JP5871494B2 - 外用剤の製造方法及び外用剤 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの貼付剤も、皮膚粘着部位を局所的にみれば、通気性を欠き、また、粘着剤による化学的皮膚刺激があった。また、脱落に関しても、それを完全に防止できるものとは言い難かった。
(1)薬学的に有効な化学成分を、超臨界流体、亜臨界流体、又はその温度が100℃を超える液体状態の水のいずれかより選択される媒体に溶解させ、該化学成分を溶解した該媒体を担体に接触させることにより、該化学成分を該媒体と共に、担体に注入する注入工程を含むことを特徴とする外用剤の製造方法。
(2)超臨界流体又は亜臨界流体が、二酸化炭素、水、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、及びアセトンからなる群より選択される少なくとも1種である前記(1)に記載の製造方法。
(3)超臨界流体又は亜臨界流体が、実質的に二酸化炭素のみからなる流体である前記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)薬学的に有効な化学成分が、非ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、ステロイド剤、及び抗アレルギー剤からなる群より選択される少なくとも1種である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)非ステロイド系抗炎症薬が、インドメタシン又はその塩、フェルビナク、ジクロフェナク又はその塩、ロキソプロフェン又はその塩、ケトプロフェン又はその塩、フルルビプロフェン又はその塩、ピロキシカム、及びメロキシカムからなる群より選択される少なくとも1種であり;抗ヒスタミン薬が、ジフェンヒドラミン又はその塩、クロルフェニラミン又はその塩、プロメタジン又はその塩、ヒドロキシジン又はその塩、及びジメンヒドリナートからなる群より選択される少なくとも1種であり;局所麻酔薬が、リドカイン又はその塩、ジブカイン又はその塩、プロカイン又はその塩、及びメピバカイン又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種であり;ステロイド剤が、デキサメタゾン又はその塩、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、及びトリアムシノロンからなる群より選択される少なくとも1種であり;抗アレルギー剤が、ジフェンヒドラミン又はその塩、及びプロメタジン又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である前記(4)に記載の製造方法。
(6)担体が、通気性のある素材から形成されるものである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)担体が、繊維状物質から形成されるものである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)担体が、繊維状物質から形成される織布又は不織布である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)繊維状物質が、レーヨン、キュプラ、アセテート繊維、プロミックス、ナイロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、羊毛、獣毛、及び絹からなる群より選択される少なくとも1種の繊維である前記(7)又は(8)に記載の製造方法。
(10)担体が、円筒状、手袋状、又は靴下状である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)注入工程が、温度100℃以下、かつ圧力10〜25MPaの条件下で行われる前記(3)に記載の製造方法。
(12)前記(1)〜(11)のいずれかに記載の製造方法により製造される外用剤。
化学成分(薬物)が担体に注入されるとは、薬物が担体内部又は表面に支持、保持、又は担持されることを意味する。
本発明の方法は、本発明の効果を奏することになる限り、上記注入工程以外に、担体を所望の大きさ又は形状に切断又は成形する工程、担体を乾燥させる工程、担体を貼り合わせる工程等を含んでもよい。担体を所望の大きさ又は形状に切断又は成形する工程、及び担体を乾燥させる工程等は、薬物注入前に行ってもよく、注入後に行ってもよい。担体を乾燥させる工程は、好ましくは、薬物注入後に行なう。
