JP5872058B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、鉛筆硬度が高く、耐熱性に優れ、反り変形し難い積層体に関する。
ポリカーボネート樹脂シートは透明性、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度に優れ、OA・電子機器のディスプレイやタッチパネル前面板等に用いられている。しかしポリカーボネート樹脂は鉛筆硬度が低いため樹脂表面に傷がつきやすく、耐候性が低いため屋外での使用時に変色が起こりやすいという欠点がある。これらを改善する方法として、ポリカーボネート樹脂からなる層(以下、PC層と省略することがある)に耐候性や鉛筆硬度に優れたメタクリル樹脂からなる層(以下、PMMA層と省略することがある)や変性したポリカーボネート樹脂からなる層を積層することが提案されている。
しかしながら、PMMA層は耐熱性が乏しく、吸水性が高く、湿度変化による積層体自体の反りが発生したり、高温高湿環境下で反り変形を起こしたりする欠点がある。この欠点は、使用環境が高温下や高湿下にさらされるタッチパネル前面板、液晶ディスプレイカバー等の電子機器関連用途において重大な欠陥となる。そのため、使用環境下で生じる積層体の反り変形を抑制する試みがなされている。
例えば、特許文献1には、PC層に耐候性の優れたPMMA層を積層した積層体が開示されている。特許文献1によると、この積層体は吸水による反りを起こし難く、耐候性にも優れることが記載されている。しかし特許文献1では、積層体の高温高湿環境下における反り変形の抑制までは検討されていない。
特許文献2にはシート成形時に一定の曲率半径でシートを湾曲させておくことで、高温高湿環境下の反り変動を抑えた積層体が開示されている。しかし、積層体に使用されている熱可塑性樹脂はメタクリル酸メチルが主成分であり、長期の高温高湿環境下(温度85℃、湿度85%で120時間という条件)においては、耐熱性や吸水性といった点で、反り変形の抑制には不十分である。
特許文献3には積層体を3本ロールで成形する際に第2冷却ロールの周速度と、第3冷却ロールの周速度との比を一定以上にすることで80℃に加熱した後の反り変化を抑制できることが記載されている。しかし、特許文献3に記載された積層体では、長期の高温高湿環境下(温度85℃、湿度85%で120時間という条件)においては、耐熱性や吸水性といった点で、反り変形の抑制には不十分である。
また、特許文献4にはPC層に、耐熱性や鉛筆硬度に優れた変性ポリカーボネート樹脂層を積層した積層体が開示されている。しかし、特許文献4では、積層体の高温高湿環境下における反り変形の抑制までは検討されていない。
スマートフォン等のディスプレイカバーパネルやタッチパネル前面板は、高温高湿環境下での前面板の反り変形により、剥がれるという問題があった。
特開2006−205478号公報 特開2012−051311号公報 特開2012−096357号公報 特開2010−188719号公報
本発明の目的は、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐熱性、低吸水性に優れ、常温常湿環境下での反り変形が小さく、且つ長期の高温高湿環境下での反り変形が少ない積層体を提供することにある。また本発明の目的は、スマートフォン等のディスプレイカバーパネルやタッチパネル前面板に用いたとき、反り変形による剥がれが少ない積層体を提供することにある。
本発明者らは、特定のガラス転移点および吸水率を有する異なる2種の熱可塑性樹脂からなる樹脂層(A)および樹脂層(B)を含む積層体を、溶融押出し、3本の冷却ロールで冷却する際に、第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度を特定の範囲に設定することにより、温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下に120時間放置した後の反り率を0.2%以下にすることができることを見出し、本発明を完成した。このように本発明は、特定の2種の熱可塑性樹脂からなる積層体を微延伸することにより、高温高湿環境下での反り率が低減されることを見出したことに基づく。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂(A)からなる樹脂層(A)およびその少なくとも一方の面に積層された熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂層(B)を含む積層体であって、
(i)樹脂層(B)の厚みは40〜150μmで、樹脂層(A)と樹脂層(B)の合計厚みは0.8mm〜3.0mmであり、
(ii)熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)のそれぞれのガラス転移点TgAおよびTgBが共に115℃以上で、且つTgAとTgBの差が30℃以下であり、
(iii)熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の吸水率が共に0.7%以下で、且つ吸水率差が0.5%以下であり、
(iv)該積層体を温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下に120時間放置した後の反り率が0.2%以下であ
(v)熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂であり、熱可塑性樹脂(B)が芳香族(メタ)アクリレート単位5〜80重量%およびメチル(メタ)アクリレート単位20〜95重量%を含有し、重量平均分子量が5,000〜30,000であるアクリル共重合体20〜60重量部と、ポリカーボネート樹脂40〜80重量部とのブレンド樹脂である、
前記積層体である。
また本発明は、(i)樹脂層(A)およびその少なくとも一方の面に積層された樹脂層(B)を含む積層体を溶融状態でダイから押出し、
(ii)押出された積層体を引取りロールにより引き取りながら、第1〜第3冷却ロールにより冷却する、
各工程を含み、
ここで第1〜第3の冷却ロールは回転中心軸が平行で、同一平面上にあり、かつ接近して配置され、第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度を0.996〜1.010倍にし、
(a)ダイから押出された積層体を、第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、
(b)第2冷却ロールに巻き掛け、
(c)第3冷却ロールに巻き掛けることにより行う、
前記積層体の製造方法である。
