JP5881241B2 - 抗菌パックシート包装体 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膚常在菌による体臭、にきび、褥瘡等を素早く防止する抗菌パックシートを包装する抗菌パックシート包装体に関し、詳細には、高い安全性と広範な抗菌スペクトル等を有する銀ゼオライトを、酸処理して生成される銀イオンを含浸する抗菌パックシートを包装する抗菌パックシート包装体に関する。
パックシートは、顔だけでなく鼻、首、肩、腕、脚、から全身にも用いられ、部位により様々な形態があり、例えば、顔の皮膚にパック成分を指で塗る必要のない含浸シートタイプは、それを均一に効率良く且つ十分に供給することで、皮膚に効果的に作用できるのでスキンケアシートとして用いられている(特許文献1参照)。パック効果は、肌の清浄、保湿、肌荒れ防止、美白、創傷治癒等が挙げられるが、パック成分により多様であり、皮膚常在菌に対するスキンケアとして抗菌パックが有効である。例えば、体臭の防止にイオン交換可能な部分に抗菌性金属イオンを保持しているゼオライトを配合した防臭化粧料が提案されており(特許文献2参照)、また、抗菌性金属をリン酸カルシウム系セラミックに担持させた抗菌性セラミックを配合したニキビ治療用皮膚外用剤が提案されており、ゼオライトを抗菌パック成分として利用できることが開示されている(特許文献3参照)。そのゼオライトのうちの銀ゼオライトは、高い安全性と広範な抗菌スペクトル等を有することから、様々な分野で利用されている。
しかし、銀ゼオライトは、イオン交換により銀イオンが生成されるために、銀イオンの生成に長時間を要し、その抗菌作用に即効性のないことが問題として指摘されている(非特許文献1参照)。パック施術は10分程度の時間で通常行われるが、銀ゼオライトは10分程度の時間では抗菌作用を奏することはできない。
そこで、本発明者は上記問題を解決するために、抗菌作用を奏するのに即効性のある銀ゼオライトを用いた抗菌用銀イオン生成液を特願2010−197480号として先に出願した。この先願である抗菌用銀イオン生成液は、長期間にわたる品質保証を可能とするために、分離状態にある第1液と第2液からなるもので、該第1液が分散助剤を含む水溶液に銀ゼオライトを分散した分散液であり、上記第2液がクエン酸を含有した水溶液である。そして、そのクエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、上記銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であるクエン酸を混合することで銀イオンが2分間で生成される。
本発明者は、上述のように、銀ゼオライトに特定量のクエン酸を混合することにより、2分間で銀イオンが生成されることを見出した。ところで、この銀イオン生成液をパック液として利用するためには、上記2液である銀ゼオライトを分散した分散液とクエン酸水溶液、そして、その両液を吸収する吸液シート(パックシート)を収納でき且つ包装できる包装体が必要である。
パックシートを包装するパックシート包装体として、例えば、吸液シート上にパック液を封入した易破壊性ブリスターパックの底シール材を介して収納されており、使用時においてその底シール材を破壊してパック液を吸液シートに含浸させる包装体が提案されている(特許文献4参照)。
特開2004−292345号公報 特開平08−026956号公報 特開平07−109217号公報 特開2006−021034号公報
「人体常在菌のはなし」、青木皐著、集英社新書、第182〜183頁、2009年12月20日(第9刷発行)
特許文献4に記載のパックシート包装体は、図3に示すように、吸液シート40に易破壊性ブリスターパック35に貯留されるパック液38を単に含浸させるための構造を備えるもので、吸液シートに銀ゼオライトを分散した分散液とクエン酸水溶液を混合させて銀イオンを生成し、その銀イオンを吸液シートに含浸させるための構造を備えるものではない。仮に上記包装体の構造を用いて吸液シートと2液を包装するには、例えば、図3のパック液を封入した易破壊性ブリスターパック35の中央部に隔壁を設けて2液を封入し、その隔壁を破壊して2液の全てが混合されて、2分間経過して銀イオンが生成できる構造の易破壊性ブリスターパックでなければならない。しかしながら、上記易破壊性ブリスターパックの中央部に隔壁を設けて、2液の全てが混合されて2分間経過して銀イオンが生成できる構造のものを作製することは、図3が示すパックシート包装体の構造では不可能である。
