例えば、自動車などの車両に配索される電線には、電線が他の部材と干渉し合って傷付けられないように、電線の主要部を保護するための外装材が取り付けられている。特に、複数本の電線を取り扱う場合、各電線から成る電線群をまとめて1つの束にすると取り扱い易くなる。このため、例えばワイヤーハーネス(Wire Harness:W/H)には、通常、コルゲートチューブと呼ばれる外装材が取り付けられている。コルゲートチューブは、ワイヤーハーネスを構成する複数本の電線をまとめて1つの束にするとともに、その主要部を保護している。そして、このような電線用の外装材については、これまでに様々な発明が提案されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
先ず、従来の技術に係る第1の例として、特許文献1に開示されているワイヤーハーネス用外装材101は、図7に示すように、複数本の電線106からなるワイヤーハーネス102の外周面に沿って巻き付けられて略円環形状となった状態で使用される。ワイヤーハーネス用外装材101は合成樹脂からなり、ワイヤーハーネス102に巻き付けられていない状態では概ね平板形状となっている。外装材101には、そのワイヤーハーネス102の長手方向に沿わされる方向に沿って、その全面に亘って凹部103と凸部104とが交互に連続して設けられている。また、外装材101には、同じくワイヤーハーネス102の長手方向に沿わされる方向に沿って、凹部103と凸部104とにかけて連続する薄肉のヒンジ部105が複数設けられている。これら各ヒンジ部105は、外装材101のワイヤーハーネス102の長手方向に沿わされる方向に直交する方向、即ち、外装材101のワイヤーハーネス102の周方向に沿わされる方向に沿って、所定のピッチで形成されている。
外装材101は、各ヒンジ部105を支点として順次屈曲させられることで、図7中実線矢印Rで示す向きに沿って、ワイヤーハーネス102の保護を要する部分の外周面に沿って巻き付けられる。そして、ワイヤーハーネス102への巻き付けが終えられた外装材101は、その巻き始め側の端部107の上(外側)に巻き終わり側の端部108が重ねられる。この際、巻き始め側の端部107の外側の凸部104aが、巻き終わり側の端部108の内側の凹部103b内に嵌合させられる。それとともに、巻き始め側の端部107の外側の凹部103a内に巻き終わり側の端部108の内側の凸部104bが嵌合させられる。このようにして、ワイヤーハーネス102の周方向において巻き始め側の端部107と巻き終わり側の端部108とが連結された略円環形状となった状態で、ワイヤーハーネス102に外装材101が取り付けられる。この後、図示は省略するが、ワイヤーハーネス102の長手方向における外装材101の両端部及びこれら両端部から露出されているワイヤーハーネス102にかけて、ワイヤーハーネス102の周方向に沿って固定用テープを巻き付ける。これにより、外装材101をワイヤーハーネス102に固定して、ワイヤーハーネス102の要部を外部から保護する。
また、従来の技術に係る第2の例として、特許文献2に開示されているコルゲートチューブ201は、図8に示すように、メス側ロック部202の内面側(下側)にオス側ロック部203が嵌合して互いに係止し合う構造を有している。図示は省略するが、コルゲートチューブ201は、最初、所定の径の大きさを有するとともに一方向に沿って長く延ばされた中空の略円筒形状に形成される。その径の大きさは、コルゲートチューブ201を外装するワイヤーハーネス等の複数本の電線から成る電線群の太さに応じて予め決められる。そして、コルゲートチューブ201は、その筒部の一部が軸線方向に沿って全長に亘って切断される。これにより、コルゲートチューブ201の軸線方向に沿って全長に亘って図示しないスリットが形成される。また、メス側ロック部202及びオス側ロック部203は、これらをコルゲートチューブ201の周方向において分割するスリットを間に挟んで形成される。メス側ロック部202及びオス側ロック部203は、スリットの周方向両外側において互いに対向して、コルゲートチューブ201の軸線方向に沿って全長に亘って所定のピッチで断続的に形成される。メス側ロック部202は、コルゲートチューブ201の周方向に沿ってスリット側から順番に挿入用凸部202a、係止凹部202b、係止凸部202c、及びカット時の位置決め用凹部202dから構成されている。また、オス側ロック部203は、コルゲートチューブ201の周方向に沿ってスリット側から順番に断面逆V字状係止凸部203a、係止凹部203b、係止凸部203c、及びカット時の位置決め用凹部203dから構成されている。
コルゲートチューブ10を電線群に外装する場合、先ず、コルゲートチューブ201の軸線方向を電線群の長手方向に沿わせつつ、スリットをコルゲートチューブ201の周方向両外側に向けて開く。そして、コルゲートチューブ201の軸線方向に直交する方向に沿って電線群にコルゲートチューブ201を被せる。これにより、開かれたスリットの間を通して、コルゲートチューブ201の内側に電線群を収容する。電線群を収容した後、開いていたスリットを閉じて、コルゲートチューブ201の周方向においてスリットの両外側に設けられたメス側ロック部202とオス側ロック部203とをラップさせる。そして、メス側ロック部202と図示しない電線群との間にオス側ロック部203を挿入してメス側ロック部202に嵌合させる。具体的には、オス側ロック部203の断面逆V字状係止凸部203aがメス側ロック部202の係止凸部202cの内面側(下側)に嵌合する。また、オス側ロック部203の係止凹部203bがメス側ロック部202の係止凹部203bの内面側に嵌合する。さらに、オス側ロック部203の係止凸部203cがメス側ロック部202の挿入用凸部202aの内面側に嵌合する。これにより、スリットが開かないようにメス側ロック部202とオス側ロック部203とが互いにロックし合うとともに、コルゲートチューブ201が電線群に外装される。なお、このようなロック構造を有することにより、コルゲートチューブ201には、電線群への外装後に別途外れ止め用テープを巻き付ける必要はない。
