以下において、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態に共通する車両構成]
図1は、本実施の形態の車両の駆動制御装置を備える車両の構成を示す図である。
図1を参照して、車両100は、バッテリB1と、接続部40と、モータジェネレータMG1,MG2と、エンジン4と、動力分配機構3と、車輪2と、制御装置30と、漏電検出器42とを含む。
動力分配機構3は、エンジン4とモータジェネレータMG1,MG2に結合されてこれらの間で動力を分配する機構である。たとえば動力分配機構としてはサンギヤ、プラネタリキャリヤ、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。この3つの回転軸がエンジン4、モータジェネレータMG1,MG2の各回転軸にそれぞれ接続される。たとえば、モータジェネレータMG1の回転シャフトを中空にし、その中をエンジン4の動力シャフトを貫通させることでモータジェネレータMG2、動力分配機構3、モータジェネレータMG1、エンジン4を直線上に配置することができる。
なおモータジェネレータMG2の回転軸は図示しない減速ギヤや差動ギヤによって車輪2に結合されている。また動力分配機構3の内部にモータジェネレータMG2の回転軸に対する減速機をさらに組み込んでもよい。
モータジェネレータMG1は、エンジン4により駆動される発電機として用いられるとともに、エンジン4を始動することが可能な電動機としても用いられる。モータジェネレータMG1が発電することにより得られる電力は、たとえばモータジェネレータMG2の駆動に用いられる。モータジェネレータMG2は、主として車両100の駆動輪(車輪2)を駆動する電動機として用いられる。
接続部40は、バッテリB1の負極に接続されるシステムメインリレーSMRGと、バッテリB1の負極と接地ラインSLとの間に電気的に接続される抵抗R1と、バッテリB1の負極と接地ラインSLとの間に抵抗R1と直列に接続されるシステムメインリレーSMRPと、バッテリB1の正極に接続されるシステムメインリレーSMRBとを含む。システムメインリレーSMRG,SMRP,SMRBは、制御装置30から与えられる信号SEG,SEP,SEBにそれぞれ応じてオン/オフ状態が制御される。具体的にはシステムメインリレーSMRG,SMRP,SMRBは、それぞれ、H(論理ハイ)の信号SEG,SEP,SEBによってオン状態に設定され、L(論理ロー)の信号SEG,SEP,SEBによってオフ状態に設定される。
車両100は、さらに、サービスプラグSPと、フューズFと、電圧センサ10と、電流センサ11とを含む。
サービスプラグSPとフューズFとは、バッテリB1に直列に接続される。サービスカバー(図示せず)が開いた状態ではサービスプラグSPにより高電圧が遮断される。電圧センサ10は、バッテリB1の端子間の電圧VBを測定する。電流センサ11は、バッテリB1に流れる電流IBを検知する。
なおバッテリB1としてはたとえばニッケル水素、リチウムイオン等の二次電池、あるいは燃料電池などを用いることができる。
漏電検出器42は、システムメインリレーSMRGよりもバッテリB1側において接地ラインSLに接続される。漏電検出器42は漏電の有無を示す電圧値Vkを制御装置30に対して出力する。
車両100は、さらに、電源ラインPL1と接地ラインSL間に接続される平滑コンデンサC1と、平滑コンデンサC1の両端間の電圧VLを検知して制御装置30に対して出力する電圧センサ21と、PCU(パワーコントロールユニット)5とを含む。
PCU5は、平滑コンデンサC1の端子間電圧を昇圧する昇圧コンバータ12と、昇圧コンバータ12によって昇圧された電圧を平滑化する平滑コンデンサC2と、平滑コンデンサC2の端子間電圧(電圧VH)を検知して制御装置30に出力する電圧センサ13と、インバータ14,22とを含む。
昇圧コンバータ12は、一方端が電源ラインPL1に接続されるリアクトルL1と、電源ラインPL2と接地ラインSL間に直列に接続されるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを含む。
リアクトルL1の他方端はIGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続される。ダイオードD1のカソードはIGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードはIGBT素子Q1のエミッタと接続される。ダイオードD2のカソードはIGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードはIGBT素子Q2のエミッタと接続される。