従って、上記従来のパックシート包装体は、パック液を単に含浸させるための構造であるのに対して、上記抗菌パックシート包装体は、分散液に分散した銀ゼオライトとクエン酸の2液の全てが混合されて、2分間経過して銀イオンが生成できる構造のものでなければならない。
それ故に、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、従来のパックシート包装体の構造を前提に、分散液に分散した銀ゼオライトとクエン酸の2液の全てが混合されて、2分間経過して銀イオンが生成でき、且つ銀ゼオライトとクエン酸及び吸液シートを包装できる抗菌パックシート包装体を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、易破壊性ブリスターパックに液体としてクエン酸水溶液を貯蔵し、吸液シートにA型銀ゼオライト粉末を含有させ、この吸液シートにクエン酸水溶液を含浸することにより銀イオンが生成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の請求項1に係る抗菌パックシート包装体は、液体を貯留する易破壊性ブリスターパックが吸液シートの上に底シール材を介して載置されており、使用時に上記易破壊性ブリスターパックの頂部を指で押さえることで、底シール材を破壊して上記吸液シートに液体を含浸させて含浸パックシートを取り出すことのできるパックシート包装体であって、前記パックシート包装体が、前記易破壊性ブリスターパックにクエン酸水溶液を貯蔵し、前記吸液シートの内部にA型銀ゼオライトを粉末の状態で含有することを特徴とする。
本発明の請求項2に係る抗菌パックシート包装体は、前記クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、前記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る抗菌パックシート包装体は、前記吸液シートが50〜500重量%の吸液率であることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る抗菌パックシート包装体は、前記吸液シートが発泡シート、織布、不織布又は紙の材料であることを特徴とする。
本発明の請求項5に係る抗菌パックシート包装体は、前記吸液シートが0.1〜5.0重量%の範囲の前記A型銀ゼオライトを含有することを特徴とする。
本発明の請求項6に係る抗菌パックシート包装体は、前記クエン酸により前記A型銀ゼオライトの結晶構造を崩壊して生成される銀イオンを含浸する前記吸液シートが、その銀イオン濃度が0.8〜110ppmの範囲にあることを特徴とする。
本発明の請求項7に係る抗菌パックシート包装体は、前記銀イオンを含浸する吸液シートが、デオドラント用、にきびケア用又は褥瘡ケア用であることを特徴とする。
本発明の抗菌パックシート包装体は、易破壊性ブリスターパックに液体としてクエン酸水溶液を貯蔵し、吸液シートにA型銀ゼオライト粉末を含有させる構成を採用することで、この吸液シートにクエン酸水溶液を含浸させれば2分後には銀イオンが生成されるので、その銀イオンを含む含浸パックシートを得ることが可能である。
クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、上記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であるクエン酸を混合することで、銀イオンが0.8〜110ppmの範囲にある銀イオン濃度を生成できる。
上記0.8〜110ppmの範囲にある銀イオン濃度に応じて、本発明の抗菌パックシート包装体をデオドラント用、にきびケア用又は褥瘡ケア用として用いることができる。
本発明の抗菌パックシート包装体の縦断面図である。 本発明の易破壊性ブリスターパックの縦断面図である。 従来のパックシート包装体の縦断面図である。
本発明の抗菌パックシート包装体の構造を以下に説明する。
抗菌パックシート包装体は、特許文献4(特開2006−21034号公報)に示されている従来のパックシート包装体と基本構造は同じであるが、吸液シート及び易破壊性ブリスターパックに封入したパック液が異なっている。
