本発明は、水道管の内部に溜まった空気を管外へ排出する空気弁に関する。
従来より、水道管の内部に空気が溜まることによる弊害を防止するために、水道管内部の空気を外部に排出する空気弁がいろいろな場所で広く用いられている。空気弁は、水道管の設置、水道管の調査、及び水道管の工事などの後に水道管の中の多量の空気を排出(排気)する多量排気(急速排気)の機能と、水道水が通常の圧力で水道管を流れている状態で様々な原因で水道管に混入した空気を少量ずつ排出する少量排気の機能と、を有するものが一般的に用いられている。
図6及び図7に示す空気弁201は、従来の構造のものであり、本願発明者が発明者である特許文献1で従来技術として説明したものと同様の典型的なものである。この空気弁201は、基本構造として、上方端部に通気口202a、下方端部に通水口202bを有し、通気口202aの下方内部に中空部202c、その下方に導水部202dを有する弁箱202と、大空気孔203aを有して弁箱202の通気口202aに装着される内蓋体203と、大空気孔203aの上方を覆うように設けられる外蓋体204と、弁箱202の中空部202cに配される弁体案内205と、弁体案内205の内方に配されるフロート弁体206と、弁体案内205の内方であってフロート弁体206の上方に配され、上下方向に貫通する小空気孔207aを有し、上端面が内蓋体203の大空気孔203aを塞ぎ得る遊動弁体207と、を備えるものである。フロート弁体206と遊動弁体207とは、水よりも比重が小さいものであり、また遊動弁体207は、フロート弁体206よりも軽量である。
空気弁201のより具体的な構造は、以下の通りである。弁箱202は、導水部202dの中間部にコック224を有している。内蓋体203は、上側内蓋体203Aと下側内蓋体203Bが重ねられている。内蓋体203は軸方向両側に雄ねじが形成された蓋体固定ボルト242、242、・・・の一方の雄ねじによって弁箱202に固定され、外蓋体204は蓋体固定ボルト242、242、・・・の他方の雄ねじとナット243、243、・・・によって内蓋体203に固定される。弁体案内205は、側部と底部の適宜位置に、空気や水の流通が可能な窓孔205aを有している。フロート弁体206は、球体状をなしている。遊動弁体207は、中央においてわずかに下方に突出する弁座271を有しており、これに前述した小空気孔207aが形成されている。
この空気弁201の動作は、以下の通りである。水道管200から弁箱202の中空部202cへ水が浸入する前、すなわち多量排気が行われる前は、図6(b)に示すように、遊動弁体207及びフロート弁体206は弁体案内205の底部の上に重なった状態にある。そして、コック224が開かれ、水道管200から弁箱202の中空部202cへ水が浸入してくると、弁箱202の中空部202cの空気は、弁体案内205の窓孔205aを経由しながら水圧に押されて大空気孔203aから急速に排出(多量排気)される。同時に、遊動弁体207及びフロート弁体206は、弁体案内205の内側面にガイドされながら水位の上昇に従って浮き上がる。これにより、遊動弁体207が内蓋体203に密接して大空気孔203aを塞ぐ。
このようにして多量排気が終わった後は、少量排気が行われる。遊動弁体207とフロート弁体206の間には、比較的少量の空気が溜まっており、この空気溜まりAにより、喫水線(空気と水の境界)とともに、図7(a)に示すように、フロート弁体206が押し下げられ、他方、遊動弁体207は押し上げられたままの状態となる。そうすると、空気は小空気孔207aを経て、弁箱202の外方へ放出(少量排気)される。そして、空気溜まりAの空気が少なくなると、図7(b)に示すように、フロート弁体206が上昇して遊動弁体207に密接してその小空気孔207aを塞ぎ、弁箱202の中空部202cは密封状態となる。その後、水道管200から弁箱202の中空部202cへ空気が水に混じって浸入し空気溜まりAの空気が再度多くなると、再度少量排気が行われる。
