JP5862501B2 - 結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法 - Google Patents

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本発明は、結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法に関し、さらに詳しくは、結晶性プロピレン重合体を、生産レートを変化させて連続的に製造する場合であっても、要求された結晶化度に簡便に精度良くコントロールして製造することが可能である、結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法に関する。
ポリプロピレンは、剛性や耐熱性などの機械的物性が良好であり、比較的安価に製造出来るため、広い用途に適用されている。ポリプロピレンの特徴である高剛性は、更に、結晶性を上げることで向上するが、用途によっては、結晶性をあるレベルに制御することが必要な用途がある。
例えば、食品包装材料などに用いられるBOPPフィルム(二軸延伸フィルム)が挙げられる。BOPPの延伸工程の生産性、すなわち、成形スピードは、用いられるポリプロピレンの結晶性が低い方が良く、延伸時の破膜などの問題を防止出来る。一方、フィルムの物性は、結晶性が高いほうが良い。そのため、結晶性をあるレベルに制御することが重要となる。
ポリプロピレンの結晶性を制御する方法として、プロピレンと少量のエチレンとの共重合を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この方法は、結晶性の制御と同時に融点を低下させるために、ポリプロピレンの大きな特徴である耐熱性を低下させてしまう問題がある。加えて、キシレン可溶分(以下、「CXS」と称することもある)を指標とする非晶性成分が少量しか存在しなくなり、帯電防止剤等の通常BOPPフィルムに処方される添加剤がフィルムの表面にブリードし易くなるという問題が生じる場合がある。
また、別の方法として、プロピレン単独重合体の立体規則性をある程度低下させることによる結晶性が制御されたポリプロピレンおよびその製造方法も提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
この方法は、ポリプロピレンの結晶性を制御すると同時に、帯電防止性能に必要なCXSも増加させることが可能であるという点で優れている。しかしながら、この手法を用いる場合には、製造用固体触媒が、ドナー成分として用いるルイス塩基の使用量を下げたり、アルミニウム化合物などの異物を共担持したりするものであり、固体触媒成分の粒子強度を低下させ、ひいてはポリプロピレン製造中に運転トラブルの原因となる微粉ポリマーが増加する恐れがある。
結晶性プロピレン重合体の結晶化度をある所望な領域に制御し、高い生産性で、とりわけ極めて微粉ポリマーの生成が少ない条件で、製造する方法として特許文献4が提案されている。しかしながら、この製造法は、生産量、温度、圧力といったプロセス変動や、プロピレン、有機アルミニウム化合物といった原料に含まれる不純物量の変動などにより、得られる結晶性プロピレン重合体の結晶化度が変動することがある。
これらのうちプロセス変動についてさらにいうと、プロピレン重合体を連続的に製造する設備においては、コンビナート全体を勘案して、原材料の供給量の増減や他の製造設備との間での原材料の配分の変更などが行われたり、後処理工程の処理能力の変動や市況の変動に応じた生産調整が行われたりすることがある。かかる場合、連続的な生産を継続するために、単位時間当たりの生産量(生産レート)を変更することがある。単位時間当たりの生産量が変化すると、反応器内の触媒の滞留時間、すなわち重合時間が変化し、得られるプロピレン重合体の結晶化度が変化する。
こうした状況下に、従来技術における問題点を解消し、結晶性プロピレン重合体を、要求された結晶化度に簡便に精度良くコントロールする方法が求められており、特に、上述のような結晶化度が顕著に影響する用途に適用するプロピレン重合体の製造においては、結晶化度を簡便に調整する方法が求められていた。
特開昭59−135209号公報 特開平11−228615号公報 特開平07−157510号公報 特開2009−24074号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、結晶性プロピレン重合体を連続的に製造する方法において、結晶性プロピレン重合体を、生産レートを変化させて連続的に製造する場合であっても、要求された結晶化度に簡便に精度良くコントロールして製造することが可能である、結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定の成分を含む重合用触媒の存在下で、結晶性プロピレン重合体を連続的に製造する方法において、特定の製造装置を使用し、少なくとも1つの製造条件(a)にて製造される結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求める工程(ア)、工程(ア)のデータを用いて、調整された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を製造条件(b)にて製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量を決定する工程(イ)、及び、工程(イ)において決定された結晶化度調整剤(C)の供給量に従い、製造条件(b)にて結晶性プロピレン重合体を製造する工程(ウ)を含む結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が、生産レートを変化させた場合であっても、要求された結晶化度に簡便に精度良くコントロールして製造することが可能である、結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法であることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(A1)を必須成分とする固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を含む重合用触媒の存在下で、結晶性プロピレン重合体を連続的に製造する方法において、
少なくとも、固体触媒成分(A)供給手段、原料供給手段、重合反応手段及び重合体排出手段を有する製造装置を使用し、
少なくとも1つの製造条件(a)にて製造される結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求める工程(ア)、
工程(ア)における製造条件(a)及び前記結晶化度を用いて、調整された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を製造条件(b)にて製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)を決定する工程(イ)、及び、
工程(イ)において決定された結晶化度調整剤(C)の供給量に従い、製造条件(b)にて結晶性プロピレン重合体を製造する工程(ウ)を含み、
製造条件(b)は、製造条件(a)と生産レートが異なることを特徴とする結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が提供される。
成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン並びにフタル酸誘導体及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物を必須成分として含有する固体成分
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、結晶化度調整剤(C)は、下記一般式(1)で表される成分であることを特徴とする結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が提供される。
1112 Si(OR13 (1)
(式中、R11は、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R12は、水素、ハロゲン、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群より選ばれる任意の遊離基を表し、R13は、炭化水素基を表し、0≦f≦2,1≦g≦3,f+g=3である。)
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記結晶化度は、密度により評価するものであることを特徴とする結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、製造条件(b)は、製造条件(a)と固体触媒成分(A)供給量及び/又は水素供給量が異なることを特徴とする結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、工程(ア)は、2つ以上の製造条件(a)にて製造された2種以上の結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求めるものであり、
工程(イ)は、工程(ア)における2つ以上の製造条件(a)及び前記2種以上の結晶性プロピレン重合体の結晶化度を用いて、生産レートと結晶化度との関係マスターカーブ(1)及び/又は結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)と結晶化度との関係マスターカーブ(2)を作成したうえで、製造条件(b)にて結晶性プロピレン重合体を製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)を決定するものであることを特徴とする結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、工程(ウ)は、工程(イ)において供給量が0以外に決定された結晶化度調整剤(C)を、前記固体触媒成分(A)供給手段及び/又は前記重合反応手段へ供給して、製造条件(b)にて製造するものであることを特徴とする結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれか発明において、固体触媒成分(A)は、前記成分(A1)、下記成分(A2)、下記成分(A3)及び下記成分(A4)を接触処理してなることを特徴とする結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が提供される。
成分(A2):ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物
成分(A3):下記一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物
Si(OR (2)
(式中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状又は環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一又は異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
成分(A4):有機アルミニウム化合物
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、前記重合反応手段は、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応器からなり、気相法により製造することを特徴とする結晶性プロピレン重合体の連続製造方法が提供される。
本発明の結晶性プロピレン重合体の連続製造方法によれば、結晶化度が変動してしまうようなプロセス変動やプロセス変更の条件のもとに連続的に製造する場合、例えば、生産レートを変化させて連続的に製造する場合であっても、要求された結晶化度に簡便に精度良く製造することが可能である。
このように、要求された結晶化度に簡便に精度良くコントロールすることが出来るため、非常に高効率に、結晶化度を制御するため、生産性を落とすという事もなく、高生産を維持したまま、また不良品が生じるコストアップも防止出来、低コスト、高品質に製造することが可能となる。
図1は、生産レートと結晶化度との関係マスターカーブ(1)の一例を示す模式図である。 図2は、結晶化度調整剤(C)の供給量と結晶化度との関係マスターカーブ(2)の一例を示す模式図である。 図3は、実施例で用いたポリプロピレンの製造プロセスを表す概略図である。
本発明は、特定の成分を含む重合用触媒の存在下で、結晶性プロピレン重合体を連続的に製造する方法において、特定の製造装置を使用し、少なくとも1つの製造条件(a)にて製造される結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求める工程(ア)、工程(ア)のデータを用いて調整された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を製造条件(b)にて製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量を決定する工程(イ)、及び、工程(イ)において決定された結晶化度調整剤(C)の供給量に従い製造条件(b)にて結晶性プロピレン重合体を製造する工程(ウ)を含む結晶性プロピレン重合体の連続製造方法に関する。
以下、本発明の結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法について、触媒、製造プロセス及び条件、ポリプロピレン、ポリプロピレンの用途などにより、具体的かつ詳細に説明する。
なお、本明細書において、「結晶化度」とは、結晶性プロピレン重合体に含まれる結晶の割合を意味し、例えば、公知の方法で測定される密度、CXS、TREF等により評価することができるものとする。
I.重合用触媒
本発明は、下記の成分(A1)を必須成分とする固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を含む重合用触媒の存在下で、結晶性プロピレン重合体を連続的に製造する方法による。
成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン並びにフタル酸誘導体及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物を必須成分として含有する固体成分