本発明の積層体は、鉛筆硬度が高く、耐擦傷性に優れ、耐熱性に優れ、常温常湿環境下での反り変形が小さく、且つ長期の高温高湿環境下においても反り変形し難い。本発明の積層体の製造方法によれば、常温常湿環境下での反り変形が小さく、且つ長期の高温高湿環境下においても反り変形し難い積層体を製造することができる。
実施例で使用した装置を示した図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<樹脂層(A)>
樹脂層(A)は、熱可塑性樹脂(A)からなる。熱可塑性樹脂(A)は、ガラス転移点TgAが115℃以上であり、吸水率が0.7%以下である。ガラス転移点TgAは、好ましくは115〜180℃であり、より好ましくは130〜160℃であり、さらに好ましくは140〜150℃である。本発明におけるガラス転移点とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を使用し、JIS K7121に準拠した昇温速度20℃/minで測定し得られるものである。また、吸水率は好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.4%以下である。
熱可塑性樹脂(A)は、ポリカーボネート樹脂である
ポリカーボネート樹脂は二価フェノールとカーボネート前駆体を例えば界面重縮合法、溶融エステル交換法など公知の方法で反応させて製造される芳香族ポリカーボネート樹脂である。
二価フェノールの代表的な例として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。好ましい二価フェノールはビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類であり、特にビスフェノールAが好ましい。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメート等があげられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂を製造するに当り、上記二価フェノールを単独で、または二種以上併用することができ、また必要に応じて分子量調節剤、分岐剤、触媒等を用いることができる。
樹脂層(A)に用いられるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは1.0×10〜10.0×10、より好ましくは1.5×10〜4.5×10、さらに好ましくは1.8×10〜3.0×10である。粘度平均分子量とは、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
また、ポリカーボネート樹脂には必要に応じて添加剤、例えば亜燐酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステル等の熱安定剤(0.001〜0.2重量%)、アルコールと脂肪酸とのエステル等の離型剤(0.005〜2.0重量%)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェニルエーテル等の難燃剤(3〜15重量%)、着色剤、蛍光増白剤等を配合してもよい。
樹脂層(A)の厚みは、0.65mm〜2.96mmの範囲である。好ましくは0.8mm〜2.5mmの範囲である。
<樹脂層(B)>
樹脂層(B)は、熱可塑性樹脂(B)からなる。熱可塑性樹脂(B)は、ガラス転移点TgBが115℃以上であり、吸水率が0.7%以下である。ガラス転移点TgBは、好ましくは115〜150℃であり、より好ましくは117〜140℃であり、さらに好ましくは120〜130℃である。また、吸水率は好ましくは0.6%以下であり、より好ましくは0.5%以下である。TgBが115℃未満の場合または樹脂層(B)の吸水率が0.7%を超えると、温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下で、熱および吸湿により積層体に反りが発生し易い。
また、ガラス転移点TgAとガラス転移点TgBとの差(TgA−TgB)は30℃以下である。TgAとTgBの差が30℃を超えると温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下で、樹脂層(A)の熱可塑性樹脂と樹脂層(B)の熱可塑性樹脂との収縮率差が大きくなり、積層体に反りが発生し易い。ガラス転移点TgAとガラス転移点TgBとの差は好ましくは28℃以下であり、より好ましくは25℃以下である。
さらに、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との吸水率の差(熱可塑性樹脂(B)の吸水率−熱可塑性樹脂(A)の吸水率)は0.5%以下である。吸水率差が0.5%を超えると温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下で吸湿膨張により寸法変化が生じ、やはり反りが発生し易い。熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との吸水率の差は好ましくは0.4%以下であり、より好ましくは0.3%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下であり、特に好ましくは0.1%以下である。
樹脂層(B)の鉛筆硬度はJIS K5600−5−4に準拠して測定されたものである。樹脂層(B)の鉛筆硬度は、好ましくはF以上であり、より好ましくはH以上であり、さらに好ましくは2H以上である。
樹脂層(B)の厚みは40〜150μmであり、好ましくは50〜120μmであり、より好ましくは60〜100μmである。樹脂層(B)の厚みが薄すぎると十分な鉛筆硬度が得られず、150μmを超えると温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下での反り率を0.2%以下にすることが困難になる。
可塑性樹脂(B)、芳香族(メタ)アクリレート単位5〜80重量%およびメチル(メタ)アクリレート単位20〜95重量%を含有し、重量平均分子量が5,000〜30,000であるアクリル共重合体20〜60重量部と、ポリカーボネート樹脂40〜80重量部(但し、アクリル重合体とポリカーボネート樹脂との合計が100重量部)とのブレンド樹脂である。かかるブレンド樹脂は鉛筆硬度が高く、耐熱性も良好であり好ましい。
アクリル共重合体は、芳香族(メタ)アクリレート単位10〜60重量%およびメチル(メタ)アクリレート単位40〜90重量%を含有することが好ましく、芳香族(メタ)アクリレート単位20〜50重量%およびメチル(メタ)アクリレート単位50〜80重量%を含有することがより好ましい。また、アクリル共重合体の重量平均分子量は8,000〜28,000の範囲が好ましく、10,000〜25,000の範囲がより好ましい。
