以下、本発明の一実施形態に係る食品盛り付け用トレー容器について説明するが、まずは、本発明に係る食品盛り付け用トレー容器の代表的な実施形態について模式図を用いて説明する。
本発明の一実施形態に係る食品盛り付け用トレー容器は、全体として深さの浅いトレー状の容器であって、底部1と該底部1の周縁部から上方に立ち上がる側壁部2とを備えた構成を基本構成とするものである。後述するように一般的には側壁部2の上端にフランジ部3が形成されるが、このフランジ部3の有無及びその形状は任意である。従って、底部1と側壁部2とを備えた基本構成のもので代表的な実施形態について説明する。
図1〜図3に代表的な形態を模式図で示している。前後方向、即ち手前側を前とし奥側を後とした前後方向に沿って容器を切断したときの断面形状を端面図として示しており、図中向かって左側が手前(前)、右側が奥側(後)である。底部1の上面には、上方に向けて盛り付け用膨出部4が膨出形成されている。容器はいわゆるシート成形により形成されているので、底部1の上面と下面は、原則として互いに対応した凹凸関係を有しており、上面が凸形状であれば下面はそれに対応して凹形状となる。従って、底部1の下面には盛り付け用膨出部4に対応した凹部が形成される。底部1の上面には、複数の盛り付け用膨出部4が前後に並んで形成されており、その個数は任意であるが、一例として三つの場合を例示する。即ち、底部1の上面には、手前側から順に数えて、一番目の盛り付け用膨出部4a、二番目の盛り付け用膨出部4b、三番目の盛り付け用膨出部4cが、前後に所定の間隔をあけながら互いに略平行に並んで形成されている。即ち、三つの盛り付け用膨出部4のうち、一番目の盛り付け用膨出部4aが最も手前に位置し、二番目の盛り付け用膨出部4bは前後方向の中央に位置し、三番目の盛り付け用膨出部4cは最も奥側に位置している。このように、複数の盛り付け用膨出部4が、段々畑の如く、手前側から奥側に向けて多段状に形成されている。尚、以下、特に区別を要しない場合には最後の小文字を付すことなく総称して盛り付け用膨出部4と称する。他の符号についても同様である。
図1(a)及び(b)は、何れも底部1が全体として略平坦である場合の形態を示している。図1(a)は、盛り付け用膨出部4が断面視略三角山形状のものであり、前側から後側に向けて上昇する傾斜面5が食品を載置するための食品載置面とされる。該食品載置面は盛り付け用膨出部4の大部分を占めている。該傾斜面5は、この容器においては、盛り付け用膨出部4の前側の麓Fの地点から頂上Tまで形成されているが、頂上Tまで形成されずに麓Fから中腹まで形成される形態であってもよい。尚、この容器の盛り付け用膨出部4の後部には頂上Tから後側に向けて下降する小さな傾斜面が形成されているが、この後部の傾斜面は盛り付け用膨出部4の食品載置面には含まれない。尚、傾斜面5は、前後方向に沿って切断した断面視において、上面側が凸(下面側が凹)となるように湾曲した湾曲面であってもよいし、逆に、上面側が凹(下面側が凸)となるように湾曲した湾曲面であってもよいし、湾曲していない平面であってもよく、また、複数の盛り付け用膨出部4において、傾斜面5が湾曲面であるものと平面であるものが混合している形態であってもよいが、図1(a)では全ての傾斜面5が湾曲していない平面の場合を示している。後述する図1(b)や図2の傾斜面5についても同様である。
