JP5861514B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明はインクジェット記録装置に関し、詳しくは、駆動周期が無駄に長くなることなく、1画素周期毎に液滴サイズの異なるドットを簡単な駆動回路構成で吐出させることが可能なインクジェット記録装置に関する。
ノズルから微小なインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドという。)を用いて画像を記録するインクジェット記録装置は、圧力室内のインクに圧力発生手段の作動によって圧力を付与することでノズルからインク滴を吐出させ、記録紙等の記録媒体上に着弾させる。圧力発生手段としては、一般に電気・機械変換手段であるPZT等の圧電材料が用いられている。圧電材料は2つの駆動電極に挟まれ、これら駆動電極間に所定電圧の駆動波形が印加されることで変形駆動するようになっており、この変形駆動によって圧力室内の容積を膨張又は収縮させ、圧力室内のインクに吐出のための圧力を付与する。
このようなインクジェット記録方式は、比較的簡単な構成で、高精度な画像記録が可能であり、家庭用から工業用まで幅広い分野で急速な発展を遂げている。特に高速化と高画質化について様々な改良の提案がなされており、ラインヘッドを用いたワンパス印字等のように記録ヘッドによって高速印字したいという要望が高い一方で、印字画像の階調性を向上させることでより一層の高画質化を図りたいという要望もある。
この階調性に関する従来技術として、液滴サイズの異なるドットを1画素周期内で選択することにより、多階調を表現できるようにしたインクジェット記録装置が知られている(特許文献1、2)。
特許文献1は、図13に示すように、液滴サイズ毎にそれぞれ異なる専用の駆動波形を用意しておき、これを1画素周期T内において、吐出させたい所望の液滴サイズに応じて使い分けるようにしている。図中の(a)は小ドットを吐出させる場合に使用される駆動波形であり、(b)は中ドットを吐出させる場合に使用される駆動波形であり、(c)は大ドットを吐出させる場合に使用される駆動波形である。
また、特許文献2は、例えば図14に示すように、互いに形状の異なる複数種類の波形を、1画素周期T毎に所定の順序で順次発生させた駆動波形を用意しておき、吐出させたい所望の液滴サイズに応じて、これら複数種類の波形が並んだ駆動波形のうちで吐出の際に使用する部分(スイッチ回路をオンにする部分)を選択することにより、大きさの異なるドットを打ち分けられるようにしている。例えば、図中の(a)は、1画素周期T(区間Ta〜Tf)内に発生させる駆動波形の全体を示しており、(b)はそのうちの区間TaとTeの波形部分のみオンとすることで小ドットを形成し、(c)は区間Tcの波形部分のみオンとすることで中ドットを形成し、(d)は区間Tfの波形部分のみオンとすることで大ドットを形成するようにしている。
特開2011−5815号公報 特開2001−205826号公報
特許文献1では、液滴サイズによって異なる専用の駆動波形を個々に必要とするため、駆動回路の負担が大きいという問題がある。
一方、特許文献2では、異なる液滴サイズでも図14(a)に示す共通の駆動波形を使用することができるが、実際にインク滴を吐出する際は、1画素周期T内において駆動波形全体の中の一部分しか使用されない。このため、使用されない波形部分の時間が無駄となり、それだけ駆動周期が長くなってしまい、高速印字を行う上では大きな問題がある。
そこで、本発明は、1画素周期内の所定の時間毎に、圧力発生手段を作動させるための2つの駆動電極に、形状の異なる複数種類の駆動波形の中からそれぞれ別々の駆動波形を選択して使用し、その差分波形によって圧力発生手段を作動させるようにすることで、駆動周期が無駄に長くなることなく、1画素周期毎に大きさの異なるドットを、簡単な駆動回路構成で吐出させることができるインクジェット記録装置を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
1.インク滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルにそれぞれ連通する圧力室と、2つの駆動電極に挟まれた圧電材料を有し、前記ノズルから大液滴を吐出させる吐出データと小液滴を吐出させる吐出データとを含む複数の吐出データの各々に基づいて、前記駆動電極にそれぞれ駆動波形が印加されることによって作動して前記圧力室の容積を変化させ、該圧力室内のインクを前記ノズルから吐出させる圧力発生手段とを有する記録ヘッドと、
前記駆動波形を生成する駆動回路とを備えたインクジェット記録装置において、
前記駆動波形は、非GND波形からなる第1の駆動波形と、前記第1の駆動波形とは異なる非GND波形からなる第2の駆動波形と、GND波形からなる第3の駆動波形とを有すると共に、前記第1の駆動波形の駆動電圧V1と前記第2の駆動波形の駆動電圧V2は、|V1|>|V2|であり、
前記駆動回路は、各々の前記吐出データに応じて、前記圧力発生手段の前記2つの駆動電極のうちの一方に、前記駆動波形の少なくとも前記第1の駆動波形と前記第2の駆動波形とを選択して1画素周期よりも短い所定の時間毎に切り替えて印加する、あるいは前記第1の駆動波形のみを選択して印加すると共に、他方には前記第2の駆動波形のみを選択して印加することにより、前記2つの駆動電極間の差分波形によって大液滴波形又は小液滴波形を生成して前記圧力発生手段を作動させ、同じ前記ノズルから前記大液滴と前記小液滴とを打ち分けることを特徴とするインクジェット記録装置。
2.前記駆動回路は、吐出データを記憶する第1の記憶手段と、前記吐出データと前記圧力発生手段を作動させる前記第1の駆動波形、前記第2の駆動波形及び前記第3の駆動波形に対応した駆動パターンとの関係を規定した情報を記憶する第2の記憶手段とを有することを特徴とする前記1記載のインクジェット記録装置。
3.前記第2の記憶手段は書き換え可能であることを特徴とする前記2記載のインクジェット記録装置。
4.前記第1の駆動波形と前記第2の駆動波形は、いずれも矩形波であることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェット記録装置。
