以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する本発明の構成において、同様のものを指す符号は異なる図面間で共通の符号を用いて示し、同一部分または同様な機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、SOI基板の作製方法の一例に関して図面を参照して説明する。具体的には、ベース基板上に単結晶半導体層が設けられたSOI基板を作製する場合について説明する。
まず、ベース基板100と半導体基板とを準備する(図1(A)、図1(B)参照)。半導体基板としては、本実施の形態では、単結晶半導体基板110を用いる場合について説明する。
図1(A)に、ベース基板100を示す。ベース基板100としては、絶縁体でなる基板を用いることができる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。なお、上記ガラス基板においては、酸化ホウ素と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、ガラス基板に耐熱性を求める場合には、B2O3よりBaOを多く含むガラス基板を用いると良い。なお、本実施の形態では、ベース基板100としてガラス基板を用いる場合について説明する。ベース基板100として大面積化が可能で安価なガラス基板を用いることにより、低コスト化を図ることができる。
また、ベース基板100として単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板などの半導体基板を用いても良い。ここで、半導体基板としては、太陽電池級シリコン(SOG−Si:Solar Grade Silicon)基板などを用いても良い。また、多結晶半導体基板を用いても良い。太陽電池級シリコンや、多結晶半導体基板などを用いる場合には、単結晶シリコン基板などを用いる場合と比較して、製造コストを抑制することができる。
図1(B)に単結晶半導体基板110を示す。単結晶半導体基板110としては、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板を用いることもできる。市販のシリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(400mm)サイズの円形のものが代表的である。なお、単結晶半導体基板110の形状は円形に限られず、例えば、矩形等に加工して用いることも可能である。また、単結晶半導体基板110は、CZ(チョクラルスキー)法やFZ(フローティングゾーン)法を用いて作製することができる。
なお、本実施の形態においては、半導体基板として単結晶半導体基板を用いる場合について説明しているが、開示する発明の一態様はこれに限定して解釈されない。例えば、半導体基板として多結晶半導体基板などを用いても良い。
汚染物除去の観点からは、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、希フッ酸(DHF)、オゾン水などを用いて単結晶半導体基板110の表面を洗浄しておくことが好ましい。また、希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して洗浄してもよい。
次に、ボンド基板としての単結晶半導体基板110の周縁部に対応する領域に、凹部140(溝部とも呼ぶ)を形成する(図1(C)参照)。凹部140の形成方法としては、単結晶半導体基板110上にマスクを形成し、選択的に除去することで形成することができる。単結晶半導体基板110上に形成するマスクは、レジストマスクを適用すればよい。凹部の形成方法としては、例えば、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、又はウェットエッチング法及びドライエッチング法を組み合わせた加工法、レーザー加工法、超音波加工法、ドリル加工法、マイクロブラスト加工法などを用いて行えばよい。また、凹部140の深さは、単結晶半導体基板110の1/100以上、好ましくは1/10以上、より好ましくは、1/2以上とし、単結晶半導体基板110を貫通させてもよい。
図5に、単結晶半導体基板に設けられる凹部の具体的な形状を示す。図5(A1)、(A2)は、単結晶半導体基板1400の凹部1402が円錐の場合を示しており、図5(A1)は、単結晶半導体基板1400の凹部1402の平面図であり、図5(A2)は、単結晶半導体基板1400の凹部1402の基板表面と垂直な面における断面図である。また、図5(B1)、(B2)は、単結晶半導体基板1400の凹部1404が三角錐の場合を示しており、図5(B1)は、単結晶半導体基板1400の凹部1404の平面図であり、図5(B2)は、単結晶半導体基板1400の凹部1404の基板表面と垂直な面における断面図である。図5(C1)、(C2)は、単結晶半導体基板1400の凹部1406が、一部か欠けた略円柱の場合を示しており、図5(C1)は、単結晶半導体基板1400の凹部1406の平面図であり、図5(C2)は、単結晶半導体基板1400の凹部1406の基板表面と垂直な面における断面図である。図5(D1)、(D2)は、単結晶半導体基板1400の凹部1408が四角柱の場合を示しており、図5(D1)は、単結晶半導体基板1400の凹部1408の平面図であり、図5(D2)は、単結晶半導体基板1400の凹部1408の基板表面と垂直な面における断面図である。以上、示した通り、単結晶半導体基板の凹部の形状は、円錐形状、三角錐、四角錐などの多角錐形状、円柱形状、又は三角柱、四角柱などの多角柱形状を範疇に含む。また、円は、一部が欠けた略円錐、略円柱も範疇に含む。
次に、単結晶半導体基板110上に絶縁層114を形成する(図1(D)参照)。絶縁層114は、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁層を単層で、または積層させて形成することができる。これらの膜は、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。なお、絶縁層114は、凹部140の側面や底面に形成されなくてもよい。
なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、酸化窒化シリコンとは、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化物とは、その組成において、酸素よりも窒素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、窒化酸化シリコンとは、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上30原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率の合計は、100原子%を超えない。
次に、単結晶半導体基板110の表面から所定の深さに脆化領域112を形成する(図1(E)参照)。
単結晶半導体基板110の表面から所定の深さに形成される脆化領域112は、運動エネルギーを有する水素等のイオンビームを単結晶半導体基板110に照射することにより形成することができる。脆化領域112が形成される領域の深さは、イオンの運動エネルギー、イオンの質量と電荷、イオンの入射角などによって調節することができる。また、脆化領域112は、イオンの平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に形成される。このため、イオンが打ち込まれる深さで、単結晶半導体基板110から分離される単結晶半導体層の厚さを調節することができる。例えば、単結晶半導体層の厚さが、10nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下程度となるように平均侵入深さを調節すれば良い。
上記イオンビームの照射処理は、イオンドーピング装置やイオン注入装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表例としては、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種を含むイオンビームを被処理体に照射する非質量分離型の装置がある。当該装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離しないで被処理体に打ち込むことになる。これに対して、イオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離し、ある特定の質量のイオン種を含むイオンビームを被処理体に照射する。
本実施の形態では、イオンドーピング装置を用いて、水素を単結晶半導体基板110に打ち込む例について説明する。ソースガスとしては水素を含むガスを用いる。打ち込むイオンについては、H3 +の比率が高まるようにすると良い。具体的には、H+、H2 +、H3 +の総量に対してH3 +の割合が50%以上(より好ましくは80%以上)となるようにする。H3 +の割合を高めることで、イオンの打ち込み効率を向上させることができる。
なお、打ち込むイオンは水素に限定されない。ヘリウムなどのイオンを打ち込んでも良い。また、打ち込むイオンは一種類に限定されず、複数種類のイオンを打ち込んでも良い。例えば、イオンドーピング装置を用いて水素とヘリウムとを同時に打ち込む場合には、別々の工程で打ち込む場合と比較して工程数を低減することができると共に、後の単結晶半導体層の表面荒れをより一層抑えることが可能である。
ここで、単結晶半導体基板110とベース基板100とを貼り合わせる前に、貼り合わせに係る表面に、表面処理を行うことが好ましい。表面処理を行うことで、単結晶半導体基板110とベース基板100の接合界面での接合強度を向上させることができる。
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理およびドライ処理の組み合わせが挙げられる。異なるウェット処理、または異なるドライ処理を組み合わせて行っても良い。
