古くから食パンや菓子パン等のパン作りは、温度管理が難しいイースト菌を必要とすること、捏ねを十分に行わなければでき映えの良いものが得られず業務用の製パン機に頼っていた。
例えば、パン作りの一連の工程は、水を始めとして小麦粉、塩、砂糖、スキムミルク、シヨートニングのミックス粉と、ドライイーストを水に触れないようにしてパンケース内に投入した後、それぞれの材料を十分に混合する捏ね工程と、捏ね上った生地を休めて25〜32度程度に加温して発酵させて膨らませる一次発酵工程と、生地を僅かの時間捏ねて生地中の余分なガス(気泡)を抜くガス抜き工程と、生地内に残ったガスをつぶさないようにして成形する生地丸め工程と、生地を1時間程度休ませて発酵させる二次発酵工程と、160〜180℃で焼く焼成工程とを有しており、これらの工程を順序よく進めなければならない。
そこで、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程をマイクロコンピュータのプログラムに基づいて自動的に実行する自動製パン機でき、一般家庭で手軽にパンを焼くことができる自動製パン機が世の中に普及してきている(例えば、特許文献1参照)。
図9は特許文献1に記載された自動製パン機のレーズン入り食パンの調理工程図である。図9に示すように、従来の自動製パン機はパン材料の捏ねから焼成までの種々の工程をマイクロコンピュータのプログラムに基づいて自動的に実行するようになっていて、一般家庭で手軽にパンを焼くことができる。
また、低コストで取り扱いが簡単な製パン機能付き炊飯器も考えられた(例えば、特許文献2参照)。
図10は特許文献2に記載された製パン機能付き炊飯器の炊飯時の状態を示す断面図である。
図10に示すように、製パン機能付き炊飯器によれば、容器1は加熱室2内に着脱自在に設けられ、容器1の開口部は前記内蓋3によって選択的に塞ぐことが可能となり、練り羽根4はモータと制御部とによって選択的に回転される。
そのため、内蓋3を付すことで容器1を密封して炊飯を行うことができ、内蓋3を取り外した状態で練り羽根4を回転させて製パンを行うことができる。従って、容器1を共通にして炊飯と製パンを行うことができるので、コスト的に有利である。
また、容器1を加熱室2から取り外して洗浄作業、洗米を入れる作業などを行うことができるとともに、容器1を加熱室2に入れるだけで係合部を介して練り羽根4とモータとの連結が行われるので、取り扱いが簡単である。
さらに、近年、食生活の欧米化、消費者の嗜好の変化等により米の消費量が低迷してきていることから、この低迷に歯止めをかけ、より米の消費量の増大を図る取り組みが推進されている。
その推進策として、米を主原料としたこれまでの加工食品、例えば餅、煎餅、団子等以外にも広げるべく、米を主原料にした製パン技術が開発され、米粉パンが市販されている。
この米粉パンは、小麦粉パンに比べて、含有水分量が多く、しっとりした重みと良好な感触が得られ、また餅のように喉に詰まる恐れが少なく、更に少量を食するだけで満腹感が得られることから、消費者間で人気を博しており、更にまた、小麦粉を混入しない米粉パンは小麦アレルギーを持つ消費者にとって待望された食材となってきている。
そこで、より簡易に米粉パンを作ることができるように、米粉を入手しなくても、自動製パン機で、家庭にある米をそのまま粉砕してパンにする装置が考えられた(例えば、特許文献3参照)。
図11は特許文献3に記載された従来の生地製造器の断面図、図12は加熱調理食品生地製造工程の全体フローチャートである。
図12に示すように、加熱調理食品生地製造方法は、所定量の穀物粒と所定量の液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程420と、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料を練りブレードで生地に練り上げる練り工程430からなる。
そして、穀物粒からパン用の生地を製造するときは、図11に示すように生地製造器11を次のように用いる。蓋12を外し、容器13の中に所定量の穀物粒と所定量の液体を入れた後、再び蓋12を嵌め込んで、粉砕前含浸工程410を実行する。
粉砕前含浸工程410の間、加熱手段14で容器を加熱し、液体(この場合は水)の温度を上げると含浸が進む。粉砕前含浸工程の最初で粉砕ブレード15を回転させ、その後も時々粉砕ブレード15を回転させて穀物粒の表面に傷をつけると、穀物粒の吸液が促され、含浸を早く完了させることができる。
