以下、本発明を具体化した一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、添付図面は、説明の便宜上、実際の寸法・縮尺とは異なって図示されている部分がある。
図1は、本実施形態に係る静電容量型の加速度センサをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造したチップの概略構成を示している。同図1に示すように、加速度センサ10は、平面視略長方形板状に形成された基板12を備える。加速度センサ10は、基板12の長辺に沿った方向に並設される2つのチップ領域の各々に第1のセンサ21と第2のセンサ31とが形成されている。なお、以下の説明では、同図1に示すように、加速度センサ10の長辺に沿った方向(第1及び第2のセンサ21,31が並設される方向)をX方向、X方向に対して直角で加速度センサ10の短辺に沿った方向をY方向、X方向とY方向との両方に直角となる方向(基板12の基板平面に対して垂直な方向)をZ方向と称し、説明する。
第1のセンサ21は、枠部23と、錘部24と、一対のバネ部26と、静電容量部27とを備える。図2(a)に示すように、枠部23は、平面視形状が四角枠状に形成され、その囲われた内側部分に錘部24が設けられている。錘部24は、平面視略正方形状をなす板状に形成されている。錘部24は、Z方向に貫通する貫通孔24Aが複数形成され、該貫通孔24Aが錘部24に対してマトリックス状に形成されている。ちなみに、この貫通孔24Aは、錘部24がZ方向に移動する際の抵抗を減らす通気孔としての機能や後述する犠牲層をエッチングする際のエッチング液の導入口として機能するものである。
また、第1のセンサ21は、Y方向の両側部分にバネ部26が各々設けられている。バネ部26は、X方向の略中央部に設けられた梁部41と、梁部41におけるX方向の両側に設けられた一対のバネ43とを備える。梁部41は、平面視略長方形状の板状に形成され、長辺がY方向に沿って設けられている。錘部24と梁部41とは、各バネ43を介して連結されている。バネ43は、平面視形状が蛇行した形状をなしており、一端側の固定端43Aが梁部41の側面に固定され、他端側の可動端43Bが錘部24に接続されている。なお、詳細については後述するが、バネ43の蛇行した形状は、互いになす角度が直角となる短辺と長辺とが交互に繋がり、短辺がX方向に沿って設けられ長辺がY方向に沿って設けられるつづら折れ形状に形成されている。また、バネ43は、梁部41に固定される固定端43Aと、錘部24に接続される可動端43Bとの距離が長辺よりも長くなるように構成されており、X方向に対する剛性を高めて伸縮が規制される構造となっている。
図2(b)は図2(a)のA−A線端面図、図2(c)は図2(a)のB−B線端面図である。図2(b)に示すように、梁部41は、基板12上に立設されたアンカー部45と一体形成され固定されている。このため、図2(c)に示すように、錘部24は、固定された梁部41に対しバネ43を介して支持されることによって、基板12の上に浮いたような状態で保持されている。また、錘部24と錘部24を囲む枠部23とは互いに離間している。
図2(a)に示すように、静電容量部27は、第1及び第2固定電極28,29と、可動電極30とを備える。静電容量部27は、第1のセンサ21及び錘部24の中央に設けられている。第1のセンサ21は、一対の第1及び第2固定電極28,29を複数組(本実施形態では5組)備える。第1及び第2固定電極28,29は、主面がZ方向に沿った略長方形板状に形成され、長辺がX方向に沿って設けられている。第1及び第2固定電極28,29は、互いの主面が対向するようにY方向に沿って交互に設けられている。換言すれば、第1及び第2固定電極28,29は、Y方向に沿って並設されている。
第1固定電極28は、X方向の一端側にスルーホール28Aが設けられ基板12の上に形成された配線(図示略)と電気的に接続されている。また、第2固定電極29は、第1固定電極28とは反対のX方向の一端側にスルーホール29Aが設けられ基板12上に形成された配線(図示略)と電気的に接続されている。第1固定電極28の電極の厚さ(Y方向の幅)は、スルーホール28Aが形成される接続部28Bが、他の部分に比べて大きくなっている。同様に、第2固定電極29の電極の厚さ(Y方向の幅)は、スルーホール29Aが形成される接続部29Bが、他の部分に比べて大きくなっている。
第1及び第2固定電極28,29は、各組において接続部28B,29Bが設けられる端部が互いに異なる。詳述すると、例えば、Y方向の一端側(図中において最も上側)の1組に含まれる第1固定電極28には、X方向の一端側(図中の左側)に接続部28Bが設けられ、第2固定電極29には、X方向の他端側(図中の右側)に接続部29Bが設けられている。また、当該1組目の固定電極28,29とY方向で隣り合う1組(図中において上から2番目の組)では、1組目とは異なり、第1固定電極28にはX方向の一端側(図中の右側)に接続部28Bが設けられ、第2固定電極29にはX方向の他端側(図中の左側)に接続部29Bが設けられている。つまり、第1及び第2固定電極28,29は、複数組のうちの1組とY方向において隣り合う他の1組とで、接続部28B,29Bが設けられる端部が互いに異なる端部となっている。換言すれば、接続部28Bは、第1固定電極28に対して設けられる端部の位置が、Y方向に並ぶ第1固定電極28に対して交互に異なる端部側となっている。同様に、接続部29Bは、第2固定電極29に対して設けられる端部の位置が、Y方向に並ぶ第2固定電極29に対して交互に異なる端部側となっている。
