JP5565677B2 - 新規ジカルボン酸型化合物 - Google Patents

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Description

本発明は新規ジカルボン酸型化合物に関する。
天然原料である脂肪酸を利用した固形石鹸等の1鎖1親水基型界面活性剤は、生分解性や安全性が高いため、世間一般に広く用いられている。カルボキシル基をもつ界面活性剤には様々な構造のものがあるが、水溶性がよく、洗浄力、泡立ちが良好で、皮膚や毛髪にマイルドなものや、少量で効果のあるものが望まれている。これらに対応するものとして、アシル化アミノ酸塩やエーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、アミドエーテル硫酸塩などが知られている。最近では、優れた界面活性を有し、界面活性剤の使用量を削減できる環境に優しい次世代の界面活性剤として2鎖2親水基型界面活性剤(ジェミニ型界面活性剤)に期待が寄せられ、その新規界面活性剤の様々な研究開発がなされている(非特許文献1)。
例えば特許文献1にはビス−アミドカルボン酸またはその塩が開示され、特許文献2には多鎖二極性基化合物が開示されている。また、親水基の種類が異なるもの、アルキル鎖の長さが非対称な構造を持つもの、親水基とアルキル鎖の長さがそれぞれ非対称な構造を持つ2鎖2親水基型界面活性剤も研究されている(非特許文献2)。
また、疎水鎖中にアミド結合を有するジェミニ型のカチオン性界面活性剤あるいは糖系界面活性剤も報告されている(非特許文献3、非特許文献4)。
また、疎水鎖中にエステル結合を有するジェミニ型界面活性剤も報告されている(非特許文献5)。
特開平10−175934号公報 特開2000−219654号公報
R.Zana,Journal of Colloid and Interface Science 248,203−220(2002) E.Alami and K.Holmberg,Advances in Colloid and Interface Science 100−102(2003)13−46 T.Tatsumi, W.Zhang, T.Kida, Y.Nakatsuji, D.Ono,T.Takeda, I,Ikeda Journal of Surfactants and Detergents 3, 167 (2000) K.A.Wilk, L.Syper, B.W.Domagalska, U.Komorek, I.Maliszewska, R.Gancarz, Journal of Surfactants and Detergents 5, 235 (2002) T.Tatsumi, W.Zhang, T.Kida, Y.Nakatsuji, D.Ono,T.Takeda, I,Ikeda Journal of Surfactants and Detergents 4, 279 (2001)
しかし、2鎖2親水基型界面活性剤は、その製造にあたって比較的高価な原材料の使用を余儀なくされることが多く、通常、1鎖1親水基型界面活性剤同士をつなぐ連結基(スペーサー)と呼ばれる部分をその界面活性剤の主鎖に結合するための反応を行う必要があるため、工程数が増えてしまい合成経路が複雑となる。さらに、疎水基2鎖の非対称な長さを有する2鎖2親水基型界面活性剤の合成には、それぞれ鎖長の違う疎水基を持つ1鎖1親水基型界面活性剤を2種類準備し、それらを結合させる必要があるため、より反応工程数が増えてしまうなどの問題がある。またその化合物構造に起因して一般に生分解性が劣ることから、その優れた性能にもかかわらず、未だ実用に至っているものはほとんどないというのが実情である。例えば、アミド結合を有する非特許文献3および非特許文献4のジェミニ型界面活性剤は、生分解性をまったく示さない、もしくは、生分解性を示すものの分解速度が遅いなどの欠点が挙げられる。
非特許文献5にあるように、生分解性を持たせるためジェミニ型界面活性剤の疎水鎖部分にエステル結合を有する構造が考えられているが、加水分解安定性に欠けることが懸念される。
本発明者等は、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、原料として工業的に入手し易く、連結基へと誘導する二重結合部位を有する不飽和脂肪酸または、そのアミドを用いることにより、容易に合成が可能で、生分解性を有し、加水分解安定性を有する界面活性剤としての利用が可能な新規ジカルボン酸型化合物を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、下記一般式(1)で示される新規ジカルボン酸型化合物である。
Figure 0005565677
但し、上記一般式(1)中、
n2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、
nは1〜22の整数を示し、
1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、
2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示し、
3は、水素原子または、メチル基を示し、
Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンを示すが、但し、前記R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。
本発明はまた、前記のジカルボン酸型化合物を含む、界面活性剤に関する。
本発明は更に、下記一般式(2´)
Figure 0005565677
(式中、
n2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、
nは1〜22の整数を示し、
1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、
2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示し、
3は、水素原子または、メチル基を示すが、但し、前記R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。)で表される化合物と無水コハク酸を反応させて下記一般式(1´)
Figure 0005565677
(式中、Cn2n+1、n、R1、R2及びR3は、一般式(2´)における定義と同様の意味を表わす。)で表される化合物を製造する段階と、続いて、場合により、一般式(1´)で表される化合物をアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物又はアミンと反応させて下記一般式(1)
