JP5866144B2 - ストレッチラメ糸とその製造方法およびこのストレッチラメ糸を用いた布帛 - Google Patents
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Description
また上記の従来技術3では、ストレッチラメ糸の外表面にラメ糸と他の繊維とが配されるため、その外表面に他の繊維が配される分、この従来技術3の場合もラメ糸による高被覆性を得ることができない問題がある。
即ち、本発明1はストレッチラメ糸の製造方法に関し、芯糸(2)に弾性糸を配し、この芯糸(2)の周囲にラメ糸(7)を含む鞘糸(3)を巻きつける、ストレッチラメ糸の製造方法であって、上記の鞘糸(3)を、下ヨリ糸(4)と、ラメ糸(7)を含む上ヨリ糸(5)とで構成し、上記の芯糸(2)を2倍以下のドラフト率で引き伸ばした状態で、上記の下ヨリ糸(4)を所定方向に巻きつけたのち、これとは逆方向に上記の上ヨリ糸(5)を巻きつけてダブルカバリング構造を形成し、上記の上ヨリ糸(5)の巻きつけの際のカバリング条件を、下記式(F1)で表される上撚り係数K1が30000以上となるように設定することを特徴とする。
K1=(SS÷D+SC)1/2×R1 …(F1)
ここでSSは芯糸の繊度(dtex)であり、SCは鞘糸全体の繊度(dtex)であり、Dはカバリング時の芯糸のドラフト率(倍)であり、R1は上ヨリ糸の撚り数(回/m)である。
C=W/(π×d×cosφ)×100 …(F3)
ここでWは上ヨリ糸の糸幅(mm)であり、dはストレッチラメ糸の直径(mm)であり、φはストレッチラメ糸の長さ方向に対する上ヨリ糸の撚り角度(度)であり、πは円周率である。
なおこの上ヨリ糸は、ラメ糸のみで構成してあると被覆率を高くできて好ましいが、ラメ糸が95%以上となるように、他の繊維等を含むものであってもよい。
K2=(SS÷D+SC)1/2×R2 …(F2)
ここで、R2は下ヨリ糸の撚り数(回/m)である。
ここで、上記の上ヨリ糸の糸幅とは、ストレッチラメ糸の外表面に巻き付けられた時の糸幅をいい、断面が円形の場合はその直径をいうが、例えば箔糸のように薄い所定厚さとこれよりも大きい幅寸法とを備える場合はその幅寸法をいう。
(2)芯糸を所定のドラフト率で引き伸ばした状態で下ヨリ糸と上ヨリ糸とを巻き付けることから、例えば伸長率が110〜200%程度の、所望の伸縮性を十分に備えたストレッチラメ糸を得ることができる。
(3)上記のドラフト率は2倍以下であるので、ストレッチラメ糸が過度に伸長することが抑制され、しかも上撚り係数が大きいことから、ストレッチラメ糸の伸縮に起因して上ヨリ糸の被覆が乱れたりヨリだまりが発生したりすることを抑制でき、高い被覆率での被覆を良好に維持することができる。
(4)本発明3にあっては、外表面が高い被覆率でラメ糸により覆われた、所望の伸縮性を備えるストレッチラメ糸を用いるので、伸縮性を備えたものでありながら、意匠性の優れた布帛にすることができる。
図1に示すように、このストレッチラメ糸(1)は、芯糸(2)の周囲に鞘糸(3)が巻き付けてあり、この鞘糸(3)は下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)とからなる。即ちこのストレッチラメ糸(1)は、下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)とを順に巻きつけたダブルカバリング構造を有している。この下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)の撚り方向は、例えば下ヨリ糸(4)をS撚りとし、上ヨリ糸(5)をZ撚りとするなど、互いに逆の撚り方向にしてある。
また上記の上ヨリ糸(5)はラメ糸(7)で構成してある。このラメ糸(7)は金属光沢を備えており、例えば、ポリエステルやポリアミドなどの合成樹脂製フィルムに、銀やアルミニウムなどの金属を蒸着させ、これを所定幅に裁断して形成してある。