本発明の特徴に鑑み、超臨界流体に準じる亜臨界流体や、その温度が100℃を超える液体状態の水を担体に薬物を注入するための媒体として用いても、超臨界流体を媒体とした場合と同様の効果を得ることができることは、容易に予測される。
本発明においては、担体に薬物を注入するための媒体として超臨界流体、亜臨界流体、またはその温度が100℃を超える液体状態の水のいずれかを用いることができるが、好ましくは、超臨界流体を用いる。
本発明における担体は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、フィルム状物質、繊維状物質、繊維状物質から形成される織布、不織布等が挙げられる。また、2種以上の担体を適宜組み合わせて使用してもよい。
その通気度は、使用時に、皮膚から蒸散される水分を充分に透過させることができれば、その程度は特に限定されないが、通常、JIS L-1096一般織物試験法の通気度測定(フラジール法)による測定値が、0.1cc/cm2/sec以上であり、好ましくは1cc/cm2/sec以上、より好ましくは、10cc/cm2/sec以上である。
また、担体が、繊維状であることは、薬物の放出面積の大きさの面からも有利である。
注入工程において薬物と共に担体に注入された媒体(超臨界流体、亜臨界流体又はその温度が100℃を超える液体状態の水)は、例えば、二酸化炭素等の常温で気体の流体を使用した場合には、該担体を常温下に置くことにより、担体から放出されて除去される。
(1)担体を適当な大きさに切断又は所望の形状に成形する。必要に応じて、該担体を真空デシケーターで乾燥させる。乾燥後の担体の質量(Wi)を測定する。
(2)超臨界流体抽出装置(例えば、ISCO社製 型番 SFE System 2200、JASCO社製、型番SCF−Sro等)のセル内に、担体及び薬物を加える。
(3)セル内を所定の圧力及び温度に所定時間保つことにより、注入処理を行う。
(4)注入処理後、担体を真空デシケーター(約10−5mmHg)中で約1〜3時間乾燥させる。乾燥後、薬物注入後の担体の質量(Wsc)を測定する。担体の表面は、洗浄せずに、保管する場合には常温、暗所にて保管することが好ましい。
さらに、上記製造方法において、例えば繊維状物質から形成される織布、不織布等を担体として用いると、得られる外用剤は高い通気性を有するものであるため皮膚に適用した際のムレ等が軽減されたものである。また、例えば通気性がない又は少ないフィルム等を担体として用いると、得られる外用剤は通気性がない又は少ないものであるため、皮膚に適用すると密閉療法の効果が得られるものである。
このような、上記製造方法により製造される外用剤も本発明に包含される。外用剤は、好ましくは、外用皮膚剤であり、中でも、経皮吸収製剤が好ましい。
また、本発明の外用剤に用いられる薬物がステロイド剤又は抗アレルギー剤の場合には、薬物の含有量が、製剤に対して約0.01〜10質量%であることが好ましく、約0.03〜5質量%であることがより好ましく、約0.05〜3質量%であることがさらに好ましい。
例えば、本発明の外用剤に用いられる薬物が局所麻酔薬の場合には、薬物の含有量が、製剤に対して約0.01〜10質量%であることが好ましく、約0.05〜5質量%であることがより好ましく、約0.1〜3質量%であることがさらに好ましい。
このような範囲であると、治療上必要な有効成分を患部又は全身に効果的に投与できるため好ましい。
また、例えば、通気性がない又は低い担体を用いて製造された外用剤を患部に固定すると、密閉療法としての効果が得られる。
次の手順にて、担体に薬物を注入した。
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)製不織布(バイリーン社製、商品名EW−9400)をヒートカッターで5cm×5cmに切断した後、切断した担体を真空デシケーターで乾燥させ、その質量(Wi)を電子天秤で測定した。
(2)超臨界流体抽出装置(ISCO社製、型番 SFE System 2200)のセル内に、担体及び薬物(インドメタシン(八代製薬社)、フェルビナク(Kolon Life Science Inc.)又はジクロフェナク(Henan Dongtai Pharm Co., Ltd.))を入れた。薬物質量は、およそ担体質量の10質量%とした。
(3)セルを装置に入れ、セル内の温度及び圧力を所定の温度及び圧力まで上げた後、二酸化炭素を送り込み、30分間注入処理を行った。
(4)注入処理後、担体を真空デシケーター中で2時間乾燥させ、薬物注入後の担体の質量(Wsc)を電子天秤で測定した。担体の表面は、洗浄せずに常温、暗所にて保管した。
