JP2009024074A - ポリプロピレンの製造方法 - Google Patents

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敬治 福田
Hagumu Kozai
育 香西
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Abstract

【課題】特に、延伸フィルム用途に適したポリプロピレンを高い生産性で、とりわけ極めて微粉の生成が少ない条件で、製造する方法を提供する。
【解決手段】反応熱を主として液化プロピレンの気化熱により除去する気相法重合プロセスにおいて、密度が0.900〜0.906g/cm、かつ、p−キシレン溶解成分(CXS)が3.0〜10.0重量%であるポリプロピレンを製造する方法であって、下記の成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)を接触処理してなる固体触媒成分(A)を用いることを特徴とするポリプロピレンの製造方法等。成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン又はフタル酸誘導体などを含有する固体成分。成分(A2):ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物。成分(A3):特定の有機ケイ素化合物成分(A4):有機アルミニウム化合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレンの製造方法に関し、更に詳しくは、特定の気相法重合プロセスと特定の固体触媒成分を用いることにより、適度な結晶性を有するポリプロピレンを高い生産性で、とりわけ極めて微粉の生成が少ない条件で、製造する方法に関する。
ポリプロピレンは、剛性や耐熱性などの機械的物性が良好であり、比較的安価に製造することが可能なことから、広い用途に適用されている。代表的な用途の一つとして、食品包装材料などに用いられるBOPPフィルム(二軸延伸フィルム)の様な延伸フィルムが挙げられる。延伸を行うことにより腰などのフィルム物性を著しく向上させることができるが、延伸工程の生産性、すなわち、成形スピードを高くする為には、用いられるポリプロピレンの結晶性を適度な値に制御することが重要である。結晶性が高すぎると、破膜などの問題が発生して延伸できない。逆に、結晶性が低すぎると、延展性は問題ないが、得られるフィルムの物性が低下する。
延展性を高めるために、ポリプロピレンの結晶性を適度な値に制御する方法として、少量のエチレンと共重合を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、この手法は、延展性を高めることはできるが、同時に融点を低下させるために、ポリプロピレンの大きな特徴である耐熱性を低下させてしまう。加えて、この方法では、キシレン可溶分(以下、CXSと称することもある)に代表される非晶性成分が少量しか存在しないために、帯電防止剤がフィルム表面にブリードし難く、帯電防止性能が充分に発現しないという問題がある。
この様な問題を解決するために、プロピレン単独重合体の立体規則性をある程度低下させることにより結晶性を望ましい値に制御する方法も提案されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。この方法は、ポリプロピレンの結晶性を望ましい値に制御すると同時に、帯電防止性能に必要なCXSも増加させることが可能であるという点で優れている。
しかしながら、この手法を用いる場合には、ドナー成分として用いるルイス塩基の使用量を下げたり、アルミニウム化合物などの異物を共担持したりする場合が多く、固体触媒成分の粒子強度を低下させる恐れがある。
一方、ポリプロピレンの製造プロセスに関しては、工程の簡略化と生産コストの低減及び生産性の向上などの観点で、技術改良が続けられてきた。ポリプロピレンが工業的に製造され始めた当時は、触媒の性能が低く、得られたポリプロピレンから触媒残さやアタクチックポリマーを除去する工程が必要であり、溶媒を用いたスラリー法などのプロセスが主体であった。その後、触媒性能が格段に進歩するにつれ、現在では、気相法重合プロセスが主流となっている。各種気相法重合プロセスの中でも、液化プロピレンの潜熱を利用して重合熱を除去する方法は、小さな設備で大きな除熱能力を持つことができる点で優位性のあるものである。
液化プロピレンの蒸発潜熱を利用して、重合熱を除去する形式のオレフィンの気相重合槽として、水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応器が知られている。
一般的に、重合反応により触媒粒子は、ポリマー粒子へと徐々に成長していく。横型反応器で重合を行う場合、重合によるポリプロピレンの生成と機械的な撹拌の2つの力により、これらの粒子は、徐々に成長しながら反応器の軸方向に沿って進んでいく。そのため、反応器の上流から下流に向かって、成長度すなわち滞留時間のそろった粒子が経時的に並ぶことになる。すなわち、横型反応器では、フローパターンがピストンフロー型となり、完全混合槽を数台直列に並べた場合と同程度に、滞留時間分布を狭くする効果がある。これは、その他の重合反応器には見られない、優れた特徴であり、単一の反応器で2個、3個又はそれ以上の反応器と同等な固体混合度を容易に達成することができる点で、経済的に有利である。
ポリプロピレンの製造を行う際に、液化プロピレンの蒸発潜熱を利用して、重合熱の除去を行い、かつ、水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型筒状反応器を用いる手法は、上記の様な優れた特徴を有している。
この様に、液化プロピレンの潜熱を利用した気相法重合プロセスは、優れた特徴を有しているが、適度な結晶性を有するポリプロピレンを製造する場合には、生産性の面で解決すべき課題を抱えている。反応器内部のガスの一部を取り出して、実質的に液化させることなく冷却した上で反応器に戻すことを特徴とする、顕熱を利用して除熱する気相法とは、異なり、この様なプロセスでは、反応器内部に気体のプロピレンと液体のプロピレンが混在するために、重合反応場が不均一になりやすい。ポリプロピレンの結晶性を適度な値に制御するために、アルキルアルコキシシラン化合物に代表される重合添加剤の量を下げると、重合反応場の不均一性との相乗効果により得られるポリプロピレンの結晶性が粒子間で不均一になったり、経時的に安定しなかったりするという問題がある。加えて、気相法重合プロセスでは、比較的粒子強度が低くなりやすい粒径の大きな触媒を用いることが多く、前記した通り、粒子強度が低下すると、粒子崩壊に伴う微粉の発生が顕著になり、プロセスの生産性を著しく阻害するという問題がある。攪拌機を用いて混合するプロセスの場合は、翼先端などで強い剪断力が掛かる場合があり、この問題を助長する恐れがある。
適度な値の結晶性を有するポリプロピレン向けの触媒として、触媒における不均一性を低減するために、特定のアルキルアルコキシシラン化合物を固体触媒成分と、事前に接触させた上で、重合に使用する方法も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、この方法を主に液化プロピレンの潜熱を用いて除熱する気相法重合プロセスに適用した場合には、結晶性の均一化・安定化効果が充分ではなく、触媒活性も低いといった問題があった。
本発明者等が知る限りでは、主に液化プロピレンの潜熱を用いて除熱する気相法重合プロセスにおいて、適度な結晶性を有するポリプロピレンを製造する際に、生産性という意味では、未だ充分な性能を示すものはなく、更なる改良技術の開発が望まれている。
特開昭59−135209号公報 特開平11−228615号公報 特開平07−157510号公報 特開平10−007727号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、特に、延伸フィルム用途に適したポリプロピレンを高い生産性で、とりわけ極めて微粉の生成が少ない条件で、製造する方法を提供することにある。
本出願人は、プロピレン向けの重合触媒として、特定の有機ケイ素化合物とビニルシラン化合物を用いると、フィルム用途に適した適度な立体規則性かつ高活性な触媒を得ることができることを見出し、特許出願を行っている。この手法は、スラリー重合法では、適度な立体規則性と高活性を両立するものであるが、主に液化プロピレンの潜熱を用いて除熱する気相法重合プロセスに適用した場合には、結晶性の均一化・安定化効果が充分ではなく、触媒活性も低いといった問題があった。
本発明者等は、上記課題を解決するため、この手法に関して、有機ケイ素化合物の構造に関する検討を推し進め、加えて、Ti種の還元状態を改善すべく、アルキルアルミニウム化合物の処理条件を鋭意検討したところ、主に液化プロピレンの潜熱を用いて除熱を行う気相法重合プロセスと組み合わせた場合、立体規則性、すなわち、ポリプロピレンの結晶性を安定に制御し、かつ、微粉の発生を極限まで抑制することにより、ポリプロピレンの製造における生産性を著しく高めることができる事実を見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、反応熱を主として液化プロピレンの気化熱により除去する気相法重合プロセスにおいて、密度が0.900〜0.906g/cm、かつ、23℃でp−キシレンに溶解する成分(CXS)が3.0〜10.0重量%であるポリプロピレンを製造する方法であって、
下記の成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)を接触処理してなる固体触媒成分(A)を用いることを特徴とするポリプロピレンの製造方法が提供される。
成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン、フタル酸誘導体又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物から選ばれる少なくとも一種を必須成分として含有する固体成分
成分(A2):ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物
成分(A3):下記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物
Si(OR …(1)
(式中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状又は環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一又は異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
成分(A4):有機アルミニウム化合物
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記固体触媒成分(A)は、成分(A1)、(A2)、(A3)および(A4)を接触させた後に、予備重合を行うことを特徴とするポリプロピレンの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、前記固体触媒成分(A)に含有される成分(A3)の量は、3〜10重量%であることを特徴とするポリプロピレンの製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記成分(A1)中のマグネシウムは、ジアルコキシマグネシウム由来のものであることを特徴とするポリプロピレンの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記気相法重合プロセスは、内部に水平軸周りに回転する攪拌機を有する横型反応器を用いて重合することを特徴とするポリプロピレンの製造方法が提供される。
一方、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係るポリプロピレンの製造方法を用いることを特徴とするフィルム用ポリプロピレン重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明に係るフィルム用ポリプロピレン重合体の製造方法を用いることを特徴とするポリプロピレンフィルムの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、フィルムが延伸フィルムであることを特徴とするポリプロピレンフィルムの製造方法が提供される。