5.前記記録ヘッドは、隣接する前記圧力室間に圧電材料からなる共通の隔壁を有し、前記駆動電極が前記圧力室内に臨む前記隔壁表面に形成され、前記隔壁を圧力発生手段としてせん断変形させるせん断モード型の記録ヘッドであることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
6.前記駆動回路は、隣り合う3つの圧力室を1組として全圧力室を複数の組に分け、各組内の3つの圧力室を時分割で順次駆動するように前記隔壁をせん断変形させることを特徴とする前記5記載のインクジェット記録装置。
本発明によれば、1画素周期内の所定の時間毎に、圧力発生手段を作動させるための2つの駆動電極に、形状の異なる複数種類の駆動波形の中からそれぞれ別々の駆動波形を選択して使用し、その差分波形によって圧力発生手段を作動させるようにすることで、駆動周期が無駄に長くなることなく、1画素周期毎に大きさの異なるドットを、簡単な駆動回路構成で吐出させることができるインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す図 記録ヘッド3の一例を示す図であり、(a)は外観を断面で示す斜視図、(b)は側面から見た断面図 (a)は大液滴波形、(b)は小液滴波形のそれぞれ基本構成を示す図 大液滴及び小液滴を吐出する際の記録ヘッドのインク吐出動作の説明図 大液滴を差分波形を利用して吐出する場合を示す図 小液滴を差分波形を利用して吐出する場合を示す図 3サイクル駆動時の吐出動作の説明図 3サイクル駆動時の吐出動作の説明図 3サイクル駆動時の吐出動作の説明図 3サイクル駆動時に印加される駆動波形のタイミングチャート 駆動信号発生部の内部構成を説明する図 画像データと駆動波形パターンデータの変換テーブルの一例を示す図 従来の駆動波形を示す図 従来の駆動波形を示す図
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1において、記録媒体Pは、搬送機構2の搬送ローラー対22に挟持され、更に、搬送モーター23によって回転駆動される搬送ローラー21により図示Y方向(副走査方向)に搬送されるようになっている。
搬送ローラー21と搬送ローラー対22の間には、記録媒体Pの記録面PSと対向するように記録ヘッド3が設けられている。この記録ヘッド3は、記録媒体Pの幅方向に亘って掛け渡されたガイドレール4に沿って、不図示の駆動手段によって、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)と略直交する図示X−X’方向(主走査方向)に沿って往復移動可能に設けられたキャリッジ5に、ノズル面側が記録媒体Pの記録面PSと対向するように配置されて搭載されており、フレキシブルケーブル6を介して、後述する駆動回路に設けられた駆動信号発生部100(図4参照)に電気的に接続されている。
記録ヘッド3は、キャリッジ5の主走査方向の移動に伴って記録媒体Pの記録面PSを図示X−X’方向に走査移動し、この走査移動の過程でノズルからインク滴を吐出することによって所望のインクジェット画像を記録するようになっている。
図2は、記録ヘッド3の一例を示す図であり、(a)は外観を断面で示す斜視図、(b)は側面から見た断面図である。
記録ヘッド3において、30はチャネル基板である。チャネル基板30には、細溝状の多数のチャネル31と隔壁32とが交互となるように並設されている。チャネル基板30の上面には、全てのチャネル31の上方を塞ぐようにカバー基板33が設けられている。チャネル基板30とカバー基板33の端面にはノズルプレート34が接合され、このノズルプレート34の表面によってノズル面が形成される。各チャネル31の一端は、このノズルプレート34に形成されたノズル34aを介して外部と連通している。
各チャネル31の他端は、チャネル基板30に対して徐々に浅溝となり、カバー基板33に開口形成された各チャネル31に共通の共通流路33aに連通している。共通流路33aは更にプレート35によって閉塞され、該プレート35に形成されたインク供給口35aを介して、インク供給管35bから共通流路33a及び各チャネル31内にインクが供給される。
各隔壁32は、電気・機械変換手段であるPZT等の圧電材料からなる。ここでは上壁部32aと下壁部32bが共に分極処理された圧電材料によって形成され、該上壁部32aと下壁部32bとで分極方向(図2(b)中の矢印で示す。)を互いに反対方向としたものを例示しているが、分極処理された圧電材料によって形成される部分は例えば符号32aの部分のみであってもよく、隔壁32の少なくとも一部にあればよい。隔壁32はチャネル31と交互に並設されている。従って、一つの隔壁32はその両隣のチャネル31、31で共用される。
各チャネル31内には、両隔壁32の壁面からチャネル31の底面に亘って、それぞれ駆動電極(図2おいては不図示)が形成されており、隔壁32を挟んだ両駆動電極に、後述する駆動回路に設けられた駆動信号発生部からそれぞれ所定電圧の駆動パルスを印加すると、圧電材料からなる隔壁32は、上壁部32aと下壁部32bとの接合面を境にして屈曲変形する。この隔壁32の屈曲変形によってチャネル31内に圧力波が発生し、該チャネル31内のインクにノズル34aから吐出するための圧力が付与される。従って、この記録ヘッド3は、チャネル基板30、カバー基板33、ノズルプレート34に囲まれるチャネル31の内部によって本発明における圧力室が構成され、圧電材料からなる隔壁32及びその表面の駆動電極によって本発明における圧力発生手段が構成され、この隔壁32がせん断変形することによってインク滴を吐出させるせん断モード型の記録ヘッドである。
この記録ヘッド3とフレキシブルケーブル6を介して電気的に接続される駆動回路に設けられた駆動信号発生部は、インク滴を吐出させるために1画素周期内に印加する駆動波形を生成する。ここでは、同一のノズル34aから大液滴(大ドット)と小液滴(小ドット)を吐出して階調を表現するための駆動波形を生成するようになっている。