傾斜面5の水平面に対する傾斜角度θ(勾配)は、一番目(一番手前)の盛り付け用膨出部4aにおいて最小であり、二番目の盛り付け用膨出部4b、三番目の盛り付け用膨出部4cと徐々に奥側に向けて大きくなっていく。図中、一番目の盛り付け用膨出部4aの傾斜面5aの傾斜角度をθaで示し、二番目の盛り付け用膨出部4bの傾斜面5bの傾斜角度をθbで示し、三番目の盛り付け用膨出部4cの傾斜面5cの傾斜角度をθcで示しているが、θa<θb<θcとなる。これら三つの盛り付け用膨出部4の傾斜面5の前後方向の寸法は何れも同じである。従って、傾斜面5の傾斜角度θが一番目の盛り付け用膨出部4aから二番目の盛り付け用膨出部4b、三番目の盛り付け用膨出部4cと、手前側から奥側に向けて徐々に大きくなっていくことにより、盛り付け用膨出部4の高さHも一番目から二番目、三番目と順に高くなっていく。図中、一番目の盛り付け用膨出部4aの高さをHaで示し、二番目の盛り付け用膨出部4bの高さをHbで示し、三番目の盛り付け用膨出部4cの高さをHcで示しているが、Ha<Hb<Hcとなる。尚、盛り付け用膨出部4の高さHは容器を水平な設置面50に設置したとき、その設置面50を基準面としてそこから盛り付け用膨出部4の頂部までの高さである。このように、図1(a)で示す容器では、盛り付け用膨出部4の高さHが手前側のものから奥側のものにかけて徐々に高くなっていくと共に、盛り付け用膨出部4の傾斜面5の傾斜角度θも手前側のものから奥側のものにかけて徐々に大きくなっていく。
図1(b)に示す容器は、図1(a)と同様に盛り付け用膨出部4が断面視略三角山形状のものであるが、盛り付け用膨出部4の傾斜面5の傾斜角度θは三つの盛り付け用膨出部4において互いに同じである。一方、盛り付け用膨出部4の傾斜面5の前後方向の寸法は三つの盛り付け用膨出部4において互いに同じではなく手前側のものから奥側のものへと徐々に大きくなっている。従って、盛り付け用膨出部4の高さHは、手前側のものから奥側のものにかけて徐々に大きくなる。即ち、図1(b)に示す容器では、三つの盛り付け用膨出部4の傾斜角度θが互いに同じで、即ちθa=θb=θcであり、三つの盛り付け用膨出部4の高さHが手前側よりも奥側の方が高くなる。尚、図1(a)及び(b)においては底部1が全体として略平坦であるので、三つの盛り付け用膨出部4における高さHの差は、即ち、盛り付け用膨出部4の膨出量(麓Fから頂上Tまでの高さH)の差となる。
一方、図2(a)及び(b)に示す容器は、底部1が全体として手前側よりも奥側の方が高くなるように形成されているものであって、図1(a)及び図1(b)と同様に盛り付け用膨出部4が断面視略三角山形状であってその傾斜面5が食品載置面となるものである。図2(a)に示す容器は、三つの盛り付け用膨出部4の傾斜面5が何れも同じ傾斜角度θであって傾斜面5の前後方向の寸法も同じであるが、底部1が全体として手前側よりも奥側の方が高くなっているので、膨出量には差がないものの、盛り付け用膨出部4の高さHは手前側のものから奥側のものへと徐々に高くなっていく。図2(b)に示す容器は、三つの盛り付け用膨出部4の傾斜面5の前後方向の寸法が同じであるが傾斜面5の傾斜角度θが手前側のものから奥側のものへと徐々に大きくなっている。従って、盛り付け用膨出部4の膨出量は手前側のものから奥側のものへと徐々に大きくなっている。しかも、底部1が全体として手前側よりも奥側の方が高くなるように形成されていることとの相乗効果により、盛り付け用膨出部4の高さHは手前側のものから奥側のものへと徐々に高くなっている。以上、図1及び図2に示したように、盛り付け用膨出部4の食品載置面は、単一の傾斜面5から構成されるものであってもよい。但し、次の図3に示すように、盛り付け用膨出部4の食品載置面が勾配の異なる二つの載置面から構成されると尚良い。