ポリエステル不織布では、100℃以上の条件で不織布素材の脆化が認められたため、100℃未満、15〜25MPaの条件が好ましいことが分かった。
ポリエチレンテレフタレート(PET)製水流絡合不織布(日本バイリーン社製、商品名EW−9400)をヒートカッターで2cm×2cmに切断した後、切断した担体を真空デシケーターで乾燥させた。次いで、超臨界流体抽出装置(ISCO社製、型番 SFE System 2200)のセル内に、担体及びインドメタシンを入れた。薬物質量は、担体質量の10質量%とした。セルを装置に入れ、セル内の温度及び圧力を80℃及び20MPaまで上げた後、二酸化炭素を送り込み、30分間担体に注入処理を行った。注入処理後、担体を真空デシケーター中で2時間乾燥させた。注入後の注入変化率は約0.25%であり、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。なお、コントロールとして、上記処理を行なわないポリエチレンテレフタレート(PET)製水流絡合不織布を用いた。
薬物としてフェルビナク、担体としてポリエチレンテレフタレート製水流絡合不織布(日本バイリーン社製、商品名EW−9400)、超臨界流体として二酸化炭素を用い、80℃及び25MPaの条件で、30分間、実施例1と同様にして担体に薬物を注入した。注入後の注入変化率は約1.25%であり、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。
薬物としてジクロフェナク、担体としてポリエチレンテレフタレート製水流絡合不織布(日本バイリーン社製、商品名EW−9400)、超臨界流体として二酸化炭素を用い、80℃及び20MPaの条件で、30分間、実施例1と同様にして担体に薬物を注入した。注入後の注入変化率は約1.3%であり、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。
カラゲニン誘発足浮腫抑制試験
使用動物:ラット(Wistar系、雄性、搬入時6週齢、日本エスエルシー株式会社製)
検体:第I群 無処置(コントロール);第II群 市販パップ剤(商品名「バンテリンコーワパップS」、興和社製);第III群 実施例1で製造したインドメタシン注入不織布;第IV群 実施例2で製造したフェルビナク注入不織布;第V群 実施例3で製造したジクロフェナク注入不織布(いずれもn=8)
検体サイズ:2cm×2cm
起炎剤:1%カラゲニン/生理食塩水
貼付4時間後、検体を除去し、右後肢足容積を測定した。
浮腫率(%)=[(起炎剤投与4時間後の足容積−起炎剤投与前の足容積)/起炎剤投与前の足容積]×100
第I群(コントロール)に対する有意差は、dunnett法により求めた(*:P<0.05、**:P<0.01)。
試験結果を、表1及び図5〜7に示す。表1及び図5〜7の結果は、平均±標準誤差(SE)で表わされる。図5は、第III群(実施例1のインドメタシン注入不織布)と、第I群(無処置:コントロール)及び第II群(市販パップ剤)との比較である。図6は、IV群(実施例2のフェルビナク注入不織布)と、第I群(無処置:コントロール)及び第II群(市販パップ剤)との比較である。図7は、V群(実施例3のジクロフェナク注入不織布)と、第I群(無処置:コントロール)及び第II群(市販パップ剤)との比較である。
また、第II群(市販パップ剤)と第III群(実施例1)を比較した結果、有意な差は見られなかった(t検定及びTukey-kramer)。
また、第II群(市販パップ剤)と第IV群(実施例2)を比較した結果、有意な差は見られなかった(t検定及びTukey-kramer)。
また、第II群(市販パップ剤)と第V群(実施例3)を比較した結果、有意な差は見られなかった(t検定及びTukey-kramer)。
次の手順にて、担体(不織布)に薬物(薬剤)を注入し、薬物が不織布に注入された検体を作製した。薬物として、ジフェンヒドラミン塩酸塩(和光純薬工業社製)を使用した。
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)製水流絡合不織布(日本バイリーン社製、商品名EW−9400)をヒートカッターで5cm×30cmに切断した後、切断した担体を真空デシケーターで乾燥させ、その質量(Wi)を電子天秤で測定した。
