以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
<1.第1の実施形態>
図1には、本発明に係る印刷装置PTの全体外観を示す斜視図が示されている。また、図2には、印刷装置PTに組み込まれた印刷版洗浄装置1の側面図が示されている。また、図3には、印刷版洗浄装置1の概略構成を示す概略図が示されている。
印刷装置PTにおいては、版胴10上の印刷版PLによって有機ELの発光材料が被転写体Wに転写されて有機EL素子のパターン形成が行われる。印刷装置PTは、基台8と、周面に印刷版PLを装着して回転する版胴10と、版胴10に装着された印刷版PLに発光材料のインクを供給するインク供給機構40と、被転写体Wを基台8上で版胴10に対して直線往復移動させるスライド移動機構60と、を備える。また、印刷装置PTは、装置の各動作機構を制御して印刷処理および印刷版PLの洗浄処理を実行させる制御部90を備える。
印刷装置PTに組み込まれた印刷版洗浄装置1は、回転する版胴10の上に装着された印刷版PLを洗浄するものであり、主としてリンス液を供給するリンス液供給部100、印刷版PLの物理洗浄を行う洗浄ブラシ部110、洗浄液を拭き取る拭き取りローラ部120、洗浄後の印刷版PLを乾燥させる上側乾燥エア部130、版胴を乾燥させる下側乾燥エア部140及び版胴10の外周面から落滴するリンス液を受け止める洗浄バット部150を備える。この印刷版洗浄装置1の各動作機構も制御部90によって制御される。なお、制御部90とは別に印刷版洗浄装置1専用のコントローラを設けるようにしても良い。なお、図1において、下側乾燥エア部140は図示の都合上、省略されている。
版胴10は、円筒形状を有するローラであり、水平方向に沿って延設された回転軸(ローラの中心軸)11を中心に回転可能に配置されている。版胴10は、モータ12によって回転軸11を中心として回転される。版胴10は、図2の紙面上で時計回り(図2における矢印TR)および反時計回り(図2における矢印HR)のいずれの方向にも回転可能であり、印刷処理時には当該モータ12によって矢印TRの向きに回転し、印刷版PLの洗浄処理時には矢印TRの向きと矢印HRの向きとのいずれか一方に切り替わりつつ回転する。
版胴10の外周面には、ポリエステル系樹脂製の印刷版PL(本実施形態では凸版)が装着される。印刷版PLの両端は図示を省略するクランプ機構によって版胴10の外周面上に固定される。本実施形態においては、印刷版PLの長さは版胴10の外周の約半分である。即ち、印刷版PLが版胴10に装着されると、版胴10の外周面の周方向の約半分が印刷版PLによって覆われる。
図2の紙面上において、版胴10の右側方((−Y)側)にはインク供給機構40が設けられている。インク供給機構40は、その軸心が版胴10の軸心と平行に配置され印刷版PLの表面にインクを供給するインク供給ローラ41と、このインク供給ローラ41の軸線方向に延びるスリットを有しインク供給ローラ41の表面にインクとして有機ELの高分子発光材料を供給するスリットノズル42と、インク供給ローラ41を洗浄するローラ洗浄機構43と、を備える。版胴10、インク供給機構40および印刷版洗浄装置1はベース部材5に搭載されており、これらは昇降モータ9の駆動によって一体的に昇降する。なお、このインク供給機構40は、図示しない移動機構によって、版胴10の印刷版PLに当接する位置と印刷版PLから離隔した位置との間で移動可能である。例えば、印刷版PLの洗浄処理が行われる場合などに、インク供給機構40は版胴10から離隔した位置に移動する。
また、版胴10の下方には、被転写体Wを支持して直線移動させるスライド移動機構60が設けられている。スライド移動機構60は、基台8上に固定設置された一対の直動ガイド62と、直動ガイド62の間に配設されたリニアモータ61と、被転写体Wを支持する搬送テーブル63とを備える。直動ガイド62およびリニアモータ61は、その長手方向が版胴10の回転軸11の軸心方向と直交する方向(X軸方向)に配設されている。搬送テーブル63は、これら直動ガイド62およびリニアモータ61と連結されている。被転写体Wを支持する搬送テーブル63は、リニアモータ61の駆動を受け、版胴10の軸心と直交する方向(Y軸方向)に往復移動する。
印刷装置PTにおいては、スリットノズル42からインク供給ローラ41の表面にインクとしての有機ELの発光材料が供給され、インク供給ローラ41の表面にインクの薄膜が形成される。このインクの薄膜は、インク供給ローラ41から、時計回りに回転する版胴10の印刷版PL上のパターンに転写され、インクのパターンが形成される。そして、搬送テーブル63に支持された被転写体Wを図2における矢印SRの方向に一定速度でスライド移動させつつ、版胴10を矢印TRの向き(時計回り)に回転させ、インクを載せた印刷版PLを被転写体Wに当接させる。これによってインクのパターンが印刷版PLから被転写体Wに転写される。
本実施形態においては、上述のように、インク供給機構40から版胴10の印刷版PLにインクが供給され、スライド移動機構60によって移動される被転写体Wにインクのパターンが転写される。そして、インクを被転写体Wに転写した後の印刷版PLの表面が印刷版洗浄装置1により洗浄される。これにより、印刷版PL上に残留したインクが除去され、必要な膜厚を持った均一なパターンの転写を可能とする。