本発明は、プロピレン重合用触媒として、好ましくは、前記成分(A1)、下記成分(A2)、下記成分(A3)及び下記成分(A4)を接触処理してなる固体触媒成分(A)を用いることを特徴とする。
成分(A2):ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、
成分(A3):下記一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物、及び、
Si(OR (2)
(式(2)中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状又は環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一又は異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
成分(A4):有機アルミニウム化合物
この際、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶化度調整剤(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)などの任意成分を用いることができる。
1.固体触媒成分(A)
本発明で用いる固体触媒成分(A)は、成分(A1)を必須成分とし、好ましくは成分(A1)〜(A4)を接触させてなるものである。以下に各構成成分を詳述する。
(1)成分(A1):固体成分
本発明において、成分(A1)の固体成分(以下、「固体成分(A1)」ともいう。)としては、チタン(A1a)、マグネシウム(A1b)、ハロゲン(A1c)並びにフタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)を必須成分として含有する固体成分を必須成分として含有し、任意成分として電子供与体(A1f)を用いることができる。ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の(A1a)〜(A1e)の4種の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を任意の形態で含んでも良いということを示すものである。固体成分(A1)自体は、公知のものであり、以下に詳述する。
(A1a)チタン:
チタン源となるチタン化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いることが望ましい。
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)Ti−O−Ti(OBu)に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることができる。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい。
また、3価のチタン化合物の具体例としては、三塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類を挙げることができる。三塩化チタンは、水素還元型、金属アルミニウム還元型、金属チタン還元型、有機アルミニウム還元型、など、公知の任意の方法で製造された化合物を用いることができる。
上記のチタン化合物類は、単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)Cl4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(COBu)・TiClなどの化合物)、などを用いることができる。
(A1b)マグネシウム:
マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物類、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物類、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物類、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物類、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物類、ブチルエチルマグネシウムに代表される有機金属マグネシウム化合物類、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸及び有機酸のマグネシウム塩化合物類、及びそれらの混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)Cl2−m;0<m<2などの化合物)、などを用いることができる。この中で好ましいのはハロゲン化マグネシウム化合物類、アルコキシマグネシウム化合物類、グリニャール化合物類等があげられる。
特に大きな粒子を作る場合には、触媒粒径を制御しやすいジアルコキシマグネシウムを用いることが好ましい。ジアルコキシマグネシウムは、事前に製造されたものを用いるだけでなく、触媒製造工程の中で金属マグネシウムとハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物の存在下にアルコールを反応させて得たものでも良い。
更に、本発明において、成分(A1b)として、好適なジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は、不定形あるいは球状のものを使用することができる。例えば、球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上する。
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1〜1.5である。
また、上記ジアルコキシマグネシウムとして、平均粒径が1〜200μmのものを使用することができる。好ましくは5〜150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は、1〜100μm、好ましくは5〜50μmであり、更に好ましくは10〜40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更に、その粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと、3以下であり、好ましくは2以下である。
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報などに例示されている。
(A1c)ハロゲン:
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、及びそれらの混合物を用いることができる。この中で塩素が特に好ましい。
ハロゲンは、上記のチタン化合物類及び/又はマグネシウム化合物から供給されるのが一般的であるが、その他の化合物より供給することもできる。代表的な例としては、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物類、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物類、1,2−ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物類、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物類、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物類、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物類、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物類、などを挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いるだけでなく、併用することも可能である。この中で、四塩化ケイ素が特に好ましい。
(A1d)フタル酸誘導体:
フタル酸誘導体(A1d)としては、フタル酸、フタル酸エステル、フタル酸無水物、フタル酸ハライド、フタル酸アミド、などを用いることができる。
フタル酸エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることができる。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1〜20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2〜12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることもできる。
また、フタル酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることができる。中でも、塩素が最も好ましい。
さらに、フタル酸アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることができる。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することができる。
フタル酸誘導体として、芳香環の任意の場所に任意の数だけ任意の置換基を有することができる。置換基の例としては、脂肪族の遊離基、芳香族の遊離基、脂肪族のアルコキシ基、芳香族のアルコキシ基、脂肪族のアミノ基、芳香族のアミノ基、ハロゲン、などを例示することができる。
これらのフタル酸誘導体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。また、同一分子内に異なる官能基を有していても良い。これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、無水フタル酸に代表されるフタル酸無水物類、などである。
(A1e)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物:
本発明で用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(3)にて表される化合物を用いることが望ましい。
O−C(R−C(R−C(R−OR (3)
(一般式(3)中、R及びRは、水素、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
一般式(3)中、Rは、水素、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rとして用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。
として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。好ましくは、分岐状脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
二つのRは、結合して一つ以上の環を形成しても良い。この際、環構造中に2個又は3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取ることもできる。また、他の環式構造と縮合していても良い。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していても良い。環上の置換基は、一般に、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
一般式(3)中、Rは、水素、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。具体的には、Rは、Rの例示から選ぶことができる。好ましくは水素である。
また、一般式(3)中、Rは、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、Rの炭化水素基である場合の例示から選ぶことができる。好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基であることが望ましく、更に好ましくはアルキル基であることが望ましい。最も好ましくはメチル基である。
さらに、R〜Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、又はケイ素から選ばれることが望ましい。また、R〜Rが炭化水素基であるかヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいても良い。R〜Rがヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は、炭化水素基である場合の例示から選ばれることが望ましい。また、R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっても良い。
本発明で用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、1,1−ビス(1’−ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1−ビス(α−メトキシベンジル)インデン、1,1−ビス(フェノキシメチル)−3,6−ジシクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7−ビス(メトキシメチル)−2,5−ノボルナジネン、などを挙げることができる。
中でも、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、が特に好ましい。
これらの少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(A1f)電子供与体:
固体成分(A1)は、任意成分として、電子供与体(A1f)を含有しても良い。電子供与体(A1f)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが望ましい。
電子供与体として、用いることのできる有機酸化合物としては、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族及び脂肪族のスルホン酸化合物類、などを例示することができる。これらのカルボン酸化合物類及びスルホン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
