JP2007263582A - ガスセンサの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】密着層の構成材料に工夫を凝らして、当該密着層の熱応力の発生を抑制しつつガス反応層の密着性の強化を図るようにしたガスセンサの製造方法を提供する。
【解決手段】焼成後結晶化するガラス成分、フィラー成分及び結合剤成分を含有する密着層用ペーストを、保護層50のうち左側発熱抵抗体30に対する対応部位上に厚膜状に塗布して密着層用焼成前層を形成し、多孔質セラミックスに触媒を担持してなる触媒担持セラミックペーストを、密着層用焼成前層上に厚膜状に塗布して、ガス反応層用焼成前層を形成し、然る後、密着層用焼成前層及びガス反応層用焼成前層を共に焼成して密着層70及びガス反応層80として形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスセンサの製造方法に関するものである。
従来、この種のガスセンサの製造方法としては、下記特許文献1に記載のガスセンサの製造方法が提案されている。このガスセンサの製造方法においては、発熱抵抗体を、半導体基板上に形成した絶縁層のうち半導体基板の空洞部に対する対応部位に形成し、保護膜を、発熱抵抗体を介し絶縁層上に積層形成し、ゾル溶液層を、絶縁性密着層となるゾル溶液でもって、保護膜のうち発熱抵抗体に対する対応部位上に形成し、この形成後、ペースト層を、ガス反応層となるペーストでもって、ゾル溶液層上に形成し、然る後、ゾル溶液層及びペースト層を所定焼成条件にて共に焼成し上述の密着層及びガス反応層として形成するようにしたものがある。
特開2005−164570号公報
ところで、上述のようなガスセンサの製造方法によれば、ガス反応層となるペースト層が密着層となるゾル溶液層に埋まるように形成されるため、密着層を介するガス反応層の保護膜に対する密着性の一応の向上がみられる。
しかしながら、ガスセンサの駆動状態において、多量の水がガス反応層や密着層等に付着することがある。また、ガスセンサの駆動による温度上昇に伴い、熱応力が密着層に発生し保護膜及び絶縁層のうち半導体基板の空洞部に対する対応部位を歪ませることがある。
このように多量の水がガス反応層や密着層等に付着したり、密着層に発生した熱応力が保護膜及び絶縁層のうち半導体基板の空洞部に対する対応部位を歪ませるような現象が発生すると、上述のようにペースト層がゾル溶液層に埋まるように形成されるだけでは、結局のところ、剥離が、ガス反応層と保護膜との間において発生して、ガスセンサとしての信頼性の低下を招くという不具合を招く。このため、ガス反応層の密着性に対するさらなる向上が要請される。
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、密着層の構成材料に工夫を凝らして、当該密着層の熱応力の発生を抑制しつつガス反応層の密着性の強化を図るようにしたガスセンサの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題の解決にあたり、本発明は、請求項1の記載によれば、
空洞部(11)を有する基体(10)と、この基体の表面に形成される絶縁層(20、50)と、この絶縁層のうち上記空洞部に対する対応部位に内蔵される発熱抵抗体(30)と、絶縁層のうち発熱抵抗体に対する対応部位上に形成される密着層(70)と、この密着層上に形成されるガス反応層(80)とを有するように製造するガスセンサの製造方法において、
焼成後結晶化するガラス成分、フィラー成分及び結合剤成分を含有する密着層用ペーストを、絶縁層のうち発熱抵抗体に対する対応部位上に塗布して密着層用焼成前層(71)を形成する密着層用焼成前層形成工程と、
ガス反応層用ペーストを、密着層用焼成前層上に塗布して、ガス反応層用焼成前層(81)を形成するガス反応層用焼成前層形成工程と、
密着層用焼成前層及びガス反応層用焼成前層を共に焼成して密着層及びガス反応層として形成する焼成工程とを備えることを特徴とする。