また、図2(b)に示すように、第1及び第2固定電極28,29は、スルーホール28A,29Aが設けられた端部を除く部分が基板12と離間するように形成されている。なお、第1及び第2固定電極28,29は、端部を含む全体が基板12に接続された構成としてもよい。
可動電極30は、平面視において第1及び第2固定電極28,29の外周部分を囲むように形成された枠状電極部30Aと、各第1及び第2固定電極28,29のY方向の間に設けられた平板電極部30Bとを備える。枠状電極部30Aは、錘部24の中央部に一体形成される四角枠状をなし、第1及び第2固定電極28,29の各々と互いに離間している。平板電極部30Bは、第1及び第2固定電極28,29に対向するように錘部24から延設され、主面がZ方向に沿った略長方形板状に形成され、長辺がX方向に沿って設けられている。各平板電極部30Bは、X方向における両端部が錘部24に一体形成されている。
また、第1及び第2固定電極28,29は、Y方向で隣り合う平板電極部30Bに挟まれた領域に互いに隣接して配置されている。接続部28Bは、第1固定電極28と平板電極部30Bとが面一に対向するように、隣接する第2固定電極29側に拡幅されて形成されている。また、接続部29Bは、第2固定電極29と平板電極部30Bとが面一に対向するように、隣接する第1固定電極28側に拡幅されて形成されている。
図2(b)に示すように、基板12は、コア基板51と、コア基板51の上面を覆うように形成された絶縁層53と、絶縁層53の上に形成された第3固定電極55とを備える。梁部41と一体形成されたアンカー部45はパッド58と接続されており、錘部24が配線(図示略)を介して外部端子と電気的に接続されている。第1のセンサ21は、図3に示すように、錘部24の可動電極30と第1及び第2固定電極28,29とで平行平板コンデンサC1,C2が構成される。平行平板コンデンサC1,C2は、第1のセンサ21に対しY方向(検出方向)に作用する加速度に応じて、第1及び第2固定電極28,29の各々と平板電極部30Bとの間の距離が変動し静電容量が変化する。例えば、Y方向の一方(図中の上方)に錘部24が変動するのにともなって平行平板コンデンサC1の静電容量が減少する一方で、平行平板コンデンサC2の静電容量が増加する。このような可動電極30(平板電極部30B)と第1及び第2固定電極28,29との間の距離の変動にともなって変化する平行平板コンデンサの静電容量を測定することによってY方向に対する加速度を検出することが可能となる。
例えば、錘部24に接続される測定点61における電圧を上記した外部端子から処理回路に出力しコンデンサC1,C2の電位差(静電容量の差)を検出して加速度を算出する。なお、図3に示すように、第1のセンサ21は、静電容量の差の出力を大きくし感度を向上させるためにコンデンサC1,C2の各々を含むブリッジ回路が構成されている。また、このブリッジ回路を構成することで、非検出方向となるX方向に対する各コンデンサC1,C2の静電容量の変化を相殺し、いわゆる他軸感度の低減を図ることができる。また、第1のセンサ21は、加速度が加わらない無負荷時の測定点61におけるオフセット電圧をキャンセルするための補正回路を備えてもよい。
また、図2(b)に示す第3固定電極55は、錘部24とZ方向で対向するように絶縁層53の上面の全域に広がって形成されている。第1のセンサ21は、錘部24と第3固定電極55とでZ方向で対向する平行平板コンデンサが構成される。この平行平板コンデンサは、第1のセンサ21に対しZ方向に作用する加速度に応じて静電容量が変化する。第1のセンサ21では、錘部24と第3固定電極55との間の距離の変動にともなって変化する平行平板コンデンサの静電容量を測定することによってZ方向に対する加速度が検出される。
第1のセンサ21は、上記したようにY方向及びZ方向に作用する加速度を検出する一方で、バネ43(図2(a)参照)がX方向に対する伸縮が規制される構造となっており、錘部24がX方向に撓動しないようになっている。従って、第1のセンサ21は、Y方向及びZ方向の加速度が検出可能な2軸加速度センサとして構成されている。図1に示すように、加速度センサ10が備える第2のセンサ31は、第1のセンサ21と同様の構成となっており、枠部23と、錘部24と、一対のバネ部26と、第1及び第2固定電極28,29と、第3固定電極(図示略)とを備える。第2のセンサ31は、Z方向を回転軸として第1のセンサ21を90度回転した構造となっている。つまり、第2のセンサ31は、X方向及びZ方向に作用する加速度を検出する一方で、バネ部26のバネ43がY方向に対する伸縮が規制され、錘部24がY方向に撓動しないようになっている。従って、第2のセンサ31は、X方向及びZ方向の加速度が検出可能な2軸加速度センサとして構成されている。
このように構成された加速度センサ10では、第1及び第2のセンサ21,31の出力に基づいて3方向に対する加速度が検出される。また、加速度センサ10では、Z方向に対する加速度を第1及び第2のセンサ21,31の各々の錘部24と第3固定電極55との距離の変動に応じた静電容量の変化を測定し検出する。即ち、加速度センサ10は、Z方向に対する加速度を第1及び第2のセンサ21,31の両方の出力を合成した値を用いて検出する構成となっている。
