JP5882064B2 - 安定化された逆転写酵素融合タンパク質 - Google Patents

安定化された逆転写酵素融合タンパク質 Download PDF

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Description

継続出願のデータ
この出願は、2009年3月4日に出願された米国仮特許出願第61/157,332号(これは、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
政府の資金供与
この研究は、Department of Health and Human Services, National Institutes of Healthからの助成金番号GM37949−22によって少なくとも部分的に支援された。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
発明の背景
RT−PCRと省略される逆転写ポリメラーゼ連鎖反応は、RNAを増幅するための周知の手法である。RT−PCRでは、RNA鎖を相補DNA(cDNA)に逆転写し、次いでそれを、ポリメラーゼ連鎖反応においてDNAポリメラーゼを用いて増幅する。このプロセスの第1工程では、DNAプライマーとともにデオキシリボヌクレオチドホスフェートおよび逆転写酵素を用いてRNA鋳型からcDNAを生成する。
RNA鋳型からのcDNAの合成は、RNA鎖のらせんおよび他の様々な種類のねじれからなるRNAの二次構造および三次構造によって妨げられ得る。RNAの二次構造および三次構造は、高温(例えば、50℃超)で反応を行うこと、または変性用添加物を加えることによって、減少し得る。しかしながら、変性用添加物を加えることは、逆転写酵素の活性を低下させることが多いので、望ましくない。高温は、非特異的プライマーの結合を減少させることによってDNA合成の特異性を高めるという利点ももたらす。残念なことに現在のところ、高温で機能することができる逆転写酵素は、限られた数しか利用できず、これらのDNA重合の忠実度は、比較的低い。例えば、商業的に入手可能なAvian Myeloblastosis Virus逆転写酵素は、RNaseH活性を備え、37℃で機能し得るが、わずか約1.7×10−4という忠実度しか有しない。RNaseH活性は、DNAポリメラーゼ活性およびプライマー結合部位と競合するがゆえに、cDNA収量が低下する。したがって、高い忠実度および処理能力を有する逆転写酵素を含む、高温で逆転写を行うことができる逆転写酵素が必要とされている。高温によって、RNAの二次構造および三次構造の妨害が減少し、より長くかつより特異性の高いプライマーを使用できるようになることによって逆転写の特異性が高まるので、そのような酵素は、有益である。
発明の要旨
1つの局面において、本発明は、安定化タンパク質(stabilizer protein)に接続された耐熱性逆転写酵素を含む安定化された(stabilized)逆転写酵素(RT)融合タンパク質を提供する。安定化された逆転写酵素融合タンパク質の1つの実施形態において、耐熱性逆転写酵素は、細菌の逆転写酵素である。さらなる実施形態において、細菌の逆転写酵素は、グループIIイントロン由来逆転写酵素である。細菌の耐熱性逆転写酵素の例としては、Thermosynechococcus elongatus逆転写酵素およびGeobacillus stearothermophilus逆転写酵素が挙げられる。別の実施形態において、耐熱性逆転写酵素は、高い忠実度のcDNA合成を示す。なおも別の実施形態において、耐熱性逆転写酵素は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と実質的に類似のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含む。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、逆転写酵素に連結されたときにその耐熱性逆転写酵素の有効期間および/または熱安定性および/または溶解性を高める安定化タンパク質を含む。ある特定の実施形態において、安定化タンパク質は、親和性タンパク質または溶解性向上タンパク質(例えば、マルトース結合タンパク質またはN利用物質A(N−utilization substance A)タンパク質)である。追加の実施形態において、安定化タンパク質は、ある特定の荷電アミノ酸を無荷電アミノ酸で置き換えることによって改変される。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、耐熱性逆転写酵素を安定化タンパク質に接続するリンカーペプチドも含み得る。いくつかの実施形態において、このリンカーペプチドは、切断不可能なリンカーであり、他の実施形態では、切断不可能な剛性リンカーである。いくつかの実施形態において、リンカーペプチドは、1〜20アミノ酸からなるが、他の実施形態では、リンカーペプチドは、1〜5または3〜5アミノ酸からなる。例えば、切断不可能な剛性リンカーペプチドは、5アラニンアミノ酸を含み得る。
追加の実施形態において、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と実質的に類似のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含むアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、約45°〜約65℃の温度において2.0×10−5以下のエラー頻度の逆転写を行うことができる高い忠実度の逆転写酵素である。さらなる実施形態において、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、約81℃までの温度において実質的なレベルの逆転写を行うことができる。
本発明の別の局面は、RNA分子からcDNAを調製するための方法を提供し、その方法は、以下の工程:(a)プライマーヌクレオチド配列をRNA分子に加える工程、および(b)1つ以上の修飾されたまたは修飾されていないデオキシリボヌクレオシド三リン酸またはジデオキシリボヌクレオシド三リン酸、および安定化タンパク質に接続された耐熱性逆転写酵素を含む安定化された逆転写酵素融合タンパク質の存在下において、そのRNA分子の全部または一部に相補的なcDNA分子を合成するのに十分な条件下でそのRNA分子をインキュベートする工程を包含する。特定の実施形態において、耐熱性逆転写酵素は、リンカーペプチド(例えば、切断不可能なリンカーペプチドまたは切断不可能な剛性リンカーペプチド)によって安定化タンパク質に接続される。好ましくは、逆転写は、RNAが実質的に減少した量の安定な妨害性の二次構造または三次構造しか含まない温度範囲内で行われる。この方法の実施形態は、耐熱性逆転写酵素がグループIIイントロン由来逆転写酵素である実施形態を含む。この方法のさらなる実施形態において、耐熱性逆転写酵素は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と実質的に類似のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含み、切断不可能なリンカーは、1〜20アミノ酸からなり、安定化タンパク質は、親和性タンパク質または溶解性向上タンパク質である。この方法のなおもさらなる実施形態において、逆転写は、約45°〜約65℃の温度において、2.0×10−5以下のエラー頻度で行われる。
本発明の別の局面は、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と実質的に類似のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む安定化された逆転写酵素融合タンパク質を生成するためのDNA発現ベクターを提供する。
本発明の別の局面は、安定化された逆転写酵素融合タンパク質を生成する方法を提供し、その方法は、以下の工程:(a)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と実質的に類似のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含む安定化された逆転写酵素融合タンパク質を生成するためのDNA発現ベクターを含む宿主細胞を培養する工程;(b)そのDNA発現ベクターによってコードされる安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現させる工程;および(c)その安定化された逆転写酵素融合タンパク質を宿主細胞から単離する工程を包含する。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、より高い温度および/またはより高い処理能力でのcDNA合成を促進し得、そして/または逆転写の特異性(すなわち、忠実度)を高めるより長くより安定なプライマーの使用を可能にし得る。ゆえに、本発明の安定化されたRT融合タンパク質は、研究用途などのいくつかの応用法にとって有用であり得る。
前述の全体的な説明と以下の詳細な説明の両方が、単に例示的かつ説明的であって、特許請求されるような本発明を限定するものではないことが理解される。
図1は、剛性リンカーによってマルトース結合タンパク質に結合されたThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のアミノ酸配列(配列番号6)の掲載である。アミノ酸残基1〜367は、改変されたマルトース結合タンパク質(配列番号11)に相当し;アミノ酸残基368〜372は、剛性リンカー(配列番号12)に相当し;そしてアミノ酸残基373〜935は、TeI4c ORF(配列番号1)に相当する。 図2は、剛性リンカーによってマルトース結合タンパク質に結合されたThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のアミノ酸配列(配列番号7)の掲載である。アミノ酸残基1〜367は、マルトース結合タンパク質(配列番号11)に相当し;アミノ酸残基368〜372は、剛性リンカー(配列番号12)に相当し;そしてアミノ酸残基373〜935は、TeI4f ORF(配列番号2)に相当する。 図3は、剛性リンカーによってマルトース結合タンパク質に結合されたThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のアミノ酸配列(配列番号8)の掲載である。アミノ酸残基1〜367は、マルトース結合タンパク質(配列番号11)に相当し;アミノ酸残基368〜372は、剛性リンカー(配列番号12)に相当し;そしてアミノ酸残基373〜935は、TeI4hORF(配列番号3)に相当する。 図4は、剛性リンカーによってマルトース結合タンパク質に結合されたGeobacillus stearothermophilus由来の逆転写酵素のアミノ酸配列(配列番号9)の掲載である。アミノ酸残基1〜367は、マルトース結合タンパク質(配列番号11)に相当し;アミノ酸残基368〜372は、剛性リンカー(配列番号12)に相当し;そしてアミノ酸残基373〜1008は、Geobacillus stearothermophilus GsI1 ORF(配列番号4)に相当する。 図5は、剛性リンカーによってマルトース結合タンパク質に結合されたGeobacillus stearothermophilus由来の逆転写酵素のアミノ酸配列(配列番号10)の掲載である。アミノ酸残基1〜367は、マルトース結合タンパク質(配列番号11)に相当し;アミノ酸残基368〜372は、剛性リンカー(配列番号12)に相当し;そしてアミノ酸残基373〜792は、Geobacillus stearothermophilus GsI2 ORF(配列番号5)に相当する。 図6は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4cオープンリーディングフレーム(ORF)の剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号13)の掲載である。 図6は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4cオープンリーディングフレーム(ORF)の剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号13)の掲載である。 図6は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4cオープンリーディングフレーム(ORF)の剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号13)の掲載である。 図7は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4f ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号14)の掲載である。 図7は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4f ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号14)の掲載である。 図7は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4f ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号14)の掲載である。 図8は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4hORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号15)の掲載である。 図8は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4hORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号15)の掲載である。 図8は、pMAL発現構築物におけるThermosynechococcus elongatus由来の逆転写酵素のMalE−TeI4hORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号15)の掲載である。 図9は、pMAL発現構築物におけるGeobacillus stearothermophilus由来の逆転写酵素のMalE−GsI1 ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号16)の掲載である。 図9は、pMAL発現構築物におけるGeobacillus stearothermophilus由来の逆転写酵素のMalE−GsI1 ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号16)の掲載である。 図9は、pMAL発現構築物におけるGeobacillus stearothermophilus由来の逆転写酵素のMalE−GsI1 ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号16)の掲載である。 図10は、pMAL発現構築物におけるGeobacillus stearothermophilus由来の逆転写酵素のMalE−GsI2 ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号17)の掲載である。 図10は、pMAL発現構築物におけるGeobacillus stearothermophilus由来の逆転写酵素のMalE−GsI2 ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号17)の掲載である。 図10は、pMAL発現構築物におけるGeobacillus stearothermophilus由来の逆転写酵素のMalE−GsI2 ORFの剛性融合物のヌクレオチド配列(配列番号17)の掲載である。 図11は、種々の温度における逆転写酵素(RT)活性のポリ(rA)/オリゴ(dT)42アッセイを示しているグラフを提供している。アッセイされた酵素は、MalE−RF−GsI1、MalE−RF−GsI2、MalE−RF−TeI4c、MalE−RF−TeI4f、MalE−RF−TeI4h、LtrAおよびMalE−RF−LtrAだった。RT(TeI4cは50nMおよび他のすべてのRTは100nM)を、75mM KCl、10mM MgCl、20mM Tris−HCl,pH7.5および1mM DTTにおいて100nMポリ(rA)/オリゴ(dT)42および5μl[α−32P]−dTTP(3,000Ci/mmol)とともにインキュベートすることによって反応を行った。