まず、受圧板を用いた地盤斜面の安定化に上述の間詰め用袋体を用いる場合、受圧板の応力を均等にするためには、上述の間詰め用袋体は、受圧板と凹凸を有する地盤斜面との間に生じる間隙を十分に埋める必要がある。そのためには、間詰め用袋体内に充填材を注入充填し、すぼんでいた間詰め用袋体をその間隙の形状に沿うように膨らませる必要がある。しかし、充填材の注入充填時において、間詰め用袋体の受圧板と地盤斜面とに接した面は外部から観察することができない。そこで、従来は、観察できる位置にある間詰め用袋体の表面の張りなどの感触を確認し、充填材が間詰め用袋体内にほぼ満注充填されたと推定されたところで受圧板と地盤斜面の間の間隙が埋められたものと経験的に判断していた。しかし、この方法では満注充填された状況を視覚的に把握することは困難であり、充填材の注入充填量が間詰め用袋体の充填許容量を超え、突然間詰め用袋体が破裂してしまうおそれがあった。とはいえ、間詰め用袋体の破裂をおそれるあまり充填材の注入充填量が不足すると間詰め用袋体の本質的機能は発揮されず、また、充填材の注入充填速度を遅くすると作業に多くの時間を要してしまう。
また、擁壁間の間隙を埋める目的で上述の間詰め用袋体を用いた場合にも、同様に充填材が間詰め用袋体内に満注充填された状況を視覚的に判断することは困難である。そのため、充填材の注入充填時における突然の間詰め用袋体の破裂、充填材の不足による間詰め不良、及び充填材の注入充填速度が小さいことによる作業の遅延という課題が生じていた。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、袋体の突然の破裂を防止しつつ必要量の充填材を注入可能であり、且つ、その内部への充填材の注入充填時間を短縮させることができる間詰め用袋体及びその間詰め用袋体を用いた間詰め方法を提供することにある。
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、対向して近接配置された二つの物体間の間隙を埋めるために用いられ、通気性を有すると共に、経時固化性を有するスラリー状の充填材を内部に充填、保持可能な間詰め用袋体において、構成素材は不織布であり、少なくとも一部に、前記充填材の注入による内圧上昇に伴って開度が増大し、前記充填材の滲み出しを可能とする滲出部を有し、該滲出部は、前記不織布の少なくとも一部に他の部分より厚さが減少した薄肉部を設けることで構成したことを特徴とする。
この構成によれば、対向して近接配置された二つの物体間に本発明に係る間詰め用袋体が配置された状態で、内部に充填材を充填、保持可能であるので、充填材が注入充填されることによりすぼんでいた袋体が物体間の間隙の形状に沿って膨らみ、その間隙を埋めると共に袋体内の空気は充填材に置換される。
そして、充填材の注入量が間詰め用袋体の充填許容量に近づくと、袋体の内圧が上昇し、開度が上昇した滲出部から充填材が滲み出し始める。作業者は、この滲み出しを見ることにより間詰め用袋体の内圧上昇を視覚的に把握することができ、把握された内圧上昇の値に応じて注入充填速度を所定時間に限り維持するか、低下させるか、又はゼロとし、袋体の突然の破裂を防止することができる。同時に、この状態においては間詰め用袋体内に充填材がほぼ満注充填されているので、近接配置された二つの物体間の間隙も十分に埋められていることとなる。更に、充填材の注入充填量が袋体の充填許容量に近づく前までは、注入充填速度の低下調節を意識する必要がないので、袋体内部への充填材の注入充填速度も全体として向上させ、その注入充填時間を短縮させることが可能である。
さらに、不織布は多数の微小繊維を接合させることにより構成された多孔性の布体であるという周知の形態を有するので、この不織布の有する多孔性という特質を利用し、構成素材中に薄肉部を設けるという簡易な加工のみにより袋体の内圧上昇に伴って開度が増大し、充填材の滲み出しを可能とする滲出部を形成することが可能である。