さらに、従来の技術に係る第3の例として、特許文献3に開示されているワイヤーハーネス外装用の硬質チューブ301は、図9に示すように、図示しないワイヤーハーネスの長手方向に沿って長く延ばされた中空の略円筒形状に形成されている。硬質チューブ301は、その周壁302の1箇所が硬質チューブ301の長手方向に沿って全長に亘って切断されており、その長手方向に沿って全長に亘って図示しないスリットが形成されている。このスリットを硬質チューブ301の周方向において両外側から挟む周壁302の一端部302aと他端部302bとが重ねられて、硬質チューブ301はワイヤーハーネスに取り付けられる。この際、内周側(下側)となる周壁302の一端部302aの上に、外周側(上側)となる周壁302の他端部302bが重ねられる。そして、一端部302aにおける周壁302の外面303が、他端部302bにおける周壁302の内面304に接触する。これら周壁302の重なり部となる周壁302の一端部302a及び他端部302bには、それらの外面303及び内面304の両面に互いに係合し合う断面三角形状の凹部305及び凸部306が複数形成されている。各凹部305及び各凸部306は、硬質チューブ301の長手方向に沿って周壁302の全長に亘って同一断面で連続して設けられている。また、各凹部305と各凸部306とは、硬質チューブ301の周方向に沿ってスリットの両外側に向けて交互に同じ複数ピッチずつ鋸歯状に設けられている。
硬質チューブ301をワイヤーハーネスに装着する場合、先ず、硬質チューブ301の長手方向をワイヤーハーネスの長手方向に沿わせつつ、スリットを硬質チューブ301の周方向両外側に向けて開く。そして、硬質チューブ301の長手方向に直交する方向に沿ってワイヤーハーネスに硬質チューブ301を被せる。これにより、開かれたスリットの間を通して、硬質チューブ301の内側にワイヤーハーネスを収容する。ワイヤーハーネスを収容した後、開いていたスリットを閉じて、内周側となる周壁302の一端部302aの外面303の上に外周側となる周壁302の他端部302bの内面304をラップさせる。そして、一端部302aの外面303側に形成された各凸部306を、他端部302bの内面304側に形成された各凹部305に嵌合させる。それとともに、一端部302aの外面303側に形成された各凹部305を、他端部302bの内面304側に形成された各凸部306に嵌合させる。このように、周壁302の一端部302aの各凹部305及び各凸部306と他端部302bの各凹部305及び各凸部306と互いに噛み合わせることにより、一端部302aと他端部302bとを係合させて固定する。これにより、硬質チューブ301及びワイヤーハーネスの周方向における周壁302の一端部302aと他端部302bとのずれを防止しつつ、硬質チューブ301をワイヤーハーネスに装着することができる。なお、このような噛み合わせ構造を有することにより、硬質チューブ301には、ワイヤーハーネスへの外装後に別途巻き付ける外れ止め用テープの量を減らすことができるか、若しくは外れ止め用テープの巻き付けが不要となる。
しかし、図7に示すように、特許文献1に係るワイヤーハーネス用外装材101では、内周側(下側)に位置する巻き始め側の端部107の外側の凸部104aの大部分が、外周側(上側)に位置する巻き終わり側の端部108の内側の凹部103b内に収まり切らずに凹部103bから飛び出している。このため、外装材101がワイヤーハーネス102に巻き付けられた際に、巻き始め側の端部107と巻き終わり側の端部108とが重なり合った部分が外側に出っ張ってしまう。当然、この重なり合った部分は他の部分に比べて太くなるので、ワイヤーハーネス102の外装材101が巻き付けられた部分の外形は円環形状を歪ませた形状となる。すると、ワイヤーハーネス102の外装材101が巻き付けられた部分は、その仕上がりの外径寸法が円環形状となる場合に比べてより大きくなって嵩張ってしまう。この結果、外装材101をワイヤーハーネス102に固定するために外装材101に巻き付ける固定用テープの量が必要以上に増大してしまう。また、自動車等の車両内の限られた空間内におけるワイヤーハーネス102の取り回しが困難になってしまう。さらに、外装材101とワイヤーハーネス102との間に不要な隙間Zが生じてワイヤーハーネス102を構成する複数本の電線がばらけ易くなり、適正に保持し難くなる。