示されている温度において1分間、上記反応媒質中でRTをポリ(rA)/オリゴ(dT)42とともにプレインキュベートした後、[α−32P]−dTTPを加えることによって反応を開始し、線形の範囲内であることが確かめられた時間(TeI4c RTに対しては90秒間および他のすべてのRTに対しては5分間)にわたってインキュベートし、そして250mMの最終濃度になるようにEDTAを加えることによって停止した。材料および方法に記載されるように、反応産物をWhatman DE81クロマトグラフィペーパー(GE Health care Biosciences Corp)上にスポットし、0.3M NaClおよび0.03Mクエン酸ナトリウムで洗浄し、PhosphorImagerでスキャンして、そのフィルターに結合した放射能を定量化することによって、高分子量材料への[α−32P]−dTTPの重合を定量化した。プロットは、反応温度に応じた、そのフィルターに結合した放射能(PhosphorImager単位)を示している。 図12は、グループIIイントロンRTおよび融合タンパク質の模式図を示している。セクション12(A)は、グループIIイントロンによってコードされるRTとレトロウイルスRTとの比較を提供している。Ll.LtrBイントロンによってコードされるLtrAタンパク質によって例証されるグループIIイントロンRTは、通常、4つの主要なドメイン:保存された配列ブロックRT−1〜7を有するRTドメイン;X/サムドメイン;DNA結合(D)ドメインおよびDNAエンドヌクレアーゼ(En)ドメインを含む。グループIIイントロンRTのRTドメインおよびサムドメインは、HIV−1 RTによって例証されるレトロウイルスRTのそれと相同であるが、N末端の伸長ならびに上流(RT−0)および保存されたRT配列ブロック間における挿入(例えば、LtrAにおけるRT−2a、3a、4aおよび7aならびにサムドメイン挿入物t;Blockerら、RNA 11,14−28,2005)に起因して、より大きい。レトロウイルスRTのサムドメインに特徴的な3つのα−ヘリックスの位置が、LtrAとHIV−RTの両方に対して示されている。Enドメインを欠くGsI2 RTを除いて、この研究に使用されたグループIIイントロンRTのすべてがEnドメインを含む。セクション12(B)は、グループIIイントロンRT融合タンパク質を示している。グループIIイントロンRT(IEP)を、融合されたN末端のMalE溶解性タグまたはNusA溶解性タグとともに発現させた。最初の構築物は、発現ベクターpMalE−c2tにおいて、TEVプロテアーゼ切断部位(下線部)を有する可撓性リンカーを介してRTのN末端に融合されたMalE溶解性タグを含んでいた。図11において試験されたこれらの最初の構築物のバリアントは、TEVプロテアーゼ切断部位が欠失したpMalE−c2tリンカーを含んでいた。改善された構築物は、5アラニン残基(下線部)を含む剛性リンカーを介してRTのN末端に融合された、改変されたMalEまたはNusAタグを使用した。改変されたMalEタグでは、荷電アミノ酸残基がアラニン(イタリック体)に変更され、改変されたNusAタグは、2つのC末端アミノ酸残基を失っている。 図13は、種々の剛性融合リンカーまたは溶解性タグ配列を有するMalE−RF−TeI4c RTの誘導体のRT活性を示しているグラフを提供している。パネル13(A)は、60℃におけるRT活性を示している棒グラフを提供している。50nMタンパク質および100nMポリ(rA)/オリゴ(dT)42を使用し、90秒間インキュベートすることによって、図11におけるように、MalE−RF−TeI4c RT(左のバー)または種々のタグもしくはリンカー配列を含むバリアント(右のバー)を用いた反応を行った。値は、3回の測定結果に対する平均値であり、エラーバーは、標準偏差を示している。パネル13(B)は、NusA−RF−TeI4c RTに対するRT活性の温度プロファイルを示しているグラフを提供している。図11におけるように、50nMタンパク質および100nMポリ(rA)/オリゴ(dT)42を使用し、示されている温度において2分間インキュベートすることによって、RT活性をアッセイした。y軸は、各タンパク質(パネルA)または反応温度に応じたNusA−RF−TeI4c RT(パネルB)に対する、フィルターに結合した放射能(PhosphorImager単位)を示している。 図14は、種々の温度におけるMalE−RF−TeI4c、MalE−RF−GsI2およびSuperScript IIIのRT活性によるcDNA合成を比較しているグラフおよびオートラジオグラムを提供している。パネル(A〜C)では、基質は、AflIIIで消化されたpBS KS(+)から転写された531nt RNA(5’標識37ntプライマーがアニールしたもの)であり、パネル(D〜F)では、基質は、5’標識44nt DNAプライマーがアニールした1.2kb kanR RNAだった。MalE−RF−TeI4c RT(パネルAおよびD)およびMalE−RF−GsI2 RT(パネルBおよびE)に対しては100mM KCl、20mM Tris HCl pH7.5、10mM MgClおよび10mM DTT、ならびにSuperScript III RT(パネルCおよびF)に対しては製造者の緩衝液において、100nMのアニールされた鋳型/プライマーを200nM酵素とともにインキュベートすることによって反応を行った。dNTPを最終濃度1.25mMとなるように加えることによって反応を開始し、示されている温度において30分間インキュベートし、0.1%SDS/250mM EDTA(最終濃度)を加えることによって反応を終結した後、フェノール−CIA抽出した。その生成物を変性6%ポリアクリルアミドゲルにおける電気泳動によって解析し、そのゲルを乾燥し、PhosphorImagerを用いて定量化した。各パネルにおいて、上および下のオートラジオグラムは、それぞれ全長産物(矢印)および伸長されていないかまたは部分的に伸長されたプライマーを含むゲルの一部を示しており、棒グラフは、PhosphorImagerでの定量化に基づいて、全長cDNAまで伸長したプライマーのパーセンテージを示している。「?」は、全長産物の定量化において使用されなかった未同定のバンドを示している。5’標識された10bpラダー(InvitrogenTM)をサイズマーカーとして使用した。2つの鋳型プライマー基質の概略図をこの図の下に示す。 図15は、1.2kb kanR RNA鋳型のヌクレオチド配列(配列番号21)の掲載である。 図16は、MalE−RF−TeI4c RTおよびSuperScript III RTによる種々の温度におけるcDNA合成の量を比較するためにqRT−PCRから得られた片対数プロットを提供している。プライマーP078(Tm=80℃)がアニールした1.2kb kanR RNAを使用し、MalE−RF−TeI4c RTまたはSuperScript III RT(SSIII RT)を用いてcDNAを合成し、nt188−257およびnt562−634におけるプライマー/プローブセットを用いて検出した(プライマーセットnt188−257を用いた検出についてのデータがこの図に示されている;プライマーセットnt562−634を用いて得られたデータは、図17に示されている)。qPCR増幅曲線は、サイクル数に対する蛍光(ΔRN)の片対数プロットを示している。各サンプルに対して、2つ組のウェルを解析し、各増幅プロットにおいて示す。MalE−RF−TeI4cまたはSuperScript III RTによる各cDNA合成反応に対するサイクル閾値(C)(蛍光が閾値0.4と交差するサイクル)が、曲線の下に示されている。C値が低いほど、合成されるcDNAの数が多いと示唆される。 図17は、MalE−RF−TeI4c RTおよびSuperScript III RTによるcDNA合成の処理能力を比較するためにqRT−PCRから得られた片対数プロットを提供している。プライマーP078(Tm=80℃)がアニールした1.2kb kanR RNAを使用し、MalE−RF−TeI4cまたはSuperScript III RTを用いてcDNAを合成し、nt188−257およびnt562−634におけるプライマー/プローブセットを用いて検出した。cDNAサンプルを60℃(A、B)および65℃(C、D)において得た。各サンプルについて、3つ組を解析し、各増幅プロットに示す。定量化され、希釈されたpET9プラスミドの検量線から平均コピー数を得た。MalE−RF−TeI4c RTに対して見られるように、この2つのプライマーセットを用いたときに同様の数のcDNAコピーが検出されたことは、ほとんどのcDNAがRNA鋳型の末端近くまで伸長することを示し、高処理能力が示唆される。SuperScript III RTに対して見られたような3’末端により近いプライマーセット(nt562−634)と比べて5’末端付近のプライマーセット(nt188−257)で検出されるcDNAコピー数が少ないことは、RTが減衰しているか、または何らかの他の方法でRNA鋳型が5’末端に達することが妨げられていることが示唆される。 図18は、NusA溶解性向上タンパク質のアミノ酸配列(配列番号38)の掲載である。
発明の詳細な説明
別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。本明細書中の本発明の説明において使用される用語は、特定の実施形態だけを記載するためのものであって、本発明を限定することを意図していない。本明細書中で述べられるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体が参考として援用される。
定義
本発明の説明および添付の請求項において使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数形も同様に含むと意図される。さらに、終点による数値の範囲の詳述は、その範囲内に含まれるすべての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
本明細書中で使用されるとき、「ポリペプチド」とは、アミノ酸のポリマーのことを指し、特定の長さのアミノ酸のポリマーのことを意味しない。したがって、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、抗体および酵素という用語は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語は、発現後修飾(例えば、グリコシル化(例えば、サッカリドの付加)、アセチル化、リン酸化など)を受けたポリペプチドも含む。
「単離された」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、本明細書中で使用されるとき、自然環境から取り出されたか、組換え法を用いて生成されたか、または化学的もしくは酵素的に合成された、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドのことを意味する。好ましくは、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、精製されており、すなわち、他の任意のポリペプチドまたはポリヌクレオチドおよび関連する細胞生成物または他の不純物を本質的に含まない。
「アミノ酸」は、一般式:NH−CRH−COOH(側鎖であるRは、Hまたは有機基である)を有する化合物のことを指すために本明細書中で使用される。Rが、有機基である場合、Rは、様々であり得、極性または非極性(すなわち、疎水性)である。以下の省略形が、本願全体を通して使用される:A=Ala=アラニン、T=Thr=トレオニン、V=Val=バリン、C=Cys=システイン、L=Leu=ロイシン、Y=Tyr=チロシン、I=Ile=イソロイシン、N=Asn=アスパラギン、P=Pro=プロリン、Q=Gln=グルタミン、F=Phe=フェニルアラニン、D=Asp=アスパラギン酸、W=Trp=トリプトファン、E=Glu=グルタミン酸、M=Met=メチオニン、K=Lys=リジン、G=Gly=グリシン、R=Arg=アルギニン、S=Ser=セリン、H=His=ヒスチジン。別段示されない限り、用語「アミノ酸」は、本明細書中で使用されるとき、上記の一般式をなおも保持するアミノ酸誘導体も含む。
ヌクレオチドは、有機塩基に連結されたペントース(RNAではリボース、およびDNAではデオキシリボース)にリン酸エステル結合によって連結されたリン酸基からなる。核酸のモノマー単位が、ヌクレオチドである。天然に存在するDNAおよびRNAの各々は、4種の異なるヌクレオチドを含む:アデニン、グアニン、シトシンおよびチミン塩基を有するヌクレオチドは、天然に存在するDNAに見られ、アデニン、グアニン、シトシンおよびウラシル塩基を有するヌクレオチドは、天然に存在するRNAに見られる。塩基のアデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルは、それぞれA、G、C、TおよびUと省略されることが多い。
ヌクレオチドには、遊離型の一リン酸、二リン酸および三リン酸の形態(すなわち、リン酸基が、それぞれ1、2または3つのリン酸部分を有する)が含まれる。したがって、ヌクレオチドには、リボヌクレオシド三リン酸(例えば、ATP、UTP、CTGおよびGTP)およびデオキシリボヌクレオシド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dITP、dGTPおよびdTTP)ならびにそれらの誘導体が含まれる。また、ヌクレオチドには、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITPおよびddTTPを含むddNTP)およびその誘導体が含まれる。
「実質的に類似」は、所与の核酸配列またはアミノ酸配列が、参照配列と少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおもより好ましくは少なくとも95%の同一性を共有することを意味する。さらに、保存された領域において保存的置換だけが行われたタンパク質を記載するかまたはコードする配列だけが、全体的に実質的に類似である。好ましい実質的に類似の配列は、そのポリペプチド特有の活性も保持する。保存的置換に代表的に見られる置換は、脂肪族アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIleの間の互いの置き換え;ヒドロキシル残基SerとThrとの交換、酸性残基AspとGluとの交換、アミド残基AsnとGlnとの間の置換、塩基性残基LysとArgとの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置き換えである。
「プロモーター」とは、本明細書中で使用されるとき、RNAポリメラーゼによる転写の開始を媒介する、DNA内の配列のことを指す。転写プロモーターは、以下のようないくつかの異なる配列エレメントの1つ以上を含み得る:1)転写開始部位に存在する配列エレメント;2)転写開始部位の上流に存在する配列エレメント、および;3)転写開始部位の下流の配列エレメント。個別の配列エレメントは、RNAポリメラーゼ、およびDNA上のRNAポリメラーゼの位置決めを促す転写因子が結合する、DNA上の部位として機能する。
本明細書中で使用されるとき、用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)とは、クローニングまたは精製なしにゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントの濃度を高めるための方法のことを指す。例えば、PCRおよびその進展の概要を提供しているBartlettら、Methods Mol.Biol.226:3−6(2003)を参照のこと。標的配列を増幅するためのこのプロセスは、代表的には、大過剰の2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを、所望の標的配列を含むDNA混合物に導入した後の、DNAポリメラーゼの存在下における正確な配列の熱サイクル反応からなる。2種類のプライマーは、二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅をもたらすために、その混合物を変性させ、次いで、プライマーを、標的分子内のそれらの相補的配列にアニールさせる。アニールの後、新しい相補鎖の対が形成されるように、ポリメラーゼを用いてプライマーを伸長させる。変性、プライマーのアニールおよびポリメラーゼ伸長の工程を多数繰り返すことにより、所望の標的配列の高濃度の増幅されたセグメントを得ることができる。別段述べられない限り、PCRは、本明細書中で使用されるとき、PCRの変形(例えば、対立遺伝子特異的PCR、非対称PCR、ホットスタートPCR、ライゲーション媒介性PCR、多重PCR、逆転写PCRまたは当業者に公知の他の任意のPCR変形)も含む。