本発明は、上記した如く、ポリプロピレンの製造方法などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)メルトフローレート(試験条件:230℃、荷重2.16kgf)(MFR)が0.01〜50g/10分であることを特徴とする上記のポリプロピレンの製造方法。
(2)成分(A1)の固体成分は、チタン、マグネシウム、ハロゲン及びフタル酸誘導体を必須成分として含有することを特徴とする上記のポリプロピレンの製造方法。
(3)成分(A3)の有機ケイ素化合物を表す一般式(1)中のRは、i−ブチル基、2,2−ジメチル−プロピル基、2−メチル−ブチル基、シクロペンチル−メチル基、又はシクロヘキシル−メチル基であることを特徴とする上記のポリプロピレンの製造方法。
(4)成分(A3)の有機ケイ素化合物は、(i−Bu)Si(OMe)、(i−Pr)(i−Bu)Si(OMe)、(i−Pen)(i−Bu)Si(OMe)、(i−Bu)(Me)Si(OMe)、(i−Bu)(Et)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Pr)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Bu)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Bu)Si(OMe)、t−BuCH(Me)Si(OMe)、t−BuCH(Et)Si(OMe)、t−BuCH(n−Pr)Si(OMe)、(t−BuCH)(i−Bu)Si(OMe)、(t−BuCHSi(OMe)、(c−HexCH)(Me)Si(OMe)、(c−HexCH)(Et)Si(OMe)、(c−PenCHSi(OMe)、及び(c−HexCH)(i−Bu)Si(OMe)からなる群から選ばれる一種、特に(i−Bu)Si(OMe)であることを特徴とする上記のポリプロピレンの製造方法。
本発明のポリプロピレンの製造方法によれば、適度な結晶性を有するポリプロピレンを安定的に製造することができる。また、触媒活性が非常に高いので、製造コストも低減することができ、生産性が高く、上記ポリプロピレンを効率よく製造することができる。こうして得られたポリプロピレンは、特に食品包装材料などに用いられる二軸延伸フィルムに代表されるフィルム用途に、好適に用いることができる。
本発明のポリプロピレンの製造方法などを、触媒、製造プロセス及び条件、ポリプロピレン、ポリプロピレンの用途について、以下に、具体的かつ詳細に説明する。
I.触媒
本発明は、ポリプロピレン合成用の触媒として、
(A1)チタン、マグネシウム、ハロゲン、フタル酸誘導体、又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物から選ばれる少なくとも一種を必須成分として含有する固体成分、
(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、
(A3)下記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物、及び、
Si(OR …(1)
(式中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状又は環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一又は異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
(A4)有機アルミニウム化合物、
を接触させてなる固体触媒成分(A)を用いることを特徴とする。
この際、本発明の効果を損なわない範囲で、有機アルミニウム化合物(B)、有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)、などの任意成分を用いることができる。
1.固体触媒成分(A)
本発明で用いる固体触媒成分(A)は、以下の(A1)〜(A4)成分を接触させてなるものである。以下に各構成成分を詳述する。
(1)固体成分(A1)
本発明において、固体成分(A1)としては、チタン(A1a)、マグネシウム(A1b)、ハロゲン(A1c)、フタル酸誘導体(A1d)、及び/又は、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)を、必須成分として含有し、任意成分として電子供与体(A1f)を用いることができる。ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の五成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を任意の形態で含んでも良いということを示すものである。チタン、マグネシウム、ハロゲン、フタル酸誘導体、及び/又は、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物類を、必須成分として、含有する固体成分自体は、公知のものであり、以下に詳述する。
(A1a)チタン:
チタン源となるチタン化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いることが望ましい。
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)Ti−O−Ti(OBu)に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることができる。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい。
また、3価のチタン化合物の具体例としては、三塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類を挙げることができる。三塩化チタンは、水素還元型、金属アルミニウム還元型、金属チタン還元型、有機アルミニウム還元型、など、公知の任意の方法で製造された化合物を用いることができる。
上記のチタン化合物類は、単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)Cl4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(COBu)・TiClなどの化合物)、などを用いることができる。
(A1b)マグネシウム:
マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物類、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物類、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物類、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物類、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物類、ブチルエチルマグネシウムに代表される有機金属マグネシウム化合物類、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸及び有機酸のマグネシウム塩化合物類、及びそれらの混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)Cl2−m;0<m<2などの化合物)、などを用いることができる。この中で好ましいのはハロゲン化マグネシウム化合物類、アルコキシマグネシウム化合物類、グリニャール化合物類等があげられる。
特に大きな粒子を作る場合には、触媒粒径を制御しやすいジアルコキシマグネシウムを用いることが好ましい。ジアルコキシマグネシウムは、事前に製造されたものを用いるだけでなく、触媒製造工程の中で金属マグネシウムとハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物の存在下にアルコールを反応させて得たものでも良い。
更に、本発明において、成分(A1b)として、好適なジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は、不定形あるいは球状のものを使用することができる。例えば、球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上する。
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1〜1.5である。
また、上記ジアルコキシマグネシウムとして、平均粒径が1〜200μmのものを使用することができる。好ましくは5〜150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は、1〜100μm、好ましくは5〜50μmであり、更に好ましくは10〜40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更に、その粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと、3以下であり、好ましくは2以下である。
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報などに例示されている。
(A1c)ハロゲン:
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、及びそれらの混合物を用いることができる。この中で塩素が特に好ましい。
ハロゲンは、上記のチタン化合物類及び/又はマグネシウム化合物から供給されるのが一般的であるが、その他の化合物より供給することもできる。代表的な例としては、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物類、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物類、1,2−ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物類、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物類、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物類、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物類、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物類、などを挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いるだけでなく、併用することも可能である。この中で、四塩化ケイ素が特に好ましい。
(A1d)フタル酸誘導体:
フタル酸誘導体(A1d)としては、フタル酸、フタル酸エステル、フタル酸無水物、フタル酸ハライド、フタル酸アミド、などを用いることができる。
フタル酸エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることができる。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1〜20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2〜12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることもできる。
また、フタル酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることができる。中でも、塩素が最も好ましい。
さらに、フタル酸アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることができる。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することができる。
フタル酸誘導体として、芳香環の任意の場所に任意の数だけ任意の置換基を有することができる。置換基の例としては、脂肪族の遊離基、芳香族の遊離基、脂肪族のアルコキシ基、芳香族のアルコキシ基、脂肪族のアミノ基、芳香族のアミノ基、ハロゲン、などを例示することができる。