C=W/(π×d×cosφ)×100 …(F3)
ここでWは上ヨリ糸(5)の糸幅(mm)であり、dはストレッチラメ糸(1)の直径(mm)であり、φはストレッチラメ糸(1)の長さ方向に対する上ヨリ糸(5)の撚り角度(度)であり、πは円周率である。
また、上記の下ヨリ糸(4)は、通常はラメ糸以外の繊維(6)が用いられ、例えばポリエチレンテレフタレート繊維とポリアミド繊維との何れか、または両方を用いてもよく、他の合成繊維や天然繊維であってもよい。これらの繊維の繊度および態様は特定のものに限定されず、用途や目的に応じて適宜選択するのが好ましい。例えば、フィラメント糸と紡績糸のいずれであってもよく、その態様は、ウーリー加工糸、もしくは先染糸等のいずれであってもよく、また、これらの複合糸であってもよい。ストレッチラメ糸(1)の伸縮時に、上ヨリ糸(5)が糸長手方向にずれたりヨリだまりを発生したりすることを抑制する観点から、なかでもウーリー加工糸が特に好ましい。ただし、いずれも撚糸加工のし易い、安定した糸条であることが好ましい。
本発明のストレッチラメ糸(1)は、芯糸(2)に、例えば繊度が110〜330dtexのポリウレタン弾性繊維からなる弾性糸を用い、下ヨリ糸(4)にラメ糸以外の繊維(6)を用い、上ヨリ糸(5)にラメ糸(7)を用いて、例えば図2に示すカバリング装置(8)にて製造される。
K1=(SS÷D+SC)1/2×R1 …(F1)
ここでSSは芯糸(2)の繊度(dtex)であり、SCは鞘糸(3)全体の繊度(dtex)であり、Dはカバリング時の芯糸(2)のドラフト率(倍)であり、R1は上ヨリ糸(5)の撚り数(回/m)である。
K2=(SS÷D+SC)1/2×R2 …(F2)
ここで、R2は下ヨリ糸(4)の撚り数(回/m)である。
上記の上撚り係数K1に対する下撚り係数K2の比率は、好ましくは50〜97%の範囲内に設定される。
糸構成として、芯糸(2)に、繊度が310dtexのポリウレタン弾性糸(東レ・オペロンテックス株式会社製、ライクラ(登録商標)、タイプ127C)を用い、鞘糸(3)の下ヨリ糸(4)に、24フィラメントで繊度が78dtexのポリアミド繊維のウーリー加工糸を用い、上ヨリ糸(5)に、厚さ12μm、幅0.2331mm、繊度が60dtex相当のラメ糸(泉工業株式会社製、ジョーテックススレンダー(商品名)、ポリエステルフィルムに銀を蒸着したもの)を用いた。従って、鞘糸(3)全体の繊度は138dtexである。
ドラフト率は1.8倍とした。第1スピンドル(11)の回転数は10000rpmとし、下ヨリ糸(4)はS撚りで撚り数(R2)を33780回/mとし、バルーニング角(β)を31度とした。第2スピンドル(14)の回転数は10500rpmとし、上ヨリ糸(5)はZ撚りで撚り数(R1)を3546回/mとし、バルーニング角(α)を37.9度とした。
そして、上記の示す糸構成と上記の糸加工条件で糸加工し、実施例1のストレッチラメ糸(1)を得た。
糸構成として、芯糸(2)に、繊度が117dtexのポリウレタン弾性糸(東レ・オペロンテックス株式会社製、ライクラ(登録商標)、タイプ127C)を用い、鞘糸(3)の下ヨリ糸(4)に、36フィラメントで繊度が84dtexのポリエチレンテレフタレート繊維のウーリー加工糸を用い、上ヨリ糸(5)に、厚さ12μm、幅0.1515mm、繊度が38dtex相当のラメ糸(泉工業株式会社製、ジョーテックススレンダー(商品名)、ポリエステルフィルムに銀を蒸着したもの)を用いた。従って、鞘糸(3)全体の繊度は122dtexである。
ドラフト率は1.65倍とした。第1スピンドル(11)の回転数は8000rpmとし、下ヨリ糸(4)はZ撚りで撚り数(R2)を2692回/mとし、バルーニング角(β)を31度とした。第2スピンドル(14)の回転数は15000rpmとし、上ヨリ糸(5)はS撚りで撚り数(R1)を5047回/mとし、バルーニング角(α)を37.9度とした。