インバータ14は、昇圧コンバータ12から昇圧された電圧を受けてたとえばエンジン4を始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ14は、エンジン4から伝達される機械的動力によってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき昇圧コンバータ12は、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
インバータ14は、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とを含む。U相アーム15,V相アーム16,およびW相アーム17は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に並列に接続される。
U相アーム15は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはIGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはIGBT素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはIGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはIGBT素子Q4のエミッタと接続される。
V相アーム16は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはIGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはIGBT素子Q5のエミッタと接続される。ダイオードD6のカソードはIGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはIGBT素子Q6のエミッタと接続される。
W相アーム17は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードはIGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードはIGBT素子Q7のエミッタと接続される。ダイオードD8のカソードはIGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードはIGBT素子Q8のエミッタと接続される。
モータジェネレータMG1は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中点に共に接続されている。そして、U相コイルの他方端がIGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端がIGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端がIGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続される。
電流センサ24は、モータジェネレータMG1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置30へ出力する。
インバータ22は車輪2を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。またインバータ22は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき昇圧コンバータ12は降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。インバータ22の内部の構成は、図示しないがインバータ14と同様であり、詳細な説明は繰返さない。
車両100は、さらに、インバータ26と、車輪27と、モータジェネレータMGRと、電流センサ28とを含む。
モータジェネレータMGRは車輪27を駆動する。なおモータジェネレータMGRの回転軸は図示しない減速ギヤや差動ギヤによって車輪27に結合されている。インバータ26はモータジェネレータMGRに対してバッテリB1の直流電圧を三相交流に変換して出力する。またインバータ26は、回生制動に伴い、モータジェネレータMGRにおいて発電された電力をバッテリB1に戻す。インバータ26は、前輪を駆動するためのインバータ14,22とは異なり、PCUとは離隔したPCUの外部に設けられている。