これらのフタル酸誘導体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。また、同一分子内に異なる官能基を有していても良い。これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、無水フタル酸に代表されるフタル酸無水物類、などである。
(A1e)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物:
本発明で用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(2)にて表される化合物を用いることが望ましい。
O−C(R−C(R−C(R−OR …(2)
(一般式(2)中、R及びRは、水素、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
一般式(2)中、Rは、水素、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。
として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、Rとして、分岐状脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
二つのRは、結合して一つ以上の環を形成しても良い。この際、環構造中に2個又は3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取ることもできる。また、他の環式構造と縮合していても良い。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していても良い。環上の置換基は、一般に、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
一般式(2)中、Rは、水素、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。具体的には、Rは、Rの例示から選ぶことができる。好ましくは水素である。
また、一般式(2)中、Rは、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、Rは、Rが炭化水素基である場合の例示から選ぶことができる。好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基であることが望ましく、更に好ましくはアルキル基であることが望ましい。最も好ましくはメチル基である。
さらに、R〜Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、又はケイ素から選ばれることが望ましい。また、R〜Rが炭化水素基であるかヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいても良い。R〜Rがヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は、炭化水素基である場合の例示から選ばれることが望ましい。また、RからRの八個の置換基は、お互いに同一であっても異なっても良い。
本発明で用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、1,1−ビス(1’−ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1−ビス(α−メトキシベンジル)インデン、1,1−ビス(フェノキシメチル)−3,6−ジシクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7−ビス(メトキシメチル)−2,5−ノボルナジネン、などを挙げることができる。
中でも、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、が特に好ましい。
これらの少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(A1f)電子供与体:
固体成分(A1)は、任意成分として、電子供与体(A1f)を含有しても良い。電子供与体(A1f)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが望ましい。
電子供与体として、用いることのできる有機酸化合物としては、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族及び脂肪族のスルホン酸化合物類、などを例示することができる。これらのカルボン酸化合物類及びスルホン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
電子供与体として、用いることのできる有機酸の誘導体化合物としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミド、などを例示することができる。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることができる。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1〜20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2〜12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることもできる。
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることができる。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は、複数のハロゲンが同一であっても異なっていても良い。
アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることができる。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することができる。
電子供与体として、用いることのできる無機酸化合物としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することができる。これらの無機酸の誘導体化合物としては、エステルを用いることが望ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、などを具体例として挙げることができる。
また、電子供与体として、用いることのできるエーテル化合物としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物類、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物類、などを例示することができる。
電子供与体として、用いることのできるケトン化合物としては、メチルエチルケトンに代表される脂肪族ケトン化合物類、アセトフェノンに代表される芳香族ケトン化合物類、2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオンに代表される多価ケトン化合物類、などを例示することができる。
また、電子供与体として、用いることのできるアルデヒド化合物としては、プロピオンアルデヒドに代表される脂肪族アルデヒド化合物類、ベンズアルデヒドに代表される芳香族アルデヒド化合物類、などを例示することができる。
電子供与体として、用いることのできるアルコール化合物としては、ブタノールや2−エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物類、フェノール、クレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物類、グリセリンや1,1’−ビ−2−ナフトールに代表される脂肪族又は芳香族の多価アルコール化合物類、などを例示することができる。
電子供与体として、用いることのできるアミン化合物としては、ジエチルアミンに代表される脂肪族アミン化合物類、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンに代表される窒素含有脂環式化合物類、アニリンに代表される芳香族アミン化合物類、ピリジンに代表される窒素原子含有芳香族化合物類、1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2,2−ジメチルプロパンに代表される多価アミン化合物類、などを例示することができる。
また、電子供与体として、用いることのできる化合物として、上記の複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることもできる。その様な化合物の例として、酢酸−(2−エトキシエチル)や3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコシ基を分子内に有するエステル化合物類、2−ベンゾイル−安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物類、(1−t−ブチル−2−メトキシエチル)メチルケトンに代表されるケトエーテル化合物類、N,N−ジメチル−2,2−ジメチル−3−メトキシプロピルアミンに代表されるアミノエーテル化合物類、エポキシクロロプロパンに代表されるハロゲノエーテル化合物類、などを挙げることができる。
これらの電子供与体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。これらの中で好ましいのは、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、などである。
本発明における固体成分(A1)を構成する各成分の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意のものであり得るが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
チタン化合物類(A1a)の使用量は、使用するマグネシウム化合物類(A1b)の使用量に対して、モル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜10の範囲内が望ましい。マグネシウム化合物類及びチタン化合物類以外に、ハロゲン源となる化合物(A1c)を使用する場合は、その使用量は、マグネシウム化合物類及びチタン化合物類の各々がハロゲンを含むか含まないかに関わらず、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対して、モル比(ハロゲン源となる化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1〜100の範囲内が望ましい。
また、固体成分(A1)を調製する際に、任意成分として電子供与体(A1f)を用いる場合の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対して、モル比(電子供与体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001〜10の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜5の範囲内が望ましい。
本発明における固体成分(A1)は、上記の構成する各成分を、上記の量比で接触して、得られる。各成分の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは0〜100℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。
固体成分(A1)の調製の際には、中間及び/又は最後に、不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することができる。
本発明における固体成分(A1)の調製方法としては、任意の方法を用いることができる。具体的には、下記の方法を例示することができる。なお、本発明は、下記例示により何ら制限されるものではない。