最初に、図3を参照して従来のパックシート包装体を説明する。
従来のパックシート包装体31は、下部包装材32、上部包装材33、易破壊性ブリスターパック34、吸液シート40から構成されている。吸液シート40に易破壊性ブリスターパック34に貯留されるパック液38を含浸させるための構造を備えるものである。上記易破壊性ブリスターパック蓋材35には内部空間に向けて突出部37が形成されており、使用時にワンタッチで底シール材36を破壊しやすくなっており、パック液38は、破壊された底シール材36を介して吸液シート40に含浸される。
仮に上記包装体31の構造を用いて、上記銀ゼオライトの分散液とクエン酸水溶液の2液、そして、吸液シートを包装するには、上述したように、例えば、図3のパック液を封入した易破壊性ブリスターパックの中央部に隔壁を設けて上記2液を封入し、その底シール材を破壊して全ての2液を混合して銀イオンが生成されてから吸液シートに含浸させることが考えられるが、易破壊性ブリスターパックの中央部に隔壁を設けて、2液の全てが混合されて2分間経過して銀イオンが生成できる構造のものを作製することは、図3が示すパックシート包装体の構造では不可能である。
図2に示す易破壊性ブリスターパック4は、上部の硬質又は半硬質プラスチックの易破壊性ブリスターパック蓋材5と下部の底シール材6がヒートシールされ、ヒートシール部9を形成している。易破壊性ブリスターパック4には特定量のクエン酸が溶けたクエン酸水溶液8が貯蔵されている。上記易破壊性ブリスターパック蓋材5には内部空間に向けて突出部7が形成されており、使用時に底シール材6を破りやすいようになっている。上記蓋材5に設けた突出部は、底シール材6を突き破るものであれば、図1や図2のようなものに限られることはない。また、底シール材6は、尖端を有する突出部7で容易に破れる軟質又は半硬質のプラスチックフィルムやアルミ箔のような金属薄膜を用いることができる。
易破壊性ブリスターパック4は、図1に示すように吸液シート10の上に載置されており、使用時に易破壊性ブリスターパック4の頂部を指で押さえることにより、底シール材6が破れてクエン酸水溶液8が該吸液シート10に含浸されるようになっている。上記易破壊性ブリスターパック4が吸液シート10に載置された状態で包装される。すなわち、硬質又は半硬質の上部包装材3の略中央部の穴から、易破壊性ブリスターパック4の略上半部が突出するようにして、包装体1の下部包装材2と上部包装材3の周縁部がヒートシールされてヒートシール部11を形成し、本発明の抗菌パックシート包装体1を構成する。
使用時に突出部7によって底シール材6を破壊することにより、易破壊性ブリスターパック4内のクエン酸水溶液8が底シール材6の破壊部から流出して吸液シート10にすみやかに吸収、含浸される。硬質又は半硬質のプラスチックフィルムで形成された上部包装材6と軟質又は半硬質のプラスチックフィルムで形成された底シール材6でヒートシールされた構造となっている。
ヒートシール部11は、シート包装体1の底部に剥離可能に載置されている。パックシート包装体1の硬質又は半硬質のプラスチックフィルムから形成された上部包装材3及び軟質又は半硬質のプラスチックフィルムからなる下部包装材2のヒートシール部11を剥離すれば、含浸注液が含浸された吸液シート10を容易に取り出せ、直ちに皮膚面などに適用できるので衣服などを汚損する虞はない。剥離を容易にするために離型性素材を積層するか離型性成分をブレンドあるいはコーティングして弱シール構造とするのがよい。
吸液シート10は、吸液性を有するシート材であれば、特に限定されるものではないが、易破壊性ブリスターパック4内のクエン酸水溶液8を全量吸収し得る吸収能を有していればよい。該吸液シート10の吸液率は、好ましくは、50〜500重量%程度である。
材料の種類としては、好ましくはスポンジシートなどの発泡シート、織布、不織布又は紙を使用する。これらを構成する素材は特に限定されるものではなく、セルロースあるいはその誘導体、パルプ、綿、麻などの天然系素材、レーヨン、ポリアミド類、ポリエステル類、アクリル類、ポリウレタン類などの合成系素材あるいはこれらの親水化誘導体などを例示することができる。
(銀ゼオライト粉末含有の吸液シート)
上記吸液シートにA型銀ゼオライト粉末を含有させる方法を説明する。
