(実施例1)
図1および図2は、本実施例のMEMS構造体10を示している。MEMS構造体10は、下側シリコン層12と、酸化シリコン層14と、上側シリコン層16が順に積層された、SOI基板18に形成されている。
下側シリコン層12には、基板部20が形成されている。酸化シリコン層14には、中間固定部22が形成されている。上側シリコン層16には、上側固定部24と、連結部26と、平板部28が形成されている。
図1に示すように、上側固定部24は、MEMS構造体10を上方から平面視したときに略正方形状となるように形成されている。図2に示すように、上側固定部24は中間固定部22を介して基板部20に固定されている。中間固定部22は、MEMS構造体10を上方から平面視したときに上側固定部24と略同一形状となるように形成されており、上側固定部24と重複する範囲に形成されている。
図1に示すように、連結部26は、Y方向(図1の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部30と、X方向(図1の左右方向)に沿って伸びるX方向梁部32を備えている。連結部26は、MEMS構造体10を上方から平面視したときに略L字形状となるように形成されている。X方向梁部32の長さは、Y方向梁部30の長さに比べて長い。Y方向梁部30は、上側固定部24のX方向についての略中央の位置で、上側固定部24のY方向についての端面に接続している。X方向梁部32は、平板部28のY方向についての略中央の位置で、平板部28のX方向についての端面に接続している。
図1に示すように、平板部28は、MEMS構造体10を上方から平面視したときに、X方向に沿って伸びる略長方形状に形成されている。平板部28は、支持方向をX方向として、連結部26によって片持ち支持されている。平板部28にZ方向(図1の紙面垂直方向)の力が作用すると、連結部26が撓んで、平板部28は基板部20に対して傾斜し、平板部28の先端は基板部20に対してZ方向に変位する。例えば平板部28の上面にミラーを設けて、アクチュエータ等により平板部28を傾斜させることにより、MEMS構造体10を光の反射角を調整可能な光偏向器として利用することができる。あるいは、平板部28の先端近傍の下面に突起状の触針を設けて、アクチュエータ等により平板部28を傾斜させて対象物の表面に触針を接触させ、このときの平板部28の先端の変位量を計測することで、MEMS構造体10を触針表面形状測定器として利用することもできる。
SOI基板18は、製造時に高温での熱処理を行った後、常温まで冷却されている。高温から常温まで冷却される際に、下側シリコン層12、酸化シリコン層14および上側シリコン層16は、それぞれの線膨脹係数に応じて収縮する。下側シリコン層12の線膨張係数は、4×10−6[℃−1]である。酸化シリコン層14の線膨張係数は、5×10−7[℃−1]である。上側シリコン層16の線膨脹係数は、4×10−6[℃−1]である。このように、隣接する層の間の線膨張係数が相違するため、SOI基板18が高温から常温まで冷却される際の収縮の度合いも、各層で異なったものになる。このため、SOI基板18の各層には、このような収縮度合いの相違に伴う残留歪が生じる。SOI基板18を加工してMEMS構造体10を製造する際に、酸化シリコン層14や上側シリコン層16を選択的に除去することにより、各層の残留歪が解放されて、設計時に想定していない反りを生じることがある。
上側シリコン層16では、高温から常温へ冷却する際に、下面側は酸化シリコン層14により変形を拘束されるため、あまり収縮しない。しかしながら、上面側は、変形を拘束されていないので、大きく収縮する。このため、酸化シリコン層14および上側シリコン層16を選択的に除去して、中間固定部22、上側固定部24、連結部26および平板部28をそれぞれ形成すると、上側固定部24では、下面側に比べて上面側が大きく収縮する態様の変形を生じ、図2のようなZX面(平板部28の支持方向とSOI基板18の積層方向を含む面)で見たときに、下に凸な形状の反りを生じる。このため、上側固定部24のX方向についての端面では、ZX面で見たときに大きなたわみ角を生じることになる。この時、仮に図3に示す比較例のMEMS構造体40のように、X方向に沿って直線状に伸びる連結部42を用いて、連結部42の一端を平板部28に接続し、連結部42の他端を上側固定部24のX方向についての端面に接続する構成とすると、上側固定部24のX方向についての端面における大きなたわみ角に起因して、平板部28の先端が跳ね上がるような反りを生じてしまう。
これに対して、図1に示す本実施例のMEMS構造体10では、Y方向梁部30とX方向梁部32を有する略L字形状の連結部26を介して、平板部28を上側固定部24に接続する構成としている。連結部26は、上側固定部24のX方向についての略中央で、上側固定部24のY方向についての端面に接続している。このような構成とすると、連結部26と上側固定部24の接続箇所において、図2のようなZX面で見たたわみ角はほぼゼロとなる。従って、本実施例のMEMS構造体10によれば、平板部28の先端が跳ね上がるような反りを生じることがなく、設計時に想定した形状を確保することができる。なお、本実施例のMEMS構造体10では、上側固定部24がYZ面で見たときに下に凸な形状に変形するので、連結部26と上側固定部24の接続箇所において、YZ面での大きなたわみ角を生じる。しかしながら、Y方向梁部30の長さを十分に短くしておくことで、このたわみ角に起因する平板部28の変位を小さく抑えることができる。
なお、本実施例のMEMS構造体10において、連結部26のX方向梁部32とY方向梁部30が接続する箇所に丸みを持たせて、応力集中を緩和する形状とすることもできる。このような構成とすることで、応力集中を防ぐことができ、MEMS構造体10の耐久性を向上することができる。
(実施例2)
図4および図5は、本実施例のMEMS構造体50を示している。MEMS構造体50は、実施例1のMEMS構造体10と同様に、下側シリコン層12と、酸化シリコン層14と、上側シリコン層16が順に積層された、SOI基板18に形成されている。
