため、ガスセンサの耐熱耐久性を向上させることができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、金属酸化物半導体を用いたガスセンサおよびその製造方法に関するものである。
従来より、酸化スズ(SnO)等の金属酸化物半導体の電気的特性の変化(例えば、抵抗値の変化)を利用して、被検知ガスの有無あるいは濃度変化を検出するガスセンサが知られている。このガスセンサに用いられる金属酸化物半導体は、その表面に大気中の酸素がO2−として負電荷吸着することにより、金属酸化物半導体中の伝導電子の数が減少して抵抗値が高くなる性質を有する。このような状態において、測定雰囲気中に、例えば被検知ガスとして一酸化炭素等の還元性ガスが存在すると、このガスによって金属酸化物半導体表面に吸着されたO2−が脱離され、金属酸化物半導体の抵抗値が低くなる。こうした金属酸化物半導体の抵抗値の変化に基づいて、ガスセンサによる被検知ガスの検出が行われる。つまりガスセンサの感度は、被検知ガスの有無による金属酸化物半導体の抵抗値の比によって示すことができる。さらに、このような金属酸化物半導体層の表面上には、感度向上のための触媒としてパラジウム(Pd)や白金(Pt)などの貴金属からなる貴金属層が形成されており、感応層として構成されている。
ところで、金属酸化物半導体は湿度の影響を受けやすく、湿度の影響によりガスセンサの感度が劣化する問題がある。測定雰囲気中の湿度が増加すると、測定雰囲気中の水分が水酸基OHとして金属酸化物半導体表面のO2−の吸着サイトに吸着する量が増加し、金属酸化物半導体表面に吸着しうるO2−の量が減少する。そのため、被検知ガスが存在していない測定雰囲気中において、本来なら高抵抗値となるべき金属酸化物半導体の抵抗値は小さくなってしまう。また、測定雰囲気中の湿度が高いと水酸基OHの吸着量が多くなり、その分だけO2−が吸着できる量が少なくなる。さらに、金属酸化物半導体に吸着した水酸基OHは、被検知ガスによって脱離されることがない。こうしたことから測定雰囲気中に被検知ガスが存在していても、金属酸化物半導体の抵抗値が小さくならず、大きな抵抗値を示すようになってしまう。このように、測定雰囲気中の湿度が増加することによりガスセンサとしての感度が劣化する。
そこで感応層上に、水酸基OHをトラップする性質を有する酸化ケイ素(SiO)を主成分とする絶縁性薄膜を形成する。このようにすれば、水酸基OHが金属酸化物半導体層表面に吸着することを抑制し、ガスセンサの耐湿性を向上させて感度の劣化を防止することができる(例えば、特許文献1参照。)。
特開2005−30907号公報
しかしながら、金属酸化物半導体層の表面に触媒たる貴金属層を形成する際に、貴金属の分散の度合いが悪く偏析が生ずると、ガスセンサとしての感度が低下してしまうが、特許文献1に記載のガスセンサでは、このような貴金属の偏析については考慮されていない。ガスセンサにはヒートクリーニングや金属酸化物半導体層の活性化を促す目的などのための発熱抵抗体が設けられているが、偏析した状態の貴金属層を有するガスセンサにおいて発熱抵抗体への通電を長時間行ったときに、貴金属が密集したところでは熱によるシンタリングによって貴金属の粒子が成長する虞がある。すると貴金属の偏析の度合いがより高くなってしまい、触媒としての効果が薄れ、ガスセンサとしての感度がさらに低下する虞があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、金属酸化物半導体表面上における貴金属の分散の度合いが良好で耐熱耐久性に優れるガスセンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のガスセンサは、被検知ガスの濃度変化によって電気的特性が変化する金属酸化物半導体部と、前記金属酸化物半導体部上に分散した状態で添加された触媒部と、前記金属酸化物半導体部および前記触媒部の一部を露出させるようにして前記金属酸化物半導体部上に形成された絶縁部とを備え、前記金属酸化物半導体部はSnOを主成分とし、前記触媒部は貴金属Mから構成されるガスセンサであって、前記触媒部が添加された後で前記絶縁部が形成される前の状態の前記金属酸化物半導体部の表面において、X線光電子分光法(XPS)により測定した前記貴金属MとSnの原子数比であるM/(M+Sn)で示される表面添加率が、取出