また、図8に示す空気弁101は、従来の構造のものであり、特許文献1で新しく開示された一つと略同様のものである。この空気弁101は、基本構造として、上方端部に通気口102a、下方端部に通水口102bを有し、通気口102aの下方内部に中空部102c、その下方に導水部102dを有する弁箱102と、大空気孔103aを有して弁箱102の通気口102aに装着される内蓋体103と、大空気孔103aの上方を覆うように設けられる外蓋体(レバーカバー)104と、弁箱102の中空部102cに配される弁体案内105と、弁体案内105の内方に配されるフロート弁体106と、弁体案内105の内方であってフロート弁体106の上方に配され、上下方向に貫通する小空気孔107aを有し、上端面が内蓋体103の大空気孔103aを塞ぎ得る遊動弁体107と、を備えるものである。フロート弁体106と遊動弁体107とは、水よりも比重が小さいものであり、遊動弁体107は、フロート弁体106よりも軽量である。
空気弁101のより具体的な構造は、以下の通りである。弁箱102は、その外側面の対称位置に2個のレバー121、121を有している。レバー121は、それに触れて操作するところのレバー操作部121aの部分と、内蓋体103の後述する係合溝103bに対し圧接し得る係合部121bの部分と、を有している。また、この弁箱102は、空気弁201のコック224のようなコックがないタイプのものであって、通常は、空気弁101と水道管の間に、コックの部分を有する別体の補修弁100が連接されて用いられる。
内蓋体103は、中央部に前述した大空気孔103aを有する内蓋本体部103Aと、内蓋本体部103Aの上面の周辺部に設けられた2個の内蓋体操作部103B、103Bと、が一体的に形成されてなる。内蓋本体部103Aの外側面には、前述したレバー121の係合部121bが圧接し得る凹状の係合溝103bが環状に形成されている。内蓋体操作部103Bは、その端部である差し込み部分103Baが薄くなるように段差が形成されており、差し込み部分103Baは内蓋本体部103Aの外側面よりも外方に突出している(図10(a)参照)。
内蓋体103の装着は、内蓋体操作部103B、103Bを把持し、その差し込み部分103Ba、103Baが弁箱102の凹み部102e、102eに位置するようにして(図10(a)参照)、内蓋本体部103Aを弁箱102の通気口102aに嵌め込む(図8など参照)。そして、内蓋体103を回転(図10では時計回りに回転)させ、内蓋体操作部103B、103Bの差し込み部分103Ba、103Baを弁箱102の凹み部102e、102eから周方向に形成した溝に差し込む(図10(b)参照)。それから、レバー121、121を倒して、その係合部121b、121bが係合溝103bを両側から圧接するようにする。
外蓋体104は、頂部を有した円筒状であり、取手付き螺子141によって横方向から、ボルト142によって上側から弁箱102に取り付けられる。
弁体案内105は、有底円筒状であって、空気や水の流通が可能な窓孔105aを有している。窓孔105aは、側部と底部の適宜位置に設けられている。
フロート弁体106は、略円柱状であり、また、その上下方向の長さLが横方向の長さ(直径)Wよりも長い、すなわち長尺であるか、或いは長尺に近いものとなっている。また、その上端部106aは円錐台状に先細りになっており、その先端である上端面106aaは略平坦である。上端面106aaは、平坦度が高いほどそれだけ遊動弁体107の後述の弁座171に密接し易くなるが、その一方で弁座171と固着状態となって密接した状態から離れ難くなる場合もあり得るので、若干の曲率を有するようにしてもよい。
遊動弁体107は、大略円板状であり、下端面の中央付近に凹部107bが形成されている。その凹部107bの中央には、フロート弁体106に密接可能なようにわずかに下方に突出して表面が略平坦であり、弾性を有する弁座171を有しており、前述した小空気孔107aが弁座171の中心に上下に貫通して形成されている。凹部107bは、フロート弁体106が弁座171に接触できるように、フロート弁体106の上端部106aが余裕を持って入り込み得る大きさになっている。また、遊動弁体107の外周面から凹部107bに空気が通過できるように横方向に貫通孔107cが形成されている。また、遊動弁体107は、その上端面の中央部に凸部107dが形成されており、この凸部107dは、内蓋体103の大空気孔103aに入り得るように、それより小さくなっている。