下側シリコン層12には、基板部52と、固定電極54が形成されている。酸化シリコン層14には、中間固定部56が形成されている。上側シリコン層16には、上側固定部58と、連結部60と、平板部62が形成されている。
固定電極54は、下側シリコン層12に形成された基板部52の上部のシリコンに、部分的に導電性を付与することにより形成されている。
図4に示すように、上側固定部58は、MEMS構造体50を上方から平面視したときに略正方形状となるように形成されている。図5に示すように、上側固定部58は中間固定部56を介して基板部52に固定されている。中間固定部56は、MEMS構造体50を上方から平面視したときに上側固定部58と略同一形状となるように形成されており、上側固定部58と重複する範囲に形成されている。
図4に示すように、連結部60は、Y方向(図4の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部64と、X方向(図4の左右方向)に沿って伸びるX方向梁部66を備えている。連結部60は、MEMS構造体50を上方から平面視したときに略L字形状となるように形成されている。X方向梁部66の長さは、Y方向梁部64の長さに比べて長い。Y方向梁部64は、上側固定部58のX方向についての略中央の位置で、上側固定部58のY方向についての端面に接続している。X方向梁部66は、平板部62のY方向についての略中央の位置で、平板部62のX方向についての端面に接続している。
図4に示すように、平板部62は、MEMS構造体50を上方から平面視したときに、X方向に沿って伸びる略長方形状に形成されている。平板部62は、支持方向をX方向として、連結部66によって片持ち支持されている。平板部62にZ方向(図4の紙面垂直方向)の力が作用すると、連結部60が撓んで、平板部62は基板部52に対して傾斜し、平板部62の先端は基板部52に対してZ方向に変位する。この際の変位量は、平板部62に作用するZ方向の力の大きさに応じたものとなる。平板部62に作用するZ方向の力が慣性力の場合には、変位量は平板部62に作用するZ方向の加速度に応じたものとなる。平板部62のシリコンには、導電性が付与されている。平板部62は可動電極部ということもできる。
図5に示すように、固定電極54と平板部62は、間隔を隔てて互いに対向して配置されている。固定電極54と平板部62の間には、静電容量が形成される。固定電極54と平板部62の間の静電容量は、両者の間の距離に応じたものとなる。このため、固定電極54と平板部62の間の静電容量を検出することで、基板部52に対する平板部62の変位量を検出することができる。基板部52に対する平板部62の変位量を検出することで、平板部62に作用するZ方向の力または加速度を検出することができる。本実施例のMEMS構造体50は、力センサまたは加速度センサとして利用することができる。
実施例1のMEMS構造体10と同様に、本実施例のMEMS構造体50でも、各層の線膨張係数の相違に起因して、残留歪の解放によって平板部62の先端が跳ね上がるような反りの発生が問題となる。しかしながら、実施例1のMEMS構造体10と同様に、本実施例のMEMS構造体50では、Y方向梁部64とX方向梁部66を有する略L字形状の連結部60を介して、平板部62を上側固定部58に接続する構成としている。連結部60は、上側固定部58のX方向についての略中央で、上側固定部58のY方向についての端面に接続している。このような構成とすると、連結部60と上側固定部58の接続箇所において、図5のようなZX面で見たたわみ角はほぼゼロとなる。従って、本実施例のMEMS構造体50によれば、平板部62の先端が跳ね上がるような反りを生じることがなく、設計時に想定した形状を確保することができる。
なお、平板部62を支持する構造は、これ以外にも種々の構造を採用することができる。例えば、図6に示すMEMS構造体70のように、2つの上側固定部72,74と、連結部82によって平板部62を支持する構造としてもよい。上側固定部72,74は、MEMS構造体70を平面視したときに連結部82を挟んで配置されている。上側固定部72,74は、それぞれ酸化シリコン層14に対応して形成された中間固定部(図示せず)を介して基板部52に固定されている。連結部82は、Y方向(図6の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部76,78と、X方向(図6の左右方向)に沿って伸びるX方向梁部80を備えている。連結部82は、MEMS構造体70を上方から平面視したときに略T字形状となるように形成されている。Y方向梁部76,78は、それぞれ上側固定部72,74のX方向についての略中央の位置で、上側固定部72,74のY方向についての端面に接続している。X方向梁部80は、平板部62のY方向についての略中央の位置で、平板部62のX方向についての端面に接続している。平板部62は、連結部82によって、支持方向をX方向として、片持ち支持されている。
このような構造とした場合、上側固定部72,74のY方向梁部76,78との接続箇所では、ZX面(平板部62の支持方向と積層方向を含む面)で見た上側固定部72,74の残留歪に起因するたわみ角はほぼゼロである。従って、図6に示すMEMS構造体70によれば、平板部62の先端が跳ね上がるような反りが発生することを抑制することができる。
また、図6に示すMEMS構造体70によれば、Y方向梁部76,78に対して両端支持であるため、平板部62のX軸周りの回転(ねじり)に対する剛性が、図4に示すMEMS構造体50よりも高い。従って、平板部62にX軸周りのトルクが外乱として作用する場合であっても、平板部62のX軸周りの回転(ねじり)を低減し、その影響を抑制することができる。