電子供与体として、用いることのできる有機酸の誘導体化合物としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミド、などを例示することができる。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることができる。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1〜20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2〜12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることもできる。
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることができる。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は、複数のハロゲンが同一であっても異なっていても良い。アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることができる。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することができる。
電子供与体として、用いることのできる無機酸化合物としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することができる。これらの無機酸の誘導体化合物としては、エステルを用いることが望ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、などを具体例として挙げることができる。
また、電子供与体として、用いることのできるエーテル化合物としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物類、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物類、などを例示することができる。
電子供与体として、用いることのできるケトン化合物としては、メチルエチルケトンに代表される脂肪族ケトン化合物類、アセトフェノンに代表される芳香族ケトン化合物類、2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオンに代表される多価ケトン化合物類、などを例示することができる。
また、電子供与体として、用いることのできるアルデヒド化合物としては、プロピオンアルデヒドに代表される脂肪族アルデヒド化合物類、ベンズアルデヒドに代表される芳香族アルデヒド化合物類、などを例示することができる。
電子供与体として、用いることのできるアルコール化合物としては、ブタノールや2−エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物類、フェノール、クレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物類、グリセリンや1,1’−ビ−2−ナフトールに代表される脂肪族又は芳香族の多価アルコール化合物類、などを例示することができる。
電子供与体として、用いることのできるアミン化合物としては、ジエチルアミンに代表される脂肪族アミン化合物類、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンに代表される窒素含有脂環式化合物類、アニリンに代表される芳香族アミン化合物類、ピリジンに代表される窒素原子含有芳香族化合物類、1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2,2−ジメチルプロパンに代表される多価アミン化合物類、などを例示することができる。
また、電子供与体として、用いることのできる化合物として、上記の複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることもできる。その様な化合物の例として、酢酸−(2−エトキシエチル)や3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコシ基を分子内に有するエステル化合物類、2−ベンゾイル−安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物類、(1−t−ブチル−2−メトキシエチル)メチルケトンに代表されるケトエーテル化合物類、N,N−ジメチル−2,2−ジメチル−3−メトキシプロピルアミンに代表されるアミノエーテル化合物類、エポキシクロロプロパンに代表されるハロゲノエーテル化合物類、などを挙げることができる。
これらの電子供与体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。これらの中で好ましいのは、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、などである。
本発明における固体成分(A1)を構成する各成分の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意のものであり得るが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
チタン化合物類(A1a)の使用量は、使用するマグネシウム化合物類(A1b)の使用量に対して、モル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001〜1000の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜10の範囲内が望ましい。マグネシウム化合物類及びチタン化合物類以外に、ハロゲン源となる化合物(A1c)を使用する場合は、その使用量は、マグネシウム化合物類及びチタン化合物類の各々がハロゲンを含むか含まないかに関わらず、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対して、モル比(ハロゲン源となる化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1〜100の範囲内が望ましい。
固体成分(A1)を調製する際に、フタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)を用いる場合の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対して、モル比(フタル酸誘導体及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001〜10の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜5の範囲内が望ましい。
また、固体成分(A1)を調製する際に、任意成分として電子供与体(A1f)を用いる場合の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対して、モル比(電子供与体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001〜10の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜5の範囲内が望ましい。
本発明における固体成分(A1)は、上記の構成する各成分を、上記の量比で接触して、得られる。各成分の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは0〜100℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。
固体成分(A1)の調製の際には、中間及び/又は最後に、不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することができる。
本発明における固体成分(A1)の調製方法としては、任意の方法を用いることができる。具体的には、下記の方法を例示することができる。なお、本発明は、下記例示により何ら制限されるものではない。
(i)ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシ基含有マグネシウム化合物類に、四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類、フタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)を接触させる方法。
必要に応じて、電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲンを含有するチタン化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(ii)塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物類に、チタン含有化合物類、フタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)を接触させる方法。
必要に応じて、電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、チタン含有化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(iii)塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物類をアルコール化合物類、エポキシ化合物類、及び、リン酸エステル化合物類等を用いて溶解し、四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類、フタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)と接触させる方法。
ハロゲンを含有するチタン化合物類と接触させる前に、スプレードライや冷却した炭化水素溶媒等の貧溶媒へ滴下する方法などを用いて粒子形成を行っても良い。また、必要に応じて、電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲンを含有するチタン化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(iv)塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物類とテトラブトキシチタンに代表されるアルコキシ基含有チタン化合物類及び特定のポリマーケイ素化合物成分を接触させて得られる固体成分に、四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類及び/又は四塩化ケイ素に代表されるハロゲンを含有するケイ素化合物類、フタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)を接触させる方法。
このポリマーケイ素化合物としては、下記一般式(4)で示されるものが適当である。
[−Si(H)(R)−O−]q (4)
(ここで、Rは、炭素数1〜10程度の炭化水素基であり、qは、このポリマーケイ素化合物の粘度が1〜100センチストークス程度となるような重合度を示す。)
具体的な化合物の例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、等を挙げることができる。また、必要に応じて、電子供与体等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲンを含有するチタン化合物類及び/又はハロゲンを含有するケイ素化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(v)ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシ基含有マグネシウム化合物類をテトラブトキシチタンに代表されるアルコキシ基含有チタン化合物類と接触させた後、ハロゲン化剤又は四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類、フタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)と接触させる方法。
必要に応じて、電子供与体等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲン化剤又はハロゲンを含有するチタン化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(vi)金属マグネシウムにアルコール及び必要に応じて沃素に代表される沃素含有化合物類を接触させた後、四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類、フタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)と接触させる方法。
必要に応じて、電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲンを含有するチタン化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(vii)ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャー試薬等の有機マグネシウム化合物類とチタン含有化合物類、フタル酸誘導体(A1d)及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)を接触させる方法。
チタン含有化合物類としては、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシ基含有チタン化合物類や四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類などを用いることができる。必要に応じて、電子供与体、テトラエトキシシランに代表されるアルコキシ基含有ケイ素化合物、及び、ハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、チタン含有化合物と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