この空気弁101の動作は、以下の通りである。水道管から補修弁100を介して弁箱102の中空部102cへ水が浸入する前、すなわち多量排気が行われる前は、図8(b)に示すように、遊動弁体107及びフロート弁体106は弁体案内105の底部の上に重なった状態にある。補修弁100のコックが開かれ、水道管から補修弁100を介して弁箱102の中空部102cへ水が浸入してくると、弁箱102の中空部102cの空気は、弁体案内105の窓孔105aを経由しながら水圧に押されて大空気孔103aから急速に排出(多量排気)される。同時に、遊動弁体107及びフロート弁体106は、弁体案内105の内側面にガイドされながら水位の上昇に従って浮き上がる。これにより、遊動弁体107が内蓋体103に密接して大空気孔103aを塞ぐ。
このようにして多量排気が終わった後は、少量排気が行われる。遊動弁体107とフロート弁体106の間には、比較的少量の空気が溜まっており、この空気溜まりAにより、喫水線とともに、図9(a)に示すように、フロート弁体106が押し下げられ、他方、遊動弁体107は押し上げられたままの状態となる。そうすると、空気は小空気孔107aを経て、弁箱102の外方へ放出(少量排気)される。そして、空気溜まりAの空気が少なくなると、図9(b)に示すように、フロート弁体106が上昇して遊動弁体107に密接してその小空気孔107aを塞ぎ、弁箱102の中空部102cは密封状態となる。その後、水道管から補修弁100を介して弁箱102の中空部102cへ空気が水に混じって浸入し空気溜まりAの空気が再度多くなると、再度少量排気が行われる。
この空気弁101が鉛直方向から傾斜して設置された場合、少量排気時に空気溜まりAによりフロート弁体106が弁座171から離れて押し下げられると、フロート弁体106は、上側となる弁体案内105の内側面に円柱状をなす側面が図11(a)に示すように接したり、或いは離れたりしながら水面に浮く。喫水線が遊動弁体7の弁座171のごく近傍まで上昇して行くと、フロート弁体106の上端面106aaが図11(b)に示すように弁座171の表面に密接し、小空気孔107aを適正に塞ぐことができる。他方、上記の空気弁201は、フロート弁体206が球体状をなしているから、その外表面の曲率が大きく、喫水線が遊動弁体207の弁座271のごく近傍まで上昇して行くと、フロート弁体206が弁座271における小空気孔207aからずれたところに接触することになり、そこで押さえつけられるようになる。そうすると、小空気孔207aを適正に塞ぐことができなくなる。従って、空気弁201は、鉛直方向からの傾斜角度が大きいと正常な動作が難しく、正常な動作が可能な傾斜角度(例えば、鉛直方向から2度以内)になる場所に設置しなければならないが、空気弁101は、傾斜角度が大きくても正常な動作がし易く、比較的自由に場所を選んで設置することが可能になる。
ところで、空気弁は、多量排気において必要とされる排気量が多いときは、弁箱や内蓋体などを大型にして中空部や大空気孔などのサイズを大きくしたものが用いられる。この場合、上記の空気弁101を比例拡大させたような形状構造とした場合、その丈、特に弁箱102の丈(上下方向の長さ)が長くなり過ぎて、地中に収まらなかったり所定の高さに収まらなかったりする場合も起こり得る。それに対しては、弁箱102の上下方向の長さを比較的短めにして横幅を広げ、空気弁101全体の丈を余り長くならないようにすることが考えられる。この場合、フロート弁体106の上下方向の長さLが比較的短めになり、横幅Wが広がる。