インバータ26の構成はインバータ14と同様であり、詳細な説明は繰返さない。電流センサ28は、モータジェネレータMGRに流れる電流をモータ電流値MCRT3として検出し、モータ電流値MCRT3を制御装置30へ出力する。
ここで車輪2,27はそれぞれ車両100の前輪および後輪である。ただし車輪2,27はそれぞれ車両100の後輪および前輪であってもよい。なお、煩雑化するのを防ぐため、図1では2つの前輪を簡略化して1つの車輪(車輪2,27の一方)で示すとともに、2つの後輪を簡略化して1つの車輪(車輪2,27の他方)で示す。
車両100は、さらに、モータMAを有するエアコン52と、モータMAを駆動するためのインバータ50とを含む。具体的にはモータMAはコンプレッサ用モータである。インバータ50は電源ラインPL1と接地ラインSLとの間の直流電圧を三相交流に変換して出力する。なお、モータMAの出力は、モータジェネレータMG1,MR2,MGRのいずれに対しても小さい。このためモータMAに入力される電流の許容量は、モータジェネレータMG1,MR2,MGRのいずれに入力される電流の許容量よりも小さい。
制御装置30は、トルク指令値TR1〜TR3と、モータ回転数MRN1〜MRN3と、電圧VB,VL,VHの各値と、電流IBの値と、モータ電流値MCRT1〜MCRT3と、起動指示IGとを受ける。たとえば車両100の起動時に運転者がイグニッションスイッチをオンすることにより起動指示IGがオフ状態からオン状態に切換り、車両100の動作停止時に運転者がイグニッションスイッチをオフすることにより起動指示IGがオン状態からオフ状態に切換る。
制御装置30は、昇圧コンバータ12に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU1,降圧指示を行なう制御信号PWD1および動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
さらに、制御装置30は、インバータ14に対して、昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
同様に制御装置30は、インバータ22に対して直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。
同様に制御装置30は、インバータ26に対して直流電圧をモータジェネレータMGRを駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI3と、モータジェネレータMGRで発電された交流電圧を直流電圧に変換してバッテリB1側に戻す回生指示PWMC3とを出力する。
制御装置30は、インバータ50に対して直流電圧をモータMAを駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWAを出力する。また、制御装置30は、インバータ50に対して動作禁止を指示する信号STPを出力する。
制御装置30は、起動指示IGがオン状態からオフ状態に切換ると、漏電検出器42から受ける電圧値Vkに基づいて、漏電の有無を検知する。さらに制御装置30は、システムメインリレーSMRB,SMRG、昇圧コンバータ12、インバータ14,22,26,50等を制御することにより漏電部位、すなわち絶縁抵抗の低下が生じている部位を特定する。
制御装置30は、絶縁抵抗の低下が生じている部位が存在する場合には、その部位に応じた車両100の動作モードを決定する。起動指示IGがオフ状態からオン状態に切換ると、制御装置30は、決定した動作モードで車両100を動作させる。
以上のような、漏電部位を特定し動作モードを決定する処理に先立って、制御装置30は、絶縁抵抗の低下が検出された場合に、インバータや昇圧コンバータのパワー素子の温度を低下させる制御を行なった後に、絶縁抵抗低下部位を特定するための制御を行なう。
パワー素子は、電力用半導体素子とも呼ばれ、整流ダイオード、パワートランジスタ(パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、トライアックなどである。
たとえば、ダイオードの場合、素子の温度が所定値よりも高いと、逆バイアス電圧印加時のリーク電流が増大するので、インピーダンスが低下していると判定されてしまう。このためインバータ14,22,26にはそれぞれ温度センサ37,38,39が別々に設けられ、温度T1,T2,T3が検出されている。そして、温度が所定値よりも高いときは、退避走行時に、温度が高い部分の回生や負荷率を制限したり、冷却装置の能力を増加させたりして、温度を下げるように制御が行なわれる。