これら大液滴と小液滴を吐出するための駆動波形の一例について図3を用いて説明する。図3(a)は大液滴を吐出するための大液滴波形の基本構成を示しており、(b)は小液滴を吐出するための小液滴波形の基本構成を示している。また、この大液滴波形及び小液滴波形を印加したときの記録ヘッド3のインク吐出動作について図4を用いて説明する。図4は記録ヘッド3をチャネルの長さ方向と直交する方向に切断した断面の一部を示している。
大液滴波形PAは、チャネルの容積を膨張させる3AL幅の膨張パルスPa1と、チャネルの容積を収縮させる2AL幅の収縮パルスPa2とを含む矩形波からなる。
ここでAL(Acoustic Length)とは、チャネルにおける圧力波の音響的共振周期の1/2のことである。ALは、駆動電極に矩形波の駆動パルスを印加した際に吐出されるインク滴の速度を測定し、矩形波の電圧値を一定にして矩形波のパルス幅を変化させたときに、インク滴の飛翔速度が最大になるパルス幅として求められる。
また、パルスとは、一定電圧波高値の矩形波であり、0Vを0%、波高値電圧を100%とした場合に、パルス幅とは、電圧の0Vからの立ち上がり10%と波高値電圧からの立ち下がり10%との間の時間として定義する。
更に、矩形波とは、電圧の10%と90%との間の立ち上がり時間、立ち下がり時間のいずれもがALの1/2以内、好ましくは1/4以内であるような波形を指す。
本発明において大液滴及び小液滴をそれぞれ吐出させるための駆動波形は、いずれもこのように矩形波であることが好ましい態様である。特に本実施形態に示すせん断モード型の記録ヘッド3では、チャネル31内に発生した圧力波の共振を利用してインク滴をノズル34aから吐出するので、矩形波を用いることでより効率良くインク滴を吐出させることができる。
また、せん断モード型の記録ヘッド3は、矩形波からなる駆動波形の印加に対してメニスカスの応答が速いため、駆動電圧を低く抑えることが可能である。一般に吐出、非吐出を問わず記録ヘッド3には常に電圧が掛かるので、低い駆動電圧はヘッドの発熱を抑え、インク滴を安定的に射出させる上で重要である。
更に、矩形波は、簡単なデジタル回路を用いることで容易に生成可能であるため、傾斜波を有する台形波を用いる場合に比べ、回路構成も簡素化できる利点がある。
大液滴波形PAにおける膨張パルスPa1は、インク滴を吐出させるチャネル31B内に臨む駆動電極36Bに対して所定の正の駆動電圧+Vonを印加するパルスである。図4(a)に示すように、互いに隣り合うチャネル31A、31B、31C内の駆動電極36A、36B、36Cのいずれにも駆動パルスが印加されない時は、隔壁32A、32B、32C、32Dのいずれも変形しない中立状態となっているが、この中立状態において、駆動電極36A及び36Cを接地すると共に駆動電極36Bに膨張パルスPa1を印加すると、隔壁32B、32Cを構成する圧電材料の分極方向に直角な方向の電界が生じる。これにより、各隔壁32B、32C共に、それぞれ上壁部32a、下壁部32bの接合面にズリ変形を生じ、図4(b)に示すように隔壁32B、32Cは互いに外側に向けて屈曲変形し、チャネル31Bの容積を拡大する。この屈曲変形により、チャネル31B内に負の圧力波が発生し、インクが流れ込む。
チャネル31B内の圧力は1AL毎に反転するため、3AL経過後のチャネル31B内は正の圧力となり、このタイミングで駆動電極36Bに収縮パルスPa2を印加する。
収縮パルスPa2は、膨張パルスPa1の印加終了に連続して休止期間を置かずに負の駆動電圧−Voffを印加するパルスである。この駆動電圧−Voffを膨張パルスPa1に連続して駆動電極36Bに印加すると、このときの隔壁32B、32Cの動きは、図4(b)に示すように外側に向けて変形した状態から一気に図4(c)に示すように内側に向けて変形する。その結果、膨張パルスPa1の立ち下りによる正の圧力とたし合わされることによって、チャネル31B内には更に大きな圧力が付与され、ノズルから比較的大きなインク滴が吐出される。収縮パルスPa2は2AL後に0電位に戻され、隔壁32B、32Cの変形が図4(a)の中立状態に戻ることによって残留する圧力波はキャンセルされる。
一方、小液滴波形PBは、チャネルの容積を膨張させる1AL幅の膨張パルスPb1と、チャネルの容積を収縮させる1AL幅の収縮パルスPb2とを含む矩形波からなるが、この膨張パルスPb1と収縮パルスPb2との間に、隔壁を変形させない0電位を1AL幅で継続させる休止期間Pb3を有している。
小液滴波形PBにおける膨張パルスPb1は、インク滴を吐出させるチャネル31B内に臨む駆動電極36Bに対して所定の正の駆動電圧+Vonを印加するパルスである。図4(a)に示す中立状態において、駆動電極36A及び36Cを接地すると共に駆動電極36Bに膨張パルスPb1を印加すると、上記と同様に、図4(b)に示すように隔壁32B、32Cは互いに外側に向けて屈曲変形し、チャネル31Bの容積を拡大する。この屈曲変形により、チャネル31B内に負の圧力波が発生し、インクが流れ込む。
チャネル31B内の圧力は1AL後に正の圧力に反転するため、このタイミングで駆動電極36Bを0電位に戻すと、隔壁32B、32Cは図4(b)に示す拡大位置から図4(a)に示す中立状態に戻り、チャネル31B内に吐出のための圧力が付与される。このときの隔壁32B、32Cは中立状態に復帰するだけであるため、チャネル31B内には大液滴波形PAに比較して小さな圧力が付与させるだけである。その結果、ノズルから比較的小さなインク滴が吐出される。
収縮パルスPb2は、膨張パルスPb1の印加終了後に0電位の状態を1AL継続させる休止期間Pb3を置いてから、負の駆動電圧−Voffを印加するパルスである。膨張パルスPb1の印加終了後に更に1ALの休止期間Pb3が終了した時点では、隔壁32B、32Cは図4(a)のように中立状態のままであるが、チャネル31B内の圧力は負の圧力となっている。このタイミングで駆動電極36Bに収縮パルスPb2を印加すると、隔壁32B、32Cが内側に向けて変形することで、負圧状態のチャネル31B内に正の圧力が付与され、更にその1AL後に中立状態に戻される結果、チャネル31内の残留圧力波はキャンセルされる。
以上の説明において、大液滴波形PAにおける膨張パルスPa1のパルス幅は3ALとされているが、2.8AL以上3.4AL以下の範囲であればよい。また、小液滴波形PBにおける膨張パルスPb1のパルス幅も1ALに限定されるものではなく、0.8AL以上1.2AL以下の範囲であればよい。