上記に例示した調製方法の中で、特に好ましいのは、上記(i)及び(v)に記載した方法である。これらの方法を用いることにより、気相法重合プロセスに好適な粒径の大きい触媒を調製することができる。
(2)成分(A2):ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物
本発明に用いられる成分(A2)のビニルシラン化合物(A2a)及び/又はアリルシラン化合物(A2b)について、説明する。
ビニルシラン化合物(A2a)としては、特開平2−34707号公報及び特開2003−292522号公報に開示された化合物等を用いることができる。また、アリルシラン化合物(A2b)としては、特開2006−169283号公報に開示された化合物を用いることができる。これらのビニルシラン化合物及びアリルシラン化合物は、モノシラン(SiHの少なくとも一つがビニル基又はアリル基で置換され、残りの水素原子の一部ないし全部がその他の遊離基に置き換えられた構造を持つ化合物であり、下記一般式(5)及び(5´)で、表すことができる。
[CH=CH−]SiXj(OR (5)
[CH=CH−CH−]SiX (OR (5′)
(一般式(5)及び(5′)中、Xは、ハロゲンを表す。Rは、水素又は炭化水素基を表す。Rは、水素、炭化水素基又は有機ケイ素基を表す。1≦m,0≦n≦3,0≦j≦3,0≦k≦2,m+n+j+k=4である。)
一般式(5)及び(5′)中、mは、ビニル基又はアリル基の数を表し、1以上4以下の値を取る。より好ましくは、mの値は、1又は2であることが望ましく、特に好ましくは2である。
また、一般式(5)及び(5′)中、Xは、ハロゲンを表し、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。複数存在する場合は、お互いに同一であっても異なっても良い。この中で、塩素が特に好ましい。nはハロゲンの数を表し、0以上3以下の値を取る。より好ましくは、nの値は0以上2以下であることが望ましく、特に好ましくは0である。
さらに、一般式(5)及び(5′)中、Rは、水素又は炭化水素基を表し、好ましくは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基、より好ましくは水素又は炭素数1〜12の炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。好ましいRの例としては、水素、メチル基やブチル基に代表されるアルキル基、シクロヘキシル基に代表されるシクロアルキル基、フェニル基に代表されるアリール基、などを挙げることができる。特に好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、フェニル基、などを挙げることができる。
jは、Rの数を表し、0以上3以下の値を取る。より好ましくは、jの値は、1以上3以下であることが望ましく、更に好ましくは2以上3以下であり、特に好ましくは2である。jが2以上である場合、複数存在するRはお互いに同一であっても異なっても良い。
また、Rは、一般式(5)においてアリル基であっても良く、一般式(5′)においてビニル基であっても良い。
一般式(5)及び(5′)中、Rは、水素、炭化水素基又は有機ケイ素基を表す。Rが炭化水素基である場合は、Rと同一の化合物群から選択することができる。Rが有機ケイ素基である場合は、炭素数1〜20の炭化水素基を有する有機ケイ素基であることが好ましい。Rとして用いることのできる有機ケイ素基の具体的な例としては、トリメチルシリル基に代表されるアルキル基含有ケイ素基、ジメチルフェニルシリル基に代表されるアリール基含有ケイ素基、ジメチルビニルシリル基に代表されるビニル基含有ケイ素基、およびプロピルフェニルビニルシリル基の様なそれらを組み合わせてなるケイ素基、などを挙げることができる。
kは、Rの数を表し、0以上2以下の値を取る。一方、ビニルトリエトキシシランの様に、kの値が3に相当する化合物の場合では、本発明におけるビニルシラン化合物(A2a)としての性能は発現せず、本発明における結晶化度調整剤(C)としての性能を発現するため、好ましくない。これは、構造的に近いt−ブチルトリエトキシシランと同じ様に振る舞うためと、考えられる(後述する通り、このt−ブチルトリエトキシシランは結晶化度調整剤(C)として有効である)。より好ましくは、kの値は、0以上1以下であることが望ましく、特に好ましくは0である。kの値が2である場合、二つのRは、お互いに同一であっても異なっていても良い。またkの値に関わらず、RとRは、お互いに同一であっても異なっても良い。
これらのビニルシラン化合物類(A2a)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。好ましい化合物の例としては、CH=CH−SiMe、[CH=CH−]SiMe、CH=CH−Si(Cl)Me、CH=CH−Si(Cl)Me、CH=CH−SiCl、[CH=CH−]Si(Cl)Me、[CH=CH−]SiCl、CH=CH−Si(Ph)Me、CH=CH−Si(Ph)Me、CH=CH−SiPh、[CH=CH−]Si(Ph)Me、[CH=CH−]SiPh、CH=CH−Si(H)Me、CH=CH−Si(H)Me、CH=CH−SiH、[CH=CH−]Si(H)Me、[CH=CH−]SiH、CH=CH−SiEt、CH=CH−SiBu、CH=CH−Si(Ph)(H)Me、CH=CH−Si(Cl)(H)Me、CH=CH−Si(Me)(OMe)、CH=CH−Si(Me)(OSiMe)、CH=CH−Si(Me)−O−Si(Me)−CH=CH、などを挙げることができる。これらの中でも、CH=CH−SiMe、[CH=CH−]SiMe、がより好ましく、[CH=CH−]SiMeが最も好ましい。
同様に、アリルシラン化合物類(A2b)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。好ましい化合物の例としては、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリブロモシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジエチルシラン、ジアリルジビニルシラン、ジアリルメチルビニルシラン、ジアリルメチルクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリアリルエチルシラン、トリアリルビニルシラン、トリアリルクロロシラン、トリアリルブロモシラン、テトラアリルシラン、などを挙げることができる。これらの中でも、ジアリルジメチルシランが好ましい。
ビニルシラン化合物(A2a)とアリルシラン化合物(A2b)は、各々単独で用いても良く、両者を併用しても良い。特に好ましくは、ビニルシラン化合物(A2a)を、単独で用いることが望ましい。
(3)成分(A3):有機ケイ素化合物
本発明で用いられる成分(A3)の有機ケイ素化合物(以下、「有機ケイ素化合物(A3)」ともいう。)は、下記一般式(2)にて表される化合物である。
Si(OR (2)
(一般式(2)中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状又は環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一又は異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
一般式(2)中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状または環状の炭化水素基を表す。Rとして用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、i−ブチル基や2,2−ジメチル−プロピル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル−メチル基(c−C−CH−)やシクロヘキシル−メチル基(c−C11−CH−)に代表される脂環式炭化水素基、ベンジル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、R1として、分岐状脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−ブチル基、2,2−ジメチル−プロピル基、2−メチル−ブチル基、シクロペンチル−メチル基、シクロヘキシル−メチル基、などを用いることが望ましい。
一般式(2)中、Rは、炭化水素基を表す。Rとして、用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やn−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、Rとして、直鎖状脂肪族炭化水素基、分岐状脂肪族炭化水素基、又は、脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを用いることが望ましい。aの値が2以上である場合、複数存在するRは、同一であっても異なっても良い。
一般式(2)中、Rは、炭化水素基を表す。Rとして、用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。bの値が2以上である場合、複数存在するRは、同一であっても異なっても良い。
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(A3)の好ましい例としては、(i−Bu)Si(OMe)、(i−Pr)(i−Bu)Si(OMe)、(i−Pen)(i−Bu)Si(OMe)、(i−Bu)(Me)Si(OMe)、(i−Bu)(Et)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Pr)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Bu)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Bu)Si(OMe)、t−BuCH(Me)Si(OMe)、t−BuCH(Et)Si(OMe)、t−BuCH(n−Pr)Si(OMe)、(t−BuCH)(i−Bu)Si(OMe)、(t−BuCHSi(OMe)、(c−HexCH)(Me)Si(OMe)、(c−HexCH)(Et)Si(OMe)、(c−PenCHSi(OMe)、(c−HexCH)(i−Bu)Si(OMe)、などを挙げることができる。
これらの有機ケイ素化合物類は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(4)成分(A4):有機アルミニウム化合物
本発明において用いられる成分(A4)の有機アルミニウム化合物(以下、「有機アルミニウム化合物(A4)」ともいう。)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(6)にて表される化合物を用いることが望ましい。
AlX(OR10 (6)
(一般式(6)中、Rは、炭化水素基を表す。Xは、ハロゲン又は水素を表す。R10は、炭化水素基又はAlによる架橋基を表す。c≧1、0≦d≦2、0≦e≦2、c+d+e=3である。)
一般式(6)中、Rは、炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜6、のものを用いることが望ましい。Rの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることができる。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基、が最も好ましい。
また、一般式(6)中、Xは、ハロゲン又は水素である。Xとして用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。この中で、塩素が特に好ましい。
さらに、一般式(6)中、R10は、炭化水素基又はAlによる架橋基である。R10が炭化水素基である場合には、Rの炭化水素基の例示と同じ群からR10を選択することができる。また、有機アルミニウム化合物(A4)として、メチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合Rl0は、Alによる架橋基を表す。
有機アルミニウム化合物(A4)として、用いることのできる化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることができる。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
2.固体触媒成分(A)の調製方法
本発明における固体触媒成分(A)は、成分(A1):固体成分を必須とし、好ましくは、該成分(A1)、成分(A2):ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物、成分(A3):下記一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物、
Si(OR (2)
(一般式(2)中、Rは、Siのβ位に2級ないし3級の炭素原子を有する直鎖状または環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一もしくは異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)並びに成分(A4):有機アルミニウム化合物を、接触させてなるものである。この際、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を任意の方法で接触させても良い。固体触媒成分(A)の各構成成分の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50℃〜200℃程度、好ましくは−10℃〜100℃、更に好ましくは0℃〜70℃、とりわけ好ましくは10℃〜60℃である。
また、接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、及び、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。好ましくは、不活性希釈剤の存在下に、撹拌により接触させる方法を用いることが望ましい。
