以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、上記式(I)で表される。
このフッ化炭素鎖含有化合物は、工業的に入手し易い天然由来の不飽和脂肪酸を原料に用い、末端のカルボキシル基にフッ化炭素化合物を導入することで、ペルフルオロアルキルエステル基としたフッ化炭素鎖と、脂肪酸由来の炭化水素鎖の2鎖疎水基と、当該原料の不飽和脂肪酸部分の二重結合部位がジェミニ型界面活性剤で言う連結基となり、かつその二重結合部分を酸化して得られた水酸基に、コハク酸モノエステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、アルキレンオキシド、アミノ酸エステル系カチオン、リン酸エステルまたはその塩などを導入したいずれか1種の2つの親水基とを有するジェミニ型の分子構造を特徴としている。
式(I)において、-CnF2n+1は直鎖または分岐のペルフルオロアルキル基を示し、nは1〜8の整数を示す。
ペルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロイソプロピル基などが挙げられる。
これらの中でも、原料価格や安全性の面からもペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基が好ましい。
フッ素系樹脂などの固体状粉末を液体中に安定的に分散させる点からは、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基がさらに好ましい。フッ素系液体などを乳化・可溶化するには、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基がさらに好ましい。
式(I)において、R1は炭素原子数0〜3のアルキレン基を示す。
アルキレン基R1としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基などが挙げられる。
これらの中でも、安定性、ジヒドロキシ脂肪酸の反応性の面からもエチレン基が好ましい。
式(I)において、R2は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示す。
アルキレン基R2としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ぺンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基、n-ドデシレン基、n-トリデシレン基、n-テトラデシレン基、n-ペンタデシレン基、n-ヘキサデシレン基、n-ヘプタデシレン基、n-オクタデシレン基、n-ノナデシレン基、n-イコシレン基、n-ヘンイコシレン基、n-ドコシレン基などが挙げられる。
これらの中でも、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基、n-ドデシレン基、n-トリデシレン基、n-ペンタデシレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基がより好ましい。
式(I)において、R3は炭素原子数1〜22のアルキル基を示す。
アルキル基R3としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、n-ヘニコシル基、n-ドコシル基などが挙げられる。
これらの中でも、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ノナデシル基が好ましい。
式(I)において、R2およびR3は、‐R2‐CH‐CH‐R3部分の炭素原子数が9〜25となるように選択される。
‐R2‐CH‐CH‐R3部分としては、例えば、-(CH2)2-CH-CH-(CH2)4CH3、-(CH2)7-CH-CH-CH3、-CH2-CH-CH-(CH2)7-CH3、-(CH2)2-CH-CH-(CH2)6CH3、-(CH2)3-CH-CH-(CH2)5CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)2CH3、-(CH2)2-CH-CH-(CH2)8CH3、-(CH2)3-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)3CH3、-(CH2)4-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)4CH3、-CH2-CH-CH-(CH2)11CH3、-(CH2)5-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)5CH3、-(CH2)5-CH-CH-(CH2)8CH3、-(CH2)6-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)6CH3、-CH2-CH-CH-(CH2)13CH3、-(CH2)2-CH-CH-(CH2)12CH3、-(CH2)4-CH-CH-(CH2)10CH3、-(CH2)5-CH-CH-(CH2)9CH3、-(CH2)6-CH-CH-(CH2)8CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)9-CH-CH-(CH2)5CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)8CH3、-(CH2)9-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)10-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)11-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)8-CH-CH-(CH2)11CH3、-(CH2)12-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)13-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)3-CH-CH-(CH2)18CH3、-(CH2)15-CH-CH-(CH2)6CH3、-(CH2)15-CH-CH-(CH2)7CH3などが挙げられる。
これらの中でも、-CH2-CH-CH-(CH2)7-CH3、-(CH2)2-CH-CH-(CH2)6CH3、-(CH2)3-CH-CH-(CH2)5CH3、-(CH2)2-CH-CH-(CH2)8CH3、-(CH2)3-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)4-CH-CH-(CH2)7CH3、-CH2-CH-CH-(CH2)11CH3、-(CH2)5-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)5CH3、-(CH2)5-CH-CH-(CH2)8CH3、-(CH2)6-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)6CH3、-CH2-CH-CH-(CH2)13CH3、-(CH2)2-CH-CH-(CH2)12CH3、-(CH2)4-CH-CH-(CH2)10CH3、-(CH2)5-CH-CH-(CH2)9CH3、-(CH2)6-CH-CH-(CH2)8CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)9-CH-CH-(CH2)5CH3、-(CH2)7-CH-CH-(CH2)8CH3、-(CH2)9-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)10-CH-CH-(CH2)7CH3、-(CH2)11-CH-CH-(CH2)7CH3が好ましい。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、1つの態様では、式(I)において、X1およびX2はそれぞれ独立に上記式(I-a)で表わされる基である(以下、「フッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物」とも言う)。