粉砕工程420に入ったら粉砕ブレード15を高速回転させ、穀物粒を粉砕する。これにより、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料が形成される。練り工程430では粉砕ブレード15を低速回転させ、生地原料を捏ねて一つにつながった生地を練り上げる。
練り工程430の冒頭で蓋12を開け、所定量のグルテンと、必要に応じ所定量の調味材料を生地原料に投入する。蓋12を閉じ、粉砕ブレード15を低速回転させて、生地原料及びそれに投入されたグルテンや調味材料を混練する。
この過程で生地の温度が上昇するので、後に投入される発泡誘起材料がドライイーストである場合には、適当なタイミングで冷却手段16により容器13を冷却し、中の生地を冷やす。なお冷却の場合も加熱の場合も、容器13の温度を温度センサ17で監視し、正確な温度が得られるようにする。
発泡誘起材料を投入する時機になったら、蓋12を開けて生地に所定量の発泡誘起材料を投入する。蓋12を閉め、粉砕ブレード15を低速回転させて生地と発泡誘起材料を混
練し、生地を完成させる。
その後、生地を容器13から取り出して、あるいは生地を容器13に入れたままで、生地の発泡が進むのを待つ。所望の発泡を得られたら生地をパン焼き装置に入れ、パンを焼く。
このように、同一の容器13内で粉砕前含浸工程410から練り工程430まで進行させることにより、ある工程から他の工程に移行する際に内容物を別の容器に移し替える必要がなく、時間を短縮できる。また、穀物粒や生地原料の一部が前の工程で使用した容器の内面に残り、少しずつ目減りするという問題もなくなる。
従来の課題を解決するために、第1の発明の自動製パン機は、被調理材を収容する容器と、前記容器の周囲に配設し前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器内の前記被調理材を撹拌する撹拌手段と、前記被調理材の温度を直接的或いは間接的に検出する温度検出手段と、操作条件を設定する操作部と、前記操作部で設定された条件と、前記温度検出手段で検出された前記被調理材の温度に基づき、前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御し前記被調理材の混合から焼成までを自動的に行う制御手段とを備え、少なくとも前記被調理材の一部に炊いたご飯を用いてパンを作るご飯パン工程を有し、少なくとも、操作部に、前記ご飯パン工程を選択する工程選択手段と、前記被調理材に使用する炊いたご飯の量を設定するご飯量設定手段を配設し、前記ご飯量設定手段で設定された炊いたご飯の量に応じてパンの捏ねから焼成までの前記ご飯パン工程を行うものである。
そして、被調理材の少なくとも一部に炊いたご飯を用いてパンを作るご飯パン工程を有
するので、ご飯を被調理材としたパンにおいて、米を米粉に粉砕する必要がないため、製パンする際の時間の短縮とが図れると共に、静音化が図れる。また、米の粉砕による米粒のデンプンが損傷を生じて膨らみが悪くなる心配もなく、簡単にご飯を使ったおいしいパンを作ることができる。
特に、炊いたご飯とその他の被調理材に米粉などのグルテンを含まない被調理材を用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくい。
このため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
そして、炊いたご飯の量を設定するご飯量設定手段を有するので、使用するご飯量に応じたメニューが選択できるようになり、例えば、ご飯量と他の被調理材の比率を変えて、できあがりのパンの膨らみつまり体積を合わせるなどのバリエーションを増すことができる。
ここで、炊いたご飯は、例えば、炊飯器で炊飯してそのまま使用する場合や、食事して余った残りご飯を使用する場合、また、上述の残りご飯を冷凍したものを解凍して使用する場合など、いろいろな状態が考えられ、使いたいご飯のまとまりの分量が、その時々でばらばらと想定される。
特に、上述の残りご飯を使用する場合がもっとも想定され、この場合、残りご飯を所定分量に切り分けて使うということが、かなり手間を要し、正確に合わせ難い上に、使い切りたいという欲求がある。
そこで、被調理材に使用する炊いたご飯の量を設定するご飯量設定手段を有するので、使用者が使いたいご飯のまとまりの分量に応じて、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