次に、静電容量部27の配置について図4を用いて説明する。なお、図4は、静電容量部27の配置を示すための模式図であり、第1のセンサ21が備える各部材を適宜省略して示している。図4に示すように、静電容量部27は、錘部24の中央に設けられて一列に並んで配置されている。詳述すると、静電容量部27は、平面視正方形状の外周縁を有する錘部24における対角線の中点(重心70)が静電容量部27の中心となる位置になっている。ここでいう静電容量部27の中心とは、第1及び第2固定電極28,29と平板電極部30Bとの各部材を含む静電容量部27を立体的に見た場合の中心となる位置である。なお、静電容量部27の中心は、静電容量部27の構成等に応じて適宜設定する。また、本実施形態の第1のセンサ21は、この静電容量部27の中心が、錘部24の重心70と一致しており、平面的にだけでなく立体的に見た場合にも互いの中心となる位置が一致している。なお、本実施形態では、第2のセンサ31が第1のセンサ21と同様の構成となっており、各センサ21,31が静電容量部27の中心が錘部24の重心70に一致している。
ここで、第1及び第2固定電極28,29は、スルーホール28A,29Aが形成される接続部28B,29Bの電極の厚さ71が他の部分に比べて増大している。図12は、比較例としての第1のセンサ21Aの静電容量部27の配置を示している。図12に示す第1のセンサ21Aは、静電容量部27が第1及び第2固定電極28,29の長手方向(X方向)において2つ(2列)に分断された静電容量部27A,27Bを備える。静電容量部27A、27Bは、平面視において錘部24の重心70の位置に対してX方向で対称となる位置に分散した配置となっている。このような構成では、1つの検出方向(Y方向)に対応する静電容量部27が2つの静電容量部27A,27Bに分散して配置された構成となっており、各静電容量部27A,27Bの第1及び第2固定電極28,29に接続部28B,29Bが設けられる。
これに対し、図4に示す第1のセンサ21では、検出方向に対応する静電容量部27が錘部24の中央部に一列に集約して設けられ錘部24の中央部にY方向に沿って第1及び第2固定電極28,29及び可動電極30が交互に並設されている。そのため、第1のセンサ21は、図12に示す第1のセンサ21Aと比較した場合に、接続部28B,29Bを省略した数分だけ小型化を図ることが可能となる。より具体的には、例えば、第1のセンサ21は、第1のセンサ21AとX方向で比較した場合に、接続部28B,29BのX方向の長さを幅72とすると、接続部28B,29Bの数分(幅72が2個分)の長さだけX方向の長さを短くすることが可能となる。従って、このような構成では、1つの検出方向に対応する静電容量部27が1箇所に集約されることによって、固定電極28,29に設けられる接続部28B,29Bの配置が最適化でき接続部28B,29Bの個数を削減して装置の小型化を図ることが可能となる。
また、第1及び第2固定電極28,29は、錘部24と離間している。そのため、例えば、第1のセンサ21は、第1のセンサ21AとX方向で比較した場合に、接続部28B,29Bと錘部24とのX方向における隙間の幅を幅73とすると、隙間の数分(幅73が2個分)の長さだけX方向の長さを短くすることが可能となる。つまり、接続部28B,29Bの省略に合わせて接続部28B,29Bと錘部24とのギャップを省略できるため、特に微細な機械構造の製造に適用されるMEMS技術を用いた加速度センサにおいて装置の小型化を効果的に図ることが可能となる。
ちなみに、例えば、図12に示す第1のセンサ21Aにおいて、静電容量部27Bを省略し、静電容量部27Aに集約、即ち、静電容量部27を錘部24の中央以外の位置に集約する構成が考えられる。しかしながら、このような構成は、例えば、錘部24に対してX方向の一方側のみに可動電極30を形成することとなり、錘部24の重心が中央からずれることとなる。従って、加速度が加わった場合に、錘部24に対し回転方向の運動が生じて検出方向の加速度に対する所望の出力を得ることが困難となる。
次に、Y方向に並ぶ第1及び第2固定電極28,29の各々に対して接続部28B,29Bを交互に異なる端部に設けた作用について説明する。まず、図4に示す第1のセンサ21では、接続部28B,29Bと可動電極30とのギャップの幅を幅73として同一符号を用いて説明したが、この幅73は厳密にはX方向両側の各々に設けられるギャップによって距離が異なる。これは、エッチングのためのレジストを形成するフォトマスクの位置調整(アライメント)やエッチング量に対する制御等の製造工程での精度の限界から各固定電極28,29のX方向両側に設けられる幅73を同一距離とすることは極めて難しいからである。
そこで、以下の説明では、図5に示すように、X方向の一端側(図中において左側)の幅73を幅73A、他端側の幅73を幅73Bと称し、説明する。例えば幅73Aを幅73Bに比べて長い距離とする。図5に示すように、接続部28Bは、第1固定電極28と可動電極30とがY方向において面一に対向するように、第1固定電極28の一端側において隣接する第2固定電極29に拡幅されて形成されている。また、接続部29Bは、第2固定電極29と可動電極30とが面一に対向するように、第2固定電極29の一端側において隣接する第1固定電極28側に拡幅されて形成されている。また、接続部28B,29Bは、隣接する第1及び第2固定電極28,29のX方向の端部と対向する位置まで拡幅して形成されている。従って、一対の第1及び第2固定電極28,29は、X方向の端部において接続部28B,29Bのいずれか一方が枠状電極部30Aと対向している。