フロート弁体106を拡大して上下方向の長さLを比較的短めにし、横幅Wを広げたフロート弁体106’を用いた空気弁101’は、空気弁101と基本的な動作は同様であるが、鉛直方向から傾斜して設置された場合の少量排気の動作に差異が出てくる。すなわち、空気弁101’が鉛直方向から傾斜して設置された場合、水面に浮いているフロート弁体106’は、図12(a)に示すように、浮力を受けて中心軸方向(通常の上下方向)が鉛直方向になるように回動(回復)し、弁体案内105’に接触する。このときの浮力による力のモーメントを図11(a)に示した空気弁101と比較して考えた場合、フロート弁体106’と弁体案内105’との接触点Cからフロート弁体106’の浮心(浮力の中心)Fまでの腕の方向が、弁体案内105’の内側面に対して垂直方向に近いところにあって、力のモーメントが大きく、接触点Cにおいてはフロート弁体106’が弁体案内105’に強く押し付けられることになる。そうすると、喫水線が遊動弁体107’の弁座171’のごく近傍まで上昇して行くとき、フロート弁体106’は弁体案内105’に摺動しながら不規則な動き(スムーズでない動き)で上昇する。そのため、フロート弁体106’の先端である上端面106aa’が図12(b)に示すように、弁座171’の表面に適切に密接できない場合も有り得るので、安定した動作が難しくなる。
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、傾斜角度が大きくても、少量排気時に小空気孔を適正に塞ぐことができ、しかも、フロート弁体の上下方向の長さを比較的短めにして横に広げることができる空気弁を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の空気弁は、上方端部に通気口、下方端部に通水口を有し、通気口の下方内部に中空部、その下方に導水部を有する弁箱と、大空気孔を有して前記弁箱の通気口に装着される内蓋体と、前記弁箱の中空部に配される弁体案内と、前記弁体案内の内方に配されるフロート弁体と、前記弁体案内の内方であって前記フロート弁体の上方に配され、上下方向に貫通する小空気孔を有し、該小空気孔が貫通する弁座が設けられ、上端面が前記内蓋体の大空気孔を塞ぎ得る遊動弁体と、を備える空気弁において、前記フロート弁体は、中央孔を有する厚肉円筒状のフロート周辺部と、略円柱状であって前記中央孔に挿入されるフロート中央部と、から成り、前記遊動弁体が前記大空気孔を塞いだ少量排気時には、前記フロート周辺部及び前記フロート中央部は、前記遊動弁体との間の空気溜まりに応じて前記遊動弁体に接触又は前記遊動弁体から押し下げられた状態になり、かつ、前記フロート中央部は、前記遊動弁体に接触したとき前記弁座に密接して前記小空気孔の下方を塞ぐことを特徴とする。
請求項2に記載の空気弁は、請求項1に記載の空気弁において、前記フロート周辺部及び前記フロート中央部が前記遊動弁体から押し下げられるときは、前記フロート中央部は、前記フロート周辺部に接することで、押し下げられた前記フロート周辺部に従って押し下げられることを特徴とする。
請求項3に記載の空気弁は、請求項1又は2に記載の空気弁において、前記フロート中央部は、鍔部を有して段差を形成しており、前記フロート周辺部の前記中央孔は、前記鍔部が嵌り込み可能なように、大径の部分を有して段差を形成していることを特徴とする。
請求項4に記載の空気弁は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気弁において、前記フロート中央部は、その上端部が円錐台状に形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の空気弁は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気弁において、前記フロート周辺部の上端面は平坦であることを特徴とする。
本発明に係る空気弁によれば、傾斜角度が大きくても、少量排気時にフロート中央部と弁座の適切な密接によって小空気孔を適正に塞ぐことができ、しかも、フロート周辺部を横に広げることで、フロート弁体全体として、上下方向の長さを比較的短めにして横に広げることが容易にできる。
本発明の実施形態に係る空気弁の断面図である。
同上の空気弁の動作の一つの状態を示す断面図である。
同上の空気弁の動作のもう一つの状態を示す断面図である。
同上の空気弁の内蓋体を弁体に装着した状態を示す平面図であり、外蓋体の頂部を透過して見たものである。
同上の空気弁のフロート弁体の動きを説明する拡大部分断面図である。
従来の典型的な空気弁の(a)正面図、(b)断面図である。
従来の典型的な空気弁の動作の2つの状態を示す断面図である。