また、図8に示すように、特許文献2に係るコルゲートチューブ201では、オス側ロック部203の断面逆V字状係止凸部203aの大部分がメス側ロック部202の係止凸部202cの内面側(下側)に嵌合している。同様に、オス側ロック部203の係止凹部203bにメス側ロック部202の係止凹部202bの大部分が嵌合している。同様に、オス側ロック部203の係止凸部203cの大部分がメス側ロック部202の挿入用凸部202aの内面側に嵌合している。このため、前述した特許文献1に係るワイヤーハーネス用外装材101とは異なり、コルゲートチューブ201が電線群に取り付けられた際に、コルゲートチューブ201のメス側ロック部202とオス側ロック部203とが重なり合った部分が外側に出っ張ってしまうおそれは殆どない。しかし、メス側ロック部202及びオス側ロック部203は共に、コルゲートチューブ201の周方向においては全周に亘って形成されていない。メス側ロック部202及びオス側ロック部203は共に、コルゲートチューブ201の周方向に沿ってスリットの両外側の限られた範囲にだけ形成されている。しかも、メス側ロック部202の挿入用凸部202a、係止凹部202b、及び係止凸部202cは、それぞれオス側ロック部203の断面逆V字状係止凸部203a、係止凹部203b、及び係止凸部203cのうちの特定の部位としか嵌合し合うことができない。さらに、コルゲートチューブ201は、その径の大きさがコルゲートチューブ201を外装する電線群の太さに応じて予め決められた大きさに設定されて形成される。即ち、コルゲートチューブ201は、電線群に取り付けられた際の仕上がりの外径寸法が予め決められた所定の定形サイズに限定されている。このため、1種類のコルゲートチューブ201を取り付けることができる電線群は、その太さが実質的に略一つの大きさに制限される。この結果、コルゲートチューブ201を用いる場合、電線群の太さや外形などに応じて内径の大きさがそれぞれ異なるコルゲートチューブ201を複数本用意しなければならなかった。
さらに、図9に示すように、特許文献3に係るワイヤーハーネス外装用の硬質チューブ301では、周壁302の一端部302a及び他端部302bの外面303及び内面304の両面に、互いに係合し合う断面三角形状の凹部305及び凸部306が同一断面で複数設けられている。このため、前述した特許文献1に係るワイヤーハーネス用外装材101とは異なり、硬質チューブ301がワイヤーハーネスに取り付けられた際に、硬質チューブ301の周壁302の一端部302aと他端部302bとが重なり合った部分が外側に出っ張ってしまうおそれは殆どない。また、各凹部305及び各凸部306は、硬質チューブ1の周方向に沿って複数ピッチずつ設けられている。このため、前述した特許文献2に係るコルゲートチューブ201とは異なり、硬質チューブ301を装着することができるワイヤーハーネスが、予め定められた1つの太さには限定されない。しかし、各凹部305及び各凸部306は、硬質チューブ1の長手方向のみに沿って周壁302の全長に亘って連続して設けられている。このため、各凹部305及び各凸部306は、硬質チューブ1の周方向においてのみ互いに噛み合うことができるが、硬質チューブ1の長手方向においては互いに噛み合うことができない。即ち、硬質チューブ1の重ね合わせ部である周壁302の一端部302aと他端部302bは、硬質チューブ1の長手方向に沿って互いにずれ易い。この結果、硬質チューブ301が装着されたワイヤーハーネスの仕上がり状態において、ワイヤーハーネスの保持状態に製品間のばらつきが発生し易かった。さらに、各凹部305及び各凸部306は、硬質チューブ301の周方向に沿って複数ピッチずつ設けられているが、全周に亘って設けられてはいない。このため、硬質チューブ301を装着することができるワイヤーハーネスは予め定められた1つの太さには限定されないが、その許容の幅は各凹部305及び各凸部306が設けられている範囲内に限定される。
本願発明は、以上説明した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電線をコンパクトに安定して保持することができるとともに、周方向の寸法が変更自在である電線用外装材を提供することにある。
前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項1に係る電線用外装材は、可撓性及び伸縮性を有してシート状に形成された基材から成り、少なくとも1本の電線の外周面上にその周方向に沿って巻き付けられる電線用外装材であって、前記電線への前記基材の巻き付けの終わり側の端部となる前記基材の終端部に設けられた外側係止部と、前記終端部の内側に位置して前記終端部が重ね合わされる前記基材の終端重ね合わせ部に設けられて前記外側係止部を係止する内側係止部と、を備え、前記外側係止部及び前記内側係止部はそれぞれ、前記基材からその厚さ方向に沿った一方の向きに突起された凸部を有し、前記凸部が、前記電線の周方向及び長手方向の両方向に間隔をあけて複数個ずつ設けられ、前記外側係止部の前記凸部と前記内側係止部の前記凸部とが互いに係合することを特徴とするものである。
この本願請求項1に係る電線用外装材においては、電線に巻き付けられるシート状の基材の終端部に設けられた外側係止部が有する凸部と、終端部が重ね合わされる基材の終端重ね合わせ部に設けられて外側係止部を係止する内側係止部が有する凸部とが互いに係合する。このため、電線用外装材は、電線に巻き付けられた基材の終端部付近が過剰に太くなって嵩張るおそれが殆どない。それとともに、電線用外装材は、電線と基材との間に不要な隙間が生じ難いので、複数本の電線でもまとめてコンパクトに包み込むことができる。また、電線の周方向及び長手方向の両方向に沿って凸部がそれぞれ複数個設けられている。これにより、電線用外装材は、内側係止部における外側係止部を係止する位置を、基材を巻き付ける電線の太さに応じて適宜、適正に選択することができる。それとともに、電線用外装材は、外側係止部の凸部と内側係止部の凸部が、電線の周方向及び長手方向の互いに直交する2方向において互いに係止し合う。これにより、電線用外装材は、互いに直交する電線の周方向及び長手方向において基材がずれ難い。