ここで、例えば第1のセンサ21に大きな衝撃等が加わって錘部24が回転したような状態では、図6に示すように幅73A,73BがY方向の位置によって異なる状態となる。例えば、錘部24がZ軸方向を回転軸として反時計回りに回転した場合には、幅73Aの距離がY方向の上側に向かうに従って大きくなっている一方で、幅73Bの距離がY方向の上側に向かうに従って小さくなっている。この錘部24の回転にともなう幅73A,73Bの変動により、接続部28B,29Bと枠状電極部30Aの間の静電容量の変動が生じる。そして、上記したように幅73A,73Bが異なる距離であるため、錘部24の回転にともなう静電容量の変動が幅73A,73B、即ち、X方向の両側において異なる態様となる。
そこで、本実施形態の第1及び第2固定電極28,29では、接続部28B,29Bが設けられる端部の位置が、Y方向に並ぶ各固定電極28,29の各々に対して交互に異なる端部側となるように構成されている。これにより、枠状電極部30Aは、回転時における接続部28B,29Bの各々の間における静電容量に生じる変動が同様の態様となる。その結果、可動電極30と第1及び第2固定電極28,29の各々との静電容量に対し回転によって生じる変動の差を無くし加速度の検出精度の向上を図ることが可能となる。
ちなみに、本実施形態の第1のセンサ21では、接続部28B,29Bが第1及び第2固定電極28,29の端部に設けられているが、これに対し、図13に示す第1のセンサ21Bのように第1及び第2固定電極28,29のX方向の略中央部に接続部28B,29Bを設けた構成が考えられる。このような構成では、第1及び第2固定電極28,29のX方向の端部分と可動電極30との回転時における静電容量の変動の差を低減できるが、電極の幅が他の部分に比べて大きい接続部28B,29Bを中央部に設けたことで両固定電極28,29の互いの距離が離れることとなり、第1のセンサ21Bに対して固定電極28,29が占有する領域の増大を招く。
これに対し、本実施形態の第1のセンサ21では、一対の第1及び第2固定電極28,29が、X方向の端部において接続部28B,29Bのいずれか一方が枠状電極部30Aと対向している。そして、電極の幅が大きくなる各接続部28B,29Bが、固定電極28,29の異なる端部側に設けられ互い違いとなるように配置されている。これにより、両固定電極28,29をより近接させて配置することによって、固定電極28,29が占有する領域を減少させることができる。その結果、加速度の検出精度の向上と装置の小型化との両立を図ることが可能となる。
次に、可動電極30の平板電極部30Bの構造について詳細に説明する。
図7に示すように、第1のセンサ21の静電容量部27に設けられる平板電極部30Bは、長辺がX方向に沿った略長方形板状に形成され、長辺の両端部が錘部24に固定されている。この平板電極部30Bが錘部24に固定される部分(以下、「固定部」という)81,82は、錘部24と一体形成されている。
ここで、本実施形態との比較を行うために、平板電極部30Bが長手方向の一端側、例えば固定部81のみで錘部24に固定されるような構成について説明する。図7に示すように、例えば、平板電極部30Bの長手方向(X方向)の長さをL、短手方向(Z方向)の長さをh、厚さ(Y方向の長さ)をbとする。そして、固定部81のみが固定されるような平板電極部30Bに対して検出方向に加速度a(G)が加わった場合に、平板電極部30Bの他端側(固定部82側)の先端となる部分には、以下の式で表される撓み(変位)が生じる。
v=f0L4/8EI=14.7(σaL4/Eb2)
上記した式において、f0は加速度a(G)が加わったときに平板電極部30Bに加わる単位長さ当たりの荷重(分布荷重)、Eは平板電極部30Bの材料(例えばシリコン)のヤング率(例えば、169GPa(ギガパスカル))、Iは断面2次モーメント、σは材料の密度(例えば2330kg/m3)である。また、例えば、長さL=270μm(マイクロメートル)、長さh=10μm、厚さb=2μmとする。この場合に、a=10,000(G)の大きさの加速度がセンサ21に加わった場合には、v=2.7μmの変位が生じる。
一方で、可動電極30(平板電極部30B)と第1及び第2固定電極28,29との間の幅74は、感度を向上させるために電極間の距離を狭くすること、あるいはエッチング等の製造工程での加工限界を考慮すると、幅74は約2.0〜2.5μmとなる。従って、上記したような平板電極部30Bの一端側を固定する構成では、仮に10,000=1万(G)の大きさの加速度が加わった場合には、平板電極部30Bの先端部分と第1及び第2固定電極28,29とが衝突し短絡が生じる。ちなみ、加速度a=1万(G)とは、この種のセンサに対して加えられる加速度としては一般的に許容範囲内とされる値である。
これに対し、本実施形態の第1のセンサ21では、各平板電極部30Bの長手方向の両端が固定部81,82において錘部24と接続されている。このような構成では、平板電極部30Bには、加速度が加わった場合に、両端が錘部24に固定されていることで長手方向(X方向)の中央部が変位するような力が加わる。しかしながら、平板電極部30Bの中央部が変位するためには、撓む以外に平板電極部30B自身が伸びるように変形する必要がある。このような平板電極部30Bの中央部が伸びて固定電極28,29と接触するための加速度は、本発明者らがシミュレーションした結果では加速度a=約750万(G)という値となった。従って、本実施形態の平板電極部30Bでは、その両端が錘部24に固定されることで、衝撃等により大きな加速度が加わった場合であっても、平板電極部30Bと第1及び第2固定電極28,29との衝突を防止することが可能となる。