本明細書において使用されるとき、請求項の移行句におけるか本体におけるかに関係なく、用語「〜を含む(comprise(s))」および「〜を含む(comprising〜)」は、限度を設定しない意味を有すると解釈されるべきである。すなわち、これらの用語は、句「〜を少なくとも有する」または「〜を少なくとも含む」と同意語として解釈されるべきである。プロセスの文脈において使用されるとき、用語「〜を含む」は、そのプロセスが、列挙される工程を少なくとも含むが、追加の工程を含んでもよいことを意味する。化合物または組成物の文脈において使用されるとき、用語「〜を含む」は、その化合物または組成物が、列挙される特徴または構成要素を少なくとも含むが、追加の特徴または構成要素も含んでもよいことを意味する。
「融合タンパク質」とは、本明細書中で使用されるとき、共有結合された少なくとも2つの異種ポリペプチドを有するタンパク質のことを指し、ここで、一方のポリペプチドは、1つのタンパク質配列またはドメインに由来し、他方のポリペプチドは、第2のタンパク質配列またはドメインに由来する。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質
本発明は、安定化タンパク質に接続された耐熱性逆転写酵素を含む安定化された逆転写酵素融合タンパク質を提供する。多くの実施形態において、耐熱性逆転写酵素は、リンカーペプチドを介して安定化タンパク質に接続される。しかしながら、耐熱性逆転写酵素および安定化タンパク質は、互いに直接融合され得る。融合タンパク質を構成するポリペプチドは、好ましくは、N末端とC末端とが連結される。しかしながら、この逆転写酵素および安定化タンパク質は、いずれかの順序で共に接続され得る。例えば、この2つのペプチド配列は、C末端からN末端に、またはN末端からC末端に接続され得る。いくつかの実施形態において、リンカーペプチドは、逆転写酵素および安定化タンパク質の接続性のC末端とN末端との間に含められる。
安定化タンパク質を耐熱性逆転写酵素に付着することによって、1つ以上の利点がもたらされ得る。安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、以下の利点のうちの1つ以上を有し得る:(a)高温での高い安定性;(b)高い処理能力、(c)高い溶解性、および/または(d)高い忠実度。いくつかの実施形態において、本発明の逆転写酵素は、上に列挙された複数の特性を有し得る。例えば、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、高い熱安定性かつ高い忠実度を有し得る。これらの利点は、時折、互いに由来することがある。例えば、高い溶解性をもたらすことによって、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、以前は不溶性だった高い忠実度の耐熱性逆転写酵素を可溶化した結果として、高い忠実度の転写をもたらすことができる生成物を提供することができる。融合タンパク質において安定化タンパク質を使用することによって、タンパク質発現の増加およびタンパク質フォールディングの改善などの他の利点ももたらされ得る。安定化タンパク質と耐熱性逆転写酵素との間にリンカーペプチドを含めることによって、これらの利点がさらに向上し得る。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、本明細書中に記載されるように、耐熱性逆転写酵素および安定化タンパク質を含む。安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、リンカーペプチドも含み得る。例えば、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、図1〜5に示されるそれぞれ配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10に示されるようなアミノ酸配列を有し得る。あるいは、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10に示されるような配列の1つ以上と実質的に類似であるアミノ酸配列を有し得る。配列6〜10によって提供される融合タンパク質と「実質的に類似」である安定化された逆転写酵素融合タンパク質のアミノ酸配列は、少なくとも85%の同一性、より好ましくは90%の同一性、なおもより好ましくは95%の同一性を共有し、保存された領域において保存的なアミノ酸置換だけを含み得る。
耐熱性逆転写酵素
本発明は、耐熱性逆転写酵素を含む逆転写酵素融合タンパク質を提供する。用語「逆転写酵素」(すなわち、RNA依存性DNAポリメラーゼ)とは、逆転写酵素活性を有する酵素(すなわち、RNA鋳型からのDNAの合成を触媒する酵素)の群のことを指す。一般に、そのような酵素としては、レトロウイルスの逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素および細菌の逆転写酵素(例えば、グループIIイントロン由来逆転写酵素)ならびにそれらの変異体、バリアントまたは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。細菌の逆転写酵素の例としては、Lactococcus lactis逆転写酵素、Thermosynechococcus elongatus逆転写酵素またはGeobacillus stearothermophilus逆転写酵素が挙げられる。さらなる細菌の逆転写酵素は、多くのクラスの逆転写酵素(すなわち、とりわけ、レトロン(retrons)、グループIIイントロンおよび多様性を生み出すレトロエレメント)を記載している、Simonら、Nucleic Acids Research,36,p.7219−29(2008)およびKojima and Kanehisa,Molecular Biology and Evolution,25,p.1395−04(2008)によって記載されている。逆転写酵素は、主に、RNAをcDNAに転写するために使用されており、次いで、そのcDNAは、さらなる操作のためにベクターにクローニングされ得るか、または様々な増幅方法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、転写媒介性増幅(TMA)、自家持続配列複製(3SR)、多様なプライマー伸長反応、5’RACE、化学修飾の検出、またはRNA鋳型を用いたDNAの合成を必要とする他の手法)において使用され得る。
用語「耐熱性」とは、酵素またはタンパク質(例えば、逆転写酵素)が熱による失活に抵抗性である能力のことを指す。代表的には、そのような酵素は、高温環境において生育するように進化した好熱性生物(すなわち、好熱菌)から得られる。好熱菌は、本明細書中で使用されるとき、最適成長温度が45℃以上であり、代表的な最高成長温度が70℃以上の生物である。一般に、耐熱性酵素は、中温性生物由来の酵素などの代表的な酵素よりも熱失活に対して抵抗性である。したがって、耐熱性逆転写酵素の核酸合成活性は、熱処理によってある程度低下し得るが、中温性生物由来の逆転写酵素に対して起きるほどではない。「耐熱性」とは、38℃超、好ましくは、約38〜100℃、より好ましくは、約40〜81℃の温度において活性である酵素のことも指す。特に好ましい温度範囲は、約45℃〜約65℃である。
いくつかの実施形態において、耐熱性逆転写酵素は、核酸合成混合物中において90℃で30秒間加熱した後に、その核酸合成活性の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%)を保持する。対照的に、代表的な逆転写酵素は、高温では機能せず、そのような熱処理の後は核酸合成活性のほとんどが失われる。また、耐熱性逆転写酵素は、代表的には、より高い最適な核酸重合温度を有する。
いくつかの逆転写酵素は、耐熱性であり、ゆえに、PCRに基づく核酸合成において通常使用される温度では実質的に活性のままである。このことにより、単一の反応環境において逆転写とDNA増幅の両方を行うことができるという利点がもたらされる。そのような温度は、pH、鋳型およびプライマーのヌクレオチド組成、プライマーの長さ、ならびに塩濃度を含む反応パラメータに応じて、変動する。耐熱性逆転写酵素としては、Thermosynechococcus elongatus(Te)RT、Geobacillus stearothermophilus(Gs)RT、これらのRTの改変型、ならびにAvian myoblastosisウイルス(AMV)RT、Moloneyマウス白血病ウイルス(M−MLV)RTおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)RTの操作されたバリアントが挙げられる。高温環境(すなわち、37℃超)に生息する生物から得られる逆転写酵素は、その生物の生息温度および合理的な程度だけ高い温度において安定であると予想することができる。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質における使用に特に適している逆転写酵素のクラスは、グループIIイントロン由来逆転写酵素である。多種多様のグループIIイントロン由来逆転写酵素が知られている。例えば、105個の全長グループIIイントロン由来逆転写酵素を記載している、Mobile Group II IntronsについてのZimmerly Lab Websiteを参照のこと。このウェブサイトの使用法は、Daiら、Nucleic Acids Research,31,p.424−26(2003)によって説明されている。
ある特定の実施形態において、耐熱性逆転写酵素は、グループIIイントロンによってコードされたものである。グループIIイントロンRTは、代表的には、4つの保存されたドメイン:レトロウイルスRTのフィンガーおよびパーム領域を特徴とする7つの保存された配列ブロック(RT1〜7)を含むRTドメイン;レトロウイルスRTのサムドメインに少なくとも部分的に対応するRNAスプライシング活性に必要とされる領域であるXドメイン;DNA標的部位の認識に関与するDNA結合ドメインであるDドメイン;およびDNA標的部位を切断して逆転写用のプライマーを生成するDNAエンドヌクレアーゼドメインであるEnドメインからなる(図12A;Blockerら、RNA 11,14−28,2005)。Enドメインは、いくつかのグループIIイントロンRTにおいて失われており、そのようなグループIIイントロンRTは、Enドメインの代わりに、DNA複製フォークにおける新生鎖を使用して、逆転写を惹起する(Zhongら、EMBO J.22,4555−4565,2003)。グループIIイントロンRTのRTドメインおよびX/サムドメインは、N末端の伸長、N末端の追加の保存された配列ブロック(RT−0)、ならびにRTドメインおよびX/サムドメインにおける保存された配列ブロック間への挿入(これらのうちのいくつかは、非LTR−レトロトランスポゾンRTと共有される)に起因して、レトロウイルスRTのそれよりも大きい。そのグループIIイントロンRTおよび関連RTのより大きいサイズのRTドメインおよびサムドメインによって、逆転写中により高い処理能力および忠実度をもたらす鋳型RNAのより堅固な結合が可能となることが示唆されている。グループIIイントロンRTは、レトロウイルスRTとは異なり、RNaseHドメインを欠き、代表的には、非常に低いDNA依存性DNAポリメラーゼ活性しか有しない(Smithら、Genes and Development 19,2477−2487,2005)。
グループIIイントロンは、セルフスプライシング反応について知られているRNAのクラスをコードする。ある特定のインビトロ条件下において、グループIIイントロンによってコードされるRNAは、タンパク質の助けなしに、前駆体mRNAから自身を切除し、隣接エキソンをライゲートすることができる。このスプライシング反応のメカニズムは、核のプレmRNAイントロンのスプライシングと似ている。いくつかのグループIIイントロンは、逆転写酵素(RT)のオープンリーディングフレーム(ORF)もコードし、活性で可動性のエレメントである。そのORFは、代表的には、グループIIイントロンによってコードされるRNAのドメインDIVに見られる。グループIIイントロンRTは、触媒的に活性なRNA構造を安定化することによってRNAスプライシングを補助し、次いで、「レトロホーミング」と呼ばれるプロセスによるイントロンの可動性を促進するリボ核タンパク質(RNP)において、切除されたイントロンRNAに結合した状態である。RNP内の切除されたイントロンRNAがDNA標的部位に直接挿入され、RTによって逆転写されるメカニズムによって、レトロホーミングは生じる。グループIIイントロンが適切なDNA配列を標的にすることをそのイントロンが促進するレトロホーミングにおいて、グループIIイントロンRTは、代表的には2〜2.5kb長であり、高度に安定かつコンパクトな二次構造および三次構造に折り畳まれる、そのイントロンRNAの正確なcDNAコピーを生成しなければならない。したがって、グループIIイントロンRTは、その生物学的機能を果たすために、高い処理能力および忠実度を有さなければならない。グループIIイントロン由来RTはまた、RNaseH活性を欠くが、このことは、RNaseHが、RNA:DNAハイブリッドのRNAを特異的に分解し、任意のRNAのただ1回のコピーを許容し、全長cDNAの収量を減少させ得るので、有益であり得る。
今までに評価されたグループIIイントロン由来逆転写酵素に基づくと、これらのRTは、代表的には、比較的高い忠実度および高い処理能力を示す。逆転写の忠実度とは、RNAからDNAへの逆転写中のヌクレオチドの取り込みの信頼性のことを指し、より高い忠実度は、より少ない数の誤り(例えば、誤取り込み)でヌクレオチドが複製されることである。より高い特異性は、より長くより特異的なプライマーを使用すること(より高い温度において逆転写を行う能力を必要とする)によってもたらされ得る。例えば、グループIIイントロン逆転写酵素は、2.0×10−5以下のエラー頻度で逆転写することができ、ここで、エラー頻度は、誤りなしで生じるヌクレオチド複製事象の数に対して生じるヌクレオチドの写し違いの割合である。高い忠実度の転写の他の例としては、1×10−4、7.5×10−5、5×10−5、2.5×10−5、1×10−5および5×10−6というエラー頻度が挙げられる。グループIIイントロン由来RTの高い忠実度のさらなる説明については、Conlanら、Nucleic Acids Research,33,p.5262−70(2005)を参照のこと。
適当なグループII由来イントロン逆転写酵素の例としては、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に示される逆転写酵素が挙げられ、それらは、Thermosynechococcus elongatus(TeI4c、fおよびh)およびGeobacillus stearothermophilus(GsI1およびGsI2)から得られる。これらの配列は、図1〜5に示されている。本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に示されるものと実質的に類似のグループIIイントロン由来逆転写酵素も含む。配列1〜5によって提供される逆転写酵素と「実質的に類似」である逆転写酵素は、少なくとも85%の同一性、より好ましくは90%の同一性、なおもより好ましくは95%の同一性を共有し、保存された領域に保存的なアミノ酸置換だけを含み得る。いくつかのグループIIイントロン由来RTの熱安定性は、図11に示されており、図11は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に示されるような逆転写酵素を含む安定化された逆転写酵素融合タンパク質が、図11に示されるように評価されたときにそれが融合タンパク質の一部であるか否かに関係なく、中温性のLl.LtrB逆転写酵素よりも高い熱安定性を有することを証明している。中温性のLl.LtrBは、単独で、または融合タンパク質の一部として、約35℃という最適温度を示した。
本明細書中で述べられるように、耐熱性グループIIイントロン由来RTの改変型もまた使用され得る。例えば、配列番号3のTeI4hRTは、天然型の逆転写酵素ではないが、活性部位がアミノ酸配列YAGDからアミノ酸配列YADDに改変されることにより、他の活性なグループIIイントロン由来RTの活性部位により似ている誘導体である。
