JP5868908B2 - 試料容器 - Google Patents

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Description

本発明は、熱脱着クロマトグラフィー又は熱分解クロマトグラフィーに用いられる試料容器に関する。
ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂の可塑剤として、フタル酸エステルを使用することが知られている。ところが、前記フタル酸エステルは、近年、人体に有害であることが疑われ、その使用が規制されている。例えば、ASTM規格(非特許文献1参照)では、各種フタル酸エステルの内、ジ−n−ブチルフタレート(DBP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)、ジ−n−オクチルフタレート(DNOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)について、ポリ塩化ビニル樹脂中に含まれる量を0.1%(1000ppm)以下に規制している。
また、前記ASTM規格では、試料としてのPVC中に含まれる前記6種のフタル酸エステルの定量のために、標準添加法を用いる分析方法を規定している。
前記標準添加法とは、分析対象成分を含む試料溶液に対し、濃度既知の標準物質溶液を所定量ずつ添加して複数の検体を調製して、各検体についてガスクロマトグラフィーにおけるピーク面積等の物性を求め、該物性と該標準物質の濃度との関係から検量線を作成する方法である。前記標準添加法では、前記試料溶液を検体として前記物性を求め、前記検量線と比較することにより、共存物質の影響を受ける系においても、前記試料溶液中の前記分析対象成分の濃度を正確に定量することができる。
前記ASTM規格に規定された分析方法では、まず、試料としてのPVCを、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒に溶解して試料溶液を調製する。次に、分析対象成分となるフタル酸エステルの標準物質を、塩化メチレン、n−ヘキサン等の溶媒に溶解して濃度既知の標準物質溶液を調製し、前記試料溶液に対し該標準物質溶液を所定量ずつ添加して複数の検体を調製する。
次に、前記各検体について熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析(TD−GC/MS)を行うことにより前記標準物質のピーク面積を求め、該ピーク面積と該標準物質の濃度との関係から検量線を作成する。前記TD−GC/MSは、前記検体を加熱炉に導入して加熱することにより該検体中の成分を熱脱着させ、熱脱着された成分をガスクロマトグラフ装置に導入することにより成分毎に分離した後、質量分析装置により各成分の検出を行う分析方法である。
そして、前記試料溶液を検体として前記TD−GC/MSを行うことにより、前記試料中の前記分析対象成分としてのフタル酸エステルのピーク面積を求め、前記検量線と比較することにより、該分析対象成分の定量を行う。
前記TD−GC/MSの際には、前記各検体を例えば不活性化ステンレス製の試料容器に収容し、溶媒を蒸発させた後、試料容器導入装置を用い順次自動的に前記加熱炉に導入して分析を行い、分析終了後には自動的に排出することが行われている。前記試料容器導入装置を用いることにより、各検体の分析を自動的に行うことができ、個別に分析する場合に比較して時間の短縮と省力化とが可能になる。
ASTM D7823−13
ところで、前記試料容器導入装置を用いるときには、前記各検体は前記試料容器導入装置にセットされた状態で待機しており、前記加熱炉に導入される順番が遅い検体ほど大気に曝露される時間が長くなる。従って、前記検体に含まれる前記分析対象成分の分子量が小さい場合には該分析対象成分が気化して分析できないことがある。
そこで、分子量の小さな分析対象成分を分析する場合には、前記標準物質としての該分析対象成分を前記溶媒に溶解して前記標準物質溶液を調製したのち、所定量の該標準物質溶液を検体としてマイクロシリンジにより直接ガスクロマトグラフ装置に導入することが行われている。そして、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を行うことにより前記標準物質のピーク面積を求め、該ピーク面積と該標準物質の濃度との関係から検量線を作成する。
しかしながら、前記試料としてのPVCは、前述のようにTHF等の溶媒に溶解して試料溶液を調製し、該試料溶液を検体として前記不活性化ステンレス製の試料容器に収容し、分子量の差により溶媒を蒸発させた後、前記TD−GC/MSを行う。この結果、前記試料と前記標準物質とでは分析条件が異なることとなり、前記TD−GC/MSにより得られた該試料のピーク面積を該標準物質の前記GC/MSにより得られた検量線と比較しても正確な結果が得られないことがあるという不都合がある。