また、本願の請求項2に係る電線用外装材は、本願の請求項1に記載の電線用外装材において、前記基材が矩形状に形成されており、前記凸部が前記基材が有する4つの辺に沿って並べられて前記基材の全面に亘って配置されていることを特徴とするものである。
この本願請求項2に係る電線用外装材においては、凸部が、矩形状に形成された基材が有する4つの辺に沿って並べられて基材の全面に亘って配置されている。これにより、内側係止部における外側係止部を係止する位置を、基材を巻き付ける電線の太さに応じてより柔軟に選択することができる。また、外側係止部の凸部と内側係止部の凸部が、互いに嵌合し易い。それとともに、外側係止部の凸部と内側係止部の凸部が、互いにずれ難い。
また、本願の請求項3に係る電線用外装材は、本願の請求項1又は2に記載の電線用外装材において、前記凸部が、前記基材から突起された方向に沿って基端部から先端部に向かうに連れて先細りとなるテーパー形状に形成されていることを特徴とするものである。
この本願請求項3に係る電線用外装材においては、前記凸部が先細りとなる形状に形成されている。これにより、外側係止部の凸部と内側係止部の凸部が、互いに嵌合し易い。
また、本願の請求項4に係る電線用外装材は、本願の請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の電線用外装材において、前記外側係止部の前記凸部及び前記内側係止部の前記凸部が共に前記電線の径方向外側に向けて突起され、前記内側係止部の前記凸部は前記外側係止部の前記凸部の内側に埋没することを特徴とするものである。
この本願請求項4に係る電線用外装材においては、電線の径方向外側に向けて突起された外側係止部の凸部の内側に、同じく電線の径方向外側に向けて突起された内側係止部の凸部が埋没する。これにより、電線の径方向に沿った外側係止部と内側係止部とが重なり合う部分の厚さが過剰に大きくなるおそれが抑制若しくは低減されている。それとともに、外側係止部の凸部と内側係止部の凸部の密着性が高められている。
また、本願の請求項5に係る電線用外装材は、本願の請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の電線用外装材において、前記凸部の前記電線の長手方向から見た断面形状は、先端部側の上底が基端部側の下底よりも小さい台形状に形成され、前記電線の長手方向から見た断面において、互いに隣接し合う前記凸部同士の間隔が、前記上底の寸法よりも小さいことを特徴とするものである。
前述したように、本願請求項1に係る発明によれば、電線に巻き付けられた基材の終端部付近が過剰に太くなって嵩張るおそれが殆どない。それとともに、電線と基材との間に不要な隙間が生じ難いので、複数本の電線でもまとめてコンパクトに包み込むことができる。また、内側係止部における外側係止部を係止する位置を、基材を巻き付ける電線の太さに応じて適宜、適正に選択することができる。さらに、互いに直交する電線の周方向及び長手方向において基材がずれ難い。したがって、本願請求項1に係る発明によれば、電線をコンパクトに安定して保持することができるとともに、周方向の寸法が変更自在である電線用外装材を提供することができる。
また、本願請求項2に係る発明によれば、内側係止部における外側係止部を係止する位置を、基材を巻き付ける電線の太さに応じてより柔軟に選択することができる。それとともに、外側係止部の凸部と内側係止部の凸部が、互いに嵌合し易く、且つ、互いにずれ難い。したがって、本願請求項2に係る発明によれば、本願請求項1に係る発明と同様の効果を得ることができるとともに、電線により外装し易く、電線群をより安定して保持し易く、且つ、周方向の寸法をより柔軟に変更自在である電線用外装材を提供することができる。
また、本願請求項3に係る発明によれば、外側係止部の凸部と内側係止部の凸部が、互いに嵌合し易い。したがって、本願請求項3に係る発明によれば、本願請求項1に係る発明と同様の効果を得ることができるとともに、電線により外装し易い電線用外装材を提供することができる。
また、本願請求項4に係る発明によれば、電線の径方向に沿った外側係止部と内側係止部とが重なり合う部分の厚さが過剰に大きくなるおそれが抑制若しくは低減されている。それとともに、外側係止部の凸部と内側係止部の凸部の密着性が高められている。したがって、本願請求項4に係る発明によれば、本願請求項1に係る発明と同様の効果を得ることができるとともに、電線をよりコンパクトに、且つより安定して保持することができる電線用外装材を提供することができる。
以下、本願発明の一つの実施形態に係る電線用外装材について、図1〜図6を参照して説明する。電線用外装材は、少なくとも1本の電線の外周面上にその周方向に沿って巻き付けられる。先ず、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係る電線用外装材1の主要部の構成及び構造などについて説明する。
[電線用外装材の構成及び構造]
図1に示すように、本実施形態に係る電線用外装材1は、主に可撓性及び伸縮性を有して矩形状のシート状に形成された基材2から成る。具体的には、基材2は合成樹脂やシリコーン等を用いて弾性変形可能に形成されており、人間の力で折り曲げられたり、丸められたりしても元の平板形状に戻ることができる十分な柔軟性を有している。基材2には、その全面に亘って凸部3が複数個設けられている。各凸部3は、基材2からその厚さ方向に沿って一方の向き(図1において上向き)に突起されて形成されている。各凸部3は、それぞれ同じ大きさに形成されている。また、各凸部3は、基材2が有する4つの辺に沿って並べられて配置されている。基材2は、具体的にはその概形が長方形状に形成されている。したがって、各凸部3は、互いに直交し合う2方向に沿って並べられて配置されている。