ウェット処理としては、オゾン水を用いたオゾン処理(オゾン水洗浄)、メガソニック洗浄、または2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)などが挙げられる。ドライ処理としては、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理、またはラジカル処理などが挙げられる。被処理体(単結晶半導体基板、単結晶半導体基板上に形成された絶縁層、支持基板または支持基板上に形成された絶縁層)に対し、上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性を高める効果を奏する。その結果、基板同士の接合強度を向上させることができる。
ウェット処理は、被処理体表面に付着するマクロなゴミなどの除去に効果的である。ドライ処理は、被処理体表面に付着する有機物などミクロなゴミの除去または分解に効果的である。ここで、被処理体に対して、紫外線処理などのドライ処理を行った後、洗浄などのウェット処理を行う場合には、被処理体表面を清浄化および親水化し、さらに被処理体表面のウォーターマークの発生を抑制できるため好ましい。
また、ドライ処理として、オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素を用いた表面処理を行うことが好ましい。オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素により、被処理体表面に付着する有機物を効果的に除去または分解することができる。また、オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素に、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光による処理を組み合わせることで、被処理体表面に付着する有機物をさらに効果的に除去することができる。以下、具体的に説明する。
例えば、酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射することにより、被処理体の表面処理を行う。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光と200nm以上の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることができる。また、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることもできる。
酸素を含む雰囲気下で、200nm未満の波長を含む紫外光および200nm以上の波長を含む紫外光を照射することにより起きる反応例を示す。
O2+hν(λ1nm)→O(3P)+O(3P) ・・・ (1)
O(3P)+O2→O3 ・・・ (2)
O3+hν(λ2nm)→O(1D)+O2 ・・・ (3)
上記反応式(1)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で200nm未満の波長(λ1nm)を含む紫外光(hν)を照射することにより基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(2)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。そして、反応式(3)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で200nm以上の波長(λ2nm)を含む紫外光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素O(1D)が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともに、200nm以上の波長を含む光を照射することによりオゾンを分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下での低圧水銀ランプの照射(λ1=185nm、λ2=254nm)により行うことができる。
また、酸素を含む雰囲気下で、180nm未満の波長を含む紫外光を照射して起きる反応例を示す。
O2+hν(λ3nm)→O(1D)+O(3P) ・・・ (4)
O(3P)+O2→O3 ・・・ (5)
O3+hν(λ3nm)→O(1D)+O2 ・・・ (6)
上記反応式(4)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む紫外光を照射することにより、励起状態の一重項酸素O(1D)と基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(5)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。反応式(6)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む紫外光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素と酸素が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともにオゾンまたは酸素を分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下でのXeエキシマUVランプの照射により行うことができる。
200nm未満の波長を含む紫外光により被処理体表面に付着する有機物などの化学結合を切断し、オゾンまたは一重項酸素により被処理体表面に付着する有機物や化学結合を切断した有機物などを酸化分解して除去することができる。上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性をより高めることができ、接合を良好に行うことができる。
次に、絶縁層114を介してベース基板100と単結晶半導体基板110とを貼り合わせる(図1(F)参照)。絶縁層114を介してベース基板100と単結晶半導体基板110とを貼り合わせることによって、単結晶半導体基板110の溝部とベース基板100とにより囲まれた空間141が形成される。貼り合わせは、ベース基板100と単結晶半導体基板110とを、絶縁層114を介して密着させた後、ベース基板100または単結晶半導体基板110の一箇所に1N/cm2以上500N/cm2以下の圧力を加えることにより行われる。圧力を加えると、その部分においてベース基板100と絶縁層114の接合が生じ、当該部分を始点として自発的な接合がほぼ全面におよぶ。この接合には、ファンデルワールス力や水素結合が作用しており、常温で行うことができる。
貼り合わせは、単結晶半導体基板110に設けられた凹部140の位置から進行させることが好ましい(図1(F)矢印参照)。当該位置から貼り合わせを進行させることにより、空間141を密閉空間とすることができる。または、貼り合わせが行われない領域を低減することができる。
なお、貼り合わせの後には、接合強度を増加させるための熱処理を行っても良い。この熱処理の温度は、脆化領域112において分離が生じない温度(例えば、室温以上400℃未満)とする。また、この温度範囲で加熱しながら、ベース基板100と絶縁層114とを接合させてもよい。上記熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。
次に、熱処理を行って単結晶半導体基板110を脆化領域112において分離することにより、ベース基板100上に、絶縁層114を介して単結晶半導体層116を設ける(図1(G)参照)。
単結晶半導体基板110を分離するための熱処理は、ベース基板100の歪み点を越えない温度とする。当該熱処理は、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置などを用いて行うことができる。RTA装置には、加熱された気体を用いるガス加熱式のRTA(GRTA:Gas Rapid Thermal Anneal)装置、ランプ加熱式のRTA(LRTA:Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、又はランプ加熱式とガス加熱式の両方を備えたRTA装置等が挙げられる。GRTA装置を用いる場合には、温度550℃以上650℃以下、処理時間0.5分以上60分以内とすることができる。抵抗加熱炉を用いる場合は、温度200℃以上650℃以下、処理時間2時間以上4時間以内とすることができる。また、単結晶半導体基板110を分離した後、500℃以上の温度で熱処理を行い、単結晶半導体基板110中に残存する水素の濃度を低減させてもよい。
熱処理を行うことで、脆化領域112に形成されている微小な孔には打ち込まれた原子が析出し、熱処理の温度又は時間を増して原子の析出量が増すと、過剰な原子はガスとなり孔内部の圧力が上昇する。圧力の上昇により、脆化領域112には亀裂が生じるため、脆化領域112において単結晶半導体基板110が分離する。絶縁層114はベース基板100に接合しているため、ベース基板100上には単結晶半導体基板110から分離された単結晶半導体層116が残存する。なお、凹部140においては貼り合わせが行われていないため、ベース基板100の凹部140に対応する領域には単結晶半導体層116は形成されない。
単結晶半導体基板110の凹部140とベース基板100とにより囲まれた空間141が設けられていない場合、熱処理時、熱処理の温度・時間を増して原子の析出量が増すと、過剰な原子はガスとなり、脆化領域112においてガスが凝集する。凝集したガス(気泡)が大きくなると、単結晶半導体基板110が分離した際に、単結晶半導体層の表面は気泡の形状がそのまま表面のムラ(荒れ)となって現れてしまう。
