JP5882246B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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Description
この脈動トルク抑制制御器の内部について説明を付け加えると、内部には単相−dq軸変換器と2つの積分制御器とdq軸−単相変換器が備えられている。単相−dq軸変換器は、トルクの脈動成分を2つのスカラー値、d軸成分(cos成分)とq軸成分(sin成分)に分解している。そして積分制御器は2つのスカラー値を零とするように積分補正を加えることでd軸成分(cos成分)及びq軸成分(sin成分)の補正電流値を個別に求めている。さらに2つの補正電流値をdq軸−単相変換器が脈動トルク抑制電流値に変換している。
脈動トルク抑制制御を最小限の電力で効率よく効果的に実施するためには、交流モータの加減速中や負荷変動中等の状態変化に合わせて、負荷トルクの脈動成分に一致した脈動トルク抑制電流を常に流す必要がある。そのためには、軸誤差の誤差と、負荷トルクの脈動成分の位相と、を考慮した制御が必要となる。
なお、詳細については、発明を実施するための形態において説明する。
<モータ制御装置の構成>
図1は、本実施形態に係るモータ制御装置の構成図である。図1に示すモータ制御システムSは、インバータ1の出力電圧を制御することで交流モータ5の回転子(図示せず)を回転させ、圧縮機6(例えば、ロータリ圧縮機)を駆動するシステムである。モータ制御システムSは、インバータ1と、電流センサ2と、モータ制御装置3と、を備えている。
電流再現処理部301は、前記した電流値Istと、インバータ1が有するスイッチング素子(図示せず)のON/OFF信号から交流モータ5に流れる3相交流電流Iuc,Ivc,Iwcを再現し、3相/2軸変換器302に出力する。
さらに図1では、dc軸電流Idcの信号線と、qc軸電流Iqcの信号線と、を途中から同一の信号線として記載しているが、実際にはそれぞれ別の信号として軸誤差推定器303に入力している。(後記するVdc*,Vqc*も同様)。
PLL(Phase Locked Loop)回路305は、符号反転器304から入力される値(−Δθc)を用いてP(Proportional)制御、又はPI(Proportional Integral)制御を実行し、交流モータ5の角周波数補正値Δω1を算出して加算器306に出力する。
d軸電流指令発生器308は、平均トルクに応じてリラクタンストルクが最大となるようなd軸電流指令Id*を算出し、電圧指令演算器312に出力する。
q軸電流指令発生器309は、3相/2軸変換器102から入力されるqc軸電流Iqcに基づいて平均トルクに対応するq軸電流指令Iqbを算出し、加算器310に出力する。
角周波数指令演算器311は、角周波数指令発生器313から入力される角周波数指令ωr*と、交流モータ5の極対数と、に基づいて電気角周波数指令ω1*を算出し、加算器306及び電圧指令演算器312に出力する。
2軸/3相変換器314は、電圧指令演算器312から入力されるd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*と、積分器307から入力される位相推定値θdcと、に基づいて、交流モータ5の3相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を算出し、PWM信号発生器315に出力する。
PWM(Pulse Width Modulation)信号発生器315は、2軸/3相変換器314から入力される3相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に基づいてPWM信号を生成し、インバータ1が有するスイッチング素子(図示せず)に出力する。
図2は、モータ制御装置が有するフーリエ順変換器316aの構成図である。フーリエ順変換器316a(軸誤差ベクトル抽出手段)は、フーリエ順変換処理を行うことで軸誤差Δθcから、正弦波である脈動成分をベクトルとして抽出する機能を有している。
このようにして、一次遅れフィルタa2,a3はそれぞれ、単相−dq軸変換器a1から出力された軸誤差から脈動成分(d軸に対応するcos成分、及びq軸に対応するsin成分)を抽出し、符号反転器a4,a5に出力する。