また、本実施形態に示すように大液滴波形PAの収縮パルスPa2のパルス幅を2ALとし、小液滴波形PBの膨張パルスPb1と、休止期間Pb3と、収縮パルスPb2の各パルス幅をそれぞれ1ALとすることで、駆動波形全体のパルス幅を小さくできる。パルス幅を小さくできることで、それだけ短期間で駆動波形を印加することができようになるため、高速印字を図る上でより好ましい態様である。
大液滴波形PAの膨張パルスPa1の駆動電圧+Vonは、小液滴波形PBの膨張パルスPb1の駆動電圧+Vonと同電圧であり、且つ、大液滴波形PAの収縮パルスPa2の駆動電圧−Voffは、小液滴波形PBの収縮パルスPb2の駆動電圧−Voffと同電圧であることが好ましい。大液滴及び小液滴の各駆動信号のための電源が1つで済むため、駆動回路や制御回路の構成を簡略することができる。
ところで、圧力発生手段を構成する隔壁32の変形は、壁を挟むように設けられる2つの駆動電極間の電圧差で起こる。例えば図4に示す隔壁32Bの場合、図3に示す正電圧(+Von)と負電圧(−Voff)からなる駆動波形を一方の駆動電極36Bに印加し、他方の駆動電極36Aを接地することで電圧差を発生させている。本発明では、このように隔壁32を挟むように設けられる2つの駆動電極に対して、それぞれ異なる駆動波形を印加し、その駆動波形の差分波形を積極的に利用することによって駆動させる。
この場合、図3(a)に示すように極性が正負に切り替わる大液滴波形PAは、インク滴の吐出を行う吐出チャネル内の駆動電極に対して印加する正電圧(+Von)の吐出チャネル用波形PA1(図5(a))と、その両隣の非吐出チャネル内の駆動電極に対して印加する正電圧(+Voff)の非吐出用波形PA2(図5(b))との単一極性の波形成分に分けることができる。
例えば図4のチャネル31Bを吐出チャネルとする場合、このチャネル31B内に臨む駆動電極36Bには、図5(a)に示す正電圧(+Von)である膨張パルスPa1のみを含む吐出チャネル用波形PA1を印加し、非吐出チャネルであるその両隣のチャネル31A、31C内に臨む駆動電極36A、36Cには、図5(b)に示す正電圧(+Voff)である収縮パルスPa2のみを含む非吐出チャネル用波形PA2を印加すると、隔壁32B、32Cは、その両面の駆動電極36Aと36B、駆動電極36Bと36Cの間の差分波形によって、駆動電極36Bのみに図3(a)の駆動波形PAを印加し、駆動電極36A、36Cを接地した場合と全く同様に変形駆動して大液滴を吐出させることができる。
また同様に、図3(b)に示すように極性が正負に切り替わる小液滴波形PBは、インク滴の吐出を行う吐出チャネル内の駆動電極に対して印加する正電圧(+Von)の吐出チャネル用波形PB1(図6(a))と、その両隣の非吐出チャネル内の駆動電極に対して印加する正電圧(+Voff)の非吐出用波形PB2(図6(b))との単一極性の波形成分に分けることができる。
そして、同様にチャネル31Bに小液滴波形PBを印加する場合は、このチャネル31B内に臨む駆動電極36Bには、図6(a)に示す正電圧(+Von)である膨張パルスPb1のみを含む吐出チャネル用波形PB1を印加し、非吐出チャネルであるその両隣のチャネル31A、31C内に臨む駆動電極36A、36Cには、図6(b)に示す正電圧(+Voff)である収縮パルスPb2のみを含む非吐出チャネル用波形PB2を印加すると、隔壁32B、32Cは、その両面の駆動電極36Aと36B、駆動電極36Bと36Cの間の差分波形によって、駆動電極36Bのみに図3(b)の駆動波形PBを印加し、駆動電極36A、36Cを接地した場合と全く同様に変形駆動して小液滴を吐出させることができる。
このように圧力発生手段を構成する隔壁32を、異なる駆動波形を印加したときの差分波形を利用して変形させるようにすることで、大液滴及び小液滴の吐出のための駆動波形を、ここでは正電圧(+Von、+Voff)だけで構成でき、駆動回路を簡略化することができる。
本実施形態のように、圧力発生手段を構成する隔壁32によって隔てられた複数のチャネル31が並設される記録ヘッド3を駆動する場合、一つのチャネル31の隔壁32が吐出の動作をすると、その両隣のチャネル31が影響を受ける。この場合、一つおきのチャネル、例えば図4におけるチャネル31A、31Cをインク滴を吐出しない非吐出専用チャネル(ダミーチャネル又は空気チャネル等ともいう。)とし、常にチャネル31Bから吐出を行う独立駆動法によって駆動させることもできるが、一般には、複数のチャネル31のうちの隣り合う3つのチャネルを1組として全チャネル31を複数の組に分け、各組内の3つのチャネルを時分割で順次駆動する3サイクル駆動法が行われる。
そこで、差分波形を利用した大液滴と小液滴との打ち分け動作について、この3サイクル駆動法によって吐出動作させる場合について図7〜図9を用いて説明する。
3サイクル駆動法を行う場合の記録ヘッド3は、2つおきのチャネル31がまとめて1つのグループとされ、全チャネル31がA、B、Cの3つのグループ(これをA相、B相、C相という。)に分けられるが、ここでは、そのうちの互いに隣り合うA1、B1、C1、A2、B2、C2、A3、B3、C3の9つのチャネル31について説明する。また、このときのA相、B相、C相の各チャネル31内の駆動電極(図7〜図9では不図示)に対して印加される駆動波形のタイミングチャートを図10に示す。ここでは、図3(a)に示す大液滴波形PAを図5に示す差分波形を利用して生成して大液滴を吐出し、図3(b)に示す小液滴波形PBを図6に示す差分波形を利用して生成して小液滴を吐出するものとし、B相チャネル(大液滴)→C相チャネル(小液滴)→A相チャネル(大液滴)の順にインク滴を吐出する場合を示す。
なお、差分波形によってそれぞれ大液滴及び小液滴を吐出するための駆動波形は、図10に示すPLSTM0波形、PLSTM1波形及びPLSTM2波形を、パルス分割信号の立ち上がり時に選択することによって1画素周期T毎に作成される。PLSTM0波形は、接地のための0電位を維持するGND波形であり、本発明における第3の駆動波形である。PLSTM1波形は、大液滴波形PAの膨張パルスPa1に相当する3ALの+Von波形を3ALの休止期間をおいて繰り返す波形であり、本発明における第1の駆動波形である。PLSTM2波形は、大液滴波形PAの収縮パルスPa2に相当する2ALの+Voff波形を4ALの休止期間をおいて繰り返す波形であり、本発明における第2の駆動波形である。このPLSTM2波形は、PLSTM1波形の立ち下りエッジに同期して立ち上がるタイミングで繰り返され、A相、B相、C相の各チャネルからの吐出が、1画素周期T内において6AL(AL=3.0μs)の期間で順次行われる場合を示している。