あるいは、図7に示すMEMS構造体90のように、4つの上側固定部92,94,96,98と、連結部100によって平板部62を支持する構造としてもよい。上側固定部92,94,96,98は、それぞれ酸化シリコン層14に対応して形成された中間固定部(図示せず)を介して基板部52に固定されている。連結部100は、Y方向(図7の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部102,104,106,108と、X方向(図7の左右方向)に沿って伸びるX方向梁部110,112を備えている。連結部100は、MEMS構造体90を上方から平面視したときに、2つのT字が連結した形状となるように形成されている。Y方向梁部102,104,106,108は、それぞれ上側固定部92,94,96,98のX方向についての略中央の位置で、上側固定部92,94,96,98のY方向についての端面に接続している。X方向梁部110は、平板部62のY方向についての略中央の位置で、平板部62のX方向についての端面に接続している。平板部62は、連結部100によって、支持方向をX方向として片持ち支持されている。
このような構造とした場合、上側固定部92,94,96,98のY方向梁部102,104,106,108との接続箇所では、ZX面(平板部62の支持方向と積層方向を含む面)で見た上側固定部92,94,96,98の残留歪に起因するたわみ角はほぼゼロである。従って、図7に示すMEMS構造体90によれば、平板部62の先端が跳ね上がるような反りが発生することを抑制することができる。
また、図7に示すMEMS構造体90によれば、平板部62のX軸周りの回転(ねじり)に対する剛性が、図4に示すMEMS構造体50よりも高い。従って、平板部62にX軸周りのトルクが外乱として作用する場合であっても、平板部62のX軸周りの回転(ねじり)を低減でき、その影響を抑制することができる。
さらに、図7に示すMEMS構造体90によれば、平板部62のY軸周りの回転に対する剛性が、図6に示すMEMS構造体70よりも高い。従って、平板部62にY軸周りのトルクが外乱として作用する場合であっても、平板部62のY軸周りの回転(ねじり)を低減でき、その影響を抑制することができる。
あるいは、図8に示すMEMS構造体120のように、3つの上側固定部122,124,126と、2つの連結部128,130によって平板部132を支持する構造としてもよい。図8に示すMEMS構造体120の平板部132は、図4,図6,図7に示す平板部62よりも幅広に形成されており、それに対応して、固定電極134も、図4,図6,図7に示す固定電極54よりも幅広に形成されている。
図8に示すMEMS構造体120の上側固定部122,124,126は、それぞれ酸化シリコン層14に対応して形成された中間固定部(図示せず)を介して基板部52に固定されている。連結部128は、Y方向(図8の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部136,138と、X方向(図8の左右方向)に沿って伸びるX方向梁部140を備えている。連結部130は、Y方向に沿って伸びるY方向梁部142,144と、X方向に沿って伸びるX方向梁部146を備えている。連結部128,130は、MEMS構造体120を上方から平面視したときに、それぞれ略T字形状となるように形成されている。連結部128のY方向梁部136,138は、それぞれ上側固定部122,124のX方向についての略中央の位置で、上側固定部122,124のY方向についての端面に接続している。連結部128のX方向梁部140は、平板部132のY方向についての端部近傍の位置で、平板部132のX方向についての端面に接続している。連結部130のY方向梁部142,144は、それぞれ上側固定部124,126のX方向についての略中央の位置で、上側固定部124,126のY方向についての端面に接続している。連結部130のX方向梁部146は、平板部132のY方向についての端部近傍の位置で、平板部132のX方向についての端面に接続している。平板部132は、連結部128,230によって、支持方向をX方向として片持ち支持されている。
このような構造とした場合、上側固定部122,124,126のY方向梁部136,138,142,144との接続箇所では、ZX面(平板部132の支持方向と積層方向を含む面)で見た上側固定部122,124,126のたわみ角はほぼゼロである。従って、図8に示すMEMS構造体120によれば、平板部132の先端が跳ね上がるような反りが発生することを抑制することができる。
また、図8に示すMEMS構造体120によれば、平板部132のX軸周りの回転(ねじり)に対する剛性が、図4に示すMEMS構造体50や、図6に示すMEMS構造体70よりも高い。従って、平板部132にX軸周りのトルクが外乱として作用する場合であっても、その影響を抑制することができる。
さらに、図8に示すMEMS構造体120によれば、平板部132と固定電極134の対向面積を大きくすることができる。可動電極である平板部132と固定電極134の間の静電容量の検出感度をより向上することができる。
なお、上記したMEMS構造体50,70,90,120においても、連結部60,82,100,128,130でX方向の梁部とY方向の梁部が接続する箇所に丸みを持たせて、応力集中を緩和する形状とすることができる。このような構成とすることで、応力集中を防ぐことができ、MEMS構造体50,70,90,120の耐久性を向上することができる。
(実施例3)
図9は、本実施例のMEMS構造体150を示している。MEMS構造体150は、下側シリコン層と、酸化シリコン層と、上側シリコン層が順に積層されたSOI基板に形成されている。下側シリコン層には、基板部152が形成されている。
上側シリコン層には、可動マス部154が形成されている。可動マス部154は、MEMS構造体150を上方から平面視したときに、長方形状となるように形成されている。可動マス部154の四隅には、連結部158,162,166,170がそれぞれ接続されている。連結部158,162,166,170は、X方向(図9の左右方向)に沿って伸びるX方向梁部158b,162b,166b,170bと、Y方向(図9の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部158a,162a,166a,170aを備える、略T字形状の部材である。連結部158は、可動電極固定部156a,156bに接続している。連結部162は、可動電極固定部160a,160bに接続している。連結部166は、可動電極固定部164a,164bに接続している。連結部170は、可動電極固定部168a,168bに接続している。可動電極固定部156a,156b,160a,160b,164a,164b,168a,168bは、酸化シリコン層に形成された中間固定部(図示せず)を介して基板部152に固定されている。可動マス部154のX方向についての両端面には、可動櫛歯電極172,174が形成されている。可動マス部154、連結部158,162,166,170、可動櫛歯電極172,174は、下方の酸化シリコン層が除去されている。