図2において、版胴10の上方に固定フレーム80が配置されている。固定フレーム80には、上側乾燥エア部130の構成要素である上側エアナイフ131、リンス液供給部100の構成要素であるリンスノズル101が取り付けられている。このうち、リンスノズル101は、後述するレール部材102に沿って移動可能である。
また、洗浄ブラシ部110と拭き取りローラ部120とは、それぞれ根元の部分で共通の洗浄支持部85に接続されている。この洗浄支持部85が、版胴10の回転軸11の軸心方向と同じ方向に軸心を有する回転支持部86によって固定フレーム80に接続されている。従って、洗浄ブラシ部110と拭き取りローラ部120とは一体で、回転支持部86を基点にして、版胴10の外周面に対する設置角度を調整可能である。
続いて、印刷版洗浄装置1の要部構成について、より具体的に説明する。
<リンス液供給部>
図4には、リンス液供給部100の概略構成が示されている。リンス液供給部100は、版胴10の表面に装着された印刷版PLにリンス液を供給する。
リンスノズル101は版胴10の軸方向(X軸方向)の長さとほぼ同じ長さを有するレール部材102に設置されている。制御部90からの信号に基づく図示しない駆動機構の駆動によって、リンスノズル101はレール部材102に沿って往復移動可能である。
リンスノズル101の基端側はリンスバルブ103を介してリンス液供給源104と接続されており、リンスバルブ103が開放されることによって、リンスノズル101の吐出孔からリンス液(洗浄液)が吐出される。本実施形態においては、リンス液供給源104からトルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系の有機溶剤がリンス液として供給される。
このリンスバルブ103は、リンスノズル101が印刷版PLの上方を移動する間のみに開放されるよう制御されている。従って、リンス液は版胴10に装着された印刷版PLのパターンエリア(凹凸のパターンが形成されている範囲)にのみ供給されるため、余分に吐出されることを抑えられる。
<洗浄ブラシ部>
図5には洗浄ブラシ部110の外観平面図が示されている。また、図6には、図5に示される洗浄ブラシ部110のAA断面図が示されている。洗浄ブラシ部110は、版胴10と共に回転する印刷版PLに当接して、印刷版PLの凹凸に入り込んでいるインクを洗い流し、印刷版PLを洗浄する。
洗浄ブラシ部110は、版胴10の回転軸11の方向に沿って長手方向を有しており、その幅は版胴10の幅と同等である。
洗浄ブラシ部110はその端部に刷毛部111を有する。刷毛部111は、複数の毛が所定の方向に延び出た状態の毛部112と毛部112を固定する固定部113とで構成されている。毛部112は、耐薬品性を有する材料、例えばフッ素繊維(PFA)などで構成されている。なお、毛部112を構成する毛の延在方向は、洗浄ブラシ部110の長手方向に直交する方向である。
なお、以下において、毛部112の延在方向に沿う方向において、洗浄ブラシ部110の毛部112が設けられた側を先端側、その反対側を根元側と称する場合がある。
毛部112を構成する毛の径は、印刷版PLのパターンを構成する凹部の幅のうち、最も狭い幅より小さい。具体的には、毛の径は0.2ミリメートル以下である。このため、毛部112は、印刷版PLの凹部の中に入り込んで、凹部の中に残留するインクを直接掻き出すことができる。なお、本実施形態では印刷版PLに凸版が採用されている。上述の凹部とは、この凸版を構成する凸部と凸部との間の部分をいう。換言すれば、印刷版PLには凹凸のパターンが形成されているといえる。
刷毛部111の根元側には刷毛基端部114が設置されている。この刷毛基端部114の根元側に、緩衝部115と刷毛支持部1155とが刷毛基端部114の長手方向に沿って列設されている。
緩衝部115は、一端が刷毛基端部114に固定されたピン300の他端がブッシュ301に挿通された状態であり、このブッシュ301と刷毛基端部114との間に位置するピン300の外側にコイルバネ302が設けられた構造を有する。従って、刷毛部111及び刷毛基端部114が一体となって押し込まれると、コイルバネ302は縮み込み、ブッシュ301にピン300がより深く入り込んだ状態になる。そして、コイルバネ302がある程度まで押し込まれると反発し、刷毛部111と刷毛基端部114とは元の位置に押し戻される。このような構造を有するため、緩衝部115は、刷毛部111が印刷版PLに当接した際の圧力を緩衝させる緩衝材として機能する。本実施形態では、所定の間隔をおいて4つの緩衝部115が設置されているが、設置数は適宜決定される。
刷毛支持部1155は、ピン300と同じ延在方向を有するとともに、ピン300よりも長い部材である支持ピン350が、シリンダ固定部352に設けられた支持ピン挿通部353に挿通された構造を有する。本実施形態では、この刷毛支持部1155が2つ設けられており、それぞれ緩衝部115の外側の端に設けられている。