請求項2に記載の発明は、対向して近接配置された二つの物体間の間隙を埋めるために用いられ、通気性を有すると共に、経時固化性を有するスラリー状の充填材を内部に充填、保持可能な間詰め用袋体において、少なくとも一部に、前記充填材の注入による内圧上昇に伴って開度が増大し、前記充填材の滲み出しを可能とする滲出部を有し、該滲出部が、袋体の構成素材に取付けられた弁構造により構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、対向して近接配置された二つの物体間に本発明に係る間詰め用袋体が配置された状態で、内部に充填材を充填、保持可能であるので、充填材が注入充填されることによりすぼんでいた袋体が物体間の間隙の形状に沿って膨らみ、その間隙を埋めると共に袋体内の空気は充填材に置換される。
そして、充填材の注入量が間詰め用袋体の充填許容量に近づくと、袋体の内圧が上昇し、開度が上昇した滲出部から充填材が滲み出し始める。作業者は、この滲み出しを見ることにより間詰め用袋体の内圧上昇を視覚的に把握することができ、把握された内圧上昇の値に応じて注入充填速度を所定時間に限り維持するか、低下させるか、又はゼロとし、袋体の突然の破裂を防止することができる。同時に、この状態においては間詰め用袋体内に充填材がほぼ満注充填されているので、近接配置された二つの物体間の間隙も十分に埋められていることとなる。更に、充填材の注入充填量が袋体の充填許容量に近づく前までは、注入充填速度の低下調節を意識する必要がないので、袋体内部への充填材の注入充填速度も全体として向上させ、その注入充填時間を短縮させることが可能である。
さらに、間詰め用袋体の構成素材自体に開度の調節構造を設ける必要がなくなるので、構成素材が限定されずその素材の選択の自由度が向上する。また、別途取付けられた弁構造は間詰め用袋体とは独立した構造物であるので、充填材の滲み出しの位置がわかりやすく、滲み出しの観察を行いやすい。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の間詰め用袋体において、前記滲出部は、複数設けられており、該複数の滲出部における前記充填材が滲み出しを開始する内圧値は、少なくとも二種以上設定されたことを特徴とする。
この構成によれば、間詰め用袋体内に充填材を注入充填した時に、その袋体の内圧が上昇するにつれて充填材の滲み出しが生じる滲出部の数が、段階的に増加することになる。よって、作業者は、間詰め用袋体の内圧上昇の程度を段階的に視覚的に把握できるようになり、充填剤のより適切な注入速度調節が行えるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の間詰め用袋体において、少なくとも前記滲出部の色を、前記充填材の色とは異なる色相、明度又は彩度とすることを特徴とする。
この構成によれば、滲出部の色が、充填材の色とは異なる色相、明度又は彩度となっているので、この滲出部と充填材の色の相異により滲み出しの視認性がさらに向上している。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の間詰め用袋体において、袋体内に装填される装填材を有し、該装填材は、前記充填材を含浸保持可能な隙間を有し、前記袋体を常態において所定の膨化状態に維持し、且つ圧縮変形可能であることを特徴とする。
この構成によれば、装填材は常態においては間詰め用袋体をある程度膨らんだ状態で維持する。そして、圧縮変形可能であるので、二つの物体間の間隙の形状に追従して圧縮変形し、間詰め用袋体をその間隙に追従させた形状に維持することができる。よって、地盤斜面と受圧板の間隙の間詰め効果をより高めることができる。
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の間詰め用袋体において、前記近接配置される二つの物体における少なくとも一方の物体の面と当接する袋体の外側面に、袋体を補強する補強層が取り付けられたことを特徴とする。
この構成によれば、近接配置される二つの物体における少なくとも一方の面に鋭利な凹凸形状があった場合にも、外側面に取り付けられた補強層により間詰め用袋体が補強されているので、袋体が破損して充填材が流出するおそれが低減する。
請求項7に係る発明は、対向して近接配置された二つの物体間に、請求項1〜6に記載の間詰め用袋体を配置する間詰め用袋体配置工程と、前記間詰め用袋体に経時固化性を有するスラリー状の充填剤を注入充填する充填剤注入工程と、を有する前記間詰め用袋体を用いた間詰め方法において、前記充填材注入工程は、前記充填材の滲み出し状況を観察しつつ注入速度の調整を行う注入速度調整動作を含むことを特徴とする。