従来の別の空気弁の(a)正面図、(b)断面図である。
従来の別の空気弁の動作の二つの状態を示す断面図である。
従来の別の空気弁の内蓋体の装着操作を説明する平面図である。
従来の別の空気弁のフロート弁体の動きを説明する拡大部分断面図である。
従来の別の空気弁を変形したときのフロート弁体の動きを説明する拡大部分断面図である。
以下、本発明を実施するための好ましい形態を説明する。本発明の実施形態に係る空気弁1は、基本構造として、図1に示すように、上方端部に通気口2a、下方端部に通水口2bを有し、通気口2aの下方内部に中空部2c、その下方に導水部2dを有する弁箱2と、大空気孔3aを有して弁箱2の通気口2aに装着される内蓋体3と、大空気孔3aの上方を覆うように設けられる外蓋体(レバーカバー)4と、弁箱2の中空部2cに配される弁体案内5と、弁体案内5の内方に配されるフロート弁体6と、弁体案内5の内方であってフロート弁体6の上方に配され、上下方向に貫通する小空気孔7aを有し、上端面が内蓋体3の大空気孔3aを塞ぎ得る遊動弁体7と、を備えるものである。フロート弁体6と遊動弁体7とは、水よりも比重が小さいものであり、遊動弁体7は、フロート弁体6よりも軽量である。
この空気弁1は比較的大型であって、そのより具体的な構造は以下の通りである。弁箱2は、その外側面に、周方向に略均等間隔でもって4個のレバー21、21、・・・を有している。レバー21は、それに触れて操作するところのレバー操作部21aの部分と、内蓋体3の後述する係合溝3bに対し圧接し得る係合部21bの部分と、を有している。また、弁箱2には、後述の差し込み間隙2e、2eを形成するための間隙形成部材22、22が取り付けられている。また、この弁箱2は、水道管から弁箱2の中空部2cへ水の浸入を制御するコックがないタイプのものであって、通常は、この空気弁1と水道管の間に、コックの部分を有する別体の補修弁100が連接されて用いられる。
内蓋体3は、中央部に前述した大空気孔3aを有する内蓋本体部3Aと、内蓋本体部3Aの上面の周辺部に設けられた2個の内蓋体操作部3B、3Bと、が一体的に形成されている。また内蓋体操作部3B、3Bの周方向端部には、内蓋体3の中央部を跨ぐように把持材31が取り付けられている。内蓋本体部3Aの外側面には、前述したレバー21の係合部21bが圧接し得る凹状の係合溝3bが環状に形成されている。内蓋体操作部3Bは、内蓋本体部3Aの外側面よりも外方に突出している(図4参照)。内蓋体3の下面の大空気孔3aの周辺部には、遊動弁体7が良好に密接できるように、弾性のあるOリング32が嵌め込まれている。
内蓋体3の装着は、把持材31を把持し、内蓋本体部3Aを弁箱2の通気口2aに嵌め込む(図1など参照)。そして、内蓋体3を回転(図4では時計回りに回転)させ、内蓋体操作部3B、3Bを間隙形成部材22、22の下側に形成された差し込み間隙2e、2eに周方向に差し込む(図4参照)。それから、レバー21、21、・・・を倒して、その係合部21b、21b、・・・が係合溝3bを四方から圧接するようにする。
外蓋体4は、頂部を有した円筒状であり、取手付き螺子41によって横方向から弁箱2に、内蓋体3の把持材31に固着されたボルト42にナット43を締結させることによって上側から内蓋体3に、取り付けられる。なお、取手付き螺子41は、空気弁1の分解作業時に、弁箱2の中空部2cから水又は空気を抜くことによって、遊動弁体7とフロート弁体6との固着の不具合をチェックできるものであり、そのチェックに最適な場所に設けられる。
弁体案内5は、有底円筒状であって、空気や水の流通が可能な窓孔5aを有している。窓孔5aは、側部と底部の適宜位置に設けられている。
フロート弁体6は、全体として、大略円柱状のものであり、通常は、上下方向の長さが横方向の長さ(直径)よりも短いか或いはそれに近いものとなっている。フロート弁体6は、フロート中央部6Aとフロート周辺部6Bとから成る。フロート周辺部6Bは、中心軸の周りに中央孔6Baを有する厚肉円筒状であり、フロート中央部6Aは、略円柱状であって、フロート周辺部6Bの中央孔6Baに挿入されている。また、フロート周辺部6Bは、フロート中央部6Aよりも重くなっている。