シリンダ固定部352には、エアシリンダ35が接続されている。このエアシリンダ35のピストン35dが、4つの緩衝部115のコイルバネ302の部分を覆うピストン支持部360に接続されている。ピストン35dがエアシリンダ35から伸長することによって、ピストン支持部360はシリンダ固定部352から離隔する。このときの刷毛部111の位置が、後述する処理位置WP1に相当する。また、ピストン35dがエアシリンダ35に向けて収縮することによって、ピストン支持部360はシリンダ固定部352に近接する。このときの刷毛部111の位置が後述する退避位置TP1に相当する。
刷毛基端部114が有する対向する長尺面119それぞれに、一対のブラシ当接部116が設けられている。ブラシ当接部116は、図6に示されるように、略L字構造を有しており、直角に曲げられた先端部分が、刷毛部111の毛部112の部分を両側から挟み込むようにして設置されている。
洗浄処理時において、刷毛部111は、版胴10とともに回転する印刷版PLに当接する。これによって、刷毛部111の毛部112は、回転する印刷版PLの回転方向の下流側に撓る。この毛部112の撓る部分に、一方のブラシ当接部116が当接する。なお、印刷版PLの回転方向の下流側とは、回転方向と同じ向きの側であり、回転方向の上流側とは、回転方向と反対向きの側である。
従って、固定部113の先端からブラシ当接部116の当接部分までの毛部112の部分は、毛部112が回転する版胴10に装着された印刷版PLに当接するにも関わらず、先端方向に延び出た状態がある程度維持される。換言すれば、ブラシ当接部116の当接部分から先端部分までの毛部112の部分のみが、回転する印刷版PLに当接することによって撓る。このように、毛部112の一部がブラシ当接部116に当接することによって、毛部112はブラシ当接部116によって支持される。
なお、本実施形態では、洗浄処理時において版胴10が往復移動を行う、即ち回転方向を切り換えるため、毛部112の両側にブラシ当接部116が設けられている。しかしながら、洗浄処理時における版胴10の回転方向が一方の方向のみである場合には、毛部112の撓る側のみにブラシ当接部が設けられていればよい。
これら一対のブラシ当接部116のうち、一方のブラシ当接部116の先端側には、刷毛部111の長手方向に沿うようにしてパイプ状の配管117が設置されている。この配管117は、外周面が刷毛部111に接触した状態で配置されている。また、毛部112に接触する配管117の外周面には、所定のサイズを有する吸引孔1171が長手方向に沿って所定の間隔をおいて複数形成されている。この配管117の基端側にはエジェクタ118が設けられており、エジェクタ118が駆動することによって、毛部112に含まれるリンス液は、吸引孔1171を介して配管117内へと吸引される。
<拭き取りローラ部>
図7には、拭き取りローラ部120が示されている。この拭き取りローラ部120は、洗浄ブラシ部110よりも下方で、かつリンス液が流れる版胴10の外周面の側方に設けられ、版胴10の外周面に当接し、版胴10の外周面に付着したリンス液を拭き取ることでこれを除去する。
拭き取りローラ部120はローラ121を備える。ローラ121は、版胴10の回転に応じて受動的に回転可能な構造を有する。ローラ121は、版胴10の回転軸11の方向に沿って長手方向を有する円筒形状のパイプ部材1211と、パイプ部材1211の外周面に巻き付けられており、液体を吸収可能なクロス1212とで構成されている。よって、ローラ121が版胴10の外周面に当接することにより、版胴10の外周面に付着したリンス液はクロス1212に吸収され、版胴10の外周面から除去される。
また、パイプ部材1211は中空であり、所定のサイズを有する吸引孔1213が所定の間隔をおいてパイプ部材1211の外周面の長手方向に沿って設けられている。このパイプ部材1211の一端には配管1214が接続されており、配管1214の基端側にエジェクタ125が設けられている。エジェクタ125が駆動することによって、クロス1212に吸収されたリンス液はパイプ部材1211の吸引孔1213を介して吸引される。
また、ローラ121を支持するローラ支持部127の根元側には、上述の緩衝部115と同様の構造を有するローラ緩衝部128が設けられている。具体的には、ローラ緩衝部128は、一端がローラ支持部127に固定されたピン400の他端がブッシュ401に挿通された状態であり、このブッシュ401とローラ支持部127との間に位置するピン400の外側にコイルバネ402が設けられた構造を有する。従って、ローラ121が根元側に押し込まれると、コイルバネ402は縮み込み、ブッシュ401にピン400がより深く入り込んだ状態になる。そして、コイルバネ402はある程度まで押し込まれると反発し、ローラ121は元の位置に押し戻される。ローラ緩衝部128は、ローラ121の表面が版胴10の外周面に当接する際の圧力を緩衝させる緩衝材として機能する。本実施形態では、所定の間隔をおいて2つのローラ緩衝部128が設置されているが、設置数は適宜決定される。