本発明の一態様では、単結晶半導体基板110とベース基板100とにより囲まれた空間141を形成しているため、熱処理の際に、単結晶半導体基板110が分離するきっかけを与えることができる。単結晶半導体基板110が分離するきっかけを与えることで、単結晶半導体基板110が分離する温度を低く抑えることができる。単結晶半導体基板110が分離する温度を低く抑えることにより、脆化領域に凝集したガス(気泡)が大きくなる前に、単結晶半導体基板110を分離することができるため、単結晶半導体層の表面のムラ(荒れ)を抑制することができる。
次に、熱処理を行うことで、凹部140が設けられた単結晶半導体基板110が分離するメカニズムについて説明する。
図6(A)は、ベース基板100と単結晶半導体基板110の貼り合わせ直後の様子を示す図である。
図6(B)に、図6(A)に示すベース基板100と単結晶半導体基板110との接合界面付近150を拡大した模式図を示す。熱処理の温度・時間を増していくと、ベース基板100と単結晶半導体基板110との接合界面付近150(空間が設けられる付近151a、151b)において、応力集中が生じる。この応力集中は、ベース基板100と単結晶半導体基板110の熱膨張係数や剛性率などが影響している。
このような応力集中が生じる箇所は、気泡成長部分152a、152bが生じやすい。そのため、応力集中が生じる箇所を形成することで、局所的に気泡成長部分152a、152b(気泡)を成長させることができる(図6(C)参照)。このように、局所的に気泡成長部分152a、152bを成長させることで、単結晶半導体層の剥離のきっかけとして、脆化領域において亀裂を生じさせ、単結晶半導体層を分離することができる(図6(D)参照)。そのため、空間を設けない場合と比較して、低温で単結晶半導体層を剥離することができる。基板面内に気泡成長部分が大きく成長する前に単結晶半導体層を剥離することができるため、単結晶半導体層の表面荒れを抑制することができる。また、空間を設けていない単結晶半導体基板と比較して、低温で分離することができるため、気泡成長部分152a、152b以外の領域では、熱処理温度が高くなることで起こる基板全体に生じる応力による局所的な剥離や、微細なクラックが生じることや、分離がスムーズに行われずに表面荒れが生じることがない。また、熱膨張率が異なる場合、貼り合わせ基板の反り量を抑制する効果も期待される。
本発明の一態様は、応力集中を利用して単結晶半導体層の剥離を行うため、貼り合わせに係る基板の材質等が異なる場合に効果的である。また、同じ材質等を用いた基板を貼り合わせる場合であっても、表面荒れを抑制するという点においては十分な効果を得ることができる。
図1(G)において、凹部140が設けられている単結晶半導体基板117は、再生処理を行うことにより、再度、ボンド基板としての単結晶半導体基板110として利用することができる。なお、凹部140の深さは、単結晶半導体基板110の1/100以上、好ましくは1/10以上、より好ましくは、1/2以上、又は、単結晶半導体基板110を貫通させて形成しているため、再生処理の後には図1(C)に示す凹部140が設けられた単結晶半導体基板110として利用することができる。
次に、単結晶半導体層116の表面にレーザー光132を照射することによって、表面の平坦性を向上させ、かつ欠陥を低減させた単結晶半導体層118を形成する(図2(A)、図2(B)、図3(A)参照)。なお、図2(B)は、図3(A)のA−Bにおける断面に対応している。レーザー光132の照射による単結晶半導体層116の溶融は、部分溶融又は完全溶融とする。部分溶融とは、レーザー光132の照射により単結晶半導体層116が溶融される深さを、絶縁層114側界面の深さより浅くする(つまり、単結晶半導体層116の厚さより浅くする)ことを言う。すなわち、単結晶半導体層116の上層は溶融して液相となるが、下層は溶融せずに固相のままである状態をいう。また、完全溶融とは、単結晶半導体層116が絶縁層114との界面まで溶融され、液体状態になることをいう。
レーザー光132の照射による単結晶半導体層116の溶融は、部分溶融とすることが好ましい。完全溶融させた場合には、液相となった後の無秩序な核発生により微結晶化し、結晶性が低下するためである。一方、部分溶融では、溶融されていない固相部分に基づいて結晶成長を行わせることができるため、単結晶半導体層116を完全に溶融させる場合と比較して結晶性を向上させることができる。また、絶縁層114からの酸素や窒素等の取り込みを抑制することができる。
上記レーザー光の照射には、パルス発振レーザーを用いることが好ましい。これは、高エネルギーを得ることができ、部分溶融状態を作り出すことが容易となるためである。発振周波数は、1Hz以上10MHz以下程度とすることが好ましいがこれに限定して解釈されない。上述のパルス発振レーザーの発振器としては、Arレーザー、Krレーザー、エキシマ(ArF、KrF、XeCl)レーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、GdVO4レーザー、Y2O3レーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザー、金蒸気レーザー等がある。なお、部分溶融させることが可能であれば、連続発振レーザーを使用しても良い。連続発振レーザーの発振器としては、Arレーザー、Krレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、GdVO4レーザー、Y2O3レーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー等がある。
レーザー光132の波長としては、単結晶半導体層116に吸収される波長を選択する必要がある。その波長は、レーザー光の表皮深さ(skin depth)などを考慮して決定すればよい。例えば、250nm以上700nm以下の範囲とすることができる。また、レーザー光132のエネルギー密度は、レーザー光132の波長、レーザー光の表皮深さ、単結晶半導体層116の膜厚などを考慮して決定することができる。レーザー光132のエネルギー密度は、例えば、300mJ/cm2以上800mJ/cm2以下の範囲とすればよい。なお、当該エネルギー密度の範囲は、パルス発振レーザーとしてXeClエキシマレーザー(波長:308nm)を用いた場合の一例である。
レーザー光132の照射は、大気雰囲気のような酸素を含む雰囲気、または窒素雰囲気やアルゴン雰囲気のような不活性雰囲気で行うことができる。不活性雰囲気中でレーザー光132を照射するには、気密性のあるチャンバー内でレーザー光132を照射し、このチャンバー内の雰囲気を制御すればよい。チャンバーを用いない場合は、レーザー光132の被照射面に窒素ガスなどの不活性ガスを吹き付けることで、不活性雰囲気を形成することもできる。
なお、窒素などの不活性雰囲気で行うほうが、大気雰囲気よりも単結晶半導体層118の平坦性を向上させる効果は高い。また、大気雰囲気よりも不活性雰囲気のほうがクラックやリッジの発生を抑える効果が高く、レーザー光132の使用可能なエネルギー密度の範囲が広くなる。なお、レーザー光132の照射は、減圧雰囲気で行ってもよい。減圧雰囲気でレーザー光132を照射する場合には、不活性雰囲気における照射と同等の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、単結晶半導体層116の分離に係る熱処理の直後に、レーザー光132の照射処理を行っているが、開示する発明の一態様はこれに限定して解釈されない。単結晶半導体層116の分離に係る熱処理後にエッチング処理を行って、単結晶半導体層116表面の欠陥が多い領域を除去してからレーザー光132の照射処理を行っても良いし、単結晶半導体層116表面の平坦性を向上させてからレーザー光132の照射処理を行っても良い。なお、上記エッチング処理としては、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いても良い。
また、本実施の形態においては示していないが、上述のようにレーザー光132を照射した後には、単結晶半導体層118の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。単結晶半導体層118の薄膜化には、ドライエッチングまたはウェットエッチングの一方、または双方を組み合わせて用いればよい。
レーザー光の照射処理、又は薄膜化工程の後、単結晶半導体層118に500℃以上700℃以下の熱処理を行ってもよい。この熱処理によって、レーザー光132の照射で回復されなかった、単結晶半導体層118の欠陥の消滅、単結晶半導体層118の歪みの緩和をすることができる。この熱処理には、RTA装置としては、高温のガスを用いて熱処理を行うGRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、又はランプ光により熱処理を行うLRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。例えば、抵抗加熱炉を用いた場合は、600℃で4時間加熱するとよい。
以上の工程により、表面の荒れが低減された良好な半導体層を有するSOI基板を得ることができる(図2(B)、図3(A)参照)。
本実施の形態においては、単結晶半導体層116の表面にレーザー光132を照射することによって、表面の平坦性を向上させ、かつ欠陥を低減させた単結晶半導体層118を得ている。ここで、レーザー光132照射前の単結晶半導体層116の表面が荒れている場合には、レーザー光132を照射することで単結晶半導体層118の膜質が悪化する傾向にある。例えば、単結晶半導体層116にごく微小な欠損(部分的な膜の欠けなど)が存在する場合であっても、レーザー光132の照射によって、この欠損が大型化してしまう傾向にある。これは、レーザー光132の照射によって、上記の微細な欠損の周辺領域(単結晶半導体層116が薄くなっている領域)の半導体が溶融し、当該領域の半導体が表面張力などによって移動してしまうことに起因するものと考察される。