つまり、ご飯を所定分量に切り分けて使うのではなく、切り分けたご飯量に合わせて製パンするので、所定分量に切り分ける手間も必要なく、残りご飯を使い切ることができ、夕食などで残した炊いたご飯で製パンすることができ、無駄なくご飯が活用できるとともに、ご飯あるいはパンとは食感の異なるご飯パンが得られる。
例えば、ご飯量あるいはご飯量の割合を増やすとパンの膨らみが少なくなり、密度の高いパンができ、ご飯量あるいはご飯量の割合を少なくすると、膨らみ易くできる傾向があるため、ご飯量によって残りの他の被調理材の量の割合を変えないと同じような膨らみを得ることはできない。
そのため、ご飯量設定手段でご飯の量を設定することで、ご飯量に応じてパン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことができる。
そして、ご飯パン工程を選択する工程選択手段を有するので、炊いたご飯を用いて作るパンと他の工程で作られるパン例えば小麦粉を主とした従来のパンが簡単に切り替えられ、使用者の好みにあったパンを手軽に製パンできる。
特に、炊いたご飯を用いて作るパンは、小麦粉を主とした従来のパンと共通するようなパンのメニュー例えば食パンやレーズンなどの具入りパンを作ることができるので、工程選択手段で炊いたご飯を用いて作るパンかあるいは小麦粉を主とした従来のパンかを選択してパンのメニューを選ぶことができ、使用者にとって判りやすく、操作性のよい機器を提供できる。
また、第2の発明の自動製パン機は、特に第1の発明の被調理材に使用する炊いたご飯の量と残りの他の前記被調理材の量の割合を変えて、できあがりのパンのご飯の含有割合を変化させるご飯割合選択手段を有する。
そして、調理材に使用する炊いたご飯の量と残りの他の被調理材の量の割合を変えて、できあがりのパンのご飯の含有割合を変化させるご飯割合選択手段を有するので、ご飯割合を変えて、ご飯量とできあがりのパンの膨らみつまり体積を変えることができ、できあがりのパンの見映えや食感を調整することができる。
つまり、ご飯量の割合を増やすとパンの膨らみが少なくなり、密度の高いパンができ、ご飯量の割合を少なくすると、膨らみ易くできる傾向があるため、同じご飯量でも、ご飯割合を変えることで、できあがりのパンの膨らみ等の見映えや膨らみによる密度変化で生じる食感を調整することができる。
また、第3の発明の自動製パン機は、特に第1または2の発明の操作部に表示部を配設するとともに、前記ご飯量設定手段で設定されたご飯の量に基づき、ご飯以外の使用する前記被調理材の量を前記表示部に表示する。
そして、被調理材に使用する炊いたご飯は残りご飯などで様々な分量であり、それをご飯量設定手段で設定することで、調理材に使用する炊いたご飯の量と残りの他の被調理材の量の割合を変えて、ご飯のまとまりの分量に応じて、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
そのため、調理材に使用する炊いたご飯の量に合わせて、残りの他の被調理材の量を、個別に調整する必要があり、使用者が残りの他の被調理材の量を表や計算等によって、調べなくてはならず、非常に手間である上に間違いやすい。
そこで、ご飯量設定手段で設定されたご飯の量に基づき、ご飯以外の使用する被調理材の量を表示部に表示するので、使用者がご飯以外の使用する被調理材を間違えないように手順よく準備することができ、使い勝手が向上するとともに、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
また、第4の発明の自動製パン機は、特に第1〜3のいずれかの発明の操作部は、前記被調理材に使用する炊きたてや冷凍保存したご飯などの炊いたご飯の状態を選択するご飯状態選択手段を有する。
そして、炊いたご飯は水分量が多く、ご飯を準備したものを使おうとすると、保管の状態、例えばラップをして冷蔵した場合や、冷凍したものを解凍した場合、室温で放置した場合など、さらには、炊飯した条件、例えば、炊飯器の性能ばらつき、早炊きなどの炊飯設定条件などでは、ご飯に含まれる水分量が変化して、製パンしたときに水分量のばらつきで、うまく膨らまなかったり、ベタッとしたものになったりする心配もある。
ここで、被調理材に使用する炊きたてや冷凍保存したご飯などの炊いたご飯の状態を選
択するご飯状態選択手段を有するので、被調理材に使用する炊いたご飯に応じて、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の要部断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の制御ブロック図、図3は本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の操作部の表示例を示す図である。