図3に示す容器は、底部1が全体として手前側よりも奥側の方が高くなるように形成されているものであって、盛り付け用膨出部4が、食品載置面として傾斜面5と頂部載置面6とを有しているものである。頂部載置面6は傾斜面5よりも緩い勾配、傾斜であって、図3ではその一例として頂部載置面6が略平坦である場合を示している。更に、傾斜面5も上述したように前後方向に沿って切断した断面視において湾曲した湾曲面であってもよいし湾曲していない平面であってもよいが、図3では上面側が凸となるように湾曲した湾曲面である場合を例示している。図3に示す容器においても図2(b)と同様に、傾斜面5の傾斜角度θは手前側のものから奥側のものへと徐々に大きくなっており、従って、盛り付け用膨出部4の膨出量は手前側のものから奥側のものへと徐々に大きくなっていると共に、盛り付け用膨出部4の高さHも手前側のものから奥側のものへと徐々に高くなっている。尚、以上に例示した容器では、三つの盛り付け用膨出部4においてその高さHが手前側のものから奥側のものへと徐々に高くなったり傾斜角度θが徐々に大きくなったりしていたが、複数の盛り付け用膨出部4の中から任意に選択した二つの盛り付け用膨出部4のうち、手前側の盛り付け用膨出部4よりも奥側の盛り付け用膨出部4の方が高さHが高かったり傾斜角度θが大きかったりすればよい。従って、複数の盛り付け用膨出部4のうち、同じ高さHや傾斜角度θであるものが混在していてもよい。
以上のように本発明に係る容器には種々の実施形態があるが、そのうち図3に示した実施形態の容器を更に具体化したものを図4〜図9に示している。図4は斜視図、図5は平面図、図6はA−A線で切断した端面図、図7はA−A線で切断した断面図、図8は背面図であり、図9は盛り付け状態の一例を示した端面図である。
この実施形態における容器は、底部1と側壁部2とを備えると共に側壁部2の上端にはフランジ部3が全周に亘って形成されているものである。該容器の平面視の形状は任意であるが、本実施形態のものは平面視略矩形であって具体的には横長の長方形であるが、例えば縦長の長方形であってもよいし正方形であってもよい。各辺が平面視において、外側に膨れた形状であってもよいし、逆に内側に括れた形状であってもよい。また、種々の多角形や円形(丸形)、半円状、扇状等、種々の形状であってよい。本実施形態では容器が平面視略長方形であるので、底部1は平面視略長方形であり、長方形の各辺に対応して、側壁部2は四つの側壁辺部21,22,23,24を有し、フランジ部3は四つのフランジ辺部を有する。
図4及び図5において符号Xで示す方向が容器の左右方向(幅方向)であり、符号Yで示す方向が容器の前後方向(奥行き方向)である。従って、複数の盛り付け用膨出部4の並設方向は前後方向であり、食品載置面は、並設方向と直交する方向である左右方向に延びている。底部1の上面の所定箇所には、容器の前後方向の向きを示すための表示部7を設けることが好ましい。表示部7としては例えば「手まえ」という文字を容器の成形時に同時に形成しておくようにすることが好ましく、その表示部7を底部1の上面の手前側の位置に設けることが好ましく、より詳細には、最も手前に位置する盛り付け用膨出部4aに設けることが好ましい。
盛り付ける対象となる食品は特には限定されず、各種の食品であってよいが、例えば、薄くスライスされたしゃぶしゃぶ用の薄切り肉や、焼き肉用として所定サイズにカットされたカット肉、所定サイズにカットされたローストビーフの切り身等、精肉や調理した肉における各種の切り身、あるいは、魚やイカ等の刺身が好適である。容器の上面開口部は蓋で閉塞してもよいし、ラップフィルムで覆うようにしてもよいが、上方に膨出した形状を有する蓋で閉塞することが好ましい。蓋を使用する場合、外嵌合や内嵌合等の嵌合構造を採用して、容器のフランジ部3に蓋が嵌合するように構成することが好ましい。