ブレンド樹脂は、アクリル共重合体25〜55重量部と、ポリカーボネート樹脂45〜75重量部との混合物が好ましく、アクリル共重合体30〜50重量部と、ポリカーボネート樹脂50〜70重量部との混合物がより好ましい。ポリマーブレンドは、任意の方法で実施することができるが、例えばタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、混練ロール、押出機などで混合する方法が適宜用いられる。
また熱可塑性樹脂(B)は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。積層体の最表層となる樹脂層(B)に紫外線吸収剤を含有することで、樹脂層(B)で紫外線が吸収されることにより、樹脂層(A)の光エネルギーによる分解劣化を抑制することができる。それにより、太陽光などの紫外線を有する光が当たる場所で使用されるような場合でも、積層体の長期安定性を向上することができる。紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂(B)100重量部に対して、0.5〜5.0重量部の範囲が好ましく、1.0〜4.0重量部の範囲がより好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンズオキサジン系、トリアジン系などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノ−ル等が挙げられる。
また熱可塑性樹脂(B)には、その他の添加剤を添加することもできる。例えば酸化防止剤は、公知の酸化防止剤が使用できる。酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂(B)100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の範囲が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイトが挙げられる。
<ハードコート層>
本発明の積層体は、樹脂(B)の上にハードコート層が積層されていても良い。
ハードコート層は、透明性を損なうことなく、十分な密着性を有するものであれば、材質、付与方法等において特に限定されるものでない。ハードコート層の形成方法として、熱、紫外線、電子線等によって硬化する硬化性塗料を塗布する方法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法等が挙げられる。製造上の観点から紫外線硬化性塗料を塗布する方法が好ましい。
紫外線硬化性塗料は、紫外線硬化性樹脂および光重合開始剤を含有する組成物であれば、特に限定されるものではない。紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、グリシジル化合物、脂環状エポキシ化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔(4−メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルフェニルサルファイド、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。またこの組成物に希釈溶剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
紫外線硬化性塗料を使用してハードコート層を形成する塗装手段としては、例えばマイクログラビアコート法、スピンコート法、キャスト転写法、噴霧コート法、フローコート法、ディッピング法、ロールコート法、バーコート法等の任意の方法を用いれば良い。塗料性状の観点から、マイクログラビアコート法、ロールコート法、バーコート法がより好ましい。また、両面にコートする際は両面共に同じ方法でコートしても良いし、別々の方法でコートしても良い。両面にほぼ同じ厚み(厚みの差が5μm以内)でハードコート層を形成することは、ハードコート層が積層された積層体の反り率の低減に有利である。
ハードコート層の厚みは1〜30μmの範囲が好ましく、3〜25μmの範囲がより好ましく、5〜20μmの範囲がさらに好ましい。ハードコート層の厚みが1μmより薄くなると十分な耐擦傷性が得られず、また30μmより厚くなると、応力によるクラックが発生し易くなり、ディスプレイカバーパネルやタッチパネル等の用途に適さない。
ハードコート層の鉛筆硬度は、好ましくは3H以上であり、より好ましくは4H以上であり、さらに好ましくは5H以上である。ハードコート層の鉛筆硬度はJIS K5600−5−4に準拠して測定されたものである。
<積層体>
本発明の積層体は、樹脂層(A)の少なくとも一方の面に樹脂層(B)が積層されている。
樹脂層(A)と樹脂層(B)の合計厚みは、0.8mm〜3.0mmである。樹脂層(A)と樹脂層(B)の合計厚みは、好ましくは0.9mm〜2.5mmであり、より好ましくは1.0〜2.0mmである。積層体の厚さが3.0mmより厚いと、ディスプレイカバーとして使用する場合、重量が重くなり、コスト的にも不利になるため好ましくない。0.8mm未満であると、ディスプレイカバーとしては剛性不足であり、また積層体として反り率を0.2%以下に抑えるのが困難になる。
本発明の積層体は、温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後の反り率が好ましくは0.2%以下であり、より好ましくは0.15%以下である。
また、本発明の積層体は、温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下に120時間放置した後の反り率が0.2%以下であり、好ましくは0.15%以下である。
本発明のハードコート層が積層された積層体は、温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後の反り率が好ましくは0.2%以下であり、より好ましくは0.15%以下である。また、本発明のハードコート層が積層された積層体は、温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下に120時間放置した後の反り率が0.2%以下であり、好ましくは0.15%以下である。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体は、(i)樹脂層(A)およびその少なくとも一方の面に積層された樹脂層(B)を含む積層体を溶融状態でダイから押出し、