この構成によれば、充填材注入工程において、間詰め用袋体内への充填材の注入充填量が袋体の充填許容量に近づくと、袋体の内圧が上昇し、開度が上昇した滲出部から充填材が滲み出し始める。この時、作業者は、常に滲出部からの滲み出し状況を観察することで、充填材の注入充填によって生じる間詰め用袋体の内圧変化を視覚的に把握することができる。そして、この内圧変化、すなわち、充填材の滲出状況を観察しながら、充填材の滲み出しが見られない時には注入充填速度を大きくする調整動作を行い袋体内への注入充填時間を短縮することができる。また、充填材の滲み出しが観察された時には充填材の注入充填速度を所定時間に限り維持するか、低下させるか、又はゼロとし、間詰め用袋体の突然の破裂を防止することができる。この段階において、袋体内に充填材はほぼ満注充填されているので、必要量の充填材が注入充填されることとなる。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の間詰め方法において、前記二つの物体の一方の物体は地盤斜面であり、他方の物体は受圧板であり、前記間詰め用袋体配置工程は、前記間詰め用袋体を前記地盤斜面上に設置する間詰め用袋体設置工程と、該間詰め用袋体上に前記受圧板を設置する受圧板設置工程と、からなることを特徴とする。
この構成によれば、地盤斜面上へ間詰め用袋体を設置し、その上から受圧板を設置した後の充填剤注入工程において、作業者は、常に滲出部からの充填材の滲み出し状況を観察することで、充填材の注入充填によって生じる間詰め用袋体の内圧変化を視覚的に把握することができる。よって、受圧板と地盤斜面に挟まれ、全体の外観から膨らみの状態を把握することが困難な、受圧板を用いた地盤斜面の安定化に採用される間詰め用袋体を用いた間詰め方法にとって特に好適な方法となっている。
以上説明したように、本発明に係る間詰め用袋体によれば、間詰め用袋体への充填材の充填時において、間詰め用袋体の突然の破裂を防止しつつ必要量の充填材を注入充填することが可能になると共に、その充填時間を短縮することができる。したがって、間詰め用袋体の損失を低減でき、間詰め用袋体を用いた間詰め作業全体にかかる時間を短縮することができる。
また、本発明に係る間詰め方法によると、作業者は、充填剤注入工程において、充填材の注入による生じる間詰め用袋体の内圧変化を視覚的に把握しながら充填材の注入速度を大きくし、又は小さくする調整動作を行うことができる。これにより、間詰め用袋体の突然の破裂を恐れず必要量の充填材を注入充填することができる。また、大きな注入速度で迅速に充填材を間詰め用袋体内に注入することができる。したがって、間詰め用袋体の損失を低減できると共に、間詰め用袋体を用いた間詰め作業全体にかかる時間を短縮することができる。
次に、本発明の実施の形態について図に基いて詳細に説明する。
(第1実施の形態)対向して近接配置された二つの物体間の間隙を埋めるために用いられる本発明の間詰め用袋体及びその間詰め用袋体を用いた間詰め方法の第1実施の形態を、地盤斜面と受圧板の間に設置され、両者間の間隙を埋めることにより受圧板の応力を均等にする間詰め用袋体を例に図1乃至7を参照して説明する。
まず、本実施の形態における間詰め用袋体10の構成を説明する。図1(A)は、本発明の第1実施の形態に係る間詰め用袋体10の概容を示す斜視図である。図示のように、間詰め用袋体10は地盤斜面に設置される受圧板の形状に対応する形状、例えば、平面視略六角形の袋体として構成されている。間詰め用袋体10の略中央には、円形の孔部12が設けられている。この孔部12には、地盤斜面に受圧板を据え付ける棒状のアンカーが挿通する。間詰め用袋体10の内部には、後述する装填材14が装填されている。間詰め用袋体10の大きさは、1辺約1.5m四方の正方形内に収まるぐらいの大きさであることが好適である。1辺約1.5m四方の正方形に収まらない大きさの受圧板を用いる場合は、複数の間詰め用袋体10を組み合わせて受圧板の形状となるように配置して用いることができる。その場合、前述のアンカーは組み合わせた複数の間詰め用袋体10の隙間を通すことができるので、円形の孔部12を設ける必要はない。