このように、焼成後結晶化するガラス成分、フィラー成分及び結合剤成分を含有する密着層用ペーストを、絶縁層のうち発熱抵抗体に対する対応部位上に塗布して密着層用焼成前層を形成し、ガス反応層用ペーストを、密着層用焼成前層上に塗布して、ガス反応層用焼成前層を形成し、然る後、密着層用焼成前層及びガス反応層用焼成前層を共に焼成して密着層及びガス反応層として形成するようにしたので、焼成過程において、流動化した密着層用焼成前層の焼成後結晶化するガラス成分が、結合剤成分とともに、ガス反応層用焼成前層と混合されて、当該ガス反応層用焼成前層に充分に浸透し、密着性を向上させる。
これにより、密着層を介するガス反応層と絶縁層との間に優れた密着性を確保することができる。その結果、多量の水分が絶縁層、密着層やガス反応層に付着しても、ガス反応層が剥離することを防止することができる。
また、上述のようにフィラー成分が密着層に含有されていることで、密着層やガス反応層が加熱されても、密着層の熱応力を適正に抑制し得る。このため、絶縁層のうち上記空洞部に対する対応部位が熱歪みを発生することがなく、上述したガス反応層の剥離の発生がより一層良好に防止され得る。
その結果、当該ガスセンサの通電状態においてこのガスセンサに多量の水分が付着しかつ急激な熱応力が生ずる状態にあっても、破損等の損傷が当該ガスセンサの内部に生ずることを防止でき、付着した水分がなくなった後には、当該ガスセンサは良好に使用可能となる。
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のガスセンサの製造方法において、
密着層用焼成前層形成工程において、密着層の厚さが1(μm)以上で100(μm)以下となるように密着層用ペーストの塗布を行い、
ガス反応層用焼成前層形成工程において、ガス反応層の厚さが1(μm)以上で500(μm)以下となるようにガス反応層用ペーストの塗布を行うようにしたことを特徴とする。
上述のように、密着層の厚さを1(μm)以上としたのは、密着層を厚膜として確保しつつ、当該密着層とガス反応層との間で充分な密着強度を確保するためである。一方、密着層の厚さを100(μm)以下としたのは、密着層の消費電力の増加を抑制して適正に維持するためである。また、ガス反応層の厚さを1(μm)以上としたのは、ガス反応層を厚膜として確保するためである。一方、ガス反応層の厚さを500(μm)以下としたのは、ガス反応層の熱容量の極度な増加を抑制するためである。
これにより、密着層の消費電力の増加及びガス反応層の熱容量の極度な増加を抑制しつつ、ガス反応層と絶縁層のうち上記空洞部に対する対応部位との間において密着層を介し充分な密着強度を確保し得る。その結果、請求項1に記載の発明の作用効果がより一層向上し得る。
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1または2に記載のガスセンサの製造方法において、
密着層用ペーストにおいて、結合剤成分は、無機バインダーからなり、フィラー成分は、焼成後結晶化するガラス成分に対し5(体積%)〜70(体積%)の範囲内の量で含有されている上記焼成によっても形態変化しないフィラーであることを特徴とする。
これにより、請求項1または2に記載の発明の作用効果がより一層確実に達成され得る。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明に係るガスセンサの一つである接触燃焼式ガスセンサの一実施形態を示しており、この接触燃焼式ガスセンサは、図1にて示すごとく、シリコン製半導体基板10及び上下両側絶縁層20を備えている。上側絶縁層20は、半導体基板10の表面に形成されており、一方、下側絶縁層20は、半導体基板10の裏面に形成されている。
ここで、半導体基板10には、左右両側空洞部11が、図1にて示すごとく、上側絶縁層20の裏面側において、間隔をおいて形成されている。また、下側絶縁層20は、各空洞部11に対応する部位にて、それぞれ除去されて、各空洞部11の開口部を形成している。
これにより、上側絶縁層20は、その各空洞部11に対する各対応部位21(以下、隔壁部21ともいう)にて、当該各空洞部11の開口部を通して外方に露呈している。なお、半導体基板10は、各空洞部11以外の部位にて基板部12を構成する。