(i)ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシ基含有マグネシウム化合物類に、四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類を接触させる方法。
必要に応じて、電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲンを含有するチタン化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(ii)塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物類に、チタン含有化合物類を接触させる方法。
必要に応じて、電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、チタン含有化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(iii)塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物類をアルコール化合物類、エポキシ化合物類、及び、リン酸エステル化合物類等を用いて溶解し、四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類と接触させる方法。
ハロゲンを含有するチタン化合物類と接触させる前に、スプレードライや冷却した炭化水素溶媒等の貧溶媒へ滴下する方法などを用いて粒子形成を行っても良い。また、必要に応じて、電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲンを含有するチタン化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(iv)塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物類とテトラブトキシチタンに代表されるアルコキシ基含有チタン化合物類及び特定のポリマーケイ素化合物成分を接触させて得られる固体成分に、四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類及び/又は四塩化ケイ素に代表されるハロゲンを含有するケイ素化合物類を接触させる方法。
このポリマーケイ素化合物としては、下記一般式(3)で示されるものが適当である。
[−Si(H)(R)−O−]q …(3)
(ここで、Rは、炭素数1〜10程度の炭化水素基であり、qは、このポリマーケイ素化合物の粘度が1〜100センチストークス程度となるような重合度を示す。)
具体的な化合物の例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、等を挙げることができる。また、必要に応じて、電子供与体等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲンを含有するチタン化合物類及び/又はハロゲンを含有するケイ素化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(v)ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシ基含有マグネシウム化合物類をテトラブトキシチタンに代表されるアルコキシ基含有チタン化合物類と接触させた後、ハロゲン化剤又は四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類と接触させる方法。
必要に応じて、電子供与体等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲン化剤又はハロゲンを含有するチタン化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(vi)金属マグネシウムにアルコール及び必要に応じて沃素に代表される沃素含有化合物類を接触させた後、四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類と接触させる方法。
必要に応じて、電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、ハロゲンを含有するチタン化合物類と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
(vii)ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャー試薬等の有機マグネシウム化合物類とチタン含有化合物類を接触させる方法。
チタン含有化合物類としては、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシ基含有チタン化合物類や四塩化チタンに代表されるハロゲンを含有するチタン化合物類などを用いることができる。必要に応じて、電子供与体、テトラエトキシシランに代表されるアルコキシ基含有ケイ素化合物、及び、ハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を接触させても良い。この際、任意成分は、チタン含有化合物と同時に接触させても良いし、別々に接触させても良い。
上記に例示した調製方法の中で、特に好ましいのは、上記(i)及び(v)に記載した方法である。これらの方法を用いることにより、気相法重合プロセスに好適な粒径の大きい触媒を調製することができる。
(2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物(A2)
本発明に用いられるビニルシラン化合物(A2a)、及び/又は、アリルシラン化合物(A2b)について、説明する。
ビニルシラン化合物(A2a)としては、特開平2−34707号公報及び特開2003−292522号公報に開示された化合物等を用いることができる。また、アリルシラン化合物(A2b)としては、特開2006−169283号公報に開示された化合物を用いることができる。これらのビニルシラン化合物及びアリルシラン化合物は、モノシラン(SiH)の水素原子の少なくとも一つがビニル基又はアリル基で置換され、残りの水素原子の一部ないし全部がその他の遊離基に置き換えられた構造を持つ化合物であり、下記一般式(4)及び(4’)で、表すことができる。
[CH=CH−]SiX (OR …(4)
[CH=CH−CH−]SiX (OR …(4’)
(一般式(4)及び(4’)中、Xは、ハロゲンを表す。Rは、水素又は炭化水素基を表す。Rは、水素、炭化水素基又は有機ケイ素基を表す。1≦m,0≦n≦3,0≦j≦3,0≦k≦2,p+n+j+k=4である。)
一般式(4)及び(4’)中、mは、ビニル基又はアリル基の数を表し、1以上4以下の値を取る。より好ましくは、mの値は、1又は2であることが望ましく、特に好ましくは2である。
また、一般式(4)及び(4’)中、Xは、ハロゲンを表し、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。複数存在する場合は、お互いに同一であっても異なっても良い。この中で、塩素が特に好ましい。nはハロゲンの数を表し、0以上3以下の値を取る。より好ましくは、nの値は0以上2以下であることが望ましく、特に好ましくは0である。
さらに、一般式(4)及び(4’)中、Rは、水素又は炭化水素基を表し、好ましくは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基、より好ましくは水素又は炭素数1〜12の炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。好ましいRの例としては、水素、メチル基やブチル基に代表されるアルキル基、シクロヘキシル基に代表されるシクロアルキル基、フェニル基に代表されるアリール基、などを挙げることができる。特に好ましいRの例としては、水素、メチル基、エチル基、フェニル基、などを挙げることができる。
jは、Rの数を表し、0以上3以下の値を取る。より好ましくは、jの値は、1以上3以下であることが望ましく、更に好ましくは2以上3以下であり、特に好ましくは2である。jが2以上である場合、複数存在するRは、お互いに同一であっても異なっても良い。
また、Rは、一般式(4)においてアリル基であっても良く、一般式(4’)においてビニル基であっても良い。
一般式(4)及び(4’)中、Rは、水素、炭化水素基又は有機ケイ素基を表す。Rが炭化水素基である場合は、Rと同一の化合物群から選択することができる。Rが有機ケイ素基である場合は、炭素数1〜20の炭化水素基を有する有機ケイ素基であることが好ましい。Rとして用いることのできる有機ケイ素基の具体的な例としては、トリメチルシリル基に代表されるアルキル基含有ケイ素基、ジメチルフェニルシリル基に代表されるアリール基含有ケイ素基、ジメチルビニルシリル基に代表されるビニル基含有ケイ素基、およびプロピルフェニルビニルシリル基の様なそれらを組み合わせてなるケイ素基、などを挙げることができる。
kは、Rの数を表し、0以上2以下の値を取る。一方、ビニルトリエトキシシランの様に、kの値が3に相当する化合物の場合では、本発明におけるビニルシラン化合物(A2a)としての性能は発現せず、本発明におけるアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(C)としての性能を発現するため、好ましくない。これは、構造的に近いt−ブチルトリエトキシシランと同じ様に振る舞うためと、考えられる(後述する通り、このt−ブチルトリエトキシシランは本発明におけるアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(C)として有効である)。より好ましくは、kの値は、0以上1以下であることが望ましく、特に好ましくは0である。kの値が2である場合、二つのRは、お互いに同一であっても異なっても良い。また、kの値に関わらず、RとRは、同一であっても異なっても良い。
これらのビニルシラン化合物類(A2a)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。好ましい化合物の例としては、CH=CH−SiMe、[CH=CH−]SiMe、CH=CH−Si(Cl)Me、CH=CH−Si(Cl)Me、CH=CH−SiCl、[CH=CH−]Si(Cl)Me、[CH=CH−]SiCl、CH=CH−Si(Ph)Me、CH=CH−Si(Ph)Me、CH=CH−SiPh、[CH=CH−]Si(Ph)Me、[CH=CH−]SiPh、CH=CH−Si(H)Me、CH=CH−Si(H)Me、CH=CH−SiH、[CH=CH−]Si(H)Me、[CH=CH−]SiH、CH=CH−SiEt、CH=CH−SiBu、CH=CH−Si(Ph)(H)Me、CH=CH−Si(Cl)(H)Me、 CH=CH−Si(Me)(OMe)、CH=CH−Si(Me)(OSiMe)、CH=CH−Si(Me)−O−Si(Me)−CH=CH、などを挙げることができる。これらの中でも、CH=CH−SiMe、[CH=CH−]SiMe、がより好ましく、[CH=CH−]SiMeが最も好ましい。
同様に、アリルシラン化合物類(A2b)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。好ましい化合物の例としては、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリブロモシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジエチルシラン、ジアリルジビニルシラン、ジアリルメチルビニルシラン、ジアリルメチルクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリアリルエチルシラン、トリアリルビニルシラン、トリアリルクロロシラン、トリアリルブロモシラン、テトラアリルシラン、などを挙げることができる。これらの中でも、ジアリルジメチルシランが好ましい。
ビニルシラン化合物(A2a)とアリルシラン化合物(A2b)は、各々単独で用いても良く、両者を併用しても良い。特に好ましくは、ビニルシラン化合物(A2a)を、単独で用いることが望ましい。
(3)有機ケイ素化合物(A3)
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(A3)は、下記一般式(1)にて表される化合物である。