Figure 0005565677
(式中、Cn2n+1、n、R1、R2及びR3は、一般式(2´)における定義と同様の意味を表わし、Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンを示す。)で表される化合物を製造する段階とを含む、ジカルボン酸型化合物の製造方法にも関する。
本発明のジカルボン酸型化合物は、工業的に入手し易い天然由来の不飽和脂肪酸または、そのアミドを原料に用いることで、当該原料の不飽和脂肪酸部分の二重結合部位が連結基となり、且つその二重結合部分を酸化して得られた水酸基にジカルボン酸又はその塩を容易に結合させることができるので、その製造において、反応工程数が少なく容易に合成することができるという利点を有する。また、本発明のジカルボン酸型化合物において、
親水性−疎水性バランスは、脂肪酸鎖の末端カルボン酸部分にアミド結合させる原料のアミンにおけるアルキル鎖の長さ(Cn2n+1)あるいは、不飽和脂肪酸を選択することにより、容易に調整することが可能であり、したがって本発明の化合物は界面活性剤として有用である。さらに、本発明の界面活性剤は、少量で乳化力に優れ、優れた界面活性能を有し、さらには、界面活性剤として使用するためには不可欠な条件である生分解性を持ち、産業利用上、用途に応じた使用を想定した場合、性能を損なわない程度に必要となる加水分解安定性にも優れている。これらの特徴を併せ持つ本発明のジカルボン酸型化合物は、産業利用の可能性、資源の節約、環境への低負荷という点から見ても非常に有用である。
図1は、実施例2で得られたジカルボン酸型化合物の1H−NMRスペクトルを示す。 図2は、実施例2で得られたジカルボン酸型化合物の13C−NMRスペクトルを示す。
本発明のジカルボン酸型化合物は、下記一般式(1)で示される。
Figure 0005565677
但し、上記一般式(1)中、Cn2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、nは1〜22の整数を示す。R1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、R2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示す。但し、R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。R3は、水素原子または、メチル基を示す。Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンを示す。
上記一般式(1)において、Cn2n+1で示される炭素原子数1〜22の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘニコシル基、n−ドコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられるが、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。
上記一般式(1)において、R1で示される炭素原子数1〜22のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−
デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基、n−トリデシレン基、n−テトラデシレン基、n−ペンタデシレン基、n−ヘキサデシレン基、n−ヘプタデシレン基、n−オクタデシレン基、n−ノナデシレン基、n−イコシレン基、n−ヘンイコシレン基、n−ドコシレン基等が挙げられるが、好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基、n−トリデシレン基、n−ペンタデシレン基が挙げられる。より好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基等が挙げられる。
上記一般式(1)において、R2で示される炭素原子数1〜22のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘニコシル基、n−ドコシル基等が挙げられるが、疎水性相互作用を確保するため、好ましくは、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ノナデシル基が挙げられる。
上記一般式(1)において、炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される−R1−CH−CH−R2部分は、例えば、−(CH22−CH−CH−(CH24CH3、−(CH27−CH−CH−CH3、−CH2−CH−CH−(CH27−CH3、−(CH22−CH−CH−(CH26CH3、−(CH23−CH−CH−(CH25CH3、−(CH27−CH−CH−(CH22CH3、−(CH22−CH−CH−(CH28CH3、−(CH23−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH23CH3、−(CH24−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH24CH3、−CH2−CH−CH−(CH211CH3、−(CH25−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH25CH3、−(CH25−CH−CH−(CH28CH3、−(CH26−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH26CH3、−CH2−CH−CH−(CH213CH3、−(CH22−CH−CH−(CH212CH3、−(CH24−CH−CH−(CH210CH3、−(CH25−CH−CH−(CH29CH3、−(CH26−CH−CH−(CH28CH3、−(CH27−CH−CH−(CH27CH3、−(CH29−CH−CH−(CH25CH3、−(CH27−CH−CH−(CH28CH3、−(CH29−CH−CH−(CH27CH3、−(CH210−CH−CH−(CH27CH3、−(CH211−CH−CH−(CH27CH3、−(CH28−CH−CH−(CH211CH3、−(CH212−CH−CH−(CH27CH3、−(CH213−CH−CH−(CH27CH3、−(CH23−CH−CH−(CH218CH3、−(CH215−CH−CH−(CH26CH3、−(CH215−CH−CH−(CH27CH3等が挙げられるが、この中でも、−CH2−CH−CH−(CH27−CH3、−(CH22−CH−CH−(CH26CH3、−(CH23−CH−CH−(CH25CH3、−(CH22−CH−CH−(CH28CH3、−(CH23−CH−CH−(CH27CH3、−(CH24−CH−CH−(CH27CH3、−CH2−CH−CH−(CH211CH3、−(CH25−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH25CH3、−(CH25−CH−CH−(CH28CH3、−(CH26−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH26CH3、−CH2−CH−CH−(CH213CH3、−(CH22−CH−CH−(CH212CH3、−(CH24−CH−CH−(CH210CH3、−(CH25−CH−CH−(CH29CH3、−(CH26−CH−CH−(CH28