PLSTM2波形は、パルスの立ち上がりエッジのタイミングがPLSTM1波形のパルスの立ち上がりエッジに対して3ALずれており、該PLSTM1波形のパルスの立ち下がりエッジに同期して立ち上がるように設定される。
また、PLSTM1波形の駆動電圧V1とPLSTM波形の駆動電圧V2とは、|V1|>|V2|となっている。これにより、V2はV1より耐性の低い素子を使用することができるため、V1を生成する回路を安価で小型にすることができる。
パルス分割信号は、PLSTM1波形とPLSTM2波形とを分割して小液滴波形PBを作成するためのタイミング信号であり、1画素周期Tに相当するパルス選択ゲート信号の立ち上がり期間において、該パルス選択ゲート信号の立ち上がりエッジに同期して立ち上がる第1のパルス分割信号d1から1AL間隔で立ち上がる第2、第3のパルス分割信号d2、d3と、その第3のパルス分割信号d3の立ち上がりエッジから2AL後に立ち上がる第4のパルス分割信号d4との合計4つの信号によって構成されている。
図7は、B相チャネルから大液滴を吐出する際の吐出動作を示しており、まず、B相チャネルの1画素周期T内において、図7(a)の中立状態から、第1のパルス分割信号d1の立ち上がりエッジ(B相チャネルのパルス選択ゲート信号の立ち上がりエッジ)に同期して、非吐出チャネルとなるA相チャネル(A1、A2、A3)及びC相チャネル(C1、C2、C3)に、図10に示すようにPLSTM2波形を選択して印加すると共に、吐出チャネルとなるB相チャネル(B1、B2、B3)にはPLSTM1波形を選択して印加する。これにより、PLSTM1波形とPLSTM2波形との差分波形によって大液滴波形PAの膨張パルスPa1が生成され、B相チャネルは図7(b)のように両隔壁が外側に向けて変形してチャネル内の容積が膨張する。
3AL経過後にPLSTM1波形に含まれる膨張パルスPa1の立ち下がりエッジのタイミングで、A相チャネル及びC相チャネルに印加されたPLSTM2波形が立ち上がり、これらA相チャネル及びC相チャネルに大液滴波形PAの2ALの収縮パルスPa2が印加される。これにより、PLSTM1波形とPLSTM2波形との差分波形によって大液滴波形PAの収縮パルスPa2が生成され、B相チャネルは図7(c)のように両隔壁が内側に向けて変形してチャネル内の容積が一気に収縮し、B相チャネルの各ノズルから大液滴を吐出する。
収縮パルスPa2が2AL継続した後、A相チャネル、B相チャネル及びC相チャネルは0電位となり、全てのチャネルが図7(a)のように中立状態に復帰して残留圧力波をキャンセルする。
次に、図8は、C相から小液滴を吐出する際の吐出動作を示しており、C相チャネルの1画素周期T内において、図8(a)の中立状態から、第1のパルス分割信号d1の立ち上がりエッジ(C相チャネルのパルス選択ゲート信号の立ち上がりエッジ)に同期して、非吐出チャネルとなるA相チャネル及びB相チャネルに、図10に示すようにPLSTM2波形を選択して印加すると共に、吐出チャネルとなるC相チャネルにはPLSTM0波形を選択して印加する。この時点ではいずれの波形も0電位であるため、全てのチャネルは図8(a)の中立状態を維持したままである。
次いで、第2のパルス分割信号d2の立ち上がりエッジに同期して、C相チャネルのみにPLSTM1波形を選択して印加する。これにより、PLSTM0波形とPLSTM1波形との差分波形によって、B相チャネルは図8(b)のように両隔壁が外側に向けて変形してチャネル内の容積が膨張する。
このC相チャネルへのPLSTM1波形の印加が1AL継続された後、第3のパルス分割信号d3の立ち上がりエッジのタイミングでC相チャネルに再びPLSTM0波形を選択すると、全てのチャネルは図8(a)の中立状態に復帰する。これにより、PLSTM0波形、PLSTM1波形及びPLSTM2波形の差分波形は小液滴波形PBの膨張パルスPb1と同一に機能し、C相チャネルは両隔壁が図8(b)の膨張状態から中立状態に向けて収縮するため、C相チャネルの各ノズルから小液滴を吐出する。
C相チャネルに印加されたPLSTM1波形の立ち下がりエッジから1AL経過すると、A相チャネル及びB相チャネルに印加されたPLSTM2波形が立ち上がる。これにより、PLSTM1波形とPLSTM2波形との差分波形は小液滴波形PBの収縮パルスPb2と同一に機能し、C相チャネルは両隔壁が図8(a)の中立状態から図8(c)のように内側に向けて収縮する。
その後、第4のパルス分割信号d4の立ち上がりエッジに同期してC相チャネルにPLSTM2波形を選択して印加すると、A相チャネル、B相チャネル及びC相チャネルには全て同電圧の正電圧+Voffが印加された状態となるため、全ての隔壁に電圧差がなくなり、全てのチャネルが図8(a)の中立状態に復帰する。
図9は、A相チャネルから大液滴を吐出する際の吐出動作を示しており、A相チャネルの1画素周期T内において、図9(a)の中立状態から、第1のパルス分割信号d1の立ち上がりエッジ(A相チャネルのパルス選択ゲート信号の立ち上がりエッジ)に同期して、非吐出チャネルとなるB相チャネル及びC相チャネルに、図10に示すようにPLSTM2波形を選択して印加すると共に、吐出チャネルとなるA相チャネルにはPLSTM1波形を選択して印加する。これにより、PLSTM1波形とPLSTM2波形との差分波形によって大液滴波形PAの膨張パルスPa1が生成され、A相チャネルは図9(b)のように両隔壁が外側に向けて変形してチャネル内の容積が膨張する。