さらに上側シリコン層には、固定櫛歯電極176,178を備える固定電極支持部180,182が形成されている。固定櫛歯電極176は、可動櫛歯電極172に対してY方向に対向するように配置されている。固定櫛歯電極178は、可動櫛歯電極174に対してY方向に対向するように配置されている。固定電極支持部180は、固定電極固定部190a,190bと、連結部184によって支持されている。連結部184は、X方向に沿って伸びるX方向梁部184bと、Y方向に沿って伸びるY方向梁部184aを備える、略T字形状の部材である。固定電極支持部182は、固定電極固定部188a,188bと、連結部186によって支持されている。連結部186は、X方向に沿って伸びるX方向梁部186bと、Y方向に沿って伸びるY方向梁部186aを備える、略T字形状の部材である。固定電極固定部190a,190b,188a,188bは、酸化シリコン層に形成された中間固定部(図示せず)を介して、基板部152に固定されている。固定櫛歯電極176,178、固定電極支持部180,182、連結部184,186は、下方の酸化シリコン層が除去されている。
連結部158,162,166,170のX方向梁部158b,162b,166b,170bは、Y方向の剛性が低く形成されている。従って、可動マス部154は基板部152に対してY方向に相対変位可能である。可動マス部154にY方向の慣性力が作用すると、連結部158,162,166,170のX方向梁部158b,162b,166b,170bが撓んで、可動マス部154は基板部152に対してY方向に相対変位する。この際の変位量は、可動マス部154に作用する力の大きさに応じたものとなる。可動マス部154に作用するY方向の力が慣性力の場合には、変位量は可動マス部154に作用するY方向の加速度に応じたものとなる。
固定櫛歯電極176,178と可動櫛歯電極172,174には、それぞれ導電性が付与されている。固定櫛歯電極176と可動櫛歯電極172の間には、静電容量が形成される。固定櫛歯電極176と可動櫛歯電極172の間の静電容量は、両者の間の距離に応じたものとなる。同様に、固定櫛歯電極178と可動櫛歯電極174の間には、両者の間の距離に応じた静電容量が形成される。このため、固定櫛歯電極176,178と可動櫛歯電極172,174の間の静電容量を検出することで、基板部152に対する可動マス部154のY方向の変位量を検出することができる。基板部152に対する可動マス部154のY方向の変位量を検出することで、可動マス部154に作用するY方向の力または加速度を検出することができる。本実施例のMEMS構造体150は、力センサまたは加速度センサとして利用することができる。
本実施例のMEMS構造体150では、固定電極支持部180と固定櫛歯電極176は、X方向を支持方向として片持ち支持されている。また、固定電極支持部182と固定櫛歯電極178も、X方向を支持方向として片持ち支持されている。これらの部材について、先端が跳ね上がるような反りを生じてしまうと、固定櫛歯電極176,178と可動櫛歯電極172,174の間の対向面積が減少してしまい、検出感度の悪化を招いてしまう。しかしながら、本実施例のMEMS構造体150では、Y方向梁部184a,186aとX方向梁部184b,186bを有する略T字形状の連結部184,186を介して、固定電極支持部180,182を固定電極固定部190a,190b,188a,188bに接続する構成としている。連結部184,186は、固定電極固定部190a,190b,188a,188bのX方向についての略中央の位置で、固定電極固定部190a,190b,188a,188bのY方向についての端面に接続している。このような構成とすることで、固定櫛歯電極176,178の先端が跳ね上がるような反りを生じることがなく、設計時に想定した対向面積を確保することができる。
(実施例4)
図10は、本実施例のMEMS構造体200を示している。MEMS構造体200は、下側シリコン層と、酸化シリコン層と、上側シリコン層が順に積層されたSOI基板に形成されている。
下側シリコン層には、基板部202と、固定電極部204が形成されている。酸化シリコン層には、中間固定部が形成されている。上側シリコン層には、上側固定部206と、連結部208と、平板部210が形成されている。
固定電極部204は、下側シリコン層に形成された基板部202の上部のシリコンに、部分的に導電性を付与することにより形成されている。
上側固定部206は、MEMS構造体200を上方から平面視したときに略正方形状となるように形成されている。上側固定部206は中間固定部を介して基板部202に固定されている。中間固定部は、MEMS構造体200を上方から平面視したときに上側固定部206と略同一形状となるように形成されており、上側固定部206と重複する範囲に形成されている。
連結部208は、X方向(図10の左右方向)に沿って伸びる第1X方向梁部216と、Y方向(図10の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部214と、X方向に沿って伸びる第2X方向梁部212を備えている。第2X方向梁部212は、上側固定部206のX方向についての平板部210から見て遠い側の端面で、上側固定部206に接続している。第1X方向梁部216は、平板部210のY方向についての略中央の位置で、平板部210のX方向についての端面に接続している。