(ii)押出された積層体を引取りロールにより引き取りながら、第1〜第3冷却ロールにより冷却する、
各工程により製造することができる。
(押出工程(i))
樹脂層(A)およびその少なくとも一方の面に積層された樹脂層(B)を含む積層体を溶融状態でダイから押出す工程である。この工程は、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)を押出機にて溶融させ、フィードブロック法またはマルチマニホールド法を用いて積層させる共押出成形法である。共押出成形法は、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)を溶融し、多層一体化させた樹脂をロールに密着させて成形を行う。具体的には、マルチマニホールドダイやフィードブロックダイから押出すことができる。
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)は混合しても透明性が維持されるため、積層シート成形時に発生する端部のカット部分を回収、粉砕し、樹脂層(A)に特定の割合、好ましくは回収前の熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して50重量部以下の割合で混合することにより、積層シートとしての特性を損うことなく、材料ロスを低減して押出すことができる。
(冷却工程(ii))
この工程は、押出された積層体を引取りロールにより引き取りながら、第1〜第3冷却ロールにより冷却する工程である。
第1〜第3の冷却ロールは、図1に示すように、回転中心軸が平行で、同一平面上にあり、かつ接近して配置されている。第1〜第3冷却ロールの間隔は、積層体の厚みに対応する。冷却は、(a)押出された積層体を、第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、(b)その後、第2冷却ロールに巻き掛け、(c)その後、第3冷却ロールに巻き掛けることにより行う。
(第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度)
本発明においては、第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度を0.996〜1.010倍に設定することにより、温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下に120時間放置した後の反り率が0.2%以下を達成することができる。通常、第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度は、樹脂の冷却による収縮のために、0.990〜0.995倍程度に設定される。本発明は、積層体を微延伸することにより、高温高湿環境下での反り率が低減されることを見出したことに基づく。第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度は、好ましくは0.997〜1.005倍、さらに好ましくは0.998〜1.000倍である。
第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度が、上記範囲の下限未満であるとシート進行方向(MD方向)の成形時の歪みが大きくなり、高温高湿環境下において歪み緩和による反り変動が発生し実用に供し難くなり好ましくない。また、第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度が上記範囲の上限を超えるとシートの外観に悪影響を及ぼすため好ましくない。例えばシートの厚みムラが大きくなり、また位相差が高くなり、光学特性に悪影響を及ぼす。
(第2ロール周速度に対する第3ロールの周速度)
通常、第2ロール周速度に対する第3ロールの周速度は同速である。本発明においては、第2ロール周速度に対する第3ロールの周速度を特定の範囲に設定することにより、より反り率を小さくすることができる。すなわち、第2ロール周速度に対する第3ロールの周速度は、好ましくは1.001〜1.030倍、より好ましくは1.002〜1.020倍、さらに好ましくは1.003〜1.010倍である。
第2ロール周速度に対する第3ロールの周速度が上記範囲内であるとシート進行方向(MD方向)の成形時の歪みが小さくなり、高温高湿環境下において歪み緩和による反り変動が発生し難い。また、第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度が上記範囲内であるとシートの外観が良好となる。
(ハードコート層の積層)
冷却して得られた積層体の樹脂層(B)の上にハードコート層を積層しても良い。ハードコート層およびその積層方法は前述の通りである。
<用途>
本発明の積層体は、ディスプレイカバーパネルまたはタッチパネル前面板として用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
参考例1〜3、実施例4〜5参考例6〜10、比較例1〜3
<特性の評価方法>
(ガラス転移点:Tg)
JIS K7121に準拠して、各層の熱可塑性樹脂を使用し、(株)島津製作所製 DSC−60Aにてガラス転移点を測定した。毎分50ml窒素ガスフロー環境とした試験槽内にて、熱可塑性樹脂10〜20mgを毎分20℃で200℃まで昇温して融解させて35℃まで冷却して試料を得て、再び毎分20℃で昇温したときのベースラインの“ずれ”の生じた中間点をガラス転移点とした。
(吸水率)
各層の熱可塑性樹脂の成形板(縦80mm、横10mm、厚さ4mm)を作成し、試験片として用い、試験片を温度85℃、湿度0%RHの恒温恒湿槽に24時間静置した後に取り出してさらに室温で10分間静置した後、天秤で重量を測定して、これを乾燥重量とした。次に、試験片を温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に120時間静置した後に取り出してさらに室温で10分間静置した後、天秤で重量を測定して、これを吸水重量とした。下記式にて吸水率を求めた。
吸水率[%]=(吸水重量[g]−乾燥重量[g])/乾燥重量[g]×100[%]
(鉛筆硬度)
積層体を、JIS K5600−5−4に準拠し、樹脂層(B)を積層させている面に対して750g加重で鉛筆硬度の測定を行い、表面に目視で傷がつかなかった鉛筆の硬度を評価結果とした。鉛筆は三菱鉛筆Uni(商品名)を使用した。
(常温常湿試験後の反り率)