本発明における固体触媒成分(A)を構成する各成分の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意のものであり得るが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物(A2)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物(A2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001〜1000の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜100の範囲内が望ましい。
また、一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)を用いる場合の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比で(一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜1000の範囲内であり、特に好ましくは0.1〜100の範囲内が望ましい。
さらに、固体触媒成分(A)中の一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)の含量を上げると結晶化度は上昇するので、求めるポリプロピレンの結晶化度に応じて増減させることができる。
また、固体触媒成分(A)中の一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)の含量の好ましい範囲は、2〜10wt%、より好ましくは3〜10wt%、さらに好ましくは3〜8wt%、最も好ましくは4〜7wt%である。
さらに、有機アルミニウム化合物(A4)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するアルミニウムの原子比(アルミニウム原子のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.1〜100の範囲内であり、特に好ましくは1〜50の範囲内が望ましい。
(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物、(A3)一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物、並びに、(A4)有機アルミニウム化合物の接触手順に関しては、任意の手順を用いることができる。具体的な例としては、下記の手順(i)〜手順(iii)が挙げられる。
手順(i):
(A1)固体成分に、(A2)ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物を接触させた後、(A3)一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物を接触させ、更に(A4)有機アルミニウム化合物を接触させる方法。
手順(ii):
(A1)固体成分に、(A2)ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物、(A3)一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物を接触させ、その後に(A4)有機アルミニウム化合物を接触させる方法。
手順(iii):
全ての化合物を同時に接触させる方法。
また、(A1)固体成分に対して、(A2)ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物、(A3)一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウム化合物、のいずれについても、複数回接触させることができる。この際、複数回用いる化合物がお互いに同一であっても異なっても良い。
さらに、固体触媒成分(A)の調製の際には、中間及び/又は最後に、不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することができる。
3.固体触媒成分(A)以外の成分
本発明においては、触媒として固体触媒成分(A)と、更に後述する、有機アルミニウム化合物(B)を用いることが必須要件であり、所望の結晶化度となるように任意に結晶化度調整剤(C)を用いるまたは用いない。また、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)などの任意成分も用いることができる。
(B)有機アルミニウム化合物:
本発明の触媒において、有機アルミニウム化合物(B)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、固体触媒成分(A)を調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物(A4)における例示と同じ群から選択することができる。この際、有機アルミニウム化合物(B)と有機アルミニウム化合物(A4)が同一であっても異なっても良い。
有機アルミニウム化合物(B)は、単独の化合物を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(C)結晶化度調整剤:
本発明の触媒において、結晶化度調整剤(C)としては、好ましくは、下記一般式(1)にて表される化合物を用いることが望ましい。
1112 Si(OR13 (1)
(一般式(1)中、R11は、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R12は、水素、ハロゲン、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。R13は、炭化水素基を表す。0≦f≦2,1≦g≦3,f+g=3である。)
一般式(1)中、R11は、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R11として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数3〜10のものである。R11として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、R11として分岐状脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
11がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましく、とりわけ、窒素又は酸素であることが望ましい。Rとしては、R11が炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
一般式(1)中、R12は、水素、ハロゲン、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R12として用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。
12が炭化水素基である場合は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
12がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、R11がヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
fの値が2の場合、二つあるR12は、同一であっても異なっても良い。また、fの値に関わらず、R12とR11は、同一であっても異なっても良い。
一般式(1)中、R13は、炭化水素基を表す。R13として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のものである。炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。bの値が2以上である場合、複数存在するR13は、同一であっても異なっても良い。
本発明で用いられるアルコキシ基を有する結晶化度調整剤(C)の好ましい例としては、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)
Figure 0005862501
などを挙げることができる。
この際、一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)と任意成分として用いられる結晶化度調整剤(C)とが同一であっても異なっても良い。
結晶化度調整剤(C)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
本発明は、結晶化度調整剤(C)の供給量につき、工程(ア)における製造条件(a)及び求められた結晶性プロピレン重合体の結晶化度を用いて、工程(イ)においてその後に製造される結晶化度調整剤(C)の供給量を決定することを特徴とするものであり、結晶化度調整剤(C)の供給量については、IIの項目にて後述する。
なお、結晶化度調整剤(C)は任意に添加できるものであり、供給量を0としてもよい。
結晶化度調整剤(C)は、重合反応手段に供給する方法と、固体触媒成分(A)供給手段に供給する方法を挙げることができる。すなわち、直接、反応器に供給する方法と、あらかじめ、反応器に供給する前に触媒タンクなどで、触媒成分(A)と事前に接触する方法を挙げることができる。
反応器に直接供給する方法は、結晶化度調整が、速く行うことが出来る利点を有する。結晶化度を上げたい場合には結晶化度調整剤(C)の供給量を増やし、結晶化度を下げたい場合には結晶化度調整剤(C)の供給量を減らせばよい。供給量の調整は、素早く重合用触媒の素性に反映されるため、重合反応条件を素早く変更することができる。一方、事前に接触する方法は、同じ結晶化度を得るのに、結晶化度調整剤が少なくて済むという利点がある。すなわち結晶度を上げたい場合の結晶化度調整剤(C)の増量分は、反応器に直接供給する方法に比べて少なくて済む。
なお、結晶化度調整剤(C)を触媒タンクなどで固体触媒成分(A)供給手段に供給したのちに、結晶化度調整剤(C)の濃度を下げるには、固体触媒成分(A)供給手段に固体触媒成分(A)を追添する方法や、触媒タンク内の固体触媒成分(A)、結晶化度調整剤(C)を一旦廃棄した後、再度、所望の割合に調合しなおす方法などがある。
(D)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物:
本発明の触媒において、任意成分として用いられる、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、固体触媒成分(A)において用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)における例示と同じ群から選択することができる。この際、固体触媒成分(A)を調製する際に用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)と、触媒の任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)とが同一であっても異なっても良い。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(E)その他の化合物:
本発明の効果を損なわない限り、上記、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)以外の成分(E)を、触媒の任意成分として、用いることができる。例えば、特開2004−124090号公報に開示された様に、分子内に、C(=O)N結合を有する化合物を用いることにより、CXSの様な非晶性成分の生成を抑制することができる。この場合、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、などを、好ましい例として挙げることができる。また、ジエチル亜鉛の様なAl以外の金属原子を持つ有機金属化合物を用いることもできる。
4.固体触媒成分(A)以外の成分の使用量
本発明の触媒における上記任意成分の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものであり得るが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(B)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1〜1000の範囲内であり、特に好ましくは10〜500の範囲内が望ましい。
また、結晶化度調整剤(C)の使用量は結晶化度見合いであり、使用してもしなくてもよく、使用する場合は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(結晶化度調整剤(C)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
さらに、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)を用いる場合の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
5.予備重合
本発明における固体触媒成分(A)は、本重合で使用する前に予備重合されていても良い。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げることができる。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
固体触媒成分(A)として、予備重合されたものを用いる場合には、固体触媒成分(A)の調製手順において、任意の手順で予備重合を行うことができる。例えば、(A1)固体成分を予備重合した後に、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウム化合物を接触させることができる。
また、(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウム化合物を接触させた後に予備重合を行うこともできる。
上記に加えて、(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウム化合物を接触させる際に、同時に予備重合を行っても良い。特に好ましくは(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウムを有する化合物を接触させた後に、予備重合を行うことが望ましい。