平板部210は、MEMS構造体200を上方から平面視したときに、X方向に沿って伸びる略長方形状に形成されている。平板部210は、連結部208によって、支持方向をX方向として片持ち支持されている。平板部210にZ方向(図10の紙面垂直方向)の力が作用すると、連結部208が撓んで、平板部210は基板部202に対して傾斜し、平板部210の先端は基板部202に対してZ方向に変位する。この際の変位量は、平板部210に作用するZ方向の力の大きさに応じたものとなる。平板部210に作用するZ方向の力が慣性力の場合には、変位量は平板部210に作用するZ方向の加速度に応じたものとなる。平板部210のシリコンには、導電性が付与されている。平板部210は可動電極部ということもできる。
固定電極部204と平板部210は、Z方向に間隔を隔てて互いに対向して配置されている。固定電極部204と平板部210の間には、静電容量が形成される。固定電極部204と平板部210の間の静電容量は、両者の間の距離に応じたものとなる。このため、固定電極部204と平板部210の間の静電容量を検出することで、基板部202に対する平板部210のZ方向の変位量を検出することができる。基板部202に対する平板部210のZ方向の変位量を検出することで、平板部210に作用するZ方向の力または加速度を検出することができる。本実施例のMEMS構造体200は、力センサまたは加速度センサとして利用することができる。
本実施例のMEMS構造体200では、連結部208を介して、平板部210を上側固定部206に接続する構成としている。連結部208は、X方向に関して、平板部210の先端から遠い側の上側固定部206の端面に接続している。このような構成とすると、残留歪の解放により、連結部208と上側固定部206の接続箇所では、ZX面(平板部210の支持方向と積層方向を含む面)で見たときに、第2X方向梁部212とY方向梁部214の接続部を上方に跳ね上げるようなたわみ角が生じ、その結果、Y方向梁部214と第1X方向梁部216の接続部では、平板部210を下方に傾斜させるようなたわみ角が生じる。従って、本実施例のMEMS構造体200によれば、平板部210の先端が跳ね上がるような反りを生じることを確実に防ぐことができる。さらに、本実施例のMEMS構造体200によれば、平板部210と固定電極部204の間の距離を、酸化シリコン層の厚みよりも小さくすることができる。高感度なセンサを実現することができる。
なお、平板部210を支持する構造は、これ以外にも種々の構造を採用することができる。例えば図11に示すMEMS構造体220のように、2つの上側固定部222a,222bと、連結部224によって平板部210を支持する構造としてもよい。上側固定部222a,222bは、MEMS構造体220を平面視したときに連結部224を挟んで配置されている。上側固定部222a,222bは、それぞれ酸化シリコン層に対応して形成された中間固定部(図示せず)を介して基板部202に固定されている。連結部224は、X方向(図11の左右方向)に沿って伸びる第1X方向梁部230と、Y方向(図11の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部228a,228bと、X方向に沿って伸びる第2X方向梁部226a,226bを備えている。第2X方向梁部226a,226bは、上側固定部222a,222bのX方向についての平板部210から見て遠い側の端面で、上側固定部222a,222bに接続している。第1X方向梁部230は、平板部210のY方向についての略中央の位置で、平板部210のX方向についての端面に接続している。平板部210は、連結部224によって、支持方向をX方向として、片持ち支持されている。
このような構造とした場合、上側固定部222a,222bの第2X方向梁部226a,226bとの接続箇所では、残留歪の解放により、ZX面(平板部210の支持方向と積層方向を含む面)で見たときに、平板部210と連結部224を下方に傾斜させるようなたわみ角が生じる。従って、図11に示すMEMS構造体220によれば、平板部210の先端が跳ね上がるような反りが発生することを確実に防ぐことができる。さらに、本実施例のMEMS構造体220によれば、平板部210と固定電極部204の間の距離を、酸化シリコン層の厚みよりも小さくすることができる。高感度なセンサを実現することができる。
また、図11に示すMEMS構造体220によれば、平板部210のX軸周りの回転(ねじり)に対する剛性が、図10に示すMEMS構造体200よりも高い。従って、平板部210にX軸周りのトルクが外乱として作用する場合であっても、その影響を抑制することができる。
図11に示すMEMS構造体220では、第1X方向梁部230が第2X方向梁部226a,226bよりも長く形成されている。このような構成とすることによって、平板部210の先端を下方に大きく沈み込ませることができる。
図11に示すMEMS構造体220では、第2X方向梁部226a,226bは短く形成されているので、第2X方向梁部226a,226bの剛性が確保されている。第2X方向梁部226a,226bの長さは、上側固定部222a,222bの下方の中間固定部の端部から、1μm〜50μm程度とすることが好ましい。
(実施例5)
図12および図13は、本実施例のMEMS構造体250を示している。MEMS構造体250は、シリコンで形成された基板部252を備えている。基板部252の上方には、酸化シリコンで形成された中間固定部254を介して、シリコン層で形成された第1副基板部256が積層されている。また、基板部252の上方には、位置決めスペーサ258を介して、シリコンで形成された第2副基板部260が積層されている。中間固定部254はパターニングされており、第1副基板部256の第2副基板部260から遠い側の領域に形成されており、第1副基板部256の第2副基板部260から近い側の領域には形成されていない。
第1副基板部256の上方には、酸化シリコンで形成された中間固定部264a,264bを介して、上側固定部266a,266bが積層されている。上側固定部266a,266bには連結部268が接続されている。連結部268は、平板部270に接続している。上側固定部266a,266b、連結部268、平板部270は、いずれもシリコンで形成されている。平板部270には導電性が付与されている。平板部270は可動電極ということもできる。