また、2つのローラ緩衝部128のコイルバネ402の部分を覆うピストン支持部405に、エアシリンダ129のピストン129aが接続されている。ピストン129aがエアシリンダ129から伸長することによって、拭き取りローラ部120のローラ121は、版胴10の外周面に当接してリンス液を拭き取る処理位置WP2に移動する。また、ピストン129aがエアシリンダ129に向けて収縮することによって、拭き取りローラ部120のローラ121は、版胴10の外周面から離隔した退避位置TP2に移動する。
<上側乾燥エア部>
上側乾燥エア部130は、版胴10の回転軸11と平行に延設されており、版胴10の幅とほぼ同じ長さを有する上側エアナイフ131を備える。上側エアナイフ131は固定フレーム80に固設されている。上側エアナイフ131は、スリット状の吐出口を備えており、該吐出口から空気を吐出することができる。上側乾燥エア部130は上側エアナイフ131がエアバルブ132を介してエア供給源133と接続されて構成される。エアバルブ132を開放すると、版胴10に装着された印刷版PLの幅よりも長い範囲にて上側乾燥エア部130から版胴10の外周面に向けて空気が吐出される。
<下側乾燥エア部>
下側乾燥エア部140は、版胴10の回転軸11と平行に延設されており、版胴10の幅とほぼ同じ長さを有する下側エアナイフ141を備える。下側エアナイフ141は、リンス液が流れる側の版胴10の外周面の側方で、かつリンス液供給部100よりも下方に設けられている。具体的には、下側エアナイフ141は、被転写体Wの搬送方向において、版胴10よりも下流側に設けられた下側エアナイフ支持部142に設置されている。
下側エアナイフ141はスリット状の吐出口を備える。このスリット状の吐出口は、版胴10の軸方向に沿って形成され、少なくとも版胴10に装着された印刷版PLの幅方向を覆う長さを有する。また、下側エアナイフ141は、その空気吐出方向が版胴10の外周面に沿って斜め下方を向くようにして設置されている。
下側乾燥エア部140は、下側エアナイフ141がエアバルブ143を介してエア供給源144と接続されて構成される。エアバルブ143を開放すると、版胴10に装着された印刷版PLの幅よりも長い範囲にて下側乾燥エア部140から版胴10の外周面に沿って下方に向けて空気が吐出される。
なお、上側乾燥エア部130のエア供給源133と下側乾燥エア部140のエア供給源144とは共通のものであっても良い。また、上側乾燥エア部130、下側乾燥エア部140は、エアナイフの代わりに、複数の穴が形成されており、その穴から空気を噴出可能なパイプなどで構成されていてもよい。また、リンス液供給部100と同様にX軸方向に沿って走査する形態であってもよい。
<洗浄バット部>
図8には、洗浄バット部150の斜視図が示されている。また、図9には、洗浄バット部150の側面図が示されている。
洗浄バット部150は、版胴10の下方において、印刷版PLの洗浄処理が行われている間、版胴10の外周面から落滴するリンス液を受ける部分である。
この洗浄バット部150は、リンス液を受ける洗浄バット151、洗浄バット151を所定の方向に移動させるバット移動機構152及び洗浄バット151を移動させる際に、版胴10の外周面に当接する版胴当接部153を主たる構成とする。
洗浄バット151は、角型の容器であり、耐薬品性を有する部材で構成されている。洗浄バット151の底部には、図示しない流出孔が設けられており、洗浄バット151の内部に集められた洗浄液は、この流出孔から洗浄バット151の外部に排出され、回収又は廃棄される。
版胴10の下方に、洗浄バット151を移動させるための一対のリニアガイド1522が設置されている。このリニアガイド1522は、洗浄バット151の下方を固定支持するバット支持部154の両端にそれぞれ接続されており、版胴10の回転軸11に直交する方向に長手方向が沿うようにして配置されている。洗浄バット151は、このリニアガイド1522の延在方向に沿って移動可能である。
より具体的には、洗浄バット151は、版胴10よりも(−Y)側の空間、具体的には版胴10を支持する図示しない版胴支持部が固定されたベース部材5と被転写体Wを載置した状態で移動する搬送テーブル63の上面との間に形成される空間における退避位置ESと、版胴10の下方における処理位置TSと、の間を移動する(図10参照)。退避位置ESは処理位置TSよりも高さ方向において上方に位置している。従って、リニアガイド1522は、版胴10の直下位置から搬送テーブル63の搬送方向の上流側に向けて、斜め上方向に配設されている。
この洗浄バット151の駆動機構として本実施形態ではエアシリンダ155が一方のリニアガイド1522の近傍に設置されている。エアシリンダ155のピストン155aはバット支持部154に接続されている。ピストン155aがリニアガイド1522の向きに沿って伸長及び収縮されるように、エアシリンダ155は版胴10の処理位置TSから搬送テーブル63の搬送方向上流側の退避位置ESに向けて、斜め上方を向くようにして設置されている。
