JP4281169B2 - ストレッチラメ糸及びその製造方法並びにストレッチ織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストレッチラメ糸及びその製造方法並びにストレッチ織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在主に用いられている金箔,銀箔は、ポリエステル,ナイロン等のフィルム表面に、真空蒸着法によりアルミニウムもしくは銀を凝着させ、その上に透明もしくは着色された樹脂をコートし、これを細く切断して糸状としたものである。金や銀を用いた本来の金糸,銀糸は高価となるので、上記の様なフィルムベースの金銀箔を上記金糸,銀糸の代わりとして一般に使用している。
【0003】
ラメ糸は上記フィルムベースの金銀箔をそのまま用いたものの他、強度を付与する目的で、絹糸,レーヨン糸,アセテート糸,ポリエステル糸やナイロン糸等と上記フィルムベースの金銀箔を撚糸したもの、或いは上記絹糸やレーヨン糸等を芯糸として上記フィルムベース金銀箔を螺旋状に巻き付けたものが提供されている。
【0004】
ラメ糸はそのメタリックな光沢が好まれ、従来から帯地等の縦糸に混ぜて使用されており、最近ではカーディガン等の編物にも用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところでラメ糸使いの光沢を有する製品として、ストレッチ織物製品が望まれているが、以下の問題がある為に実現されていない。
【0006】
即ちラメ光沢を有するストレッチ織物を得るには、伸縮性を有する加工糸とラメ糸を1:1ないし1:2等の割合で打ち込んで製織することが考えられるが、この織物は上記加工糸が収縮したとき上記ラメ糸が大きく浮き上がり、この為に生地表面の平滑性を欠くものとなる上、光沢のない上記加工糸部分が目立つ為に製品全体として光輝性に乏しくなるという問題がある。尚上記伸縮性を有する加工糸としては、ポリウレタン弾性糸(スパンデックス)を芯糸としたコアスパンヤーンやカバードヤーン、或いは綿やポリノジック糸等とポリウレタン弾性糸を合撚したものが挙げられる。
【0007】
なおカーディガンやセーターの様なニット製品の場合は、元々表面の平滑性をあまり要求されることがなく、また編物であること自体により伸縮性を示すから、単にラメ糸を用いて製編すれば、十分に光沢があり且つ多少の伸縮性を示すニット製品を得ることができる。
【0008】
しかしたとえニット製品であっても、更なる伸縮性を付与する目的で弾性糸を編み込むと、上記織物の場合と同様に製品全体として十分な光輝が得られないという問題がある。また細かい編物製品の場合は、生地表面の平滑性が要求されるので、上記織物と同様にラメ糸の大きな浮き上がりが問題となり、また光輝性に乏しくなるという問題がある。
【0009】
そこで本発明においては、生地表面が平滑で十分な光輝を示すストレッチ織物を提供することを目的とし、またこのストレッチ織物や伸縮性に優れた編物を得る為のストレッチラメ糸及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るストレッチラメ糸は、弾性糸を中心として、ラメ糸と少なくとも1本以上の非弾性糸(但しラメ糸を除く)[以下、この糸を相手糸と称することがある]により構成されたプライヤーン型のストレッチラメ糸であることを要旨とする[以下、この糸をプライヤーン型ストレッチラメ糸と称することがある]。或いは弾性糸を芯糸とし、ラメ糸と少なくとも1本以上の非弾性糸(但しラメ糸を除く)[相手糸]を被覆糸として、該被覆糸を前記芯糸に巻き付けたシングルカバリングのストレッチラメ糸であることを要旨とする[以下、この糸をカバードヤーン型ストレッチラメ糸と称することがある]。
これらストレッチラメ糸は、ラメ糸と弾性糸が一体となっており、弾性糸の伸縮にラメ糸が追従するから、該ストレッチラメ糸を用いて得られる布帛は、ラメ糸があまり浮き上がらず、良好な平滑性を示し、且つ光輝性に優れたものとなる。
【0011】
また本発明に係るストレッチ織物は、前記ストレッチラメ糸を使用し、織物としたものであることを要旨とする。この様に本発明に係るストレッチラメ糸を用いて製造した織物は、表面平滑性が良好で十分な伸縮性を示すと共に、光輝性に優れる。
【0012】