また、当該ガスセンサは、図1にて示すごとく、左右両側発熱抵抗体30を備えている。左側発熱抵抗体30は、上側絶縁層20の左側隔壁部21上に渦巻き状に形成されており、一方、右側発熱抵抗体30は、上側絶縁層20の右側隔壁部21上に渦巻き状に形成されている。
また、当該ガスセンサは、図1にて示すごとく、左側、中央側及び右側の各配線膜40を備えている。左側配線膜40は、図1にて示すごとく、上側絶縁層20の表面の左側表面部上において、半導体基板10の基板部12に対応するように位置しており、この左側配線膜40は、左側発熱抵抗体30の一端と一体となるように形成されている(図2参照)。
中央側配線膜40は、図1にて示すごとく、上側絶縁層20の表面の中央表面部上にて、半導体基板10の基板部12に対応するように位置しており、この中央側配線膜40は、左側発熱抵抗体30の他端及び右側発熱抵抗体30の一端と一体となるように形成されている(図2参照)。また、右側配線膜40は、図1にて示すごとく、上側絶縁層20の表面の右側表面部上にて、半導体基板10の基板部12に対応するように位置しており、この右側配線膜40は、右側発熱抵抗体30の他端と一体となるように形成されている(図2参照)。
また、当該ガスセンサは、図1及び図2にて示すごとく、保護層50を備えており、この保護層50は、各発熱抵抗体30を覆うように、上側絶縁層20の表面上に形成されている。ここで、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール51が、保護層50のうち左側、中央側及び右側の各配線膜40に対応する各部位に形成されている。
また、当該ガスセンサは、図1及び図2にて示すごとく、左側、中央側及び右側の各電極膜60を備えており、これら左側、中央側及び右側の各電極膜60は、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール51を通して左側、中央側及び右側の各配線膜40上に形成されている。
当該ガスセンサは、また、図1にて示すごとく、密着層70及びガス反応層80を備えている。密着層70は、保護層50の表面のうち左側発熱抵抗体30に対する対応表面部上に積層状に形成されており、当該密着層70は、保護層50のうち左側発熱抵抗体30に対する対応部位とガス反応層80との間の密着性を向上させる役割を果たす。
ガス反応層80は、多孔質材料でもって、密着層70上に積層状に形成されており、このガス反応層80は、密着層70及び左側発熱抵抗体30と共に、接触燃焼式ガスセンサにおけるガス検出部を構成する。また、右側発熱抵抗体30が、参照用の発熱抵抗体としての役割を果たす。
次に、上述のように構成されるガスセンサの製造工程について説明する。
1.保護層50、各電極膜60及び空洞部11を形成するまでの工程
まず、酸化シリコン膜を、準備したシリコン基板(半導体基板10に対応)の表面に熱酸化処理により成膜形成する。なお、シリコン基板を準備したのは、微細加工技術により容易に小型化が可能なためである。
ついで、上述のようにシリコン基板に形成した酸化シリコン膜の表面及びシリコン基板の裏面に対し、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜からなる積層膜を、化学蒸着法、物理蒸着法或いはスピンコート法等の一般的な薄膜形成法でもって、積層形成する(図3参照)。
これにより、上記シリコン基板の表面側に積層形成した酸化シリコン膜及び積層膜が、3層構造でもって、上側絶縁層20を構成し、一方、上記シリコン基板の裏面側に積層形成した積層膜が2層構造でもって下側絶縁層20を構成する(図3参照)。
なお、各絶縁層20は、50(nm)〜2000(nm)の範囲以内の厚さ、特に、100(nm)〜1000(nm)の厚さに形成することで、電気絶縁特性を良好に確保する役割を果たす。また、絶縁層20は、上述のように3層構造或いは2層構造に限ることなく、単層構造としてもよく、また、当該絶縁層20の形成材料は、酸化シリコンや窒化シリコンに限ることなく、酸化タンタル或いはアルミナであってもよい。