図1及び図2(a),(b)に示すように、各凸部3は、基材2から突起された方向に沿ってそれぞれの基端部3aから先端部3bに向かうに連れて先細りとなるテーパー形状に形成されている。各凸部3は、図1に示すように、四角錐台形状に形成されている。各凸部3は、それらの先端部3bを構成する先端壁3c(請求項中の「上底」)と、この先端壁3cと基端部3aとに亘って設けられた4つの側壁3d,3eと、から構成されている。先端壁3cは、長方形状に形成されている。また、各側壁3d,3eは、それぞれ台形状に形成されている。即ち、凸部3の電線5の長手方向から見た断面形状は、先端壁3c(上底)が、この先端壁3cと平行な基端部側の下底よりも小さい台形状に形成されている。そして、各側壁3d,3eのうち、2つの側壁3dは、それぞれ先端壁3cが有する2つの長辺に連続して設けられている。また、各側壁3d,3eのうち、2つの側壁3eは、それぞれ先端壁3cが有する2つの短辺に連続して設けられている。
図1及び図2(a),(b)に示すように、電線用外装材1を各凸部3の先端壁3c側から臨んで見ると、互いに隣接し合う各凸部3同士の間に形成された凹部(符号4を付す)とみなすことができる。図2(a),(b)に示すように、凹部4の底は、互いに隣接し合う各凸部3同士の間隔(符号4cを付す)から構成されている。間隔4cは、電線5の長手方向から見た場合において、各凸部3の先端壁3c(請求項中の上底)よりも小さくなるように形成されている。
また、図2(a),(b)に示すように、基材2の厚さD1は、各凸部3の先端壁3cの内側端面の延長面から各間隔4cの外側端面までの間隔D2よりも、十分に薄く形成されている。それとともに、基材2の厚さD1は、各間隔4cの内側端面の延長面から各凸部3の先端壁3cの外側端面までの間隔D3よりも、十分に薄く形成されている。また、間隔D2と間隔D3とは互いに略等しい大きさを有している。さらに、基材2の厚さD1は、各凸部3も含めて全面的に略均一な大きさに設定されている。即ち、各凸部3の先端壁3c及び各側壁3d,3e、並びに各間隔4cは、全て基材2と同様に厚さD1から成る薄肉形状に形成されている。
なお、基材2の厚さD1に間隔D2の大きさを足し合わせた値が各凸部3の高さとなる。
以上で、電線用外装材1の主要部の構成及び構造などについての説明を終了とする。なお、図2(a)は、図1中破断線X−X'に沿って示す断面図である。具体的には、図2(a)は、電線用外装材1を、各凸部3の先端壁3cの短辺方向に沿って断面にして示す図である。これに対して、図2(b)は、図1中破断線X−X'に直交する破断線Y−Y'に沿って示す断面図である。具体的には、図2(b)は、電線用外装材1を、各凸部3の先端壁3cの長辺方向に沿って断面にして示す図である。
[電線用外装材の外装方法]
次に、前述した電線用外装材1の電線への外装方法について、主に図3〜図6を参照して説明する。本実施形態においては、図3及び図4に示すように、複数本の電線5から成る電線群6としてのワイヤーハーネスに電線用外装材1を外装する場合を例示して説明する。
先ず、図3に示すように、電線用外装材1を、その各凸部3の先端壁3cを下側に向けて配置する。続けて、電線用外装材1の基材2の上にワイヤーハーネス6を構成する14本の電線5をまとめて載置する。即ち、ワイヤーハーネス6は、電線用外装材1の基材2の表裏両主面のうち、各凸部3が突起されている側の主面とは反対側の主面に対向して配置される。この結果、各凸部3はワイヤーハーネス6の径方向外側に向けて突起していることとなる。そして、ワイヤーハーネス6は、電線用外装材1の基材2の表裏両主面のうち、凸部3の基端側の主面に対向して配置される。この結果、各凸部3はワイヤーハーネス6の径方向外側に向けて突起していることとなる。
また、ワイヤーハーネス6を基材2の上に載置する際には、ワイヤーハーネス6の長手方向(軸線方向)を、各凸部3の先端壁3cの各長辺が延びる方向に沿わせる。即ち、各凸部3の先端壁3cの各短辺が延びる方向は、ワイヤーハーネス6の長手方向に直交するワイヤーハーネス6の周方向に沿うこととなる。これにより、各凸部3は、実質的にワイヤーハーネス6の長手方向及び周方向の2方向に沿って、基材2に全面的に規則的に配設されていることとなる。
次に、図3中矢印Aで示すように、ワイヤーハーネス6の周方向における電線用外装材1の一端部1aを、ワイヤーハーネス6の外周面上に周方向に沿って巻き付けていく。この際、ワイヤーハーネス6を構成する各電線5がばらけないように、各電線5を外側からまとめて包み込むように電線用外装材1をワイヤーハーネス6に巻き付ける。電線用外装材1の一端部1aは、巻き始め側の端部となる。
そして、図4に示すように、ワイヤーハーネス6の周方向における電線用外装材1の他端部1bを、その直ぐ内側に位置する電線用外装材1の一端部1aの上に重ね合わせる。電線用外装材1の他端部1bは、基材2の巻き終わり側の端部となる。以下の説明において、この基材2の巻き終わり側の端部1bを基材2の終端部と称する。また、終端部1bの直ぐ内側に位置しており、終端部1bが直接接触して重ね合わされる基材2の巻き始め側の端部1aを、基材2の終端重ね合わせ部と称する。