該容器はいわゆるシート成形により形成されている。シート成形としては例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、熱板成形等があり、何れにしても合成樹脂シートを熱成形することにより形成される。従って、容器の上面と下面は原則として凹凸が逆の形状となる。ここで、合成樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂から構成された、単層や多層のシートを使用することができる。特に、前記樹脂を発泡させた発泡樹脂を素材とした合成樹脂製発泡シートを使用することが好ましく、断熱性を備えるうえに軽量化することができ、その中でも、ポリスチレンを発泡させた発泡ポリスチレンシートが好ましく、ポリスチレンとして耐熱性に優れた耐熱性のスチレン系樹脂を使用した耐熱性発泡スチレン系樹脂シートを使用して熱成形することが好ましい。また、各種シートの表面に合成樹脂フィルムをラミネートした積層シートを使用してもよく、特に、発泡シートの両面もしくは片面のみに合成樹脂フィルムをラミネートして良く、片面のみにラミネートする場合にはラミネートする面を上面として良く、また、そのラミネートする合成樹脂フィルムに各種の印刷を施すようにすることが好ましい。後述するように、蓋を使用する場合にはこれらのうち透明な合成樹脂シートを使用して同様に熱成形することが好ましい。容器や蓋に、無機物を充填したシートを使用してもよい。
底部1の下面には脚部8が下方に向けて突出されており、底部1の上面には脚部8に対応した脚対応凹部9が形成されている。脚部8を設けることにより、設置面50から底部1を上方に浮かせることができ、盛り付けられた食品の重さによって底部1が撓んでも容器を水平状態に設置できる。脚部8は底部1の周縁部に形成されることが好ましく、特に、容器が平面視略矩形である場合には、その四つの隅部にそれぞれ脚部8を設けることが好ましく、隅部の脚部8はL字状に形成されることが好ましい。合成樹脂シートから成形された蓋を使用する場合であって、隅部の脚部8をL字状に形成すれば、蓋の天面部の隅部を容器のL字状の脚部8の内側に係合させることができ、蓋付きの容器を上下に段積みした際の容器の前後左右のズレを防止できる。また、底部1の左右両端の前後方向の中間部にも脚部8を形成することが好ましい。脚対応凹部9は、盛り付けた食品からドリップが生じた場合にはそのドリップ溜めとしても機能する。尚、底部1の上面に仕切りを設けてもよい。また、容器には、容器単体同士を重ね合わせた際のブロッキングを防止するための凸部を形成してもよい。蓋を使用する場合には、その蓋についても同様であって、蓋同士を重ね合わせた際のブロッキングを防止するための凸部を形成してもよい。
底部1の上面には、三つの盛り付け用膨出部4が前後方向に並んで膨出形成されている。即ち、三つの盛り付け用膨出部4の並設方向は前後方向である。該盛り付け用膨出部4は、脚対応凹部9よりも容器の内側(中央側)に形成されており、脚対応凹部9の内側の壁面から連続するように上方に膨出形成されている。尚、脚対応凹部9の外側の壁面は、側壁部2の内面と連続している。盛り付け用膨出部4は、底部1の上面の全幅(左右方向の全長)のうち脚対応凹部9を除いた残りの全幅に亘って形成されていて、左右両端の脚対応凹部9を架橋するように左右方向に山脈状に延びている。尚、盛り付け用膨出部4の高さは左右方向に沿って略一定であってもよいが、本実施形態では左右方向の中央部が最も高くそこから左右両側に向けて徐々に低くなるように形成されている。
また、三つの盛り付け用膨出部4の前側にはそれぞれ略平坦な麓面部10が存在している。従って、一番目の盛り付け用膨出部4aは前側の側壁辺部21から所定距離離間した位置に形成されており、また、二番目の盛り付け用膨出部4bは一番目の盛り付け用膨出部4aの後側に所定距離離間して形成され、三番目の盛り付け用膨出部4cは二番目の盛り付け用膨出部4bの後側に所定距離離間して形成されている。そして、最も奥側に位置する三番目の盛り付け用膨出部4cは後側の側壁辺部22から所定距離離間しており、三番目の盛り付け用膨出部4cと後側の側壁辺部22との間には、後側に向けて若干下方に傾斜した後方傾斜面11が形成されている。尚、一番目の盛り付け用膨出部4aと前側の側壁辺部21との間に形成された麓面部10の左右両側と、三番目の盛り付け用膨出部4cと後側の側壁辺部との間に形成された後方傾斜面11の左右両側には、それぞれ底部1の隅部に形成された脚対応凹部9が位置している。
