JP4656307B2 - 含フッ素有機ケイ素化合物及び含フッ素界面活性剤 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な含フッ素有機ケイ素化合物及び含フッ素界面活性剤に関する。
従来、含フッ素界面活性剤としては、電解フッ素化により得られるパーフルオロアルキルスルホニルフルオライド(C817SO2F)及びパーフルオロアルキルカルボニルフルオライド(C715COF)などを出発原料とし、これらにアミド基やエステル基を介してポリエーテル基を結合させたものが知られている。これらの含フッ素界面活性剤は、少量で著しい表面張力低下能を有することから、フォトレジストのレベリング剤などに用いられている。
しかし、このような反応では、界面活性剤として有用な炭素原子数が6以上のパーフルオロアルキル誘導体の収率が非常に低いという問題がある。更に、パーフルオロアルキル基を有するカルボン酸のエステル(C715COOR)は加水分解されやすく、不安定であるという問題もある。
一方、パーフルオロアルキルカルビノールにエチレンオキシドを反応させて得られるポリエーテル系の界面活性剤もよく知られているが、この反応は、エチレンオキシドの重合度の制御が困難であるため、満足すべき製造方法であるとは言い難い。
本発明者は、以前に表面張力を著しく下げることのできる含フッ素有機ケイ素化合物を提案した(特許文献1;特開平9−241381号公報)が、この化合物は、その製造方法が脱水素縮合反応であるなど製造上の安全性が十分満足できるとは言い難く、含フッ素基/親水基の比率を変えることも容易とは言い難い。
また、上記製造方法は、加水分解縮合反応を伴うので、特に低分子領域での分子量制御が困難である上に、含フッ素基/親水基比の分布が広くなってしまうために、溶媒溶解性の悪い成分の生成が避けられない。この不溶成分は、特にフォトレジストなどの精密電子材料向け用途では、パーティクルと呼ばれる製品不良の原因となるため好ましくない。
特開平9−241381号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高い表面張力低下能を有し、界面活性剤として有用な含フッ素有機ケイ素化合物及び含フッ素界面活性剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、例えば下記式(3)
Figure 0004656307

(Xは炭素数2〜10のアルキレン基及びフッ素化アルキレン基から選ばれる2価の連結基である。)
で示される有機ケイ素化合物に、末端に反応性不飽和炭化水素結合を有するパーフルオロポリエーテル基含有有機化合物と、下記一般式(4)
CH2=CH−(CH2p-2−O−Q−R (4)
(式中、pは3以上の整数、Qはポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールの単独重合鎖又はこれら両者の共重合鎖からなるポリエーテル基、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で示されるポリエーテル化合物とを、白金系触媒の存在下、ヒドロシリル化反応させることにより得られる下記一般式(1)で示される新規な含フッ素有機ケイ素化合物が、ヒドロシリル化反応により合成できることから低分子領域での分子量制御が容易なため、溶媒不溶性成分がほとんど副生せず、工業的に有利に製造でき、しかも、表面張力低下能が高く、とりわけ、下記一般式(1)で示され、フッ素含有率が7〜35質量%、ポリエーテル基含有率が15〜55質量%であり、更にHLB(親水基/疎水基バランス)が4.0〜10.0である含フッ素有機ケイ素化合物が、高い表面張力低下能を有し、優れた界面活性剤として有用であることを見出した。
Figure 0004656307

〔式中、Rfは炭素数5〜30で分子鎖中にエーテル結合を1個以上含むパーフルオロアルキル基、Qはポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールの単独重合鎖又はこれら両者の共重合鎖からなるポリエーテル基、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは上記の通り、Yは炭素数2〜10の、エーテル結合、カルボニル基、イミノ基又は−CONH−基が介在してもよいアルキレン基から選ばれる2価の連結基である。pは3以上の整数で、nは0<n<3の数である。〕
従って、本発明は、上記一般式(1)で示される含フッ素有機ケイ素化合物、及び上記一般式(1)で示され、フッ素含有率が7〜35質量%、ポリエーテル基含有率が15〜55質量%であり、更に好ましくはHLB(親水基/疎水基バランス)が4.0〜10.0である上記含フッ素有機ケイ素化合物からなる含フッ素界面活性剤を提供する。
本発明の含フッ素有機ケイ素化合物は、高い界面活性能を有し、かつ、分子量制御が容易で溶媒不溶性成分の生成も少なく製造できる。従って、この有機ケイ素化合物は界面活性剤として、特にフォトレジスト等の精密電子材料向け用途として有用である。
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明に示される含フッ素有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で示されるものである。
Figure 0004656307