固体触媒成分(A)又は固体成分(A1)と上記のモノマーとの反応条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることができる。一般的には、以下の範囲内が好ましい。
固体触媒成分(A)又は固体成分(A1)1グラムあたりの基準で、予備重合量は、0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、更に好ましくは0.5〜10gの範囲内が望ましい。予備重合時の反応温度は、−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は、本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は、複数回行っても良く、この際用いるモノマーは、同一であっても異なっても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行うことも、できる。
II.製造方法及び製造装置
本発明の結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法は、下記の成分(A1)を必須成分とする固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を含む重合用触媒の存在下で、結晶性プロピレン重合体を連続的に製造する方法において、少なくとも、固体触媒成分(A)供給手段、原料供給手段、重合反応手段及び重合体排出手段を有する製造装置を使用し、少なくとも1つの製造条件(a)にて製造される結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求める工程(ア)、工程(ア)における製造条件(a)及び前記結晶化度を用いて、調整された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を製造条件(b)にて製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)を決定する工程(イ)、及び、工程(イ)において決定された結晶化度調整剤(C)の供給量に従い、製造条件(b)にて結晶性プロピレン重合体を製造する工程(ウ)を含むことを特徴とする。
1.各工程
(1)工程(ア):
本発明において、工程(ア)は、少なくとも1つの製造条件(a)にて製造される結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求める工程である。本発明は、結晶性プロピレン重合体を連続的に製造する方法であるので、排出された結晶性プロピレン重合体の結晶化度は、公知の方法を用いて、計測することが出来る。本発明において求める結晶化度は、結晶質と非晶質の合計に対する結晶質の割合として求まる結晶化度又は結晶化度と相関する物性値、例えば、密度、キシレン可溶分(CXS)、TREFなどを用いることが出来る。
また、製造された結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求める頻度は、少なくとも1回であり、すなわち、該結晶化度と、その際の製造条件(a)を記録した後に使用することが必要である。計測の頻度は、多ければ多いほど精度が向上するため良いが、作業効率の観点からは、少ない方が良いため、目安として、反応器の平均滞留時間前後の間隔で行うことが好ましい。
上記製造条件には、製造するに際し決定される各種の項目が含まれるが、本発明においては、製造される結晶性ポリプロプレン重合体の結晶化度に影響を及ぼす項目が特に重要であり後に使用することができ、例えば、生産レート、固体触媒成分(A)供給量、水素供給量、反応器パウダー保有量、温度、圧力等の項目を使用することができる。
(2)工程(イ):
本発明において、工程(イ)は、工程(ア)における製造条件(a)及び前記結晶化度を用いて、調整された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を製造条件(b)にて製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)を決定する工程である。
製造条件(b)は、製造条件(a)と同じであっても異なっていてもよい。
製造条件(b)が、製造条件(a)と同じ場合は、例えば、工程(ア)にて測定した結晶化度が所望の値から外れていた場合であって、その場合は、同じ製造条件にて、結晶化度調整剤(C)の供給量を増減して連続的に製造することにより、所望の結晶化度をもつ結晶化ポリプロピレン重合体を製造することができる。この際の増減量の決定の方法としては、後述する関係マスターカーブ(2)等により結晶化度調整剤(C)の供給量を決定することができる。
製造条件(b)が、製造条件(a)と異なる場合としては、好ましくは、工程(ア)に引き続き、製造条件(a)と生産レートを異なるものに代えた製造条件(b)にて、調整された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)を予測し、決定する場合である。
製造条件(a)と異なる製造条件(b)にて製造される結晶性プロピレン重合体の結晶化度を予測する方法としては、好ましくは、工程(ア)において、2つ以上の製造条件(a)にて製造された2種以上の結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求め、工程(イ)において、工程(ア)における2つ以上の製造条件(a)及び前記2種以上の結晶性プロピレン重合体の結晶化度を用いて、生産レートと結晶化度との関係マスターカーブ(1)及び/又は結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)と結晶化度との関係マスターカーブ(2)を作成したうえで、製造条件(b)にて、調整された結晶性プロピレン重合体を製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)を予測し決定することが挙げられる。
なお、関係マスターカーブ(1)及び/又は(2)は、従来の製造実績から導き出した関係マスターカーブを用いてもよい。
例えば、製造条件(b)にて製造する場合、結晶化度調整剤(C)の供給量は、製造される結晶性プロピレン重合体の結晶化度を、予め作成された生産レートと結晶化度との関係マスターカーブで予測し決定する場合は、以下のとおりとすることができる。
すなわち、図1に、生産レートと結晶化度との関係マスターカーブ(1)の一例を示す。図1によれば、生産レートを変更した場合の結晶化度が予測できる。
更に、排出された結晶性プロピレン重合体の結晶化度を計測し、その結晶化度見合いで調整を行う。結晶化度調整剤(C)は、供給することでほぼ比例して結晶化度が上昇するが、結晶化度調整剤の供給量と結晶化度上昇との関係マスターカーブ(2)をあらかじめ作成し、供給量を決定することで、より早く、精度高い制御が可能となる。図2に、結晶化度調整剤(C)の添加量と結晶化度との関係マスターカーブ(2)の一例を示す。図2によれば、所望の結晶化度を持つ結晶化ポリプロピレン重合体を製造する場合の結晶化度調整剤(C)の添加量を決定することができる。
なお、図1及び2においては、結晶性プロピレン重合体の結晶化度はCXSを用いて示されている。
(3)工程(ウ):
本発明において、工程(ウ)は、工程(イ)において決定された結晶化度調整剤(C)の供給量に従い、製造条件(b)にて結晶性プロピレン重合体を製造する工程である。好ましくは、工程(ウ)は、工程(イ)において供給量が0以外に決定された結晶化度調整剤(C)を、前記固体触媒成分(A)供給手段及び/又は前記重合反応手段へ供給して、製造条件(b)にて製造する工程である。
結晶化度調整剤の供給は、上述したように、重合反応手段へ供給する方法、すなわち、直接、反応器に供給する方法と、固体触媒成分(A)供給手段へ供給する方法、すなわち、あらかじめ、反応器に供給する前に触媒成分(A)と事前に接触する方法を挙げることができる。
本発明の製造方法により、生産レートを変化させて連続的に製造する場合であっても、要求された結晶化度に簡便に精度良くコントロールして製造することが可能である。したがって、制御された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を、高生産、高効率に、低コスト、高品質に製造することが可能となる。
特に、結晶化度が顕著に影響する用途に適用するプロピレン重合体の製造、例えば、生産レートを変化させて連続的に製造する場合であっても、要求された結晶化度に簡便に精度良く、また、高生産、高効率、低コスト、高品質に製造することが可能となる。すなわち、製造条件(b)が、製造条件(a)と生産レートが異なる場合、または、製造条件(b)が、製造条件(a)と固体触媒成分(A)供給量及び/または水素供給量が異なる場合、要求された結晶化度に簡便に精度良く、また、高生産、高効率、低コスト、高品質に製造することが可能となり、好ましい。
2.製造装置
本発明の製造方法は、固体触媒成分(A)供給手段、原料供給手段、重合反応手段及び重合体排出手段を有する製造装置を使用することが必要である。上記各手段は通常使用されているものを用いることができるが、装置も含め、製造プロセスについて以下に説明する。
ポリプロピレンの製造プロセスとしては、ヘキサン、ヘプタンといった重合溶媒を用いるスラリー法、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク法、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相法いずれで行っても良い。本発明の製造法を用い、より安定した結晶化度の結晶性プロピレン重合体が得られるという観点においては、気相法が好まく、更に、気相法においても、液化プロピレンの潜熱を用いて除熱を行う気相法重合プロセスが、より好ましい。
混合様式としては、流動床を用いる方法、攪拌機を用いる方法、のどちらを用いても良い。攪拌機を用いる場合には、攪拌機を備えた流動床を用いることも、できる。攪拌機は、攪拌軸が鉛直方向を向いていても、水平方向を向いていても良い。攪拌翼の形状としては、パドル、ヘリカル、など任意のものを用いることができる。このうち、攪拌軸を水平方向に向けて、パドル翼を用いる方法が最も好ましい。
本発明においては、重合反応手段としては、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応器を用いて、気相法により連続的に製造することが、簡便に、すばやく結晶化度を調整出来る点から好ましい。
重合槽は、一つでも複数でも良い。重合槽が複数の場合には、直列に繋いでも良いし、並列に繋いでも良い。また、結晶化度調整剤(C)は、重合槽が複数の場合、一つの重合槽にのみの装入でも、各重合槽にそれぞれ装入しても良い。また、各重合槽に装入する場合は、各重合槽の結晶化度を、それぞれ調整しても良い。
重合方法としては、生産性の観点から連続法を用いる。連続法は、滞留時間分布が広くなるため、重合槽に堰を設け重合槽内のパウダー移動を制限し、滞留時間分布が狭くすることもできる。堰の形態としては、重合槽に固定された固定堰を用いても良いし、回転軸に固定された回転堰を用いても良い。堰を設けることにより、重合槽内のパウダー移動を制限し、滞留時間分布が狭くなる。
液化プロピレンの潜熱を用いて除熱を行う場合、その方法としては、任意の方法を用いることができる。液化プロピレンの潜熱を用いて除熱を行う為には、実質的に液の状態にあるプロピレンを重合槽に供給すればよい。フレッシュな液化プロピレンを重合槽に供給することもできるが、一般的には、リサイクルプロピレンを用いることが望ましい。リサイクルプロピレンを用いる一般的な手順は、以下に例示される。
重合槽からプロピレンを含むガスを抜き出し、そのガスを冷却して少なくとも一部を液化させ、液化した成分の少なくとも一部を重合槽に供給する。この際、液化する成分は、プロピレンを含む必要があるが、ブテンに代表されるコモノマー成分やイソブタンに代表される不活性炭化水素成分を含んでいても良い。
液化プロピレンの供給方法は、実質的に液の状態にあるプロピレンを重合槽に供給するものである限り、任意の方法を用いることができる。ポリプロピレン粒子のベッドに、供給しても良いし、気相部に供給しても良い。気相部に供給する場合は、重合槽内部の気相部に供給しても良いし、リサイクルガスラインに供給しても良い。特に、攪拌軸を水平方向に向ける攪拌混合槽の場合には、重合槽内部の気相部に供給することが望ましい。
温度や圧力の様な重合条件は、本発明の効果を阻害しない限り、任意に設定することができる。具体的には、重合温度は、好ましくは0℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。重合圧力は好ましくは1200kPa以上、更に好ましくは1400kPa以上、特に好ましくは1600kPa以上であり、好ましくは4200kPa以下、更に好ましくは3500kPa以下、特に好ましくは3000kPa以下である。ただし、重合圧力は、重合温度におけるプロピレンの蒸気圧より、低く設定するべきではない。
滞留時間は、重合槽の大きさ、構成、触媒活性などに合わせて、任意に設定することができる。一般的には、30分〜5時間の範囲内で設定される。滞留時間が短くなると、結晶化度が高くなる傾向にあり、滞留時間が長くなると結晶化度が低くなる傾向にある。そのため、あらかじめ滞留時間により予想される結晶化度を読み取り、結晶化度調整剤(C)の量を設定する必要がある。
触媒活性は、温度、圧力、滞留時間などの重合条件により変化するが、10,000gPP/g触媒以上であることが望ましい。好ましくは、触媒活性が15,000gPP/g触媒以上500,000gPP/g触媒以下の範囲内、更に好ましくは20,000gPP/g触媒以上100,000gPP/g触媒以下の範囲内、最も好ましくは25,000gPP/g触媒以上50,000gPP/g触媒以下の範囲内、である。
触媒活性が上記の範囲より低いと、触媒残渣が多くなり、中和剤等の添加剤を沢山使用する必要があり、経済的でなく好ましくない。触媒活性が上記の範囲より高いと、触媒フィード部の局所的な除熱が難しくなり、塊等の異物ができやすく好ましくない。
製造装置は、重合用触媒供給手段、原料プロピレン供給手段、重合反応手段、結晶性プロピレン重合体排出手段を有する。
重合用触媒供給、原料プロピレン供給他、その他の任意成分の供給手段は、公知の方法を用いて、重合槽に供給することができる。重合触媒については、そのまま粉末状で重合槽に供給してもよいが、ヘキサンやミネラルオイル等の不活性溶媒を用いて希釈した上で供給しても良い。