第2副基板部260の上方には、第2副基板部260の上部のシリコンに部分的に導電性を付与することで固定電極262が形成されている。固定電極262は平板部270と対向して配置されている。
上側固定部266a,266bは、MEMS構造体250を上方から平面視したときに略正方形状となるように形成されている。上側固定部266a,266bは中間固定部264a,264bを介して第1副基板部256に固定されている。中間固定部264a,264bは、MEMS構造体250を上方から平面視したときに上側固定部266a,266bと略同一形状となるように形成されており、上側固定部266a,266bと重複する範囲に形成されている。
連結部268は、平板部210のX方向(図12の左右方向)についての端面と、上側固定部266a,266bのX方向についての平板部270から見て遠い側の端面を接続している。平板部210は、連結部268によって、支持方向をX方向として片持ち支持されている。平板部210は、MEMS構造体250を平面視したときに、X方向に沿って伸びる略長方形状に形成されている。
平板部270にZ方向(図12の紙面垂直方向)の力が作用すると、連結部268が撓んで、平板部270は基板部252に対して傾斜し、平板部252の先端は基板部252に対してZ方向に変位する。この際の変位量は、平板部270に作用するZ方向の力の大きさに応じたものとなる。平板部270に作用するZ方向の力が慣性力の場合には、変位量は平板部270に作用するZ方向の加速度に応じたものとなる。
固定電極262と平板部270は、Z方向に間隔を隔てて互いに対向して配置されている。固定電極262と平板部270の間には、静電容量が形成される。固定電極262と平板部270の間の静電容量は、両者の間の距離に応じたものとなる。このため、固定電極262と平板部270の間の静電容量を検出することで、基板部252に対する平板部270のZ方向の変位量を検出することができる。基板部252に対する平板部270のZ方向の変位量を検出することで、平板部270に作用するZ方向の力または加速度を検出することができる。本実施例のMEMS構造体250は、力センサまたは加速度センサとして利用することができる。
本実施例のMEMS構造体250を製造する際には、中間固定部254と第1副基板部256の線膨張係数が相違しているため、残留歪の解放によって、第1副基板部256は下に凸な形状に変形し、第1副基板部256の第2副基板部260に近い側の端部が上方に跳ね上がるような反りを生じる。この第1副基板部256の反りによって、平板部270も上方に持ち上げられてしまう。
しかしながら、本実施例のMEMS構造体250では、連結部268を介して、平板部270を上側固定部266a,266bに接続する構成としている。連結部268は、X方向に関して、平板部270の先端から遠い側の上側固定部266a,266bの端面に接続している。このような構成とすると、残留歪の解放により、連結部268と上側固定部266a,266bの接続箇所では、ZX面(平板部270の支持方向と積層方向を含む面)で見たときに、連結部268と平板部270を下方に傾斜させるようなたわみ角が生じる。このため、第1副基板部256に対して、平板部270の先端が下方へ沈み込むような反りを生じる。このように、本実施例のMEMS構造体250によれば、残留歪の解放による第1副基板部256の上方への反りの影響を、残留歪の解放による平板部270の下方への反りによって相殺することができる。可動電極である平板部270と固定電極262の間の距離を、設計時の想定通りのものとすることができる。
(実施例6)
図14および図15は、本実施例のMEMS構造体280を示している。MEMS構造体280は、シリコンで形成された基板部282を備えている。基板部282の上方には、酸化シリコンで形成された中間固定部284を介して、シリコンで形成された第1副基板部286が積層されている。また、基板部282の上方には、位置決めスペーサ288を介して、シリコンで形成された第2副基板部290が積層されている。中間固定部284はパターニングされており、第1副基板部286の第2副基板部290から遠い側の領域に形成されており、第1副基板部286の第2副基板部290から近い側の領域には形成されていない。
第1副基板部286の上方には、酸化シリコンで形成された中間固定部294a,294bを介して、上側固定部296a,296bが積層されている。上側固定部296a,296bには連結部298が接続されている。連結部298は、固定電極支持部300に接続している。固定電極支持部300のX方向についての第2副基板部290に近い側の端面には、固定櫛歯電極302が形成されている。上側固定部296a,296b、連結部298、固定電極支持部300および固定櫛歯電極302は、いずれもシリコンで形成されている。固定櫛歯電極302には導電性が付与されている。
第2副基板部290の中央には、深掘りエッチングによって第2副基板部290から分離された可動マス部292が形成されている。可動マス部292は、支持梁部312a,312b,312c,312dによって、第2副基板部290に支持されている。支持梁部312a,312b,312c,312dは、Y方向の剛性が低く形成されている。このため、可動マス部292は第2副基板部290に対してY方向に相対変位可能である。
可動マス部292の上方には、酸化シリコンで形成された中間固定部304a,304bを介して、上側固定部306a,306bが積層されている。上側固定部306a,306bには連結部308が接続されている。連結部308は、可動電極支持部310に接続している。可動電極支持部310のX方向についての第1副基板部286に近い側の端面には、可動櫛歯電極312が形成されている。上側固定部306a,306b、連結部308、可動電極支持部310および可動櫛歯電極312は、いずれもシリコンで形成されている。可動櫛歯電極312には導電性が付与されている。