〔式中、Rfは炭素数5〜30で分子鎖中にエーテル結合を1個以上含むパーフルオロアルキル基、Qはポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールの単独重合鎖又はこれら両者の共重合鎖からなるポリエーテル基、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは酸素原子を除く2価の連結基、Yは2価の連結基である。pは3以上の整数で、nは0<n<3の数である。〕
ここで、Rfは炭素数5〜30で分子鎖中にエーテル結合を1個以上含むパーフルオロアルキル基であり、好ましくは炭素数8〜20のものである。炭素数が上記値より多いと、界面活性剤として用いる際に、全体の分子量が大きくなってしまうため、溶媒に対する溶解性が低下してしまい好ましくない。また、炭素数が上記値より少ないと含フッ素基の特徴が十分に発現せず、高い界面活性を得ることができない。
Rfの具体例としては、下記の基などが挙げられる。
Rf;
−CF2CF2CF2OCF3
−CF2CF2CF2OCF2CF3
−CF2CF2CF2OCF2CF2CF2OCF3
Figure 0004656307
特に下記式(2)で示されるようなRf基が望ましい。
Figure 0004656307

(式中、sは1〜9、特に2〜5の整数である。)
本発明の有機ケイ素化合物は、上記Rf基がエーテル結合を1個以上含むパーフルオロアルキル基であり、同じフッ素変性率である場合、パーフルオロアルキル基変性のものよりも表面張力低下能が高いため、少量の添加で済むという利点がある。
式(1)中のQはポリエーテル基であり、このポリエーテル基は、エチレングリコールの単独重合鎖、プロピレングリコールの単独重合鎖、両者の共重合(ブロック重合、ランダム重合)鎖のいずれからなるものでもよく、この含フッ素有機ケイ素化合物の用途に応じて適宜選択される。
上記ポリエーテル基の重合度は、通常、疎水性の含フッ素有機基Rfとの均衡を考慮して決定されればよく、エチレングリコールを単独重合鎖として用いるときには、重合度は好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12である。また、エチレングリコールより親水性の低いプロピレングリコールを単独重合鎖として用いるときには、相対的に高重合度の重合鎖のものが好ましく、より好ましくは重合度が100〜200のものである。また、プロピレングリコールとエチレングリコールとの共重合鎖の場合には、プロピレングリコールのポリエーテル基全体に占める含有量が、通常、0〜50モル%の範囲、好ましくは2〜10モル%の範囲のものである。
Qの具体例としては、下記の基などが挙げられる。
Figure 0004656307
Rは、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基等が挙げられるが、Rとして好ましくは、水素原子、メチル基又はn−ブチル基である。
Xは酸素原子を除く2価の連結基で、具体的には炭素数2〜10のアルキレン基やフッ素化アルキレン基等が挙げられ、特にエチレン基や−CH2CH2612CH2CH2−などが製造する上で容易であることから好ましい。
Yは2価の連結基であり、炭素数2〜10のエーテル結合(−O−)が介在してもよく、カルボニル基やイミノ基、これらが結合した−CONH−基を介在してもよいアルキレン基等が挙げられ、具体例として下記の基が挙げられる。
−CH2CH2−、
−CH2CH2CH2−、
−CH2OCH2CH2CH2−、
Figure 0004656307
pは3以上の整数で、−(CH2p−は、具体的に炭素数3以上、好ましくは3〜6のアルキレン基、特にプロピレン基であることが、製造する上で容易なため好ましい。
nは0<n<3の数であり、nの値を変えることによって、本願発明の有機ケイ素化合物の特性をコントロールすることができる。
本発明の含フッ素有機ケイ素化合物は、上記したようにnの値を変えることで界面活性剤として用いるときにその特性をコントロールできるが、式(1)で示される含フッ素有機ケイ素化合物を界面活性剤として用いる場合は、フッ素含有率が7〜35質量%、特に9〜30質量%、かつ、ポリエーテル基含有率が15〜55質量%、特に30〜45質量%であるものが好ましく、更に該含フッ素有機ケイ素化合物のHLB(親水基/疎水基バランス)が4.0〜10.0、とりわけ5.5〜9.5であることが特に好ましい。フッ素含有率及びポリエーテル基含有率が上記範囲であり、更に好ましくはHLBが上記範囲であることで、表面張力低下能がより高くなり、溶媒への溶解性のバランスがより良好となるため、界面活性剤として極めて有効である。
フッ素含有率が上記値より小さかったり、HLBの値が上記値より小さいと、フッ素特有の撥水・撥油性が十分に発現しないため、界面活性剤としての機能が低下してしまう場合があり、フッ素含有率、HLBの値が上記値より大きいと、溶媒への溶解性が悪くなってしまうため、界面活性剤としての役割を果たせない場合がある。
なお、HLB値の算出には下記式
HLB=[{(エチレンオキシド鎖の分子量)/(界面活性剤の分子量)}×100]÷5
を用いた。
本発明の式(1)の含フッ素有機ケイ素化合物は、例えば下記式(3)
Figure 0004656307