CH3、−(CH27−CH−CH−(CH27CH3、−(CH29−CH−CH−(CH25CH3、−(CH27−CH−CH−(CH28CH3、−(CH29−CH−CH−(CH27CH3、−(CH210−CH−CH−(CH27CH3、−(CH211−CH−CH−(CH27CH3が好ましい。
本発明のジカルボン酸型化合物の原料である、下記一般式(2)
Figure 0005565677
で示される不飽和脂肪酸アルキルアミドは、炭素原子数10〜26の不飽和脂肪酸と炭素原子数1〜22の脂肪族アミンとのアミド化反応、あるいは炭素原子数10〜26の不飽和脂肪酸の低級アルキルエステルと、炭素原子数1〜22の脂肪族アミンとのエステルアミド交換反応によって得ることができる。
前記炭素原子数10〜26の不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素原子数10の4−デセン酸、炭素原子数11の9−ウンデセン酸、炭素原子数12のリンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸等の3−ドデセン酸、4−ドデセン酸、5−ドデセン酸、炭素原子数13のcis−9−トリデセン酸、炭素原子数14のツズ酸、ミリストレイン酸等の4−テトラデセン酸、5−テトラデセン酸、9−テトラデセン酸、炭素原子数15の6−ペンタデセン酸、cis−9−ペンタデセン酸、炭素原子数16のパルミトレイン酸等のtrans−3−ヘキサデセン酸、cis−7−ヘキサデセン酸、cis−9−ヘキサデセン酸、trans−9−ヘキサデセン酸、炭素原子数17のcis−7−ヘプタデセン酸、cis−8−ヘプタデセン酸、cis−9−ヘプタデセン酸、炭素原子数18のペトロセリン酸、ペトロセエライジン酸、オレイン酸、エライジン酸、パセニン酸等のtrans−3−オクタデセン酸、cis−3−オクタデセン酸、trans−4−オクタデセン酸、cis−6−オクタデセン酸、trans−6−オクタデセン酸、cis−7−オクタデセン酸、trans−7−オクタデセン酸、cis−8−オクタデセン酸、trans−8−オクタデセン酸、cis−9−オクタデセン酸、trans−9−オクタデセン酸、cis−11−オクタデセン酸、trans−11−オクタデセン酸、炭素原子数19のcis−9−ノナデセン酸、炭素原子数20のゴンドイン酸等のcis−11−エイコセン酸、trans−11−エイコセン酸、炭素原子数21の12−ヘニコセン酸、炭素原子数22のエルカ酸、ブラシン酸等のcis−13−ドコセン酸、trans−13−ドコセン酸、炭素原子数23の10−トリコセン酸、14−トリコセン酸、炭素原子数24のセラコレイン酸等のcis−15−テトラコセン酸、trans−15−テトラコセン酸、炭素原子数25のcis−15−ペンタコセン酸、cis−17−ペンタコセン酸、炭素原子数26のcis−17−ヘキサコセン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられるが、炭素原子数12以上22以下の不飽和脂肪酸が好ましく、さらに好ましくは、工業的な原料供給の面と原料が安価である点からオレイン酸やエルカ酸が好ましい。
また前記炭素原子数1〜22の脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、n−イコシルアミン、n−ヘニコシルアミン、n−ドコシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、イソペンチルアミン、ネオペンチルアミン、tert−ペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等の飽和脂肪族第1級アミン、ジメチル
アミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルペンチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−メチルヘプチルアミン、N−メチルオクチルアミン、N−メチルノニルアミン、N−メチルデシルアミン、N−メチルウンデシルアミン、N−メチルドデシルアミン、N−メチルトリデシルアミン、N−メチルテトラデシルアミン、N−メチルペンタデシルアミン、N−メチルヘキサデシルアミン、N−メチルヘプタデシルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、N−メチルノナデシルアミン、N−メチルイコシルアミン、N−メチルヘニコシルアミン、N−メチルドコシルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチル−sec−ブチルアミン、N−メチル−tert−ブチルアミン、N−メチルイソペンチルアミン、N−メチル−ネオペンチルアミン、N−メチル−tert−ペンチルアミン、N−メチル−2−エチルヘキシルアミン等の飽和脂肪族第2級アミンが挙げられるが、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ドコシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、N−メチルヘプチルアミン、N−メチルオクチルアミン、N−メチルノニルアミン、N−メチルデシルアミン、N−メチルドデシルアミン、N−メチルテトラデシルアミン、N−メチルヘキサデシルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、N−メチルドコシルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチル−2−エチルヘキシルアミンが好ましい。