所与のアミノ酸配列が参照配列と「実質的に類似」である量は、例えば、Tatusovaら(FEMS Microbiology Letters,174,p.247−50(1999))によって記載されているような、National Center for Biotechnology InformationのウェブサイトのMolecular DatabaseセクションのBLASTの項目下においてワールドワイドウェブ上で利用可能なBLAST2検索アルゴリズムのBlastpプログラム,バージョン2.2.10などの配列解析ソフトウェアを用いて配列情報を比較することによって測定され得る。好ましくは、行列=BLOSUM62;オープンギャップペナルティ=11、伸長ギャップペナルティ=1、ギャップx_ドロップオフ=50、期待値=10、ワードサイズ=3および必要に応じてフィルターオンをはじめとした、すべてのBLAST2検索パラメータに対してデフォルトの値を使用する。BLAST検索アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列を比較する際、構造的類似性は、「類似性」と呼ばれ、同一性は、「同一性」と呼ばれる。
アミノ酸の同一性は、候補ポリペプチドと参照アミノ酸配列との比較において定義され、2つのアミノ酸配列(すなわち、候補アミノ酸配列および参照アミノ酸配列)の長さにわたって同一のアミノ酸の数を最適化するようにその配列の残基をアラインメントすることによって測定される;同一のアミノ酸の数を最適化するためにアラインメントを行う際に一方または両方の配列にギャップが許容されるが、各配列のアミノ酸は、適切な順序のままでなければならない。
グループIIイントロン由来逆転写酵素についての構造と機能の相互関係を裏付ける情報が入手可能である。例えば、細菌の逆転写酵素のRTドメインを分類し、アラインメントしているSimonら、Nucleic Acids Research,36,p.7219−29(2008)、ならびに7つの保存されたドメインおよび42個の保存された位置を示す82個のRT配列のアラインメントを提供しているXiongら、EMBO J.,9,p.3353−62(1990)を参照のこと。Lactococcus lactis Ll.LtrBイントロンRT(LtrAタンパク質)の3次元モデルを提供しており、タンパク分解性の切断部位および保存された領域を記載しており、かつHIV−1 RTに対するLtrAの配列アラインメント解析を提供している、Blockerら、RNA,11,p.14−28(2005)もまた参照のこと。したがって、配列番号6〜10に示されているものと実質的に類似である種々の安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、保存された領域の外側のアミノ酸の改変、および保存された公知の領域内のアミノ酸の保存的改変のみによって容易に得ることができる。
1つの実施形態において、本発明は、高温、すなわち、37℃超において、対応する未結合逆転写酵素の半減期よりも長い半減期を有する、逆転写酵素活性を有する安定化された逆転写酵素融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の逆転写酵素の半減期は、50℃において5分以上、好ましくは10分以上であり得る。いくつかの実施形態において、本発明の逆転写酵素は、約25分と等しいかまたはそれより長い半減期、好ましくは、約50分と等しいかまたはそれより長い半減期、より好ましくは、約100分と等しいかまたはそれより長い半減期、最も好ましくは、約200分と等しいかまたはそれより長い半減期(例えば、50℃において)を有し得る。
安定化タンパク質
本発明の安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、安定化タンパク質も含む。安定化タンパク質は、本明細書中で定義されるとき、融合タンパク質の全体的な安定性を高めるように機能する、融合タンパク質の一部を形成するタンパク質である。安定性には、タンパク質がそのコンフォメーションおよび活性を保持する能力が含まれる。さらに、安定化タンパク質は、好ましくは、溶解性向上タンパク質に関して本明細書中でさらに記載されるように、融合タンパク質の溶解性を向上する。これは、発現が不十分であり、通常RNPにおいて堅固に結合されているイントロンRNAの非存在下では不溶性であると見出されているグループIIイントロンRTに関して特に有益であり得る(Velloreら、Appl.Environ.Microbiol.70,7140−7147,2004;Ngら、Gene 393,137−144,2007)。有効な安定化タンパク質は、独立したフォールディングドメインを含むタンパク質、および/またはタンパク質が凝集する性質に影響し得るミスフォールドした長命の中間体に折り畳まれないタンパク質を含む。独立したフォールディングドメインを提供し得るタンパク質は、Janinら、Progress in Biophysics and Molecular Biology,42,p.21−78(1983)によって記載されており、ミスフォールドした長命の中間体に折り畳まれないタンパク質は、Idiculaら、Protein Science,14,p.582−592(2005)によって記載されている。例えば、安定化タンパク質は、50以上のアミノ酸を含むタンパク質であり得る。他の実施形態において、安定化タンパク質は、100以上のアミノ酸を含む、より大きなタンパク質であり得る。本明細書中に提供されるマルトース結合タンパク質およびNusAタンパク質によって例証されるように、安定化タンパク質はまた、約250アミノ酸〜約400アミノ酸のサイズを有し得る。安定化タンパク質は、耐熱性タンパク質でもあり得る。
安定化タンパク質は、親和性タンパク質でもあり得るか、または親和性タンパク質を含み得る。親和性タンパク質という用語は、本明細書中で使用されるとき、そのタンパク質に対して高い結合定数(すなわち「親和性」)を示す容易に入手可能なリガンドが存在するタンパク質のことを指す。親和性タンパク質は、親和性タグの役割として使用されることが多い。当業者に公知であるように、親和性タンパク質は、親和性精製(タグがアフィニティーカラム内のリガンドに結合する)などの手法によって、親和性タンパク質に接続されたかまたは融合されたタンパク質の精製を促進するために、融合タンパク質において提供され得る。適当な親和性タンパク質は、当該分野で公知である。例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、FLAGタグペプチド、ビオチンアクセプターペプチド、ストレプトアビジン結合ペプチドおよびカルモジュリン結合ペプチドをはじめとしたいくつかの適当な親和性タンパク質を記載しているWaugh,D.,Trends in Biotechnology,23,p.316−320(2005)を参照のこと。親和性タンパク質を含む融合タンパク質の調製および使用については、例えば、米国特許第5,643,758号、同第5,654,176号および同第7,001,745号を参照のこと。
安定化タンパク質はまた、溶解性向上タンパク質でもあり得る。組換え的に発現された融合タンパク質は、宿主細胞および/またはその後の応用方法において、低い溶解性を示し得るが、それは、水性環境における融合タンパク質の溶解性を実質的に高める溶解性向上タンパク質をその融合タンパク質に含めることによって改善され得る。使用されるいくつかの溶解性向上タンパク質は、親和性タンパク質でもあり、ゆえに、溶解性向上親和性タンパク質と記載され得る。溶解性向上タンパク質の例としては、アラビノース結合タンパク質、キチン結合タンパク質、セルロース結合タンパク質およびマルトース結合タンパク質などの糖結合タンパク質が挙げられる。溶解性向上タンパク質の他の例としては、Novagen(登録商標)によって提供されるNusAおよびDsb溶解性タグ、ならびにInvitrogenTMによって提供される溶解性向上タグ(SET)が挙げられる。Harrisonが、NusA溶解性タグによって提供される非常に高い溶解性を証明しており、Collins−Racieが、Dsbの溶解性の向上を報告している。Harrison,R.G.,inNovations,11,p.4−7(2000)およびCollins−Racieら、Biotechnology,13,p.982−87(1995)を参照のこと。
いくつかの実施形態において、溶解性向上タンパク質または親和性タンパク質などの安定化タンパク質は、それらの性能を改善するために改変され得る。改変は、そのタンパク質の正常な野生型配列と比べて、安定化タンパク質のタンパク質配列内のアミノ酸の1つ以上の置換、付加または欠失を提供することを含み得る。例えば、親和性タンパク質または溶解性向上タンパク質などの安定化タンパク質は、そのタンパク質のある特定の領域において荷電アミノ酸を無荷電アミノ酸で置き換えることによって改変され得る。荷電アミノ酸は、正または負に帯電した側鎖を有するアミノ酸を含む。正に帯電した側鎖を有するアミノ酸の例としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。負に帯電した側鎖を有するアミノ酸の例としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸などが挙げられる。無荷電アミノ酸としては、アラニン、セリン、トレオニン、グルタミン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、マルトース結合タンパク質は、荷電アミノ酸の1つ以上をアラニンで置き換えることによって改変され得る。
適当な親和性タンパク質の例としては、図1〜5に示される配列番号11に示されるマルトース結合タンパク質のアミノ酸配列および配列番号11と実質的に類似の配列が挙げられる。親和性タンパク質の改変は必要ないが、配列番号11に示されるマルトース結合タンパク質は、C末端付近において3つの荷電アミノ酸をアラニンで置き換えることによって改変されたことに注意されたい。別の適当なタンパク質、この場合、可溶化タンパク質は、図18に示される配列番号38に示されるアミノ酸配列を有するN利用物質A(NusA)タンパク質である。本発明のさらなる実施形態において、マルトース結合タンパク質を含む本明細書中に記載される融合タンパク質では、マルトース結合タンパク質がN利用物質Aタンパク質で置き換えられ得る。
リンカーペプチド
いくつかの実施形態において、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、安定化タンパク質と耐熱性逆転写酵素との間に位置するリンカーペプチドも含む。好ましくは、リンカーペプチドは、切断不可能なリンカーペプチドである。「〜の間に位置する」とは、本明細書中の融合タンパク質に関して記載されるとき、リンカーペプチドが、安定化タンパク質および逆転写酵素の各々のNまたはC末端に化学結合(例えば、アミド結合)によって接続されていることを意味する。例えば、リンカーペプチドは、アミド結合を介して、安定化タンパク質のC末端領域および耐熱性逆転写酵素のN末端領域に接続され得る。切断不可能とは、リンカーペプチドが、プロテアーゼによる切断に直ちに感受性でないことを意味する。
追加の実施形態において、リンカーペプチドは、剛性リンカーペプチド;すなわち、比較的非可撓性のペプチドリンカーである。剛性リンカーペプチドは、可撓性を完全に欠くように求められないが、グリシンリッチペプチドリンカーなどの可撓性リンカーペプチドよりも著しく可撓性でない。剛性リンカーペプチドは、可撓性を比較的欠いている結果として、剛性リンカーペプチドによって共に付着された2つのタンパク質ドメイン(この場合には安定化タンパク質および耐熱性逆転写酵素である)の動きが小さくなる。アルファヘリックス構造などの秩序のある鎖を提供するリンカーペプチドは、剛性リンカーペプチドを提供し得る。例えば、アルギニン、ロイシン、グルタメート、グルタミンおよびメチオニンのすべてが、らせん状のリンカーの形成に対して比較的高い傾向を示す。しかしながら、多くのプロリン残基を含む非らせん状リンカーは、同様に著しい剛性を示し得る。剛性リンカーの例としては、ポリリジンおよびポリ−DL−アラニンポリリジンが挙げられる。剛性ペプチドリンカーのさらなる説明は、Wriggersら、Biopolymers,80,p.736−46(2005)によって提供される。さらに、剛性リンカーペプチドは、Georgeら、Protein Engineering,15,p.871−79(2003)によって記載されたリンカーデータベースに記載されている。好ましくは、剛性リンカーペプチドは、切断不可能なリンカーペプチド;すなわち、切断不可能な剛性リンカーペプチドでもある。
比較的短いポリペプチドが、リンカーペプチドとしての用途にとって好ましい。例えば、リンカーペプチドは、1〜20アミノ酸を含み得る。リンカーペプチドは、1〜15、1〜10、1〜5または3〜5アミノ酸も含み得る。リンカーペプチドとして使用され得る特定の配列の例としては、アラニンアミノ酸から形成された、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドおよびペンタペプチドが挙げられる。1つの適当な剛性リンカーペプチドは、AAAAA(配列番号12)であり、別の適当な剛性リンカーペプチドは、AAAEF(配列番号18)である。融合タンパク質においてリンカーペプチド(例えば、剛性リンカーペプチド)を使用することによって、1つ以上の利点がもたらされ得る。例えば、理論に拘束するつもりはないが、剛性リンカーペプチドを使用することにより、融合タンパク質の2つの半分の動きの量が互いに比べて減少することによって、融合タンパク質が安定化され得ると考えられる。非常に短い(すなわち、1または2アミノ酸)リンカーを使用することができるが、3〜5アミノ酸を含むリンカーを使用することが好ましい。
リンカーペプチドは、プロテアーゼによって切断可能または切断不可能であり得る。親和性タンパク質は、親和性タンパク質が除去され得るように、切断可能なペプチドを用いて融合タンパク質における別のタンパク質に会合されることが多い。しかしながら、本発明では、安定化タンパク質(例えば、親和性タンパク質)は、本明細書中に記載される理由のために、逆転写酵素に結合したままである。したがって、通常、リンカーペプチドは、切断不可能であることが好ましい。しかしながら、切断可能なリンカーもいくつかの実施形態において使用され得る。例えば、プロテアーゼ切断に感受性の、切断可能な剛性リンカーペプチドを含む切断可能なリンカーは、その後の工程で安定化タンパク質が除去されることが望まれる場合および融合タンパク質の使用中に切断プロテアーゼへの曝露が回避される場合に、使用することができる。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質の使用
本発明は、RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNAおよびmiRNA)からcDNAを調製するための方法も提供し、その方法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)などの他の方法に必要とされる。本明細書中で使用されるとき、用語「RT−PCR」とは、RNA配列の複製および増幅のことを指す。この方法では、逆転写は、例えば、米国特許第5,322,770号に記載されているように、PCRにつなげられる。RT−PCRでは、酵素の逆転写酵素活性に起因して、RNA鋳型をcDNAに変換し、次いで、同じまたは異なる酵素の重合活性を用いて増幅する。
本発明の実施において、cDNA分子は、cDNA分子(一本鎖または二本鎖)を形成する組成物の酵素の作用による核酸分子の逆転写に好ましい条件下で、当該分野で周知の方法を用いて細胞、組織または器官から得られた1つ以上の核酸分子(例えば、RNA)を本発明の組成物と混合することによって、生成され得る。したがって、本発明の方法は、(a)1つ以上の核酸鋳型(好ましくは、1つ以上のRNAまたはmRNA鋳型(例えば、mRNA分子の集団))を、本発明の安定化されたRT融合タンパク質と混合する工程、および(b)その混合物を、1つ以上の核酸鋳型の全部または一部のcDNA合成を可能にするのに十分な条件下でインキュベートする工程を包含する。