図3は、円形リミッタ付き積分制御器316bの構成図である。円形リミッタ付き積分制御器316bは、積分制御器b1と、円形リミッタ処理手段b2を有している。積分制御器b1(補正電流ベクトル算出手段)は、フーリエ順変換器316aによって抽出された軸誤差スカラー値Δθscaをもとに積分演算し、交流モータ5の脈動トルクを打ち消すための補正電流値を算出する機能を有している。また円形リミッタ処理手段b2は軸誤差ベクトル値Δθvecをもとにして積分制御器b1が算出した補正電流値に対し円形リミッタ処理を行う機能を有している。以下、各部の詳細な内容について説明する。
積分演算器b11は、軸誤差スカラー値Δθscaのq軸成分Δθsinと、前回の円形リミッタ付き積分制御器316b内で算出されたq軸成分の補正電流値Hsin(N-1)を用いて積分演算し、q軸成分の補正電流ベース値Hsin_Baseを算出している。積分演算器b12も積分演算器b11と同様にd軸成分の補正電流ベース値Hcos_Baseを算出している。
図8は円形リミッタ処理の作用を示したベクトル図であり、座標軸にはフーリエ順変換に用いたd軸(cos軸)とq軸(sin軸)を用いており、軸誤差の脈動成分のベクトルΔθvecと補正電流値のベクトルHvecを同一座標軸上に示している。白矢印が軸誤差の脈動成分のベクトルΔθvecであり、黒矢印が補正電流値のベクトルHvecである
差異が生じる理由は、2つのスカラー値を積分制御で補正していることに起因する。d軸成分の積分値とq軸成分の積分値を個々に補正するため、当然の事ながら補正期間中は補正電流ベース値の偏角Hangel_Baseと軸誤差の脈動成分の偏角Δθangleの間には差異が生じている。その状態で積分制御の演算を中断させるような制限を加えると、補正電流ベース値の偏角Hangleと軸誤差の脈動成分の偏角Δθangleに差異が残り続けてしまう。
そのため、実用上は軸誤差のベクトルの偏角Δθangleと、補正電流のベクトルの偏角Hangle(N)を一致させた状態で、かつ所定の補正電流で補正を加えることによって脈動トルク抑制の効果を最も高められる。
そこで円形リミッタ処理手段b2(図3参照)には、図8(a)に示した状態を、補正電流値のベクトルに移動制限を施しながら図8(b)に示した2つの偏角が一致した状態にする機能を設けている。次に円形リミッタ処理の内容について説明をする。
ステップS100のリミッタ値算出処理においてモータ制御装置3は、リミッタ値算出部100(図3参照)によって、補正電流ベース値のベクトルHvec_Baseの移動を制限するためのリミッタ値Limを算出する。例えば、モータ制御装置3は、平均トルクに対応するq軸電流指令Iqb(平均トルク電流:図1参照)と所定の比例定数(正の値)とを乗算してリミッタ値Limを算出する。この場合において、リミッタ値Limは、q軸電流指令Iqbの大きさの100〜150%であることが好ましい。リミッタ値Limを前記した範囲内で逐次設定することによって、過剰補正を回避しつつ周期的な外乱に起因する脈動トルクを適切に防止できる。
一方、絶対値Hsize_Baseが前記した差(Lim−Tole)未満である場合、補正電流値のベクトルHvecが、後記する制限領域A(図9参照)よりも径方向外側に出るおそれはない。したがって、モータ制御装置3はスカラー値補正処理を省略する。その際、モータ制御装置3は、ステップS400でq軸成分の補正電流値Hsinとしてq軸成分の補正電流ベース値Hsin_Baseを設定し、d軸成分の補正電流値Hcosとしてd軸成分の補正電流ベース値Hcos_Baseを設定する。
補正側のsinが軸誤差側のsinよりも大きい場合、スカラー値補正処理部300は、sin側上限値Lim_Hsin(Hi)としてsin側基準値St_Hsinを設定するとともに、sin側下限値Lim_Hsin(Lo)として差(St_Hsin(Hi)−Tole)を設定する(S303a)。
補正側のsinが軸誤差側のsinよりも小さい場合、スカラー値補正処理部300は、sin側上限値Lim_Hsin(Hi)として和(St_Hsin+Tole)を設定するとともに、sin側下限値Lim_Hsin(Lo)としてsin側基準値St_Hsinを設定する(S303b)。
ステップS304においても、ステップS303と同様に、スカラー値補正処理部300はcos側上限値Lim_Hcos(Hi)とcos側下限値Lim_Hcos(Lo)を設定する。
初めにスカラー値補正処理部300は、q軸成分の補正電流ベース値Hsin_Baseと、sin側上限値Lim_Hsin(Hi)を比較し、q軸成分の補正電流ベース値Hsin_Baseがsin側上限値Lim_Hsin(Hi)よりも大きい場合はq軸成分の補正電流値Hsinとしてsin側上限値Lim_Hsin(Hi)を設定する。