パックシートの使用目的に応じて、上記材料の吸液シートにA型銀ゼオライト粉末を含有させるために、水に銀ゼオライトを分散させた分散液を0.1〜5.0重量%の範囲から必要とする量を選定し、その選定した分散液を吸液シートにロールコートで塗布、スプレーで噴霧、又は浸漬した後にロールで搾ることで含浸させる。その後に塗布、噴霧又は含浸された吸液シートを100℃で乾燥させることで、上記分散液中のA型銀ゼオライトが吸液シートの内部に粉末の状態で含有される。A型銀ゼオライトの粒径は、平均粒径が0.7μm〜3.5μmの範囲のものを使用するから、吸液シート10の内部に分散液が全方向に含浸していき、その内部に含浸した分散液中のA型銀ゼオライトが、その後の100℃の乾燥により吸液シートの内部に粉末の状態で含有される。
(混合2分後に銀イオンを生成するA型銀ゼオライトとクエン酸の配合量の割合)
次に、第1液の分散液に分散したA型銀ゼオライトと第2液のクエン酸を混合して2分後にクエン酸がA型銀ゼオライトを溶解して銀イオンを生成するための配合量について説明する。
A型銀ゼオライト、その骨格がSi-O-Al-O-Siの構造を三次元的に結合した結晶構造中のAl(アルミニウム)部分に、静電気的に銀イオンが吸着された構造を有しており、イオン交換作用により上記結晶構造中の銀イオンが溶出して細菌を殺菌するといわれている。クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、上記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であるクエン酸を混合することで、その2分後に上記クエン酸が上記三次元的に結合した結晶構造を完全に崩壊して銀イオンを生成することが以下に述べる第1の実験で証明された。
(第1の実験)
第1液は、A型銀ゼオライトであるゼオミックAJ10N(銀担持量2.2重量%)((株)シナネンゼオミック製)を用いる。ゼオミックAJ10N0.1g又は0.5gを、キサンタンガム0.2gを含む精製水に分散して100gの分散液を調製した。この分散液は白濁している。
第2液のクエン酸の配合量の割合は、A型銀ゼオライトの配合量(重量)に対して、0.9〜1.7倍の配合量(重量)を含有する100gの水溶液を調製した。ここで使用するクエン酸は市販品のクエン酸1水和物である。
第1液と第2液を同量の100gずつ混合して200gの混合液とし、pHメーターによりその混合液のpHを測定した。A型銀ゼオライトの溶解性は目視により判定した。
上記第1液と第2液を混合して、時間の経過と共に上記クエン酸が上記A型銀ゼオライトを溶解した混合液の透明状態を目視して、白濁、半透明、透明の3段階で判断した。表1は、上記A型銀ゼオライトの合計12個の試料の第1の実験の結果である。表1の「配合量の割合」は、銀ゼオライトの配合量(重量)に対するクエン酸の配合量(重量)の割合を意味している。
なお、表1の混合液の透明状態の判断の右側に記載の数字は、混合液のpHの値を示している。
表1に示すNo.1〜12のpHの値は、試料数をN=3としてその算術平均で求めた。
なお、以下の表に示す値は、表1に示す試料数と同様に試料数をN=3としてその算術平均で求めたものである。
上記第1の実験の結果は、銀ゼオライトに対してクエン酸の配合量の割合が1.1倍以下の場合には、混合してから30分が経った後でも、混合液の性状は半透明の状態にあり、A型銀ゼオライトの骨格構造がクエン酸により溶解されなかった。
クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、上記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であるクエン酸を混合することで、その2分後に、銀ゼオライトの骨格構造がクエン酸により溶解されて混合液が透明になり、混合液中に全銀イオンが溶出されることを示した。このことから、混合液を人体に塗布する場合または混合液が人体に触れる虞がある場合を考慮すると、上記クエン酸の配合量の割合として表1に示す1.2〜1.7の量を用いることが好ましい。