このように、単結晶半導体層116の表面が荒れている場合には、それに起因する不良が生じる傾向にあるから、単結晶半導体層116の表面荒れを抑制することは重要である。特に、レーザー光132の照射を用いる場合には、本実施の形態において示した単結晶半導体基板110の凹部140とベース基板100とにより囲まれた空間141を形成して、単結晶半導体基板を分離して、単結晶半導体層116の表面荒れを抑制する方法は、単結晶半導体層の平坦化等においては極めて有効である。
なお、上記工程の後には、SOI基板の単結晶半導体層118をパターニングして島状の単結晶半導体層120を形成しても良い。当該パターニングの際には、上記の周縁部に対応する領域(凹部140が形成された領域の近傍)の単結晶半導体層118を除去することが望ましい(図2(C)、図3(B)参照)。なお、図2(C)は、図3(B)のA−Bにおける断面に対応している。ここで、単結晶半導体層118の周縁部に対応する領域を除去するのは、閉じられた空間141の形成により半導体装置として使用できない領域が存在し、また、貼り合わせ強度の不足により半導体層のピーリングが発生する可能性が高まるためである。なお、上記貼り合わせ強度の不足は、単結晶半導体基板表面の端部がその表面研磨処理に起因して曲率を有する表面形状(エッジロールオフと呼ぶ)となっていることにより生じるものである。
なお、本実施の形態では、単結晶半導体層の角部の一カ所に凹部を配置する構成を示したが(図3(A)等参照)、開示する発明の一態様はこれに限定されない。凹部140の数や、配置などは適宜設定することができる。なお、後の半導体装置の歩留まり向上を考慮すれば、後に除去される予定の領域に上記の凹部140を形成しておくことが望ましい(図3(B)参照)が、開示する発明の一態様をこれに限定して解釈する必要はない。
次に、SOI基板の作製方法の別の一例に関して図4を参照して説明する。
まず、ベース基板100と、単結晶半導体基板110を準備する(図4(A)、図4(B)参照)。
次に、単結晶半導体基板110上に絶縁層114を形成する(図4(C)参照)。
次に、ボンド基板としての単結晶半導体基板110の周縁部に対応する領域に、凹部140を形成する(図4(D)参照)。凹部140の形成方法としては、単結晶半導体基板110上にマスクを形成し、選択的に除去することで形成することができる。単結晶半導体基板110上に形成するマスクは、レジストマスクを適用すればよい。凹部の形成方法としては、例えば、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、又はウェットエッチング法及びドライエッチング法を組み合わせた加工法、レーザー加工法、超音波加工法、ドリル加工法、マイクロブラスト加工法などを用いて行えばよい。また、凹部140の深さは、単結晶半導体基板110の1/100以上、好ましくは1/10以上、より好ましくは、1/2以上とし、単結晶半導体基板110を貫通させてもよい。
次に、単結晶半導体基板110の表面から所定の深さに脆化領域112を形成する(図4(E)参照)。
図4(F)及び図4(G)の工程は、図1(F)及び図1(G)の工程を参照することができるため、詳細な説明は省略する。
また、図4(G)以降の工程については、図2及び図3を適用することができる。図4(G)の工程の後に、図2及び図3の工程を行うことで、SOI基板を作製することができる。
さらに、図4(G)に示す単結晶半導体基板117に対して再生処理を行うことによって、図1(C)に示す凹部140が設けられた単結晶半導体基板110として再度利用することができる。また、凹部の深さは、単結晶半導体基板110の1/100以上、好ましくは1/10以上、より好ましくは、1/2以上、又は、単結晶半導体基板110を貫通させて形成しているため、凹部140の形成は、SOI基板作製の複数回に一回、又は一回で済み、生産性よく単結晶半導体基板110(その他半導体基板)を作製することができる。
本実施の形態で示した構成は、他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、図1(G)、図4(G)に示す単結晶半導体基板117に再生処理を行う場合について図7を用いて説明する。
図1(G)、図4(G)の工程の後、図7(A)に示すように、単結晶半導体基板117の周囲には凸部126が形成されている。凸部126は、ベース基板100に貼り付けられないで、残存した脆化領域127、残存した単結晶半導体層125、及び残存した絶縁層114からなる。また、単結晶半導体基板117には、残存した脆化領域129が存在する。
半導体基板の再生処理は、少なくとも、絶縁層114を除去するエッチング処理(以下、第1のエッチング処理と呼ぶ)および残存した単結晶半導体層125、残存した脆化領域127、129を除去するエッチング処理(以下、第2のエッチング処理)の二つのエッチング処理を含む。以下、これらについて詳述する。
はじめに、第1のエッチング処理について図7(A)を参照して説明する。第1のエッチング処理は、上述のように、単結晶半導体基板117の絶縁層114を除去するエッチング処理である。ここで、絶縁層114は、フッ酸を含む溶液をエッチャントとするウェットエッチング処理によって除去することができる。フッ酸を含む溶液としては、フッ酸とフッ化アンモニウムと界面活性剤を含む混合溶液(例えば、ステラケミファ社製、商品名:LAL500)などを用いるのが望ましい。当該ウェットエッチング処理は、30秒〜1200秒行うのが望ましく、例えば、600秒程度行うのが好適である。
なお、ウェットエッチング処理は単結晶半導体基板117を処理槽内の溶液に浸漬することによって行うことができるため、複数の単結晶半導体基板117を一括処理することが可能である。このため、再生処理の効率化を図ることができる。また、絶縁層114を第1のエッチング処理で除去することにより、第2のエッチング処理で絶縁層114を除去する必要がないため、エッチング時間の短縮が可能である。さらに、第1のエッチング処理では半導体はほとんどエッチングされないため、単結晶半導体基板117のエッチング除去量を抑制し、再生回数を増加させることができる。
第1のエッチング処理としては、絶縁層114が除去できればよく、ドライエッチング処理を用いても良い。また、ウェットエッチング処理とドライエッチング処理とを組み合わせて用いてもよい。ドライエッチング処理としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法などを用いることができる。第1のエッチング処理を行うことにより、単結晶半導体基板117周縁部には、単結晶半導体層125及び脆化領域127を含む凸部126と、脆化領域129とが残存する状態となる。
次に、第2のエッチング処理について図7(B)を参照して説明する。第2のエッチング処理では、図7(B)における凸部126を構成する単結晶半導体層125、脆化領域127、129(単結晶半導体層125、脆化領域127、129を合わせて損傷半導体領域とも呼ぶ)を選択的に除去する。より具体的には、半導体材料を酸化する物質と、酸化された半導体材料を溶解する物質と、半導体材料の酸化の速度および酸化された半導体材料の溶解の速度を制御する物質と、を含む混合液をエッチャントとして用いるウェットエッチング処理を行う。当該エッチング処理は、1分〜30分程度行うのが望ましく、例えば、2〜4分程度行うのが好適である。また、混合液の温度は、10℃〜30℃程度とするのが望ましく、例えば、25℃とするのが好適である。
上記において、半導体材料を酸化する物質を含む薬液としては硝酸を用いることが望ましい。また、酸化された半導体材料を溶解する物質を含む薬液としてはフッ酸を用いることが望ましい。また、半導体材料の酸化の速度および酸化された半導体材料の溶解の速度を制御する物質を含む薬液としては酢酸を用いることが望ましい。エッチャントとして、硝酸(濃度:70重量%)、フッ酸(濃度:50重量%)および酢酸(濃度:97.7重量%)の混合液を用いる場合、硝酸の体積は、酢酸の体積の0.01倍より大きく1倍未満とし、かつ、フッ酸の体積の0.1倍より大きく100倍未満とし、フッ酸の体積は、酢酸の体積の0.01倍より大きく0.5倍未満とするのが望ましい。例えば、フッ酸と硝酸と酢酸の体積比を1:3:10や1:2:10、1.5:3:10などにすることが望ましい。なお、体積比1:3:10の構成を分子のモル比で表現すると、HF:HNO3:CH3COOH:H2O=2.1:3.3:11.6:7.4である。他の分子の構成については、特に限定する必要はない。
また、上述のごとき比を用いた表現は、それぞれの薬液、または、モル数に対して±10%の範囲を誤差の範囲として含む。例えば、フッ酸と硝酸と酢酸の体積比1:3:10の表現は、x:y:z(フッ酸(x)、硝酸(y)、酢酸(z))として、x=0.9〜1.1、y=2.7〜3.3、z=9〜11をその範囲に含む。同様に、フッ酸と硝酸と酢酸の体積比1:2:10の表現は、x:y:z(フッ酸(x)、硝酸(y)、酢酸(z))として、x=0.9〜1.1、y=1.8〜2.2、z=9〜11をその範囲に含む。
損傷半導体領域には、イオン等の打ち込みに起因する結晶欠陥やボイドなどが存在しており、エッチャントが容易に浸透する。このため、損傷半導体領域では、表面のみでなく、内部からもウェットエッチング処理が進行することになる。具体的には、エッチングは基板平面に垂直な方向に深い縦穴を形成するように進行し、その縦穴を拡大するように行われる傾向にある。つまり、損傷半導体領域では、低損傷の半導体領域または未損傷の半導体領域と比較して大きなエッチングレートでエッチング処理が進行することになる。ここで、「エッチングレート」とは、単位時間あたりのエッチング量(被エッチング量)をいう。つまり、「エッチングレートが大きい」とは、よりエッチングされやすいことを意味し、「エッチングレートが小さい」とは、よりエッチングされにくいことを意味する。また、「エッチング選択比がとれる」とは、例えば、A層とB層をエッチングする場合に、A層のエッチングレートとB層のエッチングレートに十分な差が存在する条件を意味する。また、低損傷の半導体領域とは、未分離の単結晶半導体層125や脆化領域127、脆化領域129等と比較して、相対的に損傷の程度が小さい半導体領域をいう。