上述の通り、一般式(1)におけるXは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンを示す。
上記アルカリ金属イオンとしては、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。
上記アルカリ土類金属イオンとしては、例えばカルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。
上記アンモニウムイオンとしては、例えば、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン由来のアンモニウムイオン等が挙げられる。
上記脂肪族アミンとしては、アンモニア、ヒドロキシアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
上記環状脂肪族アミンとしては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
上記芳香族アミンとしては、ピリジン、ピロール等が挙げられる。
上記アルカノールアミンとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
次に本発明のジカルボン酸型化合物の合成方法を述べる。一般には、不飽和脂肪酸と脂肪族アミンとの反応物である不飽和脂肪酸アルキルアミドを過酸化水素とギ酸等の有機酸とから得られる有機過酸化物と反応させて二重結合を酸化して、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの塩基を作用させ、水酸基を導入することにより、ジヒドロキシ脂肪酸アルキルアミドを合成する。あるいは、ジヒドロキシ脂肪酸アルキルアミドの別の合成方法としては、最初に不飽和脂肪酸に過酸化水素とギ酸等の有機酸とから得られる有機過酸化物を反応させて二重結合を酸化して、水酸化ナトリウムや炭酸カリウムなどの塩基を作用させ、水酸基を導入することにより得られる下記一般式(3)
Figure 0005565677
で示されるジヒドロキシ脂肪酸と、脂肪族アミンをジシクロヘキシルカルボンジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩、ジフェニルホスホリルアジド等の縮合剤、あるいはこれらの縮合剤とともに、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)や3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン等の添加剤により、縮合してアミド結合を形成して得ることも出来る。
次にこのジヒドロキシ脂肪酸アルキルアミドを無水コハク酸と反応させることにより、本発明のジカルボン酸型化合物(Xが水素イオン)を得ることができる。更にXをアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオン(例えば、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン等に由来するアンモニウムイオン)とする場合には、例えば、前記ジカルボン酸型化合物(Xが水素イオン)を水やエチルアルコールなどの溶媒中で、対応するアルカリ金属やアルカリ土類金属などの水酸化物やアミン(例えば、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン等のアミン)などと中和反応させることにより得ることができる。
ジカルボン酸型化合物(Xが水素イオン)の具体的な合成方法の1例として、cis−9−オクタデセン酸アルキルアミド(オレイン酸アルキルアミド)を出発物質として用いた場合の合成方法を説明する。
Figure 0005565677
上記合成フローに示すように、まずcis−9−オクタデセン酸アルキルアミド(オレイン酸アルキルアミド)を、過酸化水素及びギ酸を用いて酸化し、その後、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール中で炭酸カリウムを用いて処理することにより、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸アルキルアミドを合成する(第1工程)。次に、トルエン、ジクロロメタン、ヘキサン、ヘプタン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸アルキルアミドと、該アミドの2〜4倍mol当量の無水コハク酸と、該アミドの1.0〜3.0倍mol当量のトリエチルアミン(TEA)とを、20〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で、8〜24時間攪拌しながら反応させ、次にこの反応液を塩酸水溶液で洗浄し、その後水洗した後、冷却し、析出した結晶をろ別する、又は、溶媒を減圧留去させる、又は、スプレードライヤー装置を用
いて溶媒を乾燥させることで、目的物を得ることができる。また必要に応じてトルエン、酢酸エチル等の溶媒を用いた再結晶或いは、シリカゲルを固定相とし、クロロホルム・アセトン・メタノール混合溶媒を移動相とするカラムクロマトグラフィー等によって精製することにより、上記合成フローで示されるジカルボン酸化合物を得ることができる(第2工程)。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<測定機器>
[FT−IR]
FTIR−8900(島津製作所製)
[NMR]
AV400M(ブルカーバイオスピン社製)
[元素分析]
SeriesII CHNS/O Analyzer 2400(パーキンエルマー社製)
実施例1:式(4)で表される化合物の製造
Figure 0005565677