本発明に係るプライヤーン型ストレッチラメ糸の製造方法は、原材料として、弾性糸とラメ糸と少なくとも1本以上の非弾性糸(但しラメ糸を除く)[相手糸]を用い、該相手糸と、前記ラメ糸と、伸張した前記弾性糸を、撚糸機により合撚することを要旨とする。
【0013】
或いは本発明に係るカバードヤーン型ストレッチラメ糸の製造方法は、ラメ糸と少なくとも1本以上の非弾性糸(但しラメ糸を除く)[相手糸]を合わせてボビンに巻き取り被覆糸とする工程と、伸張した弾性糸を芯糸として前記被覆糸を巻き付ける工程とを有することを要旨とする。
【0014】
上記方法により得られたプライヤーン型或いはカバードヤーン型のストレッチラメ糸は、糸自体が伸縮性を有すると共に、糸表面が光輝性に優れたものを得ることができる。
【0015】
更に本発明におけるプライヤーン型ストレッチラメ糸の製造方法においては、前記合撚の際の撚係数K1が3.5〜6であることが好ましい。尚撚係数K1は下記式(1)で表される。
K1=T1/(Ne)0.5 …(1)
K1:撚係数
T1:合撚の際の撚数(T/2.54cm)
Ne:相手糸の繊度の和(Ne)。
【0016】
上記撚係数K1が3.5未満の場合は、ポリウレタン弾性糸が伸縮したときにラメ糸や相手糸が良好に追従せずに、これらラメ糸や相手糸が浮き上がるという懸念があるからであり、一方撚係数K1が6超の場合は、糸が硬直となり十分な伸縮性を発揮し難くなるからである。より好ましくは撚係数K1が4以上、5.5以下である。
【0017】
また本発明におけるカバードヤーン型ストレッチラメ糸の製造方法においては、前記被覆糸を巻き付ける際の撚係数K2が2500〜5000であることが好ましい。尚撚係数K2は下記式(2)で表される。
K2=T2×(D)1/2 …(2)
K2:撚係数
T2:巻き付ける際の巻数(T/m)
D:相手糸の繊度の和(デニール)。
【0018】
被覆糸を巻き付ける際の上記撚係数K2が2500未満の場合は、上記ラメ糸が芯糸に対して間隔をおいて巻回することになり、よってラメ糸の光沢を十分に発揮し難いばかりか、ラメ糸や相手糸が浮き上がるという恐れがあり、一方撚係数K2が5000超の場合は、糸が硬直となり、十分な伸縮性を発揮し難くなるからである。
【0019】
尚上記相手糸としては合成繊維,半合成繊維,天然繊維のいずれであっても良いが、ストレッチラメ糸の製織・製編性を考慮し、また製造する織編物に要求される強力,吸水性,吸湿性,制電性,抗ピル性等の特性を考慮して適宜選択すると良い。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係るプライヤーン型ストレッチラメ糸の製造方法の一例を以下に述べる。
【0021】
フィルムベースの銀箔をスリットヤーンにし、絹やレーヨン糸を補強用糸として上記スリットヤーンと撚り合わせ、ラメ糸とする。また相手糸としては、繊度が上記補強用糸の2.5倍以下のZ撚セルロース系糸(綿糸,ポリノジック糸)を2本用いる。ドラフトをかけたポリウレタン弾性糸に上記相手糸と上記ラメ糸を合糸し、引き続き撚糸機(リング撚糸機,ダブルツイスタ機等)によりS方向に加撚してストレッチラメ糸を得る。
【0022】
次に本発明に係るカバードヤーン型ストレッチラメ糸の製造方法の例を述べる。
【0023】
相手糸に合成繊維フィラメント糸を用い、該相手糸とラメ糸を引き揃えてカバリング機専用ボビンに巻き取る(被覆糸)。次いでドラフトをかけたポリウレタン弾性糸を芯糸としてカバリング機の中空スピンドル内部に挿入しつつ、スピンドルを回転させることにより上記ボビンに巻き取った被覆糸を芯糸に巻き付け、シングルカバリングのストレッチラメ糸を得る。このとき芯糸に対する被覆糸の撚係数K2は上述の様に2000〜4500であることが好ましい。
【0024】
上記被覆糸としては、ラメ糸と相手糸を撚り合わせたものであっても良い。
【0025】
尚カバードヤーンタイプのストレッチラメ糸にあっては、相手糸として短繊維糸よりも長繊維糸(フィラメント糸)を用いた方が製造効率の点で良い。この理由は、短繊維を用いた場合では、短繊維の撚方向と逆方向に巻き付けることが多いから、この巻付けのときに短繊維の撚が戻って糸切れ(いわゆる「素抜け現象」)が起き易いからである。またフィラメント糸は仮撚糸である方が被覆効率が良いから有利である。
【0026】
【実施例】
<試料No.1〜4>