車両100は、さらに、冷却装置として、PCU5を冷却するためのラジエータ7、ウォータポンプ8、リザーブタンク9およびラジエータファン6と、インバータ26を冷却するためのブロアファン36とを含む。ウォータポンプ8が回転すると、冷却液がウォータポンプ8からラジエータ7、PCU5、リザーブタンク9、ウォータポンプ8の順で循環する。制御装置30は、ウォータポンプ8、ラジエータファン6、ブロアファン36にそれぞれ制御信号N1,N2,N3を送信し、回転速度を制御する。これにより、制御装置30は、冷却装置の冷却能力を増減させることが可能である。ラジエータファン6、ブロアファン36の回転速度が増加すると、冷却装置の冷却能力が増加する。
退避走行時にパワー素子の温度を所定値以下に下げるように制御しておくことによって、退避走行後に停車して絶縁抵抗低下部位の特定が行なわれた場合には、温度の過熱が解消され、絶縁抵抗低下部位をより狭い範囲に限定することが可能となる。
車両100は、さらに、警告ランプ60を含む。制御装置30は、後述する複数の検査エリアの少なくとも1つにおいて絶縁抵抗の低下が生じていると判定した場合には、信号EMGを生成して警告ランプ60へ出力する。警告ランプ60は信号EMGに応じて点灯する。これにより、運転者は車両100を起動させたときに車両100の走行モードが退避走行モードに設定されていることが分かる。
これにより、たとえば車両100の修理を早期に行なうよう運転者に促すことが可能になるので、より大きな異常が生じる前に車両100を修理することが可能になる。また、車両100の退避走行時には、運転者がアクセルペダルを操作しても車両100の応答性が通常より悪くなることが起こり得る。しかしながら警告ランプ60を点灯させることで車両100が退避走行を行なっていることを運転者に知らせることができるので、運転者の違和感を生じにくくすることができる。
図2は、図1に示す制御装置30の機能ブロック図である。なお、この制御装置30は、ソフトウエアでもハードウエアでも実現が可能である。
図1および図2を参照して、制御装置30は、昇圧コンバータ12を制御する昇圧コンバータ制御部31と、モータジェネレータMG1,MG2,MGRを制御するMG用インバータ制御部32と、接続部40を制御するリレー制御部33と、車両100の次回起動時における車両100の動作モードを設定する動作モード設定部34と、モータMAの動作を制御するためのエアコン制御部35とを含む。
昇圧コンバータ制御部31は、昇圧指示PWU、降圧指示PWDを図1の昇圧コンバータ12に出力する。また、MG用インバータ制御部32は、トルク指令値TR1とモータ回転数MRN1とに基づいて、インバータ14に対して駆動指示PWMI1、回生指示PWMC1を出力する。同様に、MG用インバータ制御部32は、トルク指令値TR2とモータ回転数MRN2とに基づいて、インバータ22に対して駆動指示PWMI2、回生指示PWMC2を出力し、トルク指令値TR3とモータ回転数MRN3とに基づいて、インバータ22に対して駆動指示PWMI3、回生指示PWMC3を出力する。
リレー制御部33は、システムメインリレーSMRB,SMRP,SMRGに信号SEB,SEP,SEGをそれぞれ出力する。なお車両100の起動時には、リレー制御部33はシステムメインリレーSMRB,SMRPを導通させて平滑コンデンサC1,C2のプリチャージを行ない、プリチャージが完了するとシステムメインリレーSMRGを導通させてからシステムメインリレーSMRPを開く。このとき、接続部40は、モータジェネレータMG1,MR2,MGRにバッテリB1からの電流を供給可能な状態となる。
エアコン制御部35は、駆動指示PWAを出力したり、信号STPを出力したりする。
動作モード設定部34は、起動指示IGがオン状態からオフ状態に変化すると、昇圧コンバータ制御部31と、MG用インバータ制御部32と、リレー制御部33と、エアコン制御部35との各々を動作させたり停止させたりしながら、そのときの電圧値Vkに基づいて車両100(図1)において絶縁抵抗の低下が生じている部位を特定する。次に、動作モード設定部34は、絶縁抵抗の低下が生じている部位に応じた動作モードを決定する。ここまでの処理が車両100の動作停止時における処理である。
たとえば、インバータ26に絶縁抵抗の低下が発生していることが特定されたら、モータジェネレータMGRを使用しないような動作モードが選択される。また、インバータ50に絶縁抵抗の低下が発生していることが特定されたら、エアコン52を使用しないような動作モードが選択される。