終端重ね合わせ部1aの上に終端部1bを重ね合わせる際には、終端部1bに設けられている各凸部3の内側に、終端重ね合わせ部1aに設けられている各凸部3を嵌合(係合)させる。より詳細には、図5に示すように、終端部1bの先端側から2列に配設された各凸部3の内側に、終端重ね合わせ部1aの先端側から2列に配設された各凸部3の大部分を埋没させる。これにより、終端部1bの各凸部3と終端重ね合わせ部1aの各凸部3が、それぞれワイヤーハーネス6の径方向に沿って互いに噛み合った状態となる。この結果、電線用外装材1は、図4に示すように、ワイヤーハーネス6の周方向に沿った長さが最小になるように略円環形状を維持しつつワイヤーハーネス6を構成する各電線5をコンパクトにまとめて保持することができる。これまでの工程により、ワイヤーハーネス6への電線用外装材1の外装が完了する。なお、図5は、図4中楕円Bで囲んで示す部分を拡大するとともに簡略化して示す断面図である。
前述したように、各凸部3は、それぞれ同じ大きさに形成されている。したがって、終端重ね合わせ部1aの各凸部3が嵌入する終端部1bの各凸部3の内側は、必然的に終端重ね合わせ部1aの各凸部3の外形よりも小さくなる。しかし、各凸部3の各側壁3d,3eは、可撓性及び伸縮性を有して薄肉のシート状に形成されている基材2と同等の薄さに形成されている。それとともに、各凸部3は、それらの内側に他の各凸部3が嵌入する際に、各側壁3d,3eの内周面が他の各凸部3の各側壁3d,3eの外周面に接しつつ押し広げられて、他の各凸部3が殆ど全部埋没できる構造に形成されている。これにより、各凸部3は、それらの内側に他の各凸部3を嵌入し難くするおそれが抑制若しくは低減されている。
なお、電線用外装材1は、一旦ワイヤーハーネス6に巻き付け終えた基材2がワイヤーハーネス6から外れないように、互いに係止し合う2つの係止部7,8を備えている。一つは基材2の終端部1bに設けられた外側係止部7であり、残りの一つは基材2の終端重ね合わせ部1aに設けられて外側係止部7を係止する内側係止部8である。本実施形態においては、外側係止部7は、終端部1bの先端側から2列に亘って配設された各凸部3から構成される。また、内側係止部8は、終端重ね合わせ部1aの先端側から2列に亘って配設された各凸部3から構成される。
また、電線用外装材1は、これが包み込むワイヤーハーネス6の太さや、ワイヤーハーネス6を構成する電線5の本数等に応じて、終端部1bが重ね合わされる終端重ね合わせ部1aの位置を適宜、適正な位置に変更して設定することができる。即ち、外側係止部7を係止する内側係止部8の範囲を、ワイヤーハーネス6の太さや、ワイヤーハーネス6を構成する電線5の本数等に応じて適宜、適正な大きさに変更して設定することができる。
例えば、図6には、電線用外装材1が包み込むワイヤーハーネス9が、7本の電線5から構成されている場合を示す。これは、先に図3及び図4を参照して説明した場合に係るワイヤーハーネス6を構成する14本の電線5の半分の数である。かかる場合、終端部1bが重ね合わされる終端重ね合わせ部1aの位置、即ち外側係止部7を係止する内側係止部8の範囲を変更しないと、電線用外装材1とワイヤーハーネス9との間に不要な隙間が生じてしまう。このような隙間が生じると、ワイヤーハーネス9を構成する各電線5がばらけ易くなり、各電線5を一括して安定して保持し難くなる。ひいては、電線用外装材1が外装された製品としてのワイヤーハーネス9の品質の低下につながる。
しかし、前述したように、電線用外装材1には、その基材2の全面に亘って第1及び第2の各凸部3,4が複数個ずつ設けられている。このため、終端部1bが重ね合わされる終端重ね合わせ部1aの位置、即ち外側係止部7を係止する内側係止部8の範囲を、ワイヤーハーネス9を構成する各電線5の本数に応じて柔軟に変更することができる。例えば、図6中楕円Cで囲んで示すように、終端部1bと終端重ね合わせ部1aとが重なり合う(ラップする)範囲を、図4中楕円Bで囲んで示す場合よりも広く設定することができる。即ち、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス9を構成する各電線5の本数に応じて、その周方向の寸法を適宜、適正に変更自在である。この結果、電線用外装材1は、これが包み込むワイヤーハーネス9を構成する各電線5の本数にかかわらず、各電線5をコンパクトにまとめて安定して保持することができる。即ち、電線用外装材1は、図6に示すように、ワイヤーハーネス9の周方向に沿った長さが最小になるように略円環形状を維持しつつワイヤーハーネス9を構成する各電線5をコンパクトにまとめて保持することができる。
なお、この場合、図6中楕円Cで囲んで示すように、外側係止部7は、終端部1bの先端側から4列に亘って配設された各凸部3から構成される。また、内側係止部8は、終端重ね合わせ部1aの先端側から4列に亘って配設された各凸部3から構成される。
以上説明したように、本実施形態に係る電線用外装材1によれば、基材2がワイヤーハーネス6,9に巻き付けられた状態において、外側係止部7の各凸部3と内側係止部8の各凸部3が、それぞれ互いに干渉し合うおそれが殆どない。このため、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9に巻き付けられた基材2の終端部1b付近が過剰に太くなって嵩張るおそれが殆どない。そして、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9と基材2との間に不要な隙間が生じ難いので、ワイヤーハーネス6,9を構成する各電線5をまとめてコンパクトに包み込むことができる。より具体的には、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9の周方向に沿った長さが最小になるように略円環形状を維持しつつワイヤーハーネス6,9を構成する各電線5をコンパクトにまとめて保持することができる。この結果、ワイヤーハーネス6,9の外装された電線用外装材1の上から図示しない固定用のテープを巻き付ける場合、その量を必要最小限に抑えて無駄を省くことができる。