Si(OR …(1)
(一般式(1)中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状又は環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一又は異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
一般式(1)中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状または環状の炭化水素基を表す。
として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、i−ブチル基や2,2−ジメチル−プロピル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル−メチル基(c−C−CH−)やシクロヘキシル−メチル基(c−C11−CH−)に代表される脂環式炭化水素基、ベンジル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、Rとして、分岐状脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−ブチル基、2,2−ジメチル−プロピル基、2−メチル−ブチル基、シクロペンチル−メチル基、シクロヘキシル−メチル基、などを用いることが望ましい。
一般式(1)中、Rは、炭化水素基を表す。
として、用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やn−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、Rとして、直鎖状脂肪族炭化水素基、分岐状脂肪族炭化水素基、又は、脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを用いることが望ましい。aの値が2以上である場合、複数存在するRは、同一であっても異なっても良い。
一般式(1)中、Rは、炭化水素基を表す。Rとして、用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。bの値が2以上である場合、複数存在するRは、同一であっても異なっても良い。
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(A3)の好ましい例としては、(i−Bu)Si(OMe)、(i−Pr)(i−Bu)Si(OMe)、(i−Pen)(i−Bu)Si(OMe)、(i−Bu)(Me)Si(OMe)、(i−Bu)(Et)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Pr)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Bu)Si(OMe)、(i−Bu)(n−Bu)Si(OMe)、t−BuCH(Me)Si(OMe)、t−BuCH(Et)Si(OMe)、t−BuCH(n−Pr)Si(OMe)、(t−BuCH)(i−Bu)Si(OMe)、(t−BuCHSi(OMe)、(c−HexCH)(Me)Si(OMe)、(c−HexCH)(Et)Si(OMe)、(c−PenCHSi(OMe)、(c−HexCH)(i−Bu)Si(OMe)、などを挙げることができる。
これらの有機ケイ素化合物類は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(4)有機アルミニウム化合物(A4)
本発明において用いられる有機アルミニウム化合物(A4)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(5)にて表される化合物を用いることが望ましい。
AlX(OR10 …(5)
(一般式(5)中、Rは、炭化水素基を表す。Xは、ハロゲン又は水素を表す。R10は、炭化水素基又はAlによる架橋基を表す。c≧1、0≦d≦2、0≦e≦2、c+d+e=3である。)
一般式(5)中、Rは、炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜6、のものを用いることが望ましい。Rの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることができる。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基、が最も好ましい。
また、一般式(5)中、Xは、ハロゲン又は水素である。Xとして用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。この中で、塩素が特に好ましい。
さらに、一般式(5)中、R10は、炭化水素基又はAlによる架橋基である。R10が炭化水素基である場合には、Rの炭化水素基の例示と同じ群からR10を選択することができる。また、有機アルミニウム化合物(A4)として、メチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合R10は、Alによる架橋基を表す。
有機アルミニウム化合物(A4)として、用いることのできる化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることができる。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
2.固体触媒成分(A)の調製方法
本発明における固体触媒成分(A)は、(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)下記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物、
Si(OR …(1)
(式中、RはSiのβ位に2級ないし3級の炭素原子を有する直鎖状または環状の炭化水素基であり、RはRと同一もしくは異なる炭化水素基であり、Rは炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
並びに、(A4)有機アルミニウム化合物を、接触させてなるものである。この際、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を任意の方法で接触させても良い。固体触媒成分(A)の各構成成分の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50℃〜200℃程度、好ましくは−10℃〜100℃、更に好ましくは0℃〜70℃、とりわけ好ましくは10℃〜60℃である。
また、接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、及び、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。好ましくは、不活性希釈剤の存在下に、撹拌により接触させる方法を用いることが望ましい。
本発明における固体触媒成分(A)を構成する各成分の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意のものであり得るが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物(A2)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物(A2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜100の範囲内が望ましい。
また、一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)を用いる場合の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比で(一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1〜100の範囲内が望ましい。
さらに、固体触媒成分(A)中の一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)の含量は、ある範囲に調整することが好ましい。(A3)の担持量が高すぎると、得られるポリプロピレンの密度が高すぎたり、CXSが低すぎたりして、好ましくない。逆に(A3)の担持量が低すぎると、密度が低すぎたり、CXSが高すぎたりして、好ましくない。(A3)の使用量と担持量の関係は、固体成分(A1)や固体触媒成分(A)の調整方法によって異なるが、上記に示す好ましい使用量の範囲内で使用量を調整することにより、好ましい担持量とすることができる。
また、固体触媒成分(A)中の一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)の含量の好ましい範囲は、2〜10wt%、より好ましくは3〜10wt%、さらに好ましくは3〜8wt%、最も好ましくは4〜7wt%である。
さらに、有機アルミニウム化合物(A4)の使用量は、固体成分(A1)を構成するチタン成分に対するアルミニウムの原子比(アルミニウム原子のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.1〜100の範囲内であり、特に好ましくは1〜50の範囲内が望ましい。
(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物、並びに、(A4)有機アルミニウム化合物の接触手順に関しては、任意の手順を用いることができる。具体的な例としては、下記の手順(i)〜手順(iii)が挙げられる。
手順(i):
(A1)固体成分に、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物を接触させた後、(A3)一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物を接触させ、更に(A4)有機アルミニウム化合物を接触させる方法。
手順(ii):
(A1)固体成分に、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物を接触させ、その後に(A4)有機アルミニウム化合物を接触させる方法。
手順(iii):
全ての化合物を同時に接触させる方法。
また、(A1)固体成分に対して、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウム化合物、のいずれについても、複数回接触させることができる。この際、複数回用いる化合物がお互いに同一であっても異なっても良い。
さらに、固体触媒成分(A)の調製の際には、中間及び/又は最後に、不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することができる。
3.触媒におけるその他の任意成分
本発明においては、触媒として固体触媒成分(A)を用いることが必須要件であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、下記に説明する有機アルミニウム化合物(B)、有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)、などの任意成分を用いることができる。
(B)有機アルミニウム化合物:
本発明の触媒において、任意成分として用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、固体触媒成分(A)を調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物(A4)における例示と同じ群から選択することができる。この際、有機アルミニウム化合物(B)と有機アルミニウム化合物(A4)が同一であっても異なっても良い。
有機アルミニウム化合物(B)は、単独の化合物を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(C)有機ケイ素化合物:
本発明の触媒において、任意成分として用いられる有機ケイ素化合物(C)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、下記一般式(6)にて表される化合物を用いることが望ましい。