(Xは前述と同じ)
で示される有機ケイ素化合物に、末端に反応性不飽和炭化水素結合を有する含フッ素有機化合物と、下記式(4)
CH2=CH−(CH2p-2−O−Q−R (4)
(式中、p、Q及びRは前記と同じ意味である。)
で示されるポリエーテル化合物とを、白金系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させることにより容易に製造することができる。
ここで、末端に反応性不飽和炭化水素結合を有する含フッ素有機化合物としては、上記式(1)中の−Y−Rfに対応する化合物としてY’−Rf(Y’は末端がCH2=CH基であり、これに水素原子が付加した場合、上記Yとなる基である。)で示される化合物が使用される。
上記ヒドロシリル化反応において、式(3)の有機ケイ素化合物と、末端に反応性不飽和炭化水素結合を有する含フッ素有機化合物と、式(4)のポリエーテル化合物との混合割合は、適宜調整でき、含フッ素有機ケイ素化合物を界面活性剤として使用する場合は、付加反応物が生成した時にフッ素含有率、ポリエーテル基含有率、更にはHLBの値が上記範囲になるような割合に調整することが好ましい。
また、白金系触媒としては、白金、白金化合物等のヒドロシリル化反応に通常用いられるものを触媒量で使用でき、ヒドロシリル化も通常の反応条件で行うことができ、室温〜140℃で0.5〜6時間反応させることが好ましい。
本発明の新規な含フッ素有機ケイ素化合物は、1つのケイ素原子に複数のフッ素変性基や親水基が結合しているため、フッ素変性基と親水基が1対1で結合した構造を有する一般の含フッ素系界面活性剤に比べて、少量使用でも表面張力を著しく下げることができ、含フッ素界面活性剤として有用である。本発明の含フッ素有機ケイ素化合物を含フッ素界面活性剤として使用する際には、一般式(1)で表され、フッ素含有率、ポリエーテル基含有率、更に好ましくはHLBの値が上記範囲である含フッ素有機ケイ素化合物の1種を単独で使用してもよく、適宜2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の式(1)の含フッ素有機ケイ素化合物は、界面活性剤として、種々の溶剤、特に有機溶剤に添加して用いることができる。この場合、有機溶剤としては、例えば乳酸エチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル等が挙げられる。なお、式(1)の含フッ素有機ケイ素化合物の濃度は、10ppm〜1.0質量%の範囲とすることが好適である。
本発明の式(1)で表される含フッ素有機ケイ素化合物からなる含フッ素界面活性剤は、種々の液体、特に有機溶剤に添加された際に湿潤性、浸透性、展着性、泡安定性、流動性、レベリング性、消泡性、乳化性、分散性、撥水撥油性を付与したり、向上させたりする能力に優れるため、以下の用途が期待される。即ち、用途としては、プラスチック及びゴム工業分野における重合用乳化剤、ラテックスの安定剤、ポリウレタンフォームなどの整泡剤、粉末フルオロカーボンポリマー凝集物の調製助剤、展着又は塗装むらを制御する発泡添加剤、成型時の金型離型性を向上させる離型剤、グリースに撥水撥油性を付与するための添加剤、ポリオレフィンの内部帯電防止剤、結露防止剤及び粘着防止剤;石油工業分野における油貯蔵装置からの重質油回収に際しての流動性の改善用添加剤、潤滑油の耐摩耗性向上のための添加剤、ガソリンの気化器中での氷結防止用添加剤、フィルム形成によるガソリン、ジェット燃料の蒸発抑制剤;繊維工業分野における溶融防止工程の改善のための流動性向上用添加剤、羊毛の炭化助剤、紡糸サイジング工程での合成糊剤PVA(ポリビニルアルコール)水溶液の表面張力低下用添加剤、マーセル化助剤、染色仕上げ助剤;染料及び顔料工業分野における顔料の着色性及び分散性向上用助剤、塗料欠陥是正のための流展性及びへこみ防止性付与剤、塗料中の溶剤蒸発速度の調整剤;金属及び機械工業分野における光沢処理浴の添加剤、金属エッチング用添加剤、はんだフラックス用添加剤、腐蝕抑制剤、めっきのミスト防止剤;製薬及び農薬分野における殺菌剤の浸透性改良剤、除草剤及び殺虫剤の湿潤性改良剤、乳化、分散及び展着性改良剤;家庭用品分野におけるクリーナ品への添加剤、艶出剤へのレベリング向上剤、化粧品用添加剤、帯電防止剤;写真及び印刷分野におけるインクの流動性及び流展性付与のための添加剤、写真乳剤のレベリング剤、フィルムの帯電防止剤、フィルム乾燥助長剤;精密電子材料分野での液晶組成物やフォトレジスト組成物などの消泡剤、レベリング剤、塗布性向上剤等を例示することができる。
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔合成例1〕
下記式(5)
Figure 0004656307