続いて、起動指示IGがオフ状態からオン状態に変化すると、動作モード設定部34は、決定した動作モードに応じて昇圧コンバータ制御部31と、MG用インバータ制御部32と、リレー制御部33と、エアコン制御部35とに対して、制御動作を行なうよう指示したり、制御動作を禁止したりする。これにより車両100の次回起動時には、決定した動作モードに従って車両100が動作する。
図3は、図1に示す漏電検出器42の構成図である。
図3を参照して、漏電検出器42は、交流電源61と、抵抗62と、コンデンサ63と、バンドパスフィルタ64と、ピークホールド回路65とを含む。なお、説明の便宜上、図1に示すサービスプラグSPおよびフューズFは図3に示していない。
交流電源61および抵抗62は、ノードN1と接地ノードGND(車両のシャーシ)との間に直列に接続される。コンデンサ63は、ノードN1とバッテリB1の負極との間に接続される。なお、図1においてバッテリB1に接続される回路の全体を図7では回路系70として示す。
漏電検出器42において、交流電源61は、低周波数の交流信号、たとえば、2.5Hzの交流信号を出力する。そして、バンドパスフィルタ64は、ノードN1上の交流信号を受け、その受けた交流信号から2.5Hzの成分だけを抽出してピークホールド回路65へ出力する。ピークホールド回路65は、バンドパスフィルタ64から受けた2.5Hzの交流信号のピークをホールドし、そのホールドした電圧値Vkを制御装置30へ出力する。後述するように、電圧値Vkは漏電の有無(たとえばバッテリB1の負極が接地ノードと短絡したか否か等)に応じて変化する。
図1に示す車両100の駆動装置の漏電を検出する際には、駆動装置は複数の領域に分割され、各領域について絶縁抵抗の低下が生じていないかどうか(漏電していないかどうか)が判定される。このように駆動装置を複数の領域に分割して絶縁抵抗の低下を検査することで、ある領域において絶縁抵抗の低下が生じていても、次回起動時にはその領域に含まれる回路を動作させないように車両100の動作を制御することが可能になる。よって、次回起動時に車両100を退避走行させることが可能になる。
図4は、図1の車両100における駆動装置を説明するための模式図である。
図4および図1を参照して、車両の駆動装置DRVは領域AR1〜AR7に分割される。このうち領域AR1,AR5,AR7を含む部分が駆動部DR1に含まれる。なお図4において斜線にて示す範囲は高電圧回路を含む範囲である。
領域AR1は、バッテリB1および漏電検出器42を含む領域である。領域AR2,AR3,AR4は、それぞれモータジェネレータMG1,MG2,MGRを含む領域である。
領域AR5は、昇圧コンバータ12と、インバータ(図中「INV」と示す)14,22,50とを含む領域である。領域AR5は、さらに、バッテリB1の直流電圧(たとえばDC200V)を補機で使用する所定の大きさの直流電圧(たとえばDC12V)に変換するためのDC/DCコンバータ54と、バッテリB1の直流電圧をAC100Vに変換するためのインバータ56とを含む。領域AR5は本発明における「電力変換部」に対応する部分である。
領域AR7は、インバータ14,22とは離隔してPCU外部に設けられたインバータ26を含む領域である。
なお図4において接続部40は領域AR1と領域AR5との境界上に位置する。領域AR6は、モータMAを含む。
[実施の形態1]
図5は、図1に示す制御装置30で実行される絶縁抵抗低下部位の特定に関する処理を説明するフローチャートである。
図1および図5を参照して、まず制御装置30は、漏電検出器42の出力に基づいて、絶縁抵抗低下の異常の有無を検出する(ステップS1)。
図6は、漏電検出器42による漏電の検出方法を説明するための図である。
図3、図6を参照して、交流信号VN1は、バンドパスフィルタ64が出力する交流信号である。交流信号VN1は、回路系70あるいはバッテリB1において漏電が発生していないとき波形WV1となる。
一方、交流信号VN1は、回路系70およびバッテリB1のいずれかにおいて漏電が発生しているときには波形WV2となる。ピークホールド回路65は、波形WV1に基づいて電圧値Vk1を出力し、波形WV2に基づいて電圧値Vk2を出力する。
このような波形を観測することによって、電気系統に漏電が発生していることが検出できる。
再び、図5を参照して、ステップS1において絶縁抵抗の低下異常が検出されていない場合には、ステップS5に処理が進み処理が終了となる。一方、ステップS1において絶縁抵抗の低下異常が検出された場合にはステップS2に処理が進む。