盛り付け用膨出部4は、食品を載置するための食品載置面を有している。食品載置面の構成も種々であってよいが、本実施形態では傾斜面5と頂部載置面6とを有している。本実施形態では、容器の平面視形状が横長の略長方形であるので、盛り付け用膨出部4もそれに合わせて左右方向に延びた横長の形状となっており、その傾斜面5や頂部載置面6もまた横長の形状となっている。食品載置面は盛り付け用膨出部4の大部分を占めており、傾斜面5の前後方向の寸法は頂部載置面6の前後方向の寸法よりも大きい。
傾斜面5は盛り付け用膨出部4の前側に位置する麓面部10から後側に向けて徐々に上昇していくように傾斜している。上述したように傾斜面5は湾曲した湾曲面であってもよいし湾曲していない傾斜平面であってもよいが、本実施形態では上側が凸となるように湾曲した湾曲面となっている。そして、傾斜面5の傾斜角度は、一番目の盛り付け用膨出部4aから二番目の盛り付け用膨出部4b、三番目の盛り付け用膨出部4cへと徐々に大きくなっていく。傾斜面5の前後方向の寸法は全て略同じであるので、盛り付け用膨出部4の傾斜角度が手前側のものから奥側のものへと徐々に大きくなっていることにより、盛り付け用膨出部4の高さ(設置面50から頂部載置面6までの高さ)や膨出量(それぞれの前側に位置する麓面部10から頂部載置面6までの高さ)は、手前側のものから奥側のものへと徐々に大きくなっていく。
盛り付け用膨出部4の高さと側壁部2の高さとの関係について言及する。本実施形態においては、側壁部2の上端部にフランジ部3が形成されているので、側壁部2の高さは即ちフランジ部3の高さとなる。図7に示すのように、一番目の盛り付け用膨出部4aは最も高さが低くフランジ部3よりも低くなっている。二番目の盛り付け用膨出部4bはフランジ部3と略同じ高さあるいはフランジ部3よりも若干低い高さである。そして、最も高さ高い三番目の盛り付け用膨出部4cはフランジ部3よりも若干高くなっている。より詳細には、容器を背面側即ち後側から見ると、図8のように、三番目の盛り付け用膨出部4cの頂部近傍がフランジ部3よりも若干上方に位置した状態となる。尚、フランジ部3の高さは全周に亘って略一定であってもよいが、本実施形態では四つの隅部において最も高く各フランジ辺部の中央部において最も低くなっており、従って、最も高い三番目の盛り付け用膨出部4cがフランジ部3の所定箇所(本実施形態ではフランジ辺部の中央部)よりも若干高くなるように設定することが好ましい。また、上述したように盛り付け用膨出部4の高さが左右方向中央部において最も高く左右方向両端部において最も低くなっている場合には、左右方向中央部においてフランジ部3に対して若干高くなるようにすることができ、フランジ部3が辺中央部において最も低くなるように形成されている場合には、盛り付け用膨出部4の左右方向中央部をフランジ辺部の中央部よりも高くなるように設定しやすい。このようにフランジ部3よりも盛り付け用膨出部4の方が高くなるような場合には、シート成形により上側凸に形成した保形性を有する成形蓋を使用することが好ましく、特に透明な合成樹脂シートから成形した透明な成形蓋が好ましい。
頂部載置面6は傾斜面5よりも傾斜角度が小さいものであればよい。即ち、頂部載置面6は、傾斜面5よりも緩傾斜(緩い勾配)であればよく、傾斜面5と同様に前側から後側に向けて上昇する傾斜面であってもよいが、本実施形態では傾斜角度が略0であって略平坦面となっており、傾斜面5と滑らかに連続している。