1)ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸ヘキシルアミド(50g、0.14mol)と88%ギ酸(143.0g、2.73mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(26.6g、0.27mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(18.9g、0.14mol)、エチルアルコール123mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、メチルエチルケトンを用いて再結晶化を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ヘキシルアミド(28.1g、0.07mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ヘキシルアミド(20g、0.049mol)、トリエチルアミン(12.3g、0.12mol)、及び無水コハク酸(12.1g、0.12mol)にトルエン200mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で12時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、50℃まで温度を下げ、2Mの塩酸73mLを加えて攪拌し、洗浄した後、146mLの水で3回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体を酢酸エチルを用いて再結晶を行い、白色固体20.5g(収率70.4%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(表題の式(4)で表される化合物)と純度を確認した。
FT−IR:1726.0cm-1(C=O(エステル),st),1714.5cm-1(C=O(カルボン酸),st),1647.0cm-1(C=O(アミド)st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.86−0.89(m,6H),1.24−1.62(m,34H),2.21(t,2H),2.59−2.72(m,8H),3.21−3.26(m,2H),4.99−5.06(m,2H),5.70(t、1H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.8,14.9,22.6,22.7,24.6,25.1,25.6,28.4−29.5,30.7,30.8,31.8,36.5,39.7,74.2,74.4,171.8,174.5,176.5,176.6
元素分析(C325719):
実測値(%) C:64.14%,H:9.87%,N:2.41
計算値(%) C:64.08%,H:9.58%,N:2.34
実施例2:式(5)で表される化合物の製造
Figure 0005565677
1)ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸オクチルアミド(50g、0.12mol)と88%ギ酸(128.2g、2.5mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(23.8g、0.25mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(17.0g、0.12mol)、エチルアルコール110mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、メチルエチルケトンを用いて再結晶化を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクチルアミド(24g、0.056mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクチルアミド(20g、0.046mol)、トリエチルアミン(11.6g、0.12mol)、及び無水コハク酸(11.5g、0.0.12mol)にトルエン200mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で12時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、50℃まで温度を下げ、2Mの塩酸69mLを加えて攪拌し、洗浄した後、138mLの水で3回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体を酢酸エチルを用いて再結晶化を行い、白色固体23.2g(収率80.1%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(表題の式(5)で表される化合物)と純度を確認した。
FT−IR:1726.2cm-1(C=O(エステル),st),1714.6cm-1(C=O(カルボン酸),st),1647.1cm-1(C=O(アミド)st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.86−0.89(m,6H),1.24−1.62(m,38H),2.21(t,2H),2.59−2.72(m,8H),3.
21−3.26(m,2H),4.99−5.06(m,2H),5.70(t、1H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.8,14.9,22.6,22.7,24.6,25.1,25.6,28.4−29.5,30.7,30.8,31.8,36.5,39.7,74.2,74.4,171.8,174.5,176.5,176.6
元素分析(C346119):
実測値(%) C:65.21%,H:10.10%,N:2.23
計算値(%) C:65.04%,H:9.79%,N:2.23
実施例3:式(6)で表される化合物の製造
Figure 0005565677
1)ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸ドデシルアミド(40g、0.082mol)と88%ギ酸(86.1g、1.65mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(16g、0.16mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(11.4g、0.082mol)、エチルアルコール74mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、メチルエチルケトンを用いて再結晶化を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ドデシルアミド(26.4g、0.055mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ドデシルアミド(20g、0.039mol)、トリエチルアミン(9.9g、0.098mol)、及び無水コハク酸(9.8g、0.098mol)にトルエン200mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で12時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、50℃まで温度を下げ、2Mの塩酸59mLを加えて攪拌し、洗浄した後、118mLの水で3回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体を酢酸エチルを用いて再結晶化を行い、白色固体22.3g(収率83%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(表題の式(6)で表される化合物)と純度を確認した。