本発明は、かかる不都合を解消して、分析対象成分の分子量が小さい場合にも該分析対象成分を気化させることなく、熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析を行うことができる試料容器を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明は、熱脱着クロマトグラフィー又は熱分解クロマトグラフィーに用いられる試料容器において、分析対象成分及び該分析対象成分の溶媒と相溶性を備える樹脂からなる樹脂被覆層を内面に備え、該分析対象成分は、フタル酸エステルであり、該分析対象成分の溶媒は、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジエチルエーテルからなる群から選択される1種の化合物であり、該樹脂被覆層を形成する樹脂は、ポリスチレン、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、塩化ビニル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体からなる群から選択される1種の樹脂であることを特徴とする。
本発明の試料容器は内面に樹脂被覆層を備えている。前記樹脂被覆層は分析対象成分及びその溶媒と相溶性を備える樹脂により形成されているので、該溶媒に溶解した溶液と接触することにより該溶液を吸収する。次いで、前記樹脂と前記溶媒との分子量の差により該溶媒を蒸発させることにより、前記樹脂被覆層は前記分析対象成分の全量を前記樹脂中に保持することができる。
この結果、本発明の試料容器によれば、熱脱着クロマトグラフィーにおいては、前記樹脂被覆層から前記分析対象成分の気体を熱脱着させ、該気体をクロマトグラフ装置に導入することができる。また、熱分解クロマトグラフィーにおいては、前記樹脂被覆層の熱分解により前記分析対象成分の気体を生成させ、該気体をクロマトグラフ装置に導入することができる。
従って、本発明の試料容器によれば、前記分析対象成分が分子量の小さな化合物である場合にも該分析対象成分を気化させることなく、熱脱着クロマトグラフィー又は熱分解クロマトグラフィーに供することができる。
本発明の試料容器において、前記分析対象成分はフタル酸エステルであり、その溶媒は、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジエチルエーテルからなる群から選択される1種の化合物を用いることができ、前記樹脂被覆層を形成する樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、塩化ビニル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体からなる群から選択される1種の樹脂を用いることができる。前記溶媒と前記樹脂とは、適宜選択して組み合わせることができる。
本発明の試料容器は、前記分析対象成分の分子量が小さく気化しやすい場合に適しており、例えば分子量500以下のフタル酸エステル、さらには分子量230以下のフタル酸エステルに好適に用いることができる。前記分子量230以下のフタル酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート(分子量194)又はジエチルフタレート(分子量222)を挙げることができる。
また、本発明の試料容器は、不活性化ステンレス製の有底筒状体からなるカップの内面に前記樹脂被覆層を備えるものであってもよく、石英管の内面に前記樹脂被覆層を備えるものであってもよい。
(a)は本発明の試料容器における第1の実施形態の構成を示す模式的断面図、(b)は第2の実施形態の構成を示す模式的断面図。 熱分析装置の構成を示すシステム構成図。 (a)は樹脂被覆層を備えないカップを用いたフタル酸エステルの熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析における室温での放置時間とピーク面積との関係を示すグラフ、(b)は樹脂被覆層を備える試料容器を用いたフタル酸エステルの熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析における室温での放置時間とピーク面積との関係を示すグラフ。 樹脂被覆層を備えないカップを用いたフタル酸エステルの熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析におけるクロマトグラム。 (a)はポリスチレン被膜からなる樹脂被覆層を備える試料容器を用いたフタル酸エステルの熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析におけるクロマトグラム、(b)はポリメチルメタクリレート被膜からなる樹脂被覆層を備える試料容器を用いたフタル酸エステルの熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析におけるクロマトグラム、(c)はポリ塩化ビニル被膜からなる樹脂被覆層を備える試料容器を用いたフタル酸エステルの熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析におけるクロマトグラム。 樹脂被覆層を備える試料容器と樹脂被覆層を備えないカップとを用いたフタル酸エステルの熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析における樹脂被覆層の膜厚とピーク面積との関係を示すグラフ。 膜厚の異なる樹脂被覆層を備える試料容器と樹脂被覆層を備えないカップとを用いたフタル酸エステルの熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析におけるクロマトグラム。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
図1(a)に示すように、第1の実施形態の試料容器1aは、熱脱着クロマトグラフィー(TD−GC/MS)又は熱分解クロマトグラフィー(Py−GC/MS)に用いられるものであり、有底筒状体からなるカップ2の内面に樹脂被覆層3を備えている。カップ2は不活性化ステンレス製であり、例えば、外径4mm、肉厚0.1mm、高さ5mm又は8mmである。試料容器1aは、カップ2の高さが5mmの場合には40μLの容量を備え、カップ2の高さが8mmの場合には80μLの容量を備えている。
試料容器1aは、80μLの容量を備える場合には、40μLの容量を備える場合に比較して表面積が大きいので、TD−GC/MS又はPy−GC/MSの際に熱吸収量が大になり、熱脱着又は熱分解の温度を低くすることができる。一方、試料容器1aは、40μLの容量を備える場合には、80μLの容量を備える場合に比較して、TD−GC/MS又はPy−GC/MSの際に熱吸収量が小になるので、より高い分析精度を得ることができる。
また、図1(b)に示すように、第2の実施形態の試料容器1bは、TD−GC/MS又はPy−GC/MSに用いられるものであり、石英管4の内面に樹脂被覆層3を備えている。石英管4は、例えば、外径2〜6mm、肉厚0.1〜0.5mm、長さ30〜80mmであり、内面の中央部に樹脂被覆層3を備えている。石英管4は耐熱性に優れているので、瞬間熱分解を行う場合に適している。
試料容器1a,1bにおいて、樹脂被覆層3は、分析対象成分及びその溶媒と相溶性を備える樹脂から形成されていればよく、特に限定されない。例えば、分析対象成分がフタル酸エステルであり、その溶媒が塩化メチレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジエチルエーテルからなる群から選択される1種の化合物であるときには、樹脂被覆層3を形成する樹脂は、ポリスチレン、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、塩化ビニル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体からなる群から選択される1種の樹脂とすることができる。尚、前記溶媒と前記樹脂とは、適宜選択して組み合わせることができる。
樹脂被覆層3は、前記樹脂を溶媒に溶解した溶液をカップ2又は石英管4の内面に塗布した後、室温(10〜35℃)で放置し、さらにドライヤーで室温風を当てることにより形成することができる。樹脂被覆層3は、前記分析対象成分及びその溶媒と相溶性を備える樹脂により形成されているので、該分析対象成分を該溶媒に溶解した溶液と接触することにより該溶液を吸収する。このとき、前記溶媒は前記樹脂に比較すると分子量が小さい。そこで、前記樹脂と前記溶媒との前記分子量の差により該溶媒を蒸発させることにより、樹脂被覆層3は前記分析対象成分の全量を該樹脂中に保持することができる。