エアシリンダ155のピストン155aが伸縮することによって、洗浄バット151はリニアガイド1522に沿って移動する。ピストン155aが伸び出た状態で、洗浄バット151は退避位置ESに配置された状態となり、ピストン155aが収縮した状態で、洗浄バット151は処理位置TSに配置された状態となる。なお、洗浄バット151を移動させる機構は、エアシリンダ155に限られず、リニアモータなどであっても構わない。
洗浄バット151の(+Y)側の端部から一対の支持レール156が先端方向に延び出ており、この一対の支持レール156の間に、版胴10の回転軸11の方向に沿って長手方向を有する版胴当接部153が設けられている。
版胴当接部153は、棒状部材によって構成された中心軸1532の外周面がリンス液を吸収可能なクロス1531に覆われた構造を有している。このクロス1531が布部に相当する。版胴当接部153の中心軸1532の両端には支持固定部1533が設けられている。支持固定部1533が設けられていることによって、版胴当接部153は、支持レール156及び洗浄バット151よりも高さ方向における上側、つまり(+Z)側に配置される。
支持固定部1533と支持レール156とが、揺動軸159で接続されている。揺動軸159は、その軸心方向が版胴10の回転軸11に沿うようにして設けられている。従って、版胴当接部153は、揺動軸159を基点にして、版胴10の回転軸11に直交する方向にプラスマイナス90度の範囲で揺動可能である。
図11には、版胴当接部153が版胴10の外周面に当接する様子が示されている。版胴当接部153は、処理位置TSから退避位置ESに向けて洗浄バット151が移動する際に、版胴10の外周面の曲面に当接する(図11参照)。そして、洗浄バット151が移動する間、揺動軸159を基点にして、版胴当接部153は(+Y)側に揺動しながら、版胴10の外周面の所定範囲にわたって当接し続ける。このとき、版胴当接部153が備えるクロス1531が、版胴10の外周面のリンス液を拭き取る。このように、版胴当接部153は、所定の駆動機構によって自発的に揺動するものではなく、版胴10の外周面に当接することによって受動的に揺動する。
<制御部>
また、制御部90は、印刷版洗浄装置1を含む印刷装置PTに設けられた種々の動作機構を制御する。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。
図12には本実施形態における制御部90のハードウェア構成が示されている。つまり、制御部90は、CPU91、ROM92、メモリ93、メディアドライブ94、表示部95、操作部96等で構成されている。これらのハードウェアは、それぞれバスライン97によって電気的に接続された構成となっている。また、バスライン97には、エアシリンダ35、リンスバルブ103などの印刷版洗浄装置1を構成する各動作機構が電気的に接続されている。
CPU91は、ROM92に記憶されたプログラム(または、メディアドライブによって読み込まれたプログラム)Pに基づいて、上記ハードウェア各部を制御し、印刷版洗浄装置1の機能を実現する。
ROM92は、印刷版洗浄装置1の制御に必要なプログラムPやデータを予め格納した読み出し専用の記憶装置である。
メモリ93は、読み出しと書き込みとが可能な記憶装置であり、CPU91による演算処理の際に発生するデータなどを一時的に記憶する。メモリ93は、SRAM、DRAMなどで構成される。
メディアドライブ94は、記録媒体(より具体的には、CD−ROM、DVD(Digital Versatile Disk))、フレキシブルディスクなどの可搬性記録媒体)Mからその中に記憶されている情報を読み出す機能部である。
操作部96は、キーボード及びマウスによって構成される入力デバイスであり、コマンドや各種データの入力といったユーザ操作を受け付ける。操作部96が受けたユーザ操作は信号としてCPU91に入力される。
表示部95は、カラーLCDのようなディスプレイ等を備え、各種のデータや動作状態を可変表示する。
次に、上述の構成を有する印刷版洗浄装置1の処理動作について説明する。図13は、印刷装置PTにおける処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する処理動作は、制御部90が制御部90に記憶された所定の処理用ソフトウェアを実行して印刷版洗浄装置1を含む印刷装置PTの各機構を制御することによって進行するものである。
まず、被転写体Wに対する印刷処理(パターンの転写)が行われる(ステップS1)。版胴10の外周面の一部には印刷版PLが巻き付けられ、その両端がクランプ機構によって固定されることにより、印刷版PLが版胴10に装着される。本実施形態の印刷版PLは凸版であり、版胴10の外周面の約半周が印刷版PLによって覆われる。印刷処理時には、版胴10が図2における時計回りの向きに回転される。
版胴10に装着されて回転される印刷版PLには、インク供給ローラ41からインクとして有機ELの高分子発光材料が供給される。一方、印刷対象となる被転写体Wは搬送テーブル63に載置される。そして、版胴10の下方にてスライド移動機構60により被転写体Wを水平方向に沿って移動させつつ、版胴10が回転して印刷版PLを被転写体Wに当接させることにより、印刷版PLの凸部のインクが被転写体Wに転写される。これにより、被転写体Wに対する有機EL材料の印刷が行われる。