より具体的には、損傷半導体領域のエッチングレートは、未損傷の半導体領域(または低損傷の半導体領域)のエッチングレートの2倍以上である。すなわち、損傷半導体領域と、未損傷の半導体領域(または低損傷の半導体領域)とのエッチング選択比は2以上である。
このように、半導体材料を酸化する物質と、酸化された半導体材料を溶解する物質と、半導体材料の酸化の速度および酸化された半導体材料の溶解の速度を制御する物質と、を含む混合液をエッチャントとしてウェットエッチング処理を行うことにより、損傷半導体領域を選択的に除去することができる。故に、再生処理に係る半導体の除去量を低減することができ、再生使用回数を増加させることができる。また、ウェットエッチング処理を用いることで、複数の単結晶半導体基板117を一括処理することが可能になるため、再生処理の効率化を図ることができる。さらに、第2のエッチング処理は短時間で行うことが可能であり、この点においても再生処理の効率化が達成される。
なお、凸部126における損傷半導体領域(単結晶半導体層125および脆化領域127)の厚さと、それ以外の領域における損傷半導体領域(脆化領域129)の厚さは大きく異なっている。このため、凸部126(周縁部)と、それ以外の領域(中央部)とのエッチング選択比は、第2のエッチング処理の間において一定ではない。
具体的には、次の通りである。まず、第2のエッチング処理を開始した直後は、凸部126およびそれ以外の領域において、いずれも損傷半導体領域がエッチングされることになるから、エッチング選択比は1前後となる。そして、凸部126以外の損傷半導体領域(脆化領域129)がエッチング除去された後には、凸部126以外の領域には、低損傷の半導体領域または未損傷の半導体領域が表れることになるため、凸部126の損傷半導体領域が優先的に除去されることになり、エッチング選択比は2以上となる。そして、凸部126の損傷半導体領域(単結晶半導体層125、脆化領域127)がエッチング除去されると、当該領域にも低損傷の半導体領域または未損傷の半導体領域が表れることになるため、エッチング選択比は再び1前後となる。
このように、第2のエッチング処理の間でエッチング選択比は変動するから、これをエッチング終了時の目安とすることが可能である。例えば、エッチング選択比が2未満に低下した段階で、エッチング処理を停止させることで、第2のエッチング処理における半導体の除去量を抑制しつつ、損傷半導体領域を除去することができる。この場合、確実な再生処理を実現すると共に、十分な再生回数を確保することが可能である。なお、エッチング選択比は、所定時間(例えば、30秒、1分など)における膜厚の減少量どうしを比較して求めたもの(差分値)であっても良いし、瞬間の膜厚の減少量を比較して求めたもの(微分値)であっても良い。
単結晶半導体基板117をエッチング処理して、図7(B)に示す残存した単結晶半導体層125、残存した脆化領域127、129を除去した後、その表面を研磨し、図7(C)に示すような平滑な表面を有する単結晶半導体基板133を形成する。この単結晶半導体基板133を図1(C)に示す単結晶半導体基板110として再利用することができる。
研磨処理には、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、略称:CMP)を用いることができる。単結晶半導体基板133の表面を平滑にするため、1μm〜10μm程度研磨することが望ましい。研磨後は、単結晶半導体基板133表面に研磨粒子などが残るため、フッ酸洗浄やRCA洗浄を行う。なお、RCA洗浄とは、米RCA社が開発した半導体基板用の洗浄方法で、過酸化水素をベースに、アルカリや酸を加えた薬液を高温で用いる洗浄方法である。
単結晶半導体基板133を再利用することで、SOI基板の材料コストを削減することができる。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができることとする。
(実施の形態3)
本実施の形態では、SOI基板の作製方法の別の一例に関して図面を参照して説明する。
まず、ベース基板100と、ボンド基板としての単結晶半導体基板110を準備する(図8(A)、図8(C)参照)。
ベース基板100の表面には窒素含有層102(例えば、窒化シリコン膜(SiNx)や窒化酸化シリコン膜(SiNxOy)(x>y)等の窒素を含有する絶縁膜を含む層)を形成する(図8(B)参照)。
本実施の形態において形成される窒素含有層102は、後に単結晶半導体層を貼り合わせるための層(接合層)となる。また、窒素含有層102は、ベース基板に含まれるナトリウム(Na)等の不純物が単結晶半導体層に拡散することを防ぐためのバリア層としても機能する。
上述のように、本実施の形態においては窒素含有層102を接合層として用いるため、その表面が所定の平坦性を有するように窒素含有層102を形成することが好ましい。具体的には、表面の平均面粗さ(Ra)が0.5nm以下、自乗平均粗さ(Rms)が0.60nm以下、より好ましくは、平均面粗さが0.35nm以下、自乗平均粗さが0.45nm以下となるように窒素含有層102を形成する。膜厚は、10nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下の範囲とする。このように、表面の平坦性を高めておくことで、単結晶半導体層の接合不良を防止することができる。
次に、ボンド基板としての単結晶半導体基板110の周縁部に対応する領域に、凹部140を形成する(図8(D)参照)。凹部140の形成方法としては、単結晶半導体基板110上にマスクを形成し、選択的に除去することで形成することができる。単結晶半導体基板110上に形成するマスクは、レジストマスクを適用すればよい。凹部の形成方法としては、例えば、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、又はウェットエッチング法及びドライエッチング法を組み合わせた加工法、レーザー加工法、超音波加工法、ドリル加工法、マイクロブラスト加工法などを用いて行えばよい。また、凹部140の深さは、単結晶半導体基板110の1/100以上、好ましくは1/10以上、より好ましくは、1/2以上とし、単結晶半導体基板110を貫通させてもよい。
次に、単結晶半導体基板110上に絶縁層115を形成する(図8(E)参照)。絶縁層115は、単結晶半導体基板110の凹部140に沿って形成する。絶縁層115は、凹部140の側面及び底面に形成されなくてもよい。なお、汚染物除去の観点から、絶縁層115の形成前に、硫酸過水(SPM)、アンモニア過水(APM)、塩酸過水(HPM)、希フッ酸(DHF)などを用いて単結晶半導体基板110の表面をあらかじめ洗浄しておくことが好ましい。希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して洗浄してもよい。
絶縁層115は、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を単層で、または積層させて形成することができる。上記絶縁層115の作製方法としては、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などがある。また、CVD法を用いて絶縁層115を形成する場合、良好な貼り合わせを実現するためには、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC2H5)4)等の有機シランを用いて酸化シリコン膜を形成することが好ましい。
本実施の形態では、単結晶半導体基板110に熱酸化処理を行うことにより絶縁層115(ここでは、SiOx膜)を形成する。熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。
例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中で単結晶半導体基板110に熱酸化処理を行うことにより、塩素酸化された絶縁層115を形成することができる。この場合、絶縁層115は、塩素原子を含有する膜となる。
絶縁層115中に含有された塩素原子は、絶縁層115に歪みを形成する。その結果、絶縁層115の水分に対する吸収割合が向上し、水分の拡散速度が増大する。つまり、絶縁層115表面に水分が存在する場合に、当該表面に存在する水分を絶縁層115中に素早く吸収させ、拡散させることができるため、水分の存在による貼り合わせ不良を低減することができる。
また、絶縁層115に塩素原子を含有させることによって、外因性の不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を捕集して単結晶半導体基板110が汚染されることを防止できる。また、ベース基板と貼り合わせた後に、ベース基板からのNa等の不純物を固定して、単結晶半導体基板110が汚染されることを防止できる。
なお、絶縁層115に含有させるハロゲン原子は塩素原子に限られない。絶縁層115にはフッ素原子を含有させてもよい。単結晶半導体基板110表面をフッ素酸化する方法としては、HF溶液に浸漬させた後に酸化性雰囲気中で熱酸化処理を行う方法や、NF3を酸化性雰囲気に添加して熱酸化処理を行う方法などがある。
次に、電界で加速されたイオンを単結晶半導体基板110に照射することで、単結晶半導体基板110の所定の深さに結晶構造が損傷した脆化領域112を形成する(図8(F)参照)。詳細については先の実施の形態を参酌すればよい。なお、イオンドーピング装置を用いて脆化領域112を形成する場合には、重金属も同時に添加されるおそれがあるが、ハロゲン原子を含有する絶縁層115を介してイオンの照射を行うことによって、これら重金属による単結晶半導体基板110の汚染を防ぐことができる。
次に、絶縁層115を介してベース基板100と単結晶半導体基板110とを貼り合わせる(図8(G)参照)。絶縁層115を介してベース基板100と単結晶半導体基板110とを貼り合わせることによって、単結晶半導体基板110の溝部とベース基板100とにより囲まれた空間141が形成される。