可動マス部292にY方向(図14の上下方向)の力が作用すると、支持梁部312a,312b,312c,312dが撓んで、可動マス部292は基板部282に対してY方向に変位する。この際の変位量は、可動マス部292に作用するY方向の力の大きさに応じたものとなる。可動マス部292に作用するY方向の力が慣性力の場合には、変位量は可動マス部292に作用するY方向の加速度に応じたものとなる。
固定櫛歯電極302と可動櫛歯電極312は、Y方向に対向するように配置されている。固定櫛歯電極302と可動櫛歯電極312の間には、静電容量が形成される。固定櫛歯電極302と可動櫛歯電極312の間の静電容量は、両者の間の距離に応じたものとなる。このため、固定櫛歯電極302と可動櫛歯電極312の間の静電容量を検出することで、基板部282に対する可動マス部292のY方向の変位量を検出することができる。基板部282に対する可動マス部292のY方向の変位量を検出することで、可動マス部292に作用するY方向の力または加速度を検出することができる。本実施例のMEMS構造体280は、力センサまたは加速度センサとして利用することができる。
本実施例のMEMS構造体280を製造する際には、中間固定部284と第1副基板部286の線膨張係数が相違しているため、残留歪の解放によって、第1副基板部286は下に凸な形状に変形し、第1副基板部286の第2副基板部290に近い側の端部が上方に跳ね上がるような反りを生じる。この第1副基板部286の反りによって、固定電極支持部300および固定櫛歯電極302も上方に持ち上げられてしまう。
しかしながら、本実施例のMEMS構造体280では、連結部298を介して、固定電極支持部300を上側固定部296a,296bに接続する構成としている。連結部298は、X方向に関して、固定櫛歯電極302の先端から遠い側の上側固定部296a,296bの端面に接続している。このような構成とすると、残留歪の解放により、連結部298と上側固定部296a,296bの接続箇所では、ZX面(固定電極支持部300の支持方向と積層方向を含む面)で見たときに、連結部298と固定電極支持部300と固定櫛歯電極302を下方に傾斜させるようなたわみ角が生じる。このため、第1副基板部286に対して、固定櫛歯電極302の先端が下方へ沈み込むような反りを生じる。このように、本実施例のMEMS構造体280によれば、残留歪の解放によって第1副基板部286が上方への反りを生じても、残留歪の解放による固定櫛歯電極302の下方への反りによって相殺することができ、この結果、固定櫛歯電極302を基板部282に対して平行とすることができる。
また、本実施例のMEMS構造体280では、連結部308を介して、可動電極支持部310を可動マス部292に接続する構成としている。連結部308は、上側固定部306a,306bのX方向についての略中央の位置で、上側固定部306a,306bのY方向についての端面に接続している。このような構成とすることにより、残留歪の解放によって可動櫛歯電極312の先端が跳ね上がるような反りの発生を抑制することができ、この結果、可動櫛歯電極312を基板部282に対して平行とすることができる。このため、固定櫛歯電極302と可動櫛歯電極312が、互いに平行となって、櫛歯電極同士が均一に対向するため、高精度な測定が可能となる。
さらに本実施例のMEMS構造体280では、図15に示すように、固定櫛歯電極302のZ方向(積層方向)の厚みが、可動櫛歯電極312のZ方向の厚みに比べて、大きくなるように形成されている。これにより、残留歪の解放に伴い固定櫛歯電極302や可動櫛歯電極312の位置や角度がわずかに変動した場合でも、固定櫛歯電極302と可動櫛歯電極312の対向面積を一定に保つことができる。
(実施例7)
図16は、本実施例のMEMS構造体320を示している。MEMS構造体320は、下側シリコン層と、酸化シリコン層と、上側シリコン層が順に積層されたSOI基板に形成されている。下側シリコン層には、基板部322が形成されている。
上側シリコン層には、可動マス部324が形成されている。可動マス部324は、MEMS構造体320を上方から平面視したときに、略H字形状となるように形成されている。可動マス部324の四隅には、連結部326,328,330,332がそれぞれ接続されている。連結部326,328,330,332は、可動マス部324からX方向(図16の左右方向)に沿って伸びる第1X方向梁部326a,328a,330a,332aと、第1X方向梁部326a,328a,330a,332aに接続された可動板326b,328b,330b,332bと、可動板326b,328b,330b,332bからX方向に沿って伸びる第2X方向梁部326c,328c,330c,332cと、第2X方向梁部326c,328c,330c,332cの端部からY方向(図16の上下方向)に沿って伸びるY方向梁部326d,328d,330d,332dを備えている。第1X方向梁部326a,328a,330a,332aと第2X方向梁部326c,328c,330c,332cは、略同じ長さで形成されており、互いに平行となるように隣接して配置されている。Y方向梁部326d,328d,330d,332dは可動電極固定部334,336,338,340に接続している。可動電極固定部334,336,338,340は、酸化シリコン層に形成された中間固定部(図示せず)を介して基板部322に固定されている。可動マス部324のY方向の端面(図16の下方の端面)には、可動櫛歯電極344が形成されている。可動マス部324には、全面にわたって、エッチングホール342aが形成されている。また、可動板326b,328b,330b,332bには、エッチングホール342bが形成されている。可動マス部324、連結部326,328,330,332、可動櫛歯電極344は、エッチングによって下方の酸化シリコン層が除去されている。
上側シリコン層には、固定櫛歯電極346を備える櫛歯電極支持部348が形成されている。固定櫛歯電極346は、可動櫛歯電極344と噛み合うような位置関係で配置されている。櫛歯電極支持部348は、酸化シリコン層に形成された中間固定部(図示せず)を介して、基板部322に固定されている。固定櫛歯電極346は、下方の酸化シリコン層が除去されている。