なお、版胴10の高さ位置は、昇降モータ9がベース部材5を昇降させることによって調整される。また、印刷処理時には、拭き取りローラ部120及び洗浄ブラシ部110は、それぞれ退避位置TP1,TP2に配置されている。
印刷処理時に、インクである発光材料の一部は転写されずに印刷版PL上に残留してしまう。また、印刷版PLの凹部にも発光材料が残留していることがある。このような印刷版PLに残留した発光材料が、次の印刷結果に悪影響を与えることは既述した通りである。このため、本実施形態においては、図13に示す手順に従って印刷版PLの洗浄処理を行い、残留する発光材料を除去している。
はじめに、版胴10が回転して印刷処理後のインクが残留している印刷版PLをリンスノズル101の直下位置に相当する洗浄開始位置に移動させる(ステップS2)。これによって、洗浄処理の開始時における版胴10の回転方向の下流側に位置する印刷版PLの端部が洗浄開始位置に配置された状態になる。
そして、エアシリンダ35のピストン35dが伸長することによって、洗浄ブラシ部110は退避位置TP1から処理位置WP1に変位する(ステップS3)。これによって、洗浄ブラシ部110の刷毛部111は、印刷版PLの表面に当接可能な位置に配置される。なお、インク供給機構40などは、洗浄機構と干渉しないように、版胴10から離隔した位置に移動する。
印刷処理時には退避位置ESに配置されていた洗浄バット151は、洗浄処理が開始される際には、エアシリンダ155のピストン155aを収縮させることによって移動し、退避位置ESから版胴10の処理位置TSに配置される(ステップS4)。図14は、洗浄バット151が退避位置ESから処理位置TSに移動する様子を示す図である。退避位置ESから処理位置TSへと移動する洗浄バット151の移動方向における先端側に設けられた版胴当接部153が版胴10の外周面に当接しながら、洗浄バット151は移動する。版胴当接部153は版胴10の外周面に接して洗浄バット151側((−Y)側)に揺動しながら、洗浄バット151は処理位置TSに移動する。
なお、洗浄バット151が処理位置TSに移動する際には、印刷版PLはすでに洗浄開始位置に移動しており、版胴当接部153と接することはない。従って、版胴当接部153が印刷版PLに当接して印刷版PLにダメージを与えること、版胴当接部153のクロス1531が印刷版PLに残留するインクを吸収することを防ぐことができる。
次に、リンス液供給部100のリンスノズル101を、レール部材102に沿って版胴10の回転軸11の軸方向に沿って移動させる。このリンスノズル101が印刷版PLの上方に到達すると、リンスバルブ103は開放され、リンスノズル101からリンス液の吐出が行われる(ステップS5)。リンスバルブ103は、リンスノズル101が印刷版PLの上方を移動する間のみ開放されるため、リンスノズル101から供給されたリンス液は、印刷版PLのパターンエリアにのみ吐出される。
なお、リンスバルブ103の開放のタイミングは予め制御部90において、リンスノズル101の移動速度、版胴10の端部から印刷版PLの端部までの距離などに基づいて設定されている。このように、印刷版PLの範囲にのみリンス液が吐出されるため、洗浄処理に使用されるリンス液量は低く抑えられる。
図15には、刷毛部111が処理位置WP1に配置された状態が示される。リンスノズル101から吐出されたリンス液は、版胴10に装着された印刷版PLの外周面に沿って下方に流れる。処理位置WP1に配置された洗浄ブラシ部110の刷毛部111は、外周面に沿って流れてきたリンス液を受け止めて、毛部112がリンス液を含んだ状態で印刷版PLに当接する。
リンス液を含んだ状態の刷毛部111が、印刷版PLの表面全体にのみ当接するように、版胴10は往復移動する(ステップS6)。具体的には、印刷版PLの上端が洗浄開始位置に到達したタイミングで、又は印刷版PLの下端が洗浄開始位置に到達したタイミングで、版胴10の回転は、図2に示される矢印TRの向き(時計回り)と矢印HRの向き(反時計回り)とのいずれか一方に適宜切り換わる。刷毛部111の毛の線径は、印刷版PLに形成されたパターンの凹部の最も狭い幅よりも小さいため、刷毛部111は、凹部に容易に入り込み洗浄する。
このように、洗浄ブラシ部110によって洗浄処理が行われる間、ブラシ当接部116が、版胴10とともに回転する印刷版PLの表面に当接して、印刷版PLの下流側に撓る刷毛部111の下流側の部分に当接する。従って、刷毛部111が印刷版PLに当接することにより、刷毛部111の毛が、版胴10の回転方向の下流側に曲がることを抑えられ、延在方向に延び出た状態で支持される。
拭き取りローラ部120では、ローラ121が、版胴10に当接しつつ、版胴10に従動して回転することにより、版胴10の外周面に付着したインクを拭き取る。このとき、版胴10の回転は矢印TRの向き(時計回り)と矢印HRの向き(反時計回り)とのいずれか一方に切り換わりながら、洗浄処理が行われるため、処理位置WP2に配置されたローラ121は、版胴10とともに回転する印刷版PLに当接する恐れがある。このため、ローラ121が、印刷版PLが装着されていない版胴10の外周面の部分に当接するように、適宜エアシリンダ129のピストン129aを伸縮させて、ローラ121を処理位置WP2と退避位置TP2とのいずれか一方に移動させながら洗浄処理が行われる。