結晶性プロピレン重合体の排出手段は、公知の方法を用いて、重合槽から排出することができる。コントロールバルブで排出量を調整しながら抜き出す方法や、バッチ的に排出槽に抜き出し、その抜き出す回数で、排出量を調整する方法などがある。
III.結晶性プロピレン重合体
本発明により得られる結晶性プロピレン重合体は、プロピレンの単独重合体(1)、プロピレンとその他のモノマーとのランダム共重合体(2)又はプロピレンとその他のモノマーとのブロック共重合体である。各重合体について、詳細に説明する。
(1)プロピレンの単独重合体
本発明におけるポリプロピレンがプロピレン単独重合体である場合、メルトフローレート(試験条件:230℃、荷重2.16kgf)(MFR)は、0.01g/10分以上1,000g/10分以下であることが好ましく、より好ましくはMFRが0.1g/30分以上500g/10分以下、更に好ましくは0.5g/10分以上100g/10分以下である。
また、CXSは、0.3重量%以上10重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上8重量%以下、最も好ましくは1重量%以上6重量%以下である。
さらに、密度は、0.9000g/ml以上0.9100g/ml以下が好ましく、更に好ましくは0.9010g/ml以上0.9090g/ml以下、最も好ましくは0.9020g/ml以上0.9080g/ml以下である。
ここでCXSは、以下の手法で測定された値として定義される。
試料(約5g)を140℃のp−キシレン(300ml)中に一度完全に溶解させる。その後23℃まで冷却し、23℃で12時間ポリマーを析出させる。析出したポリマーを濾別した後、濾液からp−キシレンを蒸発させる。p−キシレンを蒸発させた後に残ったポリマーを100℃で2時間減圧乾燥する。乾燥後のポリマーを秤量し、試料に対する重量%として、CXSの値を得る。
密度は、比重法、勾配管法、X線回折などの任意の方法で測定することができる。
(2)ランダム共重合体
本発明におけるポリプロピレンがプロピレンとその他のモノマーとのランダム共重合体である場合、その他のモノマーは、エチレン及び/又は炭素数4−10のαオレフィンであることが望ましい。より好ましくは、エチレン及び/又は1−ブテンが望ましく、最も好ましくはエチレンである。
ランダム共重合体におけるプロピレン以外のモノマー単位の含量は、10重量%以下であることが望ましい。より好ましくは0.01重量%以上3重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以上2重量%以下、とりわけ好ましくは0.1重量%以上1重量%以下が望ましい。また、MFR、密度及びCXSの好ましい範囲は、プロピレン単独重合体の場合と同じである。
ここで、その他のモノマーの含量は、任意の分析手法により求めることができる。具体的な例としては、赤外分光分析法(IR)、核磁気共鳴分析法(NMR)、などを挙げることができる。
ここで、本発明において、ランダム共重合体で用いるプロピレン以外のモノマーとしては、特に限定されないが、炭素数2〜12のオレフィン、特に炭素数2〜12のα−オレフィンが好ましく用いられる。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、なかでも、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンを用いることがより好ましく、これらのオレフィンは、1種のみならず2種以上を用いることも可能である。
MFRを調整するためには、連鎖移動剤である水素の重合槽における濃度を調整すれば良い。また、コモノマー含量を調整するためには、コモノマーの重合槽における濃度を調整すればよい。
また、本発明により得られるポリマー粒子は、優れた粒子性状を示す。一般的に、ポリマー粒子の粒子性状は、ポリマー嵩密度、粒径分布、粒子外観などにより評価される。
本発明により得られるポリマー粒子は、ポリマー嵩密度が、0.35〜0.55g/mlの範囲内、好ましくは、0.40〜0.50g/mlの範囲内、最も好ましくは、0.43〜0.48g/mlの範囲内である。ポリマー粒子の大きさは、任意の値を取ることができるが、平均粒径が、好ましくは500〜3000μmの範囲内、特に好ましくは700〜2000μmであることが望ましい。また、微粉の量は、低くなる程リアクター等でのファウリングが少なくなるので好ましい。好ましい範囲としては、300μ以下の微粉量が5wt%以下、更に好ましくは3wt%以下、特に好ましくは2wt%以下、最も好ましくは1wt%以下である。0wt%が理想であることは言うまでもない。微粉量は、篩い分け法、レーザー回折法、画像解析法、などの任意の方法で測定することができる。
IV.結晶性プロピレン重合体の用途
本発明を用いて製造された結晶性プロピレン重合体は、任意の用途に用いることができる。とりわけ、低結晶性の分野、例えば、フィルム、シート、繊維、ヤーン、などを挙げることができる。フィルム用途の場合、二軸延伸、一軸延伸、無延伸、空冷インフレ、水冷インフレなどの任意の成形方法を用いることができる。特に、密度、CXS等が高度に調整された結晶性プロピレン重合体に好適な用途に好ましく用いることができる。
より具体的な用途としては、食品包装フィルムや梱包用ヤーンに代表される包装材料、衛生製品用不織布等に代表される繊維用材料、などに好ましく用いることができる。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
(1)メルトフローレート(MFR):
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K6921に基づき、230℃、21.18N(2.16kgf)の条件で評価した。
(2)密度:
結晶化度の指標として、密度を用いた。密度は、MFR測定時に得られた押出ストランドを用い、JIS K7112 D法に準拠して密度勾配管法で測定した。
(3)Ti含量:
試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
(4)微粉量及び粗粉量
篩い分け法にて、目開き300μmを通過したパウダーの含有量を、微粉量とした。一方、目開き3350μmを通過しないパウダーの含有量を、粗粉量とした。
(5)嵩密度:
製造された結晶性プロピレン重合体の嵩密度(BD)を、ASTM D1895−69に準ずる装置を使用し、測定した。
(6)キシレン可溶分(CXS):
製造された結晶性プロピレン重合体を試料とし(約5g)、これを140℃のp−キシレン(300ml)中に一度完全に溶解させた。その後23℃まで冷却し、23℃で12時間ポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾別した後、濾液からp−キシレンを蒸発させた。p−キシレンを蒸発させた後に残ったポリマーを100℃で2時間減圧乾燥した。乾燥後のポリマーを秤量し、試料に対する重量%として、CXSの値を得た。
[実施例1]
(1)固体触媒成分(A)の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、ジエトキシマグネシウム(Mg(OEt))を200g、TiClを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A1)のTi含量は2.7wt%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A1)のスラリーを、固体成分(A1)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A1)の濃度が25g/Lとなる様に調整した。ここに、成分(A2)としてジメチルジビニルシランを25ml、成分(A3)としてジイソブチルジメトキシシラン((i−Bu)Si(OMe))を16ml、トリエチルアルミニウム(EtAl)のn−ヘプタン希釈液をEtAlとして40g添加し、30℃で2hr反応を行い、固体触媒成分(A)を得た。次いで固体触媒成分(A)を、そのまま全量予備重合に用いた。
(2)予備重合
上記で得られた固体触媒成分(A)を用いて、以下の手順により予備重合を行った。
上記の固体触媒成分(A)のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備重合触媒成分を得た。この予備重合触媒成分は、固体触媒成分(A)1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、予備重合触媒成分のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.58wt%、(i−Bu)Si(OMe)が6.2wt%含まれていた。
(3)プロピレンの重合(ii)
添付した図3に示したフローシートによって説明する。図3に示したような気相重合反応器を用いた。重合器10は、内径D:340mm、長さL:1260mm、回転軸の径:90mm、内容積:110dm攪拌機を備えた連続式横型気相重合器(長さL/直径D=3.7)である。
重合器10内を窒素置換後、500μm以下の重合体粒子を除去したポリプロピレン粉末(平均粒径1500μm)を25kg導入し、上記で得られた固体触媒成分(A)の予備重合触媒成分をn−ヘキサンスラリーとして供給配管1から重合器10内に連続的に供給した。予備重合触媒成分の供給速度は、ポリプロピレンの生産レートが一定の値となる様に調節した。また、トリエチルアルミニウムの17重量%n−ヘキサン溶液を固体触媒成分(A)中のMg原子1モルに対し、アルミニウムのモル比が5となるように連続的に供給した。また、(i−Bu)Si(OMe)を結晶化度調整剤供給配管3から、重合器10内に連続的に供給した。また、重合器10内の水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.0043となるように水素を、重合器10内のプロピレン分圧が2.0MPa、温度が65℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ重合器10内に供給した。重合器10から排出される未反応ガスは、未反応ガス抜き出し配管14を通して、反応器系外に抜き出し、凝縮器15で未反応ガスを冷却・凝縮させて、気液分離槽11で液化プロピレンと混合ガスに分離した。混合ガスは、リサイクルガス配管18を通して重合器10に戻した。また、プロピレン重合体の分子量を調節するための水素ガスも、原料補給配管5から供給し配管18を経由して重合器10へ供給した。反応器系外で凝縮させた液化プロピレンは、補給配管4から供給されるフレッシュな原料プロピレンと一緒に原料液化プロピレン配管4から供給した。重合熱は、この配管4から供給する液化プロピレンの気化熱により除去した。
重合器10内で生成したポリプロピレンは、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となる様に重合体抜き出し配管20を通して重合器10から連続的に抜き出し、後処理/乾燥工程へ導いた。ポリプロピレンの生産レートは10.0kg/hrであった。配管20から重合体の一部を間欠的に取り出して、分析を実施したところ、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP法)により測定した重合体中のMg含有量から算出した触媒単位重量辺りの重合体収量は、43,500g−PP/g−触媒であった。また、得られたプロピレン単独重合体は、粉体の嵩密度は0.45g/ml、MFRは3.9g/10min、密度は0.9041g/ml、キシレン可溶分は3.8重量%であった。また、得られたプロピレン単独重合体の粉体を篩い分けした結果、目開き300μmを通過した微粉パウダー含有量は0.1重量%未満であり、目開き3350μmを通過しない粗粉パウダー含有量は0.11重量%であった。結果を表1に示す。
(4)プロピレンの重合(i)
プロピレンの重合(ii)において、ポリプロピレンの生産レートを約30%上げるよう、予備重合触媒成分の供給量を固体触媒成分(A)として0.23g/時から0.35g/時に高め、また、水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.0040とした以外は、プロピレンの重合(ii)と同様にしてプロピレンの重合を行った。
ポリプロピレンの生産レートは、12.9kg/hrであった。得られた重合体の性状を表1に示す。
プロピレンの重合(ii)で得られた重合体と比較して、密度が0.0009高まり、キシレン可溶分は0.8減少した。この差は、二軸延伸フィルムへ加工する時の延伸性に悪影響が生じると考えられた。
(5)プロピレンの重合(iii)
プロピレンの重合(ii)において、ポリプロピレンの生産レートを約30%下げるよう、予備重合触媒成分の供給量を固体触媒成分(A)として0.23g/時から0.13g/時に減らし、また、水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.0050とした以外は、プロピレンの重合(ii)と同様にしてプロピレンの重合を行った。
ポリプロピレンの生産レートは、6.9kg/hrであった。得られた重合体の性状を表1に示す。
プロピレンの重合(ii)で得られた重合体と比較して、密度が0.0004低くなり、キシレン可溶分は0.2増えた。この差は、二軸延伸フィルムの剛性が低くなると考えられた。
(6)プロピレンの重合(iv)
プロピレンの重合(ii)において、ポリプロピレンの生産レートを約30%上げるよう、予備重合触媒成分の供給量を固体触媒成分(A)として0.23g/時から0.34g/時に高め、また、水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.0038とし、さらに、(i−Bu)Si(OMe)の供給量を0.007にした。他はプロピレンの重合(ii)と同様にして、プロピレンの重合を行った。
ポリプロピレンの生産レートは、13.1kg/hrであった。得られた重合体の性状を表1に示す。
プロピレンの重合(ii)で得られた重合体と比較して、同等の性状の重合体が得られた。
ここで、(i−Bu)Si(OMe)の供給量を0.007としたのは、プロピレンの重合(i)において、(i−Bu)Si(OMe)の供給量を0.20のままとした場合、得られる重合体の密度が高くなることが把握できていたので、(i−Bu)Si(OMe)の供給量と重合体の密度との、関係マスターカーブを作成したうえで、両者の相関から決定したものである。