式(I-a)において、Xaは、水素イオンまたは塩となる対カチオンを示し、塩となる対カチオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン、またはアンモニウムイオンなどが挙げられる。
Xaのアルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
Xaの第2族元素イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなどが挙げられる。
Xaの遷移元素イオンとしては、例えば、イットリウムイオン、ジルコニウムイオン、ハフニウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、銀イオンなどが挙げられる。
Xaの第12族元素イオンとしては、例えば、亜鉛イオン、カドミウムイオンなどが挙げられる。
Xaのアンモニウムイオンとしては、例えば、アンモニア、ヒドロキシアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族アミン由来のアンモニウムイオン、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピロールなどの環状アミン由来のアンモニウムイオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン由来のアンモニウムイオンなどが挙げられる。
本発明の化合物を界面活性剤として使用する場合は、水への溶解性の観点から、Xaは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンやアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアンモニウムイオンが好ましい。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、別の態様では、式(I)において、X1およびX2はそれぞれ独立に上記式(I-b)で表わされる基である(以下、「フッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物」とも言う)。
式(I-b)において、Xbは水素イオンまたは塩となる対カチオンを示し、塩となる対カチオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、別の態様では、式(I)において、X1およびX2は、それぞれ独立に上記式X1およびX2のいずれか一方が上記式(I-c-1)、他方が上記式(I-c-2)で表わされる基である(以下、「フッ化炭素鎖含有非イオン型化合物」とも言う)。
式(I-c-1)、(I-c-2)において、式中、AOは炭素原子数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基を示し、pは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200の範囲内である。
アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが用いられ、これらは併用することができる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとを併用した場合、ポリオキシアルキレン鎖はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとがランダムに付加重合したものであっても、ブロック状に付加重合したものであってもよい。
式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルの水酸基1個当たりのアルキレンオキシドの付加重合モル数は、100モル以下であるが、50モル以下が好ましく、2つの水酸基へのアルキレンオキシドの付加重合の合計モル数は、1〜200モルであるが、1〜100モルが好ましい。
各水酸基にアルキレンオキシドを付加重合させて形成されるポリオキシアルキレン鎖は、アルキレンオキシド付加モル数が同モル数であっても異なるモル数であってもよく、異なるアルキレンオキシドが付加重合して構成されていてもよい。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、式(I)において、別の態様では、X1およびX2は、それぞれ独立に上記式(I-d)で表わされる基である(以下、「フッ化炭素鎖含有カチオン型化合物」とも言う)。
式(I-d)において、R4は炭素原子数0〜3のアルキル基を示し、R4の炭素原子数が1〜3の場合※は不斉炭素中心であり、D体、L体またはD,L体混合物を示す。Xcは塩となる対アニオンを示し、塩となる対アニオンとしては、例えば、陰イオンでありXcは塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、乳酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、式(I)において、別の態様では、X1およびX2は、X1およびX2のいずれか一方が上記式(I-e)で表わされる基で他方が水素原子を示す(以下、「フッ化炭素鎖含有リン酸エステル型化合物」とも言う)。
式(I-e)において、XdおよびXeはそれぞれ独立に水素イオン塩となる対カチオンを示し、塩となる対カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオンなどの無機陽イオンまたは有機アンモニウムイオンなどが挙げられる。
以上のような構成の本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、例えば、次の方法によって製造することができる。
まず、フッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物の製造方法について説明する。
最初に、上記式(II)で表されるハロゲン化ペルフルオロ化合物または、ペルフルオロアルコールと、上記式(III)で表されるジヒドロキシ脂肪酸とを反応させて、上記式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルを合成する。
式(II)で表されるハロゲン化ペルフルオロ化合物において、Yは、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子または水酸基を示す。ハロゲン原子は中でも、反応性の観点からヨウ素原子が好ましい。
式(III)で表されるジヒドロキシ脂肪酸は、例えば、不飽和脂肪酸を、過酸化水素および蟻酸などの有機酸の存在下に、35〜130℃で2〜48時間反応させて二重結合を酸化し、その後、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの塩基を常温程度で作用させて2〜48時間反応させて水酸基を導入することにより合成することができる。