ステップS2では、通常走行から退避走行への移行が行なわれる。その際に、インバータ中のパワー素子の温度上昇が抑制される。
図7は、図5のステップS2で実行される退避走行中のパワー素子の温度上昇を抑制する制御の詳細を示したフローチャートである。
図7を参照して、まずステップS11において、インバータ14の温度センサ37で検出された温度T1が所定のしきい値TH1よりも高いか否かが判断される。ステップS11において、T1>TH1が成立した場合には、ステップS12に処理が進みモータジェネレータMG1用のインバータ14の回生制限、または負荷率制限が実行される。しきい値を複数設けておき、温度T1の値に応じて、インバータ14の回生を禁止したり、インバータ14のIGBT素子のゲートを遮断したりして、モータジェネレータMG2のみを使用するモータ走行を行なうようにしても良い。
パワー素子の中でもダイオードに電流が流れるのは、回生が行なわれる場合である。回生電流を制限することで、ダイオードの温度の上昇を抑えることができる。また、IGBTからダイオードへの伝熱により温度が上昇する場合には、負荷率制限またはインバータゲート遮断を指令することにより、IGBTとダイオードの両方の温度上昇を抑えることができる。
ステップS11において、T1>TH1が成立しなかった場合や、ステップS12の処理を実行した場合には、ステップS13に処理が進む。
ステップS13では、インバータ22の温度センサ38で検出された温度T2が所定のしきい値TH2よりも高いか否かが判断される。ステップS13において、T2>TH2が成立した場合には、ステップS14に処理が進みモータジェネレータMG2用のインバータ22の回生制限、または負荷率制限が実行される。しきい値を複数設けておき、温度T2の値に応じて、インバータ22の回生を禁止したり、インバータ22のIGBT素子のゲートを遮断したりして、エンジン4およびモータジェネレータMG1のみを使用する直行走行を行なうようにしても良い。
ステップS13において、T2>TH2が成立しなかった場合や、ステップS14の処理を実行した場合には、ステップS15に処理が進む。
ステップS15では、インバータ26の温度センサ39で検出された温度T3が所定のしきい値TH3よりも高いか否かが判断される。ステップS15において、T3>TH3が成立した場合には、ステップS16に処理が進みモータジェネレータMGR用のインバータ26の回生制限、または負荷率制限が実行される。しきい値を複数設けておき、温度T3の値に応じて、インバータ26の回生を禁止したり、インバータ26のIGBT素子のゲートを遮断したりして、モータジェネレータMGRの使用を禁止して前輪のみ駆動して退避走行を行なうようにしても良い。
たとえば、モータジェネレータMGRおよびインバータ26が水冷されたPCUとは離隔した場所に配置されている場合には、インバータ26の素子温度は上昇しやすく冷却されにくい。このような場合には、モータジェネレータMGRを使用しないようにして、FF走行を行なえばよい。
ステップS15において、T3>TH3が成立しなかった場合や、ステップS16の処理を実行した場合には、ステップS17に処理が進み、制御は図5のフローチャートに戻される。
なお、しきい値TH1〜TH3の各々は、絶縁低下部位を特定するためにパワー素子のリーク電流が十分少なくなる温度であれば良く、適宜実験的に定めても良い。
再び図5を参照して、ステップS2の退避走行への移行が完了すると、ステップS3に処理が進み、一定時間経過したか否かの時間待ちが実行される。なお、この時に温度T1〜T3のいずれもが各々に対応するしきい値より温度が低くなるまで待つようにしても良い。
ステップS3の素子冷却待ちの時間が経過した後には、ステップS3からステップS4に処理が進む。ステップS4では絶縁抵抗が低下した部位を特定するための制御が実行される。
図8は、図5のステップS4の絶縁抵抗が低下した部位を特定する処理の詳細を示したフローチャートである。
図4、図8を参照して、ステップS21においてユーザがイグニッションスイッチをオフにしているか否かが判断される。イグニッションスイッチがオフに設定されていれば、車両は停止状態となっており、モータジェネレータMG1,MG2,MGRへの通電を遮断しても問題は生じない。ステップS21において、イグニッションスイッチがオフに設定されていなければ、イグニッションスイッチがオフに設定されるまでステップS21の処理が継続される。