で示されるSiH基含有ポリシロキサン85.7gとトルエン105.6gとを還流冷却管と温度計を取り付けたフラスコに入れ、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.18g(Pt0.9mg相当)を加えて80℃に加熱した後、下記式(6)
Figure 0004656307

で示される反応性不飽和炭化水素結合を有する含フッ素有機化合物125.4g及び下記式(7)
CH2=CHCH2−O(CH2CH2O)3CH3 (7)
で示されるポリエーテル化合物147.1gを上記反応液に滴下した。滴下終了後、2時間加熱した後、IRスペクトルでSiH基の消失していることを確認した。加熱、減圧下で溶剤及び低沸点留分を除去し、淡褐色油状物質320.0gを得た。
この油状物質を1H−NMR及びIRスペクトルで分析した。その結果を示す。
1H−NMRスペクトル(TMS標準、ppm):
0−0.1(36H、Si−C 3)、0.1−0.2(16H、Si−C 2−)、
1.3−1.5(12H、−C 2−)、3.1(27H、C 3O−)、
3.2−3.5(72H、−C 2O−)
IRスペクトル:図1に示す。
以上の結果より、この油状物質は下記式で示される構造を有することがわかった。得られた含フッ素有機化合物のフッ素含有率、ポリエーテル基含有率、HLBは下記の通りであった。なお、HLBは、下記式により求めた。
HLB=[{(エチレンオキシド鎖の分子量)/(界面活性剤の分子量)}×100]÷5
Figure 0004656307
〔合成例2〕
合成例1の式(6)で示される含フッ素有機化合物の代わりに下記式(8)
Figure 0004656307

で示される含フッ素有機化合物197.8gを用い、式(7)で示されるポリエーテル化合物のかわりに下記式(9)
CH2=CHCH2−O(CH2CH2O)6.3CH3 (9)
を平均組成とするポリエーテル化合物253.0gを用いた他は実施例1と同様の方法で反応を行い、淡褐色油状物質513.8gを得た。この油状物質を合成例1と同様の方法で分析したところ、表1に示すフッ素含有率、ポリエーテル基含有率、HLBであった。
〔合成例3〕
式(6)で示される含フッ素有機化合物の量を83.6gとし、式(9)で示されるポリエーテル化合物を280.7g用いた他は合成例1と同様の方法で反応を行い、淡褐色油状物質404.1gを得た。この油状物質を合成例1と同様の方法で分析したところ、表1に示すフッ素含有率、ポリエーテル基含有率、HLBであった。
〔合成例4〕
式(6)で示される含フッ素有機化合物の量を41.8gとし、式(9)で示されるポリエーテル化合物を308.8g用いた他は合成例1と同様の方法で反応を行い、淡褐色油状物質329.1gを得た。この油状物質を合成例1と同様の方法で分析したところ、表1に示すフッ素含有率、ポリエーテル基含有率、HLBであった。
〔比較合成例5〕
下記式(10)
Figure 0004656307