間詰め用袋体10の構成素材は、通気性を有し、充填材を間詰め用袋体10の内部に充填、保持可能であり、地盤斜面の凹凸に対応して変形可能な素材が用いられる。例えば、ポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレンからなる不織布を用いることが好適である。本実施の形態においては、ポリプロピレンからなる不織布を用いている。不織布は、多数の微小繊維を接合させることにより構成された多孔性の布体であるという周知の構成を有する。この接合された繊維相互の間隙は、空気を通過させ、水をわずかに浸透させるが、充填材を浸透させない程度の大きさの細孔を形成している。また、不織布は微小繊維の集合構造をとるので、圧縮又は切削加工が容易であり、従って厚さの変更が容易である。更に、ポリプロピレン製であることから、間詰め用袋体10が酸・アルカリに強くなり、地盤のpHの違いによる影響を受けにくくなる。なお、上述の機能を有するものであれば他の材質のものを間詰め用袋体10に用いても良い。また、間詰め用袋体10の表面全体には、所定の内圧上昇により充填材の滲み出しを可能とする機能を有する滲出部が複数設けられており、この滲出部が設けられた間詰め用袋体10の表面全域は、例えば、黒っぽい茶色で着色されている。また、間詰め用袋体10の構成素材の一部には、その間詰め用袋体10の内部につながる略円筒形状の口部(図示せず)が設けられている。その口部は、後述する充填材注入用ホースを装着可能な内径を有し、通常は袋体内部に充填された充填材が漏れ出さないように針金等で固く閉じられている。
次に、本発明の特徴的構成である滲出部について説明する。同図(B)は、同図(A)の間詰め用袋体10の表面の一部Rの部分拡大図である。図示のように、間詰め用袋体10の表面には、ところどころ円形で示した滲出部Xが間詰め用袋体10の表面全域に亘って多数設けられている。図2は、図1(B)のI−I線断面図である。図示のように、滲出部Xは、間詰め用袋体10の外面16及び内面18の対向する位置に設けられた凹部16a、18aにより他の部位より薄肉化されて形成された薄肉部X−1として構成されている。この薄肉部X−1は、間詰め用袋体10の構成素材である不織布の製造の際にその不織布の両面を押圧加工又は切削加工することにより設けることができる。また、間詰め用袋体10の製造時に同様の加工を施すことにより設けてもよい。
次に、図3により、滲出部として構成された薄肉部X−1からの、充填材の滲出作用を説明する。同図(A)は通常時の薄肉部X−1の状態を示す図であり、同図(B)は間詰め用袋体10の内圧上昇時における薄肉部X−1の状態を示す図である。図中、破線の矢印は水の移行を示し、実線の矢印は充填材20の移行を示す。同図(A)のように、通常時、すなわち、間詰め用袋体10内への充填材20の注入量が間詰め用袋体10の充填許容量より比較的少ない時は、間詰め用袋体10中に注入された充填材20の粒子は、多数の微小繊維の接合構造からなる間詰め用袋体10の構成素材に阻まれて間詰め用袋体10の外部へ移行できず、間詰め用袋体10の内部に留まって保持されている。そして、充填材20中の水分子のみが、他の部位より層厚の小さい薄肉部X−1から、間詰め用袋体10の内面18側から外面16側へと他の部位よりも早く、わずかに滲み出して移行する。そして、例えば、間詰め用袋体10内への充填材20の注入充填量が間詰め用袋体10の充填許容量に近づいた時、間詰め用袋体10の内圧が上昇し、同図(B)に示すように、内圧の上昇を受けて間詰め用袋体10を構成する不織布の繊維相互の間隔が拡大し、間詰め用袋体10の構成素材がその展延方向へ伸長し始める。この時、薄肉部X−1においても同様に繊維相互の間隙が拡大し始め、これに伴い薄肉部X−1の層厚が小さくなる。そして、薄肉部X−1における繊維相互の間隔により形成された細孔が充填材20の粒子の粒径より大きくなった時点で、充填材20の粒子が薄肉部X−1を通過して間詰め用袋体10の外面16上に現出する、すなわち、充填材20が、薄肉部X−1から滲出することになる。
充填材20は、本願明細書においては、水と混合された後の流動性を有するスラリー状の物体であって、その後時間の経過と共に流動性を喪失して固化するものを意味する。この充填材20の有する流動性により、地盤斜面と受圧板の間の間隙に設置された間詰め用袋体10の隅々まで注入充填される。そして、充填材20の固化後は、地盤斜面と受圧板の両者に密着した間詰め用袋体10の形状を安定的に維持することが可能となる。本実施の形態においては、充填材20としてセメントミルクを用いているが、上述の機能を有していれば他の物体を用いても良い。