また、電線用外装材は1、内側係止部8における外側係止部7を係止する位置を、基材2を巻き付けるワイヤーハーネス6,9の太さや、ワイヤーハーネス6,9を構成する各電線5の本数等に応じて適宜、適正に選択することができる。それとともに、電線用外装材1は、外側係止部7の各凸部3と内側係止部8の各凸部3が、ワイヤーハーネス6,9の周方向及び長手方向の互いに直交する2方向において互いに係止し合う。これにより、電線用外装材1は、互いに直交するワイヤーハーネス6,9の周方向及び長手方向において基材2がずれ難い。したがって、本実施形態によれば、ワイヤーハーネス6,9をコンパクトに安定して保持することができるとともに、周方向の寸法が変更自在である電線用外装材1を提供することができる。
また、本実施形態の電線用外装材1においては、凸部3が、それぞれ矩形状に形成された基材2が有する4つの辺に沿って並べられて基材2の全面に亘って複数個ずつ配置されている。これにより、内側係止部8における外側係止部7を係止する位置を、基材2を巻き付けるワイヤーハーネス6,9の太さや、ワイヤーハーネス6,9を構成する各電線5の本数等に応じてより柔軟に選択することができる。即ち、異なる太さのワイヤーハーネス6,9への適応性がより高められている。また、外側係止部7の各凸部3と内側係止部8の各凸部3が、互いに嵌合し易く、且つ、互いにずれ難い。したがって、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9により外装し易く、ワイヤーハーネス6,9の保持状態にばらつきがより生じ難く、ワイヤーハーネス6,9をより安定して保持することができる。また、電線用外装材1は、太さがそれぞれ異なる複数種類の電線5やワイヤーハーネス6,9により広範囲に適用することができ、周方向の寸法をより柔軟に変更自在である。
また、本実施形態の電線用外装材1においては、各凸部3が先細りとなるテーパー形状に形成されている。これにより、外側係止部7の各凸部3と内側係止部8の各凸部3が、互いに嵌合し易い。したがって、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9にさらに外装し易い。
また、本実施形態の電線用外装材1においては、ワイヤーハーネス6,9の径方向外側に向けて突起された外側係止部7の各凸部3の内側に、同じくワイヤーハーネス6,9の径方向外側に向けて突起された内側係止部8の各凸部3が殆ど全て埋没する。これにより、ワイヤーハーネス6,9の径方向に沿った外側係止部7と内側係止部8とが重なり合う部分の厚さが過剰に大きくなるおそれが抑制若しくは低減されている。それとともに、外側係止部7の各凸部3と内側係止部8の各凸部3の密着性が高められている。したがって、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9をよりコンパクトに、且つより安定して保持することができる。
また、本実施形態の電線用外装材1においては、基材2の厚さD1が各凸部3の先端壁3cの内側端面の延長面から間隔4cの外側端面までの間隔D2、及び各間隔4cの内側端面の延長面から各凸部3の先端壁3cの外側端面までの間隔D3のいずれ間隔の大きさよりも薄く形成されている。また、各凸部3の先端壁3c及び各側壁3d,3e、並びに各間隔4cは、全て基材2と同様に厚さD1から成る薄肉形状に形成されている。そして、基材2自体は、十分な可撓性、伸縮性、及び柔軟性を有して弾性変形可能な材料から形成されている。これにより、電線用外装材1は、薄肉のシート形状に形成された基材2全体がワイヤーハーネス6,9の周方向に沿って折れ曲がり自在な、いわゆるヒンジ部として機能することができる。
特に、前述したように、間隔4cは、電線5の長手方向から見た場合において、各凸部3の先端壁3c(請求項中の上底)よりも小さくなるように形成されている。そして、図3、図4、及び図6に示すように、電線用外装材1は、各凸部3の先端壁3cではなく各間隔4cがワイヤーハーネス6,9の外周面に対向して接触しつつワイヤーハーネス6,9に巻き付けられる。このため、電線用外装材1は、各凸部3の先端壁3cがワイヤーハーネス6,9の外周面に対向して接触する場合に比べて、より小回りが効く設定でワイヤーハーネス6,9に外装される。また、電線用外装材1は、図3、図4、及び図6に示すように、各凸部3の先端壁3cの長辺ではなく短辺が延びる方向をワイヤーハーネス6,9の周方向に沿わされて、ワイヤーハーネス6,9に巻き付けられる。これにより、電線用外装材1は、各凸部3の先端壁3cの長辺が延びる方向をワイヤーハーネス6,9の周方向に沿わされて、ワイヤーハーネス6,9に巻き付けられる場合に比べて、より小回りが効く設定でワイヤーハーネス6,9に外装される。この結果、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9の外周面の形状や凹凸状態などによりきめ細かく追従して、ワイヤーハーネス6,9の外周面により密着することができる。