原料である炭素原子数10〜26の不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素原子数10の4-デセン酸、炭素原子数11の9-ウンデセン酸、炭素原子数12のリンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸などの3-ドデセン酸、4-ドデセン酸、5-ドデセン酸、炭素原子数13のcis-9-トリデセン酸、炭素原子数14のツズ酸、ミリストレイン酸などの4-テトラデセン酸、5-テトラデセン酸、9-テトラデセン酸、炭素原子数15の6-ペンタデセン酸、cis-9-ペンタデセン酸、炭素原子数16のパルミトレイン酸などのtrans-3-ヘキサデセン酸、cis-7-ヘキサデセン酸、cis-9-ヘキサデセン酸、trans-9-ヘキサデセン酸、炭素原子数17のcis-7-ヘプタデセン酸、cis-8-ヘプタデセン酸、cis-9-ヘプタデセン酸、炭素原子数18のペトロセリン酸、ペトロセエライジン酸、オレイン酸、エライジン酸、パセニン酸などのtrans-3-オクタデセン酸、cis-3-オクタデセン酸、trans-4-オクタデセン酸、cis-6-オクタデセン酸、trans-6-オクタデセン酸、cis-7-オクタデセン酸、trans-7-オクタデセン酸、cis-8-オクタデセン酸、trans-8-オクタデセン酸、cis-9-オクタデセン酸、trans-9-オクタデセン酸、cis-11-オクタデセン酸、trans-11-オクタデセン酸、炭素原子数19のcis-9-ノナデセン酸、炭素原子数20のゴンドイン酸などのcis-11-エイコセン酸、trans-11-エイコセン酸、炭素原子数21の12-ヘニコセン酸、炭素原子数22のエルカ酸、ブラシン酸等のcis-13-ドコセン酸、trans-13-ドコセン酸、炭素原子数23の10-トリコセン酸、14-トリコセン酸、炭素原子数24のセラコレイン酸などのcis-15-テトラコセン酸、trans-15-テトラコセン酸、炭素原子数25のcis-15-ペンタコセン酸、cis-17-ペンタコセン酸、炭素原子数26のcis-17-ヘキサコセン酸などが挙げられる。
これらの中でも、炭素原子数12〜22の不飽和脂肪酸が好ましく、工業的な原料供給の面と原料が安価である点からオレイン酸やエルカ酸がより好ましい。
原料であるハロゲン化ペルフルオロ化合物としては、ペルフルオロメチルヨージド(CF3I)、ペルフルオロエチルヨージド(CF3CF2I)、ペルフルオロプロピルヨージド(CF3(CF2)2I)、ペルフルオロブチルヨージド(CF3(CF2)3I)、ペルフルオロヘキシルヨージド(CF3(CF2)5I)、2-(ペルフルオロブチル)エチルヨージド(CF3(CF2)3(CH2)2I)、2-(ペルフルオロヘキシル)エチルヨージド(CF3(CF2)5(CH2)2I)、2-(ペルフルオロオクチル)エチルヨージド(CF3(CF2)7(CH2)2I)、ヘプタフルオロ-2-ヨードプロパン((CF3)2CFI)などが挙げられる。
これらの中でも、原料供給や安全性の面から、2-(ペルフルオロブチル)エチルヨージド(CF3(CF2)3(CH2)2I)、2-(ペルフルオロヘキシル)エチルヨージド(CF3(CF2)5(CH2)2I)、2-(ペルフルオロオクチル)エチルヨージド(CF3(CF2)7 (CH2)2I)が好ましい。
フッ素系樹脂などの固体状粉末を液体中に安定的に分散させる点からは、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基がさらに好ましい。また、フッ素系液体などを可溶化するには、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基がさらに好ましい。
原料であるペルフルオロアルコールとしては、1H,1H-トリフルオロエタノール(CF3CH2OH)、1H,1H-ヘプタフルオロブタノール(CF3(CF2)2CH2OH)、2-(ペルフルオロブチル)エタノール(CF3(CF2)3(CH2)2OH)、2-(ペルフルオロブチル)プロパノール(CF3(CF2)3(CH2)3OH)、2-(ペルフルオロヘキシル)エタノール(CF3(CF2)5(CH2)2OH)、2-(ペルフルオロヘキシル)エタノール(CF3(CF2)5(CH2)3OH)、2-(ペルフルオロオクチル)プロパノール(CF3(CF2)7 (CH2)2OH)、2H-ペルフルオロ-2-プロパノール([CF3(CF2)m][CF3(CF2)n]CHOH (m,nは0以上の整数を示す。)、2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロパノール((CF3)2C(CH3)CH2OH)などが挙げられる。
これらの中でも、原料供給や安全性の面から、2-(ペルフルオロブチル)エタノール(CF3(CF2)3(CH2)2OH)、2-(ペルフルオロヘキシル)エタノール(CF3(CF2)5(CH2)2OH)、2-(ペルフルオロオクチル)エタノール(CF3(CF2)3(CH2)2OH)が好ましい。
式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルは、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中で、式(III)で表されるジヒドロキシ脂肪酸に対して、1〜5倍mol当量の炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下、1〜5倍mol当量の式(II)で表されるハロゲン化ペルフルオロ化合物を、50〜120℃で2〜48時間反応させることによって得ることができる。
また、式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルは、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で、式(III)で表されるジヒドロキシ脂肪酸に対して、1〜3倍mol当量の縮合剤の存在下、1〜5倍mol当量の式(II)で表されるペルフルオロアルコールを、0〜60℃で2〜48時間反応させることによっても得ることができる。
縮合剤は、どのようなものを用いても特に制限はないが、例えば、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。
エステル化の反応触媒として、ジヒドロキシ脂肪酸に対して、0.01〜2倍mol当量の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を加えてもよい。
次に、この式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルを無水コハク酸と反応させることにより、下記式(V)で表されるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物を得ることができる。
例えば、トルエン、ジクロロメタン、ヘキサン、ヘプタンなどの有機溶媒中で、式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルに対して、2〜10倍mol当量の無水コハク酸と、2〜10倍mol当量のトリエチルアミン(TEA)とを、窒素気流下、60〜110℃の温度で、8〜72時間攪拌しながら反応させ、次にこの反応液に塩酸水溶液を入れ、水層のpHが4以下であることを確認して、50〜80℃で1〜3時間程度攪拌を行い、その後酸洗浄層を抜き、中性になるまで水洗した後、有機層を冷却し、析出した結晶をろ別するか溶媒を減圧留去させるか、あるいは有機層をスプレードライヤー装置を用いて乾燥造粒することによってXaが水素イオンであるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物を得ることができる。
エステル化の反応触媒として、式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルに対して、0.01〜2倍mol当量の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を加えてもよい。また、必要に応じてヘキサン、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチルなどの溶媒またはこれらの混合溶媒を用いた再結晶や、シリカゲルを固定相とし、クロロホルム・メタノール混合溶媒を移動相とするカラムクロマトグラフィーなどによって精製することができる。