以上のことから、クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、上記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であれば、上記第1液と第2液を混合した2分後に、上記クエン酸が上記の結晶構造を完全に崩壊して銀イオンを生成することを示した。換言すれば、第1液のA型銀ゼオライトの配合量を選定して決めれば、第2液のクエン酸の配合量の割合は、上記A型銀ゼオライトの配合量の1.2倍以上の量を配合することで、第1液と第2液を混合した2分後に、銀ゼオライトが含有していた全ての銀イオンを溶出させることができることが判明した。
ここで、A型銀ゼオライトから溶出する銀イオンは、イオン交換により又は結晶構造の崩壊により溶出しても同じものであるが、A型銀ゼオライトから銀イオンを溶出するメカニズムが異なることから、上述したイオン交換により溶出した銀イオンを「イオン交換銀イオン」と称したのに対して、上記結晶構造の崩壊により溶出した銀イオンを「崩壊銀イオン」と称する。
(第2の実験)
続いて、第2の実験について説明する。
第2の実験は、銀担持量の異なる4種類のA型銀ゼオライトを用いて、そして、上記銀ゼオライトを完全に崩壊する配合量のクエン酸を用いて、溶出する銀イオン濃度が、どの程度の濃度を示すのかを調べるために行った実験である。
第2の実験の第1液及び第2液は、第1の実験と同様に、A型銀ゼオライトを対象にして説明する。
具体的には、第1液は、銀ゼオライトとして銀担持量0.16重量%のA型銀ゼオライトを調製したもの、ゼオミックAV10N((株)シナネンゼオミック製、銀担持量0.3重量%)、ゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製、銀担持量2.2重量%)、ゼオミックAK10N((株)シナネンゼオミック製、銀担持量5.0重量%)を、キサンタンガム0.2gを含む精製水に分散した100gの分散液を用いた。第2液は、クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、上記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であるクエン酸を精製水に溶解した100gの水溶液を用いた。なお、上記銀担持量0.16重量%のA型銀ゼオライトの調製方法は後述する。
第1液と第2液の各100gを混合してから10分後に、その200gの混合液からゼオライトを分離するために濾過して、得られた液中の銀イオン濃度を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(ICP S−8100、(株)島津製作所製)により測定した。
一方、実験例であるクエン酸含有の水溶液に対して、比較例として該クエン酸含有の水溶液に代えて水道水を用いた。表2に示す比較例のNo.30、31のA型銀ゼオライトは、実験例のNo.21、26で用いた同種のゼオミックAV10Nを、比較例のNo.32、33のA型銀ゼオライトは、実験例のNo.22、27で用いた同種のゼオミックAJ10Nを、比較例のNo.34、35のA型銀ゼオライトは、実験例のNo.23、24、28、29で用いた同種のゼオミックAK10Nを用いた。銀イオン濃度の測定方法は、上述した方法と同様に両液を混合してから10分後に測定を行った。また、比較例のNo.36として、A型ゼオライトの分散液100gと生理食塩液(塩化ナトリウム0.9重量%)100gを混合した混合液200gを調製して、溶出する銀イオン濃度の測定を行った。その濃度は400ppbであった。なお、この比較例のNo.36は、発汗(塩化ナトリウム0.9重量%)した状態の体に、上記エアゾールタイプの防臭化粧料のA型銀ゼオライト(銀担持量2.2重量%)を噴霧した条件と同じ場合を想定して、比較例のNo.36の銀イオン濃度を測定したものである。
第2の実験の結果を表2に示す。
表2の結果は、クエン酸の配合量の割合がA型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍の実験例No.20〜24の銀イオン濃度と、クエン酸の配合量の割合がA型銀ゼオライトの配合量に対して1.6倍の実験例のNo.25〜29の銀イオン濃度が、測定誤差を考慮すると一致していることを示し、そして、銀担持量が増えるに伴って銀イオン濃度が増加していることを示している。更に、実験例のNo.23と24及び実験例のNo.28と29を対比すると、A型銀ゼオライトの配合量が0.1gの実験例のNo.23及び28は、銀イオン濃度が24.7ppm、25.0ppmであるのに対して、A型銀ゼオライトの配合量が1.0gの実験例のNo.24及び29は、銀イオン濃度が249.6ppm、250.0ppmなので、配合量が10倍に増えるのに伴って銀イオン濃度も10倍に増えている。このことは、銀担持量が同じ銀ゼオライトを用いて、クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合がA型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上のクエン酸を混合することで、A型銀ゼオライトの結晶構造を崩壊すれば、銀ゼオライトの配合量に比例して銀イオン濃度が得られることを示している。
