JP5859350B2 - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
図1は、車両用の自動変速機に適用される変速制御装置のシステム構成を示す図である。
図1において、エンジン1の出力側に自動変速機2が接続され、自動変速機2の出力軸には、ディファレンシャルギヤなど介して車両の駆動輪(図示省略)が接続される。
コントロールバルブ5に対する作動油の供給は、シフトソレノイド,ライン圧ソレノイド,ロックアップソレノイド等によって制御されるが、図1には、変速のためのシフトソレノイド6A,6Bのみを示してある。
各種センサとして、自動変速機2の出力軸8から回転信号を得て車速VSPを検出する車速センサ9、アクセルペダルに連動して開閉するエンジン1のスロットル弁(吸気絞り弁)10の開度TVOを検出するスロットルセンサ(アクセル開度センサ)11、トルクコンバータ3のタービン回転速度NT(変速機の入力軸回転速度)を検出するタービンセンサ12などを設けてある。
自動変速させる変速段(例えば、1速〜5速)を決定する変速モードとして、加速性重視(駆動力重視)のパワーモード(第2のモード)と、燃費重視のノーマルモード(第1のモード)とが設定される。
そして、運転者によるモード切替スイッチの操作、アクセル操作速度や頻度などに基づく自動切り替え制御などによって、パワーモード,ノーマルモードの切り替えが行われるようになっている。
更に、例えば、エコノミーモード、ノーマルモード、パワーモードなどの3種類の変速モードを備えることができ、この場合、エコノミーモードとノーマルモードとの間での切り替えでは、エコノミーモードが第1のモードに相当し、ノーマルモードが第2のモードに相当することになる。
尚、図2〜図4のフローチャートに示す変速制御ルーチンは、一定の微小時間毎に実行されるものとする。
ステップS102では、エンジン負荷の検出を行う。エンジン負荷として、スロットルセンサ11の出力に基づいてスロットル開度TVOを検出する構成とする他、アクセル開度、燃料噴射量、吸気負圧(ブースト圧)、吸入空気量などを、エンジン負荷を示す状態量として検出することができる。
ステップS104では、前回にステップS104に進んだときの変速モードに対して、今回ステップS104に進んだときの変速モードが異なっているか同じであるかを判別することで、変速モードの切り替え時であるか否かを判断する。
パワーモードが選択されている場合には、ステップS106へ進み、変速段の決定に用いる変速マップとして、パワーモード用の変速マップを選択する。
そして、ステップS108では、ステップS102、ステップS103で検出したエンジン負荷、車速に対応する変速マップ上の位置を検出し、ステップS109では、パワーモード用の変速マップ又はノーマルモード用の変速マップ上の位置に基づいて、目標とする変速段を決定する。
以上の変速制御は、パワーモード又はノーマルモードを保持している場合における変速マップに基づく変速制御である。
ステップS110では、切り替え後の変速モードがパワーモードであるか否かを判断し、切り替え後の変速モードがパワーモードであれば、ステップS111へ進む。
即ち、図3のフローチャートに示すステップS111〜ステップS120の処理は、ノーマルモードからパワーモードに切り替えられたときの変速制御を示す。
次いで、ステップS112では、ヒステリシス領域(変速段保持領域)の算出を行う。
パワーモードにおけるヒステリシス領域とは、パワーモード用の変速マップ上で、現在の変速段へのアップシフトポイントと、現在の変速段よりも1段低い(1段だけ低速側の)変速段へのダウンシフトポイントとで挟まれる領域である。
図5に示すように、変速マップ上には、3速から4速へのアップシフト変速を行わせるシフトポイントを示す3速→4速アップシフト線が設定されており、この3速→4速アップシフト線で区切られる2つ領域のうちの高車速側の領域に該当する場合には、変速段として4速が設定される。
即ち、3速に変速されている状態で、車速が上がり(及び/又はエンジン負荷が低下し)、車速とエンジン負荷とで決まる変速マップ上での位置が、3速→4速アップシフト線を横切ると、3速から4速へのアップシフト変速が行われる。