図4は小麦粉を主とした従来のパンの工程図、図5は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いて作るパンの工程図である。
図6は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いて作るパンの工程のフローチャート(フローチャートA)、図7は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いて作るパンの工程のフローチャート(フローチャートB)、図8は本発明の第1の実施の形態におけるご飯を用いて作るパンの工程のフローチャート(フローチャートC)である。
図1、図2に示すように、本実施の形態における自動製パン機は、機器本体21内部に設けた加熱室22(焼成室)と、加熱室22内に着脱自在に収納され被調理材を収容する容器23(焼成ケース)が配設してある。この容器23内には被調理材を攪拌する撹拌手段である練り羽根24が設けられ、製パン中または炊飯時において練り羽根24により被調理材を攪拌する。
また、機器本体21の上部には開口部を覆う開閉自在な外蓋25が設けられ、加熱室22内の下方の容器23の外周に位置して外周部より容器23を加熱する加熱手段26が設けられる。
そして、容器23の温度を検知して被調理材の温度を間接的に検出する温度検出手段27が容器23に当接して設けられ、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、機器本体21上部に配設した操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、制御部29によって前記加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し前記被調理材の炊飯あるいは混合から焼成までを自動的に行う。
なお、機器本体21の上部の外蓋25の内部には、イースト菌を自動投入するイースト菌自動投入器30と、小麦粉などの粉を投入する粉自動投入器31と、具材を投入する具材自動投入器32が配設される。
さらに、機器本体21の適所に上部の外蓋25内を冷却してイースト菌を冷却する冷却ファン33と冷却ファン33の空気を取り入れる吸気口34および排気口35が設けられ、イースト菌を冷却して常温に保つ。さらに、粉自動投入器31には、粉が固まって落ちにくいので、粉自動投入器31に接して振動を与えて粉を落としやすいようにバイブレーター36が設けられる。
また、図3に示すように、操作部28には、小麦粉を主とした従来の小麦粉パン工程と、炊いたご飯を用いて作るご飯パン工程を選択する工程選択手段37と表示部38が設けられ、表示部38に工程毎の設定内容を表示し、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどのそれぞれの工程に共通のメニューと、上記工程の単独メニューを表示してメニュ
ー選択手段39で選べる。
さらに、操作部28には、ご飯パン工程のときに、被調理材で使用する炊いたご飯量を設定するご飯量設定手段40と、できあがりのパンにおけるご飯の含有割合を変化させるご飯割合選択手段41と、被調理材に使用する炊きたてや冷凍保存したご飯などの炊いたご飯の状態を選択するご飯状態選択手段が設けられる。
表示部38は、ご飯量設定手段40で設定されたご飯の量とご飯割合選択手段41で選択された含有割合に基づき、ご飯以外の使用する前記被調理材の量を表示する。
また、操作部28で設定条件に基づき運転を開始させるスタートボタン43が配設される。
なお、制御部29は、マイクロコンピュータによって実現され制御手段として機能する。
以上のように構成された自動製パン機において、それぞれの工程のパンの作成について説明する。
まず、小麦粉パン工程について、図4に示すように、はじめに操作部28で小麦粉パン工程を選択して(ステップ101)、表示部38に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいは小麦粉を主とした従来のパンの個別のメニューを表示して(ステップ102)、メニュー選択手段39で選択する(ステップ103)。
選択された内容に基づき表示部38に必要な具材の量を表示して(ステップ104)、使用者が確認して小麦粉や、イースト菌などの具材をこの機器にセットし(ステップ105)、準備が完了したら、スタートボタン43を押して、この機器の製パンを開始させる(ステップ106)。