フロート中央部6Aは、上下方向が長いのが好ましく、特に、上下方向の長さが横方向の長さ(直径)よりも長い、すなわち長尺であるのが好ましい。これは、後述するように、空気弁1が鉛直方向から所定の傾斜角度を有して設置された場合に、傾いたフロート中央部6Aがフロート周辺部6Bに接触しても、それに強く押し付けられることのないようにするためである。なお、フロート中央部6Aとフロート周辺部6Bの隙間は、異物混入や表面張力などを考慮しながら、フロート中央部6Aが水中でスムーズに動作するように決めることになる。
また、フロート中央部6Aの下端部は、その上側部分よりも大径であって鍔部6Abを有して段差6Abaを形成している。フロート周辺部6Bの中央孔6Baは、この鍔部6Abが嵌り込み可能なように、その下端部がその上側部分よりも大径の部分を有して段差6Baaを形成している。
フロート中央部6Aは、その上端面6Aaaが遊動弁体7の小空気孔7aを塞ぐときに弁座71に強く密接できるように、上端部6Aaは円錐台状に先細りになっているのが好ましい。上端部6Aaの先端である上端面6Aaaは、上記の空気弁101のフロート弁体106の先端である上端面106aaと同様に、略平坦であり、また、若干の曲率を有するようにしてもよい。
フロート周辺部6Bは、その上端面6Bbが平坦である(平面を成す)ことが好ましい。これは、フロート周辺部6Bの上端面6Bbが遊動弁体7に接触したときに、横方向に多少ずれても、遊動弁体7に対して傾かないようになるからである。
遊動弁体7は、大略円板状であり、中央には弁座71が設けられている。弁座71は、フロート中央部6Aに密接可能なように、わずかに下方に突出しており、下表面が略平坦であり、弾性を有している。前述した小空気孔7aは、弁座71の中心に、上下に貫通して形成されている。
また、遊動弁体7は、下端面の中央付近に凹部7bが形成されており、その凹部7bは、フロート中央部6Aが弁座71に適切に接触できるように、フロート中央部6Aの上端部6Aaが余裕を持って入り込み得る大きさになっている。また、遊動弁体7の外周面と凹部7bの間に空気が通過できるように横方向に貫通孔7cが形成されている。また、遊動弁体7は、その上端面の中央部に凸部7dが形成されており、この凸部7dは、内蓋体3の大空気孔3aに入り得るように、それより小さくなっている。
遊動弁体7の下端面の周辺部は、フロート周辺部6Bが接触したとき、その間の水の表面張力によって固着状態になることを防止するために、接触面積を適切にするような突起7eなどを設けるのが好ましい。
この空気弁1の動作は、以下のとおりである。水道管から補修弁100を介して弁箱2の中空部2cへ水が浸入する前、すなわち多量排気が行われる前は、図1に示すように、遊動弁体7及びフロート弁体6は弁体案内5の底部の上に重なった状態にある。補修弁100のコックが開かれ、水道管から補修弁100を介して弁箱2の中空部2cへ水が浸入してくると、弁箱2の中空部2cの空気は、弁体案内5の窓孔5aを経由しながら水圧に押されて大空気孔3aから急速に排出(多量排気)される。同時に、遊動弁体7及びフロート弁体6は、弁体案内5の内側面にガイドされながら水位の上昇に従って浮き上がる。これにより、遊動弁体7が内蓋体3に密接して大空気孔3aを塞ぐ。
このようにして多量排気が終わった後は、少量排気が行われる。遊動弁体7とフロート弁体6の間には、比較的少量の空気が溜まっており、この空気溜まりAにより、喫水線とともに、図2に示すように、フロート中央部6A及びフロート周辺部6Bが押し下げられ、他方、遊動弁体7は押し上げられたままの状態となる。そうすると、空気は小空気孔7aを経て、弁箱2の外方へ放出(少量排気)される。そして、空気溜まりAの空気が少なくなると、図3に示すように、フロート周辺部6Bが上昇して遊動弁体7に接触するとともに、フロート中央部6Aが上昇し、遊動弁体7に密接してその小空気孔7aを塞ぎ、弁箱2の中空部2cは密封状態となる。その後、水道管から補修弁100を介して弁箱2の中空部2cへ空気が水に混じって浸入し空気溜まりAの空気が再度多くなると、再度少量排気が行われる。