ステップS21において、イグニッションスイッチがオフに設定されていれば、ステップS22に処理が進む。ステップS22では、モータジェネレータMGR,MG1,MG2,エアコンにそれぞれ対応するインバータ26,14,22,50のインバータゲートを1つずつ遮断して、漏電検出器42によってインピーダンスの変化を観測する。
たとえば、停車中で各モータジェネレータが作動していない場合に、最初にインバータ14のゲートを遮断した場合にインピーダンスが変化して、それまで検出されていた漏電が検出されなくなれば、インバータ14か領域AR2が絶縁抵抗低下箇所であると特定される。
また、インバータ22のゲートを遮断した場合にインピーダンスが変化して、それまで検出されていた漏電が検出されなくなれば、インバータ22か領域AR3が絶縁抵抗低下箇所であると特定される。
また、インバータ26のゲートを遮断した場合にインピーダンスが変化して、それまで検出されていた漏電が検出されなくなれば、インバータ26(領域AR7)か領域AR4が絶縁抵抗低下箇所であると特定される。
また、インバータ50のゲートを遮断した場合にインピーダンスが変化して、それまで検出されていた漏電が検出されなくなれば、インバータ50か領域AR6が絶縁抵抗低下箇所であると特定される。
上記のいずれのゲート遮断を行なっても領域AR2、AR3,AR4,AR5,AR7について絶縁抵抗低下箇所である特定が行なわれなかった場合、接続部40のシステムメインリレーを遮断し、それまで検出されていた漏電が検出されなくなれば、領域AR5が絶縁抵抗低下箇所であると特定される。接続部40のシステムメインリレーを遮断しても、漏電が検出されているようであれば、領域AR1が絶縁抵抗低下箇所であると特定される。
ステップS22で上記のようなインピーダンス変化が観測された後に、ステップS23に処理が進み、絶縁抵抗低下箇所の特定と記憶が実行される。
そしてステップS24において、次回車両起動時の動作モードが設定される。図2の動作モード設定部34は、絶縁抵抗の低下が生じている部位に応じた動作モードを決定する。次回起動時に、起動指示IGがオフ状態からオン状態に変化すると、動作モード設定部34は、決定した動作モードに応じて昇圧コンバータ制御部31と、MG用インバータ制御部32と、リレー制御部33と、エアコン制御部35とに対して、制御動作を行なうよう指示したり、制御動作を禁止したりする。これにより車両100の次回起動時には、決定した動作モードに従って車両100が動作する。
ステップS24の処理が終了するとステップS25において図5のフローチャートに制御が戻され、ステップS5において処理が終了する。
以下、実施の形態1について総括する。実施の形態1に開示される車両は、パワー素子を含む電気系統を備える。実施の形態1の車両の制御装置は、電気系統の絶縁抵抗の低下を検出するための漏電検出器42と、絶縁抵抗低下部位を特定するための制御を行なう制御装置30とを備える。制御装置30は、漏電検出器42によって絶縁抵抗の低下が検出された場合に、パワー素子の温度を低下させる制御を行なった後に、絶縁抵抗低下部位を特定するための制御を行なう。
好ましくは、制御装置30は、パワー素子の温度を低下させる制御として、車両を通常走行から退避走行へ移行させる。
より好ましくは、車両は、パワー素子を含んで構成されるインバータ14,22,26をさらに備える。制御装置30は、退避走行実行時は、通常走行実行時よりも、インバータの発熱が低下するように制限をかけた状態でインバータ14,22,26を制御する。
以上説明したように、実施の形態1では、ダイオード等のパワー素子が冷却するまで待ってから、絶縁低下部位を特定する制御を実施するので、ダイオード等の漏れ電流に起因する故障発生領域の誤検出が低減する。これにより、修理工場などにおける適切な部品交換を行なうことが容易となり、一発で故障が完治する可能性が高まる。
また、本実施の形態では、絶縁低下部位を特定する性能を確保しつつ、絶縁低下異常を検出した後に退避走行を継続させることができ、故障により路上から退避できない状況を回避できる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、高温となっている部分の発熱を抑制するようにして退避走行を行なって、パワー素子の温度を下げてから絶縁抵抗の低下箇所の特定を行なった。パワー素子の温度を下げる他の方法として、外部から冷却する方法がある。実施の形態2では、冷却装置の冷却能力を変化させる。
図9は、実施の形態2で実行される制御を説明するためのフローチャートである。図1、図9を参照して、まず処理が開始されると、ステップS101において、絶縁抵抗の低下異常の検出有無が判断される。検出方法については、図5のステップS1と同様であるので、ここでは説明は繰返さない。