この機器は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、小麦粉を主とした従来のパンを作る(ステップ107)。ここでは、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げのシーケンスについては詳細な説明は省略する。
ご飯パン工程について説明すると、図5に示すように、はじめに操作部28でご飯パン工程を選択して(ステップ201)、ご飯量設定手段40で使用するご飯量を設定する(ステップ202)とともに、ご飯割合選択手段41でできあがりのパンのご飯の含有割合を選択し(ステップ203)、ご飯状態選択手段42で使用するご飯の状態を選択する(ステップ204)。
表示部38に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいはご飯パンの個別のメニューを表示して(ステップ205)、メニュー選択手段39で選択(ステップ206)する。
選択された内容に基づき表示部38に必要な具材の量を表示(ステップ207)して、使用者が確認して容器23にご飯やその他の被調理材を投入するとともに、イースト菌自動投入器30にイースト菌を、粉自動投入器31にグルテン、小麦粉等の粉品を、そして、具材自動投入器32に具材を所定量セットし(ステップ208)、準備が完了したら、スタートボタン43を押して、この機器の製パンを開始させる(ステップ209)。
この機器は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、炊いたご飯を用いたパンを作る(ステップ210)。
ここで、炊飯、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げのシーケンスについては詳細な説明は省略するが、代表例の簡単な3つのフローチャートA、B、Cについて説明する。
まず、フローチャートAにおいて、図6に示すように、ステップ211でご飯を容器に投入して、ステップ212で練り羽根24で練り、ステップ213で粉自動投入器31によって小麦粉等の粉品を投入、ステップ214で練りを行い炊いたご飯と小麦粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ212からステップ214の間で、炊いたご飯をイースト菌の最も活動的する温度になるように温度調節する。
このとき、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度が高いときにはイースト菌を常温に保つために設けた冷却ファン33あるいは他の冷却手段で、容器23を冷却してご飯を冷却するようにし、温度が低いときには、加熱手段26で加熱して、最適な温度になるように温度調節する。
ステップ215で、炊いたご飯と小麦粉等の粉品の混合品をねかし、このときに、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入する。つぎに、ステップ216で、さらに第3練りを行い、このときに、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入する。そして、ステップ217で焼き上げ、ステップ218で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
フローチャートBにおいて、図7に示すように、ステップ221でご飯を容器に投入して、ステップ222で粉自動投入器31によって小麦粉等の粉品を投入、ステップ223で練りを行い炊いたご飯と小麦粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ221からステップ222の間で、炊いたご飯をイースト菌の最も活動的する温度になるように温度調節する。
このとき、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度が高いときにはイースト菌を常温に保つために設けた冷却ファン33あるいは他の冷却手段で、容器23を冷却してご飯を冷却するようにし、温度が低いときには、加熱手段で加熱して、最適な温度になるように温度調節する。