試料容器1a,1bにおいて、樹脂被覆層3を形成する領域は、前記樹脂中に保持する前記分析対象成分の量により適宜設定することができる。試料容器1aにおいて、樹脂被覆層3を形成する領域は、試料容器1aが40μLの容量を備える場合には例えば底面から1/2の高さまで、80μLの容量を備える場合には例えば底面から1/4の高さまでとすることができる。また、試料容器1bにおいて、樹脂被覆層3を形成する領域は、例えば石英管4の中央部の長さ5〜20mmの範囲とすることができる。
また、樹脂被覆層3の膜厚は、樹脂の種類にもよるが、例えば、0.2〜3μmの範囲の厚さとすることができる。
試料容器1a,1bは、例えば、図2に示す高分子試料分析装置11によりTD−GC/MS又はPy−GC/MSに供することができる。高分子試料分析装置11は、加熱炉12と、キャリヤガスを加熱炉12に導入するキャリヤガス導入装置13と、ガスクロマトグラフ装置14と、質量分析装置15とを備えている。
加熱炉12は、ハウジング16内に配設された石英管17と、石英管17の外周側に配設された加熱用ヒーター18とを備えている。石英管17は、上端部から試料容器1a又は試料容器1b(図示せず)が挿入可能であって、下端部はガス導入部19に接続されている。
ガスクロマトグラフ装置14は、温度調整可能なオーブン20と、オーブン20内に配設されたキャピラリーカラム等の分離カラム21とを備えている。分離カラム21の上流側は、ガス導入部19に接続されている。
ガス導入部19は、上端部に石英管17の下端部が接続され、下端部に分離カラム21が接続される一方、上下両端部の間にスプリットベント管22を備えている。スプリットベント管22は、開閉弁23を開弁して大気開放することにより、石英管17から導入される気相成分の一部を排出して、分離カラム21に導入する前記気相成分の量を調整することができる。質量分析装置15は、例えば、四重極質量分析計24を備えている。
試料容器1a,1bは、石英管17内に挿入され加熱用ヒーター18により加熱されると、樹脂被覆層3から前記分析対象成分が気相成分として熱脱着され、又は樹脂被覆層3の熱分解により該分析対象成分の気相成分が生成する。前記気相成分は、石英管17からガス導入部19に導入され、ガス導入部19で分析に必要な量に調整された後、分離カラム21に導入される。そして、前記気相成分は、分離カラム21でそれぞれの成分に分離され、分離された各成分が四重極質量分析計24で検出される。
尚、高分子試料分析装置11は試料容器1aを用いるときには、複数の試料容器1aを順次自動的に加熱炉2に導入し、排出する試料容器導入装置(図示せず)を備えていてもよい。前記試料容器導入装置は加熱炉12の上部に装着され、試料容器1aを自由落下により石英管17内に導入する。また、前記試料容器導入装置は、石英管17内の下部に高圧ガスを導入し、試料容器1aの底面に圧力をかけることにより、石英管17から試料容器1aを排出する。
次に、分析対象成分として、ジメチルフタレート(DMP、分子量194)、ジエチルフタレート(DEP、分子量222)、ジ−n−プロピルフタレート(DRPR、分子量250)、ジイソブチルフタレート(DIBP、分子量278)、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP、分子量390)、ジ(n−オクチル)フタレート(DNOP、分子量390)の6種のフタル酸エステルを用意した。前記フタル酸エステルはいずれも分子量が500以下であり、DMP及びDEPは分子量が230以下である。
そして、前記6種のフタル酸エステルを100ngずつ、それぞれ溶媒としての10μLの塩化メチレンに溶解し、検体としての6種のフタル酸エステル溶液を調製した。前記フタル酸エステル溶液の濃度は、いずれも10ppmとなっている。
次に、前記各フタル酸エステル溶液を、樹脂被覆層3を全く備えていないカップ2にそれぞれ供給し、室温で溶媒を除去して検体を調製した。そして、調製直後(放置時間0分)と、室温(25℃)の大気中に50分、100分、150分、200分放置した後とに、高分子試料分析装置11により熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析を行った。前記200分の放置は、前記試料容器導入装置を用いるときに石英管17に導入される順番が遅い検体が大気に曝露される時間に相当する。結果を図3(a)に示す。
次に、前記各フタル酸エステル溶液を、樹脂被覆層3として厚さ1μmのポリスチレン被膜を備える試料容器1aにそれぞれ供給し、室温で溶媒を除去して検体を調製した。そして、供給直後(放置時間0分)と、室温(25℃)の大気中に50分、100分、150分、200分放置した後とに、高分子試料分析装置11により熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析を行った。結果を図3(b)に示す。