角45°では60%以上85%以下であり、かつ、前記取出角45°における前記表面添加率から、前記取出角90°における前記表面添加率を減じた値が1.0%以上であることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明のガスセンサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記貴金属Mは、PdまたはPtであることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明のガスセンサは、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記金属酸化物半導体部と、前記触媒部とは、それぞれ薄膜形成されていることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明のガスセンサは、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記取出角90°における前記表面添加率が50%以上75%以下であることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明のガスセンサの製造方法は、SnOを主成分とする金属酸化物半導体部の電気的特性の変化を利用して被検知ガスの有無または濃度変化を検出するガスセンサを製造する方法であって、薄膜形成法により基体上に前記金属酸化物半導体部を形成する金属酸化物半導体部形成工程と、薄膜形成法により前記金属酸化物半導体部上に貴金属Mからなる触媒部を分散した状態で添加する触媒部添加工程と、前記触媒部が添加された前記金属酸化物半導体部上に、前記金属酸化物半導体部および前記触媒部の一部を露出させるようにして絶縁部を形成する絶縁部形成工程とを備え、前記触媒部添加工程では、前記触媒部が添加された後で前記絶縁部が形成される前の状態の前記金属酸化物半導体部の表面において、X線光電子分光法(XPS)により測定した前記貴金属MとSnの原子数比であるM/(M+Sn)で示される表面添加率が、取出角45°では60%以上85%以下であり、かつ、前記取出角45°における前記表面添加率から、前記取出角90°における前記表面添加率を減じた値が1.0%以上となるように、前記金属酸化物半導体部上に前記触媒部の添加が行われることを特徴とする。
請求項1に係る発明のガスセンサでは、金属酸化物半導体部の表面上に触媒としての貴金属Mを分散させて担持させることにより、被検知ガスの濃度差に対する出力値の変化、すなわち感度を向上させることができる。その製造の際に、上記条件に基づいて金属酸化物半導体部上に触媒部が形成されれば、金属酸化物半導体部表面上に貴金属Mが均一に分散されるので、偏析が生じにくく、優れた耐熱耐久性を有することができる。
取出角45°の場合の上記表面添加率が60%未満であると、触媒としての効果を発揮できず出力値が小さくなってしまうため、十分な感度を得ることができない。一方で、取出角45°の場合の上記表面添加率が85%より大きくなると、金属酸化物半導体部上に担持される貴金属Mの割合が多くなってしまう。すると金属酸化物半導体部の表面上のO2−の吸着サイトが貴金属Mで覆われてしまう割合が増え、被検知ガスの濃度が高くなっても脱離されるO2−が少ない。このため、金属酸化物半導体部の抵抗値の下がり幅が小さくなり、十分な感度を得ることができない。
ところで、取出角90°における表面添加率と取出角45°における表面添加率との差によって、金属酸化物半導体部の表面上における貴金属Mの分散の度合いが示される。貴金属Mが金属酸化物半導体部の表面上でほぼ均一となるように分散されていれば、深さが金属酸化物半導体部の表面に近いところほど貴金属Mの存在する割合が大きく、上記表面添加率の値は大きい値を示す。つまり、取出角45°における表面添加率から取出角90°における表面添加率を減じた値が1.0%未満であることは、金属酸化物半導体部の表面上に分散された貴金属Mに、偏析が生じていることを示す。
こうした偏析の度合いが大きければ、金属酸化物半導体部の表面で貴金属Mが周りに存在しない部位が増え、貴金属Mの触媒としての効果が十分に発揮されず、ガスセンサの感度が低下する虞がある。さらに長期間にわたってガスセンサのヒートクリーニング等に伴う熱が加えられた場合、貴金属Mの密集したところではシンタリングが生じやすく、貴金属Mの粒子が成長して大きくなれば偏析の度合いがさらに高まる虞がある。