で示されるSiH基含有ポリシロキサン280.0gとテトラヒドロフラン120.0gとを還流冷却管と温度計を取り付けたフラスコに入れ、内温が45℃になるまで加熱した。次に、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を10.0g投入した。反応は大量の水素ガスを発生しながら進行した。その後、IRスペクトルでSiH基(2130cm-1)の吸収がなくなったことを確認し、1mol/Lの塩酸11.0gを加えて反応を停止した。得られた反応物から溶媒を減圧下で溜去し、析出した塩をろ別した。このようにして、淡褐色油状物質251.3gを得た。この油状物質を合成例1と同様の方法で分析したところ、表1に示すフッ素含有率、ポリエーテル基含有率、HLBであった。
〔実施例1〜3〕
合成例1〜3で得られた含フッ素有機ケイ素化合物について、界面活性剤として用いた場合の評価を下記方法で行った。
溶解性の評価;
合成例1〜3で合成した化合物について、EL(乳酸エチル)、PGMEA(酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル)及びMMP(3−メトキシプロピオン酸メチル)の10質量%溶液を調製した。これらの溶液に関して、目視観察により溶液の透明性等を下記基準で評価、判定した。結果を表1に示した。
・溶解性評価基準
○…透明に溶解する。
△…わずかに白濁する。
×…白濁する。
溶液の表面張力;
合成例1〜3で合成した化合物について、MMP(3−メトキシプロピオン酸メチル)の0.1質量%溶液を調製した。これらの溶液に関して、25℃における表面張力をウィルヘルミー法により測定した。結果を表1に示した。
抑泡性の評価;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの0.5質量%溶液100.0gに、合成例1〜3で合成した化合物各0.01gを添加し、良く混合して調製液をつくった。この調製液20mLを内径20mm、長さ200mmの試験管に入れて1分間振盪した後、静置して1分後の起泡状態を下記基準で目視観察した。結果を表1に示した。
・抑泡性評価基準
○…ほとんど起泡しない(20mm未満)。
△…やや起泡する(20〜50mm)。
×…激しく起泡する(50mm超)。
レジスト塗布性の評価;
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンとo−ナフトキシジアジド−5−スルホニルクロライドとの縮合物27質量部と、クレゾ−ルとホルムアルデヒドとを縮合してなるノボラック樹脂100質量部を乳酸エチル(EL)400質量部に溶解して溶液を調製し、これに合成例1〜3で得られた化合物を溶液中の固形分に対して30ppmになるように添加し、0.1μmのPTFE製メンブレンフィルターで精密濾過してフォトレジスト組成物を調製した。このフォトレジスト組成物を直径300mmのシリコンウエハー上に、回転数3,600rpmでスピンコーティングした後、ホットプレート上にて60秒間加熱して溶媒を除去し、膜厚が1.2μmのレジスト膜を有するウエハーを得た。以上の様にして得られたレジスト膜を有するシリコンウエハーについて、塗布性の評価を行った。結果を表1に示した。
・レジスト塗布性評価基準
○…塗布むら、ハジキなどが発生しない。
△…わずかだが塗布むら、ハジキなどが発生する。
×…かなりの塗布むら、ハジキなどが発生する。
〔参考例、比較例1、2〕
合成例4、比較合成例5で合成した化合物及び表1に示された式(11)で示される化合物について実施例と同じ方法で評価を行った。結果を表1に示した。
Figure 0004656307

Figure 0004656307
合成例1で得られた有機ケイ素化合物のIRスペクトル測定結果である。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で示される含フッ素有機ケイ素化合物。
    Figure 0004656307

    〔式中、Rfは炭素数5〜30で分子鎖中にエーテル結合を1個以上含むパーフルオロアルキル基、Qはポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールの単独重合鎖又はこれら両者の共重合鎖からなるポリエーテル基、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは炭素数2〜10のアルキレン基及びフッ素化アルキレン基から選ばれる2価の連結基、Yは炭素数2〜10の、エーテル結合、カルボニル基、イミノ基又は−CONH−基が介在してもよいアルキレン基から選ばれる2価の連結基である。pは3以上の整数で、nは0<n<3の数である。〕
  2. Rfが、下記式(2)
    Figure 0004656307

    (式中、sは1〜9の整数である。)
    で示される基である請求項1記載の含フッ素有機ケイ素化合物。
  3. Yが、−CH 2 CH 2 −、−CH 2 CH 2 CH 2 −、−CH 2 OCH 2 CH 2 CH 2 −、−CONH−CH 2 CH 2 CH 2 −から選ばれる2価の連結基である請求項1又は2記載の含フッ素有機ケイ素化合物。
  4. 上記一般式(1)で示され、フッ素含有率が7〜35質量%、ポリエーテル基含有率が15〜55質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の含フッ素有機ケイ素化合物からなる含フッ素界面活性剤。
  5. 含フッ素有機ケイ素化合物のHLB(親水基/疎水基バランス)が4.0〜10.0である請求項記載の含フッ素界面活性剤。
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