ステップS306においてもステップS305と同様に、スカラー値補正処理部300はd軸成分の補正電流値Hcosを設定する。
以上の処理を行うことによって、スカラー値補正処理部300は補正電流値のベクトルHvecの移動を制限する。次にスカラー値補正処理の作用について説明する。
その結果、図9(a)、(b)に示すように、補正電流値のベクトルHvec(N)が軸誤差ベクトルΔθvecに近づくように変動する。また、補正電流値のベクトルHvec(N)は前記した絶対値Hsize_Baseが(Lim−Tole)以上の状態では常に矩形領域Aから出ない範囲で変動する。したがって、補正電流値のベクトルHvec(N)は、リミッタ値Limを半径とする円周に沿うようにして(又は円周内で)変動し、過剰補正に起因する振動増加などを適切に防止できる。
図12は、モータ制御装置が有するフーリエ逆変換器の構成図である。フーリエ逆変換器316cは、円形リミッタ付き積分制御器316bから入力される補正電流ベクトルH(Hcos,Hsin)に対してdq軸−単相変換器c1でフーリエ逆変換を行い、脈動トルク抑制電流値IqSIN*を算出する
前記したように、脈動トルク抑制電流値IqSIN*は、加算器310(図1参照)で平均トルク電流指令Iqb*(図1参照)に加算され、q軸電流指令Iq*として電圧指令演算器312に入力される。このように、トルク電流の主成分であるq軸電流指令Iq*に脈動トルク制御を時々刻々と反映させることで、交流モータ5で生じる脈動トルクを効果的に抑制できる。
本実施形態に係るモータ制御装置3によれば、補正電流値ベクトルの偏角Hangleを軸誤差ベクトルΔθvecの偏角に近づけるように変動許容範囲A(図9参照)を設定し、円形リミッタ制御を実行する。前記したように、周期的に変動する軸誤差Δθcを、交流モータ5の回転子位置と対応する交流信号とみなすことができる。モータ制御装置3は、脈動トルクが最も大きくなる回転子位置に軸誤差ベクトルΔθvecの偏角Δθangleを対応させ、補正電流ベクトルの偏角Hangleが偏角Δθangleに近付けるように円形リミッタ制御を行う。
さらに、例えば、交流モータ5に低温減磁特性を有するフェライト磁石を用いる場合、過剰補正をかけない(つまり、脈動を打ち消すための補正電流を過剰に流さない)ことによってフェライト磁石の減磁を抑制し、長寿命化を図ることができる。
このように、リミッタ処理が必要となる可能性がある場合にのみ、円形リミッタ制御を行うことで、モータ制御装置300の演算負荷を軽減し、応答性を高めることができる。
第2実施形態は、モータ制御装置3の円形リミッタ処理手段b2(図3参照)が備えるスカラー値補正処理部300A(図10参照)の構成が第1実施形態と異なるが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、当該異なる部分について説明し、第1実施形態と重複する部分については説明を省略する。
図10は、本実施形態に係るモータ制御装置の円形リミッタ処理手段が備えるスカラー値補正処理部の構成図である。
本実施形態において円形リミッタ処理手段b2は、変動許容範囲(第1実施形態で説明した矩形状の範囲Aに相当:図9参照)を設けずに円形リミッタ処理を実行する点に特徴がある。
一次遅れフィルタb21は、フーリエ順変換器316a(図2参照)が求めた軸誤差の脈動成分の偏角Δθangleを平均化し、sin演算部b22と、cos演算部b23に出力する。
sin演算部b22と、cos演算部b23はそれぞれ、平均化された偏角Δθangleに対するsin値とcos値を求め、乗算部b24,b25に出力する。
なお、一次遅れフィルタb21の初期値は、図6に示すPADにおいて、ステップS400の処理を行う際に、補正電流ベース値のベクトルを構成する偏角Hangle_Baseを設定する(図示省略)。
本実施形態によれば、スカラー値補正処理部300Aを前記した構成とすることで、第1実施形態よりも簡単な構成で補正電流ベクトルH(Hcos,Hsin)を求めることが可能となる。また、補正電流ベクトルHVecの半径を所定のリミッタ値Limで維持しつつ、補正電流ベクトルHVecの偏角として、時々刻々と変化する軸誤差ベクトルΔθVecの偏角Δθcangleを用いる。
これによって、簡単な構成で、交流モータ5の脈動トルクを適切に抑制できる。