ステップ224で、炊いたご飯と小麦粉等の粉品の混合品をねかし、このときに、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入する。ステップ225で、さらに練り、このときに、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入する。そして、ステップ226で焼き上げ、ステップ227で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
最後にフローチャートCにおいて、図8に示すように、ステップ231でご飯を容器に投入して、ステップ232で水飴などのパンの膨らみを形成するための添加剤を投入(添加剤の詳細については省略する)、ステップ233で練りを行うとともに、ステップ232からステップ233の間で、炊いたご飯をイースト菌の最も活動的する温度になるように温度調節する。
このとき、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度が高いときにはイースト
菌を常温に保つために設けた冷却ファン33あるいは他の冷却手段で、容器23を冷却してご飯を冷却するようにし、温度が低いときには、加熱手段で加熱して、最適な温度になるように温度調節する。
ステップ234で、炊いたご飯の練ったものをねかし、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入する。ステップ235で、さらに練り、このときに、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入する。そして、ステップ236で焼き上げ、ステップ237で焼き上がったら完成で、容器23から取り出して完了する。
上述のフローチャートAでは、練りの回数が多いため、練った炊飯ご飯の粒が細かくなり、パンしたときの米の粒子が残りにくい利点がある。フローチャートBでは、練りの回数が少ないため、パン作成の時間の短縮が図れ、フローチャートCでは、パンの膨らみを形成するための添加剤を除くと、ほぼご飯100%のご飯パンが作成できる。
ご飯パン工程で作成したものパンは、添加する小麦粉やグルテン等の添加する割合にもよるが、実験によれば、ご飯と例えば小麦粉の割合が50%程度まであれば、小麦粉を主とした従来のパンの工程で作成したものとほぼ同等の膨らみが得られ、もちもちとした食感で、よりおいしく感じられた。
また、被調理材に小麦粉やグルテンを用いずに、炊いたご飯とその他の被調理材に米粉などのグルテンを含まない被調理材を用いてご飯パンを作るとグルテンフリーのパンが得られ、小麦アレルギーの人でも食べられる。
ただし、グルテンを含まない工程でパンを作ると、グルテンを含まない上新粉、餅粉等でパンを試作したところ、膨らみが少なく食感も通常の小麦を使用したパンとは大きく異なり新しい食感となる。
そして、被調理材の少なくとも一部に炊いたご飯を用いてパンを作るご飯パン工程を有するので、ご飯を被調理材としたパンにおいて、米を米粉に粉砕する必要がないため、製パンする際の時間の短縮とが図れると共に、静音化が図れる。また、米の粉砕による米粒のデンプンが損傷を生じて膨らみが悪くなる心配もなく、簡単にご飯を使ったおいしいパンを作ることができる。
特に、炊いたご飯とその他の被調理材に米粉などのグルテンを含まない被調理材を用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくい。
このため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
そして、炊いたご飯の量を設定するご飯量設定手段40を有するので、使用するご飯量に応じたメニューが選択できるようになり、例えば、ご飯量と他の被調理材の比率を変えて、できあがりのパンの膨らみつまり体積を合わせるなどのバリエーションを増すことができる。
ここで、炊いたご飯は、例えば、炊飯器で炊飯してそのまま使用する場合や、食事して余った残りご飯を使用する場合、また、上述の残りご飯を冷凍したものを解凍して使用する場合など、いろいろな状態が考えられ、使いたいご飯のまとまりの分量が、その時々で
ばらばらと想定される。
特に、上述の残りご飯を使用する場合がもっとも想定され、この場合、残りご飯を所定分量に切り分けて使うということが、かなり手間を要し、正確に合わせ難い上に、使い切りたいという欲求がある。
そこで、被調理材に使用する炊いたご飯の量を設定するご飯量設定手段40を有するので、使用者が使いたいご飯のまとまりの分量に応じて、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