(2)ガラス濾紙を超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセルのサイズに合わせて切断し、質量測定を行った(この質量を、Wiiとした)。使用した超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセル(カラム)容積は、50mLであった。
(3)蒸留水を溶媒に使用して、ジフェンヒドラミン塩酸塩を50g/Lに希釈した薬物溶液を調製した。
(4)(2)で切断したガラス濾紙に、担体であるPET製水流絡合不織布に対して薬物が5質量%(5%owf)になる量の(3)で調製した薬物溶液を滴下して担持させ、質量測定を行った(この質量をWiiiとした)。
(5)超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセル内に、担体(PET製水流絡合不織布)、(4)の薬物(ジフェンヒドラミン塩酸塩)を担持させたガラス濾紙を入れた。セルを装置に入れ、セル内の温度及び圧力を40℃及び10MPaまで上げた後、二酸化炭素(液化炭酸ガス、純度99.5%以上、宇野酸素社製)を送り込み、30分間担体に注入処理を行った。この注入処理後、担体、及び薬物(ジフェンヒドラミン塩酸塩)を担持させたガラス濾紙を真空デシケーター中で2時間乾燥させた。薬物注入後の担体の質量(Wsc)、及び薬物(ジフェンヒドラミン塩酸塩)を担持させたガラス濾紙の質量(Wiv)を電子天秤で測定した。担体の表面は、洗浄せずに常温、暗所にて保管した。
前記手順により、2回検体の調製を行ない、検体(a)及び検体(b)を得た。各検体について、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。
溶解率(濾紙に担持された試薬のうち超臨界二酸化炭素に溶解した割合)は、100×(Wiii−Wiv)/(Wiii−Wii)の計算式により求めた。
薬物の注入量は、Wsc−Wiの計算式により、増加質量を求めることにより確認した。質量変化率(%)(処理後のPET不織布の質量変化の割合)は、100×(Wsc−Wi)/Wiの計算式により求めた。
PET水流絡合不織布にジフェンヒドラミン塩酸塩を注入した結果を、表2に示す。
実施例4の(5)において、薬物としてプロメタジン塩酸塩(和光純薬工業社製)を用いて、60℃及び10MPaの条件で、30分間注入処理を行なった以外は、実施例4と同様にして担体に薬物(プロメタジン塩酸塩)を注入した。実施例4と同様に、2回検体の調製を行ない、検体(c)及び検体(d)を得た。各検体について、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。
PET水流絡合不織布にプロメタジン塩酸塩を注入した結果を、表3に示す。
(コンパウンド48/80誘発マウス掻痒モデルによる薬効薬理試験)
ジフェンヒドラミン塩酸塩投与群には、実施例4で作製したジフェンヒドラミン塩酸塩を含有する検体(a)を貼付した。プロメタジン塩酸塩投与群には、実施例5で作製したプロメタジン塩酸塩を含有する検体(c)を投与した。
コントロールとして、実施例4及び5の処理を行なわない(無処理)ポリエチレンテレフタレート(PET)製水流絡合不織布を用いた。
モデル: コンパウンド48/80誘発マウス掻痒モデル
使用動物: マウス(ICR系、雄性、搬入時5週齢、日本エスエルシー社より購入)
例数及び群構成:
第I群:対照群(無処理の不織布)(n=8)
第II群:ジフェンヒドラミン塩酸塩投与群(n=8)
第III群:プロメタジン塩酸塩投与群(n=7)
第IV群:陽性対照群(ムヒ(登録商標)パッチA、池田模範堂社製)(n=8)
検体サイズ: 約2.5cm×2.5cm
惹起物質: コンパウンド48/80
1匹当たりの各薬物の投与量を、表4に示す。
第I群(対照群)に対する各薬物投与群の有意差は、dunnett法(Dunnett の多重比較検定)により求めた(**:P<0.01)。
コンパウンド48/80誘発マウス掻痒モデルを用いた実験結果を、図8及び表5に示す。なお、データは平均値±標準誤差(SE)を示す。図8及び表5中、**:p<0.01(Dunnett の多重比較検定)。
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)製水流絡合不織布(日本バイリーン社製、商品名EW−9400)をヒートカッターで5cm×30cmに切断した後、切断した担体を真空デシケーターで乾燥させ、その質量(Wi)を電子天秤で測定した。