1112 Si(OR13 …(6)
(一般式(6)中、R11は、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R12は、水素、ハロゲン、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。R13は、炭化水素基を表す。0≦f≦2,1≦g≦3,f+g=3である。)
一般式(6)中、R11は、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
11として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数3〜10のものである。R11として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、R11として分岐状脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
11がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましく、とりわけ、窒素又は酸素であることが望ましい。R11のヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、R11が炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
一般式(6)中、R12は、水素、ハロゲン、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
12として用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。R12が炭化水素基である場合は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。R12として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
12がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、R11がヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
fの値が2の場合、二つあるR12は、同一であっても異なっても良い。また、fの値に関わらず、R12とR11は、同一であっても異なっても良い。
一般式(6)中、R13は、炭化水素基を表す。R13として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のものである。R13として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。bの値が2以上である場合、複数存在するR13は、同一であっても異なっても良い。
本発明で用いられるアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(C)の好ましい例としては、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)
Figure 2009024074
などを挙げることができる。
この際、一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物(A3)と任意成分として用いられる有機ケイ素化合物(C)とが同一であっても異なっても良い。
有機ケイ素化合物(C)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(D)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物:
本発明の触媒において、任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、固体触媒成分(A)において用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)における例示と同じ群から選択することができる。この際、固体触媒成分(A)を調製する際に用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A1e)と、触媒の任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)とが同一であっても異なっても良い。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
(E)その他の化合物:
本発明の効果を損なわない限り、上記有機アルミニウム化合物(B)、有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)以外の成分を、触媒の任意成分として、用いることができる。例えば、特開2004−124090号公報に開示された様に、分子内に、C(=O)N結合を有する化合物(E)を用いることにより、CXSの様な非晶性成分の生成を抑制することができる。この場合、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、などを、好まし例として挙げることができる。また、ジエチル亜鉛の様なAl以外の金属原子を持つ有機金属化合物を用いることもできる。
4.任意成分の使用量
発明の触媒における上記任意成分の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものであり得るが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
有機アルミニウム化合物(B)を用いる場合の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(B)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは10〜500の範囲内が望ましい。
また、有機ケイ素化合物(C)を用いる場合の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機ケイ素化合物(C)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
さらに、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)を用いる場合の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
5.予備重合
本発明における固体触媒成分(A)は、本重合で使用する前に予備重合されていても良い。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げることができる。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
固体触媒成分(A)として、予備重合されたものを用いる場合には、固体触媒成分(A)の調製手順において、任意の手順で予備重合を行うことができる。例えば、(A1)固体成分を予備重合した後に、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウム化合物を接触させることができる。
また、(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウム化合物を接触させた後に予備重合を行うこともできる。
上記に加えて、(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物、(A4)有機アルミニウム化合物を接触させる際に、同時に予備重合を行っても良い。特に好ましくは(A1)固体成分、(A2)ビニルシラン化合物、及び/又は、アリルシラン化合物、(A3)一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物(A4)有機アルミニウムを有する化合物を接触させた後に、予備重合を行うことが望ましい。
固体触媒成分(A)又は固体成分(A1)と上記のモノマーとの反応条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることができる。一般的には、以下の範囲内が好ましい。
固体触媒成分(A)又は固体成分(A1)1グラムあたりの基準で、予備重合量は、0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、更に好ましくは0.5〜10gの範囲内が望ましい。予備重合時の反応温度は、−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は、本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は、複数回行っても良く、この際用いるモノマーは、同一であっても異なっても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行うことも、できる。
II.製造プロセス及び重合条件
ポリプロピレンの製造プロセスとしては、主に液化プロピレンの潜熱を用いて除熱を行う気相法重合プロセスである限り、任意のプロセスを用いることができる。
本発明において、気相法とは、液が全く存在しないことを意味しない。重合を行う相が実質的に気相であれば良く、本発明の効果を阻害しない範囲で液が存在しても良い。この液としては、除熱のための液化プロピレンだけでなく、ヘキサンなどの不活性炭化水素成分を例示することができる。
混合様式としては、流動床を用いる方法、攪拌機を用いる方法、のどちらを用いても良い。攪拌機を用いる場合には、攪拌機を備えた流動床を用いることも、できる。攪拌機は、攪拌軸が鉛直方向を向いていても、水平方向を向いていても良い。攪拌翼の形状としては、パドル、ヘリカル、など任意のものを用いることができる。このうち、攪拌軸を水平方向に向けて、パドル翼を用いる方法が最も好ましい。
重合槽の並び方については、本発明の効果を阻害しない限り、任意の方法を用いることができる。重合槽は、一つでも複数でも良い。槽数を増やすことなく滞留時間分布を更に狭くする方法として、重合槽の中にパウダーの移動を制限する堰を設けることもできる。堰の形態としては、重合槽に固定された固定堰を用いても良いし、回転軸に固定された回転堰を用いても良い。重合槽が複数の場合には、直列に繋いでも良いし、並列に繋いでも良い。特に、製品中に残存する触媒残さなどの影響を小さくする場合には、少なくとも直列に繋がった2個の重合槽を含む並び方にすることが望ましい。
重合方法としては、バッチ法と連続法のどちらを用いても良いが、生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。特に好まし例としては、2〜4個の重合槽を直列に繋いで連続法で重合する方法を例示することができる。
液化プロピレンの潜熱を用いて除熱を行う方法としては、任意の方法を用いることができる。液化プロピレンの潜熱を用いて除熱を行う為には、実質的に液の状態にあるプロピレンを重合槽に供給すればよい。フレッシュな液化プロピレンを重合槽に供給することもできるが、一般的には、リサイクルプロピレンを用いることが望ましい。リサイクルプロピレンを用いる一般的な手順は、以下に例示される。
重合槽からプロピレンを含むガスを抜き出し、そのガスを冷却して少なくとも一部を液化させ、液化した成分の少なくとも一部を重合槽に供給する。この際、液化する成分は、プロピレンを含む必要があるが、ブテンに代表されるコモノマー成分やイソブタンに代表される不活性炭化水素成分を含んでいても良い。
液化プロピレンの供給方法は、実質的に液の状態にあるプロピレンを重合槽に供給するものである限り、任意の方法を用いることができる。ポリプロピレン粒子のベッドに、供給しても良いし、気相部に供給しても良い。気相部に供給する場合は、重合槽内部の気相部に供給しても良いし、リサイクルガスラインに供給しても良い。特に、攪拌軸を水平方向に向ける攪拌混合槽の場合には、重合槽内部の気相部に供給することが望ましい。
本発明において、主に液化プロピレンの潜熱を用いて除熱を行うということは、液化プロピレンの潜熱だけを用いて、除熱を行うことを意味しない。本発明の効果を阻害しない限り、他の除熱方法を併用することができる。具体的には、重合槽に備え付けたジャケットを用いて除熱する方法、重合槽からガスの一部を抜き出して熱交換器により冷却し再びガスを重合槽に戻す方法、などを例示することができる。