図3(a)から、樹脂被覆層3を全く備えていないカップ2を用いたときには、分子量が比較的小さいDIBP、DRPR、DEP、DMPは、放置時間が長くなるほどピーク面積が減少しており、DEP、DMPで特にその傾向が著しいことがわかる。前記ピーク面積の減少は、前記各フタル酸エステルが気化して失われていることを示すものと考えられる。
一方、図3(b)から、樹脂被覆層3を備える試料容器1aを用いたときには、分子量が比較的小さいDIBP、DRPR、DEP、DMPであっても、放置時間に関わらずピーク面積が略一定であることがわかる。これは、試料容器1aでは前記各フタル酸エステルが樹脂被覆層3に保持されており、気化により失われていないためと考えられる。
次に、分析対象成分として、前記6種のフタル酸エステルに加え、ジ−n−ブチルフタレート(DBP、分子量278)、ジ−n−ペンチルフタレート(DPP、分子量306)、ジ−n−ヘキシルフタレート(DHP、分子量334)、ブチルベンジルフタレート(BBP、分子量296)、ジイソペンチルフタレート(DIHP、分子量250)、ジシクロヘキシルフタレート(DCHP、分子量246)、ジイソオクチルフタレート(DIOP、分子量390)、ジイソノニルフタレート(DINP、分子量418)、ジイソデシルフタレート(DIDP、分子量446)の15種のフタル酸エステルを用意した。前記フタル酸エステルはいずれも分子量が500以下であり、DMP及びDEPは分子量が230以下である。
そして、前記15種のフタル酸エステルを100ngずつ、溶媒としての10μLの塩化メチレンに溶解し、検体としての前記15種のフタル酸エステルを含む混合フタル酸エステル溶液を調製した。前記混合フタル酸エステル溶液において、各フタル酸エステルの濃度は、いずれも10ppmとなっている。
次に、前記混合フタル酸エステル溶液を、樹脂被覆層3を全く備えていないカップ2に供給し、室温で溶媒を除去して検体を調製した。そして、室温(25℃)の大気中に200分放置した後、高分子試料分析装置11により熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析を行った。結果を図4に示す。
図4から、DEP及びDMPのピークは、他のフタル酸エステルのピークに比較して、非常に小さくなっていることがわかる。従って、図4からも、樹脂被覆層3を全く備えていないカップ2を用いたときには、DEP及びDMPが気化して失われているものと考えられる。
次に、前記混合フタル酸エステル溶液を、樹脂被覆層3を備える試料容器1aに供給し、室温で溶媒を除去して検体を調製した。そして、室温(25℃)の大気中に200分放置した後、高分子試料分析装置11により熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析を行った。前記200分の放置は、前述のように、前記試料容器導入装置を用いるときに石英管17に導入される順番が遅い検体が大気に曝露される時間に相当する。
試料容器1aとしては、樹脂被覆層3がポリスチレン被膜からなるものと、ポリメチルメタクリレート被膜からなるものと、ポリ塩化ビニル被膜からなるものとの3種を用意した。樹脂被覆層3の厚さはいずれも2.5μmとした。樹脂被覆層3がポリスチレン被膜からなるときの結果を図5(a)に、樹脂被覆層3がポリメチルメタクリレート被膜からなるときの結果を図5(b)に、樹脂被覆層3がポリ塩化ビニル被膜からなるときの結果を図5(c)にそれぞれ示す。
尚、図5(b)、図5(c)におけるピークは、特に説明の無い限り、図5(a)における同一保持時間のピークに対応している。
図5(a)〜(c)から、樹脂被覆層3を備える試料容器1aを用いたときには、分子量が比較的小さいDEP及びDMPについても、他のフタル酸エステルと同程度のピークが観察されることがわかる。従って、図5(a)〜(c)からも、試料容器1aでは前記各フタル酸エステルが樹脂被覆層3に保持されており、気化により失われていないものと考えられる。
尚、図5(a)及び図5(b)では、各フタル酸エステルのピーク以外の妨害ピークが観察される。前記妨害ピークは、樹脂被覆層3を形成する樹脂に由来するものであるが、各フタル酸エステルのピークとは分離されているので、実用上問題となることはない。
次に、分析対象成分として、DMP、DEP、DRPR、DIBP、DEHP、DNOPの6種のフタル酸エステルを用意した。前記6種のフタル酸エステルを100ngずつ、それぞれ溶媒としての10μLの塩化メチレンに溶解し、検体としての6種のフタル酸エステル溶液を調製した。前記フタル酸エステル溶液の濃度は、いずれも10ppmとなっている。