上述のように各絶縁層20を形成した後、所定温度の雰囲気内において、下側タンタル膜、白金膜及び上側タンタル膜を、順次、上側絶縁層20の表面上にスパッタリングにより積層形成する。なお、上記下側タンタル膜は、上記白金膜の上側絶縁層20との密着強度を高める役割をもつ。
然る後、上記上側タンタル膜、白金膜及び下側タンタル膜のうち各発熱抵抗体30及び各配線膜40に対する対応部位以外の部位を、エッチングにより除去する。これにより、左右両側の各発熱抵抗体30並びに左側、中央側及び右側の各配線膜40が上側絶縁層20の表面上に形成される(図3参照)。
なお、各発熱抵抗体30の形成材料は、ガス反応層80(後述する)を加熱できればよく、従って、白金に限ることなく、例えば、金、ルテニウム、シリコンであってもよい。また、各発熱抵抗体30の抵抗温度係数は、正負いずれであってもよいが、左側発熱抵抗体30は、可燃性ガスの検出用として、参照用の右側発熱抵抗体30と組み合わせて用いられるため、各発熱抵抗体30の抵抗温度係数は、ほぼ同一であることが望ましい。
また、参照用発熱抵抗体30は、温度補償の役割を有するため、左側発熱抵抗体30の抵抗値の変化の影響を受けないように形成することが望ましい。また、両発熱抵抗体30は、同一のシリコン基板に形成されるため、互いに熱による影響を与えない位置に形成することが望ましい。
上述のように各発熱抵抗体30及び各配線膜40を形成した後、例えば、酸化シリコン層を、上側絶縁層20の表面上に、各発熱抵抗体30及び各配線膜40を覆うようにして、化学蒸着法、物理蒸着法或いはスピンコート法等の一般的な薄膜形成法でもって形成する。
ついで、当該酸化シリコン層のうち各配線膜40に対応する各部位をエッチングにより除去する。これにより、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール51を有する保護層50が、上側絶縁層20の表面上に各発熱抵抗体30を覆うように形成される(図3参照)。
なお、保護層50は、各絶縁層20と同様に、50(nm)〜2000(nm)の範囲以内の厚さ、特に、100(nm)〜1000(nm)以内の厚さに形成することで、電気絶縁特性を良好に確保する役割を果たす。また、当該保護層50の形成材料は、酸化シリコンに限ることなく、窒化シリコンや酸化タンタル或いはアルミナであってもよい。また、保護層50は、上述のように単層構造に限ることなく、酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜からなる2層構造としてもよい。
上述のように保護層50を形成した後、白金、金、アルミニウム或いはニッケル等の導電性金属を、化学蒸着法或いは物理蒸着法等の一般的な成膜法でもって、保護層50上に金属膜として形成する。然る後、このように形成した金属膜のうち各コンタクトホール51に対する対応部位以外の部位をエッチングにより除去する。
これにより、左側、中央側及び右側の各電極膜60が各コンタクトホール51に対応して形成される(図3参照)。なお、各電極膜60は、通常、100(nm)〜2000(nm)の範囲以内の厚さ、特に400(nm)〜1200(nm)の範囲以内の厚さを有することが望ましい。
上述のように各電極膜60を形成した後、下側絶縁層20のうち左右両側発熱抵抗体30に対応する各部位をエッチングにより除去し、ついで、この除去部位に対応する半導体基板10の各部位を異方性エッチングにより除去して、上側絶縁層20のうち各発熱抵抗体30に対応する部位を各隔壁部21として外方に露呈させる。
これにより、左右両側空洞部11が、図3にて示すごとく、上記シリコン基板及び上側絶縁層20のうち各発熱抵抗体30に対応する各部位に形成される。なお、上記シリコン基板は、その各空洞部11の形成でもって、半導体基板10を構成する。また、各隔壁部21は、共に、いわゆるダイアフラムに相当し、各空洞部11と共に、各発熱抵抗体30、密着層70及びガス反応層80を断熱する役割を果たす。
2.密着層70となる密着層用焼成前層71の形成工程
上述のように各空洞部11を形成した後、以下に述べるような密着層70となる密着層用焼成前層71を、スクリーン印刷或いはディスペンサー塗布等の一般的な方法でもって、保護層50の表面のうち左側発熱抵抗体30に対する対応表面部位に後述のような密着層用ペーストを塗布することにより形成する(図4参照)。