本発明に係るガスセンサでは、金属酸化物半導体部上の触媒部が上記条件に基づいて形成されているので、ガスセンサとして十分な感度を得ることができる。さらに、貴金属Mの偏析が生じにくいため、長期間熱負荷が加えられても貴金属Mの粒子の成長は抑制され、耐熱耐久性に優れた効果を発揮することができる。
なお、本発明において、表面添加率はX線光電子分光法(XPS)により測定し、得られた原子数より求めた。具体的にはX線による表面分析装置(Quantera SXM,Physical Electronics社製)にて、検出領域Φ100μm中、検出深さ4〜5nmの条件で、AlKα線(1486keV)を用いて取出角45°および90°にて金属酸化物半導体部上に存在する元素のうち測定対象とする元素の光電子ピーク面積を測定し、以下の(1)に示す式によって測定対象とする各元素の原子数を定量(相対定量)し、定量された各元素の原子数を用いて上述した表面添加率を求めた。
Ci={(Ai/RSFi)/(ΣiAi/RSFi)}×100・・・(1)
ここで、Ciは測定対象とする元素iの定量値(atomic%)、Aiは測定対象とする元素iの光電子ピーク面積、RSFiは測定対象とする元素iの相対感度係数を示すものとする。
また、本発明において「主成分」とは、その成分が、含有される全成分のうち80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上を占める成分であることを示す。
また、請求項2に係る発明のガスセンサでは、触媒部を構成する貴金属MとしてPdまたはPtを使用したので、通電耐久性に優れたガスセンサとすることができる。
また、請求項3に係る発明のガスセンサのように、金属酸化物半導体部と触媒部とを薄膜形成すれば、貴金属Mの添加量の調整を容易に行うことができる。つまり、金属酸化物半導体部上に触媒部を形成する際に、容易に、上記した表面添加率となるように調整することができる。
また、上記したように、取出角45°における表面添加率が60%以上85%以下であり、かつ、取出角45°における表面添加率から、取出角90°における表面添加率を減じた値が1.0%以上となるように金属酸化物半導体部上に触媒部を形成するには、請求項4に係る発明のガスセンサのように、取出角90°における上記表面添加率が50%以上75%以下となるようにすることが望ましい。このように金属酸化物半導体部上に触媒部が形成されれば、金属酸化物半導体部表面上に貴金属Mが均一状に分散されるので、偏析が生じにくく、優れた耐熱耐久性を有することができる。
なお、取出角90°の場合の上記表面添加率が50%未満であると、貴金属Mの添加量が少なく、触媒としての効果を十分に発揮することができないことがある。一方で、取出角90°の場合の上記表面添加率が75%より大きくなると、金属酸化物半導体部上に分散される貴金属Mの添加量が多く、O2−の吸着サイトが貴金属Mで覆われてしまう割合が増えるため、十分な感度を得ることができないことがある。
また、請求項5に係る発明のガスセンサの製造方法に従ってガスセンサを製造すれば、上記したように、取出角45°における表面添加率が60%以上85%以下であり、かつ、取出角45°における表面添加率から、取出角90°における表面添加率を減じた値が1.0%以上となるように、金属酸化物半導体部上に触媒部を形成することができる。このような条件に基づいて金属酸化物半導体部上に触媒部が形成されれば、金属酸化物半導体部表面上に貴金属Mが均一状に分散されるので、偏析が生じにくく、優れた耐熱耐久性を有することができる。
以下、本発明を具体化したガスセンサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1,図2,図5を参照して、ガスセンサ1の構造について説明する。図1は、ガスセンサ1の部分断面図である。図2は、ガスセンサ1の発熱抵抗体コンタクト部9付近の部分断面図である。また、図5は、ガスセンサ1を感応部4が形成された側から平面視した平面図である。なお、図1は、図5に示すガスセンサ1のA−A断面をとったときの部分断面図に相当し、図2は、図5に示すガスセンサ1のB−B断面をとったときの部分断面図に相当するものである。