そして、実験例のNo.20〜29は、銀イオン濃度が0.8〜250.0ppmの範囲の値を示しており、その濃度はppm単位である。それに対して、比較例のNo.36は、銀イオン濃度が400ppbの値を示している。
以上のことから、比較例のNo.36のイオン交換による銀イオン(以下、「イオン交換銀イオン」という。)の銀イオン濃度は、ppbの単位であるのに対して、上記結晶構造の崩壊による銀イオン(以下、「崩壊銀イオン」という。)の銀イオン濃度はppm単位を示しており、従来の銀イオン濃度の約4〜625倍の濃度のものが得られた。上記A型銀ゼオライトをクエン酸で溶解して銀イオンを溶出するメカニズムは、従来のイオン交換のメカニズムでは決して得られないppm単位の高濃度の崩壊銀イオンを短時間に生成することが判った。
そして、表1に示すNo.3、4及びNo.9、10の混合液、そして、No.2、8の混合液を試験管に保存して窓側に置いて、両混合液の色の変化を観察した。No.2、8の混合液は3日間で茶色に変色したが、No.3、4及びNo.9、10の混合液は、1ヶ月経っても透明の状態であった。
第2の実験の結果は、第2液中のクエン酸の配合量の割合が、A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であるクエン酸を混合すると、上記クエン酸が上記銀ゼオライトの結晶構造を崩壊して銀イオンを生成し、その崩壊銀イオン濃度は0.8ppm以上の濃度が得られることを示し、また、銀ゼオライトの銀担持量の増加に伴って銀イオン濃度が増加することを示した。
以上述べた第1及び第2の実験の結果から、第1液のA型銀ゼオライトを分散した分散液と、第2液のクエン酸を含有した水溶液で、そのクエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、上記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上のクエン酸を第2液に配合したものを第1液と混合すれば、上記クエン酸から崩壊銀イオンを短時間に生成し、その銀イオン濃度は0.8ppm以上の濃度が得られることが判明した。このように混合する前の分離状態にある第1液と第2液は、高濃度の銀イオンを生成することができる抗菌用銀イオン生成液であることが明らかになった。
以上述べた第1及び第2の実験結果から、クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であれば、銀イオン濃度は0.8ppm以上の濃度が得られることが判ったので、吸液シート1.8g(15cm×21cm)当たり、表2に示す通りの配合量であるA型銀ゼオライトを精製水に分散させた分散液を、吸液シートに含浸させて100℃で乾燥させてA型銀ゼオライト粉末を含有する吸液シート(以下、「粉末含有シート」という。)を作製し、次いで表2に示す通りの配合量であるクエン酸を精製水に溶かしてクエン酸水溶液を作製した。15cm×21cmの粉末含有シートは、6枚が重なるように折り畳んで7cm×7.5cmの粉末含有シートを得た。
図1に示す下部包装体2と上部包装体3の間に上記粉末含有シートが配置され、易破壊性ブリスターパック蓋材5と底シール材からなる易破壊性ブリスターパックに、5.4gの上記クエン酸水溶液を封入したパックシート包装体1を作製した。そして、ワンタッチで上記底シール材を破壊して吸液シートにクエン酸水溶液を含浸させ、2分後に生成した銀イオン濃度を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置により測定した。その測定した銀イオン濃度の値は、表2に示した銀イオン濃度の値と誤差の範囲内の値を示した。従って、粉末含有シートとクエン酸水溶液を包装したパックシート包装体1は、第2の実験の第1液と第2液の混合により生成される銀イオン濃度と同じ値のものを生成できることが明らかになった。