ここで、上述の密着層用ペーストは、ガラスペーストにフィラー成分及び結合剤成分を添加して作製される。
本実施形態では、上記ガラスペーストは、B23及びZnOからなる焼成後結晶化するガラス成分を、アルコール類、有機溶剤及び有機バインダーからなる混合液でもってペースト化して作製される。なお、上述した焼成後結晶化するガラス成分は、上述したB23やZnOのほか、例えば、SiO2或いはAl23等の酸化物ガラスやフッ化物ガラスであってもよい。
また、上述したフィラー成分としては、焼成段階において形態変化を生じない物質であれば特に限定されない。一般的には、当該フィラー成分としては、SiO2或いはAl23の球状のものが採用される。
また、フィラー成分のサイズ(以下、フィラー粒径ともいう)としては、特に限定されないが、密着層70の厚さよりも小さいサイズが望ましい。
また、フィラー成分の添加量は、上記焼成後結晶化するガラス成分の量に対し5(体積%)〜70(体積%)の範囲内であることが望ましい。フィラー成分の添加量が上記焼成後結晶化するガラス成分の量に対し5(体積%)よりも少ないと、密着層70としての応力緩和力の効果が低くなるためである。また、フィラー成分の添加量が上記焼成後結晶化するガラス成分の量に対し70(体積%)よりも多いと、密着層70としての密着性の低下が懸念されるためである。
ちなみに、フィラー成分の上記焼成後結晶化するガラス成分に対する添加量(以下、フィラー添加量ともいう)と上記密着層単独の応力(以下、密着層応力ともいう)との間の関係についてフィラー粒径をパラメータとして調べたところ、図6にて示すような各グラフが得られた。但し、フィラー成分としては、SiO2の球状のものを用いた。
ここで、密着層応力の測定は、KLA TENCOR社製のFLX−2320型薄膜ストレス測定装置を用いて、Si(100)ウエハ上に形成した密着層に対して行った。
図6において、グラフ1は、フィラー粒径を0.5(μm)としたときの密着層応力とフィラー添加量との間の関係を示し、グラフ2は、フィラー粒径を1.0(μm)としたときの密着層応力とフィラー添加量との間の関係を示し、また、グラフ3は、フィラー粒径を3.0(μm)としたときの密着層応力とフィラー添加量との間の関係を示す。
これら各グラフ1〜3によれば、密着層応力とフィラー添加量との間の関係は、フィラー粒径には殆ど依存しないが、密着層応力は、フィラー添加量の増加に伴い低下することが分かる。従って、フィラー添加量は、フィラー添加の効果を得る目的から上記焼成後結晶化するガラス成分の量に対し、少なくとも5(体積%)以上であり、かつ、殆ど零となるガラス膜応力の付近である70(体積%)以下であることが望ましい。
また、上述した結合剤成分としては、ガス反応層80の結合剤成分(後述する)として用いられる材料と同一の材料が採用されている。これにより、密着層70とガス反応層80との間の結合力が増加するためである。本実施形態では、密着層用焼成前層71の結合剤成分として、無機バインダーであるアルミナゾル溶液が採用されている。
また、密着層70の厚さが1(μm)以上で100(μm)以下となるように、密着層用焼成前層71の厚さを選定することが望ましい。ここで、密着層70が、厚膜として成立して、ガス反応層80との間で充分な密着強度を確保するためには、密着層70の厚さを1(μm)以上とすることが望ましいからである。また、発熱抵抗体30の消費電力の増加を抑制して適正に維持するには、密着層70の厚さを100(μm)以下とすることが望ましいからである。
3.ガス反応層80となるガス反応層用焼成前層81の形成工程
上述のように密着層用焼成前層71を塗布形成した後、以下に述べるようなガス反応層80となるガス反応層用焼成前層81を、スクリーン印刷或いはディスペンサー塗布等の一般的な方法でもって、後述する触媒担持セラミックペースト(本発明のガス反応層用ペーストに対応)を密着層用焼成前層71上に塗布することにより形成する(図5参照)。
ここで、上述の触媒担持セラミックペーストは、貴金属からなる触媒を多孔質セラミックスに担持させてペースト化したものでもって作製される。