装填材14は、スラリー状の充填材20を含浸保持可能な隙間を有し、且つ、圧縮変形可能な素材が用いられる。このような素材の例としては、スポンジ、発泡ウレタン、パルプ製品又はパーム等が挙げられるが、上述の性質を有していれば他の素材を用いても良い。本発明の実施の形態においては、パーム(シュロ科やヤシ科植物などから得られる塊状繊維)を用いている。この装填材14は常態においては膨らんでおり、間詰め用袋体10をある程度膨らんだ状態で維持する。そして、圧縮変形可能であるので、地盤斜面と受圧板の間隙に追従して圧縮変形し、間詰め用袋体10をその間隙に追従させた形状に維持することができる。よって、地盤斜面と受圧板の間隙の間詰め効果をより高めることができる。また、充填材20が装填材14に含浸されることで、固化前の充填材20が袋体内で相分離し、固化後に間詰め用袋体10の上側部分が脆弱化するというおそれも低減される。
また、間詰め用袋体10の外側面のうちの一方の面には、補強層が取り付けられ、補強されていても良い。本実施の形態においては、間詰め用袋体10の片側面の全面に目の粗い麻布(図示せず)を積層させて取り付けている。この積層面を地盤斜面と当接させて袋体を配置することにより、地盤斜面に鋭利な凹凸があった場合にも、間詰め用袋体10が破損し、充填材が漏れ出すことにより間詰めが不完全となるおそれが低減されている。補強層は、麻布に限られず、1〜2mmの厚さを有するポリエチレン製のフェルト材等、間詰め用袋体10の補強作用を有するものであればどのようなものを用いても良い。
次に、図4により、間詰め用袋体10を用いた間詰め方法を説明する。図4は、間詰め用袋体10を用いた間詰め方法における、間詰め用袋体10への充填材注入工程を示す図である。すなわち、同図において、間詰め用袋体10は、孔部12にアンカー22を挿通させて地盤斜面24上に既に載置されており(間詰め用袋体設置工程)、受圧板26は、載置された間詰め用袋体10の上から同じく受圧板26の孔部26aにアンカー22を挿通させた状態で間詰め用袋体10上に載置され、アンカー22の頭部から取付けられた公知のアンカーヘッドユニット28a、28bにより地盤斜面24へと押し付けられ、仮固定された状態である(受圧板設置工程)。この状態において、間詰め用袋体10は、内部の装填材14が圧縮変形することにより地盤斜面24と受圧板26の間の間隙の形状に追従した状態で維持されている。なお、間詰め用袋体10は、麻布からなる補強層30が地盤斜面24と当接しており、直接不織布層に地盤斜面24の凹凸部分が当接し、この不織布層が破れるおそれが低減している。
ここで、受圧板設置工程の後に続く充填材注入工程において、充填材20の注入速度調整動作が行われる。本工程において、例えば、上述のように受圧板26が仮固定された状態で、間詰め用袋体10の傾斜上方側の端部に設けられた口部32(前述の口部である)から充填材注入用ホース34を間詰め用袋体10内に口部32と密着するようにして挿入し、その袋体内にセメントミルク、すなわち、充填材20の注入を開始する。この充填材20の注入充填作業時に、作業者は図示のように薄肉部X−1が設けられた間詰め用袋体10の表面を観察しながら、以下、充填材20の注入速度調整動作を行う。
まず、間詰め用袋体10への充填材20の注入開始からしばらくの間は、充填材20は、装填材14内の隙間へと含浸し続ける。この間は、充填材20の注入充填に伴い、間詰め用袋体10内の空気が充填材20と置換され続けるので、その袋体の内圧上昇の幅は小さく、薄肉部X−1からの充填材20の滲み出しを心配せず、大きな注入速度を維持する調整動作を行う。具体的には、充填材注入用ホース34へ充填材20を送り込む充填材送りポンプ(図示せず)の送り速度を最大としたままにする調節を行う。