また、ポリスチレン被膜からなる樹脂被覆層3の膜厚を、それぞれ0.25μm、0.75μm、1.5μm、3.0μmとした4種の試料容器1aと、樹脂被覆層3を全く備えていないカップ2とを用意した。
次に、前記各フタル酸エステル溶液を、前記各試料容器1a及びカップ2にそれぞれ供給し、室温で溶媒を除去して検体を調製した。そして、室温(25℃)の大気中に200分放置した後、高分子試料分析装置11により熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析を行った。結果を図6に示す。尚、カップ2は、図6において、樹脂被覆層3の膜厚が0μmの場合として示す。
図6から、ポリスチレン被膜からなる樹脂被覆層3は、前記分析対象成分としてのフタル酸エステルを保持するために、1〜3μmの厚さを備えていることが好ましいことがわかる。
次に、分析対象成分として、DMP、DEP、DRPR、DIBP、DBP、DPP、DHP、BBP、DIHP、DCHP、DEHP、DIOP、DNOP、DINP、DIDPの15種のフタル酸エステルを用意した。前記15種のフタル酸エステルを100ngずつ、溶媒としての10μLの塩化メチレンに溶解し、検体としての前記15種のフタル酸エステルを含む混合フタル酸エステル溶液を調製した。前記混合フタル酸エステル溶液において、各フタル酸エステルの濃度は、いずれも10ppmとなっている。
また、ポリスチレン被膜からなる樹脂被覆層3の膜厚を、それぞれ0.25μm、0.75μm、1.5μm、3.0μmとした4種の試料容器1aと、樹脂被覆層3を全く備えていないカップ2とを用意した。
次に、前記混合フタル酸エステル溶液を、前記各試料容器1a及びカップ2にそれぞれ供給し、室温で溶媒を除去して検体を調製した。そして、室温(25℃)の大気中に50分放置した後、高分子試料分析装置11により熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析を行った。結果を図7に示す。尚、カップ2は、図7において、樹脂被覆層3の膜厚が0μmの場合として示す。
また、図7における樹脂被覆層3の膜厚がそれぞれ0.25μm、0.75μm、1.5μm、3.0μmの場合のピークは、特に説明の無い限り、樹脂被覆層3の膜厚が0μmの場合における同一保持時間のピークに対応している。
図7から、ポリスチレン被膜からなる樹脂被覆層3の膜厚が0.75μm以上の場合には、各フタル酸エステルのピーク以外の妨害ピークが観察されることがわかる。前記妨害ピークは、樹脂被覆層3を形成するポリスチレン樹脂に由来するスチレンダイマー及びスチレントリマーである。しかし、前記スチレンダイマー及びスチレントリマーの妨害ピークは、各フタル酸エステルのピークとは分離されており、実用上問題となることはない。
1a,1b…試料容器、 2…カップ、 3…樹脂被覆層、 4…石英管、 12…加熱炉、 14…ガスクロマトグラフ装置、 15…質量分析装置。

Claims (5)

  1. 熱脱着クロマトグラフィー又は熱分解クロマトグラフィーに用いられる試料容器において、
    分析対象成分及び該分析対象成分の溶媒と相溶性を備える樹脂からなる樹脂被覆層を内面に備え、
    該分析対象成分は、フタル酸エステルであり、
    該分析対象成分の溶媒は、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジエチルエーテルからなる群から選択される1種の化合物であり、
    該樹脂被覆層を形成する樹脂は、ポリスチレン、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、塩化ビニル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体からなる群から選択される1種の樹脂であることを特徴とする試料容器。
  2. 請求項1記載の試料容器において、前記分析対象成分は、分子量500以下のフタル酸エステルからなることを特徴とする試料容器。
  3. 請求項2記載の試料容器において、前記分析対象成分は、分子量230以下のフタル酸エステルからなることを特徴とする試料容器。
  4. 請求項3記載の試料容器において、前記分析対象成分はジメチルフタレート又はジエチルフタレートであることを特徴とする試料容器。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の試料容器において、前記試料容器は不活性化ステンレス製の有底筒状体からなるカップの内面に前記樹脂被覆層を備えるか、又は石英管の内面に前記樹脂被覆層を備えることを特徴とする試料容器。
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