ガスセンサ1は、図5に示すように、平面視矩形状のセンサであり、具体的には図1,図2に示すように、シリコン基板2の表裏両面上に絶縁被膜層3が形成され、一方の面の絶縁被膜層3上に、感応部4および絶縁部7が形成された構造を有する。ガスセンサ1は、被検知ガスの有無または濃度変化によって自身の電気的特性が変化することで、ガス検知を行う。ここで被検知ガスは還元性ガスであり、例えば一酸化炭素ガス、炭化水素系ガス(LPG、都市ガス、天然ガス、メタンガス、ハロゲン化炭化水素系ガス等)、アルコール系ガス、アルデヒド系ガス、水素ガス、硫化水素ガス等が挙げられる。ガスセンサ1は、特に、一酸化酸素ガスの測定、検知に好適に用いることができるものである。
絶縁被膜層3はシリコン基板2の一方の面上に形成された絶縁層31,32,33,34と、他方の面上に形成された絶縁層35,36とから構成される。絶縁層31,35は酸化ケイ素(SiO)からなり、シリコン基板2を挟むように、その厚み方向両側の面上にそれぞれ形成されている。この絶縁層31,35のそれぞれの外側の面上には、窒化ケイ素(Si,N)からなる絶縁層32,36がそれぞれ形成されている。また、絶縁層32の外側の面上には酸化ケイ素からなる絶縁層33が形成され、さらにその外側の面上に、窒化ケイ素からなる絶縁層34が形成されている。
絶縁層33内には、ガスセンサ1の感度(被検知ガスが存在しない場合の金属酸化物半導体の抵抗値に対する存在する場合の抵抗値の比)が低下した際に加熱してガスセンサ1の特性を初期状態に回復させるヒートクリーニングのための発熱抵抗体5が埋設されている。また絶縁層33には、発熱抵抗体5に接続され発熱抵抗体5に通電するためのリード部12が埋設されており、図2に示すように、このリード部12の末端にて、外部回路と接続するための発熱抵抗体コンタクト部9が形成されている。発熱抵抗体5およびリード部12は、白金(Pt)層とタンタル(Ta)層から構成された2層構造を有する。また、発熱抵抗体コンタクト部9は、チタン層(Ti)および白金層から構成された引き出し電極91の表面上に、金(Au)からなるコンタクトパッド92が形成された構造を有する。なお、発熱抵抗体コンタクト部9は、ガスセンサ1に一対設けられている(図5参照)。
また、図1に示すように、シリコン基板2の絶縁層36が形成されている側の面にはシリコン基板2、絶縁層35および絶縁層36の一部が凹状に除去されて絶縁層31の一部が露出された開口部21が形成されている。この開口部21の形成位置は、絶縁層33内に埋設された発熱抵抗体5が配置される位置となっている。
次に、図1に示すように、絶縁層34の表面上には、発熱抵抗体5上に位置するように電極6と、電極6に通電するためのリード部10(図2参照)とが形成されている。電極6およびリード部10は、発熱抵抗体コンタクト部9の引き出し電極91と同様に、絶縁層34上に形成されるチタン層と、その表面上に形成された白金層とから構成されている。また、図2に示すように、リード部10の末端には、その表面上に金からなるコンタクトパッド11が形成され、外部回路と接続するための金属酸化物半導体コンタクト部8として構成されている。なお、金属酸化物半導体コンタクト部8は、ガスセンサ1に一対設けられている(図5参照)。
次に、図1に示すように、感応部4は、絶縁層34の表面上で電極6を覆うように形成された、酸化スズ(SnO)を主成分とする金属酸化物半導体部41と、その表面上に分散した状態で添加されたパラジウム(Pd)からなる触媒部42とから構成される。また、感応部4の表面上には、酸化ケイ素(SiO)からなる絶縁部7が分散した状態で添加されている。金属酸化物半導体部41、触媒部42および絶縁部7はそれぞれ薄膜状に形成されている。
このような構成のガスセンサ1において、感応部4の触媒部42、および絶縁部7は、それぞれ順に金属酸化物半導体部41の表面上に、構成成分が分散して形成される。これは、金属酸化物半導体部41の表面が触媒部42により完全に覆われず、かつ、金属酸化物半導体部41と触媒部42の表面が絶縁部7により完全に覆われてしまう状態ではないことを意味する。このことは、XPSにより上記構成のガスセンサ1の金属酸化物半導体部41上における元素を測定したところ、触媒部42を構成する元素であるPdと、金属酸化物半導体部41を構成する元素であるSnと、絶縁部7を構成する元素であるSiとが測定されたことより確認できた。