(2)ガラス濾紙を超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセル(カラム)のサイズに合わせて切断し、質量測定を行った(この質量を、Wiiとした)。使用した超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセル(カラム)容積は、50mLであった。
(3)エタノール(99.5%、和光純薬工業社製)に、デキサメタゾン(和光純薬工業社製)を12.5g/Lの濃度になるように溶解させた薬物溶液を調製した。
(4)(2)で切断したガラス濾紙に、担体であるPET製水流絡合不織布に対して薬物が5質量%(5%owf)になる量の(3)で調製した薬物溶液を滴下して担持させ、風乾させた。
(5)超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセル内に、担体(PET製水流絡合不織布)、(4)の薬物(デキサメタゾン)を担持させたガラス濾紙を入れた。セルを装置に入れ、セル内の温度及び圧力を60℃及び10MPaまで上げた後、二酸化炭素(液化炭酸ガス、純度99.5%以上、宇野酸素社製)を送り込み、30分間担体に注入処理を行った。この注入処理後、担体、及び薬物(デキサメタゾン)を担持させたガラス濾紙を真空デシケーター中で2時間乾燥させた。薬物注入後の担体の質量(Wsc)を電子天秤で測定した。担体の表面は、洗浄せずに常温、暗所にて保管した。
前記手順により、2回検体の調製を行ない、検体(a)及び検体(b)を得た。各検体について、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。
質量変化率(%)(処理後のPET不織布の質量変化の割合)=100×(Wsc−Wi)/Wi
PET水流絡合不織布にデキサメタゾンを注入した結果を、表6に示す。
実施例7の(5)において、薬物としてトリアムシノロンアセトニド(和光純薬工業社製)を用いて、40℃及び10MPaの条件で、30分間注入処理を行なった以外は、実施例4と同様にして担体に薬物(トリアムシノロンアセトニド)を注入した。実施例7と同様に、2回検体の調製を行ない、検体(c)及び検体(d)を得た。各検体について、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。
実施例7及び実施例8で製造した検体につき、次の試験方法にて、薬効の評価を行った。
カラゲニン誘発足浮腫抑制試験
使用動物:ラット(Wistar系、雄性、搬入時6週齢、日本エスエルシー株式会社製)
例数及び群構成
第I群 無処置(コントロール)群(n=8)
第II群 フルベアンコーワ(商品名「フルベアンコーワ」、興和社製)投与群(対照群)(n=8)
第III群 実施例7で製造した検体(b)(デキサメタゾン注入不織布)投与群(n=8)
第IV群 実施例8で製造した検体(d)(トリアムシノロンアセトニド注入不織布)投与群(n=8)
検体サイズ:2.5cm×2.5cm
起炎剤:1%カラゲニン/生理食塩水
起炎剤投与(検体貼付)4時間後、検体を除去し、右後肢足容積を測定した。
1匹当たりの投与量を、表8に示す。
第I群(無処置(コントロール)群)に対する各薬物投与群の有意差は、dunnett法(Dunnett の多重比較検定)により求めた(**:P<0.01)。
試験結果を、表9及び図9に示す。表9及び図9の結果は、平均±標準誤差(SE)で表わされる。**:p<0.01(Dunnett の多重比較検定)
実施例7〜8で製造した検体(製剤)を用いると、無処置の第一群(コントロール)と比較して、有意に浮腫が抑制された。
次の手順にて、担体(不織布)に薬物を注入し、薬物が不織布に注入された検体を作製した。薬物として、ジブカイン塩酸塩(和光純薬工業社製)を使用した。
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)製水流絡合不織布(日本バイリーン社製、商品名EW−9400)をヒートカッターで5cm×30cmに切断した後、切断した担体を真空デシケーターで乾燥させ、その質量(Wi)を電子天秤で測定した。
(2)ガラス濾紙を超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセルのサイズに合わせて切断し、質量測定を行った。使用した超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセル(カラム)容積は、50mLであった。
(3)蒸留水を溶媒に使用して、ジブカイン塩酸塩を50g/Lに希釈した薬物溶液を調製した。
(4)(2)で切断したガラス濾紙に、担体であるPET製水流絡合不織布に対して薬物が5質量%(5%owf)になる量の(3)で調製した薬物溶液を滴下して担持させ、質量測定を行った。