したがって、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9に基材2が巻き付けられた状態において、基材2のうちワイヤーハーネス6,9に直接接している部分とこの電線接触部分の上に重ねられている部分との段差をさらに小さくすることができる。ひいては、基材2を複数本の電線5から成る電線群としてのワイヤーハーネス6,9に巻き付けた状態において、基材2とワイヤーハーネス6,9との間に不要な隙間がさらに生じ難くなるとともに、ワイヤーハーネス6,9がばらけ難い状態で包み込むことができる。したがって、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9により外装し易く、ワイヤーハーネス6,9をより保持し易く、且つ、ワイヤーハーネス6,9の保持状態にばらつきがより生じ難い。即ち、電線用外装材1は、ワイヤーハーネス6,9をさらにコンパクトに、さらに安定して、且つさらに容易に保持することができる。
また、本実施形態の電線用外装材1においては、各凸部3が四角錐台形状に形成されている。このため、各凸部3の4つの各側壁3d,3eの内周面に他の各凸部3の4つの各側壁3d,3eの外周面を案内させて、各凸部3の内側に他の各凸部3を嵌入させることができる。そして、各凸部3の内側に他の各凸部3が嵌入した状態においては、内側の各凸部3の4つの各側壁3d,3eの外周面は、外側の各凸部3の4つの各側壁3d,3eの内周面に密接している状態となる。それとともに、内側の各凸部3の4つの各側壁3d,3eは、外側の各凸部3の4つの各側壁3d,3eにより実質的に位置決めされた状態となる。
この結果、外側の各凸部3と内側の各凸部3との密着性が高められており、外側の各凸部3と内側の各凸部3との噛み合いが外れ難い。それとともに、外側の各凸部3と内側の各凸部3とが互いにずれ難くなっている。したがって、電線用外装材1によれば、外側の各凸部3への内側の各凸部3の嵌入し易さと、外側の各凸部3と内側の各凸部3との密着性の向上とを両立させることができる。ひいては、電線用外装材1は、電線5やワイヤーハーネス6,9により外装し易く、ワイヤーハーネス6,9をより保持し易く、且つ、ワイヤーハーネス6,9の保持状態にばらつきがより生じ難くなっている。
なお、本願発明に係る電線用外装材は、前述した一実施形態には限定されない。本願発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、その構成や形状、設定、あるいは工程等々を種々様々に変更したり、あるいは組み合わせたりして実施して構わない。したがって、そのような変更や組み合わせを以ってしてもなお、本願発明の構成を実質的に具備する限り、それら変更や組み合わせは本願発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、前述した一実施形態においては、各凸部3を基材2の全面に亘って設けたが、これに限定されるものではない。電線用外装材1の終端重ね合わせ部及び内側係止部8が設けられる位置は、電線用外装材1の巻き始め側の端部1aには限定されない。終端重ね合わせ部及び内側係止部8は、基材2の全面のうち、電線用外装材1の終端部1b及び外側係止部7にそれらの直ぐ内側で直接触して重なる範囲若しくは領域に設定されれば良い。そして、そのような範囲若しくは領域は、電線用外装材1の長さや大きさ、及び電線用外装材1を外装する電線5の本数やワイヤーハーネス6,9の太さ等に応じて適宜、適正な場所に設定することが好ましい。
また、各凸部3の形状は、前述した四角錐台形状には限定されない。各凸部3の形状は、円錐台形状や三角錐台形状でも構わない。また、各凸部3の厚さは、基材2の厚さD1と同等である必要はない。また、互いに隣接し合う各凸部3同士の間隔4cは、電線用外装材1が電線5やワイヤーハーネス6,9をそれらの外周面に密接して包み込めるように、電線5やワイヤーハーネス6,9の太さや外形、ワイヤーハーネス6,9を構成する各電線5の太さ、本数、外形等々に応じて適宜、適正な大きさに設定すればよい。これは、電線用外装材1の基材2の厚さや大きさ、さらには基材2の原料・材料についても同様である。
さらに、電線5やワイヤーハーネス6,9に巻き付けられた電線用外装材1の好ましい形状は、前述した略円環形状には限定されない。例えば、電線用外装材1が包み込む電線5が2本の場合には、各電線5の長手方向における電線用外装材1の端面形状若しくは各電線5の長手方向に直交する方向おける断面形状が扁平形状になる。しかし、この場合は当該扁平形状が各電線5の周方向に沿った長さを最小にする形状なので、電線用外装材1の上から巻き付ける固定用テープの量は最小となり、無駄が出ないので構わない。また同様に、電線用外装材1が包み込む電線5が3本の場合には、各電線5の長手方向における電線用外装材1の端面形状若しくは各電線5の長手方向に直交する方向おける断面形状が略三角環形状になる。しかし、この場合も当該三角環形状が各電線5の周方向に沿った長さを最小にする形状なので、電線用外装材1の上から巻き付ける固定用テープの量は最小となり、無駄が出ないので構わない。
さらに同様に、電線用外装材1が包み込む電線5が4本の場合には、各電線5の長手方向における電線用外装材1の端面形状若しくは各電線5の長手方向に直交する方向おける断面形状が略四角環形状になる。しかし、この場合も当該四角環形状が各電線5の周方向に沿った長さを最小にする形状なので、電線用外装材1の上から巻き付ける固定用テープの量は最小となり、無駄が出ないので構わない。その他、電線用外装材1が包み込む電線5が5本以上の場合も同様に、電線5の本数によっては電線用外装材1の形状が必ずしも略円環形状にならない場合もあるが、そのような場合でもその形状が電線5の周方向に沿った長さを最小にする形状であれば、テープの量が最小となり、無駄が出ないので良い。