即ち、4速に変速されている状態で、車速が下がり(及び/又はエンジン負荷が増加し)、車速とエンジン負荷とで決まる変速マップ上での位置が、4速→3速ダウンシフト線を横切ると、4速から3速へのダウンシフト変速が行われる。
一方、3速→4速アップシフト線よりも高車速側の領域に該当していて4速に変速されている状態から車速が低下し、3速→4速アップシフト線よりも低車速側の領域に移行しても、3速へのダウンシフトは行われず、更に車速が下がって4速→3速ダウンシフト線よりも低車速側の領域に該当するようになって3速へのダウンシフトが行われることになる。
ここで、4速に変速されている状態でパワーモードに切り替えられた場合に、パワーモード用の変速マップにおけるヒステリシス領域(4速→3速ダウンシフト線と3速→4速アップシフト線とで挟まれる領域)に位置していた場合には、変速マップに基づく変速制御では、ダウンシフト変速及びアップシフト変速は行われず、4速をそのまま保持することになる。
ステップS114では、車両の走行経路が渋滞しているか否かを判断する。
更に、ナビゲーションシステムの渋滞情報に基づいて渋滞の有無を判断したり、車両前方の障害物を検知するステレオカメラやエリアセンサなどの出力から車間距離を検出し、車間距離が短い状態での走行が設定時間以上継続した場合に渋滞であると判断したりすることができる。この他、渋滞の検知方法として公知の方法を適宜採用することができる。
パワーモード用の変速マップに基づき目標の変速段を決定すると、ステップS131に進み、切り替え前のノーマルモード用の変速マップに基づき決定されていた変速段(現在の変速段)と比較し、変速要求があれば、ステップS132に進んで変速を実行する。
後述するように、変速モードの切り替え時にヒステリシス領域に該当している場合に、変速マップに基づかない、モード切り替え方向に応じた変速を実施することで、変速モードの切り替えに見合う変速特性の変化を運転者に体感させ、かつ、運転者の意図する運転を実現できるようする。
尚、渋滞路であると判断している状態で、エンジン負荷、車速、エンジン回転速度の少なくとも1つが設定を超えて増大したときには、駆動力の要求状態であると推定し、変速マップに基づかない変速の禁止を解除する、即ち、変速マップに基づかない変速の実施を許可することができる。
そして、ヒステリシス領域に該当していない場合には、ステップS115へ進んで、切り替え後のパワーモード用の変速マップを参照して変速段を決定した後、ステップS131へ進んで、変速マップに基づく変速制御を行う。
ステップS116でヒステリシス領域に該当していると判断すると、ステップS117へ進み、現在の変速段が設定領域内(中間的な変速段)であるか否かを判断し、現在の変速段が設定領域から外れていれば、ステップS115に進んで、変速マップに従って決定される変速段に従った変速処理を行わせる。
ステップS117で、現在の変速段が設定領域内であると判断した場合、例えば現在の変速段が3速又は4速である場合には、ステップS118へ進む。
そして、ステップS118では、変速マップに基づかないダウンシフト変速を行わなくても設定の加速度(減速度を含む)が得られている条件であるか否か、換言すれば、パワーモードへの切り替え意図を実際の加速度として実現するためには、ダウンシフト変速が要求されることになる、加速度が低い運転条件であるか否かを判断する。
(2)車速の単位時間当たりの変化量(加速度)の絶対値が規定値以内である。
(3)エンジン回転速度が規定速度以下である。
(4)エンジン回転速度の単位時間当たりの変化量(加速度)の絶対値が規定値以内である。
(5)タービン回転速度(変速機の入力軸回転速度)が規定速度以下である。
(6)タービン回転速度の単位時間当たりの変化量(加速度)の絶対値が規定値以内である。
(7)アクセル開度(スロットル開度)が規定開度以下である。
(8)アクセル開度の単位時間当たりの変化量(加速度)の絶対値が規定値以内である。