(5)超臨界流体抽出装置(JASCO社製、型番SCF−Sro)のセル内に、担体(PET製水流絡合不織布)、(4)の薬物(ジブカイン塩酸塩)を担持させたガラス濾紙を入れた。セルを装置に入れ、セル内の温度及び圧力を40℃及び15MPaまで上げた後、二酸化炭素(液化炭酸ガス、純度99.5%以上、宇野酸素社製)を送り込み、30分間担体に注入処理を行った。この注入処理後、薬物(ジブカイン塩酸塩)を注入した担体(PET製水流絡合不織布)を真空デシケーター中で2時間乾燥させた。乾燥後、薬物注入後の担体の質量を電子天秤で測定した(この質量を、Wiiとした)。担体の表面は、洗浄せずに常温、暗所にて保管した。
前記手順により、2回検体の調製を行ない、検体(a)及び検体(b)を得た。各検体について、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。
薬物の注入量は、Wii−Wiの計算式により、増加質量を求めることにより確認した。質量変化率(%)(処理後のPET不織布の質量変化の割合)は、100×(Wii−Wi)/Wiの計算式により求めた。
実施例10において、PET水流絡合不織布にジブカイン塩酸塩を注入した結果を、表10に示す。
実施例10において、ジブカイン塩酸塩の代わりにプロカイン塩酸塩(和光純薬工業社製)を用いたこと以外は、同様の操作を行い、担体に薬物(プロカイン塩酸塩)を注入した。実施例10と同様に、2回検体の調製を行ない、検体(c)及び検体(d)を得た。各検体について、担体の外観、特性に大きな変化は認められず、その通気性は極めて高いものであった。
実施例11において、PET水流絡合不織布にプロカイン塩酸塩を注入した結果を、表11に示す。
実施例10及び11で得られた前記(a)〜(d)の検体において、質量変化率が大きい各検体(ジブカイン塩酸塩は検体(b)、及びプロカイン塩酸塩は検体(c))を用いて、以下の方法によりホルマリン誘発マウス疼痛モデルによる薬効薬理試験を実施した。
モデル:ホルマリン誘発マウス疼痛モデル
使用動物:マウス(ICR系、雄性、搬入時4週齢、日本エスエルシー社より購入)、体重(16.9g〜20.6g)
例数及び群構成:
対照群(ポリエチレンテレフタレート(PET)製水流絡合不織布(日本バイリーン社製、商品名EW−9400))(n=6)
プロカイン塩酸塩投与群(検体(c)を所定のサイズに切断したものを貼付した群)(n=6)
ジブカイン塩酸塩投与群(検体(b)を所定のサイズに切断したものを貼付した群)(n=6)
陽性対照群(リドカイン(商品名:キシロカイン(登録商標)ゼリー2%、アストラゼネカ社製)を塗布した。)(n=6)、キシロカイン(登録商標)ゼリー2%の塗布量は0.1mL
検体サイズ:約2cm×3cm
惹起物質:ホルマリン
試験方法:Cowan1)らの方法を参考に行った。すなわち、試験開始前にアクリルケージ内で約60分間馴化したマウスの側腹部を電気バリカン及び電気シェーバーで除毛し、検体を貼付後、不織布粘着性包帯(メッシュポア(登録商標)テープ)にて保定した。検体貼付から60分後、検体を除去した。検体を貼付していた部位を清拭し、該検体貼付部位に2%ホルマリンを皮内投与(50μL/site)した。その直後からマウスを同ケージ内に戻して動画撮影を行った。
陽性対照群への薬物(リドカイン(商品名:キシロカイン(登録商標)ゼリー2%、アストラゼネカ社製))の投与は、以下のように行った。マウスの側腹部の除毛部に、シリンジ(テルモシリンジ(登録商標))を用いて上記薬物0.1mLを滴下し、約2cm×3cmのサイズに塗布後、無処理の不織布(PET製水流絡合不織布(日本バイリーン社製、商品名EW−9400))で覆い、これを不織布粘着性包帯(メッシュポア(登録商標)テープ)にて保定した。
1)Inan S, Dun NJ, Cowan A.,Eur J Pharmacol.616,141-146(2009)
・不織布1枚(5×30cm)あたりの薬物注入量(g)
薬物注入量(g) = 注入後質量(g) − 注入前質量(g)
・不織布の面積は150cm2であるため、
不織布1cm2あたりの薬物量(mg/cm2) = 薬物注入量(g) ÷ 150 × 1000
・1匹あたりの貼付面積は約6cm2であるため、
1匹あたりの投与量(mg) = 1cm2あたりの薬物量(mg/cm2) × 6
薬物注入量(g) = 1.55684 − 1.55279
= 0.00405
1cm2あたりの薬物量(mg/cm2) = 0.00405 ÷ 150 × 1000