3AL経過後にPLSTM1波形に含まれる膨張パルスPa1の立ち下がりエッジのタイミングで、B相チャネル及びC相チャネルに印加されたPLSTM2波形が立ち上がり、これらB相チャネル及びC相チャネルに大液滴波形PAの2ALの収縮パルスPa2が印加される。これにより、PLSTM1波形とPLSTM2波形との差分波形によって大液滴波形PAの収縮パルスPa2が生成され、A相チャネルは図9(c)のように両隔壁が内側に向けて変形してチャネル内の容積が一気に収縮し、A相チャネルの各ノズルから大液滴を吐出する。
収縮パルスPa2が2AL継続した後、A相チャネル、B相チャネル及びC相チャネルは0電位となり、全てのチャネルが図9(a)のように中立状態に復帰して残留圧力波をキャンセルする。
以上の3サイクル駆動は、A相とB相から大液滴、C相から小液滴をそれぞれ吐出する場合であるが、A〜Cのいずれの相も、PLSTM0波形、PLSTM1波形及びPLSTM2波形を適宜選択することにより、1画素周期T毎に大液滴と小液滴を任意に打ち分けることができることは容易に理解できるであろう。
すなわち、本発明によれば、同じノズルから大液滴と小液滴とを打ち分ける場合でも、PLSTM0波形、PLSTM1波形及びPLSTM2波形の3種類の駆動波形を共通に使用し、1画素周期T内において第1のパルス分割信号d1〜第4のパルス分割信号d4で区切られた所定の時間毎に、大液滴の吐出の際は、吐出チャネルの駆動電極にPLSTM1波形を選択すると共にこれに隣接する非吐出チャネルの駆動電極にPLSTM2波形を選択し、小液滴の吐出の際は、吐出チャネルの駆動電極にPLSTM0波形、PLSTM1波形及びPLSTM2波形を適宜切り替えて選択し、非吐出チャネルにはPLSTM2波形を選択することにより、2つの駆動電極間の差分波形によって隔壁32を作動させることができる。
また、本発明によれば、必要な駆動波形は大液滴と小液滴とで共通の3種類だけで済むため、駆動回路を簡素化できる。
しかも、1画素周期T内では、大液滴波形又は小液滴波形のいずれかが生成されるだけであるため、従来のように1画素周期T内に使用しない波形のための時間を設けておく必要がない。このため、駆動周期が無駄に長くなることはなく、階調性が向上した画像を高速印字することが可能となる。
次に、このように3種類の駆動波形を1画素周期T内の所定の時間毎に適宜選択して差分波形を利用して大液滴と小液滴を打ち分ける制御を行う駆動信号発生部100の内部構成の一例について図11を用いて説明する。
図11に示す駆動信号発生部100は、128チャネルの駆動ICの場合を示しており、第1のラッチ手段である2ビット×128チャネル(ノズル)の第1のラッチ回路102A、第2のラッチ手段である2ビット×128チャネル(ノズル)の第2のラッチ回路102B、第1のラッチ回路102Aに画像データ(吐出データ)を出力する第1の記憶手段であるシフトレジスタ101、吐出データに基づいて大液滴又は小液滴を吐出するために圧力発生手段である隔壁32を駆動するグレイスケールコントローラ103、第2の記憶手段であるアウトプットパターンレジスタ104、3相バッファーアンプ105等を含んで構成される。第2の記憶手段としては、アウトプットパターンレジスタ104のようなレジスタを用いることが好ましい。
本実施形態では、1画素当たり0〜2の3階調(0=非吐出、1=小液滴、2=大液滴)からなる画像データを処理するために2ビットに対応する構成となっている。不図示の制御回路から入力される転送クロックDCLKに同期して1画素が2ビットの画像データが画素単位でシリアルにシフトレジスタ101へ転送されてくる。この転送タイミングは、各ノズル列間で共通である。
シフトレジスタ101は128ノズルの1回の吐出に相当する数の画素の画像データを記憶できる容量を持っている。このシフトレジスタ101を2つ連結することにより、本実施形態では副走査方向に並んだ1列分のノズルに対応する256画素分の画像データを記憶する。記録ヘッド3を搭載したキャリッジが予め定められた所定位置に達すると、制御回路は、ラッチタイミングを指示する第1のトリガー信号であるLAT1信号を出力し、第1のラッチ回路102AはこのLAT1信号を受けるとシフトレジスタ101から並列に出力された画像データをラッチする。
記録ヘッド3を搭載したキャリッジが予め定められた所定位置に達すると、制御回路はラッチタイミングを指示する第2のトリガー信号であるLAT2信号を出力し、第2のラッチ回路102BはこのLAT2信号を受けると第1のラッチ回路102Aから並列に出力された画像データをラッチする。
このように、シフトレジスタ101から出力された画像データは、第1のラッチ回路102Aを経由して、第2のラッチ回路102Bにラッチされる。
記録ヘッド3が記録に適した位置に達すると、制御回路は、インク吐出を開始させるためのTRGIN信号を出力し、第2のラッチ回路102Bは、このTRGIN信号を受けると、第2のラッチ回路102Bにラッチされた画像データは、グレイスケールコントローラ103に出力される。
このように、ラッチ手段を2つ有することにより、データ転送の速度を必要以上に向上させることなく、また記録速度を落とすことなく、複数のノズル列に対応した複数の駆動回路のシフトレジスタへのデータ転送を同時に行うことができ、データ転送のトリガー処理を効率的に行うことができる。また、制御系の構成を簡略化したり、ノズル列毎の液滴の着弾位置を画素ピッチより細かく調整することが可能なる。
グレイスケールコントローラ103には、駆動波形を発生させる不図示の回路から3種類の駆動波形(前述したPLSTM0、PLSTM1、PLSTM2の3種類)が入力端子を通じて入力される。
また、グレイスケールコントローラ103は、入力端子から供給される選択信号(前述のパルス選択ゲート信号)STB−1、2、3により、256個のノズルに対応した全チャネルを、ここでは図10に示したように、A相、B相、C相の3組に分割して、対応する圧力発生手段である隔壁を3サイクル駆動によって順次に分割駆動させる制御手段を構成する。STB−1ではA相が選択され,STB−2ではB相が選択され,STB−3ではC相が選択され、それぞれ対応するノズルから順次にインク滴が吐出される。
また、グレイスケールコントローラ103は、駆動波形パターンにおける何番目の波形を出力するのかをカウントするカウント手段106を有しており、このカウント手段106のカウント値であるGSC(グレイスケールカウント)を0〜4までカウントする。