1つの局面において、この方法は、(a)プライマーをRNA分子に加える工程、および(b)1つ以上のデオキシリボヌクレオシド三リン酸またはジデオキシリボヌクレオシド三リン酸、および安定化タンパク質に接続された耐熱性逆転写酵素を含む安定化された逆転写酵素融合タンパク質の存在下において、そのRNA分子の全部または一部に相補的なcDNA分子を合成するのに十分な条件下でそのRNA分子をインキュベートする工程を包含する。プライマーをRNA分子に加える工程は、プライマーをRNA分子にハイブリダイズする工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、安定化タンパク質を耐熱性逆転写酵素に接続するリンカーペプチドも含み得る。好ましくは、RNAが実質的に減少した量の妨害性の安定な二次構造または三次構造しか含まない温度範囲内で逆転写が行われる。これは、約45℃〜約81℃の温度であり得、より好ましい温度範囲は、約45℃〜約65℃である。これは、RNAがかなりの量の安定な二次構造または三次構造を形成しない温度範囲とも記載され得る。グループIIイントロン由来RTの高い忠実度および他の利点に起因して、それらを使用することが、好ましい場合がある。例えば、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と実質的に類似のアミノ酸配列同一性を有するグループIIイントロン由来逆転写酵素を含み得、切断不可能なリンカーは、1〜20アミノ酸からなり、安定化タンパク質は、溶解性向上タンパク質または親和性タンパク質を含む。また、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、安定化ペプチドと逆転写酵素との間にリンカーペプチド(1〜20アミノ酸の長さを有し得、切断不可能なリンカーであり得るか、または剛性リンカーであり得る)も含み得る。この方法の実施形態は、2.0×10−5以下のエラー頻度で逆転写を行い得る。特に、約45℃〜約65℃の温度において。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、他の用途でも使用され得る。例えば、安定化されたRT融合タンパク質は、差次的に発現されたmRNAの5’末端のクローニング;rapid amplification of cDNA ends(RACE)と呼ばれるプロセス、およびRNAリガーゼ媒介性RACE(RLM−RACE)などのそのバリエーションに使用され得る。安定化されたRT融合タンパク質は、RNAにおけるケミカルフットプリント法のマッピング、ディファレンシャルディスプレイRT−PCR(細胞集団内の遺伝子発現の解析を可能にするもの)および医学診断用インサイチュPCRにも使用され得る。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質の調製
安定化された逆転写酵素融合タンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターは、組換え宿主細胞における安定化された逆転写酵素融合タンパク質の高レベル発現のために使用され得る。発現ベクターとしては、クローニングベクター、改変クローニングベクター、特異的に設計されたプラスミド、またはウイルスが挙げられ得るが、これらに限定されない。適切な細胞型において組換え安定化された逆転写酵素融合配列を発現させるために種々の発現ベクターが使用され得る。例えば、細菌ベクター、哺乳動物ベクター、真菌ベクターおよび昆虫ベクターが、それぞれ細菌、哺乳動物細胞、真菌細胞および昆虫細胞における発現のために使用され得る。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現することができるヌクレオチド配列を得て、次いで、そのヌクレオチド配列を宿主細胞において発現させることによって調製され得る。次いで、宿主細胞によって発現された安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、宿主細胞の性質に部分的に応じて、当業者に公知の種々の手法を用いて精製され得る。
本発明の安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現することができるヌクレオチド配列は、当業者に公知の種々の方法を用いて調製され得る。例えば、そのヌクレオチド配列は、本明細書中の実施例1に記載されるように、様々なリンカー、逆転写酵素および安定化タンパク質が結合されている組換えプラスミドを用いて調製され得る。
本発明は、安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現することができる核酸分子を含むベクターで形質転換されたかまたはトランスフェクトされた宿主細胞にも関する。組換え宿主細胞は、原核生物または真核生物であり得、それらとしては、大腸菌などの細菌、酵母などの真菌細胞、哺乳動物細胞(ウシ、ブタ、サルおよびげっ歯類起源の細胞株が挙げられるがこれらに限定されない);および昆虫細胞(ショウジョウバエおよびカイコ由来細胞株が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない。そのような組換え宿主細胞は、安定化された逆転写酵素融合タンパク質または生物学的に等価な形態を生成するのに適した条件下で培養され得る。本明細書中で定義されるとき、用語「宿主細胞」は、トランスジェニック人間の身体、ヒト胎児またはヒト胚における宿主細胞を含まないと意図される。
上で述べたように、安定化された逆転写酵素融合タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターは、組換え宿主細胞における安定化された逆転写酵素融合タンパク質の発現のために使用され得る。ゆえに、本発明の別の局面は、組換え宿主細胞において安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現させるためのプロセスであり、そのプロセスは:(a)安定化された逆転写酵素融合タンパク質をコードするヌクレオチドの配列を含む核酸を含むベクターを適当な宿主細胞に導入する工程(その安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、直接またはリンカーを介して安定化タンパク質に接続された耐熱性逆転写酵素を含む)および(b)その宿主細胞を、安定化された逆転写酵素融合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程を包含する。安定化された逆転写融合タンパク質は、耐熱性逆転写酵素および安定化タンパク質を接続するリンカーペプチドを含むなどの本明細書中に記載される特徴のいずれかを備えるように様々であり得る。
宿主細胞において安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現させた後、その安定化された逆転写酵素融合タンパク質を回収することにより、精製された安定な逆転写酵素融合タンパク質が得られ得る。いくつかのタンパク質精製手順が、利用可能であり、使用に適している。例えば、本明細書中に提供される実施例2を参照のこと。組換えタンパク質は、塩分画(salt fractionation)、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイト吸着クロマトグラフィおよび疎水性相互作用クロマトグラフィの様々な組み合わせまたは個別の適用によって、細胞の溶解産物および抽出物から精製され得る。本発明のいくつかの実施形態では、親和性タグの使用によって、タンパク質の精製が促進され得る。例えば、安定化された逆転写酵素融合タンパク質は、融合タンパク質の逆転写酵素部分または安定化タンパク質部分に特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて作製されたイムノアフィニティーカラムを使用することによって、他の細胞タンパク質から分離され得る。加熱を用いることによって、高温で安定でないがゆえに沈降する宿主タンパク質から安定化された逆転写酵素融合タンパク質を分離することができる。
安定化されたRT融合タンパク質を発現することができる核酸は、宿主細胞においてその融合タンパク質を効率的に発現するように設計された配列を含む発現カセット中に組み立てられ得る。そのカセットは、好ましくは、安定化された逆転写酵素融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結された、プロモーターなどの関係する転写調節配列および翻訳調節配列、ならびに終止配列とともに、オープンリーディングフレームを含む。例えば、そのオープンリーディングフレームは、それぞれ図1〜5に示されるような配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と実質的に類似のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を含み得る。好ましい実施形態において、プロモーターは、大腸菌における発現用のT7またはtacプロモーターであるが、当業者は、他のいくつかの公知のプロモーターのいずれかを使用してもよいことを認識するだろう。大腸菌は、rho非依存性ターミネーターおよびrho依存性ターミネーターも有し、迅速なDNA複製のためにT7ポリメラーゼを使用することができる。真核細胞では、ポリアデニル化部位を含むことが、mRNAの適正なプロセシングの助けになる。
上記オープンリーディングフレームは、それぞれ図6〜10に示されているような配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号17に示されるようなポリヌクレオチド配列も含み得る。あるいは、上記オープンリーディングフレームは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号17に示されるポリヌクレオチド配列と実質的に類似のポリヌクレオチド配列を含み得る。この特定の文脈において、用語「実質的に類似」とは、同じアミノ酸をコードするコドンが交換可能に使用されて、そのヌクレオチド配列が、なおも配列番号6〜10に対応するアミノ酸配列の翻訳をもたらし得る、ヌクレオチド配列のバリアントのことを指す。安定化された逆転写酵素融合タンパク質のオープンリーディングフレームポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号17からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性または少なくとも約98%の同一性を有する。
ヌクレオチドの同一性は、候補安定化された逆転写酵素融合タンパク質のオープンリーディングフレームと、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号17からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列との比較において定義され、それらの配列の長さにわたって同一ヌクレオチドの数を最適化するようにその2つのポリヌクレオチドの残基をアラインメントすることによって判定される;共有されるヌクレオチドの数を最適化するために、アラインメントを作成する際に一方または両方の配列にギャップが許容されるが、それでもなお、各配列におけるヌクレオチドは、適切な順序のままでなければならない。好ましくは、2つのヌクレオチド配列は、Tatusovaら(FEMS Microbiology Letters,174,p.247−50(1999))によって記載されているような、また、National Center for Biotechnology InformationのウェブサイトのMolecular DatabaseセクションのBLASTの項目下においてワールドワイドウェブ上で利用可能な、BLAST2検索アルゴリズムのBlastnプログラムを用いて比較される。好ましくは、マッチリワード(reward for match)=1、ミスマッチペナルティ=−2、オープンギャップペナルティ=5、伸長ギャップペナルティ=2、ギャップ×ドロップオフ=50、期待値=10、ワードサイズ=11および必要に応じてフィルターオンをはじめとした、すべてのBLAST2検索パラメータに対するデフォルトの値を使用する。BLAST検索アルゴリズムを用いて2つのヌクレオチド配列を比較する際、ヌクレオチドの同一性は、「同一性」と呼ばれる。
ヌクレオチド配列からのタンパク質の調製に関して、可能性のある4種類のヌクレオチド塩基の「トリプレット」コドンが、60を超えるバリアント型として存在し得ることに注意されたい。これらのコドンは、たった20種類の異なるアミノ酸に対するメッセージ(ならびに転写の開始および終結)しか提供しないので、いくつかのアミノ酸は、2つ以上のコドンによってコードされ得、この現象は、コドン冗長性として知られる。したがって、安定化された逆転写酵素融合タンパク質の特定のアミノ酸配列を調製するために使用されるヌクレオチド配列は、使用される特定のコドンに応じて、かなり変動し得る。完全に理解されていない理由により、別のコドンは、異なるタイプの細胞の内在性DNAに均一に存在せず、ある特定のタイプの細胞では、ある特定のコドンに対する自然の階層または「優先度」が存在する。したがって、いくつかの実施形態において、安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現させるために使用されるコドンの選択は、より高いレベルの発現をもたらす特定のコドンを使用することによって最適化され得る。
本発明によれば、安定化された逆転写酵素融合タンパク質の発現カセットがベクターに挿入される。このベクターは、好ましくは、プラスミドまたはアデノウイルスベクターであるが、プロモーターに連結された線形DNAまたは他のベクター(例えば、アデノ随伴ウイルスまたは改変ワクシニアウイルス、レトロウイルスまたはレンチウイルスのベクター)も使用してもよい。特に、大腸菌プラスミドベクターの使用が、好ましい。
安定化された逆転写酵素融合タンパク質を開発するためおよび評価するために、本発明者らによって行われた研究の詳細な説明が、以下に提供される。
MalE融合タンパク質としてのグループIIイントロンRTの発現および精製
不十分にしか働かないタンパク質の発現および溶解性は、時折、マルトース結合タンパク質(MalE)またはN利用物質A(NusA)のような高度に可溶性のタンパク質の融合によって改善され得る(Nallamsettyら、Protein Expression and Purification 45,175−182,2005)。さらに、MalEタグによってアミロースアフィニティークロマトグラフィを介したタンパク質の精製が容易になる。それゆえ、本発明者らは、グループIIイントロンRTが、MalE融合物として発現され、精製され得るかを試験した。はじめに、MalEタグを、発現ベクターpMal−c2tにおいてTEVプロテアーゼで切断可能なリンカーを介して上記RTのN末端に融合した(図12B)。T.elongatusグループIIイントロンRTのうちのいくつかに対するMalE−RT融合タンパク質は、大腸菌において十分発現し、核酸を除去するポリエチレンイミン(PEI)沈殿の後のアミロースアフィニティークロマトグラフィおよびヘパリンSepharoseクロマトグラフィを含む手順によって精製することができた。さらに、精製の直後にアッセイされた未切断のMalE−RT融合タンパク質は、高い耐熱性RT活性を有した。しかしながら、これらのタンパク質の収率は、Thermosynechococcusタンパク質の場合、<0.2mg/lだった。さらに、MalEタグが、TEVプロテアーゼを用いた切断によって除去されたとき、そのRTは、直ちに不溶性の沈殿物を形成した一方、そのタグが未切断で放置された場合、MalE−RT融合タンパク質は、RT活性を失い続け、氷上で保存されるかまたは50%グリセロール中で急凍されたときであっても数日中に分解された。溶解性タグの存在下で正しく折り畳まれたタンパク質は、そのタグが切断された後も溶解性のままの傾向があるので(Nallamsettyら、Protein Expression and Purification 45,175−182,2005)、後者の知見は、驚くべきものだった。付着されたMalEタグを有するときは活性であるが有しないときは活性でなかったグループIIイントロンRTは、例外と思われる。この安定化タンパク質が耐熱性逆転写酵素に付着されたままでなければならないという知見は、安定化タンパク質が、耐熱性逆転写酵素を溶解性かつ活性に維持する際に積極的な役割を果たすことを示唆する。
これらの困難を克服するために、本発明者らは、グループIIイントロンRTが、切断不可能な剛性リンカーを介してMalEタグをこのタンパク質に付着することによって活性型で安定化され得るかを試験した。そのようなMalEとの剛性融合物は、代表的には、荷電アミノ酸残基をアラニンで置き換えるというMalEタグのC末端における変更とともに、3〜5個のアラニン残基のリンカー領域を有する(Smythら、Genes and Development 19,2477−2487,2003)。これらの剛性融合リンカーは、コンフォメーションの不均一性を減少させ、構造決定のための、リンカーが付着した状態でのタンパク質の結晶化を可能にした(Smythら、同文献)。ここで試験されたMalE−RF−RT融合物について、pMal−c2t TVDEALKDAQTNS10LENLYFQGEF(配列番号19)のMalE/リンカー領域を、TVDAALAAAQTAAAAA(配列番号20)に改変し、それをMalE−RF(剛性融合)タグと称した(図12B)。