さらにXaを塩となる対カチオン、例えば、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン、またはアンモニウムイオンとする場合には、例えば、上記で得られた式(V)で表されるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物(Xaが水素イオン)を水やエチルアルコールなどの溶媒中で、対応するアルカリ金属、第2族元素、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオンなどの水酸化物やアミンなどと中和反応させることにより得ることができる。
本発明のフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物は、それ自体で界面活性剤として使用できる。また、水で希釈して界面活性剤組成物として用いることができ、溶解性の面からXaは、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
また、より中性領域で使用したい場合は、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン由来のアンモニウムイオンが好ましい。
次に、フッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物の製造方法について説明する。
フッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物は、式(IV)で表わされるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルの水酸基に、三酸化硫黄ピリジン錯体を反応させることにより、下記式(VI)で表されるフッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物を得ることができる。
例えば、式(IV)で表わされるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルを十分に乾燥したクロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジンやジクロロメタンなどの溶媒中で、窒素気流下、2〜25倍mol当量の三酸化硫黄ピリジン錯体と10〜40℃で12〜36時間撹拌して反応させ、反応後、濾過によって過剰の三酸化硫黄ピリジン錯体を除き、反応溶媒を留去させ精製することで、Xbが水素イオンであるフッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物が得られる。
さらに上記で得られた式(VI)で表されるフッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物(Xbが水素イオン)から、Xbが塩となる対カチオン、例えば、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン、またはアンモニウムイオンとする場合には、上記で得られた化合物にブタノールを加え、対応するアルカリ金属、第2族元素、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオンなどの水酸化物やアミンなどと中和反応させ、水洗することにより得ることができる。その後、有機層を留去して得た結晶を必要に応じてメタノール、エタノール、ブタノール、アセトニトリルなどの溶媒またはこれらの混合溶媒を用いた再結晶等で精製することによって得ることができる。
本発明のフッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物は、それ自体で界面活性剤として使用できる。また、水で希釈して界面活性剤組成物として用いることができる。溶解性の面から上記式(VI)においてXbは、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
次に、フッ化炭素鎖含有非イオン型化合物の製造方法について説明する。
式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルの水酸基に、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加重合させることにより、下記式(VII)で表されるフッ化炭素鎖含有非イオン型化合物を得ることができる。
例えば、式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルの各水酸基に、三フッ化ホウ素などの酸触媒、あるいは水酸化カリウムなどのアルカリ触媒の存在下で、50〜200℃でアルキレンオキシドを付加させ、精製することによってフッ化炭素鎖含有非イオン型化合物が得られる。
上記式(VII)においてpは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200の範囲内であるが、付加モル数が増えると不純物が増加する傾向があることから、pとqの和は、1〜100が好ましい。付加モル数を変えることで必要なHLBに調整することができる。
本発明のフッ化炭素鎖含有非イオン型化合物は、それ自体で界面活性剤として使用できる。また、水で希釈して界面活性剤組成物として用いることができる。
次に、フッ化炭素鎖含有カチオン型化合物の製造方法について説明する。
例えば、式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルに、N-保護したアミノ酸を反応させ、その後、脱保護することにより、下記式(VIII)で表されるフッ化炭素鎖含有カチオン型化合物を得ることができる。
例えば、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、ヘプタンなどの有機溶媒中で、式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルと、2〜5倍mol 等量のD体、L体またはD,L体混合物のN-Boc保護したアミノ酸とを、2〜5倍mol 等量の1-エチル-3(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、0.01〜2倍mol当量の4-ジメチルアミノピリジン、および2〜10倍mol当量のピリジンの存在下に、窒素雰囲気下、室温で12〜48時間反応させる。次いで塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水の順で有機層の洗浄・抽出操作を行い、その後有機層を留去して粘体を得た後、4N 塩酸/酢酸エチル溶液を加えて室温で2〜6時間反応させ、濃縮、精製することによってXcを塩化物イオンとするフッ化炭素鎖含有カチオン型化合物が得られる。
さらに上記で得られた式(VIII)で表されるカチオン型化合物(Xcが塩化物イオン)から、塩となる対アニオンXcを、例えば、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、乳酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオンとするには、イオン交換を行えば得ることができる。
本発明のフッ化炭素鎖含有カチオン型化合物は、それ自体で界面活性剤として使用できる。また、水で希釈して界面活性剤組成物として用いることができる。
次に、フッ化炭素鎖含有リン酸エステル塩型化合物の製造方法について説明する。
式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルに、有機溶媒中でポリリン酸を反応させ、不飽和脂肪酸の二重結合位置にリン酸基と水酸基とを隣接して導入することにより、下記式(IX)で表されるフッ化炭素鎖含有リン酸エステル型化合物を得ることができる。
例えばトルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、ベンゼンなどの溶媒中で、式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルとポリリン酸との反応は、式(IV)で表されるペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステルを、1〜20倍当量のポリリン酸と共に、窒素気流下、10〜100℃で、1〜96時間程度攪拌を行い、その後、水洗を行い、有機層を減圧下、溶媒を除去し、精製することによってXdおよびXeが水素イオンのフッ化炭素鎖含有リン酸エステル型化合物を得ることができる。
さらに上記で得られた式(IX)で表されるフッ化炭素鎖含有リン酸エステル型化合物(XdおよびXe)から、XdおよびXeの水素イオン塩となる対カチオンを、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオンなどの無機陽イオンまたは有機アンモニウムイオンとする場合には、所定量のアミンやアルカリを加えて中和して、再結晶やシリカゲルを固定相とし、クロロホルム・メタノール混合溶媒を移動相とするカラムクロマトグラフィーなどによって精製することができる。これによりフッ化炭素鎖含有リン酸エステル型化合物を得ることができる。
本発明のフッ化炭素鎖含有リン酸エステル型化合物は、それ自体で界面活性剤として使用できる。また、水で希釈して界面活性剤組成物として用いることができる。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、工業的に入手し易い天然由来の不飽和脂肪酸を原料に用いることで、末端のカルボキシル基にフッ化炭素化合物を容易に導入することができ、かつ当該原料の不飽和脂肪酸部分の二重結合部位がジェミニ型界面活性剤で言う連結基となり、かつその二重結合部分を酸化して得られた水酸基に親水基として、コハク酸モノエステルまたはその塩、硫酸エステルまたはその塩、アルキレンオキシド、アミノ酸エステル系カチオン、リン酸エステルまたはその塩などを容易に導入することができるので、その製造において、反応工程数が少なく容易に合成することができるという利点を有する。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、ペルフルオロアルキルエステル基としたフッ化炭素鎖と、炭化水素鎖との2鎖疎水基と、アニオン性、非イオン性、カチオン性より選ばれる1種の2つの親水基とを有するジェミニ型の分子構造に起因して、低い臨界ミセル濃度かつ高い表面張力および界面張力低下能など優れた界面活性を有し、生体への安全性を有し、さらに、水に対する溶解性が非常に高く高濃度で使用しても白濁や粘性を生じない。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、その分子構造に起因して、水溶性が高く、高濃度で使用しても白濁や粘性を生じないため、工業的にも用途の幅が広がるとともに、分子構造中に含まれるフッ化炭素鎖が少ないため環境汚染の虞も少ない。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、分子内に水になじみやすい2つの親水基と、炭化水素系化合物とフッ化炭素系化合物にそれぞれなじみやすい2鎖の疎水基を有し、低い臨界ミセル濃度かつ高い表面張力低下能や媒体の表面張力または界面張力を低下させる機能を有するなど、その優れた界面活性能を生かして界面活性剤として使用でき、コーティング剤、表面改質剤などとしての機能も有することから、繊維工業、パルプ・紙・紙加工品、印刷、総合化学・化学繊維、油脂・塗料、化粧品、石油製品、プラスチック製品、ゴム製品、電子部品などの産業分野への応用が推察される。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、固体粒子の周囲に界面活性剤として吸着して水中で安定に保持する分散作用を有し、例えば、水系溶媒などの溶媒中へ低濃度添加することによりフッ化炭素樹脂を分散することが可能である。
フッ化炭素樹脂は、通常は1〜15μmの粒子径をもつ粉末でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが例示される。ここでポリテトラフルオロエチレンとは、テトラフルオロエチレンのホモポリマーと、テトラフルオロエチレンと0.1〜10モル%の他のフッ化オレフィンモノマー、例えばヘキサフルオロプロペン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル類、ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロイソブテン、クロロトリフルオロエチレンなどとのコポリマーの双方を意味する。
フッ化炭素樹脂を水系溶媒中へ分散する際には、例えば、フッ化炭素樹脂に対して本発明のフッ化炭素鎖含有化合物0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%の低濃度の添加することにより有効に作用する。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、水と油のように互いに混ざり合わない物質に界面活性剤として添加することにより、白濁して均一(一定期間分離しない)とし、あるいは外見上は透明または青白い液体とする、乳化・可溶化作用を有する。例えば、水系溶媒などの溶媒中へ低濃度でフッ素油、炭化水素系油やシリコーン油を乳化または可溶化することが可能である。
フッ素油としては、パーフルオロポリエーテル、クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。炭化水素系油としては、天然油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油などが挙げられる。シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等)、環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)が挙げられる。フッ素油、炭化水素系油やシリコーン油を水系媒体中へ可溶化または乳化する際には、例えば、水系媒体に対して本発明のフッ化炭素鎖含有化合物0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%を添加することにより有効に作用する。乳化の形はO/W(水中油滴)型であってもW/O(油中水滴)型であってもかまわない。
さらに、水系媒体中でフッ素系モノマーの重合を行う場合にも、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物を添加することによりフッ素系モノマーを可溶化または乳化でき、重合反応において微粒子化しても分散するため有用である。なお通常のフッ化炭素系界面活性剤と比べて使用量が少なくて済むため、微粒子化後の本発明のフッ化炭素鎖含有化合物の残留量が少なく環境への影響が少ない。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、界面活性剤としてその他にも柔軟・平滑作用、帯電防止作用、再汚染防止作用を有し、フッ化炭素鎖含有カチオン型化合物を含む界面活性剤では抗菌作用をも有する。
また、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、界面活性剤として使用する場合には、本発明の効果を損なわない範囲内で他の界面活性剤、分散助剤、可溶化助剤などの各種添加剤を配合することができる。ここで言う他の界面活性剤としては、疎水基の種類を問わず、親水基の種類がアニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の各種界面活性剤を使用することができる。添加剤は特に限定はされないが、例えば、アルキル脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、4級アンモニウム塩、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