また、グレイスケールコントローラ103は、吐出データである画像データと圧力発生手段である隔壁を駆動する駆動波形に対応した駆動波形パターンデータとの関係を規定した情報である変換テーブルを記憶したアウトプットパターンレジスタ104を有している。この実施形態では、複数の駆動波形に対応した駆動波形パターンデータを示している。
まず、入力されたLOAD信号により、カウント手段がリセットされる。例えばSTB−1が選択され、A相のチャネル(ノズル)が選択される。A相の各チャネルに対応した画像データから、アウトプットパターンレジスタ104に記憶されている変換テーブルにより、駆動波形パターンデータが決定する。なお、駆動されないB相、C相のチャネルには、予め定められた駆動波形パターンデータが選択される。前記カウント手段のカウント値であるGSCが0から1ずつカウントアップされ、出力する駆動波形を決定する。駆動波形は、画像データとカウント手段のカウント値に応じて、PLSTM0波形、PLSTM1波形、PLSTM2波形の3種類の駆動波形の中から選択される。これらの波形は、入力されたGSCLKのタイミング信号に同期して、前述の3種類の駆動波形から、スイッチング手段(不図示)により選択され、出力される。
3相バッファーアンプ105は、グレイスケールコントローラ103から出力された駆動波形を隔壁の駆動に必要な電源電圧迄にレベルシフトする。この際、入力端子から入力された電圧値V1により、駆動波形の+Vonの駆動電圧が、同様に入力された電圧値V2により、駆動波形の+Voffの駆動電圧が決定され、それぞれレベルシフトされた後、対応する隔壁の駆動電極に出力され、対応するノズルからインク滴が吐出される。V1、V2の電圧値を変えることで、駆動電圧を最適値に変更できる。
カウント手段のカウント値がGSC=4に達すると、A相のチャネルからのインク滴の吐出が終了したと判断し、カウント手段106がLOAD信号により、リセットされ、次いで、STB−2信号によりB相が選択され、B相について同様にインク滴の吐出が行われる。B相が終了すると、同様にC相についてのインク吐出が行われる。これで、1列分の全ノズルについてのインク吐出が終了し、再度、次の画像データに基づいて、記録が繰り返される。
図12は、画像データと駆動波形パターンデータの変換テーブルの一例を示す図である。
画像データは、3階調を階調値0(非吐出)、階調値1(小液滴)、階調値2(大液滴)で表されている。
駆動波形パターンデータは前述したPLSTM0〜2の3種類あり、前述のカウント手段のカウント値のGSC=0〜4の5つの状態に対応している。駆動波形パターンデータ「0」はPLSTM0、「1」はPLSTM1、「2」はPLSTM2をそれぞれ選択することを示している。
また、データは後に位置するビットから出力されるので、例えば、図12の表中の階調値1の場合は、(2,0,1,0,0)なる駆動波形パターンデータが選択され、(0,0,1,0,2)なる駆動波形パターンデータが出力される。出力された駆動波形パターンは、前述のカウント値GSC=0〜4に対応しており、この場合、前述のカウント手段のカウント値が、GSC=0の場合は0が、GSC=1の場合は0が、そしてGSC=2の場合は1が、GSC=3の場合は0が、GSC=4の場合は2が、それぞれ選択される駆動波形データとして出力される。
なお、GSC=1〜4は前述のパルス分割信号d1〜d4に相当する。
前述のように、STB信号は、STB−1,STB−2,STB−3の3つの分割信号に従って、256個のノズルに対応したチャネルをA、B、Cの3つの相に分割して、対応する隔壁を順次に分割駆動させるものである。
例えば図10に示すタイミングチャートの例では、最初にn=2で、B相のチャネルの隔壁を駆動して階調値2の大液滴を吐出するが、この場合、B相のチャネルには、図12の表において、(1,1,1,1,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,1,1,1,1)が出力される。一方、n=1,3に該当するA相、C相のチャネルは、画像データにかかわらず、(2,2,2,2,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,2,2,2,2)が出力される。
その結果、図10に示すように、吐出チャネルであるB相のチャネルは、1画素周期Tにおいて、パルス分割信号d1〜d4で分割される各期間でPLSTM1のみが選択され、非吐出チャネルであるA相、C相のチャネルは、1画素周期Tにおいて、パルス分割信号d1〜d4で分割される各期間でPLSTM2のみが選択される。
次いで、n=3で、C相のチャネルの隔壁を駆動して階調値1の小液滴を吐出するが、この場合、C相のチャネルには、図12の表において、(2,0,1,0,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,0,1,2,2)が出力される。一方、n=1,2に該当するA相、B相のチャネルは、画像データにかかわらず、(2,2,2,2,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,2,2,2,2)が出力される。
その結果、図10に示すように、吐出チャネルであるC相のチャネルは、1画素周期Tにおいて、パルス分割信号d1で分割される期間ではPLSTM0が選択され、パルス分割信号d2で分割される期間ではPLSTM1が選択され、パルス分割信号d3で分割される期間ではPLSTM0が選択され、パルス分割信号d4で分割される期間ではPLSTM2が選択され、非吐出チャネルであるA相、B相のチャネルは、1画素周期Tにおいて、パルス分割信号d1〜d4で分割される各期間でPLSTM2のみが選択される。
次いで、n=1で、A相のチャネルの隔壁を駆動して階調値1の大液滴を吐出するが、この場合、A相のチャネルには、図12の表において、(1,1,1,1,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,1,1,1,1)が出力される。一方、n=2,3に該当するB相、C相のチャネルは、画像データにかかわらず、(2,2,2,2,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,2,2,2,2)が出力される。