ただし、本発明においては、液化プロピレンの潜熱を用いた除熱が主体である必要がある。具体的には、少なくとも一つの重合槽において、除熱量の少なくとも半分を、液化プロピレンの潜熱を用いて除熱する必要がある。
温度や圧力の様な重合条件は、本発明の効果を阻害しない限り、任意に設定することができる。具体的には、重合温度は、好ましくは0℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。重合圧力は好ましくは1200kPa以上、更に好ましくは1400kPa以上、特に好ましくは1600kPa以上であり、好ましくは4200kPa以下、更に好ましくは3500kPa以下、特に好ましくは3000kPa以下である。ただし、重合圧力は、重合温度におけるプロピレンの蒸気圧より、低く設定するべきではない。
滞留時間は、重合槽の構成や製品インデックスに合わせて、任意に調整することができる。一般的には、30分〜5時間の範囲内で設定される。
また、触媒活性は、温度、圧力、滞留時間などの重合条件により変化するが、20,000gPP/g触媒以上であることが望ましい。好ましくは、触媒活性が25,000gPP/g触媒以上500,000gPP/g触媒以下の範囲内、更に好ましくは30,000gPP/g触媒以上100,000gPP/g触媒以下の範囲内、最も好ましくは35,000gPP/g触媒以上50,000gPP/g触媒以下の範囲内、である。
触媒活性が上記の範囲より低いと、触媒残渣が多くなり、中和剤等の添加剤を沢山使用する必要があり、経済的でなく好ましくない。触媒活性が上記の範囲より高いと、触媒フィード部の局所的な除熱が難しくなり、塊等の異物ができやすく好ましくない。
本発明の重合触媒やその他の任意成分は、公知の方法を用いて、重合槽に供給することができる。重合触媒については、そのまま粉末状で重合槽に供給してもよいが、ヘキサンやミネラルオイル等の不活性溶媒を用いて希釈した上で供給しても良い。
本発明に係る触媒は、非常に活性が高いので、希釈した上で重合槽へ供給する方が好ましい。希釈が不充分だと、ファウリング等のトラブルを起こす可能性がある。この様な場合には、任意成分である有機ケイ素化合物(C)、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)、及び、分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)から選ばれる化合物、からなる群の少なくとも一つを用いることが有効である。固体触媒成分を重合槽に供給する前に、これらの任意成分を接触させると、ファウリング防止効果が更に高くなり好ましい。この際、両成分の接触方法は、任意であるが、固体触媒成分を重合槽へ供給するラインへ任意成分を供給するか、又は、固体触媒成分を不活性溶媒により希釈した所へ任意成分を添加することが好ましい。
III.ポリプロピレン
本発明を用いることにより得られるポリプロピレンは、製造コストが低く、成形性と品質に優れたものである。特に、二軸延伸フィルムに代表されるフィルム用途に適したポリプロピレンに関して、高品質で安価に製造する方法が本発明中に開示されている。
さらに、本発明を用いることにより得られるポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体(i)及びプロピレンとその他のモノマーとのランダム共重合体(ii)である。各重合体について、詳細に説明する。
(i)プロピレンの単独重合体
本発明におけるポリプロピレンがプロピレン単独重合体である場合、メルトフローレート(試験条件:230℃、荷重2.16kgf)(MFR)は、0.01g/10分以上50g/10分以下であることが好ましく、より好ましくはMFRが0.1g/30分以上30g/10分以下、更に好ましくは0.5g/10分以上20g/10分以下、最も好ましくは0.5g/10分以上10g/10分以下である。
また、CXSは、3重量%以上10重量%以下が好ましく、より好ましくは3.5重量%以上8重量%以下、最も好ましくは4重量%以上6重量%以下である。
さらに、密度は、0.9000g/ml以上0.9060g/ml以下が好ましく、更に好ましくは0.9010g/ml以上0.9055g/ml以下、最も好ましくは0.9020g/ml以上0.9050g/ml以下である。
MFRが高すぎると、粘度が足りず、フィルムが上手く引けない。一方、MFRが低すぎると、押し出し機の負荷が高くなりすぎて、押し出し量が低下し生産性が悪い。また、CXSが高すぎると、フィルム表面にブリードする量が多すぎて、べたつきや白化等の問題を起こす。一方、CXSが低すぎると、帯電防止性能が低くなってしまう。密度が高すぎると、上手く延伸することができない。一方、密度が低すぎると、弾性率が低下する為にフィルムの腰が悪化する。
ここでCXSは、以下の手法で測定された値として定義される。
試料(約5g)を140℃のp−キシレン(300ml)中に一度完全に溶解させる。その後23℃まで冷却し、23℃で12時間ポリマーを析出させる。析出したポリマーを濾別した後、濾液からp−キシレンを蒸発させる。p−キシレンを蒸発させた後に残ったポリマーを100℃で2時間減圧乾燥する。乾燥後のポリマーを秤量し、試料に対する重量%として、CXSの値を得る。
密度は、比重法、勾配管法、X線回折などの任意の方法で測定することができる。
(ii)ランダム共重合体
本発明におけるポリプロピレンがプロピレンとその他のモノマーとのランダム共重合体である場合、その他のモノマーは、エチレン及び/又は炭素数4−10のαオレフィンであることが望ましい。より好ましくは、エチレン及び/又は1−ブテンが望ましく、最も好ましくはエチレンである。
ランダム共重合体におけるプロピレン以外のモノマー単位の含量は、10重量%以下であることが望ましい。より好ましくは0.01重量%以上3重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以上2重量%以下、とりわけ好ましくは0.1重量%以上1重量%以下が望ましい。また、MFR、密度及びCXSの好ましい範囲は、プロピレン単独重合体の場合と同じである。
コモノマーの含量が高すぎると、結晶性が下がりすぎて、得られるフィルムの腰が低下したり、融点が下がりすぎて、耐熱性が悪化したりするなどの問題を生じる。
ここで、その他のモノマーの含量は、任意の分析手法により求めることができる。具体的な例としては、赤外分光分析法(IR)、核磁気共鳴分析法(NMR)、などを挙げることができる。
ここで、本発明において、ランダム共重合体で用いるプロピレン以外のモノマーとしては、特に限定されないが、炭素数2〜12のオレフィン、特に炭素数2〜12のα−オレフィンが好ましく用いられる。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、なかでも、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンを用いることがより好ましく、これらのオレフィンは、1種のみならず2種以上を用いることも可能である。
MFRを調整するためには、連鎖移動剤である水素の重合槽における濃度を調整すれば良い。また、コモノマー含量を調整するためには、コモノマーの重合槽における濃度を調整すればよい。
また、本発明により得られるポリマー粒子は、優れた粒子性状を示す。一般的に、ポリマー粒子の粒子性状は、ポリマー嵩密度、粒径分布、粒子外観などにより評価される。
本発明により得られるポリマー粒子は、ポリマー嵩密度が、0.35〜0.55g/mlの範囲内、好ましくは、0.40〜0.50g/mlの範囲内、最も好ましくは、0.43〜0.48g/mlの範囲内である。ポリマー粒子の大きさは、任意の値を取ることができるが、平均粒径が、好ましくは1,000〜3,000μmの範囲内、特に好ましくは1,100〜2,000μmであることが望ましい。また、微粉の量は、低くなる程リアクター等でのファウリングが少なくなるので好ましい。好ましい範囲としては、300μ以下の微粉量が5wt%以下、更に好ましくは3wt%以下、特に好ましくは2wt%以下、最も好ましくは1wt%以下である。0wt%が理想であることは言うまでもない。微粉量は、篩い分け法、レーザー回折法、画像解析法、などの任意の方法で測定することができる。
IV.ポリプロピレンの用途
本発明を用いて製造されたポリプロピレンは、任意の用途に用いることができる。中でも結晶性のやや低いポリプロピレンが適した分野に、用いることが望ましい。この様な分野の例としては、フィルム、シート、繊維、ヤーン、などを挙げることができる。フィルム用途の場合、二軸延伸、一軸延伸、無延伸、空冷インフレ、水冷インフレなどの任意の成形方法を用いることができる。
より具体的な用途としては、食品包装フィルムや梱包用ヤーンに代表される包装材料、衛生製品用不織布等に代表される繊維用材料、などに好ましく用いることができる。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
(1)メルトフローレート(MFR):
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K6921に基づき、230℃、21.18N(2.16kgf)の条件で評価した。
(2)ポリマー嵩密度(BD):
パウダー試料の嵩密度を、ASTM D1895−69に準ずる装置を使用し、測定した。
(3)ポリマー平均粒径:
パウダー試料の粒径分布を、JIS Z8801に準拠して、篩い分け法により測定した。得られた粒径分布において、重量基準で積算50wt%となる粒径を平均粒径とした。
(4)p−キシレンに溶解する成分(CXS):
試料(約5g)を140℃のp−キシレン(300ml)中に一度完全に溶解させた。その後、23℃まで冷却し、23℃で12時間ポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾別した後、濾液からp−キシレンを蒸発させた。p−キシレンを蒸発させた後に残ったポリマーを100℃で2時間減圧乾燥した。乾燥後のポリマーを秤量し、試料に対する重量%として、CXSの値を得た。
(5)密度:
MFR測定時に得られた押出ストランドを用い、JIS K7112 D法に準拠して密度勾配管法で測定した。
(6)Ti含量:
試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
(7)ケイ素化合物含量:
試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較することにより、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
[実施例1]
(1)固体成分の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g、TiClを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A1)のTi含量は2.7wt%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A1)のスラリーを、固体成分(A1)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A1)の濃度が25g/Lとなる様に調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを25ml、(i−Bu)Si(OMe)を20ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして45g添加し、30℃で2hr反応を行った。次いで反応生成物を、そのまま全量予備重合に用いた。
(2)予備重合
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。
上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分(A)は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この固体触媒成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.5wt%、(i−Bu)Si(OMe)が7.5wt%含まれていた。