また本発明によれば、フッ化炭素鎖含有化合物を液体または固体の媒体に添加する工程を含む、媒体の表面張力または界面張力を低下させる方法も提供される。本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、分子内に水になじみやすい2つの親水基と、炭化水素系化合物とフッ化炭素系化合物にそれぞれなじみやすい2鎖の疎水基を有し、低い臨界ミセル濃度かつ高い表面張力低下能などの優れた界面活性能を有することから、様々な媒体の表面張力または界面張力を低下させるのに有効である。
媒体としては、例えば、水、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、塗料、インキ、コーティング組成物、クリーナー、パーソナルケア組成物、ハンダ、ラテックス、ポリマー、樹脂、紙、繊維、ガラス、シリコンウェハ、乳化剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、発泡剤、離型剤、撥水撥油剤、流れ調整剤、研削剤、研磨剤、電気めっき剤、腐食防止剤、エッチング液、すすぎ助剤、乾燥剤、帯電防止剤、艶出剤、仕上げ剤、結合剤などが挙げられる。
添加する工程としては、フッ化炭素鎖含有化合物を、単に液体または固体媒体に添加、混合したり、固体媒体に添加し、加熱溶融して練り込んだり、上記液体の媒体に溶解させて固体媒体表面に塗布して乾燥する方法が挙げられる。塗布する方法としてはスプレーコート、スピンコート、ディップコート(浸漬塗布)、ダイコート、ロールコート、コンマコート、スロットコートなどの各種方式が挙げられる。
本発明のフッ化炭素鎖含有化合物を媒体に添加すると、界面活性特性のため、媒体の表面張力または界面張力が低下する。換言すれば、媒体の表面挙動(例えば、湿潤、浸透、帯電、摩擦、展開性、レベリング、流動乳化、安定化および湿潤液体での分散)を変えることが可能となる。本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、通常、媒体に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%の低濃度の添加により有効に機能する。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、NMRはAV400M(ブルカー・バイオスピン(株)製)を用いて測定した。元素分析はSeriesII CHNS/O Analyzer 2400(パーキンエルマー社製)を用いて行った。ESI‐MSはJMS‐T100CS(日本電子(株)製)を用いて測定を行った。
<実施例1>
ジヒドロキシステアリン酸にペルフルオロハロゲン化物を反応させ、さらに無水コハク酸を反応させることにより、下記式(I-1)で表わされるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物を合成した。
1)フッ化炭素鎖導入反応
ナスフラスコにジヒドロキシステアリン酸5g(0.0158mol)を入れ、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド8mlに溶解させた。そこに炭酸ナトリウム3.35g(0.0316mol)を加え、さらにヨウ化1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル11.8g(0.0316mol)を加えた。
窒素雰囲気下で80℃で24h撹拌を続けた。反応液に炭酸ナトリウム水溶液を加え撹拌した後、沈殿物を濾過することにより、下記式(IV-I)で表わされる化合物(白色固体)3.60g(0.00640mol)を収率40.5%で得た。構造はNMRにより確認した。
2)ジカルボン酸化反応
式(IV-1)で表わされる化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)3.60g(0.00640mol)をナスフラスコに入れ、溶媒としてトルエンを加え、無水コハク酸3.84g(0.0384mol)を加えた。
さらにトリエチルアミン3.88g(0.0384mol)を滴下し、DMAP 0.782g(0.00640mol)を加え、窒素雰囲気下で100℃で48h還流を行った。反応液に3N塩酸水溶液を加え、60〜70℃で反応液を2回洗浄した。
その後、1回水洗し、有機層を採取し、エバポレーターによって溶媒を除去した。得られた粘体をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒にて再結晶し、式(I-1)で表わされるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物(白色固体)3.91g(0.00513mol)を収率80.2%で得た。
得られた白色固体を、1H-NMR、19F-NMR、ESI-MSおよび元素分析で測定した結果を表1に示す。この結果から、得られた白色固体の構造と純度を確認した。
<実施例2>
ジヒドロキシステアリン酸にペルフルオロアルコールを反応させ、さらに無水コハク酸を反応させることにより、下記式(I-2)で表わされるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物を合成した。
1)フッ化炭素鎖導入反応
ナスフラスコにジヒドロキシステアリン酸16.2g(0.050mol)を入れ、溶媒のテトラヒドロフラン200mlに溶解させた。そこにN,N-ジイソプロピルカルボジイミド6.9g(0.055mol)、4-ジメチルアミノピリジン6.7g(0.055mol)を加え、さらに2−ペルフルオロヘキシルエタノール20g(0.055mol)を加えた。
窒素雰囲気下で室温で24h撹拌を続けた。反応液の沈殿物をろ別し、ろ液からTHFを留去し、得られた結晶に水を加えて水洗してから、ヘキサン、メタノールにより再結晶を3回行い、下記式(IV-2)で表わされる化合物(白色固体)8.66g(0.0133mol)を収率26.7%で得た。構造はNMRにより確認した。
2)ジカルボン酸化反応
式(IV-2)で表わされる化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)4.6g(0.00694mol)をナスフラスコに入れ、溶媒としてトルエンを加え、無水コハク酸4.16g(0.0416mol)を加えた。
さらにトリエチルアミン4.23g(0.0416mol)を滴下し、DMAP0.85g(0.00694mol)を加え、窒素雰囲気下で100℃で32h還流を行った。反応液に3N塩酸水溶液を加え、60〜70℃で反応液を1回洗浄した。
その後、2回水洗し、有機層を採取し、エバポレーターによって溶媒を除去した。得られた粘体をヘキサン/酢酸エチル混合溶媒にて再結晶し、式(I-2)で表わされるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物(白色固体)3.62g(0.00419mol)を収率60.4%で得た。
得られた白色固体を、1H-NMR、19F-NMR、ESI-MSおよび元素分析で測定した結果を表2に示す。この結果から、得られた白色固体の構造と純度を確認した。
<実施例3>
ジヒドロキシステアリン酸にペルフルオロアルコールを反応させ、さらに無水コハク酸を反応させることにより、下記式(I-3)で表わされるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物を合成した。
1)フッ化炭素鎖導入反応
ナスフラスコにジヒドロキシステアリン酸16.2g(0.049mol)を入れ、溶媒としてテトラヒドロフラン200mlに溶解させた。そこにN,N-ジイソプロピルカルボジイミド6.8g(0.0539mol)、4-ジメチルアミノピリジン6.6g(0.0539mol)を加え、さらに2-ペルフルオロオクチルエタノール25g(0.0539mol)を加えた。