= 0.027
1匹あたりの投与量(mg) = 0.027 × 6
= 0.162
結果を、図11に示す。図11に示される結果は、平均値である。図11中、「対照」は対照群であり、「プロカイン」はプロカイン塩酸塩投与群であり、「ジブカイン」はジブカイン塩酸塩投与群であり、「陽性対照」は陽性対照群である。
ジブカイン塩酸塩群及びプロカイン塩酸塩群の両検体群において、対照群と比較して疼痛反応時間の減少が認められた。
Claims (12)
- 薬学的に有効な化学成分を、超臨界流体、亜臨界流体、又はその温度が100℃を超える液体状態の水のいずれかより選択される媒体に溶解させ、該化学成分を溶解した該媒体を通気性のある素材に接触させることにより、該化学成分を該媒体と共に、前記通気性のある素材に注入する注入工程を含むことを特徴とする外用剤の製造方法。
- 超臨界流体又は亜臨界流体が、二酸化炭素、水、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、及びアセトンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
- 超臨界流体又は亜臨界流体が、二酸化炭素である請求項1又は2に記載の製造方法。
- 薬学的に有効な化学成分が、非ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、ステロイド剤、及び抗アレルギー剤からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 非ステロイド系抗炎症薬が、インドメタシン又はその塩、フェルビナク、ジクロフェナク又はその塩、ロキソプロフェン又はその塩、ケトプロフェン又はその塩、フルルビプロフェン又はその塩、ピロキシカム、及びメロキシカムからなる群より選択される少なくとも1種であり;抗ヒスタミン薬が、ジフェンヒドラミン又はその塩、クロルフェニラミン又はその塩、プロメタジン又はその塩、ヒドロキシジン又はその塩、及びジメンヒドリナートからなる群より選択される少なくとも1種であり;局所麻酔薬が、リドカイン又はその塩、ジブカイン又はその塩、プロカイン又はその塩、及びメピバカイン又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種であり;ステロイド剤が、デキサメタゾン又はその塩、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、及びトリアムシノロンからなる群より選択される少なくとも1種であり;抗アレルギー剤が、ジフェンヒドラミン又はその塩、及びプロメタジン又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である請求項4に記載の製造方法。
- 通気性のある素材が、繊維状物質から形成されるものである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 通気性のある素材が、繊維状物質から形成される織布又は不織布である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 繊維状物質が、レーヨン、キュプラ、アセテート繊維、プロミックス、ナイロン、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、羊毛、獣毛、及び絹からなる群より選択される少なくとも1種の繊維である請求項6又は7に記載の製造方法。
- 通気性のある素材が、円筒状、手袋状、又は靴下状である請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 注入工程が、温度100℃以下、かつ圧力10〜25MPaの条件下で行われる請求項3に記載の製造方法。
- 薬学的に有効な化学成分を、超臨界流体、亜臨界流体、又はその温度が100℃を超える液体状態の水のいずれかより選択される媒体に溶解させ、該化学成分を溶解した該媒体を通気性がない又は低い素材に接触させることにより、該化学成分を該媒体と共に、前記通気性がない又は低い素材に注入する注入工程を含むことを特徴とする外用剤の製造方法。
- 通気性がない又は低い素材が、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種のフィルムである、請求項11に記載の外用剤の製造方法。
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