積層体を、製造時のシート進行方向が長辺となるように縦50mm×横100mm、シート幅方向が長辺となるように縦50mm×横100mmの大きさにそれぞれ3枚ずつ切り出し、これら6枚の試験片を温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後、樹脂層(B)側が上になるように平置きし、四隅とその中間点の計8点の浮き量を測定した。測定した6枚の中で最大浮き量(最大反り量)を求め、次式にて計算した値を反り率(%)とした。
反り率(%)=100×最大反り量(mm)/100(mm)
なお、樹脂層(B)側が凹となる浮き量を正とした。
(湿熱試験後の反り率)
積層体を、製造時のシート進行方向が長辺となるように縦50mm×横100mm、シート幅方向が長辺となるように縦50mm×横100mmの大きさにそれぞれ3枚ずつ切り出し、これら6枚の試験片を温度85℃、湿度85%RH環境下に120時間放置し、次いで温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後、樹脂層(B)側が上になるように平置きし、四隅とその中間点の計8点の浮き量を測定した。測定した6枚の中で最大浮き量(最大反り量)を求め、次式にて計算した値を反り率(%)とした。
反り率(%)=100×最大反り量(mm)/100(mm)
なお、樹脂層(B)側が凹となる浮き量を正とした。
(湿熱試験後の剥離確認)
積層体から、縦50mm×横100mmのサンプルを切り出し、住友スリーエム(株)製両面テープ、品番Y4914を用いて、スマートホンの筐体に4辺で固定した。温度85℃、湿度85%RH環境下に120時間放置し、次いで温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後、前面板固定部分の状態を目視観察し、両面テープの剥離発生有無を確認した。○を剥離発生なし、×を剥離発生ありとして表1に示した。
<樹脂1〜5の製造>
樹脂層(B)を構成する樹脂1〜5は以下の方法で製造した。
(変性ポリカーボネート樹脂の製造例1:樹脂1)
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液3845部およびイオン交換水18182部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン3984部およびハイドロサルファイト8.37部を溶解した後、塩化メチレン10567部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン2000部を約60分かけて吹き込んだ。
ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液897部およびp−tert−ブチルフェノール58.28部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン5.39部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。
次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。その後、該パウダーにトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.0025重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.05重量%となるように添加し、均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬し、単位[1]からなる変性ポリカーボネート樹脂ペレット(粘度平均分子量25,000)を得た。これを樹脂1とした。
(変性ポリカーボネート樹脂の製造例2:樹脂2)
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液4485部およびイオン交換水22377部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン1992部(7.9モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1773部(7.8モル)、およびハイドロサルファイト7.53部を溶解した後、塩化メチレン13209部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン2000部を約60分かけて吹き込んだ。
ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液640部およびp−tert−ブチルフェノール97.90部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン5.39部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。
次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。その後、該パウダーにトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.0025重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.05重量%となるように添加し、均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬し、単位[1]、および[2]からなる変性ポリカーボネート樹脂ペレット(粘度平均分子量19,500)を得た。これを樹脂2とした。
(変性ポリカーボネート樹脂の製造例3:樹脂3)
製造例1と同様の操作で得られた樹脂1の乾燥パウダー50重量部と、ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量24,000)50重量部をドライブレンドし、その後、該パウダーにトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.0025重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.05重量%となるように添加し、均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬し、単位[1]、および[2]からなる変性ポリカーボネート樹脂ペレット(粘度平均分子量24,500)を得た。これを樹脂3とした。
(アクリル共重合体とポリカーボネート樹脂とのブレンド樹脂の製造例:樹脂4および樹脂5)