そこで本実施の形態では、後述する製造方法に従って感応部4を形成した際に、絶縁部7が形成される前の状態の金属酸化物半導体部41の表面において、XPSにより分析(測定)した貴金属M(本実施の形態ではPd)とSnとの原子数比であるM/(M+Sn)で示される表面添加率が、取出角45°では60%以上85%以下であり、かつ、取出角45°における表面添加率から、取出角90°における表面添加率を減じた値が1.0%以上となるようにしている。
また、上記条件が満たされるように感応部4を形成した場合に、絶縁部7が形成される前の状態の触媒部42が形成された金属酸化物半導体部41の表面においてXPSにより測定した上記表面添加率が、取出角90°の場合に50%以上75%以上となると望ましいことが、後述する評価試験に基づきわかった。
このような構成のガスセンサ1を、以下に説明する製造方法に基づいて作製した。なお、作製途中のガスセンサ1の中間体を、基板と称する。
(1) シリコン基板2の洗浄
まず、厚みが400μmのシリコン基板2を洗浄液中に浸し、洗浄処理を行った。
(2) 絶縁層31,35の形成
上記シリコン基板2を熱処理炉に入れ、熱酸化処理にて厚さが100nmの酸化ケイ素層(絶縁層31,35)をシリコン基板2の全面に形成した。
(3) 絶縁層32,36の形成
次に、LP−CVDにてSiHCl、NHをソースガスとし、シリコン基板2の一方の面側に、厚さが200nmの室化ケイ素層(絶縁層32)を形成した。同様に、シリコン基板2の他方の面側に、厚さが100nmの窒化ケイ素層(絶縁層36)を形成した。
(4) 絶縁層33の一部(下層)の形成
次に、プラズマCVDにてTEOS、Oをソースガスとし、絶縁層32の表面上に厚さが100nmの酸化ケイ素層(絶縁層33の一部)を形成した。
(5) 発熱抵抗体5およびリード部12の形成
その後、DCスパッタ装置を用い、絶縁層33の表面上に厚さ20nmのタンタル層を形成し、その層上に厚さ220nmの白金層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で発熱抵抗体5およびリード部12のパターンを形成した。
(6) 絶縁層33(上層)の形成
そして、(4)と同様に、プラズマCVDにてTEOS、Oをソースガスとし、絶縁層33(下層)および発熱抵抗体5の表面上に厚さが100nmの酸化ケイ素層(絶縁層33(上層))を形成した。このようにして、厚さ200nmの絶縁層33内に発熱抵抗体5およびリード部12を埋設した。
(7) 絶縁層34の形成
さらに、(3)と同様に、LP−CVDにてSiHCl、NHをソースガスとし、絶縁層33の表面上に厚さが200nmの窒化ケイ素層(絶縁層34)を形成した。
(8) 発熱抵抗体コンタクト部9の開口の形成
次いで、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ドライエッチング法で絶縁層33,34のエッチングを行い、発熱抵抗体コンタクト部9を形成する部分に穴をあけ、リード部12の末端の一部を露出させた。
(9) 電極6、リード部10および引き出し電極91の形成
次に、DCスパッタ装置を用い、絶縁層34の表面上に厚さ20nmのチタン層を形成し、さらにその表面上に厚さ40nmの白金層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理で電極6、リード部10および引き出し電極91のパターンを形成した。
(10) コンタクトパッド11,92の形成
そして、DCスパッタ装置を用い、電極部分の作製された基板の電極側の表面上に、厚さ400nmの金層を形成した。スパッタ後、フォトリソグラフィによリレジストのパターニングを行い、ウエットエッチング処理でコンタクトパッド11,92を形成した。
(11) 開口部21の形成
次いで、フォトリソグラフィによりレジストのパターニングを行い、マスクとなる絶縁膜をドライエッチング処理により形成した。そしてTMAH溶液中に基板を浸し、シリコン基板2の異方性エッチングを行うことで、絶縁層35,36が形成された側の面が開口され、発熱抵抗体5の配置位置に対応する部分の絶縁層31が露出されるように、開口部21を形成した。
(12) 感応部4および絶縁部7の形成