また、第1のセンサ21は、静電容量部27が錘部24の中央に設けられ集約されていることから、1つの平板電極部30Bの長手方向の長さLを長くして静電容量を大きくすることで、感度の向上を図ることができる。その一方で、上記したように、平板電極部30Bを一方側のみで固定した場合には、長さLに応じた撓みが生じる。そのため、本実施形態では、平板電極部30Bの両端が錘部24に固定され撓みが生じにくい構造となっていることから、所望の静電容量とするために平板電極部30Bの長さLを長くした静電容量部27であっても好適に集約することが可能となる。
なお、例えば、第1のセンサ21に対し錘部24等の変動を規制するストッパーを設けて可動電極30と第1及び第2固定電極28,29との衝突が生じる前に錘部24の変動を規制する構成が考えられる。しかしながら、このようなストッパーが機能する際には、既に錘部24が変動している状態であり、可動電極30と第1及び第2固定電極28,29との幅74が例えば上記した2.0〜2.5μmよりも狭くなり、撓みによる衝突が生じ易くなる。従って、ストッパー等の錘部24の変動を規制する部材を備える第1のセンサ21であっても、平板電極部30Bの両端を錘部24に固定することで、より確実に可動電極30と第1及び第2固定電極28,29との衝突を防止することが可能となる。
次に、バネ43の構造について説明する。
図8(a)に示すバネ100は、バネ43の一例である。バネ100は、上述したように、互いになす角度が直角となる短辺111と長辺112とが交互に繋がる形状に構成されている。なお、以下の説明では、図8(a)〜(c)に示すように、短辺111の長さをL1、長辺112の長さをL2と称し、説明する。また、図8(a)〜(c)に示す方向はバネ100,100A,100Bが伸縮する方向を示している。
バネ100は、長さL2が長さL1に比べて長く、錘部24(図2(a)参照)と梁部41(図2(a)参照)の各々に接続される両端の距離L3が長さL2よりも長くなるように構成されている。ここで、バネ100において、Y方向で往復する回数、換言すればY方向の一端側で折り返す回数(以下、「折りたたみ回数」という)をnとする。図8(a)に示すバネ100では、折りたたみ回数nは15回となる。バネ100は、折りたたみ回数nと、X,Y,Zの各方向に対応するバネ定数Kx,Ky,Kzが相関する関係にある。そこで、本発明者らは、バネ100の折りたたみ回数nに対するバネ定数Kx,Ky,Kzの変化について検討・シミュレーション等を重ねた結果、本発明をなすに至った。具体的には、図8(a)に示すように、例えば、Z方向と直交する平面においてバネ100が占有する領域S(図中のハッチングで囲む部分)の面積を一定として、折りたたみ回数nを変更しながらバネ定数Kx,Ky,Kzの検討を行った。
図9は、折りたたみ回数nに対するバネ定数Kx,Ky,Kzの値を示すグラフである。図9に示すように、X方向のバネ定数Kxは、折りたたみ回数nの増加にともなって増加する。図中の実線で示すグラフは、バネ定数Kxを試算した結果を示しており、折りたたみ回数nの増加にともなってX方向に対する剛性が高まり伸縮が規制されていくことがわかる。
一方で、Y方向のバネ定数Kyは、折りたたみ回数nの増加にともなって減少する。図中の破線で示すグラフは、バネ定数Kyを試算した結果を示しており、折りたたみ回数nの増加にともなってY方向に対する剛性が低くなり撓動し易くなっていくことがわかる。同様に、Z方向のバネ定数Kzは、折りたたみ回数nの増加にともなって減少する。図中の一点鎖線で示すグラフは、バネ定数Kzの試算結果を示し折りたたみ回数nの増加にともなってZ方向に撓動し易くなっていくことがわかる。
以上の内容を踏まえ、図9に示すグラフを用いて、バネ定数Kx,Ky,Kzによりバネ100を3種類に分類する。例えば、各バネ定数Kx,Ky,Kzが近似した値となる折りたたみ回数nを基準値n1(例えばn1=10)とし、折りたたみ回数nが基準値n1よりも小さくなるバネ100を第1種類とする。この第1種類に分類されるバネ100は、例えば、図8(b)に示されるように折りたたみ回数nを5回として構成されたバネ100Aである。このバネ100Aは、バネ100Aの両端の距離L3が長さL2よりも短い。バネ100Aは、X方向に対して変位し易く、Y,Z方向に対する伸縮が規制される特性を有する。つまり、このようなバネ100Aは、1方向に対して伸縮する特性を有するものであり、例えば特開平11−344507号公報(特許文献1)に示されるような1軸加速度センサに用いられるバネである。
次に、折りたたみ回数nを基準値n1として各バネ定数Kx,Ky,Kzがほぼ同一となるバネ100を第2種類とする。この第2種類に分類されるバネ100は、例えば、図8(c)に示されるように折りたたみ回数nを10回として構成されたバネ100Bである。このバネ100Bは、バネ100Bの両端の距離L3が長さL2とほぼ等しく、X,Y,Zの各方向に対して変位する。つまり、この種のバネ100Bは、3方向に対して伸縮あるいは撓動する特性を有するものであり、例えば特表2005−534016号公報(特許文献3)に示されるような3軸加速度センサに用いられるバネである。