FT−IR:1726.2cm-1(C=O(エステル),st),1712.2cm-1(C=O(カルボン酸),st),1646.6cm-1(C=O(アミド)st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.86−0.89(m,6H),1.24−1.62(m,46H),2.21(t,2H),2.59−2.72(m,8H),3.21−3.26(m,2H),4.99−5.06(m,2H),5.70(t、1H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.8,14.9,22.6,22.7,24.6,25.1,25.6,28.4−29.5,30.7,30.8,31.8,36.5,39.7,74.2,74.4,171.8,174.6,176.4,176.5
元素分析(C386919):
実測値(%) C:66.64%,H:10.41%,N:2.03
計算値(%) C:66.73%,H:10.17%,N:2.05
実施例4:式(7)で表される化合物の製造
Figure 0005565677
1)不飽和脂肪酸ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸(50g、0.1mol)と88%ギ酸(170.3g、3.25mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(33.2g、0.34mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。その後、水洗を行った後、3Mの水酸化ナトリウム水溶液250mLを入れ、80℃で4時間攪拌を行い、室温に冷却後、2MのHCl水溶液450mLを入れて室温で2時間攪拌を行った。ろ過後、メチルエチルケトンを用いて再結晶を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸(43g、0.14mol)を得た。
2)アミド化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸(40g、0.126モル)とDIPC(16.7g、0.13モル)、HOBt(20.1g、0.13モル)、テトラヒドロフラン400mLをいれ、60℃で1時間反応後、N−メチルドデシルアミン(26.5g、0.13モル)をテトラヒドロフラン100ミリリットルで溶解させた溶液を滴下し、還流下で3時間反応を行った。反応液を室温まで冷却し、ろ過した結晶を、エタノールで再結晶を行い、白色結晶(45.1g、0.091モル)を得た。
3)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸N−メチルドデシルアミド(40g、0.079mol)、トリエチルアミン(20g、0.20mol)、及び無水コハク酸(19.8g、0.20mol)にトルエン400mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で12時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、50℃まで温度を下げ、2Mの塩酸119mLを加えて攪拌し、洗浄した後、238mLの水で3回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体をクロロホルム−アセトン−メタノールを溶離液に用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体39.4g(収率71.3%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(表題の式(7)で表される化合物)と純度を確認した。
FT−IR:1726.2cm-1(C=O(エステル),st),1712.2cm-1(C=O(カルボン酸),st),1641.2cm-1(C=O(アミド)st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.86−0.89(m,6H),1.24−1.62(m,46H),2.21(t,2H),2.59−2.72(m,8H),2.92(s、3H),3.21−3.26(m,2H),4.99−5.06(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.8,14.9,22.6,22.7,24.6,25.1,25.6,28.4−29.5,30.7,30.8,31
.8,32.9,36.5,39.7,74.2,74.4,171.8,174.6,176.4,176.5
元素分析(C397119):
実測値(%) C:67.15%,H:10.28%,N:2.01
計算値(%) C:67.11%,H:10.25%,N:2.01
実施例5:式(8)で表される化合物の製造
Figure 0005565677
1)ジヒドロキシ化反応
cis−13−ドコセン酸ヘキシルアミド(50g、0.119mol)と88%ギ酸(123.9g、2.4mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(23.0g、0.24mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(16.4g、0.119mol)、エチルアルコール107mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、メチルエチルケトンを用いて再結晶化を行い、13,14−ジヒドロキシドコサン酸ヘキシルアミド(40.2g、0.088mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
13,14−ジヒドロキシドコサン酸ヘキシルアミド(40g、0.088mol)、トリエチルアミン(22.2g、0.22mol)、及び無水コハク酸(22.0g、0.22mol)にトルエン400mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で12時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、50℃まで温度を下げ、2Mの塩酸132mLを加えて攪拌し、洗浄した後、263mLの水で3回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を冷却し、吸引ろ過後、得られた固体を酢酸エチルを用いて再結晶化を行い、白色固体47.6g(収率82.7%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(表題の式(8)で表される化合物)と純度を確認した。