そして、上記の示す糸構成と上記の糸加工条件で糸加工し、実施例2のストレッチラメ糸(1)を得た。
糸構成として、芯糸(2)に、実施例1と同じポリウレタン弾性糸を用い、鞘糸(3)の下ヨリ糸(4)に、24フィラメントで繊度が122dtexのポリアミド繊維のウーリー加工糸を用い、上ヨリ糸(5)に、厚さ24μm、幅0.2020mm、繊度が65dtex相当のラメ糸(泉工業株式会社製、ニャル(商品名)、ポリアミドフィルムにアルミニウムを蒸着したもの)を用いた。従って、鞘糸(3)全体の繊度は187dtexである。
ドラフト率は1.65倍とした。第1スピンドル(11)の回転数は10000rpmとし、下ヨリ糸(4)はS撚りで撚り数(R2)を2980回/mとし、バルーニング角(β)を31度とした。第2スピンドル(14)の回転数は13000rpmとし、上ヨリ糸(5)はZ撚りで撚り数(R1)を3874回/mとし、バルーニング角(α)を37.9度とした。
そして、上記の示す糸構成と上記の糸加工条件で糸加工し、実施例3のストレッチラメ糸(1)を得た。
糸構成として、芯糸(2)に、実施例2と同じポリウレタン弾性糸を用い、鞘糸(3)の下ヨリ糸(4)に、36フィラメントで繊度が84dtexのポリエチレンテレフタレート繊維のウーリー加工糸を用い、上ヨリ糸(5)に、厚さ12μm、幅0.1515mm、繊度が38dtex相当のラメ糸(泉工業株式会社製、ジョーテックススレンダー(商品名)、ポリエステルフィルムに銀を蒸着したもの)を用いた。従って、鞘糸(3)全体の繊度は122dtexである。
ドラフト率は1.65倍とした。第1スピンドル(11)の回転数は10000rpmとし、下ヨリ糸(4)はS撚りで撚り数(R2)を1481回/mとし、バルーニング角(β)を31度とした。第2スピンドル(14)の回転数は13000rpmとし、上ヨリ糸(5)はZ撚りで撚り数(R1)を2770回/mとし、バルーニング角(α)を37.9度とした。
そして、上記の示す糸構成と上記の糸加工条件で糸加工し、実施例4のストレッチラメ糸(1)を得た。
なお各実施例において、それぞれのストレッチラメ糸(1)の物性等は、次のように測定し或いは算出した。
ストレッチラメ糸(1)を、0.0883cN/dtex荷重下で検撚機にて解撚し、下ヨリ糸(4)と上ヨリ糸(5)のそれぞれについて、1m当たりの撚り数を5回計測し、その平均値を撚り数とした。
下記式にて上撚り係数K1と下撚り係数K2を算出した。
K1=(SS÷D+SC)1/2×R1
K2=(SS÷D+SC)1/2×R2
ここで、
SS:芯糸の繊度(dtex)
SC:鞘糸全体の繊度(dtex)
D :ポリウレタン弾性繊維のドラフト率(倍)
R1:上ヨリ糸の撚り数(回/m)
R2:下ヨリ糸の撚り数(回/m)
である。
下記式にて被覆率Cを算出した。
C=W/(π×d×cosφ)×100
ここで、
W:上ヨリ糸の糸幅(mm)
d:ストレッチラメ糸の直径(mm)
φ:ストレッチラメ糸の長さ方向に対する上ヨリ糸の撚り角度(度)
π:円周率
である。
1.8×10-3cN/dtex荷重下で、周長1mの手回し検尺器にて10回巻のカセを5つ採取した。そして、得られた5つの試料について、自記記録装置付定速伸長型引張試験機を用い、1.8×10-3cN/dtexの初荷重をかけた状態で10cmのつかみの間隔に取付け、引張速度を10cm/minとして、破断するまで引き伸ばし、破断したときの伸度を測定して、その5つの値の平均を伸長率とした。
0.0883cN/dtex荷重下で試長が10cmとなるようにデマッチャー試験機(株式会社安田精機製作所製)に試験片をセットし、40%伸長を10,000回繰り返した後の、ヨリズレの有無を目視により確認し、次の基準で耐ヨリズレ性を判断した。