尚、傾斜面5や頂部載置面6には、所定長さを有する凸条12を一又は複数形成することが好ましい。凸条12は左右方向に延びるものであってもよいし、前後方向に延びるものであってもよいが、少なくとも左右方向に延びる凸条12を備えていることが好ましく、更に好ましくは、左右方向に延びる横凸条12と前後方向に延びる縦凸条12とを混在させることが好ましい。このように凸条12を形成することにより、食品載置面に盛り付けた食品の位置ずれを効果的に防止することができると共に食品載置面の強度も向上する。尚、凸条12は直線に限らず曲線であってもよい。また、凸条12に代えて凹条を備えていてもよいし、凸条12と凹条を混在させてもよいし、凸条12や凹条と共に、あるいはそれらに代えて、例えば半球状の小突起を形成してもよい。
また、底部1の上面の所定箇所には、容器を成形型から吸着して取り出す際の吸着パッド面部13を形成しておくことが好ましい。該吸着パッド面部13は、容器成形工程のみならず容器搬送工程においても使用されるものである。該吸着パッド面部13の形成位置は任意であるが、好ましくは容器の左右方向中央部とし、その左右方向中央部に前後方向に間隔をあけて複数箇所形成することが好ましい。本実施形態では、三つの盛り付け用膨出部4の傾斜面5の下部から麓面部10にかけてそれぞれ形成されていて盛り付け用膨出部4の個数に合わせて合計三箇所形成されている。吸着パッド面部13が麓面部10から傾斜面5にかけて形成されることにより、傾斜面5には吸着パッド面部13の後部形状に対応した形状の切欠凹部が形成される。吸着パッド面部13の形状は任意であるが、例えば、平面視において前部を矩形状とし後部を半円状とすることができる。その形状の場合、切欠凹部は平面視略半円状となる。尚、三つの吸着パッド面部13は何れも設置面50に対して略平行な平坦面であるが、底部1が全体として後側が高くなるように形成されていることから、後側の吸着パッド面部13ほど高さが高くなっている。また、吸着パッド面部13は成形時の圧力によって上方から押圧されることで麓面部10よりも若干低くなっているが、吸着パッド面部13に対応した底部1の下面の箇所は、麓面部10に対応した底部1の下面の箇所と略面一となっている。
尚、フランジ部3の外縁部には縁取り部30を設けることが好ましい。縁取り部30は内外方向に向けて略水平に延びていることが好ましく、その幅は例えば1mm程度である。該縁取り部30の上面には、容器を形成する際の熱成形と同時に細かな凹凸加工やエンボス加工を施すことが好ましく、特に、縁取り部30の端面を正面に見た場合において正弦波や三角波、台形波等の波形形状に形成することが好ましい。縁取り部30の上面に凹凸形状を設けることにより、容器に触れる指先を保護することができると共に、縁取り部30の外縁を起点として裂断することを効果的に防止することができる。従って、縁取り部30は全周に亘って形成することが好ましい。縁取り部30の凹凸形状は平目ローレット目や綾目ローレット目等のようなローレット目としてよく、特に綾目ローレット目とすることが滑りにくさの点で好ましい。
以上のように構成された食品盛り付け用トレー容器には、例えば薄切り肉や焼き肉用にカットされたカット肉を盛り付けることができるが、一例としてカット肉を盛り付けた場合を図9に示している。図9においてカット肉である食品Bを二点鎖線で示しているが、このように奥側から手前側に向けて順に盛り付けていくことが好ましく、奥側に盛り付けた食品Bの前部の上に手前側に盛り付ける食品Bの後部を重ね合わせるようにして盛り付けていくことが好ましい。