充填材20の注入量が間詰め用袋体10の注入許容量へ近づくと、袋体内の空気が少なくなり、充填材20が空気と置換しづらくなり、間詰め用袋体10の内圧が上昇し出す。これに伴い間詰め用袋体10の構成素材はその展延方向へ引き伸ばされ、これに伴い薄肉部X−1の層厚が小さくなり、不織布の多数の微小繊維からなる間隙により形成された細孔が拡大する、すなわち、薄肉部X−1の開度が増大する。そして、薄肉部X−1の開度が充填材20の粒子の粒径より大きくなった時点で、充填材20の粒子が薄肉部X−1を通過して間詰め用袋体10外部へと滲出するようになる。この充填材20の滲み出しが認識された時から、通常は2〜3分さらに充填速度を維持する調整動作を行う。間詰め用袋体10の内圧が上昇した状態で更に充填材20が注入されることにより、装填材14の隙間の隅々まで充填材20を行き渡らせることができるからである。その後、充填材20の注入速度をゼロにする調整動作を行う。具体的には、上述の充填材送りポンプの送り速度をゼロにする調節を行う。
これにより、充填材20の注入量が間詰め用袋体10の充填許容量を超えて突然破裂することを未然に防止することができると共に、既に間詰め用袋体10には地盤斜面24と受圧板26間の間隙を埋めるために必要量の充填材20が充填されているので、注入充填工程自体も同時に終了させることができる。
上述の充填材20の注入速度調整動作を行うにあたり、本実施の形態においては、薄肉部X−1を有する間詰め用袋体10の表面領域が、冒頭に記載した通り黒っぽい茶色で着色されている(図1(A)を参照乞)。この着色により、薄肉部X−1部分の色が、充填材20(セメントミルク)の色、すなわち、灰白色と異なる色相、明度及び彩度となっているので、薄肉部X−1からの充填材20の滲み出しの視認性が向上している。よって、充填材20の滲み出しの観察において、その滲み出しを認識しやすく、注入速度の調節動作を行うべき時がよりわかりやすくなっている。
注入充填工程の終了後、充填材注入用ホース34は間詰め用袋体10の口部32から引き抜かれ、口部32は再度針金等で閉じられる。そして、充填材20の固化後にアンカーヘッドユニット28a、28bを操作して受圧板26を地盤斜面24に対して最終的に締め付け、定着させる。
したがって、本発明の間詰め用袋体10を用いた間詰め方法によると、作業者が薄肉部X−1からの充填材20の滲み出し状況を観察しながら充填材20を間詰め用袋体10へと注入することができるので、その袋体の突然の破裂を恐れず大きな注入速度で充填材20を注入することができる。また、充填材20の注入終期において、作業者は薄肉部X−1から充填材20の滲み出しを認識してから2〜3分後に充填材20の注入速度をゼロにする調整動作を行うことができるので、充填材20が大きな注入速度により過剰量注入されて間詰め用袋体10が突然破裂することを未然に防止することができる。したがって、間詰め用袋体10の破裂による損失を低減でき、充填材注入工程が迅速化され、受圧板26の設置作業が迅速化される。
さらに、滲出部の態様は、間詰め用袋体10の薄肉部X−1とする構成として例示したが、これに限定されるものではなく、種々の変形の適用が可能である。
以下に、その変形例を図5に基づいて説明する。同図において上述の図1に示した実施例と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。図5(A)は、滲出部の別の態様を示す図である。図示のように、変形例に係る間詰め用袋体50には、内圧上昇に伴って開度が増大し、この開度が増大した時に間詰め用袋体50の内部から外部へ向けて充填材20を排出可能な弁構造である一方向弁X−2が、間詰め用袋体50の受圧板26が載置される側の面の縁部近傍に6箇所設けられている。
以下、一方向弁X−2の構成を更に詳細に説明する。同図(B)は、同図(A)のII−II線断面図である。図示のように、一方向弁X−2は、平面視略円形の蓋状体であって、この蓋状体の天面に充填材20の粒子が通過可能な孔部52aを有する弁蓋部52と、この弁蓋部52に嵌合可能な口部形状を有し、その口部の内方に充填材20の粒子が通過可能な孔部54aを有する弁口部54とが嵌合結合されて構成されている。弁蓋部52は、上記嵌合状態において弁口部54の上縁54bと周縁がほぼ密着する平面視略円形の弁体56を有し、この弁体56は、弁蓋部52の天面内側から下垂する棒状の弁体支持体58により支持されている。弁体56及び弁体支持体58は、可とう性を有する樹脂等により構成されており、所定の圧力により弾性変形可能である。また、弁口部54は、その下端54cから口部の径方向へ延在するリング状の鍔部54dを有し、この鍔部54dが間詰め用袋体50の構成素材と結合することで、一方向弁X−2は間詰め用袋体50に取付けられている。このように構成された一方向弁X−2は、通常時、すなわち、間詰め用袋体50内への充填材20の注入充填量がその袋体の充填許容量より比較的少ない時は、間詰め用袋体50の内圧が小さいので、弁体56と上縁54bとはほぼ密着状態のまま維持される。すなわち、一方向弁X−2は閉じられているので、充填材20が一方向弁X−2を介して間詰め用袋体50外部へ滲出することはなく、空気が通過し、水が僅かに滲み出し可能なだけである。