そして、本実施形態の図8(a)に示されるバネ100は、折りたたみ回数nが基準値n1に比べて大きい第3種類に分類されるバネであり、2方向に対する撓動性を備えるものである。詳述すると、バネ100は、短辺111と長辺112とが繋がり蛇行して延びるX方向に対する剛性が高く伸縮し難い。また、バネ100は、蛇行して延びるX方向に対して直交するY方向に対する撓動性を有している。また、バネ100は、バネ100が占有する領域Sを設定した平面に対して垂直なZ方向に対する撓動性を有している。従って、このような特性のバネ100(バネ43)を備える第1のセンサ21では、Y方向及びZ方向に作用する加速度が検出される一方で、錘部24がX方向に変動しないためX方向に対する他軸感度を抑制でき検出精度の向上を図ることが可能となる。
次に、このように構成された加速度センサ10の感度について説明する。
加速度センサ10は、Z方向に対する加速度を第1及び第2のセンサ21,31の両方の出力を用いて検出する構成となっている。ここで、対向する電極の面積をS、電極の距離をd、誘電率をεとすると、静電容量Cは、次式で表される。
C=εS/d・・・・・・・・・(1)
錘部24は、平面方向がZ方向と直交する方向となる平板状に形成されており、Z方向に対する加速度を検出する可動電極の面積Sを他の方向(X方向、Y方向)に比べて大きくすることができる。そのため、本実施形態の第1及び第2のセンサ21,31は、Z方向に作用する加速度を検出するために設けられる静電容量の大きさが他の2方向に対して大きくすることができる。
また、上記式(1)を用いて距離の変化量Δdに対する静電容量の変化量ΔCの大きさは次式で表される。
ΔC/Δd=εS/d2・・・・(2)
また、錘部24に作用する力は、運動方程式、弾性の法則から次式で表される。
F=ma=kΔd(m:錘部24の質量、a:加速度、k:バネ定数)・・(3)
上記式(2)、(3)から静電容量の変化量ΔCは次式で表される。
ΔC=(εS/d2*m/k)a=(C/k*m/d)a・・・・・・(4)
従って、上記式(4)より、本実施形態のような静電容量型の加速度センサ10の加速度aに対する感度(静電容量の変化量)を上げるには、重りとしての錘部24の質量mを増加させる、あるいは錘部24と第1〜第3固定電極28,29,55の各々とで構成されるコンデンサの静電容量Cを増加させる、あるいはバネ定数Kx,Ky,Kzを小さくすることが考えられる。質量mは錘部24の大きさと相関する関係にある。静電容量Cは、Z方向においては錘部24のZ方向と直交する方向の面積Sと相関する関係にある。加速度センサ10は、図2(a)に示すように、平面視で見た場合には錘部24が平面の大部分の領域を占めている。これに対し、例えば1軸加速度センサ(上記の特開平11−344507号公報(特許文献1)に開示される加速度センサ等)をXYZの各方向に対応して設ける構成として、複数の加速度センサを同一平面上に並べて配置した構成が考えられる。しかしながら、このような構成では、平面視で見た場合には、Z軸方向に寄与する錘部が平面の一部の領域のみを占めることとなる。つまり、本実施形態の加速度センサ10は、すべてのセンサ(第1及び第2のセンサ21,31)がZ方向の加速度の検出に寄与するため、Z方向に対して同一の感度となる3軸加速度センサを構成する場合を比較すると小型化に優れた構造となっている。
また、静電容量型の加速度センサの感度は、一般的にXYZの各方向に対する感度が等しくなることが好ましい。上記式(4)に示すように、各方向に対する感度を同程度とするために各方向の静電容量Cとバネ定数kとの比を等しくすることが考えられる。例えば、上記した加速度センサ10において、X方向の加速度を検出する第2のセンサ31の錘部24と第1及び第2固定電極28,29との電極間の静電容量をCx、バネ43のX方向に対するバネ定数をkxとする。また、Y方向の加速度を検出する第1のセンサ21の錘部24と第1及び第2固定電極28,29との電極間の静電容量をCy、バネ43のY方向に対するバネ定数をkyとする。なお、本実施形態では第1及び第2のセンサ21,31が同一構造であるため、静電容量CxとCy、バネ定数kxとkyは各々で同値となる。また、第1及び第2のセンサ21,31のZ方向の加速度を検出する錘部24と第3固定電極55との電極間の静電容量の各々を静電容量Cz1,Cz2、各センサ21,31のバネ43のZ方向に対するバネ定数の各々をkz1,kz2とする。なお、本実施形態では第1及び第2のセンサ21,31が同一構造であるため、静電容量Cz1,Cz2が同値となる。同様に、バネ定数kz1,kz2は同値となる。
そして、この場合における各方向の静電容量Cとバネ定数kとの比を等しくするためには、次式を満たすことが好ましい。
2*Cx/kz=2*Cy/ky=(Cz1/kz1+Cz2/kz2)・・・・(5)
従って、上記式(5)の値を指標として設計することで、互い直交する3軸の各々の方向の加速度に対する感度を同等とすることができ、本実施形態の加速度センサ10を容易に構成することが可能となる。なお、図3に示すように、本実施形態の第1及び第2のセンサ21,31の各々は、コンデンサC1,C2を含むブリッジ回路が構成され、各コンデンサC1,C2の静電容量の差を用いて加速度を算出する。従って、各センサ21,31の各方向に対する感度は、例えば、コンデンサC1,C2のうち一方のコンデンサの容量を2倍した値と相関することとなる。上記した式(5)は、このような静電容量型の加速度センサにおいて用いられるブリッジ回路を加味したものとなっている。