MalE−RFタグが、グループIIイントロンRTの活性に影響するか否かを迅速に評価するために、本発明者らは、MalE−RF−RTが、インビボにおいてレトロホーミングを支持し得るか否かを試験した。最初の試験では、選択されたRTは、L.lactis Ll.LtrBイントロンによってコードされるLtrAタンパク質、および耐熱性T.elongatus TeI4hイントロンによってコードされるRTの活性化された誘導体であるTeI4hRTだった。37℃でのレトロホーミングアッセイでは、MalE−RF−LtrAタンパク質は、天然LtrAに対する86%と比べて、20%という効率でレトロホーミングを支持したのに対し、48℃でのレトロホーミングアッセイでは、MalE−RF−TeI4hタンパク質は、非融合TeI4hタンパク質に対する100%と比べて、87%という効率でレトロホーミングを支持した;表1を参照のこと。このように、著しいことに、両方のMalE−RF−RTが、付着されたマルトース結合タンパク質の剛性リンカー配列が存在するにもかかわらず、高いがいくらか低下した効率でレトロホーミングを支持する能力を保持する。これらの知見から、これらのタンパク質が、RT活性、RNAスプライシング活性およびDNAエンドヌクレアーゼ活性をはじめとしたレトロホーミングに必要とされるすべての活性を実質的なレベルで保持することが暗示される。この可動性アッセイは、活性なグループIIイントロンRTに対する簡便なスクリーニングを提供する。
Ll.LtrBイントロン(LtrAタンパク質)(Guoら、Science 289,452−457,2000,Karbergら、Nature Biotech.19,1162−1167,2001)およびTeI4hについて以前に記載されているように、レトロホーミングアッセイを大腸菌HMS174(DE3)において行った。Capイントロン−ドナープラスミドは、T7lacプロモーターを使用することにより、両脇に短い5’エキソンおよび3’エキソン(それぞれE1およびE2)を伴うΔORFイントロン(I−ΔORF)ならびにDIV内のT7プロモーター、その後に続くRT ORF(これはE2の下流に存在する)を発現する。Ampレシピエントプラスミドは、プロモーターを有しないtet遺伝子の上流にクローニングされる、イントロンに対する標的部位(ライゲートされたE1−E2配列)を含む。示される温度において1時間にわたってIPTG(LtrAおよびMalE−RF−LtrAに対しては0.1mM、ならびにTeI4hおよびMalE−RF−TeI4hに対しては0.5mM)を用いてイントロンの発現を誘導した。T7プロモーターを有するイントロンの標的部位へのレトロホーミングは、tet遺伝子の発現を活性化し、それにより、Tet+Ampコロニーの選択が可能となる。レトロホーミングの効率を、(Amp+Tet)/Ampコロニーの比として算出した。
これらの知見に促されて、本発明者らは、いくつかのグループIIイントロンRTを、ベクターpMal−c2tにおいて剛性リンカーを介してそのタンパク質のN末端に融合されたMalEタグとともに発現するプラスミドを構築した。試験されたRTには、上記プラスミドアッセイを用いてレトロホーミングを支持する能力を予め試験していたいくつかのT.elongatusグループIIイントロンRT、および以前に高収率かつ高活性で精製することが困難だったグループIIイントロンRTに関係する2つのG.stearothermophilusグループIIイントロンRT(Velloreら、Appl.Environ.Microbiol.70,7140−7147,2004;Ngら、Gene 393,137−144,2007)が含まれた。いくつかの構築物において、本発明者らは、精製において全長タンパク質について濃縮するために、さらにC末端His6−タグを付加した。このMalE−RF−RT融合タンパク質を大腸菌において発現させ、核酸のPEI沈殿の後のアミロースアフィニティークロマトグラフィおよびヘパリンSepharoseクロマトグラフィを含む手順によって精製した。C末端His6タグを有する構築物については、さらにNiカラムクロマトグラフィ工程を含めた。それらのタンパク質を、50%グリセロールを含む精製緩衝液に対して透析し、急速冷凍し、−80℃で保存した。最終的なタンパク質調製物は、>95%純粋、0.5〜2.2mg/lの収率で、RT活性は、少なくとも6ヶ月間の貯蔵後に低下しなかった。
RTアッセイ
熱安定性を評価するために、本発明者らは、まず、Thermosynechococcus elongatus由来の融合物MalE−RF−TeI4c、TeI4hおよびTeI4f、ならびにGeobacillus stearothermophilus由来のMalE−RF−GsI1およびGsI2のRT活性を25〜77℃の温度においてアッセイした。これらの最初のアッセイは、鋳型−プライマー基質としてポリ(rA)/オリゴ(dT)42を使用し、高分子量材料への32P−dTTPの重合を定量化することによって行われた。高温でもポリ(rA)鋳型にアニールしたままであるように、比較的長い42ntのdTプライマーを用いた(Tmの計算値=69℃)。N末端MalE−RFタグを有するLtrAタンパク質および有しないLtrAタンパク質を、中温性のRTコントロールとして平行してアッセイした(図11)。LtrAタンパク質は、MalEの剛性融合タグを有しても有しなくても約35℃の至適温度を有したのに対し、他の5つのMalE−RF−RTは、45〜61℃の範囲のより高い至適温度を有した。2つの最も活性かつ耐熱性のRTであるMalE−RF−GsI2およびMalE−RF−TeI4cは、61℃という至適温度を有し、70℃において実質的な活性を保持した(このアッセイは、プライマー−鋳型の塩基対形成の安定性によって制限され得る)。この2つのRTのうち、MalE−RF−TeI4cは、最も高い活性を有し、線形の範囲内に残すために、他のRT(100nM,5分)よりも低いタンパク質濃度(50nM)かつ短い時間(90秒)でアッセイされた。マルトース(10μM〜1mM)を含めること(これは、MalEタグのコンフォメーションに影響し得る)が、RT活性に対してあったとしてもわずかに影響するだけであることが、MalE−RF−TeI4cタンパク質を用いた試験によって示された。
RT活性に対するタグおよびリンカーの変更の影響
タグおよびリンカーの最適な特性を測定するために、本発明者らは、MalE−RF−TeI4c RTのバリアントを構築した。MalE−RT−TeI4c RT(左のバー)およびバリアントタンパク質(右のバー)を精製し、上に記載したようにポリ(rA)/オリゴ(dT)42を用いてRT活性についてアッセイした(図13A)。MalE−RT−TeI4cは、アラニンに変更された3つの荷電アミノ酸残基を含む改変MalEタグ(MalE(mod))およびRTのN末端に連結された5アラニン残基のリンカーを有する。5アラニン残基リンカーが除去されたかまたは1または2アラニン残基に短縮されたバリアントは、改変MalEタグを野生型MalE(MalE(WT))で置き換えたバリアントのような、実質的なRT活性であるが低下したRT活性を有した(図13A)。MalE(WT)タグの後に、TEVプロテアーゼ切断部位が欠失したpMal−c2tリンカーを有するTeI4cのバリアントもまた、実質的なRT活性であるが低下したRT活性を有した(図13A)。野生型MalEタグがTeI4c RTのC末端に付着されたバリアントは、大腸菌において十分に発現せず、これはおそらく、新生TeI4c RTが、MalΕタグの事前の発現なしでは適切に折り畳むことができないことを反映している。最後に、MalΕの代わりにNusA(N利用物質タンパク質)へのN末端の剛性融合を有するバリアントは、実質的な耐熱性RT活性を有した(図13AおよびB)。
cDNA合成に対する温度プロファイル
図14は、耐熱性グループIIイントロンRTのうちの2つ(MalΕ−RF−TeI4cおよびMalE−RF−GsI2)を、55℃で活性であると報告されている商業的に入手可能なRTであるSuperScript III(InvitrogenTM)(Potterら、Focus(Invitrogen Newsletter)25.1,19−24,2003)と比較して、インビトロで転写されたRNA鋳型(その3’末端にDNAプライマーがアニールしたもの)を用いた種々の温度におけるcDNA合成のアッセイを示している。一方の鋳型は、AflIIIで消化されたpBS KS(+)から合成された531ntインビトロ転写物(32P標識された37ntのDNAプライマーがアニールしたもの)であり(図14A〜C)、他方は、32P標識された44ntのDNAプライマーを有する1.2kb kanR RNA(配列番号21;図15に示されるもの)だった(図14D〜E)。この反応物を、示されている温度で30分間インキュベートし、生成物を変性6%ポリアクリルアミドゲルにおける電気泳動によって解析した。各パネルにおいて、上および下のオートラジオグラムは、それぞれ全長産物および伸長されていないかまたは部分的に伸長されたプライマーを含むゲルの一部を示しており、棒グラフは、全長cDNAまで伸長したプライマーのパーセンテージを示している。
531ntのRNA鋳型を用いたとき、MalE−RF−TeI4c RTは、61〜81℃という全長cDNA合成に最適な温度を有した。MalE−RF−GsI2 RTは、37〜69℃の温度で全長cDNAを合成した一方で、SuperScript III RTは、57℃を超える温度で活性を有しなかった(図14A〜C)。1.2kb RNA鋳型を用いたとき、MalE−RF−TeI4cおよびMalE−RF−GsI2 RTは、それぞれ61〜81℃および61〜69℃という至適温度を有し、SuperScript III RTはまた、57℃を超える温度で活性を有しなかった(図14D〜E)。
qRT−PCRによるcDNA合成の解析
ゲル解析に加えて、本発明者らは、qRT−PCRを使用して、1.2kb RNA鋳型を用い、MalE−RF−TeI4cおよびSuperScript III RTによって合成されたcDNAの量を比較した。本発明者らは、まず、50〜75℃の温度において生成された全長cDNAの量を比較した(図16)。qPCR用のcDNAは、鋳型として5×10コピーのkanR RNA、200nM MalE−RT−TeI4cまたは200UのSuperScript III RTを含む反応物中で、6つの異なる温度において30分間合成された。SuperScript IIIを用いた反応は、製造者の仕様書に従って行った。dNTPを除くすべての成分を含む反応混合物を、所望の温度において2分間プレインキュベートし、dNTPを加えることによって開始した。30分後、その反応を、ドライアイス上で直ちに凍結することによって終結した。各cDNA合成の5μlを、TaqMan(登録商標)Gene Expression混合物、ならびにカナマイシンRNAのnt188−257および562−634に位置する2つの順方向、逆方向および二重標識のプライマープローブ混合物を含むqPCR反応に使用した。そのRNAの5’末端に最も近いプライマーセット(nt188−257)を用いたとき、MalE−RF−TeI4c RTに対するサイクル閾値(C)値は、試験されたすべての温度においてSuperScript III RTに対するものよりも著しく低かった(図16)ことから、MalE−RF−TeI4cが、RNA鋳型の5’末端付近まで伸長したcDNAをより多く合成したことが示唆される。特に、合成されたcDNAの量の差は、SuperScript IIIの活性が急速に低下する55〜65℃の温度において最も著明だった。
MalE−RF−TeI4cおよびSuperScript III RTによるcDNA合成の処理能力を比較するために、60および65℃において得られた同じcDNAサンプルを、2つの異なる単位複製配列プライマー/プローブセット:920nt長のcDNAを検出する188−257、および546nt長のcDNAを検出する562−634を用いて解析した(図17)。この場合では、cDNAサンプルに対するサイクル閾値結果を、Novagen(登録商標)二本鎖DNAプラスミドベクターpET9aを用いて得られた検量線に対してプロットすることにより、コピー数当量(copy numbers equivalents)を決定した。188−257単位複製配列プライマー/プローブセットを用いたとき、60℃においてSuperScript RTを用いたときの64,456コピーに対して、972,815コピーが、MalE−RF−4c TeI4c RTを用いたとき検出され(約15倍の差)、その比は、65℃では661に対して732,559に増加した(約1100倍の差)。さらに、両方の温度において、MalE−RF−TeI4c RTでは、2つのプライマーセットによって検出されたcDNAのコピー数にほとんど差が示されないことから、MalE−RF−TeI4c RTが、高処理能力を示唆する、ほぼ全長のcDNAを合成したことが示される。対照的に、SuperScript III RTでは、両方の温度において562−634プライマーセットよりも188−257プライマーセットによって検出されるより長いcDNAの数が少なかったことから、このRTは、RNAの5’末端に達する前に減衰するか、または別途妨害され、より短いcDNAを合成すると示唆される。
TeI4cおよびTeI4hRTによるヌクレオチド取り込みの忠実度
TeI4hおよびTeI4c RT(すなわち、天然のグループIIイントロンRTであって、安定化されたRT融合タンパク質ではない)の固有の忠実度を、大腸菌プラスミドアッセイにおいてレトロホーミングを起こしたイントロンの配列を決定することによって、まず評価した(表2)。37および48℃におけるTeI4h−ΔORFイントロンRNAのレトロホーミングを促進するTeI4hRNAに対する最大エラー頻度は、それぞれ1.6×10−5および4.1×10−6だった。TeI4c RTは、1つのグループIIイントロン(TeI3c)が別のもの(TeI4c)に挿入され、両方のイントロンを効率的に動けるようにし得る配置である、「ツイントロン(twintron)」の外側のイントロンによってコードされる。48℃におけるTeI3cまたはTeI4cのレトロホーミングを促進するTeI4c RTに対する最大エラー頻度は、1.1×10−5および2.2×10−5だった。これらのエラー頻度は、37℃において約10−5という、Ll.LtrBイントロンのレトロホーミングを促進するLl.LtrBイントロンRT(LtrA)に対して以前に推定されたものに匹敵する(Conlanら、Nucl.Acids Res.33,5262−5270,2005)。
示されるイントロンおよびRTを発現するドナープラスミド、ならびにプロモーターを有しないtet遺伝子の上流にクローニングされたイントロン標的部位(ライゲーションされたE1−E2)配列を含むレシピエントプラスミドを用いて大腸菌HMS174(DE3)においてレトロホーミングを行った。Tetコロニーを選択した後、5’−および3’−組込みジャンクションに対して、それぞれプライマーRsense(5’−ACAAATAGGGGTTCCGCGCAC;配列番号22)およびTe680rc(5’−GTTGGTGACCGCACCAGT;配列番号23)ならびにTe420f(5’−AACGCGGTAAGCCCGTA;配列番号24)およびRev2pBRR(5’−AATGGACGATATCCCGCA;配列番号25)を用いて、レシピエントプラスミド中の標的部位に組み込まされたイントロンをコロニーPCRによって増幅した。次いで、PCRフラグメントの配列を決定した。表2は、レトロホーミングの誘導温度、配列決定されたイントロンヌクレオチドの総数、変異(エラー)の数、およびエラー頻度を示している。
安定化されたRT融合タンパク質を調製するためおよび特徴づけるための方法の以下の実施例は、例証の目的のために含められ、本発明の範囲を限定することを意図しない。
実施例1:組換えプラスミド
pMalE−TeI4c、pMalE−TeI4f、pMalE−TeI4hは、tacプロモーターの後ろにクローニングされた、融合されるN末端MalEタグを有する、示される可動性のグループIIイントロンのRT ORFを、発現ベクターpMal−c2t内に含む。後者は、pMal−c2x(New England Biolabs,Ipswich MA)の誘導体であり、MalEと発現されるタンパク質との間のXa因子プロテアーゼ切断部位が、TEVプロテアーゼ切断部位によって置き換えられたものである(Kristellyら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.59,1859−1862,2003)。TeI4hRTは、RT−5におけるYAGDモチーフがYADDに変更されている、天然TeI4h RTの誘導体である。pET11(TeI4f)、pUC19(TeI4c)またはpACD2X(TeI4h)にクローニングされたT.elongatusのBP1株由来のグループIIイントロンを含む組換えプラスミドが、以前に報告されている。制限酵素認識部位を追加するプライマーを用いてRT ORFをPCR増幅し、次いで、そのPCR産物をpMal−c2tの対応する部位(TeI4c RT,EcoRIおよびPstI部位;TeI4f RT,BamHI部位;TeI4hRT,BamHIおよびPstI部位)にクローニングすることによって、これらの最初の構築物からpMalE−RTプラスミドを得た。Accuprimeポリメラーゼ(Invitrogen,Makarovaら、BioTechniques 29,970−972,2000)を用いるQuikChange PCR法によって、TEVプロテアーゼによって切断可能なリンカー(TVDEALKDAQTNS10LENLYFQG;配列番号19)を剛性リンカー(TVDAALAAAQTAAAAA;配列番号20)で置き換えることによってpMalE−RF−タンパク質(例えば、pMalE−RF−TeI4c)と表示される組換えプラスミドを、対応するpMalE−RTプラスミドから得た。