また、設定の加速度が得られている条件であるか否か(加速が設定を超えているか否か)の判断に用いる規定速度、規定値、規定開度などは、変速マップに基づかないダウンシフト変速を行わないと、パワーモードに切り替えた状態での加速度として不十分であるか十分であるかを区別するための閾値であり、予め実験やシミュレーションに基づき適合されている。
即ち、ステップS118で、設定の加速度が得られている条件であると判断すると、ステップS115に進み、変速マップに基づき変速段を決定する。ここで、ステップS118に進むのは、ヒステリシス領域に該当している場合であり、ヒステリシス領域は、変速マップに基づく変速段の決定によって変速段が保持される領域であるから、ステップS118からステップS115に進んだときには、パワーモードへの切り替えに伴って変速は行われず、モード切り替え直前での変速段が保持されることになる。
ステップS119では、変速マップに基づかない変速(ダウンシフト変速及びアップシフト変速を含む)を前回行ってからの経過時間が、設定時間内であるか否かを判断する。
一方、変速マップに基づかない変速を前回行ってから、設定時間を超える時間が経過している場合には、変速マップに基づかない変速が短時間で繰り返されることにはならないので、ステップS120へ進んで、現在の変速段よりも1段だけ低速側の変速段を変速目標に設定し、ダウンシフト変速が実施されるようにする。
また、上記の変速マップに基づかないダウンシフト変速は、車両の走行経路が渋滞していれば行われないから、渋滞路でのモード切り替えスイッチの誤操作によって、変速マップに基づかないダウンシフト変速が行われることで車両が不用意に加速(又は減速)することなどを抑制できる。
また、変速マップに基づかないダウンシフト変速は、設定の加速度が得られている条件では禁止されるから、仮に変速モードの切り替えが運転者の意図に反して行われたとしても、過度にダウンシフト変速が実施されることを抑止でき、以って、車両の挙動の安定性を保持できる。
また、変速マップに基づかない変速が設定時間内で繰り返されることを禁止するので、変速が短時間で繰り返されることによる、走行安定性の低下を抑制できる。
図3のフローチャートのステップS110で、切り替え後の変速モードがパワーモードではなく、ノーマルモードであると判断された場合、即ち、パワーモードからノーマルモードへの切り替え時である場合には、図4のフローチャートのステップS121へ進む。
ステップS121では、変速段の決定に用いる変速マップとして、ノーマルモード用の変速マップを選択する。
ノーマルモードにおけるヒステリシス領域とは、ノーマルモード用の変速マップ上で、現在の変速段よりも1段だけ高速側(1段だけ高い)の変速段へのアップシフトポイントと、現在の変速段へのダウンシフトポイントとで挟まれる領域である。
ステップS124では、車両の走行経路が、登坂路又は降坂路であるか否かを判断する。
そこで、登坂路又は降坂路である場合には、ノーマルモードへの切り替えに伴う、変速マップに基づかないアップシフト変速を禁止するために、ステップS124からステップS125へ進み、ノーマルモード用の変速マップを参照して変速段を決定させる。
また、走行経路が登坂路又は降坂路であるか否かの判断は、例えば、アクセル開度と車速との相関に基づき判断することができる。詳しくは、アクセル開度が規定開度を超えているのに車速が規定車速を下回っている場合に登坂路であると判断し、逆に、アクセル開度が規定開度を下回っているのに車速が規定車速を上回っている場合に降坂路であると判断することができる。
また、登坂路又は降坂路は、センサによる車体の傾きに基づいて検出することができ、更に、GPSなどを用いた車両の現在位置情報(地図情報)から検出することができる。この他、登坂路、降坂路(路面勾配)の検知方法として公知の方法を適宜採用することができる。
そして、ヒステリシス領域に該当していない場合には、ステップS125へ進んで、切り替え後のノーマルモード用の変速マップを参照して変速段を決定した後、ステップS131へ進んで、変速マップに基づく変速制御を行う。