温度計、窒素導入管、還流冷却管、および攪拌装置を備えた加温可能な反応容器中に下記成分を仕込み、反応容器内を窒素で置換し、80℃に昇温した。脱イオン水200部、分散剤0.3部、硫酸ナトリウム0.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3部、フェニルメタクリレート33部、メチルメタクリレート66部、メチルアクリレート1部、n−オクチルメルカプタン2.5部を導入し、4時間攪拌を続け、得られたビーズ状の重合体を水洗、乾燥し、アクリル共重合体(重量平均分子量19,200)を得た。なお、分散剤として、カリウムメタクリレート70部、メチルメタクリレート30部を共重合した重合体、およびナトリウム2−スルホエチルメタクリレート65部、カリウムメタクリレート10部、メチルメタクリレート25部を共重合した重合体を質量比1:1で混合し、この混合した重合体の10%水溶液を用いた。
得られたアクリル共重合体とポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量22,200)を二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]に供給し、280℃で溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。アクリル共重合体とポリカーボネート樹脂との比率を50:50とした樹脂ペレットを樹脂4、30:70とした樹脂ペレットを樹脂5とした。
参考例1
第1、第2押出機1A、1B、ダイ2、および第1〜第3ロール4〜6、また一対の引取りロール7を図1に示すように配置し、2種2層分配のフィードブロックを樹脂層(A)が第2ロールに接触するように配置した。
樹脂層(A)を構成するポリカーボネート樹脂はスクリュー径40mmの単軸押出機(図1の1A)押出機で、また樹脂層(B)を構成する熱可塑性樹脂はスクリュー径30mmの単軸押出機(図1の1B)でそれぞれ溶融させ、フィードブロック法にて2層に積層させ、設定温度280℃のダイを介して押出した。第1ロールと第2ロールで圧延し、第3ロールにて冷却させながら引取った。
樹脂層(A)としてポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量23,300)を用いた。樹脂層(B)として樹脂1を用いて、積層体の総厚み1.0mm、樹脂層(B)の厚みが100μmとなるように積層体を製造した。
得られた積層体について、総厚み、樹脂層(B)の厚み、樹脂層(A)および樹脂層(B)のガラス転移温度(Tg)、樹脂層(A)および樹脂層(B)の吸水率(%)、鉛筆硬度、成形時の第2ロールに対する第3ロール周速度比並びに第2ロールに対する引取りロールの周速度比、反り率(%)および湿熱試験後の反り率(%)の結果を表1に示す。
参考例2
樹脂層(B)として樹脂2を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
参考例3
樹脂層(B)として樹脂3を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
実施例4
樹脂層(B)として樹脂4を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
実施例5
樹脂層(B)として樹脂5を用いた以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
参考例6
樹脂層(B)の厚みを60μmとした以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
参考例7
積層体の総厚みを2.0mmとした以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
参考例8
成形時の第2ロール対する第3ロールの周速度比を1.005倍とした以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
参考例9
成形時の第2ロール対する第3ロールの周速度比を1.003倍、第2ロール対する引取りロールの周速度比を0.996倍とした以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
参考例10
100重量部の樹脂1に対して、紫外線吸収剤として2,2'−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]フェノール]](ADEKA社製、商品名:アデカスタブLA−31)を1.0量部添加した以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
比較例1
樹脂層(B)として市販のアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製 商品名:アクリペットVH001)を用い、樹脂層(B)の厚みを60μmとした以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
比較例2
樹脂層(B)として市販のアクリル樹脂(Arkema社製、商品名:Altuglas HT−121)を用い、樹脂層(B)の厚みを60μmとした以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
比較例3
成形時の第2ロールに対する引取りロールの周速度比を0.992倍とした以外は参考例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、評価結果を表1に示す。
Figure 0005872058
Figure 0005872058
表1から明らかなように、実施例は、常温常湿試験後の反り率、湿熱試験後の反り率ともに0.2%以下であった。
れに対し、Tgが115℃未満であり、吸水率が0.7%を超える樹脂を樹脂層(B)に用いた比較例1、Tgが115℃以上であるが、吸水率が0.7%を超える樹脂を樹脂層(B)に用いた比較例2は常温常湿試験後の反り率、湿熱試験後の反り率ともに大きい結果となった。また、層構成は参考例1と同様だが、第2ロールに対する引取りロールの周速度比が低い比較例3は湿熱試験後の反り率が大きい結果となった。
参考例11〜15、実施例16〜17、参考例18〜22、比較例4〜6
<特性の評価方法>
(ガラス転移点:Tg)
JIS K7121に準拠して、各層の熱可塑性樹脂を使用し、(株)島津製作所製 DSC−60Aにてガラス転移点を測定した。毎分50ml窒素ガスフロー環境とした試験槽内にて、熱可塑性樹脂10〜20mgを毎分20℃で200℃まで昇温して融解させて35℃まで冷却して試料を得て、再び毎分20℃で昇温したときのベースラインの“ずれ“の生じた中間点をガラス転移点とした。