下側シリコン層には、エッチングによって基板部322から分離された固定電極350が形成されている。固定電極350は、可動マス部324とZ方向に対向するように配置されている。固定電極350のX方向の両端は、酸化シリコン層に形成された中間固定部(図示せず)を介して、上側シリコン層に形成された固定電極支持部352,354に固定されている。固定電極支持部352,354は、酸化シリコン層に形成された中間固定部(図示せず)を介して、基板部322に固定されている。固定電極350と一方の固定電極支持部354の接続部分には、上側シリコン層から酸化シリコン層を貫通して下側シリコン層まで達する貫通電極356が設けられている。貫通電極356によって、固定電極350と固定電極支持部354は電気的に接続されている。
固定櫛歯電極346と可動櫛歯電極344の間に電圧を印加すると、固定櫛歯電極346と可動櫛歯電極344の対向面積が増大するように、可動マス部324が櫛歯電極支持部348に向けて引き寄せられる。従って、固定櫛歯電極346と可動櫛歯電極344の間に励振電圧発生器(図示せず)によって周期的に電圧を印加することで、可動マス部324を基板部322に対してY方向に励振することができる。
可動マス部324がY方向に振動している状態で、MEMS構造体320にX軸周りの角速度が作用すると、可動マス部324にZ方向のコリオリ力が作用し、可動マス部324は基板部322に対してZ方向に変位する。この際の変位量は、可動マス部324に作用するコリオリ力の大きさ、言い換えるとMEMS構造体320に作用するX軸周りの角速度の大きさに応じたものとなる。可動マス部324が基板部322に対してZ方向に変位すると、可動マス部324と固定電極350の間の静電容量が変化する。従って、可動マス部324と固定電極350の間の静電容量の変化を容量検出回路(図示せず)によって検出することで、可動マス部324の基板部322に対するZ方向の変位量を検出することができ、MEMS構造体320に作用するX軸周りの角速度を検出することができる。なお、容量検出回路による検出結果は、表示部(図示せず)によって表示させることができる。
本実施例のMEMS構造体320では、可動マス部324を支持する連結部326,328,330,332が、いわゆるフォールディッド型(折返し型)ビームとなっている。仮に連結部326,328,330,332を、ストレート型ビームとして形成した場合、可動マス部324のY方向の変位量が大きくなると、連結部326,328,330,332を構成する部材に引張応力が作用し、連結部326,328,330,332のY方向のばね定数が変化してしまう。本実施例のように、連結部326,328,330,332をフォールディッド型ビームとして形成すると、可動マス部324のY方向の変位に追随して可動板326b,328b,330b,332bもY方向に変位するため、可動マス部324部のY方向の変位量が大きくなっても、連結部326,328,330,332を構成する第1X方向梁部326a,328a,330a,332a、第2X方向梁部326c,328c,330c,332cには引張応力がほとんど作用せず、連結部326,328,330,332のY方向のばね定数はほとんど変化しない。検出感度の高い角速度センサを実現することができる。
本実施例のMEMS構造体320によれば、積層基板の残留歪の解放に起因する、可動板326b,328b,330b,332bや可動マス部324のZ方向の反り上がりを抑制することができる。これにより、可動マス部324と固定電極350の間の間隔が一定に保たれ、高精度な角速度センサを実現することができる。また、積層基板の残留歪の解放に起因する可動マス部324や連結部326,328,330,332への応力集中を抑制することができる。
本実施例のMEMS構造体320では、Y方向梁部326d,328d,330d,332dの形状について、Y方向の長さがX方向の長さよりも短くなるように形成されている。また、Y方向梁部326d,328d,330d,332dのY方向の長さは、第2X方向梁部326c,328c,330c,332cのX方向の長さに比べて、十分に短くなるように形成されている。このような構成とすることによって、第2X方向梁部326c,328c,330c,332cのZ方向の剛性を高めて、積層基板の残留歪の解放に起因する可動マス部324や連結部326,328,330,332のZ方向の反り上がりを抑制することができる。
本実施例のMEMS構造体320では、Y方向梁部326d,328d,330d,332dが可動電極固定部334,336,338,340に対して、X方向の中央近傍で接続している。可動電極固定部334,336,338,340の下方の中間固定部は、酸化シリコン層のエッチングの際に内側に退行しているが、Y方向梁部326d,328d,330d,332dは、X方向に関して、可動電極固定部334,336,338,340の中間固定部が残存している範囲に接続されている。このような構成とすることで、可動電極固定部334,336,338,340のX方向の端部(中間固定部が残存していない部分)の上反りの影響によって連結部326,328,330,332がZ方向に反り上がってしまうことを抑制することができる。
なお、図17に示すように、Y方向梁部326d,328d,330d,332dにエッチングホール342cを形成してもよい。このような構成とすることで、Y方向梁部326d,328d,330d,332dの下方の酸化シリコン層を精度良く均一にエッチングすることが可能となる。Y方向梁部326d,328d,330d,332dのビーム長が正確に規定され、安定したばね定数を実現することができる。
なお、上記ではMEMS構造体320を角速度センサとして具現化した場合について説明したが、同様の構成によって、加速度センサや、変位センサ、角度センサとして具現化することもできる。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。