◎:ラメ糸による被覆にズレの発生が皆無であった。
○:ラメ糸による被覆にズレが僅かに生じたが、ヨリだまりの発生は皆無であった。
△:ヨリだまりが殆どなく、被覆率の大きな低下はなかった。
×:ヨリだまりが多数発生し、下ヨリ糸や芯糸が大きく露出した。
この測定結果から明らかなように、本発明の実施例1〜3および参考例のストレッチラメ糸は、いずれも96%以上の高い被覆率を備えており、しかも、適度に優れた伸縮性を備えているうえ、伸縮を繰り返してもヨリだまりの発生が殆どなく、高い耐ヨリズレ性を備えていた。
また上記の実施形態では、下ヨリ糸にラメ糸以外の繊維(6)を用い、実施例ではポリエステル繊維とポリアミド繊維とのいずれかを用いた。しかし本発明ではこの下ヨリ糸に、例えばポリエステル繊維とポリアミド繊維とを組み合わせた繊維や、他の合成繊維、天然繊維等を用いてもよく、さらにはラメ糸を含む繊維を用いることも可能である。
また上記の実施形態や実施例では、上ヨリ糸をラメ糸で構成した。しかし本発明ではこの上ヨリ糸に、例えば繊度換算で95%以上の、ラメ糸を含んでおればよく、ラメ糸と他の繊維等とからなるものであってもよい。
さらに上記の実施例では、ラメ糸としてポリエステルやポリアミドの合成樹脂製フィルムに銀やアルミニウムを蒸着したものを用いた。しかし本発明のストレッチラメ糸には、他の材料の合成樹脂製フィルムや金属を用いたものであってもよいことは、言うまでもない。
2…芯糸
3…鞘糸
4…下ヨリ糸
5…上ヨリ糸
6…ラメ糸以外の繊維
7…ラメ糸
8…カバリング装置
9…第1フィードローラ
10…第2フィードローラ
11…第1スピンドル
12…第1Hボビン
13…第1バルーンガイド
14…第2スピンドル
15…第2Hボビン
16…第2バルーンガイド
17…デリベリローラ
18…パッケージ
19…ワインダ
d…ストレッチラメ糸の直径
W…上ヨリ糸の糸幅
α…上ヨリ糸のバルーニング角
β…下ヨリ糸のバルーニング角
φ…上ヨリ糸の撚り角度
Claims (4)
- 芯糸(2)に弾性糸を配し、この芯糸(2)の周囲に合成樹脂フィルムに金属を蒸着させることによって得られるラメ糸(7)を含む鞘糸(3)を巻き付ける、衣料用ストレッチラメ糸の製造方法であって、
上記の鞘糸(3)を、上記ラメ糸(7)以外からなる下ヨリ糸(4)と、上記ラメ糸(7)を含む上ヨリ糸(5)とで構成し、
上記の芯糸(2)を1.5倍〜2倍のドラフト率で引き伸ばした状態で、上記の下ヨリ糸(4)を所定方向に巻きつけたのち、これとは逆方向に上記の上ヨリ糸(5)を巻きつけてダブルカバリング構造を形成し、
上記の上ヨリ糸(5)の巻きつけの際のカバリング条件を、下記式(F1)で表される上撚り係数K1が62456以上となるように設定することを特徴とする、衣料用ストレッチラメ糸の製造方法。
K1=(SS÷D+SC)1/2×R1 …(F1)
ここで、
SS:芯糸の繊度(dtex)
SC:鞘糸全体の繊度(dtex)
D :カバリング時の芯糸のドラフト率(倍)
R1:上ヨリ糸の撚り数(回/m)
である。 - 上記の芯糸(2)に対し上記の上ヨリ糸(5)を巻き付ける際の、芯糸(2)との間に形成されるバルーニング角(α)を30〜50度とした、請求項1に記載の衣料用ストレッチラメ糸の製造方法。
- 上記の下ヨリ糸(4)の巻きつけの際のカバリング条件を、下記式(F2)で表される下撚り係数K2が上記の上撚り係数K1よりも小さい値となるように設定する、請求項1または請求項2に記載の衣料用ストレッチラメ糸の製造方法。
K2=(SS÷D+SC)1/2×R2 …(F2)
ここで、
R2:下ヨリ糸の撚り数(回/m)。
である。 - 上記の下撚り係数K2は、上記の上撚り係数K1の50%以上である、請求項3に記載の衣料用ストレッチラメ糸の製造方法。
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