つまり、ご飯を所定分量に切り分けて使うのではなく、切り分けたご飯量に合わせて製パンするので、所定分量に切り分ける手間も必要なく、残りご飯を使い切ることができ、夕食などで残した炊いたご飯で製パンすることができ、無駄なくご飯が活用できるとともに、ご飯あるいはパンとは食感の異なるご飯パンが得られる。
また、ご飯量あるいはご飯量の割合を増やすとパンの膨らみが少なくなり、密度の高いパンができ、ご飯量あるいはご飯量の割合を少なくすると、膨らみ易くできる傾向があるため、ご飯量によって残りの他の被調理材の量の割合を変えないと同じような膨らみを得ることはできない。
そのため、ご飯量設定手段40でご飯の量を設定することで、ご飯量に応じてパン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことができる。
そして、ご飯パン工程を選択する工程選択手段37を有するので、炊いたご飯を用いて作るパンと他の工程で作られるパン例えば小麦粉を主とした従来のパンが簡単に切り替えられ、使用者の好みにあったパンを手軽に製パンできる。
特に、炊いたご飯を用いて作るパンは、小麦粉を主とした従来のパンと共通するようなパンのメニュー例えば食パンやレーズンなどの具入りパンを作ることができるので、工程選択手段37で炊いたご飯を用いて作るパンかあるいは小麦粉を主とした従来のパンかを選択してパンのメニューを選ぶことができ、使用者にとって判りやすく、操作性のよい機器を提供できる。
そして、調理材に使用する炊いたご飯の量と残りの他の被調理材の量の割合を変えて、できあがりのパンのご飯の含有割合を変化させるご飯割合選択手段41を有するので、ご飯割合を変えて、ご飯量とできあがりのパンの膨らみつまり体積を変えることができ、できあがりのパンの見映えや食感を調整することができる。
つまり、ご飯量の割合を増やすとパンの膨らみが少なくなり、密度の高いパンができ、ご飯量の割合を少なくすると、膨らみ易くできる傾向があるため、同じご飯量でも、ご飯割合を変えることで、できあがりのパンの膨らみ等の見映えや膨らみによる密度変化で生じる食感を調整することができる。
そして、被調理材に使用する炊いたご飯は残りご飯などで様々な分量であり、それをご飯量設定手段40で設定するとともに、ご飯割合選択手段41で調理材に使用する炊いたご飯の量と残りの他の被調理材の量の割合を変えて、ご飯のまとまりの分量に応じて、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
そのため、調理材に使用する炊いたご飯の量に合わせて、残りの他の被調理材の量を、個別に調整する必要があり、使用者が残りの他の被調理材の量を表や計算等によって、調べなくてはならず、非常に手間である上に、間違いやすい。
そこで、ご飯量設定手段40とご飯割合選択手段41で設定されたご飯の量に基づき、ご飯以外の使用する被調理材の量を表示部38に表示するので、使用者がご飯以外の使用する被調理材を間違えないように手順よく準備することができ、使い勝手が向上するとともに、できあがりが安定した炊いたご飯からの製パンを行うことができる。
そして、炊いたご飯は水分量が多く、ご飯を準備したものを使おうとすると、保管の状態、例えばラップをして冷蔵した場合や、冷凍したものを解凍した場合、室温で放置した場合など、さらには、炊飯した条件、例えば、炊飯器の性能ばらつき、早炊きなどの炊飯設定条件などでは、ご飯に含まれる水分量が変化して、製パンしたときに水分量のばらつきで、うまく膨らまなかったり、ベタッとしたものになったりする心配もある。
ここで、被調理材に使用する炊きたてや冷凍保存したご飯などの炊いたご飯の状態を選択するご飯状態選択手段42を有するので、被調理材に使用する炊いたご飯に応じて、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン機で一貫して行うことで、炊いたご飯を用いてできあがりの安定した製パンを行うことができる。
なお、本実施の形態においては、冷却手段に送風機を用いた例で説明したが冷却手段はペルチェ素子など他の冷却手段を用いるようにしてもよく、よりこの機器に対応した冷却手段で構成すればよい。
また、操作部に、被調理材に用いるご飯の種別を選択する選択手段を配設してもよい。
これによれば、米の種別、例えば、タイ米などを用いて炊飯してできたご飯の水分量は約55%で、日本米を用いて炊飯してできたご飯の水分量(約60%)より少なく、その分、製パンするときの被調理材の調合を変えた方がよく、米の種別を選択できるようにすることで、より細やかに製パン時の条件を合わせることができるようになり、できあがりが安定した炊いたご飯からの製パンを行うことができる。