次に、熱処理を行って単結晶半導体基板110を脆化領域112にて分離することにより、ベース基板100上に、窒素含有層102および絶縁層115を介して単結晶半導体層116を形成する(図8(H)参照)。
次に、単結晶半導体層116の表面にレーザー光132を照射することによって、表面の平坦性を向上させ、かつ欠陥を低減させた単結晶半導体層118を形成する(図9(B)、図9(C)、図10(A)参照)。なお、図9(C)は、図10(A)のA−Bにおける断面に対応している。
なお、本実施の形態においては、単結晶半導体層116の分離に係る熱処理の直後に、レーザー光132の照射処理を行っているが、開示する発明の一態様はこれに限定して解釈されない。単結晶半導体層116の分離に係る熱処理後にエッチング処理を施して、単結晶半導体層116表面の欠陥が多い領域を除去してからレーザー光132の照射処理を行っても良いし、単結晶半導体層116表面の平坦性を向上させてからレーザー光132の照射処理を行っても良い。なお、上記エッチング処理としては、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いても良い。
本実施の形態においては示していないが、上述のようにレーザー光132を照射した後には、単結晶半導体層118の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。単結晶半導体層118の薄膜化には、ドライエッチングまたはウェットエッチングの一方、または双方を組み合わせて用いればよい。
以上の工程により、表面の荒れが低減された良好な半導体層を有するSOI基板を得ることができる(図9(C)、図10(A)参照)。
なお、上記工程の後には、SOI基板の単結晶半導体層118をパターニングして島状の単結晶半導体層120を形成しても良い。当該パターニングの際には、上記の周縁部に対応する領域(凹部140(または凸部)が形成された領域の近傍)の単結晶半導体層118を除去することが望ましい(図9(D)、図10(B)参照)。なお、図9(D)は、図10(B)のA−Bにおける断面に対応している。ここで、単結晶半導体層118の周縁部に対応する領域を除去するのは、溝部の形成により半導体装置として使用できない領域が存在し、また、貼り合わせ強度の不足により半導体層のピーリングが発生する可能性が高まるためである。
なお、本実施の形態では、単結晶半導体層の角部の一カ所に凹部を配置する構成を示したが(図10(A)等参照)、開示する発明の一態様はこれに限定されない。凹部の数や、配置などは適宜設定すればよい。なお、後の半導体装置の歩留まり向上を考慮すれば、後に除去される予定の領域に上記の凹部を形成しておくことが望ましい(図10(B)参照)が、開示する発明の一態様をこれに限定して解釈する必要はない。
次に、SOI基板の作製方法の別の一例に関して図11を参照して説明する。
まず、ベース基板100と、単結晶半導体基板110を準備する(図11(A)、図11(C)参照)。
次に、ベース基板100上に、窒素含有層102(例えば、窒化シリコン膜(SiNx)や窒化酸化シリコン膜(SiNxOy)(x>y)等の窒素を含有する絶縁膜を含む層)を形成する(図11(B)参照)。
次に、単結晶半導体基板110上に、絶縁層115を形成する(図11(D)参照)。
次に、ボンド基板としての単結晶半導体基板110の周縁部に対応する領域に、凹部140を形成する(図11(E)参照)。凹部140の形成方法としては、単結晶半導体基板110上にマスクを形成し、選択的に除去することで形成することができる。単結晶半導体基板110上に形成するマスクは、レジストマスクを適用すればよい。凹部の形成方法としては、例えば、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、又はウェットエッチング法及びドライエッチング法を組み合わせた加工法、レーザー加工法、超音波加工法、ドリル加工法、マイクロブラスト加工法などを用いて行えばよい。また、凹部の深さは、単結晶半導体基板110の1/100以上、好ましくは1/10以上、より好ましくは、1/2以上とし、単結晶半導体基板110を貫通させてもよい。
次に、単結晶半導体基板110の表面から所定の深さに脆化領域112を形成する(図11(F)参照)。
図11(G)及び図11(H)の工程は、図8(G)及び図8(H)の工程を参照することができるため、詳細な説明は省略する。
また、図11(H)以降の工程については、図9及び図10を適用することができる。図11(H)の工程の後は、図9及び図10の工程を行うことで、SOI基板を作製することができる。
本実施の形態で示した構成は、他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、図12乃至図14を参照して、上記実施の形態における半導体装置の作製方法の詳細について説明する。ここでは、半導体装置の一例として複数のトランジスタからなる半導体装置の作製方法について説明する。以下において示すトランジスタを組み合わせて用いることで、様々な半導体装置を形成することができる。
図12(A)は、実施の形態1などに示す方法で作製した半導体基板の一部を示す断面図である(例えば、図2(B)等参照)。なお、本実施の形態においては、実施の形態1において作製した半導体基板を用いて半導体装置を作製する場合について説明するが、他の実施の形態において作製した半導体基板を用いても良いことは言うまでもない。
半導体層700(図2(B)における単結晶半導体層118に対応)には、TFTのしきい値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物や、リン、砒素などのn型不純物を添加しても良い。不純物を添加する領域、および添加する不純物の種類は、適宜変更することができる。例えば、nチャネル型TFTの形成領域にp型不純物を添加し、pチャネル型TFTの形成領域にn型不純物を添加する。上述の不純物を添加する際には、ドーズ量が1×1015/cm2以上1×1017/cm2以下程度となるように行えばよい。
その後、半導体層700を島状に分離して、半導体層702、および半導体層704を形成する(図12(B)参照)。なお、この際に、周縁部に対応する領域(貼り合わない領域の近傍)の単結晶半導体層118は除去されることが望ましい(例えば、図2(C)等参照)。
次に、半導体層702と半導体層704を覆うように、ゲート絶縁膜706を形成する(図12(C)参照)。ここでは、プラズマCVD法を用いて、酸化シリコン膜を単層で形成することとする。酸化シリコン以外にも、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等を含む膜を、単層構造または積層構造で形成することによりゲート絶縁膜706としても良い。
プラズマCVD法以外の作製方法としては、スパッタリング法や、高密度プラズマ処理による酸化または窒化による方法が挙げられる。高密度プラズマ処理は、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などガスの混合ガスを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体層の表面を酸化または窒化することにより、1nm以上20nm以下、望ましくは2nm以上10nm以下の絶縁膜を半導体層に接するように形成する。
上述した高密度プラズマ処理による半導体層の酸化または窒化は固相反応であるため、ゲート絶縁膜706と半導体層702、半導体層704との界面準位密度をきわめて低くすることができる。また、高密度プラズマ処理により半導体層を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを抑えることが出来る。また、半導体層が単結晶であるため、高密度プラズマ処理を用いて半導体層の表面を固相反応で酸化させる場合であっても、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁膜を形成することができる。このように、高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜をトランジスタのゲート絶縁膜の一部または全部に用いることで、特性のばらつきを抑制することができる。
または、半導体層702と半導体層704を熱酸化させることで、ゲート絶縁膜706を形成するようにしても良い。このように、熱酸化を用いる場合には、ある程度の耐熱性を有するガラス基板を用いることが必要である。
なお、水素を含むゲート絶縁膜706を形成し、その後、350℃以上450℃以下の温度による熱処理を行うことで、ゲート絶縁膜706中に含まれる水素を半導体層702および半導体層704中に拡散させるようにしても良い。この場合、ゲート絶縁膜706として、プラズマCVD法を用いた窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを用いることができる。なお、プロセス温度は350℃以下とすると良い。このように、半導体層702および半導体層704に水素を供給することで、半導体層702中、半導体層704中、ゲート絶縁膜706と半導体層702の界面、およびゲート絶縁膜706と半導体層704の界面における欠陥を効果的に低減することができる。
次に、ゲート絶縁膜706上に導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、半導体層702の上方に電極708を、半導体層704の上方に電極710を形成する(図12(D)参照)。導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることができる。導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等の材料を用いて形成することができる。また、上記金属を主成分とする合金材料を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体に導電性を付与する不純物元素をドーピングした多結晶シリコンなど、半導体材料を用いて形成しても良い。