次に、絶縁層34の表面上に、以下の方法により感応部4を形成した。まず、RFスパッタ装置を用い、発熱抵抗体5および開口部21に対応する位置に酸化スズ層(金属酸化物半導体部41)を形成した(金属酸化物半導体部形成工程)。次いでRFスパッタ装置を用い、酸化スズ層の表面上に貴金属M(具体的にはPd)を付着させて触媒部42を形成することで感応部4を完成した(触媒部添加工程)。さらにRFスパッタ装置を用い、感応部4の表面上に酸化ケイ素を付着させることで、絶縁部7を形成した(絶縁部形成工程)。上記各工程は、各部の形成時の温度が240℃となるように基板を加熱しながら行い、各部を薄膜状に形成した。なお、酸化スズ、貴金属M(具体的にはPd)、酸化ケイ素それぞれにおける上記スパッタのターゲット面積は5インチ×10インチを使用した。
この工程では金属酸化物半導体部41、触媒部42、絶縁部7を順に形成するが、触媒部42の形成は、XPSにより貴金属Mが分散された金属酸化物半導体部41の表面を測定して求められるM/(M+Sn)で示される表面添加率が、取出角45°のときに60%以上85%以下、かつ、取出角45°のときの表面添加率から取出角90°のときの表面添加率を減じた値が1%以上となるように、スパッタ処理を行う時間を調整した。なお、取出角90°のときの表面添加率は50%以上75%以下となるように調整した。
より具体的には、RFスパッタ装置に4.0Paのアルゴン(Ar)ガスを導入し、200Wのスパッタ電力で90秒間のスパッタ処理を行った。なお、スパッタに係るガス圧は3.0Pa〜30.0Pa(装置限界ガス圧)であると好ましい。ガス圧が高いほど、スパッタされる貴金属Mが付着先の金属酸化物半導体部41の表面に到達する際に拡散されやすくなり、金属酸化物半導体部41表面上でより均一に分散されやすい。また、スパッタに係る電力密度は0.23W/cm〜0.47W/cmであると好ましい。上記電力密度が低いほどターゲットとしてスパッタされる貴金属Mの粒子を小さくすることができるため、金属酸化物半導体部41表面上で偏析されにくい。
(13) 基板の熱処理
次に、熱処理炉に基板を挿入し、大気中にて360℃で3時間の熱処理を基板に加えた。
(14) 基板の切断
ダイシングソーを用いて基板を切断し、平面視、2.6mm×2mmの大きさのガスセンサ1を得た。
上記した表面添加率の条件が満たされるようにこのような製造方法により感応部4を形成したガスセンサについて、その耐久性についての効果を確認するため評価試験を行った。評価試験では、表1に示すように、異なる条件で触媒部42を形成した第1〜第5のガスセンサのサンプルを用い、耐熱耐久試験前後の感度を調べた。
第1〜第5のサンプルは、上記製造方法の触媒部添加工程において、それぞれ異なるスパッタ条件にて触媒部の形成を行った。第1,第2、第5のサンプルでは、スパッタ時の電力密度を0.31W/cm、ガス圧を4.0Paとし、順に、90秒,180秒,270秒間のスパッタ処理を行い、触媒部を形成した。第3,第4のサンプルでは、スパッタ時の電力密度を0.62W/cm、ガス圧を2.0Paとし、それぞれ17秒,34秒間のスパッタ処理を行って触媒部を形成した。
こうして金属酸化物半導体部41上に触媒部が形成された各サンプルそれぞれについて、金属酸化物半導体部の表面におけるM/(M+Sn)で示される表面添加率を測定した。取出角90°で測定した表面添加率は、第1〜第5のサンプルそれぞれ順に、52.1,72.1,51.6,62.6,81.2(%)となった。また、取出角45°で測定した表面添加率は、それぞれ順に64.8,82,0,52.5,63.5,92.0(%)となった。そして、取出角45°における表面添加率から取出角90°における表面添加率を減じた値について確認したところ、それぞれ順に12.7,9.9,0.9,0.9,10.8(%)であった。
これら各サンプルは、金ワイヤーを用いて測定治具との電気的な接続を行った。そして大気雰囲気中に各サンプルを配置し、発熱抵抗体5の温度が250℃となるように発熱抵抗体に通電した状態で300時間および1000時間保持し、耐熱耐久試験を行った。また、この耐熱耐久試験を行っている間、金属酸化物半導体部41に対してもガス検知電圧の印加を行った。