(吸水率)
各層の熱可塑性樹脂の成形板(縦80mm、横10mm、厚さ4mm)を作成し、試験片として用い、試験片を温度85℃、湿度0%RHの恒温恒湿槽に24時間静置した後に取り出してさらに室温で10分間静置した後、天秤で重量を測定して、これを乾燥重量とした。次に、試験片を温度85℃、湿度85%RHの恒温恒湿槽に120時間静置した後に取り出してさらに室温で10分間静置した後、天秤で重量を測定して、これを吸水重量とした。下記式にて吸水率を求めた。
吸水率[%]=(吸水重量[g]−乾燥重量[g])/乾燥重量[g]×100[%]
(鉛筆硬度)
ハードコート層を積層する前後の積層体を、JIS K5600−5−4に準拠し、樹脂層(B)および樹脂層(B)上のハードコート層の面に対して750g加重で鉛筆硬度の測定を行い、表面に目視で傷がつかなかった鉛筆の硬度を評価結果とした。鉛筆は三菱鉛筆Uni(商品名)を使用した。
(耐擦傷性)
ハードコート層を積層した積層体の樹脂層(B)上のハードコート層の面に対して、500gの加重をかけて、スチールウール(日本スチールウール株式会社製 ボンスター♯0000)を20往復擦った後の傷の有無を目視により確認した。傷の発生が無いものを〇、傷の発生しているものを×とした。なお、ハードコート層を積層する前の積層体の樹脂層(B)面について、上記耐擦傷性試験を実施すると「×」判定となる。
(常温常湿試験後の反り率)
ハードコート層を積層した積層体を、製造時のシート進行方向が長辺となるように縦50mm×横100mm、シート幅方向が長辺となるように縦50mm×横100mmの大きさにそれぞれ3枚ずつ切り出し、これら6枚の試験片を温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後、樹脂層(B)側が上になるように平置きし、四隅とその中間点の計8点の浮き量を測定した。測定した6枚の中で最大浮き量(最大反り量)を求め、次式にて計算した値を反り率(%)とした。
反り率(%)=100×最大反り量(mm)/100(mm)
なお、樹脂層(B)側が凹となる浮き量を正とした。
(湿熱試験後の反り率)
ハードコート層を積層した積層体を、製造時のシート進行方向が長辺となるように縦50mm×横100mm、シート幅方向が長辺となるように縦50mm×横100mmの大きさにそれぞれ3枚ずつ切り出し、これら6枚の試験片を温度85℃、湿度85%RH環境下に120時間放置し、次いで温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後、樹脂層(B)側が上になるように平置きし、四隅とその中間点の計8点の浮き量を測定した。測定した6枚の中で最大浮き量(最大反り量)を求め、次式にて計算した値を反り率(%)とした。
反り率(%)=100×最大反り量(mm)/100(mm)
なお、樹脂層(B)側が凹となる浮き量を正とした。
(湿熱試験後の剥離確認)
ハードコートを積層した積層体から、縦50mm×横100mmのサンプルを切り出し、住友スリーエム(株)製両面テープ、品番Y4914を用いて、スマートホンの筐体に4辺で固定した。温度85℃、湿度85%RH環境下に120時間放置し、次いで温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後、前面板固定部分の状態を目視観察し、両面テープの剥離発生有無を確認した。○を剥離発生なし、×を剥離発生ありとして表2に示した。
<樹脂1〜5>
樹脂層(B)を構成する樹脂は、参考例1〜3、実施例4〜5、参考例6〜10と同じ樹脂1〜5を用いた。
参考例11
第1、第2押出機1A、1B、ダイ2、および第1〜第3ロール4〜6、また一対の引取りロール7を図1に示すように配置し、2種2層分配のフィードブロックを樹脂層(A)が第2ロールに接触するように配置した。
樹脂層(A)を構成するポリカーボネート樹脂はスクリュー径40mmの単軸押出機(図1の1A)押出機で、また樹脂層(B)を構成する熱可塑性樹脂はスクリュー径30mmの単軸押出機(図1の1B)でそれぞれ溶融させ、フィードブロック法にて2層に積層させ、設定温度280℃のダイを介して押出し、第1ロールと第2ロールで圧延し、第3ロールにて冷却させながら、一対の引取りロールにより引取った。
樹脂層(A)としてポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量23,300)、樹脂層(B)として樹脂1を用いて、樹脂層(A)と樹脂層(B)の厚みを合計した厚みが1.0mm、樹脂層(B)の厚みが100μmとなるように積層体を製造した。
得られた積層体の両面に、金属製バーコーターを用いて、厚み10μmの膜厚になるように紫外線硬化性塗料(荒川化学工業(株)製ビームセット575CL)を塗布し、乾燥後、紫外線照射装置を用いて積算光量600mJ/cmとなるように硬化し、ハードコート層が積層された積層体を得た。
得られた積層体について、樹脂層(A)+樹脂層(B)の厚み、樹脂層(B)の厚み、樹脂層(A)および樹脂層(B)のガラス転移温度(Tg)、樹脂層(A)および樹脂層(B)の吸水率(%)、成形時の第2ロールに対する第3ロール周速度比並びに第2ロールに対する引取りロールの周速度比、鉛筆硬度の測定結果を表2に示す。またハードコート層が積層された積層体について、ハードコート層の厚み、鉛筆硬度、耐擦傷性、反り率(%)および湿熱試験後の反り率(%)の結果を表2に示す。
参考例12
ハードコート層の厚みを5μmとなるように紫外線硬化性塗料(荒川化学工業(株)製 ビームセット575CL)を塗布した以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
参考例13
ハードコート層の厚みを20μmとなるように紫外線硬化性塗料(荒川化学工業(株)製 ビームセット575CL)を塗布した以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
参考例14
樹脂層(B)として樹脂2を用いた以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
参考例15
樹脂層(B)として樹脂3を用いた以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
実施例16
樹脂層(B)として樹脂4を用いた以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
実施例17
樹脂層(B)として樹脂5を用いた以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
参考例18