但し、上記触媒の担持量は、多孔質セラミックスの量に対し1(重量%)〜30(重量%)の範囲以内の量であることが望ましい。上記触媒の担持量が1(重量%)よりも少ないと、ガス反応層80の被毒等に対する耐久性に問題を生じ易いためである。また、上記触媒の担持量が30(重量%)よりも多いと、上記触媒の凝集が、ガス反応層用焼成前層81の焼成によって、進行し、活性点を顕著に減少させることとなるためである。本実施形態では、上記触媒の担持量は20(重量%)とした。
また、本実施形態では、Pdが上記触媒として採用されるとともに、γ−Al23が、担持体である多孔質セラミックスとして採用されている。また、上述した触媒担持セラミックペーストとしては、Pdを予め担持してなるγ−Al23の粉末に、有機バインダー及び有機溶剤を添加してペースト化し、さらに、結合剤成分としての無機バインダーを添加して作製したものが採用されている。但し、当該無機バインダーは、焼成によりアルミナとなるアルミナゾル溶液である。
なお、上記貴金属としては、上述したPdの他、例えば、Pt、Ru或いはRhが挙げられる。また、上記多孔質セラミックスとしては、上述したγ−Al23の他、各種のAl23、SiO2或いはTiO2が挙げられる。また、上述のように、Pdを予め担持してなるγ−Al23に限ることなく、多孔質セラミックスのみを焼成し、この焼成後の多孔質セラミックスに、貴金属含有溶液のディップ法等によって、貴金属を担持させるようにしてもよい。
また、ガス反応層80の厚さは、特に限定されないが、いわゆる厚膜として確保するためには、1(μm)以上となるようにガス反応層用焼成前層81の厚さを選定することが望ましい。一方、ガス反応層80の熱容量の極度な増加を抑制するためには、ガス反応層80の厚さが500(μm)以下となるようにガス反応層用焼成前層81の厚さを選定することが望ましい。本実施形態では、ガス反応層80の厚さが50(μm)となるようにガス反応層用焼成前層81の厚さを選定した。
4.密着層用焼成前層71及びガス反応層用焼成前層81の焼成工程
上述のようにガス反応層用焼成前層81を塗布形成した後は、このガス反応層用焼成前層81を密着層用焼成前層71と共に同時に所定の焼成条件のもとに焼成する。本実施形態において、上記所定の焼成条件は、上記焼成後結晶化するガラス成分を適正に結晶化させる温度まで焼成するに要する条件をいう。
このような条件のもと、焼成過程において、流動化した密着層用焼成前層71の上記焼成後するガラス成分が、結合剤成分とともに、ガス反応層用焼成前層81と混合されて、当該ガス反応層用焼成前層81内に充分に浸透して混在し、密着性を向上させる。
これにより、密着層70を介するガス反応層80と保護層50との間に優れた密着性を確保することができる。その結果、多量の水分が保護層50、密着層70やガス反応層80に付着しても、ガス反応層80が剥離することがない。
ここで、上述のように浸透した焼成後結晶化するガラス成分は、上記焼成でもって、結晶化するので、その後においては、このように結晶化したガラス成分は形態変化しにくく、従って、密着層70及びガス反応層80も形態変化しにくい。また、上述のように適量のフィラー成分が、密着層に含有されていることで、左側発熱抵抗体30の発熱にもかかわらず、密着層70の熱応力を緩和して適正に抑制し得る。このため、上側絶縁層20の隔壁部21が熱歪みによる損傷や破損を発生しにくい。
その結果、当該ガスセンサの通電状態において多量の水分が当該ガスセンサに付着しかつ急激な熱応力が生ずる状態にあっても、破損等の損傷が当該ガスセンサの内部に生ずることがなく、付着した水分がなくなった後には、当該ガスセンサは良好に使用可能となる。
また、ガス反応層80及び密着層70は上述のごとく同時焼成で形成されるので、焼成回数が一回で済む。従って、ガス反応層80及び密着層70の形成は簡便で経済的であり、焼成のための焼成炉の電気代の節約にも役立つ。
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態にて述べたガスセンサの製造にあたり、右側発熱抵抗体30を廃止してもよく、また、左右両側発熱抵抗体30に加えて他の発熱抵抗体をさらに付加して上側絶縁層20と保護層50との間に形成するようにしてもよい。この場合、当該他の発熱抵抗体に対する対応部位にて下側絶縁層20を介し半導体基板10にその裏面側から空洞部を付加的に形成する。