図6は、間詰め用袋体50の内圧上昇時の一方向弁X−2の状態を示す図である。間詰め用袋体50内への充填材20の注入充填量がその袋体の充填許容量に近づいた時、すなわち、間詰め用袋体50の内圧が上昇した時、図示のように、内圧の上昇を受けて一方向弁X−2の弁体56及び弁体支持体58が弾性変形し、弁体56の縁部が図における上方向へ押し上げられ、弁体56と上縁54aの間に充填材20が通過可能な間隙が生じる。すなわち、一方向弁X−2が開状態となり、この間隙を通過した充填材20が間詰め用袋体50の内部から外部へと一方向弁X−2を介して滲出することとなる。
この構成によると、間詰め用袋体50の構成素材自体に、例えば、薄肉部X−1(図2を参照乞)のような開度の調節構造を設ける必要がなくなるので、構成素材を不織布等に限定する必要がなく、間詰め用袋体50の構成素材の選択の自由度が向上する。例えば、不織布より高強度の素材を用いることにより、地盤斜面の鋭い凹凸部があった場合に、その凹凸部に間詰め用袋体50が接触することによるその構成素材の破損の恐れが低減する。更に、一方向弁X−2は間詰め用袋体50の構成素材とは異なる独立した構造物であるので、充填材20の滲み出しの位置がわかりやすく、滲み出しの観察を行いやすい。
また、図7は、間詰め用袋体10における薄肉部X−1の分布の別態様を示す図である。図示のように、薄肉部X−1は、間詰め用袋体10の縁部近傍の領域Sに複数設けられており、更に、領域Sが黒っぽい茶色で着色され、薄肉部X−1を有さない他の部位と区別されている。この構成によると、作業者は間詰め用袋体10の表面全域の中から観察すべき薄肉部X−1の存在箇所を容易に知ることができる。更に、薄肉部X−1の存在領域及び着色領域を充填材注入工程における観察部位となる間詰め用袋体10の縁部近傍領域に限定することができるので、経済的である。
以上のように、本発明の第1実施の形態を説明したが、受圧板26を用いた地盤斜面24の安定化に間詰め用袋体10を用いる場合は、両者に間詰め用袋体10のほとんどの領域が挟まれているため、間詰め用袋体10が両者に密着してその両者間の間隙を十分に埋めたか否かが直接判断できない(図4参照乞)。また、間詰め用袋体10への充填材20の注入時において、間詰め用袋体10に直接触れることができる領域も小さい(同図参照乞)。そのような場合に、間詰め用袋体10の内圧状態を確実に視覚的に把握することができる本発明の間詰め用袋体10を用いた間詰め方法は特に有効である。
(第2実施の形態)次に、本発明の間詰め用袋体及びその間詰め用袋体を用いた間詰め方法の第2実施の形態を、法面の土留として構築された擁壁間の間隙に設置され、その間隙を埋めるために用いられる間詰め用袋体を例に図8乃至図10を参照にして説明する。本実施の形態においては、上記第1実施の形態と間詰め用袋体の形状が異なるので、まずその部分を以下に説明する。また、本実施の形態において第1実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。
図8(A)は、本発明の第2実施の形態に係る間詰め用袋体80の膨らんだ状態を説明するための斜視図であり、同図(B)は同じく、間詰め用袋体80のすぼんだ状態を説明するための斜視図である。同図(A)に示すように、間詰め用袋体80は、内部に装填した装填材14によって膨らんだ略直方体状の形状をとる袋体として形成されている。この形状により、間詰め用袋体80同士を擁壁間の間隙において縦列に積層しやすくなる。そして、間詰め用袋体80は、二つの物体間の狭隘な間隙に挿入されるときは、同図(B)に示すように、装填材14の圧縮変形によりすぼみ、その間隙に追従した扁平な形状をとることが可能である。なお、間詰め用袋体80には、第1実施の形態と同様に全面に滲出部を形成する薄肉部X−1が設けられている。