FT−IR:1727.1cm-1(C=O(エステル),st),1713.4cm-1(C=O(カルボン酸),st),1645.6cm-1(C=O(アミド)st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.86−0.91(m,6H),1.24−1.62(m,42H),2.21(t,2H),2.59−2.72(m,8H),3.21−3.26(m,2H),4.99−5.06(m,2H),5.70(t、1H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.8,14.9,22.6,22.7,24.6,25.1,25.6,28.4−29.5,30.7,30.8,31.8,36.5,39.7,74.2,74.4,171.8,174.6,176.5,176.6
元素分析(C366519):
実測値(%) C:65.88%,H:10.11%,N:2.13
計算値(%) C:65.92%,H:9.99%,N:2.14
実施例6:式(9)で表される化合物の製造
Figure 0005565677
1)ジヒドロキシ化反応
cis−4−ドデセン酸オクタデシルアミド(20g、0.045mol)と88%ギ酸(46.5g、0.89mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(8.6g、0.089mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(6.2g、0.045mol)、エチルアルコール40mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、メチルエチルケトンを用いて再結晶化を行い、4,5−ジヒドロキシドデカン酸オクタデシルアミド(15.3g、0.032mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
4,5−ジヒドロキシドデカン酸オクタデシルアミド(15g、0.031mol)、トリエチルアミン(7.8g、0.078mol)、及び無水コハク酸(7.8g、0.078mol)にトルエン150mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で18時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、50℃まで温度を下げ、2Mの塩酸47mLを加えて攪拌し、洗浄した後、93mLの水で3回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体を酢酸エチルを用いて再結晶化を行い、白色固体14.9g(収率70.3%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(表題の式(9)で表される化合物)と純度を確認した。
FT−IR:1724.5cm-1(C=O(エステル),st),1710.4cm-1(C=O(カルボン酸),st),1649.2cm-1(C=O(アミド)st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.86−0.89(m,6H),1.24−1.64(m,44H),1.81−1.84(m,2H),2.22(t,2H),2.60−2.73(m,8H),3.20−3.25(m,2H),5.00−5.08(m,2H),5.68(t、1H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.8,14.9,22.6,22.7,24.6,25.1,25.6,28.4−29.5,30.7,30.8,31.8,36.5,39.7,73.2,73.6,171.8,174.6,176.4,176.5
元素分析(C386919):
実測値(%) C:66.85%,H:10.35%,N:2.07
計算値(%) C:66.73%,H:10.17%,N:2.05
実施例7
実施例1〜6で得られたジカルボン酸型化合物を水溶媒中で水酸化ナトリウムと反応させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)について、表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、白金プレートを用いたWilhelmy法により、25℃、pH
10(水酸化ナトリウム水溶液で調整)で、各界面活性剤濃度において表面張力の測定を行い、表面張力―濃度プロットを作成し、臨界ミセル濃度(cmc)及び臨界ミセル濃度における表面張力(γcmc)を求めた。その結果を表1に示す。なお、比較例1として1鎖1親水基型界面活性剤であるドデカン酸ナトリウム(ラウリン酸ナトリウム)を用いた。
Figure 0005565677
2鎖2親水基型界面活性剤は、1鎖1親水基型界面活性剤に比べて、臨界ミセル濃度(cmc)及び臨界ミセル濃度における表面張力(γcmc)が低いことが一般的に知られている。
そこで、本発明のジカルボン酸型化合物についても、従来の2鎖2親水基型界面活性剤同様、優れた界面活性能を有するか検討した。
表1の結果より、実施例1〜6で得られたジカルボン酸化合物は、比較例1に比べて、約1/3〜1/2000程度の低い臨界ミセル濃度(cmc)を示した。また、臨界ミセル濃度における表面張力(γcmc)についても、比較例1に比べて低く、高い表面張力低下能を示した。
以上の結果から、本発明のジカルボン酸型化合物を洗浄剤や乳化剤として使用する際に、従来の1鎖1親水基型界面活性剤に比べて、少量の添加量で済むことがわかる。
実施例8 乳化力試験
実施例1〜6で得られたジカルボン酸型化合物をエタノール溶媒中でトリエタノールアミンと反応させたトリエタノールアミン塩化合物と、比較例1、2として1鎖1親水基型界面活性剤であるドデカン酸トリエタノールアミン塩(ラウリン酸トリエタノールアミン塩)を用いて、0.1wt%水溶液に調製した各トリエタノールアミン塩化合物水溶液50mL(比較例2のみ1wt%水溶液)をトルエン25mLとともに、40℃にてホモジナイザーにて10000rpmで3分攪拌を行い、その後、50mLのメスシリンダーに移して室温で静置し、分離した水分量を目視で直後と6時間後に計測し、乳化力を評価した。分離した水分量が10%未満であれば○、10%以上〜20%未満であれば△、20%以上であれば×とした。