窒素雰囲気下で室温で24h撹拌を続けた。反応液の沈殿物をろ別し、ろ液からTHFを留去し、得られた結晶にクロロホルムを加えて2回水洗してから、有機層に析出した結晶をろ別し、ろ液から溶媒を留去した後、得られた結晶を用いて再結晶をヘキサンで1回、メタノールで2回行い、下記式(IV-3)で表わされる化合物(白色固体)6.43g(0.00927mol)を収率17.2%で得た。構造はNMRにより確認した。
2)ジカルボン酸化反応
式(IV-3)で表わされる化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)5.0g(0.00656mol)をナスフラスコに入れ、溶媒としてトルエンを加え、無水コハク酸3.94g(0.0393mol)を加えた。
さらにトリエチルアミン4.0g(0.0393mol)を滴下し、DMAP 0.80g(0.00656mol)を加え、窒素雰囲気下で100℃で26h還流を行った。反応液に3N塩酸水溶液を加え、60〜70℃で反応液を1回洗浄した。
その後、2回水洗し、有機層を採取し、エバポレーターによって溶媒を除去して、式(I-3)で表わされるフッ化炭素鎖含有ジカルボン酸型化合物(白色固体)6.0g(0.00623mol)を収率95.0%で得た。
得られた白色固体を、1H-NMR、19F-NMR、ESI-MSおよび元素分析で測定した結果を表3に示す。この結果から、得られた白色固体の構造と純度を確認した。
<実施例4>
ジヒドロキシステアリン酸にペルフルオロアルコールを反応させ、さらに三酸化硫黄ピリジン錯体を反応させることにより、下記式(I-4)で表わされるフッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物を合成した。
1)フッ化炭素鎖導入反応
実施例2と同様の方法で式(IV-2)で表わされるフッ化炭素鎖含有化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)を合成した。
2)スルホン酸化反応
式(IV-2)で表わされる化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)3.0g(0.0045mol)をナスフラスコに入れ、溶媒としてクロロホルム150gを加え、三酸化硫黄ピリジン錯体14.5g(0.0906mol)を加えた。
窒素雰囲気下で室温で24h攪拌を行った。反応液をろ過してろ液から溶媒を留去し、固体を得た。
固体にブタノールを加えて溶解させた後、pHが4以上となるように1M水酸化ナトリウム水溶液を加え、その後徐々にpHが6.5〜7に調整した。約30分撹拌後、飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、30分撹拌後、分離するまで静置した。分離後、ブタノール層に無水硫酸ナトリウムを加え、乾燥後にろ別して、ろ液から溶媒を留去し、得られた固体をエタノール/アセトニトリルの混合溶媒にて再結晶し、式(I-4)で表わされるフッ化炭素鎖含有硫酸エステル型化合物(白色固体)0.75g(0.000865mol)を収率19.1%で得た。
得られた白色固体を、1H-NMR、19F-NMR、ESI-MSおよび元素分析で測定した結果を表4に示す。この結果から、得られた白色固体の構造と純度を確認した。
<実施例5>
ジヒドロキシステアリン酸にペルフルオロアルコールを反応させ、さらにエチレンオキシドを反応させることにより、下記式(I-5)で表わされるフッ化炭素鎖含有非イオン型化合物を合成した。
1)フッ化炭素鎖導入反応
実施例2と同様の方法で式(IV-2)で表わされるフッ化炭素鎖含有化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)を合成した。
2)エチレンオキシド鎖導入反応
1000mLオートクレーブに、式(IV-2)で表わされる化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)を30g(0.0453mol)、触媒として0.71gの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を投入し、系内を窒素置換した後、75〜80℃、減圧下で10分脱水を行った。脱水終了後、ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル1モルに対してエチレンオキシド25.8モル当量を反応温度75〜95℃、内圧0.2〜0.4MPaの条件下でオートクレーブ中に導入し、付加反応を行った。
規定量のエチレンオキシド導入後、圧力が0.1MPa以下になるまで熟成し、さらに、窒素で内圧0.1MPaを維持しながら約60分熟成を促進させ、脱触媒として、KW-500(協和化学工業製)を用いて、窒素雰囲気下で、70〜80℃で1時間攪拌後に、ろ過を行い、冷却後に反応物を得た。
式(I-5)で表わされるフッ化炭素鎖含有非イオン型化合物(白色固体)58.4g(0.0409mol)を収率90.3%で得た。
得られた白色固体を、1H-NMR、19F-NMRで測定した結果を表5に示す。この結果から、得られた白色固体の構造と純度を確認した。
得られた試料の構造確認を1H-NMRにより行った。その結果、3.2〜3.3ppm付近に観察されるメチンのプロトンと、3.2および3.5ppm付近に観察されるメチンのプロトンの積分比から、2つの水酸基にエチレンオキシド鎖が導入された対称型の構造と、片方の水酸基にのみエチレンオキシド鎖が導入された非対称型の構造が、56:44(モル%)の割合で含まれていることが確認され、3.7ppm付近のピークの積分比より求めた平均付加モル数は、22.78モルであった。
<実施例6>
ジヒドロキシステアリン酸にペルフルオロアルコールを反応させ、さらにBoc-L-アラニンを反応させることにより、下記式(I-6)で表わされるフッ化炭素鎖含有カチオン型化合物を合成した。
1)フッ化炭素鎖導入反応
実施例2と同様の方法で式(IV-2)で表わされるフッ化炭素鎖含有化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)を合成した。
2)カチオン官能基導入反応
式(IV-2)で表わされる化合物(ペルフルオロジヒドロキシ脂肪酸エステル)7.3g(0.011mol)をナスフラスコに入れ、溶媒としてジクロロメタン200gを加え、Boc-L-アラニン5.2g(0.0274mol)を加えた。
さらに1-エチル-3(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩5.3g(0.0274mol)、DMAP 0.30g(0.0016mol)ピリジン5.0g(0.0632mol)、を加え、窒素雰囲気下で室温で36h攪拌を行った。反応液を分液ロートに移し、2M塩酸水溶液200mlを用いて3回洗浄を行った。
その後、1M水酸化ナトリウム水溶液200mlで洗浄を1回行い、さらに水200mlで洗浄を1回行った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムをろ別後、溶媒をエバポレーターによって留去した。
得られた粘体に4N塩酸/酢酸エチル溶液100mlを加え、室温で4h攪拌し、反応液をエバポレーターにより濃縮して粘体を得た。これにさらにヘキサンを加えてエバポレーターによる濃縮を3回繰り返して固体を得た後、固体をアセトン/ヘキサン混合溶媒にて再結晶を行い、式(I-6)で表わされるフッ化炭素鎖含有カチオン型化合物(白色固体)6.16g(0.0070mol)を収率64.1%で得た。
得られた白色固体を1H-NMR、19F-NMR、ESI-MSおよび元素分析で測定した結果を表6に示す。この結果から、得られた白色固体の構造と純度を確認した。
この結果から、得られた(白色固体)の構造と純度を確認した。
<比較例1>
次のジカルボン酸型化合物を特許文献3に記載の方法に従って合成した。
<比較例2>
次のフッ化炭素系1鎖1親水基型化合物を用いた。
<比較例3>
次のハイブリッド系化合物を用いた。
以上の実施例および比較例の化合物について次の試験を行った。
なお、実施例1〜3、比較例1のジカルボン酸型化合物は、水溶媒中で2当量の水酸化ナトリウムと反応させたナトリウム塩化合物を用いた。