種々のリンカーを有するpMalE−RF−TeI4cの誘導体を、QuikChange法を用いるPCR突然変異誘発によって構築した。5’EcoRI部位および3’PstI部位を導入するプライマーを用いてpMal−c2tのMalEセグメント、ならびに5’NdeI部位および3’EcoRI部位を導入する遺伝子特異的プライマーを用いてpMalE−TeI4cのTeI4c ORFをそれぞれ増幅し、それらのフラグメントを、NdeIおよびPstIで消化されたpMal−c2tにクローニングすることによって、MalEタグをpMal−c2tにおけるTeI4c ORFのC末端に融合した。
剛性リンカーを介して上記タンパク質に融合されたN末端NusAタグおよびC末端His6タグとともにTeI4c RTを発現するpNusA−RF−TeI4c−Hisを、SacIIおよびKpnI部位を追加するプライマーを用いてpMAL−TeI4cからTeI4c RT ORFをPCR増幅し、得られたPCR産物を、pET−50b(+)(Novagen)の対応する部位の間にクローニングすることによって、構築した。次いで、PCR突然変異誘発を用いることにより、NusAの最後の2つの荷電残基(DおよびE)、既存のリンカーおよび2つのN末端His6タグ(NICWFGDEATSGSGH;配列番号26)のうちの1つを、剛性リンカー配列(NICWFGAAAAA;配列番号27)に置き換えた。第2のN末端His6タグを、PCR突然変異誘発によって除去し、His6タグを、QuikChange PCRによってTeI4c RTのC末端に融合した。
G.stearothermophilus10株のゲノムDNA(Greg Davis(Sigma−Aldrich)から得たもの)由来のRT ORFを、上記イントロンならびに追加されたBamHIおよびXbaI部位(GsI1)またはBamHI部位(GsI2)を増幅するプライマーを用いるPCRによってPCR増幅し、次いで、そのPCR産物をpMal−c2tの対応する部位の間にクローニングすることによって、pMalE−GsI1およびpMalE−GsI2を構築した。GsI1は、G.stearothermophilus recA遺伝子に挿入されたサブグループIIB2イントロンであり、Geobacillus kaustophilus(Cheeら、Gene 363,211−220,2005)およびBacillus caldolyticus(Ngら、Gene 393,137−144,2007)のrecA遺伝子において、以前に報告されたRTをコードするグループIIイントロンに関係する。クローニングされたGsI1 RT ORFが、そのゲノム配列(CP001794)に対応することを確かめた。GsI2は、G.stearothermophilusゲノムでは多コピーで見られるグループIICイントロンである。クローニングされたGsI2 RT ORFは、G.stearothermophilusゲノム(CP001794)におけるGsI2の全長6コピーのうちの1コピーのゲノム配列に対応し、Velloreら(Appl.Environ.Microbiol.70,7140−7147,2004)によってクローニングされたRT ORFに対して3つのアミノ酸配列変更を有する。対応するpMalE−RF−RT構築物は、上に記載されたように、QuikChange PCRによってpMalE−RT構築物から得られた。
BamHIおよびHindIII部位を追加するプライマーを用いてpImp−2のLtrA ORF(Saldanhaら、Biochemistry 38,9069−9083,1999)をPCR増幅し、次いで、そのPCR産物をpMal−c2tの対応する部位の間にクローニングすることによってpMalE−LtrAを構築し、上に記載されたように、QuikChange PCRによってpMalE−RF−LtrAをpMalE−LtrAから得た。
実施例2:タンパク質精製
pMalE−RTまたはpMalE−RF−RT構築物の発現の場合は、大腸菌Rosetta2/pRARE(Novagen,EMD Biosciences,Gibbstown NJ)またはScarabXpress/pRARE T7lac(Scarabgenomics,Madison WI)を、その発現プラスミドで形質転換し、TBまたはLB培地中で中対数期(O.D.600=0.8)まで37℃で生育した。イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG;最終1mM)を中対数期の細胞に加えることによって(pMalE−RF−TeI4c、TeI4f、TeI4h、GsI1およびGsI2)、または自己誘導培地(0.2%ラクトース、0.05%グルコース、0.5%グリセロール、24mM(NHSO、50mM KHPO、50mM NaHPOを含むLB)中で細胞を生育することによって(pMalE−LtrAおよびpMalE−RF−LtrA)、発現を誘導した。いずれの場合も、誘導は、18〜25℃において約24時間であり、その後、細胞を遠心分離によってペレットにし、緩衝液A(20mM Tris−HCl,pH7.5、0.5M KClまたはNaCl、1mM EDTA、1mMジチオトレイトール(DTT))に再懸濁し、−80℃で凍結した。
MalE−RF−TeI4c、TeI4f、TeI4hおよびそれらの誘導体の精製のために、細胞懸濁液を解凍し、氷上においてリゾチーム(1mg/ml;Sigma)で15分間処理し、ドライアイス上で3回凍結融解し、氷上において60%の強さの10秒間の破壊を3もしくは4回または30秒間の破壊を1回(破壊の間に10秒間)で超音波処理し(Branson 450 Sonifier,Branson Ultrasonics,Danbury CT)、18,500×g、4℃において30分間遠心分離した。ポリエチレンイミン(PEI)を0.1%の最終濃度になるように加え、Avanti J−E遠心機(Beckman Coulter,Brea CA)のJ16.25ローターにおいて15,000×g、4℃で15分間遠心分離することによって、核酸を沈殿させた。得られた上清を、アミロースカラム(10mlカラム体積;Amylose High−Flow(New England Biolabs)、緩衝液Aで平衡化されたもの)に適用し、そのカラムを各々5カラム体積の緩衝液A(0.5M、1.5Mまたは0.5M KClを含む)で洗浄し、次いで、10mMマルトースを含む緩衝液Aで溶出した。タンパク質画分をプールし、KCl(MalE−RF−4c、4f、4h、MalE−LtrAおよびMalE−RF−LtrAに対しては100mM;MalE−RF−GsI1またはGsI2に対しては50mM)、1mM EDTA、1mM DTT、10%グリセロールを含む20mM Tris−HCl,pH7.5で予め平衡化されたヘパリン−Sepharoseカラム(3つのタンデム型の1mlカラム;GE Healthcare Biosciences Corp.)を介してさらに精製した。タンパク質を同じ緩衝液におけるカラムに適用し、充填濃度から2M KClという40カラム体積の勾配で溶出した。タンパク質は、約800mM KClで溶出した。ピーク画分をプールし、貯蔵のために20mM Tris−HCl,pH7.5、0.5M KCl、1mM EDTA、1mM DTTおよび50%グリセロールに対して透析した。凍結されたタンパク質は、少なくとも6ヶ月間、RT活性の低下を示さなかった。
0.2%PEIを用いて核酸を沈殿させ、アミロースカラムから溶出されたタンパク質を最終的なヘパリン−Sepharoseカラムの前にニッケルカラムでさらに精製したことを除いて、同様に、N末端MalEタグおよびC末端His6−タグを有するMalE−RF−GsI1タンパク質を精製した。結合緩衝液(500mM KCl、20mM Tris−HCl pH7.5、40mMイミダゾールおよび10%グリセロール)で平衡化されたニッケルカラム(5mlのHisTrapTM HP Nickel Sepharose;GE Healthcare Biosciences,Piscataway NJ)に、アミロースカラムからのプールされたタンパク質画分を充填し、10カラム体積の結合緩衝液で洗浄し、5カラム体積の溶出緩衝液(500mM KCl、20mM Tris−HCl pH7.5、400mMイミダゾールおよび10%グリセロール)で溶出し、上清をヘパリン−Sepharoseカラムに直接充填した。ヘパリン−Sepharoseカラムからのピーク画分をプールし、20mM Tris−HCl,pH7.5、0.5M KCl、50%グリセロールに対して透析し、上に記載したように保存した。
NusA融合物の場合、大腸菌ScarabXpress/pRARE T7lac細胞を、18℃において48時間、0.5mM IPTGで誘導し、ニッケル緩衝液A(20mM Tris pH7.5、500mM KCl、30mMイミダゾール、10%グリセロール)に再懸濁した。上に記載したように細胞を破壊した後、最終濃度0.2%のポリエチレンイミンを加え、その後、10,000×gで15分間遠心分離することによって、溶解産物から核酸を沈殿させた。上清を、ニッケル緩衝液Aで予め平衡化された5mlのニッケル−Sepharoseカラムに適用し、次いで、500mMイミダゾールを含むニッケル緩衝液Aで溶出した。タンパク質画分をプールし、20mM Tris pH7.5、100mM KCl、1mM DTT、1mM EDTAおよび20%グリセロールで予め平衡化された2つの接続された1mlのヘパリン−Sepharoseカラムに直接充填した。タンパク質を、20カラム体積の0.1〜1.5M KCl勾配で溶出し、ピーク画分をプールし、20mM Tris−HCl,pH7.5、0.5M KCl、1mM EDTA、1mM DTT、50%グリセロールに対して透析し、上に記載したように保存した。
実施例3:逆転写酵素アッセイ
種々の温度におけるRT活性を、鋳型−プライマーとしてポリ(rA)/オリゴ(dT)42を用いて32P−dTTPの組み込みを定量化することによってアッセイした。RT(50nMのMalE−RF−TeI4c RTまたは100nMの他のすべてのRT)を、種々の温度(25〜77℃の範囲)において1×RT緩衝液(75mM KCl、10mM MgCl、20mM Tris−HCl,pH7.5および1mM DTT)中で100nMポリ(rA)/オリゴ(dT)42とともにプレインキュベートし、5μCi[α−32P]−dTTP(3,000Ci/mmol;Perkin Elmer,Waltham MA)を加えることによって、反応を開始した。その反応物を線形の範囲内の時間にわたってインキュベートし、250mMの最終濃度になるようにEDTAを加えることによって反応を停止した。反応産物をWhatman DE81クロマトグラフィペーパー(10×7.5cmシート;GE Healthcare)上にスポットし、0.3M NaClおよび0.03Mクエン酸ナトリウムで3回洗浄し、PhosphorImager(Typhoon Trio Variable Mode Imager;GE Healthcare)でスキャンすることにより、結合した放射能を定量化した。
他のRTアッセイでは、DNAオリゴヌクレオチドプライマーがアニールしたRNA鋳型を使用した。そのRNA鋳型は、AflIIIで消化されたpBluescript KS(+)から合成された531ntのインビトロ転写物(T7Megscriptキット(Ambion,Applied Biosystems,Austin,TX)を用いて転写されたもの)、またはPromega(Promega,Madison WI)から購入した1.2kb kanR RNAだった。製造者の指示書に従って、37℃において4時間、インビトロ転写を行った。Turbo DNase Iを用いてDNA鋳型を消化した後(5分,37℃)、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1;フェノール−CIA)を用いてRNAを抽出し、Sephadex G−50(Sigma,St Louis,MO)スピンカラムによる2サイクルのゲル濾過によって精製した。Nanodrop(Thermo Scientific,Wilmington,DE)を使用することによって、RNA濃度を測定した。RNAを、Milli−QグレードHO中に保存し、−20℃で保存した。
上記RNAの3’末端に相補的なDNAオリゴヌクレオチドプライマーを、IDT(Coralville,IA;AflIIIプライマー:5’−CCGCCTTTGAGTGAGCTGATACCGCTCGCCGCAGCCG;配列番号28;P078カナマイシンRev5’−GGTGGACCAGTTGGTGATTTTGAACTTTTGCTTTGCCACGGAAC;配列番号29)によって合成した。プライマー濃度をA260によって測定した。それらのプライマーを、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs)を製造者の指示書に従って用いて5’32P標識し、遊離ヌクレオチドを、Sephadex G−25カラムに通すゲル濾過によって除去した。それらのプライマーを、1.0:1.1のモル比で鋳型と混合し、10%の勾配設定のGeneAmp9700PCRサイクラーにおいて、2分間82℃に加熱することによってアニールさせ、次いで、室温に冷却した。
cDNA合成のゲル解析のために、100nMのアニールされた鋳型/プライマーを、MalE−RF−TeI4c RTに対しては100mM KCl、20mM Tris HCl pH7.5、10mM MgClおよび1mM DTT中、ならびにMalE−RF−GsI2 RTに対しては10mM NaCl、20mM Tris HCl pH7.5、10mM MgClおよび1mM DTT中の200nM酵素とともにインキュベートした。dNTPおよびMgClを、それぞれ1.25mMおよび10mMの最終濃度となるように加えることによって反応を開始し、示される温度において30分間インキュベートし、0.1%SDS/250mM EDTA(最終濃度)を加えることによって終結した後、フェノール−CIA抽出した。生成物を、変性6%ポリアクリルアミドゲルにおける電気泳動によって解析し、そのゲルを乾燥し、PhosphorImagerを用いて定量化した。5’標識された10bpラダー(InvitrogenTM)をサイズマーカーとして使用した。
実施例4:定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
qPCR解析用のcDNAを、1×RT緩衝液(75mM KCl、10mM MgCl、20mM Tris−HCl,pH7.5)、1mM DTT、5×10コピーのkanR RNA、200nM MalE−RF−TeI4c RTおよび1mM dNTPを含む20μl反応物中で30分間、個別の実験について指定された温度において生成した。SuperScript III(Invitrogen)を用いた類似反応を、製造者の仕様書に従って行った。反応物を種々の温度において2分間インキュベートし、dNTPを加えることによって反応を開始した。30分間インキュベートした後、その反応物をドライアイス上で直ちに凍結することによって反応を停止した。qPCRに対して5μlのcDNA反応物を使用した。
12.5μlの2×TaqMan(登録商標)Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems,FosterCity,CA)、7.5μlの順方向、逆方向および二重標識のプローブ混合物(Integrated DNA Technologies,Coralville,IAから個別に購入したオリゴヌクレオチド)ならびに5μlのcDNA鋳型からなる25μlの反応混合物が各ウェルに入った、光学的なキャップを備えた96ウェルプレートにおいてqPCR解析を行った。7900HT Fast Real−Time PCR System(Applied Biosystems)において9600エミュレーションモードプロトコル(50℃2分、95℃10分、次いで、95℃15秒および60℃60秒を合計45サイクルのサイクル反応)を用いて、その混合物をインキュベートした。データを収集し、Applied Biosystems Sequence Detection System Software,Versions2.2または2.3を用いて解析した。