次に、第1のセンサ21の製造方法の一例について説明する。なお、第2のセンサ31の製造方法については第1のセンサ21と同様であるため説明を省略する。
まず、図10(a)に示すコア基板200を準備する。コア基板200は、例えば単結晶シリコンからなるウェハである。第1のセンサ21は、コア基板200上に多数のセンサ素子を形成し、その後にダイシングを行って複数の第1のセンサ21に個片化することにより製造される。
コア基板200の表面に絶縁層210を形成する。絶縁層210は、例えば、窒化シリコン(SiNx)や、二酸化シリコンの膜の上に窒化シリコンを積層した膜を熱酸化法や堆積法を用いて形成する。次いで、絶縁層210の表面に、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて任意にパターニングされた第3固定電極212、パッド214及び図示しない配線を形成する。第3固定電極212及び配線(図示略)等は、ポリシリコンなど、後述する犠牲層215のエッチングに対して耐性がある材料を用いる。なお、LSI技術で一般的に用いられるアルミニウムを第3固定電極212及び図示しない配線に用いる場合は、当該アルミニウムの上に窒化シリコン膜を積層したり、前述した絶縁層210を複数層の積層膜で構成してその中に形成するなどして、犠牲層215のエッチングに対して耐性を上げることが好ましい。以上のように、絶縁層210、第3固定電極212及び配線(図示略)を複数層で構成してもよい。また、第3固定電極212及び配線(図示略)は、導電性を有する複数層で構成してもよい。
次いで、図10(b)に示すように、絶縁層210及び第3固定電極212を覆うように犠牲層215を形成する。犠牲層215は、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により二酸化シリコンを成膜して形成する。犠牲層215の厚さは例えば2μm(マイクロメートル)である。次いで、図10(c)に示すように、犠牲層215に対しパッド214の表面の一部が露出するようにコンタクトホール216を形成する。コンタクトホール216は、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて形成する。
次いで、図11(a)に示すように、犠牲層215の上に電極層217を形成する。コンタクトホール216内には電極層217の一部が充填される。電極層217は、例えばCVD法によりポリシリコンを成膜して形成する。電極層217の厚さは例えば5〜10μmである。次いで、図11(b)に示すように、電極層217に対してエッチングを施し、貫通孔219及び第1及び第2固定電極220,221を形成する。電極層217に対するエッチングは、例えば、フォトリソグラフィー技術を用いて任意のパターニングで形成されたレジスト(図示略)を電極層217の上に形成し、そのレジストの開口部から露出する領域に対しDeep−RIE(Reactive Ion Etching)法を用いて異方性エッチングをする。なお、図示しないがバネ43は、例えば、上記した第1及び第2固定電極220,221と同一工程にて形成される。
次いで、図11(c)に示すように、犠牲層215をエッチングする。犠牲層215のエッチングは、例えば、電極層217に形成された貫通孔219等からエッチング液(例えばバッファードフッ酸(BHF))を導入してエッチングする。このようにして、図1に示す第1のセンサ21が形成される。
以上、上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)加速度センサ10が備える第1及び第2のセンサ21,31は、第1及び第2固定電極28,29に対して接続部28B,29Bが設けられる端部の位置が、Y方向に並ぶ各固定電極28,29の各々に対して交互に異なる端部側となるように構成されている。これにより、枠状電極部30Aは、回転時における接続部28B,29Bの各々の間における静電容量に生じる変動が同様の態様となる。その結果、可動電極30と第1及び第2固定電極28,29の各々との静電容量に対し回転によって生じる変動の差を無くし加速度の検出精度の向上を図ることが可能となる。
(2)第1及び第2のセンサ21,31は、第1及び第2固定電極28,29と可動電極30(平板電極部30B)とを備える静電容量部27が錘部24の中央部に一列に集約して設けられている。このような構成では、1つの検出方向に対応する静電容量部27が1箇所に集約されることによって、第1及び第2固定電極28,29を基板12に接続する接続部28B,29Bの配置が最適化でき接続部28B,29Bの個数を削減して装置の小型化を図ることが可能となる。また、このような構成では、接続部28B,29Bが省略された部分に応じて錘部24を形成する領域を増大、即ち錘部24の重さを増大させることが可能となり、同一の大きさの静電容量を備える他の加速度センサに比べて感度を向上させることが可能となる。
(3)第1のセンサ21では、各平板電極部30Bの長手方向の両端が固定部81,82において錘部24と接続されている。このような構成では、平板電極部30Bの両端が錘部24に固定されることで、衝撃等により大きな加速度が加わった場合であっても、平板電極部30Bと第1及び第2固定電極28,29との衝突を防止することが可能となる。