(7)プロピレンの重合(v)
プロピレンの重合(iii)において、反応器から抜き出した重合体の密度が0.9037であったことから、密度を0.9041程度にまで高めるために、(i−Bu)Si(OMe)の供給量を増やしていき、最終的に0.28とした。その他の条件は、経時的な条件の変動もあり、表1に示すものであった。ポリプロピレンの生産レートは、7.9kg/hrであった。得られた重合体の性状を表1に示す。プロピレンの重合(ii)で得られた重合体と比較して、同等の性状の重合体が得られた。
(8)プロピレンの重合(vi)
プロピレンの重合(ii)において、ポリプロピレンの生産レートを約40%上げるよう、予備重合触媒成分の供給量を固体触媒成分(A)として0.23g/時から0.41g/時に高め、また、水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比を0.0037とし、さらに、(i−Bu)Si(OMe)の供給量を0にした。他はプロピレンの重合(ii)と同様にして、プロピレンの重合を行った。
ポリプロピレンの生産レートは、14.3kg/hrであった。得られた重合体の性状を表1に示す。
プロピレンの重合(ii)で得られた重合体と比較して、同等の性状の重合体が得られた。
ここで、(i−Bu)Si(OMe)の供給量を0としたのは、プロピレンの重合(iv)、(ii)及び(v)において、(i−Bu)Si(OMe)の供給量を増減した場合に、得られる重合体の密度ほぼ一定であったことから、(i−Bu)Si(OMe)の供給量と重合体の密度との、関係マスターカーブを作成したうえで、両者の相関から決定したものである。
以上の通り、得られる重合体の密度に応じて、結晶化度調整剤(i−Bu)Si(OMe)の供給量を調整することで、一定性状(特に密度において)の重合体が簡便に製造できることが具体的に実現できた。
[実施例2]
(1)プロピレンの重合(x)
添付した図3に示したフローシートによって説明する。図3に示したような気相重合反応器を用いた。重合器10は、内径D:340mm、長さL:1260mm、回転軸の径:90mm、内容積:110dm攪拌機を備えた連続式横型気相重合器(長さL/直径D=3.7)である。
重合器10内を窒素置換後、500μm以下の重合体粒子を除去したポリプロピレン粉末(平均粒径1500μm)を25kg導入し、上記で得られた固体触媒成分(A)の予備重合触媒成分をn−ヘキサンスラリーとして供給配管1から重合器10内に連続的に供給した。予備重合触媒成分の供給速度は、ポリプロピレンの生産レートが一定の値となる様に調節した。また、トリエチルアルミニウムの17重量%n−ヘキサン溶液を固体触媒成分(A)中のMg原子1モルに対し、アルミニウムのモル比が5となるように連続的に供給した。また、重合器10内の水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.0037となるように水素を、重合器10内のプロピレン分圧が2.0MPa、温度が65℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ重合器10内に供給した。重合器10から排出される未反応ガスは、未反応ガス抜き出し配管14を通して、反応器系外に抜き出し、凝縮器15で未反応ガスを冷却・凝縮させて、気液分離槽11で液化プロピレンと混合ガスに分離した。混合ガスは、リサイクルガス配管18を通して重合器10に戻した。また、プロピレン重合体の分子量を調節するための水素ガスも、原料補給配管5から供給し配管18を経由して重合器10へ供給した。反応器系外で凝縮させた液化プロピレンは、補給配管4から供給されるフレッシュな原料プロピレンと一緒に原料液化プロピレン配管4から供給した。重合熱は、この配管4から供給する液化プロピレンの気化熱により除去した。
重合器10内で生成したポリプロピレンは、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となる様に重合体抜き出し配管20を通して重合器10から連続的に抜き出し、後処理/乾燥工程へ導いた。ポリプロピレンの生産レートは14.3kg/hrであった。配管20から重合体の一部を間欠的に取り出して、分析を実施したところ、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP法)により測定した重合体中のMg含有量から算出した触媒単位重量辺りの重合体収量は、34,900g−PP/g−触媒であった。結果を表1に示す。
(2)プロピレンの重合(vii)
プロピレンの重合(x)において、生産レートをプロピレンの重合(x)に対して約10%低下させるよう重合触媒成分の供給量を調整した。ここで結晶化度調整剤(C)として(i−Bu)Si(OMe)を固体触媒成分(A)を含んだn−ヘキサンスラリーに、固体触媒成分(A)中のTi含有量に対するモル比が0.08mol−Si/mol−Tiとなるように追添し、固体触媒成分(A)と結晶化度調整剤(C)を事前接触処理した後、触媒スラリーを反応器10へ供給した。また、水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.0038とした。得られた重合体の性状等を表1に示す。
(3)プロピレンの重合(viii)
プロピレンの重合(vii)において、生産レートをプロピレンの重合(vii)に対して約25%低下させるよう重合触媒成分の供給量を調整した。ここで結晶化調整剤(C)として(i−Bu)Si(OMe)を、固体触媒成分(A)を含んだn−ヘキサンスラリーに、固体触媒成分(A)中のTi含有量に対するモル比が0.18mol−Si/mol−Tiとなるように追添し、固体触媒成分(A)と結晶化度調整剤(C)を事前接触処理した後、触媒スラリーを反応器10へ供給した。また、水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.0038とした。得られた重合体の性状等を表1に示す。
(4)プロピレンの重合(ix)
プロピレンの重合(viii)において、生産レートをプロピレンの重合(viii)に対して約20%低下させるよう重合触媒成分の供給量を調整した。ここで結晶化調整剤(C)として(i−Bu)Si(OMe)を、固体触媒成分(A)を含んだn−ヘキサンスラリーに、固体触媒成分(A)中のTi含有量に対するモル比が0.38mol−Si/mol−Tiとなるように追添し、固体触媒成分(A)と結晶化度調整剤(C)を事前接触処理した後、触媒スラリーを反応器10へ供給した。また、水素濃度のプロピレン濃度に対するモル比が0.0040とした。得られた重合体の性状等を表1に示す。
プロピレンの重合(x)を基準として生産レート(kg/時間)を14.3(x)→13.0(vii)→9.9(viii)→8.1(ix)と下げた場合に、生産レートに応じて低下する重合体の密度を、関係マスターカーブを作成したうえで、生産レート低下後の結晶化度調整剤(C)の供給量を変えない場合の得られる重合体の結晶化度を、生産レート−結晶化度関係マスターカーブを用いて求め、次に結晶化度調整剤(C)供給量−結晶化度関係マスターカーブから、生産レート低下前(実施例2(x)の重合体と同等の結晶化度が得られる結晶化度調整剤(C)の供給量を決定(結晶化調整剤(C)の増量)することで、密度一定に保つことができた。
以上のとおり、一定性状(特に密度において)の重合体が簡便に製造できることが具体的に実現し、判明した。
なお、実施例2において結晶化度調整剤(C)を触媒供給タンクに供給したのちに、結晶化調整剤(C)の濃度を下げるために、上記のとおり触媒成分を追添することで実現できた。
Figure 0005862501
表1から明らかなように、本発明のポリプロピレンの製造方法は、生産レートが大きく異なる場合においても重合体の結晶性を一定に制御することが可能であった。更に、触媒活性や生産性がいずれの場合も高く維持することが可能であった。
したがって、本発明のポリプロピレンの製造方法によれば、生産レートを変化させて連続的に製造する場合であっても、要求された結晶化度に簡便に精度良くコントロールして製造することが可能であり、ひいては、要求された結晶化度に簡便に精度良く、高生産、高効率、低コスト、高品質に製造することが可能であることが実証された。
本発明の結晶性プロピレン重合体の製造方法は、要求された結晶化度に簡便に精度良くコントロールして製造することが可能であり、制御された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を、高生産、高効率に、低コストで製造可能となる。こうして得られたポリプロピレンは、例えば、食品包装材料などに用いられる二軸延伸フィルムに代表されるフィルム用途に好適に用いることができる。
1 触媒成分供給配管
2 有機アルミニウム供給配管
3 結晶化度調整剤供給配管
4 原料プロピレン補給配管
5 原料補給配管(水素、α−オレフィンなど)
10 重合器
11 気液分離槽
12 反応器上流末端
13 反応器下流末端
14 未反応ガス抜き出し配管
15 凝縮器
16 原料液化プロピレン補給配管
17 圧縮機
18 原料混合ガス供給配管
19 軸
20 重合体抜出配管

Claims (8)

  1. 下記の成分(A1)を必須成分とする固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を含む重合用触媒の存在下で、結晶性プロピレン重合体を連続的に製造する方法において、
    少なくとも、固体触媒成分(A)供給手段、原料供給手段、重合反応手段及び重合体排出手段を有する製造装置を使用し、
    少なくとも1つの製造条件(a)にて製造される結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求める工程(ア)、
    工程(ア)における製造条件(a)及び前記結晶化度を用いて、調整された結晶化度を有する結晶性プロピレン重合体を製造条件(b)にて製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)を決定する工程(イ)、及び、
    工程(イ)において決定された結晶化度調整剤(C)の供給量に従い、製造条件(b)にて結晶性プロピレン重合体を製造する工程(ウ)を含み、
    製造条件(b)は、製造条件(a)と生産レートが異なることを特徴とする結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法。
    成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン並びにフタル酸誘導体及び/又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物を必須成分として含有する固体成分
  2. 結晶化度調整剤(C)は、下記一般式(1)で表される成分であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性プロピレン重合体の連続製造方法。
    1112 Si(OR13 (1)
    (式中、R11は、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R12は、水素、ハロゲン、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群より選ばれる任意の遊離基を表し、R13は、炭化水素基を表し、0≦f≦2,1≦g≦3,f+g=3である。)
  3. 前記結晶化度は、密度により評価するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶性プロピレン重合体の連続製造方法。
  4. 製造条件(b)は、製造条件(a)と固体触媒成分(A)供給量及び/又は水素供給量が異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶性プロピレン重合体の連続製造方法。
  5. 工程(ア)は、2つ以上の製造条件(a)にて製造された2種以上の結晶性プロピレン重合体の結晶化度を求めるものであり、
    工程(イ)は、工程(ア)における2つ以上の製造条件(a)及び前記2種以上の結晶性プロピレン重合体の結晶化度を用いて、生産レートと結晶化度との関係マスターカーブ(1)及び/又は結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)と結晶化度との関係マスターカーブ(2)を作成したうえで、製造条件(b)にて結晶性プロピレン重合体を製造する際の結晶化度調整剤(C)の供給量(0を含む。)を決定するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶性プロピレン重合体の連続製造方法。
  6. 工程(ウ)は、工程(イ)において供給量が0以外に決定された結晶化度調整剤(C)を、前記固体触媒成分(A)供給手段及び/又は前記重合反応手段へ供給して、製造条件(b)にて製造するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶性プロピレン重合体の連続製造方法。
  7. 固体触媒成分(A)は、前記成分(A1)、下記成分(A2)、下記成分(A3)及び下記成分(A4)を接触処理してなることを特徴とする請求項1〜6に記載の結晶性プロピレン重合体の連続製造方法。
    成分(A2):ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物
    成分(A3):下記一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物
    Si(OR (2)
    (式中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状又は環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一又は異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
    成分(A4):有機アルミニウム化合物
  8. 前記重合反応手段は、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応器からなり、気相法により製造することを特徴とする請求項1〜7に記載の結晶性プロピレン重合体の連続製造方法。
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