その結果、図10に示すように、吐出チャネルであるA相のチャネルは、1画素周期Tにおいて、パルス分割信号d1〜d4で分割される各期間でPLSTM1のみが選択され、非吐出チャネルであるB相、C相のチャネルは、1画素周期Tにおいて、パルス分割信号d1〜d4で分割される各期間でPLSTM2のみが選択される。
従って、カウント手段のカウント値がGSC=0の状態では、A相、B相、C相のいずれのチャネルにおいても0の駆動波形データが選択され、隔壁は駆動されないが、GSC=1〜4においては、駆動波形データに応じて、上述したように隔壁が駆動される。
また、インク吐出を行う256個のチャネルを有する記録ヘッドの場合、その両端に配置される2つのチャネルの両隔壁を変形させる必要性から、これら256個のチャネルの他に、その両端側にそれぞれインク滴を吐出しないダミーのチャネルが更に1つずつ配置されるが、このダミーのチャネルの駆動電極には、out−Dとして、(2,2,2,2,0)の駆動波形パターンデータが選択され、(0,2,2,2,2)が出力される。このことにより、256個のチャネルの両端のチャネルの画像データに対応して電極に印加される駆動波形に応じて、ダミーのチャネルの隔壁が駆動される。
このように、駆動回路の駆動信号発生部100が、吐出データを記憶する第1の記憶手段であるシフトレジスタ101と、吐出データと圧力発生手段を作動させる第1の駆動波形(PLSTM1)、第2の駆動波形(PLSTM2)及び第3の駆動波形(PLSTM0)に対応した駆動パターンとの関係を規定した情報を記憶する第2の記憶手段であるアウトプットパターンレジスタ104とを有するものとすることにより、1画素周期内の所定の時間毎に選択される駆動波形を迅速に切り替えて圧力発生手段に対して印加することができる。
第2の記憶手段であるアウトプットパターンレジスタ104は書き換え可能であることが好ましい。書き換え可能とは、不図示のインクジェット記録装置を制御する制御部等から必要に応じて内容を変えられるようにするということであり、これにより、本実施形態に示した駆動波形以外の駆動波形においても当該レジスタの内容を書き換えることで同様に打ち分けることが可能となる。
1:インクジェット記録装置
2:搬送機構
21:搬送ローラー
22:搬送ローラー対
23:搬送モーター
3:記録ヘッド
30:チャネル基板
31:チャネル
32:隔壁
32a:上壁部
32b:下壁部
33:カバー基板
33a:共通流路
34:ノズルプレート
34a:ノズル
35:プレート
35a:インク供給口
35b:インク供給管
4:ガイドレール
5:キャリッジ
6:フレキシブルケーブル
100:駆動信号発生部
101:シフトレジスタ(第1の記憶手段)
102A:第1のラッチ回路
102B:第2のラッチ回路
103:グレイスケールコントローラ
104:アウトプットパターンレジスタ(第2の記憶手段)
105:3相バッファーアンプ
P:記録媒体
PS:記録面
PA:大液滴波形
Pa1:膨張パルス
Pa2:収縮パルス
PB:小液滴波形
Pb1:膨張パルス
Pb2:収縮パルス
Pb3:休止期間

Claims (6)

  1. インク滴を吐出する複数のノズルと、前記ノズルにそれぞれ連通する圧力室と、2つの駆動電極に挟まれた圧電材料を有し、前記ノズルから大液滴を吐出させる吐出データと小液滴を吐出させる吐出データとを含む複数の吐出データの各々に基づいて、前記駆動電極にそれぞれ駆動波形が印加されることによって作動して前記圧力室の容積を変化させ、該圧力室内のインクを前記ノズルから吐出させる圧力発生手段とを有する記録ヘッドと、
    前記駆動波形を生成する駆動回路とを備えたインクジェット記録装置において、
    前記駆動波形は、非GND波形からなる第1の駆動波形と、前記第1の駆動波形とは異なる非GND波形からなる第2の駆動波形と、GND波形からなる第3の駆動波形とを有すると共に、前記第1の駆動波形の駆動電圧V1と前記第2の駆動波形の駆動電圧V2は、|V1|>|V2|であり、
    前記駆動回路は、各々の前記吐出データに応じて、前記圧力発生手段の前記2つの駆動電極のうちの一方に、前記駆動波形の少なくとも前記第1の駆動波形と前記第2の駆動波形とを選択して1画素周期よりも短い所定の時間毎に切り替えて印加する、あるいは前記第1の駆動波形のみを選択して印加すると共に、他方には前記第2の駆動波形のみを選択して印加することにより、前記2つの駆動電極間の差分波形によって大液滴波形又は小液滴波形を生成して前記圧力発生手段を作動させ、同じ前記ノズルから前記大液滴と前記小液滴とを打ち分けることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記駆動回路は、吐出データを記憶する第1の記憶手段と、前記吐出データと前記圧力発生手段を作動させる前記第1の駆動波形、前記第2の駆動波形及び前記第3の駆動波形に対応した駆動パターンとの関係を規定した情報を記憶する第2の記憶手段とを有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記第2の記憶手段は書き換え可能であることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記第1の駆動波形と前記第2の駆動波形は、いずれも矩形波であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記記録ヘッドは、隣接する前記圧力室間に圧電材料からなる共通の隔壁を有し、前記駆動電極が前記圧力室内に臨む前記隔壁表面に形成され、前記隔壁を圧力発生手段としてせん断変形させるせん断モード型の記録ヘッドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記駆動回路は、隣り合う3つの圧力室を1組として全圧力室を複数の組に分け、各組内の3つの圧力室を時分割で順次駆動するように前記隔壁をせん断変形させることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
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