また、平板電極部30Bの両端が錘部24に固定され撓みが生じにくい構造となっていることから、所望の静電容量とするために平板電極部30Bの長さL(図7参照)を長くした静電容量部27であっても、第1及び第2固定電極28,29と平板電極部30Bとの短絡の防止を図りつつ、感度の向上を図った加速度センサが構成できる。
(4)第1のセンサ21は、バネ43がY,Z方向の加速度に応じて伸縮しX方向の加速度に対する伸縮が規制されることで、加速度に応じて変動する錘部24と第1〜第3固定電極28,29,55との静電容量の変化からY,Z方向の加速度が検出される。つまり、第1のセンサ21は、バネ43がX方向に対する剛性を有しており、2軸加速度センサとして構成されている。加速度センサ10は、第2のセンサ31が第1のセンサ21と同様の構成となっており、第2のセンサ31によりX,Z方向の加速度が検出されることによって、3軸加速度センサとして構成されている。このような構成では、各センサ21,31のバネ43が1方向に対する剛性を有しており、製造工程の不具合により錘部24の重心がずれ回転が生じたような状態となる虞がなく、検出精度の向上を図った加速度センサ10が構成できる。
(5)加速度センサ10は、Z方向に対する加速度を第1及び第2のセンサ21,31の両方の出力を用いて検出する構成となっている。これにより、加速度センサ10は、すべてのセンサ(第1及び第2のセンサ21,31)がZ方向の加速度の検出に寄与するため、3つの1軸加速度センサで3軸加速度センサを構成する場合と比較すると、小型化に優れた構造となっている。
(6)バネ43は、可動端43Bが固定端43Aに対して第1のセンサ21を平面視した場合に外側に位置する構成となっている。このような構成では、錘部24に作用する回転モーメントの影響が低減され、第1のセンサ21の検出精度の向上を図ることができる。
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、第1のセンサ21は、一対の第1及び第2固定電極28,29を奇数組(5組)備えたが、偶数組を備えた構成とし各接続部28B,29Bを交互に異なる端部側とした構成としてもよい。
また、上記実施形態では、第1及び第2のセンサ21,31を2方向の加速度が検出可能な2軸加速度センサとして構成したが、1方向の加速度のみが検出可能な1軸加速度センサとして構成してもよい。例えば、第1のセンサ21のバネ43を、図8(b)に示す第1種類のバネ100Aとして構成し、Y方向の加速度センサを検出する1軸加速度センサとして構成してもよい。このような構成においても、例えば、第1及び第2固定電極28,29に対し接続部28B,29Bを交互に異なる端部側に配置した構成とすることで、上記した効果と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、静電容量部27の中心が錘部24の重心70と一致して集約されていたが、静電容量部27を錘部24の略中央部となる位置に集約してもよい。
また、上記実施形態では、第1のセンサ21を平面視略正方形状に形成したが、これに限定されない。例えば、図14に示す第1及び第2センサ301,302は、平面視略長方形状に形成されている。第1及び第2センサ301,302は、長辺がX方向に沿って延びる平面視略長方形状に形成されている。第1センサ301のバネ311は、上記実施形態の第1のセンサ21のバネ43に比べてX方向の長さが長くY方向の長さが短くなっている。また、第2センサ302のバネ312は、上記実施形態の第2のセンサ31のバネ43に比べてX方向の長さが長くY方向の長さが短くなっている。このような構成においてもバネ311,312が1方向に対する剛性を有しており、第1及び第2センサ301,302が2軸加速度センサとして構成される。つまり、本実施形態の第1及び第2のセンサ21,31の構成によれば、構造上の制限を少なくでき形状の自由度を高めることができる。
また、図14に示す第1及び第2センサ301,302では、錘部24と各部材とのスティクションを防止するためのストッパー320が設けられている。ストッパー320は、基板12(図1参照)に立設し錘部24をZ方向に貫通する柱状に形成されている。ストッパー320が錘部24と係合することにより、錘部24が他の部材、例えば第1固定電極28に貼り付くのを防止することができる。また、図示しないが、ストッパー320の錘部24と対向する面には、凸部が設けられており、ストッパー320と錘部24との接触面積を少なくして効果的にスティクションを防止する構成となっている。また、このような凸部を、他の部材、例えばアンカー部45の錘部24と対向する面に設けてストッパー320として機能させてもよい。また、スティクションを防止する機構は、ストッパー320に限らず、例えば任意の部材の端面を疎水性とする表面加工を施してもよい。
また、各部材の形状・構成等は一例であり、適宜変更してもよい。例えば、第1のセンサ21と第2のセンサ31は異なる構造でもよい。
ちなみに、加速度センサ10、第1のセンサ21,21A,21B,301、第2のセンサ31,302は、加速度センサの一例として、錘部24は、錘部の一例として、第1及び第2固定電極28,29は、固定電極の一例として、接続部28B,29Bは、第1及び第2接続部の一例として、可動電極30、枠状電極部30A及び平板電極部30Bは、可動電極の一例として挙げられる。