(2)上記実施形態にて述べたガスセンサの製造にあたり、発熱抵抗体30は、渦巻き状に限ることなく、例えば、ジグザグ状に形成するようにしてもよい。
(3)上記実施形態にて述べたガスセンサの製造にあたり、さらに、保護層50のうち右側発熱抵抗体30に対する対応部位上に右側密着層を積層状に形成するとともに参照層を当該右側密着層上に積層状に形成するようにしてもよい。
ここで、上記参照層、上記右側密着層及び右側発熱抵抗体30は、接触燃焼式ガスセンサにおける温度補償部を構成することとなるが、当該温度補償部は、上述したガス検出部と熱容量を同一にするように形成する。また、上記右側密着層は、上述した密着層70と同様の形成材料でもって形成する。上記参照層は、可燃性ガスに対し不活性な材料でもって形成する。
(4)接触燃焼式ガスセンサに限ることなく、例えば、ガス反応層を酸化物半導体材料で構成した酸化物半導体式ガスセンサ等の各種のガスセンサの製造に本発明を適用してもよい。
(5)保護層50は、上述のごとく、電気絶縁特性を有することから、当該保護層50を、上側絶縁層20をも含めた一体的な絶縁層と把握してもよい。かかる場合には、左右両側発熱抵抗体30は、上記一体的な絶縁層のうち各空洞部11に対する各対応部位にそれぞれ内蔵すればよい。
図2にて1−1線に沿う断面図である。 本発明に係る接触燃焼式ガスセンサの一実施形態を示す概略平面図である。 上記実施形態においてシリコン基板に保護層及び各空洞部を形成するまで工程を説明するための断面図である。 図3の保護層に対する密着層用焼成前層の形成工程を示す断面図である。 図4の密着層用焼成前層に対するガス反応層用焼成前層の形成工程を示す断面図である。 上記実施形態において密着層応力とフィラー添加量との間の関係をフィラー径をパラメータとして示すグラフである。
符号の説明
10…半導体基板、11…空洞部、20…絶縁層、21…隔壁部、30…発熱抵抗体、
50…保護層、70…密着層、71…密着層用焼成前層、80…ガス反応層、
81…ガス反応層用焼成前層。

Claims (3)

  1. 空洞部を有する基体と、この基体の表面に形成される絶縁層と、この絶縁層のうち前記空洞部に対する対応部位に内蔵される発熱抵抗体と、前記絶縁層のうち前記発熱抵抗体に対する対応部位上に形成される密着層と、この密着層上に形成されるガス反応層とを有するガスセンサの製造方法において、
    焼成後結晶化するガラス成分、フィラー成分及び結合剤成分を含有する密着層用ペーストを、前記絶縁層のうち前記発熱抵抗体に対する対応部位上に塗布して密着層用焼成前層を形成する密着層用焼成前層形成工程と、
    ガス反応層用ペーストを、前記密着層用焼成前層上に塗布して、ガス反応層用焼成前層を形成するガス反応層用焼成前層形成工程と、
    前記密着層用焼成前層及び前記ガス反応層用焼成前層を共に焼成して前記密着層及び前記ガス反応層として形成する焼成工程とを備えることを特徴とするガスセンサの製造方法。
  2. 前記密着層用焼成前層形成工程において、前記密着層の厚さが1(μm)以上で100(μm)以下となるように前記密着層用ペーストの塗布を行い、
    前記ガス反応層用焼成前層形成工程において、前記ガス反応層の厚さが1(μm)以上で500(μm)以下となるように前記ガス反応層用ペーストの塗布を行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの製造方法。
  3. 前記密着層用ペーストにおいて、前記結合剤成分は、無機バインダーからなり、前記フィラー成分は、前記焼成後結晶化するガラス成分に対し5(体積%)〜70(体積%)の範囲内の量で含有されている前記焼成によっても形態変化しないフィラーであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサの製造方法。
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