Figure 0005565677
表2の結果より、実施例1〜6で得られたジカルボン酸化合物のトリエタノールアミン塩は、比較例1に比べて、高い乳化力を示し、界面活性剤濃度の高い比較例2と比べても同等であった。
以上の結果から、本発明のジカルボン酸型化合物を乳化剤として使用する際に、従来の1鎖1親水基型界面活性剤に比べて、少量の添加量で乳化力が高いことがわかる。
実施例9
実施例1〜6で得られたジカルボン酸化合物の生分解性試験を、圧力センサー式BOD測定器(アクタック社製)を用いて、OECDテストガイドライン301C修正MITI試験に基づき、供試物質濃度:100mg/L、活性汚泥濃度:40mg/L、試験温度:25℃、試験期間:28日間の条件で行った。その結果を表3に示す。実施例1〜6で得られたジカルボン酸型は、いずれも60%以上の生分解性を示し、良好な生分解性を示した。
Figure 0005565677
実施例10 加水分解安定性試験
実施例1〜6で得られたジカルボン酸型化合物を重水溶媒中で重水酸化ナトリウム水溶液と反応させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)を用いて、pH10(重水酸化ナトリウム水溶液で調整)に調製した0.1wt%水溶液の1H−NMRを、直後、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヶ月後(室温で保存)に測定した。3.2ppm付近のアミド結合近傍のNHの隣のメチレンのプロトンの積分比と、5.0ppm付近のエステル結合近傍のメ
チンのプロトンの積分比から構造が維持された場合を構造維持率100%として、各化合物の構造維持率を見積もった。その結果を表4に示す。実施例1〜6で得られたジカルボン酸型は、いずれも90%以上の構造維持率を示し、アルカリ領域での良好な加水分解安定性を示した。
Figure 0005565677
本発明のジカルボン酸型化合物は、工業的に入手し易い天然由来の脂肪酸などを出発原料としており、容易に合成することができるので、産業上の利用可能性は非常に大きい。
本発明の界面活性剤は頭髪用洗浄剤、皮膚洗浄剤、台所用洗剤、機械金属用洗浄剤等の種々の用途に利用可能であるが、少量で乳化力等が良好であり、優れた界面活性能を有し、かつ加水分解安定性や生分解性にも優れていることから、シャンプー、リンス、ボディーシャンプー等の香粧品用基剤として好適である。また本発明の界面活性剤は製紙工業分野における紙力の増強剤、紙質改善剤、サイズ剤、各種充填材、顔料、染料などの歩留まり向上剤として、接着工業分野における接着促進剤、繊維工業分野における各種繊維の染色性改善剤、防縮剤、防燃加工処理剤、帯電防止処理剤などに、さらに化粧品組成物、洗浄剤組成物、潤滑油添加剤、防錆剤、防曇剤等に用いることができる。また本発明の界面活性剤を香粧品に用いる場合、必要に応じて従来から香粧品に用いられている他の添加剤を本発明の界面活性剤の特性を損なわない範囲において適宜添加することができる。併用可能な添加剤としては、例えば抗菌剤、増粘剤、香料、コンディショニング剤、金属イオン封鎖剤、パール化剤、起泡剤、滑り性向上剤、平滑剤、整髪剤、保湿剤、分散安定剤、ふけとり剤、殺菌剤、清涼刺激緩和剤、防腐剤、外観調整剤等が挙げられる。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で示されるジカルボン酸型化合物。
    Figure 0005565677
    但し、上記一般式(1)中、
    n2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、
    nは6〜18の整数を示し、
    1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、
    2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示し、
    3は、水素原子または、メチル基を示し、
    Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンを示すが、但し、前記R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。
  2. 1 が炭素原子数2〜11のアルキレン基を示し及びR 2 が炭素原子数7又は8のアルキル基を示す、請求項1記載のジカルボン酸型化合物。
  3. 請求項1又は2に記載のジカルボン酸型化合物を含む、界面活性剤。
  4. 下記一般式(2´)
    Figure 0005565677
    (式中、
    n2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、
    nは6〜18の整数を示し、
    1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、
    2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示し、
    3は、水素原子または、メチル基を示すが、但し、前記R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。)で表される化合物と無水コハク酸を反応させて下記一般式(1´)
    Figure 0005565677
    (式中、Cn2n+1、n、R1、R2及びR3は、一般式(2´)における定義と同様の意味を表わす。)で表される化合物を製造する段階と、続いて、場合により、一般式(1´)で表される化合物をアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物又はアミンと反応させる段階を含む、下記一般式(1)
    Figure 0005565677
    (式中、Cn2n+1、n、R1、R2及びR3は、一般式(2´)における定義と同様の意味を表わし、Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンを示す。)で表されるジカルボン酸型化合物の製造方法。
  5. 1 が炭素原子数2〜11のアルキレン基を示し及びR 2 が炭素原子数7又は8のアルキル基を示す、請求項4記載のジカルボン酸型化合物の製造方法。
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