評価試験では、上記耐湿試験の前後において、一酸化炭素(CO)ガスに対する感度の変化を比較した。ここで、COガスの感度は、以下の方法で測定したガスセンサの抵抗値に基づいて求めた。まず、温度25℃、相対湿度40%RHとする酸素(O)の分量が20.9Vol%である窒素(N2)との混合ガスをベースガスとし、ベースガス雰囲気中でガスセンサの抵抗値(Rair)を測定する。次に、ガスセンサの周囲の雰囲気を、ベースガスにCOガスを30ppm混合した雰囲気とし、5秒後にガスセンサの抵抗値(Rgas)を測定する。そして両抵抗値の比(Rgas/Rair)を求め、これを感度(ガス感度応答値)とした。なお、被検知ガスの検知が十分に可能である感度は、0.95未満である。
第1のサンプルでは、耐熱耐久試験前に測定した感度は0.85であり、300時間の耐熱耐久試験後の感度は0.85のままであった。さらに1000時間の耐熱耐久試験後には、感度が0.87となった。第2のサンプルでも同様に感度について測定したところ、耐熱耐久試験前には0.9であり、300時間の耐久試験後には0.9、1000時間の耐久試験後には0.91となった。
第3,第5のサンプルでは、耐熱耐久試験前に測定した感度がそれぞれ0.96,0.97であり、被検知ガスの検知が可能な感度(0.95)よりも大きい値となった。そして第4のサンプルでは、耐熱耐久試験前に測定した感度は0.94であったが、300時間の耐熱耐久試験後に感度を測定したところ0.97となって被検知ガスの検知が不可能となった。
Figure 2007064979
この評価試験の結果、第1,第2のサンプルでは、いずれも、金属酸化物半導体部の表面におけるM/(M+Sn)で示される表面添加率が、取出角45°では60%以上85以下の範囲内であり、取出角90°では50%以上75%以下の範囲内であった。また、取出角45°における表面添加率から取出角90°における表面添加率を減じた値も1.0%以上であった。このような条件を満たすように作製された第1のサンプルでは、図3に示すように、金属酸化物半導体部の表面上で貴金属Mが均一状に分散されている。このため、耐熱耐久試験を1000時間行っても貴金属Mの粒成長が生じにくく、耐熱耐久性が極めて良好であることが確認できた。
また、第3のサンプルでは、第1,第2のサンプルと比べスパッタ条件としての電力密度が高い。すなわち、ターゲットとしてスパッタされる貴金属Mの粒子が比較的大きい。また、スパッタ条件としてのガス圧も低く、スパッタされる貴金属Mが付着先の金属酸化物半導体部の表面に到達する際に拡散されにくくなる。その結果、図4に示すように、金属酸化物半導体部の表面上における貴金属Mに偏析が生じた。このため貴金属Mの触媒としての効果が薄れ、耐熱耐久試験前でも第1,第2のサンプルと比べて感度が低下した。
そして第4のサンプルではスパッタ時の電力密度およびガス圧を第3のサンプルと同様の条件で行ったが、第3のサンプルよりもスパッタ時間を長くしたことで、貴金属Mは、より分散された。このため貴金属Mの触媒としての効果が高まり、耐久試験前における感度は検知可能な0.95未満となった。しかし、300時間の耐熱耐久試験を行った後には感度が低下することが確認できた。つまり、シンタリングによって貴金属Mの粒子が成長し、偏析の度合いが高まったことから触媒としての効果が薄れ、感度低下となったことがわかった。
一方、第5のサンプルではスパッタ時の電力密度およびガス圧を第1,第2のサンプルと同様の条件で行い、スパッタ時間を長くした。すると貴金属Mが金属酸化物半導体部41上に添加される量が多くなり、O2−の吸着サイトを覆ってしまう割合が増えることから、耐熱耐久試験前でも十分な感度が得られないことがわかった。
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、各種の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では感応部4を形成する基体をシリコン基板2にて作製したが、アルミナや半導体材料からなる基板にて作製してもよい。また、作製されたガスセンサ1の平面形状は矩形に限らず、多角形や円形であってもよく、その大きさ、厚みも限定されるものではない。
また、本実施の形態では、貴金属Mの一例としてパラジウム(Pd)を用いたが、白金(Pt)であっても同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態では金属酸化物半導体部41、触媒部42、絶縁部7を薄膜形成するにあたりスパッタリング法を用いて形成したが、これに限定するものではなく、例えば蒸着法などスパッタリング法以外の気相成長法を用いて各部を形成してもよい。薄膜形成法としてこうした気相成長法を用いることは、均質な膜付けを行う上で好ましい。