(3)プロピレンの重合
添付した図1に示したフローシートによって説明する。2台の重合槽を用いる気相重合反応器を用いた。2台の重合器1及び10は、内径D:340mm、長さL:1260mm、回転軸の径:90mm、内容積:110dmの攪拌機を備えた連続式横型気相重合器(長さ/直径=3.7)である。
重合器1内を置換後、500μm以下の重合体粒子を除去したポリプロピレン粉末(平均粒径1500μm)を25kg導入し、上記で得られた固体触媒成分(A)をn−ヘキサンスラリーとして重合器1内に連続的に供給した。固体触媒成分(A)の供給速度は、ポリプロピレンの生産レートが一定の値となる様に調節した。また、トリエチルアルミニウムの15重量%n−ヘキサン溶液を触媒成分(A)中のTi原子1モルに対し、モル比が100となるように連続的に供給した。また、重合器1内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比が0.005となるように水素を、重合器1内のプロピレン分圧が1.5MPa、温度が65℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ重合器1内に供給した。重合器1から排出される未反応ガスは、未反応ガス抜き出し配管4を通して、反応器系外に抜き出し、冷却・凝縮させて液化プロピレンと混合ガスに分離した。混合ガスは、リサイクルガス配管2を通して重合器1に戻した。また、プロピレン重合体の分子量を調節するための水素ガスも、配管2より供給した。反応器系外で凝縮させた液化プロピレンは、フレッシュな原料プロピレンと一緒に原料混合ガス供給配管3から供給した。重合熱は、この配管3から供給する液化プロピレンの気化熱により除去した。
重合器1内で生成したポリプロピレンは、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となる様に重合体抜き出し配管5を通して重合器1から連続的に抜き出し、第2重合工程の重合器10に供給した。
重合器10内に、第1重合工程からの重合体、プロピレンガスを連続的に供給し、プロピレンの重合を行った。反応条件は、温度70℃、圧力1.4MPaとした。重合器10から排出される未反応ガスは、未反応ガス抜き出し配管8を通して、反応器系外に抜き出し、冷却・凝縮させて液化プロピレンと混合ガスに分離した。混合ガスは、リサイクルガス配管7を通して重合器10に戻した。また、プロピレン重合体の分子量を調節するための水素ガスも、配管7より供給した。この時、水素濃度のプロピレン濃度に対する比が重合器1内の値と同一となる様に調節した。反応器系外で凝縮させた液化プロピレンは、フレッシュな原料プロピレンと一緒に原料混合ガス配管6から供給した。重合熱は、この配管6から供給する液化プロピレンの気化熱により除去した。
第2重合工程で生成したプロピレンは、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となる様に重合体抜き出し配管9を通して、重合器10から連続的に抜き出した。抜き出したパウダーは、ガス回収機12でガス類を分離し、パウダー部は回収系に抜き出した。
ポリプロピレンの生産レートは17kg/hr、重合器1内の平均滞留時間は2.9hr、重合器10内の平均滞留時間は1.4hrであった。生産レートを固体触媒成分(A)の供給速度(ただし予備重合ポリマーは除く)で割った値として活性を求めたところ、40,000g−PP/g−触媒であった。
得られたポリプロピレンを分析したところ、MFRは4.0g/10min、密度は0.9050g/cc、CXSは3.0wt%であった。ポリプロピレン粒子のBDおよび平均粒径を測定したところ、BDは0.45g/ml、平均粒径は1280μmであった。結果を表1に示す。
[実施例2、3]
実施例1の固体成分の調製における(i−Bu)Si(OMe)の使用量を11、8mlとした以外は、実施例1と同様にして重合を行った。この際の固体触媒成分(A)中のTiおよび(i−Bu)Si(OMe)の含有量は、Tiが各々1.5wt%であり、(i−Bu)Si(OMe)は、5.5、4.1wt%であった(実施例2、3)。結果を表1に示す。
[比較例1]
(1)固体触媒成分の調製
実施例1で使用した固体成分(A1)を使用して、以下の手順により、予備重合を行った。
撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A1)のスラリーを固体成分(A1)として100g導入し、次の手順により、予備重合を行った。固体成分(A1)のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、(i−Bu)Si(OMe)を2.4ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に2hr反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換して固体触媒成分(A)を得た。得られた固体触媒成分(A)の一部を抜き出し、n−ヘプタンで充分に洗浄して乾燥した。乾燥サンプルを分析したところ、この固体触媒成分(A)は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。また、この固体触媒成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが2.2wt%、(i−Bu)Si(OMe)が1.7wt%含まれていた。
(2)プロピレンの重合
上記の固体触媒成分(A)を用いて、表1に示す重合条件を用いた以外は、実施例1と同様にして重合を行った。この際、表1中に記載したケイ素化合物(C)を、EtAlに対して0.1mol/mol−Alとなる様に重合器1内に連続的に供給した。結果を表1に示す。
[比較例2]
(1)固体成分の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g、TiClを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。
次に、撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記にて得られたスラリーを固体成分として100gを導入した。ここに、AlClを12g、TiClを1L導入し、110℃に昇温して、攪拌しながら2時間反応させた。反応終了後、精製したn−ヘプタンを用いて充分に洗浄を行ない、固体成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A1)のTi含量は3.5wt%であった。
(2)予備重合
次に、比較例1と同様の方法にて、予備重合を行った。得られた固体触媒成分(A)の一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、この固体触媒成分(A)は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。また、この固体触媒成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが3.0wt%、(i−Bu)Si(OMe)が1.7wt%含まれていた。
(3)プロピレンの重合
上記の固体触媒成分(A)を用いて、比較例1と同様にして、重合を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1の固体触媒成分(A)を調製する工程にて、使用する有機ケイ素化合物の種類を、(i−Pr)Si(OMe)とし、重合器1内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比を0.015とした以外は、実施例1と同様にして重合を行った。結果を表1に示す。
Figure 2009024074
表1から明らかなように、本発明のポリプロピレンの製造方法(実施例1〜3)は、触媒活性が高く、生産性が高い。また、本発明の製法によって得られたポリプロピレンは、300μm以下の微粉の生成が少なく、CXSで示される結晶性が適度であることが判る。一方、成分(A2)を用いない比較例1では、触媒活性が低く、微粉の生成が比較的多く、結晶性が高く、また、成分(A2)を用いない比較例2では、結晶性が適度であるものの、触媒活性が低く、微粉の生成が多く、さらに、有機ケイ素化合物を用いているものの、特定の有機ケイ素化合物(A3)を用いない比較例3では、触媒活性が高く、微粉の生成が少ないものの、結晶性が高い。
本発明のポリプロピレンの製造法を用いれば、適度な結晶性を有するポリプロピレンを安定的に製造することができる。また、触媒活性が非常に高いので、製造コストも低減することが可能である。こうして得られたポリプロピレンは、特に食品包装材料などに用いられる二軸延伸フィルムに代表されるフィルム用途に好適に用いることができる。
実施例および比較例で用いたポリプロピレンの製造プロセスを表す概略図である。
符号の説明
1 重合器(第1重合工程)
2 リサイクルガス配管
3 原料混合ガス配管
4 未反応ガス抜き出し配管
5 重合体抜き出し配管
6 原料混合ガス配管
7 リサイクルガス配管
8 未反応ガス抜き出し配管
9 重合体抜き出し配管
10 重合器(第2重合工程)
11 活性抑制剤添加用配管
12 ガス回収機
13 バグフィルター

Claims (8)

  1. 反応熱を主として液化プロピレンの気化熱により除去する気相法重合プロセスにおいて、密度が0.900〜0.906g/cm、かつ、23℃でp−キシレンに溶解する成分(CXS)が3.0〜10.0重量%であるポリプロピレンを製造する方法であって、
    下記の成分(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)を接触処理してなる固体触媒成分(A)を用いることを特徴とするポリプロピレンの製造方法。
    成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン、フタル酸誘導体又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物から選ばれる少なくとも一種を必須成分として含有する固体成分
    成分(A2):ビニルシラン化合物及び/又はアリルシラン化合物
    成分(A3):下記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物
    Si(OR …(1)
    (式中、Rは、Siのβ位に2級又は3級の炭素原子を有する直鎖状又は環状の炭化水素基であり、Rは、Rと同一又は異なる炭化水素基であり、Rは、炭化水素基を表し、0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
    成分(A4):有機アルミニウム化合物
  2. 前記固体触媒成分(A)は、成分(A1)、(A2)、(A3)および(A4)を接触させた後に、予備重合を行うことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレンの製造方法。
  3. 前記固体触媒成分(A)に含有される成分(A3)の量は、3〜10重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレンの製造方法。
  4. 前記成分(A1)中のマグネシウムは、ジアルコキシマグネシウム由来のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレンの製造方法。
  5. 前記気相法重合プロセスは、内部に水平軸周りに回転する攪拌機を有する横型反応器を用いて重合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレンの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリプロピレンの製造方法を用いることを特徴とするフィルム用ポリプロピレン重合体の製造方法。
  7. 請求項6に記載のフィルム用ポリプロピレン重合体の製造方法を用いることを特徴とするポリプロピレンフィルムの製造方法。
  8. フィルムが延伸フィルムであることを特徴とする請求項7に記載のポリプロピレンフィルムの製造方法。
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