40Neの綿糸2本を相手糸とし、弾性糸として約470%の伸度を有する70dのスパンデックスを用いる。またアルミニウム蒸着フィルムを0.233mm幅にカットしたスリットヤーンと、75dのレーヨン糸を撚り合わせてものをラメ糸として用いる。3.2倍に伸張した上記スパンデックスと上記綿糸(相手糸)と上記ラメ糸とを合糸し、S方向に下記表1の如くの撚りを加えてプライヤーン型ストレッチラメ糸を得る。
【0027】
【表1】
【0028】
<試料No.5〜8>
相手糸として140dのナイロンフィラメント仮撚糸(Z撚)、弾性糸として約470%の伸度を有する40dのスパンデックスを用いる。3.2倍に伸張した上記スパンデックスに対して、下記表2に示す巻数で上記ナイロンフィラメント仮撚糸と、上記試料No.1〜4で用いたものと同様のラメ糸とをZ撚にカバリングし、カバードヤーン型ストレッチラメ糸を得る。
【0029】
【表2】
【0030】
上述の様にして作製したストレッチラメ糸(試料No.1〜8)に20gの荷重をかけた状態で20cmに切断し、これを5本引き揃えて黒色台紙に両端をセロテープで貼り付け、目視観察により光輝性を判定した。尚判定者は男女各3名の計6名で行った。
【0031】
また上記ストレッチラメ糸を針本数200本の1口編機で300コース編立てし、1口編地を作製した。この1口編地を幅方向及び丈方向に伸縮させ、その伸縮性を判定した。これらの結果を表1,2に併せて記す。
【0032】
表1,2より分かる様に、本発明の製造方法により得られたストレッチラメ糸は良好な伸縮を示し、且つ良好な光輝性を示す。
【0033】
次に上記試料No.2のストレッチラメ糸を緯糸に用いて製織し、緯伸びのデニム織物を得たところ、該デニム織物は良好な金色の光輝を示し、且つ良好に伸縮するものであった。
【0034】
以上の様に本発明に係るストレッチラメ糸及びその製造方法並びにストレッチ織物に関して、具体的に示したが、本発明はもとより上記例に限定される訳ではなく、前記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0035】
【発明の効果】
本発明に係るストレッチラメ糸は良好な光輝性及び伸縮性を示す。また本発明の製造方法によれば、この様な光輝性,伸縮性の良好なストレッチラメ糸を得ることができる。また該ストレッチラメ糸を用いて製織したストレッチ織物は優れた伸縮性,光輝性を示す上、生地表面の平滑性が良好である。加えて上記ストレッチラメ糸を用いて非常に伸縮性に優れ良好な光輝性を有するストレッチ編物を得ることもできる。
Claims (7)
- 弾性糸を中心として、ラメ糸と少なくとも1本以上の非弾性糸(但しラメ糸を除く)により構成されたプライヤーン型のストレッチラメ糸であることを特徴とするストレッチラメ糸。
- 弾性糸を芯糸とし、ラメ糸と少なくとも1本以上の非弾性糸(但しラメ糸を除く)を被覆糸として、該被覆糸を前記芯糸に巻き付けたシングルカバリングのストレッチラメ糸であることを特徴とするストレッチラメ糸。
- 請求項1または2に記載のストレッチラメ糸を使用し、織物としたものであることを特徴とするストレッチ織物。
- 原材料として、弾性糸とラメ糸と少なくとも1本以上の非弾性糸(但しラメ糸を除く)を用い、
該非弾性糸と、前記ラメ糸と、伸張した前記弾性糸を、撚糸機により合撚することを特徴とするストレッチラメ糸の製造方法。 - 前記合撚の際に下記式(1)で表される撚係数K1が3.5〜6である請求項4に記載のストレッチラメ糸の製造方法。
K1=T1/(Ne)0.5 …(1)
T1:合撚の際の撚数(T/2.54cm)
Ne:非弾性糸(但しラメ糸を除く)の繊度の和(Ne) - ラメ糸と少なくとも1本以上の非弾性糸(但しラメ糸を除く)を合わせてボビンに巻き取り被覆糸とする工程と、
伸張した弾性糸を芯糸として前記被覆糸を巻き付ける工程とを有することを特徴とするストレッチラメ糸の製造方法。 - 前記被覆糸を巻き付ける際の、下記式(2)で表される撚係数K2が2500〜5000である請求項6に記載のストレッチラメ糸の製造方法。
K2=T2×(D)1/2 …(2)
K2:撚係数
T2:巻き付ける際の巻数(T/m)
D:非弾性糸(但しラメ糸を除く)の繊度の和(デニール)
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