本発明は、測定対象雰囲気中の被検知ガス(特に、還元性ガス)の濃度検知を行うガスセンサに適用することができる。
ガスセンサ1の部分断面図である。 ガスセンサ1の発熱抵抗体コンタクト部9付近の部分断面図である。 電力密度0.31W/cm、ガス圧4.0Paで90秒間行ったスパッタ処理により、パラジウムが分散された金属酸化物半導体表面の状態を示す電子顕微鏡写真(16万倍)である。 電力密度0.62W/cm、ガス圧2.0Paで17秒間行ったスパッタ処理により、パラジウムが分散された金属酸化物半導体表面の状態を示す電子顕微鏡写真(16万倍)である。 ガスセンサ1を感応部4が形成された側から平面視した平面図である。
符号の説明
1 ガスセンサ
7 絶縁部
41 金属酸化物半導体部
42 触媒部

Claims (5)

  1. 被検知ガスの濃度変化によって電気的特性が変化する金属酸化物半導体部と、
    前記金属酸化物半導体部上に分散した状態で添加された触媒部と、
    前記金属酸化物半導体部および前記触媒部の一部を露出させるようにして前記金属酸化物半導体部上に形成された絶縁部と
    を備え、
    前記金属酸化物半導体部はSnOを主成分とし、前記触媒部は貴金属Mから構成されるガスセンサであって、
    前記触媒部が添加された後で前記絶縁部が形成される前の状態の前記金属酸化物半導体部の表面において、X線光電子分光法(XPS)により測定した前記貴金属MとSnの原子数比であるM/(M+Sn)で示される表面添加率が、取出角45°では60%以上85%以下であり、かつ、前記取出角45°における前記表面添加率から、前記取出角90°における前記表面添加率を減じた値が1.0%以上である
    ことを特徴とするガスセンサ。
  2. 前記貴金属Mは、PdまたはPtであることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 前記金属酸化物半導体部と、前記触媒部とは、それぞれ薄膜形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサ。
  4. 前記取出角90°における前記表面添加率が50%以上75%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガスセンサ。
  5. SnOを主成分とする金属酸化物半導体部の電気的特性の変化を利用して被検知ガスの有無または濃度変化を検出するガスセンサを製造する方法であって、
    薄膜形成法により基体上に前記金属酸化物半導体部を形成する金属酸化物半導体部形成工程と、
    薄膜形成法により前記金属酸化物半導体部上に貴金属Mからなる触媒部を分散した状態で添加する触媒部添加工程と、
    前記触媒部が添加された前記金属酸化物半導体部上に、前記金属酸化物半導体部および前記触媒部の一部を露出させるようにして絶縁部を形成する絶縁部形成工程と
    を備え、
    前記触媒部添加工程では、
    前記触媒部が添加された後で前記絶縁部が形成される前の状態の前記金属酸化物半導体部の表面において、X線光電子分光法(XPS)により測定した前記貴金属MとSnの原子数比であるM/(M+Sn)で示される表面添加率が、取出角45°では60%以上85%以下であり、かつ、前記取出角45°における前記表面添加率から、前記取出角90°における前記表面添加率を減じた値が1.0%以上となるように、前記金属酸化物半導体部上に前記触媒部の添加が行われる
    ことを特徴とするガスセンサの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010054205A (ja) * 2008-08-26 2010-03-11 Tottori Univ ガスセンサ、センサ素子の製造方法及びガス検出方法
JP2010160015A (ja) * 2009-01-07 2010-07-22 National Institute Of Advanced Industrial Science & Technology ガスセンサを予備処理する方法

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