拭き取りローラ部120によって十分に拭き取られなかったリンス液は、版胴10の外周面に沿って下方に流れ、版胴10の下端から版胴10の直下位置に配置された洗浄バット151に落滴する。
なお、版胴10の往復移動の回数、リンス液の吐出回数は印刷版PLにおけるインクの付着具合、パターンの形状に応じて任意に設定可能である。
洗浄処理が終了すると、洗浄ブラシ部110のエアシリンダ35は、ピストン35dを収縮させて、洗浄ブラシ部110を退避位置TP1に移動させる(ステップS7)。刷毛部111に残存したリンス液は、エジェクタ118の駆動によって、配管117を介して吸引され、刷毛部111から除かれる。
図16には、印刷版PLの乾燥処理の様子が示されている。印刷版PLの洗浄処理が終了すると、引き続いて印刷版PLの乾燥処理が行われる。まず、印刷版PLが乾燥開始位置に移動する(ステップS8)。乾燥開始位置とは、上側エアナイフ131の直下位置に相当する。
乾燥処理の開始時における回転方向の下流側に位置する印刷版PLの端部が乾燥開始位置に移動する。そして、エアバルブ132を開放させて、上側エアナイフ131の吐出口からエアを吐出させる(ステップS9)。また、エアバルブ143を開放させて、下側エアナイフ141の吐出口からもエアを吐出させる(ステップS10)。
乾燥処理が行われる間、版胴10は、図16に示される矢印TRの向き(時計回り)と矢印HRの向き(反時計回り)とのいずれか一方に切り替わりながら回転する。つまり、洗浄処理時と同様に、版胴10は往復移動する(ステップS11)。これによって、上側エアナイフ131から供給されたエアは、印刷版PLのパターンエリアにのみ吹き付けられる。
拭き取りローラ部120は、洗浄処理時と同様に、ローラ121が印刷版PLに当接しないように、エアシリンダ129を駆動させ、ローラ121を退避位置TP2と処理位置WP2とのいずれか一方に配置させる。
また、下側エアナイフ141からエアが供給されることによって、拭き取りローラ部120では拭き取りきれなかったリンス液が、より確実に版胴10の下端に集められる。集められたリンス液は洗浄バット151に落滴し、版胴10の外周面から除かれる。
なお、乾燥処理時における版胴10の回転方向の切り換え、版胴10の回転速度は、印刷版PLのインクの濡れ具合に応じて任意に設定される。
乾燥処理が終了すると、拭き取りローラ部120のエアシリンダ129がピストン129aを収縮させる。これによってローラ121は退避位置TP2に移動する。退避位置TP2において、拭き取りローラ部120のクロス1212に残存するリンス液は、エジェクタ125によって吸引され、クロス1212から除去される。
図17には、洗浄バットが処理位置TSから退避位置ESに移動する様子が示されている。乾燥処理が終了すると、洗浄バット151が処理位置TSから退避位置ESに移動する(ステップS12)。このとき、版胴当接部153が、版胴10の下方における外周面に側方から当接する(図17参照)。
版胴当接部153は、揺動軸159で支持されて揺動可能であるため、洗浄バット151が退避位置ESに向けて移動することにより、進行方向の後端側、即ち(+Y)側に揺動しながら、版胴10の外周面に当接し続ける。このように、版胴当接部153が版胴10の外周面における所定の範囲に当接することによって、当該範囲に付着していたリンス液は版胴当接部153が備えるクロス1531によって拭き取られる。
本実施形態では、下側乾燥エア部140の下側エアナイフ141からエアが供給されているため、版胴10の外周面に付着していたリンス液が版胴10の下端により集められている。従って、版胴当接部153が版胴10の下端の所定範囲にわたって当接することにより、これらのリンス液は拭き取られ、版胴10の外周面から除去される。
以上のように、本実施形態における印刷版洗浄装置1の洗浄ブラシ部110は、印刷版PLに形成された凹部の最も狭い幅よりも線径が小さく、版胴10とともに回転する印刷版PLに当接する毛部112を有する。毛部112は印刷版PLの凹部の最も狭い幅よりも線径が小さいため、印刷版PLの凹部の中に入り込んで、凹部に残留するインクを洗浄することができる。また、毛部112の線径が小さいため、毛部112が当接することで印刷版PLに与える衝撃は小さくなる。従って、印刷版PLの洗浄処理を行うにあたって、印刷版PLにダメージを与えること及び印刷版PLに洗浄不良が生じることを抑えられる。
また、洗浄ブラシ部110は毛部112が印刷版PLに当接するときの圧力を緩衝させる緩衝部115を備える。従って、毛部112が印刷版PLに当接する際の衝撃はより抑えられるため、印刷版PLの洗浄処理を行うにあたって、印刷版PLにダメージが生じることを抑えられる。