本実施の形態では電極708および電極710を単層の導電膜で形成しているが、開示する発明の一態様に係る半導体装置は該構成に限定されない。電極708および電極710は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。2層構造とする場合には、例えば、モリブデン膜、チタン膜、窒化チタン膜等を下層に用い、上層にはアルミニウム膜などを用いればよい。3層構造の場合には、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造や、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜の積層構造などを採用するとよい。
なお、電極708および電極710を形成する際に用いるマスクは、酸化シリコンや窒化酸化シリコン等の材料を用いて形成してもよい。この場合、酸化シリコン膜や窒化酸化シリコン膜等をパターニングしてマスクを形成する工程が加わるが、これらの材料を用いたマスクでは、レジスト材料を用いたマスクと比較してエッチング時における膜減りが少ないため、より正確な形状の電極708および電極710を形成することができる。また、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極708および電極710を形成しても良い。ここで、液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
また、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節し、所望のテーパー形状を有するように電極708および電極710を形成することもできる。また、テーパー形状は、マスクの形状によって制御することもできる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素、四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄、弗化窒素などのフッ素系ガス、または酸素などを適宜用いることができる。
次に、電極708および電極710をマスクとして、一導電型を付与する不純物元素を半導体層702、半導体層704に添加する(図13(A)参照)。本実施の形態では、半導体層702にn型を付与する不純物元素(例えばリンまたはヒ素)を、半導体層704にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する。なお、n型を付与する不純物元素を半導体層702に添加する際には、p型の不純物が添加される半導体層704はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。また、p型を付与する不純物元素を半導体層704に添加する際には、n型の不純物が添加される半導体層702はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。または、半導体層702および半導体層704に、p型を付与する不純物元素またはn型を付与する不純物元素の一方を添加した後、一方の半導体層のみに、より高い濃度でp型を付与する不純物元素またはn型を付与する不純物元素の他方を添加するようにしても良い。上記不純物の添加により、半導体層702に不純物領域712、半導体層704に不純物領域714が形成される。
次に、電極708の側面にサイドウォール716を、電極710の側面にサイドウォール718を形成する(図13(B)参照)。サイドウォール716およびサイドウォール718は、例えば、ゲート絶縁膜706、電極708および電極710を覆うように新たに絶縁膜を形成し、異方性エッチングにより該絶縁膜を部分的にエッチングすることで形成することができる。なお、上記の異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜706を部分的にエッチングしても良い。サイドウォール716およびサイドウォール718を形成するための絶縁膜としては、プラズマCVD法やスパッタリング法等を用いて、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、有機材料などを含む膜を、単層構造または積層構造で形成すれば良い。本実施の形態では、膜厚100nmの酸化シリコン膜をプラズマCVD法によって形成する。また、エッチングガスとしては、CHF3とヘリウムの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール716およびサイドウォール718を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
次に、ゲート絶縁膜706、電極708および電極710、サイドウォール716およびサイドウォール718をマスクとして、半導体層702、半導体層704に一導電型を付与する不純物元素を添加する(図13(C)参照)。なお、半導体層702、半導体層704には、それぞれ先の工程で添加した不純物元素と同じ導電型の不純物元素をより高い濃度で添加する。ここで、n型を付与する不純物元素を半導体層702に添加する際には、p型の不純物が添加される半導体層704はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。また、p型を付与する不純物元素を半導体層704に添加する際には、n型の不純物が添加される半導体層702はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。
上記不純物元素の添加により、半導体層702に、一対の高濃度不純物領域720と、一対の低濃度不純物領域722と、チャネル形成領域724とが形成される。また、上記不純物元素の添加により、半導体層704に、一対の高濃度不純物領域726と、一対の低濃度不純物領域728と、チャネル形成領域730とが形成される。高濃度不純物領域720、高濃度不純物領域726はソースまたはドレインとして機能し、低濃度不純物領域722、低濃度不純物領域728はLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する。
なお、半導体層702上に形成されたサイドウォール716と、半導体層704上に形成されたサイドウォール718は、キャリアが移動する方向(いわゆるチャネル長に平行な方向)の長さが同じになるように形成しても良いが、異なるように形成しても良い。例えば、pチャネル型トランジスタとなる半導体層704上のサイドウォール718は、nチャネル型トランジスタとなる半導体層702上のサイドウォール716よりも、キャリアが移動する方向の長さが長くなるように形成すると良い。pチャネル型トランジスタにおいて、サイドウォール718の長さをより長くすることで、ボロンの拡散による短チャネル効果を抑制することができるため、ソースおよびドレインに高濃度のボロンを添加することが可能となる。これにより、ソースおよびドレインを十分に低抵抗化することができる。
ソースおよびドレインをさらに低抵抗化するために、半導体層702および半導体層704の一部をシリサイド化したシリサイド領域を形成しても良い。シリサイド化は、半導体層に金属を接触させ、熱処理(例えば、GRTA法、LRTA法等)により、半導体層中の珪素と金属とを反応させて行う。シリサイド領域としては、コバルトシリサイドまたはニッケルシリサイドを形成すれば良い。半導体層702や半導体層704が薄い場合には、半導体層702、半導体層704の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いることができる金属材料としては、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等が挙げられる。また、レーザー光の照射などによってもシリサイド領域を形成することができる。
上述の工程により、nチャネル型トランジスタ732およびpチャネル型トランジスタ734が形成される。なお、図13(C)に示す段階では、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜は形成されていないが、これらのソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜を含めてトランジスタと呼ぶこともある。
次に、nチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734を覆うように絶縁膜736を形成する(図13(D)参照)。絶縁膜736は必ずしも設ける必要はないが、絶縁膜736を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がnチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734に侵入することを防止できる。具体的には、絶縁膜736を、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどの材料を用いて形成するのが望ましい。本実施の形態では、膜厚600nm程度の窒化酸化シリコン膜を、絶縁膜736として用いる。この場合、上述の水素化の工程は、該窒化酸化シリコン膜形成後に行っても良い。なお、本実施の形態においては、絶縁膜736を単層構造としているが、積層構造としても良いことはいうまでもない。例えば、2層構造とする場合には、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜との積層構造とすることができる。