ここで、フロート中央部6Aは、小空気孔7aを塞いでいるときには、外気圧と水道管内部の圧力の差及び小空気孔7aの面積(断面積)に応じた大きさの力で遊動弁体7の弁座71に向かって押さえつけられている。空気弁1は、比較的大型であるので、小空気孔7aの面積が大きく、フロート中央部6Aが弁座71に向かって押さえつけられる力も大きい。そして、そのため、空気溜まりAの空気がある程度多くなっても、フロート周辺部6Bに比べて軽量であるフロート中央部6Aは弁座71に密接したまま降下せず、小空気孔7aは開放されない状態となる。空気溜まりAの空気がより多くなり、喫水線とともに重いフロート周辺部6Bが押し下げられてくると、その段差6Baaがフロート中央部6Aの段差6Abaに接して、フロート中央部6Aも十分な力で押し下げられるようになる。こうして、小空気孔7aを塞ぐ力よりも大きな力が作用して、小空気孔7aが開放されることになる。
そして、空気溜まりAの空気が少なくなると、喫水線とともにフロート中央部6Aとフロート周辺部6Bは上昇し、フロート周辺部6Bが遊動弁体7の周辺部に接触してその位置が固定される。それにより、フロート周辺部6Bの中央孔6Baは、弁座71に対して適切な方向に固定される。その後、フロート中央部6Aは、フロート周辺部6Bの中央孔6Baの中を更に上昇して弁座71に密接するようになる。
このフロート中央部6Aとフロート周辺部6Bとから成るフロート弁体6は、空気弁1が鉛直方向から傾斜して設置された場合でも、少量排気時にフロート中央部6Aと弁座71の密接によって小空気孔7aを適正に塞ぐことができる。すなわち、少量排気時に空気溜まりAの空気が少なくなってフロート周辺部6Bが上昇して遊動弁体7の周辺部に接触したときには、フロート周辺部6Bは、遊動弁体7(及び空気弁1全体)と同じ傾斜角度になる。それにより、フロート周辺部6Bの中央孔6Baは、弁座71に対して適切な方向になる。フロート中央部6Aは、その外側面が、上側となるフロート周辺部6Bの中央孔6Baの内側面に、図5(a)に示すように接したり、或いは離れたりしながら水面(喫水線)に浮く。このとき、フロート中央部6Aは、長尺或いは長尺に近いものとなっているので、傾いてフロート周辺部6Bに接触しても、そのときの力のモーメントが小さく、フロート周辺部6Bには強くは押し付けられていない状態となる。そのため、空気溜まりAの空気が更に少なくなってフロート中央部6Aが更に上昇するとき、フロート周辺部6Bに摺動して不規則な動きになることはなく、安定して動作し、図5(b)に示すように、その上端部6Aaaが弁座71の表面に適切に密接することになる。
このように、空気弁1は、傾斜角度が大きくても、少量排気時にフロート中央部6Aと弁座71の密接によって小空気孔7aを適正に塞ぐことができ、従って、比較的自由に場所を選んで空気弁1を設置することが可能になる。しかも、フロート周辺部6Bを横に広げることで、フロート弁体6全体として、上下方向の長さを比較的短めにして横に広げることが容易にでき、従って、空気弁1全体が大型であっても、丈を比較的短くすることができ、地中に収めたり所定の高さに収めたりすることが容易になる。
以上、本発明の実施形態に係る空気弁について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、弁箱2や内蓋体3の構成は、様々なものが可能である。また、使用状況や使用環境によっては外蓋体4を外したまま、或いは、外蓋体が元々存在しないような特別形状のものにも、適用可能である。また、内蓋体3の弁箱2への装着は、レバー21を使う方法以外のあらゆる方法が可能である。また、水道管から弁箱2の中空部2cへ水の浸入を制御するコックを弁箱2の下部に有するようにすることができるのも勿論である。
1 空気弁
2 弁箱
2a 弁箱の通気口
2b 弁箱の通水口
2c 弁箱の中空部
2d 弁箱の導水部
3 内蓋体
3a 大空気孔
4 外蓋体
5 弁体案内
6 フロート弁体
6A フロート中央部
6Aa フロート中央部の上端部
6Aaa フロート中央部の上端面
6Ab フロート中央部の鍔部
6Aba フロート中央部の段差
6B フロート周辺部
6Ba フロート周辺部の中央孔
6Baa フロート周辺部の中央孔の段差
6Bb フロート周辺部の上端面
7 遊動弁体
7a 遊動弁体の小空気孔