図9は、間詰め用袋体80を用いた間詰め方法を説明するための斜視図である。図示のように、地山82の一部を切削して形成された法面84に対して側面が対向するように擁壁86−1及び擁壁86−2が隣接して構築されている。ここで、擁壁86の高さは例えば約2mであり、各擁壁86間には約100mmの間隙が設けられている。この間隙は、例えば、各擁壁86を構築するための型枠が挿入されていた間隙である。同図においては、この間隙に間詰め用袋体80が既に挿入され、配置された状態である(間詰め用袋体配置工程)。次に、充填材注入工程を説明する。まず、第1実施の形態と同様に、間詰め用袋体80の側部から充填材注入用ホース34を間詰め用袋体80内に挿入し、その袋体内に充填材20の注入充填を開始する。この充填材20の注入充填時において、作業者は薄肉部X−1が設けられた間詰め用袋体80の表面を観察しながら、以下、充填材20の注入速度調整動作を行う。
間詰め用袋体80への充填材20注入開始からしばらくの間は、充填材20は、多孔性を有する装填材14内へと含浸し続ける。この間は、充填材20の注入充填に伴い、間詰め用袋体80内の空気が充填材20と置換され続けるので、薄肉部X−1からの充填材20の滲み出しを心配せず、大きな注入速度を維持する調整動作を行う。
充填材20の注入充填量が間詰め用袋体80の充填許容量へ近づくと、袋体内の空気が減少し、空気と充填材20が置換しづらくなるので、間詰め用袋体80の内圧が上昇し出す。これに伴い間詰め用袋体80の構成素材はその展延方向へ引き伸ばされ、間詰め用袋体80の構成素材の間隙を形成する細孔が拡大し、すなわち、第1実施の形態と同様に薄肉部X−1の開度が増大し、充填材20の粒子が薄肉部X−1を通過して間詰め用袋体80外部へと滲出するようになる。この充填材20の滲み出しが認識された時から、装填材14の隙間の隅々まで充填材20を行き渡らせるために、更に2〜3分充填速度を維持する調整動作を行う。その後、充填材20の注入速度をゼロにする調整動作を行う。
この調整動作により、充填材20の注入充填量が間詰め用袋体80の充填許容量を超えて突然破裂することを未然に防止することができると共に、既にその袋体の内部に充填材20が満注充填されているので、注入充填工程自体も同時に終了させることができる。この時、間詰め用袋体80は擁壁86相互間の間隙に追従しつつ、一定高さに亘ってその間隙を埋めている状態となっているが、高さが足りないようであれば、さらに間詰め用袋体80を積層して配置することが可能である。この間詰め用袋体80の積層配置は、上記間詰め用袋体配置工程及び充填材注入工程を繰り返すことにより行う。図10は、間詰め用袋体80を用いた間詰め方法を使用し、擁壁86相互間の間隔を完全に埋めた後の状態を示す斜視図である。図示のように、本実施の形態においては、3つの間詰め用袋体80を積層させることで、好適に擁壁相互間の間隙を間詰めすることができた。
したがって、本発明の間詰め用袋体80を用いた間詰め方法によると、作業者は薄肉部X−1からの充填材20の滲み出し状況を観察しながら充填材20を間詰め用袋体80へと注入することができるので、その袋体の突然の破裂を恐れず大きな注入速度で充填材20を注入することができる。また、充填材20の注入終期において、作業者は薄肉部X−1から充填材20の滲み出しを認識した時から2〜3分後に充填材20の注入速度をゼロにする調整動作を行うことができるので、充填材20が大きな注入速度により過剰量注入されて間詰め用袋体80が突然破裂することを未然に防止することができる。したがって、間詰め用袋体80の破裂による損失を低減でき、充填材注入工程が迅速化される。特に、擁壁86の高さが高く、複数の間詰め用袋体80の積層が必要な場合に、間隙を埋める作業に要する時間が大きく短縮される。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、間詰め用袋体80の擁壁86と当接する面及び地面と当接する面を緩衝材で補強しても良い。こうすることにより、擁壁86又は地面に鋭利な凹凸形状があった場合にも袋体の破損のおそれが低減される。
更に、本発明に係る間詰め用袋体80及びその間詰め用袋体80を用いた間詰め方法は、擁壁に限らず、コンクリートで打設された建築物の目地を間詰めする目的であれば、どのようなものに対しても適用することが可能である。