以上、本発明に係るモータ制御装置3について前記各実施形態により説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、第1実施形態では、リミッタ値Limを半径とする円周のうち前回の補正電流値ベクトルHvec(N-1)の偏角に対応する点K(図10参照)を一つの頂点とする矩形領域Aを変動許容領域とする場合について説明したが、これに限らない。
すなわち、半径Limの円周の一部を含む所定領域内で補正電流値ベクトルHvecの移動を制限できれば、他の形状・態様で変動許容領域を設定してもよい。
また、リミッタ値Limを、過剰補正を防止可能な固定値として予め設定してもよい。
また、前記各実施形態では、交流モータ5がフェライト磁石を有する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、ネオジム磁石など他の種類の磁石を用いてもよい。
また、前記各実施形態では、モータ制御装置3によって駆動される交流モータ5を圧縮機6に設置する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、位置センサレスで交流モータ5を駆動させるのであれば、あらゆる機器及びシステムに適用できる。
1 インバータ
2 電流センサ(電流検出手段)
3 モータ制御装置
303 軸誤差推定器(軸誤差推定手段)
316 脈動トルク抑制制御部
316a フーリエ順変換器(軸誤差ベクトル抽出手段)
a1 単相−dq軸変換器
a2,a3 一次遅れフィルタ(軸誤差ベクトル抽出手段)
316b 円形リミッタ付き積分制御器
b1 積分制御器(補正電流ベクトル算出手段)
b2 円形リミッタ処理手段
100 リミッタ値算出部(円形リミッタ処理手段)
300 スカラー値補正処理部(円形リミッタ処理手段)
500 ベクトル変換処理部(円形リミッタ処理手段)
316c フーリエ逆変換器
5 交流モータ
6 圧縮機
Claims (6)
- インバータによって駆動する交流モータの実軸と制御軸との軸誤差を、電流検出手段によって検出される前記インバータの電流値に基づいて推定する軸誤差推定手段と、
前記軸誤差推定手段によって推定される前記軸誤差の時間的な変動から、正弦波で表わされる脈動成分を軸誤差ベクトルとして抽出する軸誤差ベクトル抽出手段と、
前記軸誤差ベクトル抽出手段によって抽出される前記軸誤差ベクトルを積分演算し、前記交流モータの脈動トルクを打ち消すための補正電流ベクトルを算出する補正電流ベクトル算出手段と、
所定のリミッタ値を半径とする円周を基準として、前記補正電流ベクトル算出手段によって算出される前記補正電流ベクトルの移動を制限する円形リミッタ処理手段と、を備え、
前記円形リミッタ処理手段は、
前記補正電流ベクトルの偏角を、前記軸誤差ベクトルの偏角に近づけるように前記補正電流ベクトルの移動を制限する円形リミッタ処理を実行すること
を特徴とするモータ制御装置。 - 前記円形リミッタ処理手段は、
前記円周の一部を含む所定領域内で前記補正電流ベクトルの移動を制限することによって、前記円形リミッタ処理を実行すること
を特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記円形リミッタ処理手段は、
前記補正電流ベクトルの絶対値が、前記リミッタ値から所定値を減算した値以上である場合、前記円形リミッタ処理を実行すること
を特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。 - 前記円形リミッタ処理手段は、
前記円周のうち前回の積分演算で算出された前記補正電流ベクトルの偏角に対応する点を一つの頂点とする矩形領域を前記所定領域として設定し、今回の積分演算で算出される前記補正電流ベクトルを前記矩形領域内に制限すること
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載のモータ制御装置。 - 前記円形リミッタ処理手段は、
前記インバータに出力するトルク電流指令値の所定時間内における平均値と正の相関を有するように前記リミッタ値を算出すること
を特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記円形リミッタ処理手段は、
前記インバータに出力するトルク電流指令値の所定時間内における平均値を基準として100〜150%の大きさに前記リミッタ値を設定すること
を特徴とする請求項5に記載のモータ制御装置。
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