このように本実施形態における容器にあっては、盛り付け用膨出部4が食品載置面として傾斜面5を有しているので、その傾斜面5の傾斜を利用して食品を前傾姿勢に盛り付けることができる。そして、手前側の盛り付け用膨出部4の高さよりも奧側の盛り付け用膨出部4の高さの方が高くなっているので、盛り付け用膨出部4の食品載置面に食品を盛り付けることで自然に手前側の食品よりも奥側の食品の方が高さが高くなり、盛り付けた食品に奥行き感やボリューム感が生まれることになる。特に、フランジ部3に対する盛り付け用膨出部4の相対的な高さが前後で変化しているため、盛り付けた食品のボリューム感や立体感をフランジ部3の高さとの関係で容易に視認でき、購買者に対して容易に訴求できる。しかも、最も高い三番目(最奧)の盛り付け用膨出部4がフランジ部3よりも若干高く設定されているので、視覚的に高い演出効果を発揮できる。
しかも、手前側の盛り付け用膨出部4の傾斜面5よりも奧側の盛り付け用膨出部4の傾斜面5の方が急傾斜に形成されているので、盛り付け用膨出部4の食品載置面に食品を盛り付けることで自然に手前側の食品の前傾姿勢よりも奥側の食品の前傾姿勢の方が急となり、奥行き感やボリューム感がより一層高まることになる。また、手前側の食品よりも奥側の食品の方が高くなっているうえに、手前側の食品よりも奥側の食品の方が傾斜が急になっているので、盛り付けられた食品を手前側から見た場合に、奥側の食品が手前に迫ってくる感じに見えることになり、購買者に対する高いアピール力が発揮される。従って、熟練者でなくても、奥行き感やボリューム感のある立体的で見栄えの良い盛り付けを簡単に行うことができる。
また、底部1が全体として奥側が高くなるように傾斜しているうえに更に手前側の盛り付け用膨出部4の膨出量よりも奧側の盛り付け用膨出部4の膨出量の方が大きくなっているので、奥側に盛り付けた食品の迫り上がり感や盛り上がり感がより一層増すことになり、手前側から見る購買者に対して食品のアピール力をより一層向上させることができる。
また更に、食品載置面として傾斜面5と緩傾斜の頂部載置面6という傾斜勾配の異なる二つの載置面を有していると、盛り付けた食品のズレを防止することができる。従って、食品載置面が単一の傾斜面から構成される場合に比して、盛り付け作業がより一層容易になり、盛り付け作業に要求される熟練度もより一層低いもので足りる。しかも、食品載置面が傾斜勾配の異なる二つの載置面を有することで、食品載置面が単一の傾斜面である場合に比して、盛り付けられた食品の姿勢に変化が生まれて立体感も増す。また、薄切り肉等のように食品のサイズが大きい場合には、その食品を傾斜面5と頂部載置面6とに跨ぐように載置して盛り付けることができ、食品のボリューム感を出しつつそのズレを効果的に防止することができる。また、傾斜面5が前後方向に沿って上面側が凸となる湾曲面であると、食品のズレがより一層防止されると共に食品のボリューム感も増すため好ましい。同様に、傾斜面5や頂部載置面6が左右方向に沿って中央部が最も高くなるように上側凸に湾曲していると、食品のボリューム感や立体感がより一層向上するため好ましい。
尚、本実施形態では盛り付け用膨出部4を三個形成したが、その個数は任意であって好ましくは二〜八個であり、より好ましくは二〜四個である。例えば、盛り付け用膨出部4を前後二つ並設した場合には例えば図10のようになる。図10に示す容器の構成は盛り付け用膨出部4の個数が二個になった他は、図6に示したものと同様である。また、図11のように盛り付け用膨出部4を前後四つ並設してもよい。尚、図11に示している容器においては、一番目の盛り付け用膨出部4aと二番目の盛り付け用膨出部4bにおいて、その高さが互いに略同じであり、膨出量と傾斜面5の傾斜角度も互いに略同じである。そして、三番目の盛り付け用膨出部4cは一番目及び二番目の盛り付け用膨出部4bよりも高く傾斜面5の傾斜角度も急なものとなっており、四番目の盛り付け用膨出部4dは更に三番目の盛り付け用膨出部4cよりも高く傾斜面5の傾斜角度も更に急なものとなっている。このように盛り付け用膨出部4が三つ以上並設される構成においては、前後に隣接する二つの盛り付け用膨出部4において、その高さが互いに略同じであったり、傾斜面5の傾斜角度が互いに略同じであったりしてもよい。