また、ブラシ当接部116が印刷版PLの下流方向に撓る毛部112の下流側の部分に当接するため、毛部112の先端は延在方向に延び出た状態で支持される。このため、印刷版PLの凹部が深くても、毛部112を印刷版PLの凹部の中に入り込ませることができる。特に、本実施形態では、毛部112の線径が小さいため、版胴10とともに回転する印刷版PLに当接することによって撓りやすく、毛部112の毛先が凹部に入り込みにくい場合がある。ブラシ当接部116が設けられていることによって、これを抑えることができる。
また、拭き取りローラ部120が、洗浄液を拭き取ることによって洗浄液を除去するため、版胴10に洗浄液が残存することを確実に抑えられる。
また、拭き取りローラ部120のローラ121を移動させるエアシリンダ129が、ローラ121を、拭き取り処理を行う処理位置WP2と処理位置WP2から離隔した退避位置TP2とのいずかれ一方に移動させる。ローラ121を退避位置TP2に移動させることができるため、洗浄処理が行われる間に、ローラ121が印刷版PLに当接して印刷版PLにダメージを与えることを抑えられる。
また、エジェクタ118が毛部112に残存する洗浄液を吸引するため、毛部112に残存した洗浄液は適宜除かれる。従って、毛部112に残存したインクを含む洗浄液によって、印刷版PLが汚染されることを抑えられる。
また、この他にも、洗浄処理時において、版胴10の回転方向は適宜切り換えられるため、印刷版PLに対して常に処理を行うことが可能となり、洗浄処理に要する時間を短くすることができる。なお、乾燥処理時においても、同様である。
また、リンスノズル101が、印刷版PLのパターンエリアのみにリンス液を供給するため、リンス液の使用量を低減させることができる。
洗浄バット151は、処理位置TSから退避位置ESに移動する際に版胴10の外周面の所定範囲に当接して当該所定範囲に付着したリンス液を除去する版胴当接部153を備える。このため、版胴10の外周面にリンス液が残存することを確実に抑えられる。
また、版胴当接部153は、中心軸1532の外周面をクロス1531が覆うことによって構成されている。従って、簡易な構成で版胴10の表面に付着した洗浄液を除くことができる。
また、版胴当接部153は、クロス1531に覆われた中心軸1532を揺動させる揺動軸159を備える。従って、版胴10の外周面が曲面であるにも関わらず、簡易な構成で、版胴当接部153を版胴10の外周面に当接させ続けることができる。
また、下側乾燥エア部140が版胴10の外周面に沿いつつ下方に向けてエアを吹き付ける。このため、版胴10の下方で残存しているリンス液は、版胴10の下端に集められ、版胴当接部153によって効率的に除去される。
また、洗浄バット151は、版胴10の回転軸11の方向に直交する方向に移動し、退避位置ESは処理位置TSよりも上方に設けられている。このため、例えば印刷版PLによる印刷処理が行われる被転写体Wを保持する搬送テーブル63などの機構が設けられることによって、洗浄バット151を設置する構造を設けにくい場合であっても、周囲にスペースをとることが可能な位置に洗浄バット151を退避させることができる。
<2.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、版胴当接部153は、版胴10の外周面に付着したリンス液を拭き取る形態であったが、このような形態には限られない。リンス液が吸引されることによって、版胴10の外周面から除かれる形態であってもよい。つまり、版胴10と同程度の所定の長さを有する図示しない吸引ブレードが、版胴10の外周面の所定範囲に当接しながら、リンス液を吸引する形態であってもよい。
また、上記実施形態では、版胴当接部153が揺動可能な機構を有しており、版胴10の外周面の所定範囲にわたって揺動しながら当接する形態であったが、このような形態には限られない。例えば、揺動軸159の代わりにバネなどの弾性体で構成された支持部材が設けられていてもよい。この場合、版胴当接部153は、版胴10の外周面に当接すると、高さ方向に沿って下方に変位しつつ所定の範囲にわたって版胴10の外周面に当接し続ける。そして、版胴10の下方から離れると、版胴当接部153は、弾性体の復元力によって元の位置に戻る。このように、版胴当接部153は、必ずしも揺動可能な形態でなくてもよい。
また、上記実施形態においては、下側エアナイフ141及び上側エアナイフ131から空気を吐出するようにしていたが、これに代えて窒素ガスの如き不活性ガスなど他の種類の気体を吐出するようにしても良い。
また、上記実施形態においては、版胴10の外周面の約半周に印刷版PLが装着されていたが、印刷版PLが装着される長さは版胴10の外周面の半周以下であっても良いし、半周以上であっても良い。
また、印刷版PLは、有機ELの発光材料の印刷を行うための凸版に限定されるものではなく、凹版などの他の版式であっても良いし、他の種類のインクを転写する版であっても良い。また、印刷版PLの材質もポリエステル系樹脂以外であっても良い。すなわち、本発明に係る印刷版洗浄技術は、回転する版胴10の上に装着された印刷版PLを洗浄するものであれば、有機ELの発光材料の印刷装置のみならず他の種類の印刷装置に適用することができる。もっとも、他の種類のインクを用いる場合には、そのインクの溶解性の高いリンス液を使用することが好ましい。