ステップS126でヒステリシス領域に該当していると判断すると、ステップS127へ進み、現在の変速段が設定領域内の変速段であるか否かを判断し、現在の変速段が設定領域内の変速段でない場合には、ステップS125に進んで、変速マップに従って決定される変速段に従った変速処理を行わせる。
ステップS127で、現在の変速段が設定領域内であると判断した場合、例えば現在の変速段が3速又は4速のいずれかである場合には、ステップS128へ進む。
ここで、例えばエンジンブレーキによる制動状態であって、加速度(減速度)が設定よりも高い場合に、ノーマルモードに切り替えられたとしても、変速マップに基づかないアップシフト変速によってエンジンブレーキによる制動力を減少させることは好ましくはない。また、車両の加速状態で、ノーマルモードに切り替えられたとしても、変速マップに基づかないアップシフト変速によって駆動力が急減することは好ましくない。
一方、現時点での加速度が設定よりも低い運転条件であれば(加速度が設定を超えていない場合)、変速マップに基づかないアップシフト変速によって、加速運転や減速運転における運転性を損ねることはなく、ノーマルモードへの切り替えに伴うより高速段での運転を応答よく実現できることになる。
一方、変速モードの切り替えに伴う変速を前回実行してからの経過時間が設定時間を超えていると判断すると、ステップS130へ進み、現在の変速段よりも1段だけより高速側の変速段を、目標変速段とする設定を行うことで、変速マップに基づかないアップシフト変速が行われるようにする。
また、上記の変速マップに基づかないアップシフト変速は、車両の走行経路が登坂路や降坂路であれば行われないから、登坂又は降坂途中でのモード切り替えスイッチの誤操作によって、変速マップに基づかないアップシフト変速が行われることで、登坂中に車速が低下したり、降坂中にエンジンブレーキによる制動力が低下したりすることを抑制できる。
また、変速マップに基づかないアップシフト変速は、設定の加速度が得られている条件では禁止されるから、仮に変速モードの切り替えが運転者の意図に反して行われたとしても、加速途中や減速途中に無用なアップシフト変速が実施されることを抑止でき、以って、車両の挙動の安定性を保持できる。
尚、車速とエンジン負荷に応じてシフトポイントを記憶した変速マップに基づいて自動変速を行うモードを、上記のノーマルモード,パワーモードの2種類に限定するものではなく、シフトポイントが異なるモードを3種類以上備える構成において、低速段寄りの変速特性に設定されるモードと、該モードに比して高速段寄りの変速特性に設定されるモードとの間における切り替えにおいて、上記実施形態と同様に変速マップに基づかないアップシフト変速又はダウンシフト変速を行わせることで、同様の効果を得ることができる。
Claims (3)
- 予め設定された変速マップに基づいて変速を行う自動変速モードとして、第1のモードと、前記第1のモードよりも低速側の変速段を設定する第2のモードとを備え、
前記第1のモードと前記第2のモードとの間での切り替え時に、前記変速マップに基づく変速が行われない場合に、モードの切り替え方向に応じた変速を行う一方、
車速の単位時間当たりの変化量の絶対値、エンジン回転速度の単位時間当たりの変化量の絶対値、変速機の入力軸回転速度の単位時間当たりの変化量の絶対値、アクセル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値のうちの少なくとも1つが規制値を超えている場合に前記モードの切り替え方向に応じた変速を禁止する、自動変速機の変速制御装置。 - 前記モードの切り替え方向に応じた変速の設定時間内での繰り返しを禁止する、請求項1記載の自動変速機の変速制御装置。
- 前記モードの切り替え方向に応じた変速におけるダウンシフト変速を、前記車両の走行経路が渋滞している場合に禁止し、前記モードの切り替え方向に応じた変速におけるアップシフト変速を、車両の走行経路が登坂路又は降坂路である場合に禁止する、請求項1又は2記載の自動変速機の変速制御装置。
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