そこで、銀イオンを含浸する抗菌パックシートは、黄色ブドウ球菌、緑膿菌に対して抗菌効果を示すのかを抗菌試験により試みた。抗菌試験はJISL19021−1998に基づき、上記含浸シートに、ブイヨン培地を1/20NBとして試験菌を接種し、培養時間に対する生残菌数を測定した。従来の抗菌性試験方法は、主にイオン交換による銀イオンのような抗菌剤の徐効性を測定するのに向いているが、細菌を短時間の内に殺菌する崩壊銀イオンは、従来の抗菌性試験方法では測定が困難なので、1/20NB培地で細菌を生育させ、初発菌数5.0×10((CFU/ml)Log値5.7)が培養時間の経過により減少する生残菌数を計測して、その計測値をグラフにプロットして得られた点に基づいて近似直線を描き、初発菌数(5.7)が抗菌活性値2(99%の菌数減少の意味)の値である3.7に要する時間(以下、「TD2」という)を求めた。換言すれば、このTD2は接種した菌数を99%殺菌する時間である。
(銀イオン濃度と殺菌の即効性)
黄色ブドウ球菌の測定結果を表3−1に、緑膿菌の測定結果を表3−2に示す。
表3に示すとおり、実施例の崩壊銀イオンによればTD2は1.5〜9.0分の範囲で得られており即効性のあることが示されている。これに対して比較例のイオン交換銀イオンでは60.0〜180.0の範囲であり、パックの施術時間内には抗菌効果が得られないことが分かる。
次に、抗菌パックシートの使用形態を説明する。
なお、以下に表す「w%」は重量%を、「シートw」はシート重量を意味している。
(抗菌パックシートの使用形態)
本発明の抗菌パックシートは、皮膚常在菌による体臭、にきび、化膿、肌荒れの防止に有効であり、パッティング材として顔のほてりを防ぎ皮膚常在菌を殺菌することもできる。
1.デオドラントパック
(処方)
[パック液処方] POE(20)ソルビタン
モノステアリン酸 2.0w%
グリセリン 10.0w%
クエン酸 0.75w%
精製水 87.25w%
パック液を配合して調製し、易破壊性ブリスターパックに5.4gを注入して密封した。
[シート処方] 2.2w%担持銀ゼオライト 0.5w%/シートw
精製水 99.5w%
このA型銀ゼオライト粉末の分散液に、吸液シートとしてオイコスAP2060(綿不織布)を浸漬してマングルで絞り率100%として乾燥して、A型銀ゼオライト0.5w%を含有するシートを作成した。該シートを1.8gのフェイスマスク形状に裁断して用いた。
[シートに載置と包装]
A型銀ゼオライトを0.5w%含有するフェイスマスク形状のシート(1.8g)を、約6cm×6cmに折り畳んだ上に、前記パック液を注入した易破壊性ブリスターパックを載置して図1に示す抗菌パックシート包装体に収納した。
(パック施術)
前記抗菌パックシート包装体の易破壊性ブリスターパックを指で押してカプセルの蓋部を破り、パック液(5.4g)を吸液シートに300%含浸した状態とした。
クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、前記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.4倍である。施術は顔面にパックして10分程度経過後に剥離して肌を洗浄する。
[含浸液の性状] 崩壊銀イオンの濃度 5.2ppm
pH 4.0
TD2 8.5分(黄色ブドウ球菌)
(効果)
TD2は8.5分である。10分程度顔面にパックすることにより臭気を全く感じなくなり、臭いの原因となる細菌を殺菌することができる。わきが用にはシートの形状を変えてパッティングすることもできる。
2.にきびケアパック
(処方)
[パック液処方] サリチル酸 1.5w%
グリセリン 10.0w%
クエン酸 2.2w%
精製水 86.3w%
パック液を配合して調製し、ブリスターパックに5.4gを注入して密封した。
[吸液シート処方]
5.0w%担持銀ゼオライト 2.0w%/シートw
精製水 98.0w%
このA型銀ゼオライト粉末の分散液に、オイコスAP2060(目付60g/m)シートを浸漬してマングルで絞り率100%として乾燥して、A型銀ゼオライト0.5w%含有するシートを作成した。1.8gのフェイスマスク形状に裁断して用いた。
[シートに載置と包装]