樹脂層(B)の厚みを60μmとした以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
参考例19
樹脂層(A)および樹脂層(B)の厚みを合計した厚みを2.0mmとした以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
参考例20
成形時の第2ロール対する第3ロールの周速度比を1.005倍とした以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
参考例21
成形時の第2ロール対する第3ロールの周速度比を1.003倍、第2ロール対する引取りロールの周速度比を0.996倍とした以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
参考例22
樹脂1が100重量部に対して、紫外線吸収剤として2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]フェノール]](ADEKA社製、商品名:アデカスタブLA−31)を1.0量部添加した以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
比較例4
樹脂層(B)として市販のアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製 商品名:アクリペットVH001)を用い、樹脂層(B)の厚みを60μmとした以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
比較例5
樹脂層(B)として市販のアクリル樹脂(Arkema社製、商品名:Altuglas HT−121)を用い、樹脂層(B)の厚みを60μmとした以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
比較例6
成形時の第2ロールに対する引取りロールの周速度比を0.992倍とした以外は参考例11と同様にしてハードコート層が積層された積層体を得た。評価結果を表2に示す。
Figure 0005872058
Figure 0005872058
Figure 0005872058
Figure 0005872058
Figure 0005872058
表2から明らかなように、実施例1617は、常温常湿試験後の反り率、湿熱試験後の反り率ともに0.2%以下であった。
れに対し、Tgが115℃未満であり、吸水率が0.7%を超える樹脂を樹脂層(B)に用いた比較例4、Tgが115℃以上であるが、吸水率が0.7%を超える樹脂を樹脂層(B)に用いた比較例5は常温常湿試験後の反り率、湿熱試験後の反り率ともに大きい結果となった。また、層構成は参考例11と同様だが、成形時の第2ロールに対する引取りロールの周速度比が低い比較例6は湿熱試験後の反り率が大きい結果となった。
本発明の積層体は、OA・電子機器のディスプレイカバーパネルやタッチパネル前面板として有用である。
1A 第1押出機
1B 第2押出機
2 ダイ
3 溶融状態の積層体
4 第1ロール
5 第2ロール
6 第3ロール
7 引取りロー

Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂(A)からなる樹脂層(A)およびその少なくとも一方の面に積層された異なる他の熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂層(B)を含む積層体であって、
    (i)樹脂層(B)の厚みは40〜150μmで、樹脂層(A)と樹脂層(B)の合計厚みは0.8mm〜3.0mmであり、
    (ii)熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)のそれぞれのガラス転移点TgAおよびTgBが共に115℃以上で、且つTgAとTgBの差が30℃以下であり、
    (iii)熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の吸水率が共に0.7%以下で、且つ吸水率差が0.5%以下であり、
    (iv)該積層体を温度85℃、湿度85%RHの高温高湿環境下に120時間放置した後の反り率が0.2%以下であ
    (v)熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂であり、熱可塑性樹脂(B)が芳香族(メタ)アクリレート単位5〜80重量%およびメチル(メタ)アクリレート単位20〜95重量%を含有し、重量平均分子量が5,000〜30,000であるアクリル共重合体20〜60重量部と、ポリカーボネート樹脂40〜80重量部とのブレンド樹脂である、
    積層体。
  2. 樹脂層(B)は、熱可塑性樹脂(B)100重量部に対して、紫外線吸収剤を0.5〜5.0重量部含有する請求項1記載の積層体。
  3. 樹脂層(B)の鉛筆硬度がF以上である請求項1記載の積層体。
  4. 積層体は、温度23℃、湿度50%RH環境下に4時間放置した後の反り率が0.2%以下である請求項1記載の積層体。
  5. 樹脂層(B)の上にハードコート層が積層された請求項1記載の積層体。
  6. ハードコート層の鉛筆硬度が3H以上である請求項記載の積層体。
  7. ハードコート層が紫外線硬化塗料からなる請求項記載の積層体。
  8. (i)樹脂層(A)およびその少なくとも一方の面に積層された樹脂層(B)を含む積層体を溶融状態でダイから押出し、
    (ii)押出された積層体を引取りロールにより引き取りながら、第1〜第3冷却ロールにより冷却する、
    各工程を含み、
    ここで第1〜第3の冷却ロールは回転中心軸が平行で、同一平面上にあり、かつ接近して配置され、第2ロール周速度に対する引取りロールの周速度を0.996〜1.010倍にし、
    (a)ダイから押出された積層体を、第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、
    (b)第2冷却ロールに巻き掛け、
    (c)第3冷却ロールに巻き掛けることにより行う、
    請求項1記載の積層体の製造方法。
  9. 第2ロール周速度に対する第3ロールの周速度を1.001〜1.030倍にする請求項記載の製造方法。
  10. 冷却して得られた積層体の樹脂層(B)の上にハードコート層を積層する工程を含む請求項記載の製造方法。
  11. ディスプレイカバーパネルまたはタッチパネル前面板として使用される請求項1記載の積層体。
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