Novagen(登録商標)二本鎖DNAプラスミドベクターpET9a(EMD Chemicals)を使用して、kanR cDNAのレベルを定量化した。そのpET9aベクターは、kanRコード配列(塩基3523−4335)を含み、各プライマー/プローブ結合部位においてPromega 1.2kb kanR RNAと100%の配列相同性を有する。精製され定量化されたpET9a DNAベクターを1×10コピー/μlの原液アリコートに段階希釈し、−20℃で保存した。各ランについて、新しい原液を解凍し、次いで、段階希釈することにより、qPCRにおいて使用する定量用検量線を作成した。次いで、cDNAサンプルに対するサイクル閾値の結果を、その検量線に対してプロットすることにより、コピー数当量を決定した。
使用したプライマーは、以下だった:
P078カナマイシンRT−1107R 5’−GGTGGACCAGTTGGTGATTTTGAACTTTTGCTTTGCCACGGAAC−3’;配列番号29(Tm=80℃) 。
プライマーセットnt188−257:
順方向−−P029kan−188F:5’−GGGTATAAATGGGCTCGCG−3’;配列番号30 。
逆方向−−P030kan−257R:5’−CGGGCTTCCCATACAATCG−3’;配列番号31 。
Taqmanプローブ−−P031kan−213T:5’(6−カルボキシフルオレセイン(6FAM))−TCGGGCAATCAGGTGCGACAATC−3’;(Iowa Black FQ;暗い非蛍光クエンチャー);配列番号32 。
単位複製配列70bp:
5’GGGTATAAATGGGCTCGCGATAATGTCGGGCAATCAGGTGCGACAATCTATCGATTGTATGGGAAGCCCG−3’;配列番号33 。
プライマーセット(nt562−634):
順方向−−P001kan−562F:5’−CGCTCAGGCGCAATCAC−3’;配列番号34 。
逆方向−−P002kan−634R:5’−CCAGCCATTACGCTCGTCAT−3’;配列番号35 。
Taqmanプローブ−−P003kan−581T:5’(6−FAM)−ATGAATAACGGTTTGGTTGATGCGAGTGA−3’−(TAMRA);配列番号36 。
単位複製配列73bp
5’CGCTCAGGCGCAATCACGAATGAATAACGGTTTGGTTGATGCGAGTGATTTTGATGACGAGCGTAATGGCTGG−3’;配列番号37 。
実施例5:レトロホーミングアッセイ
抗生物質が以下の濃度:アンピシリン,100μg/ml;クロラムフェニコール,25μg/ml;テトラサイクリン,25μg/mlで加えられたLB培地において生育された大腸菌HMS174(DE3)(NovagenTM)において、レトロホーミングアッセイを行った。イントロンドナープラスミドであるpACD2Xの誘導体(San Filippoら、Journal of Molecular Biology,324,933−951,2002)は、capマーカーを有し、T7lacプロモーターを使用することにより、両脇に短い5’ エキソンおよび3’エキソン(それぞれE1およびE2)を伴うΔORFイントロン(I−ΔORF)ならびにDIV内のT7プロモーター、その後に続くRT ORF(これはE2の下流に存在する)を発現する。レシピエントプラスミドであるpBRR−tetの誘導体(Guoら、Science 289,452−457,2000;Karbergら、Nature Biotech.19,1162−1167,2001)は、ampマーカーを有し、プロモーターを有しないtet遺伝子の上流にクローニングされたイントロンに対する標的部位(ライゲーションされたE1−E2配列)を含む。後者は、T7プロモーターを有するイントロンの挿入によって活性化され、それにより、Tet+Ampコロニーに対する選択が可能となる。これらのアッセイの場合、細胞を、CapドナープラスミドおよびAmpレシピエントプラスミドで同時形質転換し、クロラムフェニコールおよびアンピシリンを含む5mlのLB培地に接種し、振盪しながら(200rpm)37℃で一晩生育した。少量(50μl)の一晩培養物を、同じ抗生物質を含む5mlの新鮮LB培地に接種し、上記のとおり1時間生育した。次いで、その細胞を、個別の実験について表1のレジェンドに明記された条件下においてIPTGで1時間誘導した。次いで、その培養物を氷上に置き、氷冷LBで希釈し、アンピシリンまたはアンピシリン+テトラサイクリンを含むLB寒天上に種々の希釈でプレーティングした。そのプレートを37℃で一晩インキュベートした後、(Tet+Amp)/Ampコロニーという比として可動性効率を計算した。
(項目1) 安定化タンパク質に接続された耐熱性逆転写酵素を含む、安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目2) 上記耐熱性逆転写酵素が、細菌の逆転写酵素を含む、項目1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目3) 上記細菌の逆転写酵素が、グループIIイントロン由来逆転写酵素を含む、項目2に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目4) 上記細菌の逆転写酵素が、Thermosynechococcus elongatus逆転写酵素またはGeobacillus stearothermophilus逆転写酵素である、項目3に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目5) 上記耐熱性逆転写酵素が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含む、項目1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目6) 上記安定化タンパク質が、親和性タンパク質または溶解性向上タンパク質を含む、項目1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目7) 上記安定化タンパク質が、マルトース結合タンパク質またはN利用物質Aタンパク質を含む、項目6に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目8) 上記安定化タンパク質が、荷電アミノ酸を無荷電アミノ酸と置き換えることによって改変されている、項目6に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目9) 上記耐熱性逆転写酵素が、リンカーペプチドによって上記安定化タンパク質に接続されている、項目1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目10) 上記リンカーペプチドが、切断不可能なリンカーペプチドである、項目9に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目11) 上記切断不可能なリンカーペプチドが、剛性リンカーペプチドである、項目10に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目12) 上記リンカーペプチドが、1アミノ酸から20アミノ酸からなる、項目10に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目13) 上記リンカーペプチドが、1アミノ酸から5アミノ酸からなる、項目10に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目14) 上記リンカーペプチドが、3アミノ酸から5アミノ酸からなる、項目10に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目15) 上記剛性リンカーペプチドが、配列番号12からなる、項目11に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目16) 上記融合タンパク質が、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含むアミノ酸配列を有する、項目1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目17) 上記安定化された逆転写酵素融合タンパク質が、約45°から約65℃の温度において2.0×10−5以下のエラー頻度で逆転写を行うことができる、項目1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
(項目18) RNA分子からcDNAを調製するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)プライマーヌクレオチド配列を該RNA分子に加える工程
(b)1つ以上のデオキシリボヌクレオシド三リン酸またはジデオキシリボヌクレオシド三リン酸、および安定化タンパク質に接続された耐熱性逆転写酵素を含む安定化された逆転写酵素融合タンパク質の存在下において、該RNA分子の全部または一部に相補的なcDNA分子を合成するのに十分な条件下で該RNA分子をインキュベートする工程
を包含する、方法。
(項目19) 上記耐熱性逆転写酵素が、切断不可能なリンカーペプチドによって上記安定化タンパク質に接続されている、項目18に記載の方法。
(項目20) 上記RNAが実質的に減少した量の安定な妨害性の二次構造または三次構造を有する温度範囲内で、逆転写が行われる、項目18に記載の方法。
(項目21) 上記耐熱性逆転写酵素が、グループIIイントロン由来逆転写酵素である、項目18に記載の方法。
(項目22) 上記耐熱性逆転写酵素が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含み、上記切断不可能なリンカーが、1アミノ酸から20アミノ酸からなり、そして上記安定化タンパク質が、親和性タンパク質または溶解性向上タンパク質を含む、項目19に記載の方法。
(項目23) 上記逆転写が、約45℃から約65℃の温度において2.0×10−5以下のエラー頻度で行われる、項目18に記載の方法。
(項目24) 配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を含む、安定化された逆転写酵素融合タンパク質を生成するためのDNA発現ベクター。
(項目25) 安定化された逆転写酵素融合タンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程
(a)項目24に記載のDNA発現ベクターを含む宿主細胞を培養する工程;
(b)該DNA発現ベクターによってコードされる該安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現させる工程;および
(c)該安定化された逆転写酵素融合タンパク質を該宿主細胞から単離する工程
を包含する、方法。

Claims (19)

  1. プロテアーゼによって切断可能でないリンカーペプチドによって、安定化タンパク質のC末端に接続されたグループIIイントロン由来逆転写酵素を含む、安定化された逆転写酵素融合タンパク質であって、該グループIIイントロン由来逆転写酵素が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含み、該安定化タンパク質が、溶解性向上タンパク質を含む、安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  2. 前記安定化タンパク質が、マルトース結合タンパク質またはN利用物質Aタンパク質を含む、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  3. 前記安定化タンパク質が、荷電アミノ酸を無荷電アミノ酸と置き換えることによって改変されている、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  4. 前記リンカーペプチドが、剛性リンカーペプチドである、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  5. 前記リンカーペプチドが、1アミノ酸から20アミノ酸からなる、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  6. 前記リンカーペプチドが、1アミノ酸から5アミノ酸からなる、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  7. 前記リンカーペプチドが、3アミノ酸から5アミノ酸からなる、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  8. 前記リンカーペプチドが、配列番号12からなる、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  9. 前記融合タンパク質が、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含むアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  10. 前記安定化された逆転写酵素融合タンパク質が、45から65℃の温度において2.0×10−5以下のエラー頻度で逆転写を行うことができる、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  11. RNA分子からcDNAを調製するための方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)プライマーヌクレオチド配列を該RNA分子に加える工程
    (b)1つ以上のデオキシリボヌクレオシド三リン酸またはジデオキシリボヌクレオシド三リン酸、およびプロテアーゼによって切断可能でないリンカーペプチドによって、安定化タンパク質のC末端に接続されたグループIIイントロン由来逆転写酵素を含む安定化された逆転写酵素融合タンパク質の存在下において、該RNA分子の全部または一部に相補的なcDNA分子を合成するのに十分な条件下で該RNA分子をインキュベートする工程
    を包含し、該グループIIイントロン由来逆転写酵素が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含み、該安定化タンパク質が、溶解性向上タンパク質を含む、方法。
  12. 前記グループIIイントロン由来逆転写酵素が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド、ならびに、1アミノ酸から20アミノ酸からなる前記切断可でないリンカーペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
  13. 前記逆転写が、45℃から65℃の温度において2.0×10−5以下のエラー頻度で行われる、請求項1に記載の方法。
  14. 配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を含む、安定化された逆転写酵素融合タンパク質を生成するためのDNA発現ベクターであって、ここで、該ポリペプチドはプロテアーゼによって切断可能でないリンカーペプチドを含む、DNA発現ベクター
  15. 安定化された逆転写酵素融合タンパク質を生成する方法であって、該方法は、以下の工程(a)請求項1に記載のDNA発現ベクターを含む宿主細胞を培養する工程;
    (b)該DNA発現ベクターによってコードされる該安定化された逆転写酵素融合タンパク質を発現させる工程;および
    (c)該安定化された逆転写酵素融合タンパク質を該宿主細胞から単離する工程
    を包含する、方法。
  16. 前記グループIIイントロン由来逆転写酵素が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  17. 前記融合タンパク質が、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する
    ポリペプチドを含むアミノ酸配列を有する、請求項に記載の安定化された逆転写酵素融合タンパク質。
  18. 前記グループIIイントロン由来逆転写酵素が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5からなる群より選択される配列と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
  19. 配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10からなる群より選択される配列と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を含む、請求項1に記載のDNA発現ベクター。
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