1.臨界ミセル濃度および臨界ミセル濃度における表面張力
表面張力計 Kruss tensiometer K100(Kruss社製)を用いて、白金プレートを用いたWilhelmy法により、25℃、各化合物濃度において表面張力の測定を行った。
実施例1〜3と比較例1の化合物は、pH9(水酸化ナトリウム水溶液で調製)10mM塩化ナトリウム添加系で、その他の実施例および比較例の化合物は、純水系で測定を行った。得られた結果から表面張力‐濃度プロットを作成し、臨界ミセル濃度(cmc)および臨界ミセル濃度における表面張力(γcmc)を求めた。なお、比較例2および比較例3は文献値を用いて比較した。
2.水への溶解性試験(クラフト点)
各化合物を1wt/v%に調製した水溶液を用いて、0℃の冷蔵庫に1週間保存し、結晶析出有無を確認した。なお、比較例2および比較例3は文献値を用いて比較した。
3.流動性試験
各化合物を10wt/v%に調製した水溶液を用いて、37℃にて24時間恒温槽に静置して目視で流動性を確認した。流動性がある場合を○、流動性が低くゲル化したり粘性が高い場合を×として流動性を確認した。なお、比較例3は文献値を用いて比較した。
臨界ミセル濃度(cmc)、表面張力(γcmc)、水への溶解性試験(クラフト点)および流動性試験の結果をあわせて表7に示す。
その結果、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、比較例と比べて臨界ミセル濃度及び表面張力が低いことが判明した。また、水への溶解性試験から結晶は析出せず、無色透明溶液であり、クラフト点が0℃以下であることが判明した。また高濃度で調製しても、粘性が低く流動性のある透明液体であることが判明した。
すなわち、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、界面活性剤として有用であり、長鎖疎水基を有するにも係らず、低温でも水への溶解性に優れ安定であり、高濃度においても白濁や粘性を生じず、工業的にも利用しやすいことが分かる。
分子構造が類似した界面活性剤の疎水基の炭化水素鎖とフッ化炭素鎖の違いによる性質・性能差を比較する場合、一般に炭素数がフッ化炭素鎖の1.5倍の炭化水素鎖とを比較すると性能が同等であると言われている。例えば、C6F13基を有する界面活性剤の溶液物性が近いと考えられる。実施例2の化合物と比較例1とを比較すると、実施例2がより臨界ミセル濃度及び表面張力が低いことから、ジェミニ型の構造にフッ化炭素鎖を導入した効果が現れていることがわかる。
4.皮膚刺激性試験
各化合物について、ヒト3次元培養表皮モデル「ラボサイト エピ・モデル」(J‐TEC社製)を用いて、皮膚刺激性試験を行った。試験は、供試物質濃度:1wt/v%水溶液、供試物質量:50μL、曝露時間:24時間、試験温度:37℃、試験条件:CO2インキュベーター(5〜10%)の条件で行った。曝露後、供試物質を取り除き、リン酸緩衝液500μLで3回洗浄後、MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5- diphenyltetrazolium bromide)培地500μLを分注し、CO2インキュベーターに入れ、3時間室温で静置し、生細胞中の還元酵素がMTTと反応した際の生成物が発する青紫色に染色されたヒト表皮組織を取り出して、イソプロピルアルコール(IPA)300μLと共にマイクロチューブに入れ、2時間室温で色素の抽出を行い、得られた各IPA抽出液の吸光度(570nm)をマイクロプレートリーダーで測定し、陰性対照として精製水で同様に処理したヒト表皮組織のIPA抽出液の吸光度を生細胞率100%として、吸光度の相対値から各物質の生細胞率を求めた。生細胞率が50%より大きい場合は刺激性無、50%以下の場合は刺激性有として評価した。結果を表8に示す。
その結果、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、いずれも高い生細胞率を示した。
すなわち、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、皮膚に対して低刺激性であることから、安全性が求められる人体との接触が避けられない用途に有用である。
5.分散力試験
各化合物の0.1wt/v%水溶液を調製し、PTFEパウダー(サンプラテック社製、品番「TFW-3000F」、3μm)を1wt/v%となるように添加して、超音波(アズワン社製、品番「Vs-F100」)を用いて1分間照射し、分散させた。攪拌後の溶液の直後の状態を目視で観察し、分散良好を○、やや分散するを△、分散しないを×として評価した。実施例3と比較例1、2の化合物に関しては、0.1 wt/v%IPA−水(=1:1v/v)溶液での分散の確認も行った。結果を表9に示す。
その結果、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は少量でかつ高い分散安定性を示した。また、低濃度でフッ化炭素樹脂の分散が可能で、従来のフッ化炭素系1鎖1親水基型界面活性剤に比べて使用量を低減できる。
すなわち、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、界面活性剤として有用であり、高い分散作用を有する。
6.フッ素油可溶化試験
各化合物の0.4 wt/v%水溶液を5gを調製し、テトラフルオロヘキサンを0.01g入れ超音波(アズワン社製、品番「Vs-F100」)を用いて1分間照射し、その後25℃のウォーターバスインキュベータ(ヤマト科学社製、品番「BT100」)を用いて6時間振とうし、水溶液の状態を目視で確認した。無色透明溶液を○、やや白濁を△、白濁を×として評価した。結果を表10に示す。
その結果、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は、水溶媒中でフッ素油を乳化または可溶化することができ、フッ素油との親和性が高いことが判明した。
すなわち、フッ化炭素鎖含有化合物は、界面活性剤として有用であり、高い乳化または可溶化作用を有し、例えば、フッ素系モノマーを水溶媒中で重合する際に乳化・可溶化剤として添加することは有用である。
7.媒体の表面張力低下試験(表面挙動)
各化合物を、液体媒体としてのイソプロピルアルコール(IPA)−水(=1:1v/v)に0.1w/v%の濃度で溶解し、接触角計DSA10-Mk2(Kruss社製)にて、PTFE樹脂板に対しての液体媒体の接触角を測定した。結果を表11に示す。
その結果、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物は液体の媒体に添加することにより、未添加及び比較例と比べて接触角が低下し、濡れ性は未添加および比較例に比べて向上した。換言すれば、媒体の表面張力が低下することが判明した。
すなわち、媒体の表面挙動を変える方法として、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物を液体の媒体に添加することは有用である。
8.固体表面改質試験(表面挙動)
各化合物の0.1%水溶液を調製し、縦1cm×横2cmに切り取った塩ビシートおよびPTFE樹脂板を60秒間浸漬した後、20℃、45%の条件下で24時間風乾し、接触角計DSA10-Mk2(Kruss社製)にて水の接触角を測定した。実施例3と比較例2の化合物に関しては、IPA−水(=1:1v/v)の接触角の測定も行った。結果を表12に示す。
その結果、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物を固体媒体である樹脂表面にディップコート(浸漬塗布)することにより、塩化ビニル樹脂およびフッ素樹脂表面の接触角を両方ともブランクよりも低下させることができた。換言すれば、固体媒体の表面を改質し、水と樹脂表面の界面張力が低下することが判明した。
すなわち、媒体の表面挙動を変える方法として、本発明のフッ化炭素鎖含有化合物を固体の媒体に添加することは有用である。