次に、nチャネル型トランジスタ732、pチャネル型トランジスタ734を覆うように、絶縁膜736上に絶縁膜738を形成する。絶縁膜738は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いて形成するとよい。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることもできる。ここで、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、芳香族炭化水素から選ばれる一を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜738を形成しても良い。
絶縁膜738の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
次に、半導体層702と半導体層704の一部が露出するように絶縁膜736および絶縁膜738にコンタクトホールを形成する。そして、該コンタクトホールを介して半導体層702に接する導電膜740および導電膜742と、半導体層704に接する導電膜744および導電膜746を形成する(図14(A)参照)。導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、トランジスタのソース電極またはドレイン電極として機能する。なお、本実施の形態においては、コンタクトホール開口時のエッチングに用いるガスとしてCHF3とHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等を用いることができる。また、上記材料を主成分とする合金を用いても良いし、上記材料を含む化合物を用いても良い。また、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
アルミニウムを主成分とする合金の例としては、アルミニウムを主成分として、ニッケルを含むものを挙げることができる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方を含むものを挙げることができる。アルミニウムやアルミニウムシリコン(Al−Si)は抵抗値が低く、安価であるため、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746を形成する材料として適している。特に、アルミニウムシリコンは、パターニングの際のレジストベークによるヒロックの発生を抑制することができるため好ましい。また、珪素の代わりに、アルミニウムに0.5%程度のCuを混入させた材料を用いても良い。
導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746を積層構造とする場合には、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造などを採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物などを用いて形成された膜である。バリア膜の間にアルミニウムシリコン膜を挟むように導電膜を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより一層防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、半導体層702と半導体層704上に薄い酸化膜が形成されていたとしても、バリア膜に含まれるチタンが該酸化膜を還元し、導電膜740および導電膜742と半導体層702とのコンタクト、導電膜744および導電膜746と半導体層704とのコンタクトを良好なものとすることができる。また、バリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電膜740乃至導電膜746を、下層からチタン、窒化チタン、アルミニウムシリコン、チタン、窒化チタンのように、5層構造またはそれ以上の積層構造とすることもできる。
また、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746として、WF6ガスとSiH4ガスから化学気相成長法で形成したタングステンシリサイドを用いても良い。また、WF6を水素還元して形成したタングステンを、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746として用いても良い。
なお、導電膜740および導電膜742はnチャネル型トランジスタ732の高濃度不純物領域720に接続されている。導電膜744および導電膜746はpチャネル型トランジスタ734の高濃度不純物領域726に接続されている。
図14(B)に、図14(A)に示したnチャネル型トランジスタ732およびpチャネル型トランジスタ734の平面図を示す。ここで、図14(B)のA−Bにおける断面が図14(A)に対応している。ただし、図14(B)においては、簡単のため、絶縁膜736、絶縁膜738、導電膜740、導電膜742、導電膜744、導電膜746等を省略している。
なお、本実施の形態においては、nチャネル型トランジスタ732とpチャネル型トランジスタ734が、それぞれゲート電極として機能する電極を1つずつ有する場合(電極708、電極710を有する場合)を例示しているが、開示する発明の一態様は該構成に限定されない。トランジスタは、ゲート電極として機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造を有していても良い。
本実施の形態では、表面の荒れを抑制した良好な半導体層を有するSOI基板を用いているため、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。なお、本実施の形態で示した構成は、他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明に係るSOI基板を適用した様々な電子機器について説明する。電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポなど)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍など)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)などの記録媒体に記憶された音声データを再生し、かつ記憶された画像データを表示しうる表示装置を備えた装置などが含まれる。それらの一例を図15に示す。
図15(A)は表示装置であり、筐体901、支持台902、表示部903、スピーカー部904、ビデオ入力端子905などを含む。この表示装置は、他の実施の形態で示した作製方法により形成したトランジスタを駆動ICや表示部903などに用いることにより作製される。なお、表示装置には液晶表示装置、発光表示装置などがあり、用途別にはコンピュータ用、テレビ受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。具体的には、ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、反射型プロジェクターなどを挙げることができる。表示装置の表示部に本発明に係るSOI基板を用いることにより、表示ムラが少なく、画質の優れた表示部とすることができる。また、駆動ICに本発明に係るSOI基板を適用することにより、駆動能力が高い駆動ICとすることができる。
図15(B)はコンピュータであり、筐体911、表示部912、キーボード913、外部接続ポート914、ポインティングデバイス915などを含む。本発明を用いて作製されたトランジスタは、表示部912の画素部だけではなく、表示用の駆動IC、本体内部のCPU、メモリなどの半導体装置にも適用が可能である。
図15(C)は、携帯電話機であり、筐体920および筐体921の二つの筐体で構成されている。筐体921は、表示パネル922、スピーカー923、マイクロフォン924、ポインティングデバイス926、カメラ用レンズ927、外部接続端子928などを備えている。また、筐体921は、当該携帯電話機の充電を行う太陽電池セル929、外部メモリスロット930などを備えている。また、アンテナは筐体921内部に内蔵されている。また、表示パネル922はタッチパネルを備えており、図15(C)には映像表示されている複数の操作キー925を点線で示している。なお、太陽電池セル929で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
上記の携帯電話を初めとして、PDA(Personal Digital Assistants、情報携帯端末)、デジタルカメラ、小型ゲーム機、携帯型の音響再生装置などの電子機器に、本発明を用いて形成した半導体材料を用いることもできる。例えば、CPU、メモリ、センサなどの機能回路を形成することや、これらの電子機器の画素部や、表示用の駆動ICにも適用することが可能である。
また、図15(D)、(E)はデジタルカメラである。なお、図15(E)は、図15(D)の裏側を示す図である。このデジタルカメラは、筐体931、表示部932、レンズ933、操作キー934、シャッターボタン935などを有する。本発明を用いて作製されたトランジスタは、表示部932の画素部、表示部932を駆動する駆動IC、メモリなどに用いることができる。
図15(F)はデジタルビデオカメラである。このデジタルビデオカメラは、本体941、表示部942、筐体943、外部接続ポート944、リモコン受信部945、受像部946、バッテリー947、音声入力部948、操作キー949、接眼部950などを有する。本発明を用いて作製されたトランジスタは、表示部942の画素部、表示部942を制御する駆動IC、メモリ、デジタル入力処理装置などに用いることができる。
この他にも、ナビゲーションシステム、音響再生装置、記録媒体を備えた画像再生装置などに用いることが可能である。これらの表示部の画素部や、表示部を制御する駆動IC、メモリ、デジタル入力処理装置、センサ部などの用途に、本発明を用いて作製されたトランジスタを用いることができる。
図15において説明した各種電子機器は、上述したトランジスタ及び表示装置の作製方法を適用して作製することができる。