前記A型銀ゼオライトを2.0w%含有するフェイスマスク状シートを、5cm×5cmに折り畳んだ上に、前記パック液を注入した易破壊性ブリスターパックを載置して図1に示す抗菌パックシート包装体に収納した。
(パック施術)
前記抗菌パックシート包装体の易破壊性ブリスターパックを指で押してカプセルの蓋部を破り、パック液を吸液シートに浸透させて含浸状態とすると崩壊銀イオンを生成する。顔面にパックして10分程度経過後に剥離して洗浄する。
[含浸液の性状] 崩壊銀イオンの濃度 52.0ppm
pH 4.5
TD2 2分(緑膿菌)
(効果)
TD2は2分である。10分程度顔面にパックすることによりアクネ菌を含む皮膚常在菌を99%殺菌することができる。鼻に用いる場合は鼻パック形状にしてシート重量に合わせてパック液量を調製すればよい。
3.褥瘡ケアパック
(処方)
[パック液処方]グリセリン 10.00w%
クエン酸 2.20w%
精製水 87.80w%
パック液を配合して調製し、ブリスターパックに5.4gを注入して密封した。
[シート処方] 2.2w%担持銀ゼオライト 2.0w%/シートw
精製水 98.0w%
このA型銀ゼオライト粉末の分散液に、オイコスAP2060(目付60g/m)シートを浸漬してマングルで絞り率100%として乾燥して、A型銀ゼオライト0.5w%含有するシートを作成し15cm×20cmに裁断して用いた。
[シートに載置と包装]
前記A型銀ゼオライトを2.0w%含有する吸液シート(15cm×20cm)を5cm×5cmに折り畳んだ上に、前記パック液を注入した易破壊性ブリスターパックを載置して図1に示す抗菌パックシート包装体に収納した。
(パック施術)
前記抗菌パックシート包装体の易破壊性ブリスターパックを指で押してカプセルの蓋部を破り、パック液を吸液シートに浸透させて含浸状態とすると崩壊銀イオンを生成する。
患部にパックして10分程度経過後に剥離して拭き取る。
[含浸液の性状]崩壊銀イオンの濃度 21.0ppm
pH 4.5
TD2 6分(緑膿菌)
(効果)
TD2は6分である。10分程度患部にパックすることにより緑膿菌を99%殺菌して化膿を予防することができる。

Claims (7)

  1. 液体を貯留する易破壊性ブリスターパックが吸液シートの上に底シールを介して載置さ
    れており、使用時に上記易破壊性ブリスターパックの頂部を指で押さえることで、底シール材を破壊して上記吸液シートに液体を含浸させて含浸パックシートを取り出すことのできるパックシート包装体であって、
    前記パックシート包装体が、前記易破壊性ブリスターパックにクエン酸水溶液を貯蔵し、前記吸液シートの内部にA型銀ゼオライトを粉末の状態で含有することを特徴とする抗菌パックシート包装体。
  2. 前記クエン酸水溶液中のクエン酸の配合量の割合が、前記A型銀ゼオライトの配合量に対して1.2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌パックシート包装体。
  3. 前記吸液シートが50〜500重量%の吸液率であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌パックシート包装体。
  4. 前記吸液シートが発泡シート、織布、不織布又は紙の材料であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の抗菌パックシート包装体。
  5. 前記吸液シートが0.1〜5.0重量%の範囲の前記A型銀ゼオライトを含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の抗菌パックシート包装体。
  6. 前記クエン酸により前記A型銀ゼオライトの結晶構造を崩壊して生成される銀イオンを含浸する前記吸液シートが、その銀イオン濃度が0.8〜110ppmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の抗菌パックシート包装体。
  7. 前記銀イオンを含浸する吸液シートが、デオドラント用、にきびケア用又は褥瘡ケア用であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の抗菌パックシート包装体。
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