ステップS101において絶縁抵抗の低下異常が検出されていない場合には、ステップS105に処理が進み処理が終了となる。一方、ステップS101において絶縁抵抗の低下異常が検出された場合にはステップS102に処理が進む。
ステップS102では、ウォータポンプ8、ラジエータファン6、ブロアファン36の強制駆動が実行される。強制駆動は、たとえば、回転速度がHiとLoに設定可能である場合に、通常であればLo設定としている設定をHi設定に変化させるようにする。
この場合に、実施の形態1で発熱を抑制する箇所を選択したのと同様に、温度T1〜T3に応じて冷却装置を強制駆動する部分を選択しても良い。
ステップS102のファンやウォータポンプの強制駆動が完了すると、ステップS103に処理が進み、一定時間経過したか否かの時間待ちが実行される。なお、この時に温度T1〜T3のいずれもが各々に対応するしきい値より温度が低くなるまで待つようにしても良い。
ステップS103の素子冷却待ちの時間が経過した後には、ステップS103からステップS104に処理が進む。ステップS104では絶縁抵抗が低下した部位を特定するための制御が実行される。なお、ステップS104の処理は、図5のステップS4の処理と同様であるので、ここでは説明は繰返さない。
ステップS104の処理が実行された後には、ステップS5において処理が終了する。
以下、実施の形態2について総括する。実施の形態2に開示される車両は、パワー素子を含む電気系統を備える。実施の形態2の車両の制御装置は、電気系統の絶縁抵抗の低下を検出するための漏電検出器42と、絶縁抵抗低下部位を特定するための制御を行なう制御装置30とを備える。制御装置30は、漏電検出器42によって絶縁抵抗の低下が検出された場合に、パワー素子の温度を低下させる制御を行なった後に、絶縁抵抗低下部位を特定するための制御を行なう。
好ましくは、車両は、パワー素子の温度を冷却する冷却装置をさらに備える。制御装置30は、パワー素子の温度を低下させる制御として、冷却能力が増加するように冷却装置を制御する。
より好ましくは、冷却装置は、ウォータポンプ8、ラジエータファン6、およびブロアファン36のいずれかを含む。
以上説明したように、実施の形態2では、実施の形態1と同様に、ダイオード等のパワー素子が冷却するまで待ってから、絶縁低下部位を特定する制御を実施するので、ダイオード等の漏れ電流に起因する故障発生領域の誤検出が低減する。これにより、修理工場などにおける適切な部品交換を行なうことが容易となり、一発で故障が完治する可能性が高まる。
また、実施の形態2では、走行性能を低下させずに、絶縁抵抗の低下部位を特定する性能を向上させることができる。
なお、ウォータポンプ、ラジエータファン、ブロアファンを高速で動かし続けることは、振動および騒音や、ユニットの耐久性の面で不利となる。したがって、これらの駆動時間や駆動の強さ(Hi,Mid,Lo)をユーザの利便性やユニットの耐久性に基づいて適合することが望ましい。
なお、実施の形態1の発熱抑制と、実施の形態2の冷却能力増加とを組み合わせて行っても良い。
[車両構成の変形例]
図10は、車両構成の変形例を示す図である。図1で説明した車両の構成では、インバータ26はバッテリB1の直流電圧を受けてモータジェネレータに交流電圧を供給した。しかし、図10に示すように、インバータ26が昇圧コンバータ12で昇圧された直流電圧を受けてモータジェネレータに交流電圧を供給するように構成を変形しても良い。
図11は、図10の車両における駆動装置を説明するための模式図である。図4では、バッテリB1の電圧がインバータ26に供給される構成となっていたが、図11では昇圧コンバータ12の昇圧後の電圧がインバータ26に供給される構成となっている。
図10、図11に示す変形例の構成では、インバータ26はモータジェネレータMGRに対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。またインバータ26は、回生制動に伴い、モータジェネレータMGRにおいて発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。この変形例の他の部分については、図1および図4で説明した構成と同様であるので説明は繰返さない。
このような変形例の車両の構成であっても、図2、図3、図5〜図9で説明した絶縁抵抗低下部位の特定に関する処理を適用して漏電箇所の正確な特定が可能となる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。